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08MS-SEED-イグルー-01

Last-modified: 2013-12-23 (月) 20:33:27

 黄色の粒子……大地の塵が舞う中、その巨体を横たえながらも紅の一つ目を輝かせながらその状況を静観していた。
 蜘蛛の子を散らす様な、人の影。ジープがまるで玩具の様に蹴散らされながらも爆音と共に煙を上げて行く。
 砂漠の風の音と爆音で悲鳴の声は捻り潰されながらもそれとは温度の違う音が通信機の向こう側から垂れ流されていく。
 巨体の胸の中で、それを高見の見物としゃれ込む女が一人。パイロットシートに深々と体を沈めながらも
 その悲劇を眉一つ動かずに静観していた。

「隊長ぉ。何時まで此処でじっとしてりゃぁ良いんですかい?俺達ぁ干物になりゃ良いんですか?」
「黙りな。情報が掴めない限り動くもんじゃないよ……そもそも、モノアイだからってジオンか連邦すりゃわかりゃしない」
「へいへい。…あ〜あ〜なんだかしらねぇが、犬の化け物が人間襲ってらぁ。あんなでかいの乗り回して」
「豪華なものだな。こっちは推進剤どころか食料で困っているというのに。……ま、よく解らんがここいらはレーダーが利かないのが不幸中の幸いか」

 気だるそうな声を上げながらも巨体の中、そのMSに通信が入ってくる。
 男の声……ソレは怠惰と不満と焦りが感じられている。それに答える女の声も焦りを滲ませながらも押し殺す苦悶の声。
 二人は既に数日何も食べていなかった。空腹の腹の音すら聞こえず、サボテンすら生えぬこの砂の中で飢えと戦いながら
 今、この世界を知ろうと必死になっていた。ふと、足元で接触通信をする声。その方向へとカメラを向ければ、女は安堵の吐息が漏れる。
 見知った男のシルエットに胸を撫で下ろしながらも回線を開けば、やや角ばった顔のいかにも軍人といった面構えの男がモニターへと映る。

「隊長。此処1日何とか探ってみましたが、周辺に村はなし。また、如何やらゲリラと軍が争ってる紛争地域の様です。あちこちに死体や車両、見慣れないMSが捨てられてました」
「そうか。…お前のMSはどこに隠してある?」
「此処から北に200mほど行ったところです。銃撃音があったので伏せておかせました。防塵装備ではないのでやや不安ですが」
「良い判断だ。……よし、では決めようか。デル。MSに乗り込んでおけ。合図があり次第白兵戦を仕掛ける。やれるな?」
「はっ!」
「お、ようやくですかい。んで、俺等は人狩りを手伝うか犬狩りをやるかどっちをやりゃ良いんで?」

 男はようやくかっと言った感を滲ませながらも、座り込んでいたコックピットのイスから乗り出して舌なめずりをしている。
 通信をしてきた男は律儀に声を返しながらその場を後にしていった。2分もしない内に通信が入り、男が搭乗した事を確認すれば
 炉に灯した火の熱を上げさせて、その巨体を起しあげて行く。紅の瞳は犬をしかと見つめながらも、片手の銃を構えながらも
 息をつかせぬ間に女の駆る巨体は男の駆る巨体へと手を伸ばす。

「……やるのは犬狩りだよ。あいつ等は足が速い。アタシが止めるからアスはそのまま砲で狙撃。マニュアルで良い」
「って、隊長。此処じゃ砲身もぐらつきますし、ただでさえ下手な俺の腕じゃ当たりませんぜ?」
「泣き言は棺おけの中に入ってから聞いてやるよ。ほら!それを貸しな」

 一つ目の巨体がもう一つの巨体からまるで崖の一部を切り取った様な巨大な盾を手に取れば、大きな、砂煙と共にそれを大地に突き刺していった。
 響き渡る音と共に、それは先で戦闘を行っていた犬と人の群れにも気付かれていった。そのまま、地面に貫かれた盾は大きな城壁となし
 その上に巨大な砲身が据え付けられていった。アスと呼ばれた男もその行動に一瞬唖然としながらも再び軽い口調の怠惰な言葉が漏れて行く。

「ひゅぅ〜なるほど。隊長何処でこんなやり方習ったんですかい?」
「無駄口も無駄弾も撃つ余裕は勝ってからにしな! ほら、いくよ!」

 その言葉と共に女の操る巨体は砂漠の中、砂を撒き散らせながらも人狩りを続ける巨大な犬の方向へと向かって、実弾の機関銃の雨を浴びせ掛けていく。
 犬の足はそれで急ブレーキを掛けられながらもミサイルポットとその巨大な二門の砲身を向けていった。
 しかし、その次の刹那。男が駆る一つ目の巨体が大きな砲身が砲火を上げる。
 それは箱型のミサイルポットへ大穴を空けて、犬一匹がそのまま背中を爆発させられてまるで突っ伏される様に砂漠へと叩きつけられて沈黙する。

「良かった。どうやら、弾は利く相手みたいなようだね。アス!アタシにアイツを近付けすぎない様に援護。アタシに当てたら死ぬ前にお前を撃ち殺すからね!」
「へいへーい。ったく! つってもあんな足の速い奴どうやってあてろってんだ!」

 女の駆る巨体はそのまま、砂を蹴り上げながらも犬との距離を取ろうとしながらもマシンガンをばら撒いていく。
 犬の敵を狙おうと、足を止めれば其処には砲身の雨が注がれる。
 犬を駆るパイロットも相手の動きに四苦八苦していた。彼からしてみれば、突如現れた一つ目の機体ははっきり言うと『遅過ぎた』。
 犬の動きが早過ぎて相手の動きが相対的に遅いのでロックオンが撃つ前に外れてしまう。かと言って止まっていると砲の雨が注がれている中
 犬は走り続ける事しか出来なかった。少しでも機動を少しでも遅くなれば相手のあの巨大な実弾の機関砲にやられてしまう。
 まるでチキンレースをさせられているかの様な感覚に、犬を駆るパイロットは狼狽をしていた。

「いーように、やられてるな、新兵か?あんなに機体に振り回されて。人間相手にばっかやってりゃ腕も落ちるってもんさ」
「かーっ、何か貧乏染みてて嫌ですね。いやだいやだ。こーいう環境になれちまうっつーのも」
「死ぬよりは良いだろう? ふんっ、ビームなんざ使ってまでご大層なことだね」
 
 一つ目の機体達の動きに業を煮やしたのか犬は口に咥えた白い筒から桃色の刃を突き出して、それで切りかかろうとしてくる。
 女の駆る巨体は、銃を捨てれば、ぐっと機体の腰を低くしながらもその肩を守る防具……否、武器で犬の頭へとその巨体をぶつけていく。
 金属と金属がへし合い押して砕け、軋む音が砂漠の中で怒号を上げながらも、犬の頭はそのままぐしゃりっと叩き折れてしまう。
 明らかに重量は女の駆る巨体の方が上、しかも対白兵を睨んだ『装甲』と『馬力』はその貧弱な駆動部分を見せる犬の頭に耐えられない負荷を与える。
 しかし、相手の速度は落ちる事なく、女の駆る巨体は押し負けて、砂漠の砂に埋もれさせながらも犬はそのまま走り抜けていこうとする。

「デル! そっちに行くよ! トドメはくれてやる!」
「はっ!了解しました!」

 砂漠の中を頭無しで走りぬける犬の目の前に、砂の中に半分埋まっていたもう一人の巨体が砂を撒き散らしながらもその巨大な斧を真っ赤に熱した
 その一撃を振り下ろしていった。めりめりっと、まるで薪が自ら突っ込んでくるかの様にその刃は相手の機体へと深く入り込んでいく。
 どろりと溶けた犬の胴体はスパークを走らせながらもその場で砂漠の中にのめり込む様にして突っ伏していく。
 スパークの音と熱の溶けて燃料が溢れ、零れていく音が鬩ぎあい、まるでハードロックの様な音の爆撃が一つ目の巨体へとのしかかって行く。

「くっ、後一回で良い! 飛んでくれ!」

 ガス欠気味のバーニアをふかしながらも、砂から出て来た一つ目の巨体は宙へと飛びのこうとする。
 中の男は文字通り機体に祈る様に目を瞑ったまま、ペダルを踏み込んで
 推進剤の熱と風が周囲に撒き散らされながらもそれがまるで爆竹の様にばすっばすっと不調の旋律を響かせた後それは爆発する。
 咄嗟の判断か大きくヒートホークを放り投げながらも一つ目の巨体はそのまま犬に押し倒されそうになった所で大きく足を上げてその腹に蹴りを入れて行く。
 鈍い金属音と軋みを混じらせながらも蹴りを入れられた犬は至近距離の爆発に巻き込もうし、爆煙と炎の中に包まれていった。
 女の狩る一つ目の巨体が逃げおおせていたジープへとその巨大な銃口を向けながらも、オープン回線で声を掛けていく。

「あーあー、此方の言語が通じると良いのだが、聞こえるか? うちの者がこのままではローストかミンチか知らんがくたばってしまう。其方に『人道的支援』を要請したい」
「……隊長さん。まさか、これを見越してデルと俺の武装を?」
「そういう感が良過ぎる軍人は早死にするぞ?幾ら、あたしでも其処まで計算できる訳が無いとお前のおつむでも解らんか?」
「そうですね。へいへい。まったく捨てる神と拾う悪魔は選べないのかねぇ。おーい、デル生きてるかー?」

拾わせようとする悪魔を選ばせるのが本当の悪魔だよ。
シートに座り込む女、名はトップ。一つ目の巨体を操るその拾わせる悪魔は心の中でそう呟いていた。

機動戦士ガンダムSEEDイグルー 鉄と血の戦乙女 「捨てる神、拾わせる悪魔」

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