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08MS-SEED_96_第03話1

Last-modified: 2013-12-23 (月) 19:26:45

「へ〜〜〜、あそこの谷間かい?」
「そうだ、あそこは俺達の前線基地があるしAAも隠せるだけの大きさがある筈だ」
「おいおい、筈って…本当に大丈夫なんだろうな?」
 進路を示すカガリと時ならぬ遊覧飛行に歓声を上げるキキと舵を握るアーノルド=ノイマン少尉がそれぞれAAブリッジで声を上げる。
「ノイマン少尉、あの岩場の谷間に着陸できるか?」
「大丈夫、行けますよバジルール中尉!」
 AAはカガリら“暁の砂漠”の案内で彼らの前線基地がある岩山の谷間に向かっている。
 砂漠に障害物は余り無くAAのような大きな構造物が隠せる場所は多くは無い。
 そしてそのような場所の多くには人が住んでいるので、AAを見られてしまえばいつかはその話がザフトに漏れ伝わる事もあるだろう。
 船殻の歪みのチェックは簡易チェックではあるが昨晩一通りチェックしたもののその後すぐ交戦があったし、もともとある程度大気圏内で動かしてからもう一度チェックして問題が無いかどうかを確認しなければならず、もし問題が出たら補強や修理をする必要もある。
 そういう意味でも人目に付かないAAを丸ごと隠せる場所と言うレジスタンスの提案は渡りに舟であった。
 レジスタンスへの協力をある程度行う事でAAを隠せる場所の提供と見張りを任せる人材を提供してもらえるだけでも“ヘリオポリス”崩壊からこっち休む暇も無く地球に降下した乗組員達に休みを与える事ができる。
 そして宇宙(ソラ)から重力の底である地上に降りてきた重力ブロックがあるといっても多くは無重力の場所も多かったAA乗組員には、地上で重力に馴れさせなければ本来の能力を発揮する事もできない。
 そういう意味でも1週間ぐらい留まれる場所を欲していたのだ。
「谷間上空に到達後、着地できるポイントをサーチ。
 チャンドラ軍曹…は格納庫だったな、トノムラ軍曹、着地地点は両翼端が両崖に引っかかる場所がいい」
「わざわざぶつかる場所を探すんですか?」
「重力圏下では翼にかかる重力を多少は軽減しておいた方がいい…と聞いた事がある。
 ノイマン少尉、上手く両方に均等に…艦を水平に下ろせよ」
「任せておいてください!」
「よし、任せる。 効果ポイントを特定後、着地前に艦長をお呼びしろ」

 その頃格納庫では08小隊の面子とAAの整備士達の間での情報交換が行われていた。
『異世界に来た事は平気な訳ではない…が異世界にきてしまった以上、自分達の武器となるMSの整備はきちんとしなければならない、そしてその整備を任せるAAの整備士達にはいろいろと教えなければならない』
 とはシローがマードック班長に語った事である。
 その言葉の通り08小隊の面々は精力的にAA整備士達に自分達のMSの事を伝え、そしてAAの整備士達も新しいおもちゃを与えられた子供のようにこの新しい機械のことを熱心に聴き、そして吸収していった。
「…なるほど、この核融合炉は当分の間はメンテナンスフリー、と」
「そうですマードック班長。
 大抵はC整備…可動1千時間か六ヶ月の間は核ベレットの交換等は行われません、周辺機器等のメンテナンスで十分動く事になってます。
 我々の陸戦Gは今回のミッション前に防砂処理を施され、その時に早めのC整備が行われているのでまだしばらく持つとは思いますが…」
「ってことは、こいつの可動限界は半年…か」
「いえ、ジェネレータに一度火を入れると数年…それこそ数十年単位で動く筈なんですが、MSやこれ自体が新しい機械なので論理はともかく実際に限界がどれくらいかは試した事が無いのが実情なんです。
 なんせ数ヶ月前に完成した機械達ですし、MSに搭載できるジェネレータが完成して10年も経ってないので。
 しかし何かあった時用にもヘリウム3の燃料ベレットをこちらの規格に合わせて精製できればいいんですが…」
「そうなったらそうなったで考えましょうや、MSが動かなくなってもパイロットとしての能力が無くなる訳でじゃないですし、ヘリウム3を作れるかも知れやせん」

「そうですね…とにかく、ジェネレータは当面冷却剤の補充と冷却装置の整備でなんとかなります。
 戦闘時以外はジェネレータを停止させる事が出来ますので…正確には待機状態であって完全な閉鎖ではないんですけど」
「常温核融合炉ですから簡単に止めたり動かしたりはできねぇって訳ですね……で、こいつが戦闘等での破損の可能性は?」
「細かいことを言えばヘリウム3の核融合では反応前と反応後で質量の変化が無いので核融合炉ではなく核反応炉という事になります…まぁどうでもいいと事ではあるので我々は核ジェネレータ、もしくは単にジェネレータと呼んでいます。
 一番硬い部分の奥にありますしジェネレータ自体の強度も相当な物です、自分らの武器でも破壊できるのはビームライフルぐらいなんですがよほど上手く当てないとジェネレータ自体のIフィールドで弾かれます。
 ですからよほどの衝撃や威力の物でないと破損するのは周辺の冷却機止まりで、ジェネレータ自体はそれにより緊急閉鎖するだけで放射線被害は考えなくてもいいと思います。
 ただ、ビームサーベル等の格闘攻撃では破損の可能性は増大します…こっち世界のパイロットならジェネレータ自体を破壊してしまう事を避けるのは常識なんですが…」
「こっちの世界じゃ知ってる奴がいねェ、と」
「そうです…簡単に殺られるつもりはありませんけどね。
 詳しくはメンテナンスマニュアルを今コピーしてもらってますからそれに目を通してください」

 彼らは現在、AAの整備士達に陸戦Gの整備方法…特に注意点等を詳しく説明しつつ教えていた。
 何より未知の機械であるしどんな違いがあるか判らない、一通りの整備を説明し終わった頃にはUC世界もCE世界も機械に関しては大きな違いは無かったので、とりあえず砂や異物を取り除いてノズルや砲口の煤を掃って各部を磨く程度の基本的な整備を行ってもらい、その間にこちらの世界には無い物や本当に共用できる
かどうか等の調査を08小隊の面々は行っていたのである。
 シローはジェネレータの説明を、サンダース軍曹は消耗品が使えるかどうかを、カレンには武器や消耗部品がどれぐらいストックがあるかを、ミケルには電子機器関係をそれぞれ調べていた。
「後でゆっくり読ませてもらいやすが…今は戦闘後の整備点検を終えちまうのが先ですからね、次からは少尉達の手を煩わせる事はありませんよ。
 …ところで、この装甲の材質って一体なんなんですか?
 ハッチの開閉の重さとかこの手触りとかから察するに、どうやらこちらには無ぇ材質だと思うんですが」
「ルナチタニウムです…こちらにはありませんか。
 まぁこちらでも希少な材質でしたからね、月で取れるレアメタルを無重力下で化合した合金らしいんですが陸戦Gはそれを3重のハイブリットハニカムアーマーにしてあってザク…これは敵のMSの名前です…120mmマシンガンの直撃にも耐えます」
「120mmでマシンガン…ってのも凄げぇがそれに耐えるってのも相当な物ですな。
 後で少尉の半壊したシールドを使って強度テストさせてくださいよ」
「いいですよ…そのかわりそちらの標準的なシールドがあればこっちに回してくれませんか?」
「構いませんよ、こっちのは少尉達のシールドより大きいですが対ビームコーティングされてるからビーム兵器に対してより有効です」
「そんな物があるんですか!」
「ええ、坊主…いえヤマト少尉はこの前はランチャーパック装備だったので持ってませんでしたがね。
 えと……ああ、あれです!」
「へぇあれが……マードック班長、一つお願いしてもいいですか?」
「なんです?」
「自分の機体に持たせるシールドには真ん中辺りに黄色い横線を足してもらえませんか?」
「いいですが…一体なぜです?」
「自分の世界では…ええと、あの胸にある黄色い十字っぽい奴が自軍のマーキングでして、他の種類のMSが持っている大型のシールドにはあれに模した黄色いマーキングが付いてるんですよ。
 ……平行世界にやって来た者の郷愁と笑ってください」
「……いえ、判りました、8小隊の方々が使う場合はそういうマーキング入れておきやすよ。
 ついでに『08』とも書いておきますね」
「ありがとうございます……。
 ……お…サンダース、そっちはどうだ!?」
 シローは下を通ったサンダース軍曹をメンテベッドのキャットウォークの上から呼びかけた。
 きょろきょろと辺りを見ながら歩いていたのはまさしくシローを探していたのだろう。
「隊長、そこでしたか!
 推進剤ですが問題ありません、同じ名前の化合物がありましたし化学式も一緒です。
 それと油脂系ですがこっちも使えそうです、むしろこっちの方が性能がいいようですよ…ただ耐熱性が高い奴を使う必要がありそうですが」
「そうか、引き続き調査を続けてくれ」
「了解!」
「…油と推進剤が問題ないならとりあえず当面の運用は問題ねぇようですな」
「はい、助かります」
「隊長、リストを持ってきました」
 メンテベットのリフトを登ってキャットウォークに来たカレンがプリントアウトした紙束を持ってきた。
 UC世界でもペーパーレス化は進んでいたのだが、これを元に書き込みや注意書きが必要になる事を考えてプリントアウトさせたのだ。
「見せてくれ……詳しくはリストを見るとして…簡単に言ってどうだ?」
「はい…砂漠でのミッションと言う事で多めに補修部品を積み込んでいたのが功を成しましたね、消耗品のパーツは四機分積み込んでありましたし…既に一機分ぐらいは使ってますが。
 外装は別として内部のパーツなら材質は余り変わらないようですし…マードック班長、この船の中の工房で加工できると聞いたんですが?」
「ああ、そいつは間違いねェ。
 サイズさえ判ればストライクのパーツを元に加工する事も不可能じゃありません」
「…使用頻度に順位をつけてパーツを貯蓄しておく必要があるかな…。
 カレン、リストに順位をつけて類似パーツを探してくれないか?」
「判りました。
 それと隊長、武器ですがマシンガンやバズーガは残弾は二回戦分はあるんですが…ビームライフルは…」
「…ダメか?」
「はい、電力の供給は問題ないとしても…エネルギーCAPに高エネルギー化したメガ粒子をチャージするチャージャーが無い以上、方法がありません。
 隊長と私のビームライフルは撃てて数発です」
「…ミケルにマシンガンを使わせたのが功を成した訳か…しかし二回戦分しかないか」
「はい、聞いてみたんですが同様の口径の弾もロケットもありません、加工するにもそこまでは…薬莢回収して再利用してみます?」
「ん〜〜〜…火薬の予備ってのがこの艦にあるのか?」
「もちろんありません、艦載砲のをバラして手詰め…って事になりますね」
「そりゃぁ大ごとですな…少尉、ストライクの武装は使えないんですか?」
「コネクターの位置も大きさも違いますよ」
 MSが腕を持って武器をいろいろ変更できると言う汎用性はMSの利点の一つとされる。
 …だが、全てのMSが全ての武器を人間のように使いこなせる訳ではない、多くの兵器は武器の照準や機器の状態や残弾の有無を、ビーム兵器は更に起動する為の電力をMS本体から供給しなければならない。
 その為にMSの掌にはいくつかのコネクターがあって本体と武器を接続する事で使えるようになるのである。
 もちろん敵味方では意図的にこの形状や位置が変えられてあり、安易に敵に武器が使われる事が無いよう一種の安全装置として機能している。
 そして、敵味方どころか世界が違うストライクと陸戦Gにこれが共通している筈が無い。

「…それじゃぁ“ゲタ”を履かしてみたらどうです?」
「“ゲタ”?」
「ええ、ようはコネクターが合えばいいんです、この場合陸戦Gにストライクの武器を合わせるんですから…武器の方のグリップにストライクのコネクタを陸戦Gに変換するパーツをつければいいんじゃねぇですか?
 ビームライフルは電圧とかの変更が必要になるので手間がかかりますが…火薬武器ならすぐにでも何とかなると思いますがね」
「なるほど、それはいい!
 マードック班長、お願いできますか?」
「ええ、まかしといてください!」
「後は電子機器か…カレン、ミケルはどうした?」
「ミケルなら指揮車の方にいましたよ」
「そうか」
 シローはマードック班長に後を任せますと声を掛けるとカレンと共にリフトを降り、カレンと別れて指揮車の前の入り口付近に設置されたでテーブルの前でリストとにらめっこをしているミケルの元を訪れる。
 指揮車にはAAから伸ばされた艦内ネットワークのケーブルや指揮車内に持ち込まれたCEの電子機器や工具用の電源ケーブル等が何本か引き込まれ、テーブルの上ではAAのCICの電子戦担当官であり電子工学のスペシャリスト、ダリダ=ローラハ=チャンドラII世軍曹が積み上げられた電子機器の中で何かを作っていた。

「どうだ、ミケル?」
「あ、隊長……結論から言いますとMSの電装部品に関してはこちらとの共用は無理ですね」
「そうか」
「コネクター等の形状も電子機器もどれも合いません…でも部品レベルでは…抵抗とかトランジスタとか言うレベルになりますが…共通する部分もあるので、簡単な修理なら可能です。
 ですがコクピットのモニタが割れたり搭載コンピュータが破壊されたら直すのは相当難しいと思いますよ」
 ミケルは軍に入る前は工学系の大学生だったらしい…事実機械や特に電子機器に関しては小隊で最も頼りになる存在になっていた…対してエレドアはソナーの扱いや聴音技術はコジマ大隊でもトップクラスの耳を持っていたのだが整備となるとお粗末で、ほとんどミケル一人がこなしていたのである。
 今もネットワークを繋げるケーブルや電子機器は、チャンドラ軍曹とミケルの2人で作り上げたらしかった。
「う〜〜〜ん……最悪一機をパーツ用にバラさないといけないかもしれないな。
 AAのネットワークに繋げる方はどうだ?」
「物理的に線と線を繋げるまではチャンドラ軍曹と僕とでやりました。
 現在コンピュータのデータをやり取りするソフト的なプログラムを試しています。
 コマンドを受け取ってそれをもう一方のマシンに判る言語で返してデータをやり取りできるプログラムの方を今ヤマト少尉にやってもらってますが…通信プロトコルだけでも人力で入力するには時間が掛かりますからね元々盗聴防止の為にある物ですし、こちらのデータを提供するにしてもコンピュータが繋がらないと話になりませんよね」
「ミケルさん、終わりましたよ。
 試験を開始したいんですが何か判り易い……」
 キラはそう言いながら指揮車から出てきたが、何故かシローを見るとビクリとしたように反応して姿勢を正す。
 これは相当嫌われているなとシローは苦笑しつつ、キラに話しかけた。
「ご苦労、ヤマト少尉……行けそうか?」
「はい、まぁ…データを見れる所まで行きましたが全てが正しく見れるかどうかはまだ。
 …それにしてもあなたの世界のコンピュータはこちらに比べて随分劣っているように見えるんですけど?
 艦内のネットワークとのノイズも多いですし基盤の密度も随分荒い…これでよく核反応炉やMSを制御できますね!?」
「……ああ、そうか、こっちの世界にはミノフスキー粒子(以後時々M粒子と省略)が無いんだったな」
「ミノ…フスキー粒子?」
「俺達の世界がロボットで殴りあう世界になった原因さ。
 ヤマト少尉、この世界でMSは何で人型なんだ?」
「えっ…それは…」
 元々偶然と成り行きでストライクに乗ったのだ、その開発過程や背景を知る葦も無い。
 しかしシローに判らないとは言いたくないキラは、明らかに狼狽していた。
「ザフトのジンが人型だからよ。
 ジンに対抗する為にストライクもまた人型をしているの」
 シローとミケルは現れたマリューに向き直って背筋を伸ばして直立してさっと敬礼し、キラは助かったとばかりシローの視界外でため息をつく。
 シローとミケルの軍人らしい態度に幾分気を良くしたのか、マリューは技術仕官としての技術章も伊達ではないと言わんばかりに滑らかに話を続けた。
「木星往還船“ツィオルコフスキー”に搭載されていた外骨格で動力付きの宇宙作業服が“モビルスーツ”と呼ばれていて、それが発展・武装化したものがザフトのMSよ」
『隊長…木星往還船“ツィオルコフスキー”って記録映像にあったジュピトリス級と同じ形の船ですよね』
『ああ、アレは驚いたよな……同じ木星を往復する船が偶然同じ形って、目的が同じなら似る物なんだな』
「宇宙作業服に推進器つけて装甲つけて武装つけて収まらないからサイズが大きくなって…で今の形に。
 だから特に意味は無く…感覚的に判り易いとか、手があると物を掴み易いとか、脚があれば宇宙から船内やコロニーに入っても歩けるとか、それら総合的に汎用性があるって括ってるけど後付けの理由らしいわ。
 ただ、プラントは人口も機材も少ないから一台で何でも出来ちゃう方がありがたいし、彼らには高性能な汎用機械があればそれで何でもできちゃう能力があるからあながち専門機械があった方がいい…とは言い切れないのよ」
「はぁ…確かに兵器にわざわざ高価で壊れそう部分の多いマニュピレータとかおかしいですよね。
 …規模の小さな工場では専用の単一機能の機械を大量に揃えられないから、高性能な汎用機械を腕のいい職人が使って仕事をこなしている…って感じですか?」
「そういう事ね…こちらではそんな理由なんだけど?」
「こっちも余り変わりません、最初にMSを戦力化したジオンと言う陣営が人型作業機械と偽って戦力を整える為とか、AMBACに肢体がいるとか、見るものに与える視覚的影響力とか、新しい時代を切り開くには明らかな新兵器が必要だとか…ともかく人型兵器を運用し始めてしまったんです。
 おかげでこちらの世界ではいくつか人型でなければならなくなった理由が出来てしまいました。
 その一つがM粒子で…こいつが高濃度で散布されると原理はさておき、その空間では電磁波や赤外線や一部の可視光線が伝わらなくなるんです。
 ジオンがM粒子下での戦闘を前提に戦力差を覆す戦略を取ったおかげで戦場ではレーダーやセンサーが使えなくなり有視界戦闘が必要になって…そのM粒子下での戦闘に特化した兵器としてジオンが選んだのがMSという人型兵器だったんですよ。
 そしてそのMSと言う兵器には核ジェネレータが搭載されていて…対抗すべき我々その兵器を“優しく”破壊する為に、同じ人型兵器を選択せざるを得なかったんです。
 そしてM粒子が高濃度で散布された空間と言うのはEMP兵器と同じように電子機器に障害が出ます。
 十分シールドさえすれば使えるでしょうがそれでは兵器としてのコストやバランスを欠くので、結局電子機器を一世代前段階に戻してその中で比較的高性能なコンピュータを搭載する事になりまして…これならコンピュータの容積は大きくなりますがシールドもそれなりで済みます…M粒子と言う存在のおかげで核ジェネレータを手に入れたけど手放した物も多いんです。
 だからCEのコンピュータに技術に比べてUCのMSや兵器関連の技術は前世代的なんですよ」
「……大昔の冷戦と呼ばれた時代で核兵器運用前提時の戦闘機が真空管で動いていたのと似てますよね」
「ああ、そういえばそんな時代もあったって聞くわね…」
「ストライクは粒子コンピュータと聞くが…M粒子下では動きそうも無いな、粒子自体が流れなくなる」
「へぇ……だからなんですか。
 こっちじゃMSのコンピュータと言えどもGUIはあたりまえですがUCのはプロンプトみたな物いですし」
「余計な所にまでマシンパワー使えないからな…まぁ兵器として動くなら文句は無いよ」
「でもそれじゃ戦闘中にOSを直すとか出来ませんね」
「普通パイロットにはそんな技術は無いぞ、戦闘中にMSのOSを修正する事自体ありえない事だと思うんだが……どっちにしろこっちじゃMSのOSだのパラメータだのは完成された物だからいじる必要は無いんだ。
 ストライクのOSが兵器としては完成してないのさ」
「未完成で悪かったわね、ストライクはバリバリの試作機ですから」
「いえ…そういう意味では…試作機であそこまで出来る時点でこちらの技術力も凄いと思いますよ、こっちにはオートバランサーとか操縦伝達機能系は十分なデータ蓄積がありましたから。
 それにMSを稼動させられるバッテリーなんて、こっちじゃ考えられませんし」
「必要は発明の母ってね、核ジェネレータ搭載のそっちじゃ考え付かないだろうけど…羨ましいわ」
「まぁ戦闘中に限ってはほぼ無限の発電能力がありますから。
 …それじゃこっちのMSも有線で電力供給にしたらどうですかね?」
 シローの思いつき発言にミケルがまた始まったとばかりに呆れ、キラも眉をひそめる。
「隊長、紐付きじゃ戦闘中に機体や障害物に絡まっちゃいますよ」
「そうですよ……空間機動やジャンプが難しくなりますし、なによりそんな動きに耐えられるケーブルやコネクターってあると思うんですか?」
「……なるほど、面白いわねそれ……」
 冗談だよとシローが笑い飛ばそうとした瞬間思わぬ所から発言が飛び出した。
「有線だから機動戦はできないから……都市防衛とか基地防衛用?
 むしろ外部給電用の電源ケーブルの隠し場所を各場所に用意して〜長さが足りなくなったら切り離して近くのケーブルを繋げるようにすればどの位置からでも供給可能になるかな…」
「いや…あの…ラミアス艦長?」
 マリューはヨタ話に喰い付きまんざらでもないと取り出した電子端末にアイディアを嬉々として書き込んでいる。
「電力の供給が多ければアグニとかレールガンも撃ち放題、だったらいっそ砲門数増やして安定性を上げるのに六脚とか…うん、行けるかも…」
「と…ところでヤマト少尉は現地志願兵と聞きましたが、MS操縦に彼のプログラミング能力が必要だったんですか?」
 なにかマッドエンジニアな雰囲気を周囲に放ち始めたかけたマリューにシローは強引に話題を捻じ曲げた。
「誰に聞いたんです!?」
 マリューのかもし出す雰囲気は換えたいと思いつつそれが自分の事だとちょっと嫌なキラは露骨に不快な感情を表に出しつつ鋭角な雰囲気を滲ませる。
 シローは何故こんな質問でキラがそんな雰囲気を纏うか理解できなかったが話は続けた。
「記録映像を見た時に説明してくれた年少兵達がそう言ってた…ヤマト少尉がMSに乗って護ってくれたとな。
 名前は…えぇと……」
「トールとかミリアリアとか言ってましたよ」
「ああ、それだ…衝撃的映像を見てすっかり欠落してたよ」
「そうですか…」
「ヤマト少尉にしかストライクは操縦できないのよ…ヤマト少尉はこの艦唯一のコーディネイターだからね」
「コーディネイターと言うと…生まれる前に遺伝子操作を施した人間の事でしたよね隊長?」
「確かそうだったな、遺伝子操作を施していないナチュラルより知能や身体的能力が優れてるとか」
「ええそう、ザフトのMSはコーディネイターの能力で動かしている点が多くて…今の所MSはまだナチュラルが使いこなせるに至ってないのよ」
 マリューが話している最中も目を背けるキラを横目で見ていたシローはようやくキラがそんな雰囲気を醸し出す理由に察しが着いてきた。
 この世界では確か宇宙のプラントに移り住んだ大部分のコーディネイターと遺伝子を操作していないナチュラルに分かれて戦争していた筈だ。
 であるならコーディネイターと言うだけでナチュラルの中にいるのはいろいろと不快な事があったに違いない…だからヤマト少尉はその辺に触わられたく無いと邪険な気を発するのだろう。
 しかし…それでもあの年少兵達はヤマト少尉を友達と言っていた。
 遺伝子操作の有無で人種が違うとかで対立し戦争している世界ではあるが、そんな中でも友情が存在する事にシローは異世界にやってきて始めて心温まる思いがしたのであった。

「なぜコーディネイターしか操縦できないんでしょうか?」
「主にバランスとかの機体制御系ね。
 ザフトのMSはその辺はパイロットがその辺をやりくりしてるみたいなの…詳しくはあなた方が鹵獲したバクゥとかを解析してみるけど…ともかく初期の頃に手に入れたMSの残骸にはその辺のソフトが見当たらなくてそうなんじゃないかと言われているの。
 そこでその辺が参考に出来なくて一から作ったんだけどまだそこが完成してないのよ。
 MSが完成していざそこを開発…と言う時にストライクを除いて強奪、仕方なく戦う為に起動したのはいいけど危険だからと一緒にコクピットに入れた少年がOSに手を出してね、そのまま現地徴用扱いなのよ」
「はぁ、そんな経緯があったんですか」
「じゃぁオートバランサー関係はまだ未完成だと?」
「いえ、ハードは性能のいい物が出来てるんだけど…ソフトが、ね」
「ああ…なるほど」
「何がなるほどなんです?
 性能のいいオートバランサーがあれば誰だって動かせるんじゃないんですか?」
「ヤマト少尉、君ならちょっと考えれば分かる筈だ…歩くという事はバランスを崩すって事だぞ」
「……あ、そうか」
「そ〜ゆ〜事、動かないでいいならザフトのMSに遅れを取るような事は無いわ!
 ……そんなMS役に立たないだろうけどね。
 歩く為の重心位置の変更とその為のバランス制御、脚を下ろした場所の状況とそれに対する重心の位置取り、移動速度による重心位置の変更の制御、上半身を動かした時の重心制御に武器を使うために歩行中に腕を動かした時の制御は? 歩くだけじゃなくて走ったり跳んだりしたら?
 重心だけちょっと考えただけでもこれだけ考える事があるのに…データの蓄積も解析も出来てないの。
 地面の状態とかをパラメータにしてその時の機体制御とかのデータも不足。
 ザフトMSはそこをパイロットが全部制御しちゃってるから参考にも出来なくて0から作るしかないんだけど…ヤマト少尉のおかげで目処が立ちそうよ、データも遂次溜めて行けるしね。
 少尉が書き換えたOSが―それでもナチュラルには使えないけど―言うなればβ版ぐらいかしら」
「その辺はこちらのデータを参考にすればかなり進むと思いますよ」
「そうね、実際に使われているデータだからそのまま流用出来そうだし…リンクできてデータを吸い上げれたらヨロシクね、ヤマト少尉」
「あ…ハイ」
『艦長、降下ポイントに達しました。 ブリッジにお越しください』
「あらもう着いた見たい、みんなそれじゃ頑張ってね」
「「ハッ!」」
「…………」
 再び敬礼で見送るシローとミケル、キラはとくになにもせずに見送る。
 そんな姿にシローは何か言おうと口を開きかけたが止めた。
「じゃぁ隊長、作業に戻ります」
「ああ、これが出来るかどうかで俺達の未来が決まる…頼んだぞ」
「任せといてください!」

 指揮車の中に入ってUC製のコンピュータとCE製のノートパソコンがミケルとチャンドラの作った怪しげなケーブルで接続されている前にそれぞれ2人は座る。
「階層構造のここの部分…そのDATAフォルダにあるのは全て簡単な文章ファイルだから何か開いてみて…」
「…これでどうです?」
「見えた!!
 最初から最後まで…うん、問題はなさそうだな、やった、繋がった!」
「転送にちょっとラグというか時間が掛かりますね…もうちょっと改良が必要かな」
「ヤマト少尉、そのファイルをそっちの形式で保存出来るかどうか試して…うん、できた!
 じゃぁ2つ上の階層のimageフォルダの画像ファイルはどうです?」

「えと…あ、ちょっとダメですね、今直します…」
「画像のファイル形式はこの一つしかないからこれが出来れば全て…」
「終わりました、ん…これですか?」
「よし、これで画像もOKだ!」
「あの……ところでこの画像って……」
「ああ、こっちの世界の衛星軌道からの……オーストラリア大陸の写真」
「この湾みたいなのは…」
「これがコロニーの落着痕さ…こっちではシドニー湾って呼んでる。
 直径6km、長さ30kmの人工物が四散しながらとは言え地球に落ちると…こうなるって言う証明書。
 この写真の海、いくつか筋が見えますよね…これは津波。
 写真が撮られた上空からも見える津波って言えばどれぐらいの高さか…これだけの巨大なクレーターが出来る衝撃で出来た津波は1kmにもなったとか。
 コロニー落下はは地球の自転を早め、この時発生した津波は地球を2週半して海岸の都市は壊滅状態…10億人ぐらいが死んだらしいって…」
「…こっちの世界もエイプリール・クライシスでそれぐらい犠牲者が出ました…戦争って嫌ですよね…」
「まぁこっちじゃその前の宇宙のコロニーへの核や毒ガス攻撃で40億以上は死んでるから…」
「えっ…それじゃぁ合せて50億人以上!?」
「開戦一週間で総人口の半分が犠牲になったろうってようやく集計できた所だよ、気象異常はまだ続くだろうし戦争はまだ続いてるし確認が取れてないから犠牲者はもっと増えるかも…。
 こっちの世界じゃまだコロニー落しとか地形が変わる程の被害は無いんだよね?」
「月で大規模な戦闘とかクレーター一つ無くなるとかの被害はあったって聞きましたけど…」
「地球に宇宙からはっきり見えるような戦争の傷跡はまだ無いんでしょ?
 この世界の戦争がこのまま地球も無事に終わればいいけどねェ…」
「……………」

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