Top > 08MS-SEED_96_第05話2
HTML convert time to 0.007 sec.


08MS-SEED_96_第05話2

Last-modified: 2013-12-23 (月) 19:56:06

 数分後、MSを格納して訓練中だったパイロット達と、艦長であるマリューとナタルが今AAに居ないのでノイマンが集合していた。
 集まった全員の顔を見回してマリューは口を開く…疲れたような顔をしているのは昨日の宴会のせいではなく、副官であるナタルがいないときに起こった事に一人で対処しなければならない気苦労の方が大きいようだ。
「サイーブから連絡があったわ…数時間前からタッシルにMSと歩兵部隊が現れたって。MSはこれ…写真のプリントを有線の画像転送で送ってきたらしいンで不鮮明だけど…」
「…デュエルとバスター…に見えるねこりゃ…やっこさん達も地球に降りていたのか」
「デュエルとバスターっていうと資料にあったストライクと同時に作られたって言う…」
「そう、私達が“ヘリオポリス”で盗まれた、ネ!」
 粗末なOAペーパーに印刷されたその写真を集まった面子で回し、ムゥが肩をすくめながらデュエルとバスターだとほぼ断定してシローがその身元を確認するとマリューは苛立ちげに立ち上がって腕を組んだ。
「そこで集まってもらったのは……デュエルとバスターを奪還しようと思うの!」
「えぇっ!?」
「でえきるんですか、そんなこと?」
「大丈夫、私達には八小隊がいるじゃない! バクゥを鹵獲した腕を見込んでここは一つ……」
 まるで自分の事のように胸を張って答えるマリューだったが…対照的にシローはすまなそうに手を上げながら答えた。
「……あの、多分無理です」
「どうして!? あなた方は異世界に転送して事情も判らない中で鹵獲したンじゃない!」
「あれは…幸運がいくつも重なりました。
 第一に我々の存在を知られていなかった事、第二にその為に敵への行動が奇襲になった事、第三に目標が人型MSじゃなかった事。
 存在を知られていない奇襲だからこそ敵を網に入れることが出来たんです、用意周到に罠を張るのならまだしも次にやれと言われてできる自身はありません…キャプテン・ジョーも同じ手が二度通じると思うなと言ってます。
 それに動物型MS(?)だったおかげで人型MSより速度が速く、ネットガンを避わせなかったと言うのが一番大きい…ヤマト少尉に奇襲とは言えネットガンを撃って捕獲できると思います?」
「……避わすか…絡まったとしても自分で外すかネットを切るワね……」
「そうなんです、我々もMA捕獲の為に持ち込んだのですから…」
「そう簡単に都合よく行かないってね……それによしんば捕獲できたとしてどうやって持って帰るつもりなの?」
「え?」
 キャプテン・ジョーって誰?と思いつつシローの説明に肩を落とすマリューは、ムゥの質問に顔を上げた。
「バクゥの時はAAで行ったけど…目標はタッシルだぜ?
 MSの他に歩兵部隊が居るって事は…まず間違いなくAAを探しているって事だろ。
 まだAAは動かせない…確かそうだったよな」
「ええ、思いもよらず大気圏内の長旅をしなきゃいけないから…その準備にネ。
 空気中から水を取り出す設備とか、野外の水や海水を真水にろ過するプラントとか、それに食糧の備蓄も足りないしMSの消耗品や長旅に必要な装備等々…この一週間でようやくそれらを手に入れる目処が付いた所だから、今敵に目を付けられるのは…」
「でしょ、そこにデュエルとバスターを捕獲しても…敵の歩兵部隊の目の前で回収しに行っちゃバレバレ、トレーラーとかで運んだとしても位置をたどられれば速バレ。
 例え二機を取り返せても、その後俺達が危ないんじゃ元も子もないよね」
「そう…ね……」
 マリューが更にガッカリと肩を落とす…マリューは元々艦長職では無くMS運用に携わる副官になる予定であり、そのMSが奪われた上に敵に運用されているのはそれだけでストレスの元なのだろう…さすがに気の毒になったシローが声を掛ける。
「まぁお約束は出来ませんが…今回は無理としても、今後捕獲できそうであれば試してみますよ。 この世界のMSはバッテリー駆動ですから駆動時間は我々の陸戦Gの方が上回ります」
「……ありがと、そうね…又チャンスはあるワね……」
「で、タッシルの方はどーすんの?」
「バジルール中尉達は心配だけど…基本的には何もしないワ、理由はフラガ少佐…貴方が言った通り。
 中尉ならヘマはしないから大丈夫と思うけど…じゃぁこれで会議は終了、みんな任務に……」
 マリューとしてはどうやってデュエルとバスターを捕獲するかの会議であり、それができない以上タッシルには何もしないと言うのが決定しているので解散を命じようとした…その時。
 艦内通信機にコールがあり、マリューが出るとモニターにはブリッジにいるトノムラ軍曹が現れた。
『艦長、よろしいですか?』
「どうしたのトノムラ軍曹?」
『それが…レジスタンスのリーダーのサイーブ氏が艦長に至急お会いしたいと…』
「タッシルで何か動きが?」
『そのようです…どうします?』
「判った、至急ブリーフィングルームに連れて来て」

 ――その少し前、タッシル――
「おい、お前ら!」
「…は、何か?」
 所変って同じタッシル、郊外にある倉庫街。
 ナタルが指揮する降下カプセル回収部隊は事態の急変に関わらず、当初の予定通り倉庫に回収した荷物を収める作業をしていた。
 デュエルとバスターと共にザフトの兵士が数十人街に入ってきたが…その人数ではタッシルを占領するには少な過ぎ、また自分らを捕らえに来るにしては人の集まる所などで聞き込みをしている――部下の中でも濃い顔の男を行かせて調べさせた――ようで、どうやらAAの行方は探しているが自分達を直接探しに来ているのではないと判った。
 それであればむしろ何もしないほうが怪しまれるのではないかと作業を進めていたのだが…そこに6名程の武装したザフトの兵士が現れる。
「見たところ地元の者ではないな…人種が違うし、何より日に焼けてない…さては連合か!?」
「可能性は高いな…全員拘束だ、本体に連絡して人を寄こさせろ!」
「確かに我々はここの土地の物ではありませんが、怪しい者でもありません!
 我々はただのジャンク屋で最近トルコ方面から流れて来て…」
「トルコから来てそんな白い肌のまま居れるって言うのか、貴様コーディネイトされてる訳でもあるまいし! 全員作業を止めて壁際に並べ、抵抗する奴は射殺する!」
「まっ、まってください!
 我々は本当にジャンク屋なんです、それに…(ゴゴゴゴゴゴ)…女性であれば美白は必須スキルです!」
 部下が後ろで『バジルール姉さん(中尉)も美白してるんだ…』的な突き刺さる呟きを聞きつつ、ナタルは何とか誤魔化そうと必死で頭を回転させた。
 その為かなり必死な表情になったのだが…コーディネイターの兵士には『美白は必須スキル』の辺りでナタルが激怒しているように見えたらしく明らかに気圧されて居た…似たような事で過去の男女関係に問題があったのかもしれない。
 それに乗じるようにナタルは自分らがどういう状況でここに流れてきたのか…ヨーロッパ方面でそれなりの規模のジャンク屋家業をしていたが戦闘に巻き込まれて全てを失い、戦火を避けつつトルコ方面に下ったが戦闘が無い場所ではそもそもジャンクを回収する事が出来ないので借金の末逃亡…アフリカに渡ってビクトリア港をザフトが陥落させたと聞いてそのジャンクを当て込んで物資輸送の仕事をしつつここまで来るに至ったとの経緯をたたみ掛けるように話した。
 この身の上話は昨晩マリューがジャンク屋に偽装するとなった時のバックボーンだと酒宴の席で語って聞かせたのであるが、記憶力のいいナタルは酒で具合を悪くしながらもなんとか覚えていたらしい。
 ヒステリックになった――半分は演技だが――女性の相手は例えコーディネイトされた身であっても嫌なのであろう…他の兵士は他のナタルの部下を拘束する素振りをして密かにそこから距離を置いた。

 ただ一人孤立無援でナタルの口撃を受けていたコーディネイターの兵士はもう逃げ出したかったものの、かなり怪しげな集団に対し任務を遂行しない訳には行かない…どうした物かとナタルの話を聞き流しつつ、頭を巡らせて一つの考えを実行する事にした。
「あぁ…判った判った、じゃぁあれだ、ジャンク屋と言うならジャンク屋手帳を見せてみろ」
「えっ!?」
「普通なら車や艦船にジャンク屋マークが付いているからジャンク屋と判るんだが…お前の話じゃレンタルなんだろ?
 だったらジャンク屋と身分証明できる物を見せてもらわないと……それなら文句無かろう?」
 ナタルの勢いが止まったのでニヤリとしながらコーディネイターの兵士は銃を構える…持ってないなら速拘束だとその銃口は物語っていた。
 ちなみにもちろん“ジャンク屋手帳”などと言う物は存在しない――少なくともそんな物をコーディネイターの兵士は知らない――ナタル達がジャンク屋ではないと睨んでカマをかけただけだ。
 本物のジャンク屋ならそんな物はないと答えるだろうし、もし仮にそんな物があったとしたら提示する…言
い淀んだり、無いと断言できない場合は偽者なのだ…すなわち数秒以内に何かしらアクションが無い場合はこ
の戦い、ナタルの負けになるのだ。
 ナタルの視線に丁度この場を離れていたチャンドラ軍曹が建物の影で背中からハンドガンを取り出すのが見
えたが…何もするなと素早くアイコンタクトで伝え、ナタルは大きく息を吸った。
「……ジャンク屋手帳は……」
「手帳は!?」
「これでいいか?」
 突然両者の横から声が掛けられ、驚いた2人が同時にそちらを振り向くと…そこには何かパスポート程度の
大きさの手帳を開いているキサカと、その後ろに居て――キサカが後ろ手で押えているらしい――コーディネ
イターの兵士を鋭く睨んでいるカガリが居た。
「“ジャンク屋手帳”と言うのは一部の通称だ…実際はジャンク屋として経済活動を行った時の控えや身分証
明みたいな物で、手帳大のジャンク屋マークと顔写真と名前を貼り付けた物であれば時に規定は無い。
 …ジャンク屋ギルド自体特に組織立った物ではないしな」
 そんな物が存在するとは知らなかったコーディネイターの兵士はそれをじっくりと見るが…元々本物を知ら
ない以上偽者かも判る筈が無い。
「……まぁいいだろう。
 しかしお前らの荷物は一応検分させてもらうぞ…お前らは関係なくても物が連合に流れる可能性は……」
 その瞬間、遠くで何かが爆発するようなくぐもった音が連続して起こった。
 その場に居た全員がその方向を振り返ると砂丘の上の方に居た筈の2機のMSがその場におらず、時々何か
の光と共に爆発音が聞えてきた。
「何が…」
「なに!? ……よし判った、急行する! お前ら、検分は後にするからここにいろ!」
 ナタルが何事かとキサカを見るがキサカは首を振る…そしてコーディネイターの兵士達は装着していたレシーバー
から何か通信があったのか、全員駆け足で元来た方向に戻って行った…事情がさっぱり判らない彼らを残して。
「……とりあえず、助かりました……」
「…街に来るならこの程度の偽装はしておくんだな」
「あれは偽物なんですか!?」
「少なくとも俺はジャンク屋ではないからな」
 ナタルはキサカに礼を言うが、キサカは恐らく戦闘が起こっているだろう方向を見たまま答える。
「キサカ…今のっ!」
 砂丘の向こう側に恐らく戦闘が移動してしまって居るのだが…その砂丘の片隅をレジスタンスでよく使われるハーフトラックが疾走し、搭載されていたミサイルを発射していたのが見えた。
「…レジスタンスが攻撃しているようですね…」
「何か通信手段はないのですか?
 こちらの無線機では出力が足りずノイズが酷くてAAと連絡が取れないのですが…」
「こっちに来い、AAは無理でもレジスタンスの本部となら通信できる」
「高出力の無線機があるんですか?」
「いや、レジスタンスの本部には電話が引いてある。 AAにはそこから言付けてもらえ」

「すまネェ、マリュー艦長!」
「どうしたって言うのサイーブ? とにかく座って、説明して」
 兵科の一人に案内されてブリーフィングルーム入って来たサイーブは、入って来るなり頭を下げる。
 AAの前に現れた時の唯我独尊で荒々しいイメージとはかけ離れた行為に一同は驚き…特に前日の酒宴ですっかり意気投合したマリューが何事が起こったのかと慌てて話を進めた。
「実は…タッシルに今MSと歩兵が居るのは知ってるな」
「ええ、そちらからの情報よ…まさか何か起こったって言うの?」
「奴らが街を攻撃でも!?」
「そうじゃねぇ……うちの若い奴らが暴走しちまって…タッシルのMSを倒すって出撃したらしいんだ」
「え…じゃぁ…レジスタンスの一部がタッシルに…!?」
「そうだ、残ってる車両から数えれば十台前後…若いのを中心に三十人ぐらいが勝手に出ちまいやがった。
 アフメドの奴め……一体どういうつもりで……!!」
「ハーフトラックに乗った歩兵携帯兵器でG兵器を……無茶だ!」
「今タッシルにいるMSはG兵器…ストライクと同系列のMSでPS装甲を持っている…デュエルとバスター
にも…通常の実弾兵器は通用しないのよ……」
 ムゥが若いレジスタンスの無謀さを指摘し、マリューがその理由を説明する。
 それは即ち…出撃したレジスタンスには全滅が待っていると言う事に他ならないのだ。
 その上レジスタンスが攻撃したことでタッシルや彼らレジスタンスにどんな報復があるか判った物ではない…それはしばし行方を眩ましたままにしておきたいAAにとっても面白い事ではない。
「詫びを入れて収まるもんじゃないって事は判っているが……すまない……」
 サイーブは謝るしかしない…その先の言葉はさすがに言えないでいる。
 マリューもムゥも暴走した若いレジスタンスを助けに行くとは、そのデメリットの多さを考えると言えないで居た…彼らには暴走した30人近くの若いレジスタンスより優先すべき事があるのだ。
「助けに行きましょう!」
 重く沈黙するブリーフィングルームで席から立ち上がって声を上げたのは…キラだった。
「三十人もの人達を見捨てる訳にはいかないじゃないですか!」
「ヤマト少尉、彼らを助けに行く事のデメリットは判っているのか?
 レジスタンスとAAが協力状態にある事を敵に知らせ、タッシルやその他の街にも報復行動を引き起こす引き金となりかねない上に、AAの位置を知られる危険性があるんだぞ?」
 助けに行こうと声を上げるキラに、それまで黙っていたシローが静かに尋ねる。
「判っています…でも人の命には代えられませんよ!
 それに…僕達がこれまで隠れ果せられた時点でレジスタンスと協力しているのは知られているでしょうし、彼らが攻撃した時点でレジスタンスは報復行動を受ける可能性があるじゃないですか!
 可能性が同じなら彼らを助けましょう!
 昼間の降下カプセルの護衛の時にエールストライクの滑空プログラムを組んで見ました…今から出撃してもタッシルへならエールストライクなら十数分で着けます!」
「…サイーブさん、彼らを率いて行ったのはアフメドと言いましたよね」
「ああ、そうだ……」
「ヤマト少尉…アフメドと言う若者は昨日、君を最初に殴った男だぞ」
「…え…?」
「それでも助けに行くと言うのか? 敵はデュエルとバスター…強敵なんだろ?」
 キラの脳裏に昨晩フラフラになった所を殴ってきたアフメドが思い出される…コーディネイターの癖に何故ここにいると殴りかかってきたアフメドを…。
 キラは拳を握り締めて目を瞑り…そして自分の心に問いかける、自分をコーディネイターと罵って殴ってきた相手を、味方を…自分を危険に合わせてまで助けるべきなのかと……答えは、すぐに出た。
「それでも…それでもです!
 僕は兵士です…自分と、仲間と、戦友の為に戦うと決めました。
 レジスタンスの人達にはいろいろお世話になってます…だったら仲間です、助けなきゃ!」

 マリューはキラの変化に驚き、ムゥはも驚きとキラの言い切りの良さにピューっと口笛を吹いた。
 カレンとミケルはまた馬鹿が増えたとばかりに呆れ…シローはニヤリと笑みを漏らした。
「ラミアス艦長、ヤマト少尉の言う通り若いレジスタンスが攻撃を始めてしまえば同じ事です…ここは人命を優先しましょう」
「……まぁ、それも仕方ないわネ。
 ヤマト少尉がそういうのであればこっちも腹を括りましょう!」
「すまんマリュー艦長…そしてみなさん」
「こっちも隠れ家を提供してもらい食料や水を支援してもらってその上酒宴までやってもらってるからね…これぐらいはサービスしなきゃネ!
 さてそれじゃどうするか…こっちはストライクと陸戦G三機にスカイグラスパーが二機…」
「マリュー艦長、今回は陸戦Gは戦力として数えないでください」
「え、何故!?」
「ヤマト少尉のエールストライク滑空プログラムが本当なら…陸戦Gは付いて行けません。
 そしてそれで行かなければもう時間が無いなら、陸戦Gは切り捨ててエールストライクとスカイグラスパー二機で行くべきです」
「それじゃGAT二機に対抗するのは難しくない?」
「どっちにしろAAの直援に何機か残さなければならないんですし、ようは戦い方ですよ。
 今回の目的を暴走した若いレジスタンスの救出に絞ればこの戦力で十分いけると思います」
「なるほど…ストライクとスカイグラスパーで牽制しつつデュエルとバスターをタッシルから引き離す。
 その間にレジスタンスの若い連中を逃がすと……れれならなんとか行けそうだな……どう、艦長?」
「それしかないわね……サイーブ、タッシルに貴方の部下は居るの?
 こちらの部隊が着くかその前にレジスタンスに引くように伝えるか、説得させないと…」
「むしろそっちの方が難しいでしょうね。
 MSが居る戦場に入り込んで暴走した若者を撤退するように説得する…」
 カレンの指摘にAAの連中は等しく顔をしかめる…キラを殴りつけた血の気の多いあのアフメドを戦闘中に逃げろと説得するのだ、素直に聞くのであればレジスタンスは今回何もするなと伝えたサイーブを無視して攻撃に出たりはしまい。
「大丈夫だ、そっちは宛がある……一緒になって戦ってなきゃの話だがな。
 今タッシルにはキサカと…カガリが居る、カガリの言う事ならアフメドは聞くだろう」

「整備は済んでいる…頼みましたぜ、ヤマト少尉!」
「任せてくださいマードック班長!」
 パイロットスーツに着替えたキラはストライクのコクピットに駆け込むと、OSを起動させつつチェック・リストを開始した。
 いつものように“General Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuver”の文字が流れる…キラはこれの頭文字を繋げて“GUNDAM”と読んでいるが、アマダ少尉達の世界ではMSの名前自体が“GUNDAM”と呼ぶらしい。
 異世界同士での奇妙な符合に少し笑みを漏らしつつ、それでもこの後来るであろう厳しい任務に向けてキラは顔を引き締めた。
「キラ、ストライク発進お願いします!」
「え…えぇっ、フレイ!? ミリィはどうしたの?」
「なによ、私だってオペレーターの訓練を受けてるんですからね! 出るの、出ないの!?」
「りっ…了解!」
「APU、起動!」
 いつもの通信モニターに現れたのはミリアリアではなく、不機嫌げに眉に皺を寄せたフレイであった。
 驚くキラを見て更に不機嫌になるフレイはそれでも訓練通りストライクを発艦させるシークエンスを進める。
 メンテベッドに固定されたままストライクはMSデッキからリニアカタパルトへ移動し、カタパルトに両足を接続する。
「カタパルト、接続!」
 メンテベッドの両肩のロックが外れ、メンテベッドはキャットウォークを開放して後方のMSデッキへと後
退して行く…ゆりかごに乗せた我が子を開放するように。
「ストライカーパックはエールを装着です!」
 MSデッキにメンテベッドが戻り扉が閉じた所で天井からエールストライカーパックが降りてきて、軽い衝撃と共に接続された。

 そしてストライクの右側のハッチが開いてビームライフルが、左側のハッチが開いてシールドが現れ、ビームライフルはストライクが自動で右手に持ち、左手のラッチにシールドがマウントされた。
「…システム、オールグリーン!」
 フレイが下のモニターにさっと目を通し、問題が無い事を確かめるとキラに叱り付けるように叫ぶ。
 その度に何かビビるキラではあるが…フレイのキツイ態度は、フレイが始めてオペレーターの任務をこなす為に緊張しているんだと気が付いて通信用モニタを見ながらふっと笑みを漏らす。
「……なによ」
「いや、別に」
「ふんだ!
 進路クリア、ストライク発進しなさい!!
 ……無事に帰ってこないと承知しないんだから……っ」
 フレイは大声で命令口調で発進しろと叫び、その後小声で小さく言葉を紡いだ。
「了解!!
 キラ=ヤマト! ストライクガンダム、行きまーーす!」
 AAのシグナルが
『ABORT:BRAKES』(赤文字:中断/黄文字:制動)
『ABORT:THROTTLE』(赤文字:中断/黄文字:スロットル)
『ABORT:CATAPULT』(赤文字:中断/黄文字:カタパルト)
 から
『ABORT:CLEAR』(中断/白抜き:安全)
『ABORT:CLEAR』(中断/白抜き:安全)
『ABORT:CLEAR』(中断/白抜き:安全)
 となり
『LAUNCH:CLEAR』(緑文字:発進/安全)
『LAUNCH:CLEAR』(緑文字:発進/安全)
『LAUNCH:CLEAR』(緑文字:発進/安全)
 に変わった所で発艦の準備は整った。
 キラはストライクを発進に備えて前傾姿勢にすると、カタパルトにロックされた足元から火花を散らしながらリニアカタパルトを加速をつけて前進し、一杯に伸びた電源ケーブルが切り離され足元の加速板から離れてもなお両側のリニアレールで加速を付け、両側で鈍く光るオレンジ色のリニアレールが無くなった所でキラはスロットを開け、エールストライクを大空に向けて加速させた。

「フラガ少佐、発進お願いします。
 ミケルとキラを頼んだよ、少佐!」
 同じく反対側ではスカイグラスパーが発艦しようとしていた…こっちのオペレーターはキキだ。
 片側のカタパルトのオペレーターをフレイが勤めるので、もう片方をキキが勤めている…未だ初心者である
2人は半分づつがいいだろうと割り振られたのだ。
「あいよ、まかせといて!
 ムゥ=ラ=フラガ、スカイグラスパー出るぜ!」
 立てられた噴煙避けのバリアーを熱し、ムゥの乗るランチャー・スカイグラスパーも雲1つ無い砂漠の蒼空に飛び立った。

「気を付けて行けよ、ミケル」
「落ち着いていけ、お前なら出来る!」
「はいっ、任せてください!」
 サンダース軍曹とカレンの励ましに多少緊張しているGスーツを着たミケルが答える。
「…そういえば隊長は?」
「さァ…ブリッジにでも居るんじゃ……」
「おーい、ミケル待ってくれ!」

「隊長……なんですその格好は?」
「もちろん、俺も出る」
「「「えぇっ!?」」」
「まだこいつに慣れてないミケルでは全ての武器を使いこなせないと聞いたからな。
 スカイグラスパーは副座だからな、俺は後ろでガンナーをやる」
「隊長……大丈夫なんですか?」
「俺も航宙機の訓練は受けているし…ストライク以外の連合が開発したMSと言うのを見ておきたい」
「まぁ、別にいいんですけど…気を付けて下さいよ」
「ミケル、プレッシャーが増えたな。
 お前がヘマしたら、隊長ごとおじゃんだ」
「ひぃ〜〜〜っ、脅かさないでくださいよ〜〜〜〜っ!!」
「大丈夫だ、俺はミケルの腕を信じる。
 それに飛行に集中した方が大丈夫だろう」
「まぁそれはそうですが……」
「今回の作戦はレジスタンスを逃がすのが優先だ、牽制が主だから大丈夫だ。
 それよりカレン、サンダース、後は任せたぞ」
「了解!」
「了解! 二人共ご無事で」
「ああ、俺達はこんな所で殺られる訳には行かないからな。
 よし、行くぞミケル!」
「了解です、隊長!」
 こうしてスカイグラスパー2号機もカタパルトデッキへ進む…ミケルのスカイグラスパーにはストライカーパックは装備されていない。
 初出撃であるミケルにはバランスや空力特性が変化するストライカーパックの装着は、残ったストライカーパックがソードストライクしか無く使い所が難しいのもあり見送られた。
「ミケル、発進お願いします。
 しっかりやれよ、ビビるんじゃないよ!」
「はいはい、任せておけって」
「大丈夫だ、俺も付いている」
「シロー!? あんたも出るのかい?」
「ああ、俺も敵のMSを見ておきたいからな…オペレーターしっかりやれよ」
「任しときなって!」
「ミケル=ニノリッチ」
「シロー=アマダ」
「「スカイグラスパー、出ます!」」

】【戻る】【