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109◆NEO―GETTER―DESTINY_第02話

Last-modified: 2007-12-02 (日) 17:39:03

第二話「怒れる瞳」



「全く・・・・・とんだ騒ぎだなこれは・・・」

「仕方ないでしょう。このような大規模な式典は随分久しぶりの事です。気合が入っているのでしょう。」

「そんな事は解ってはいるが・・・な。」

喧騒。L4プラント、「アーモリーワン」の軍事工廠は兵士、MS、作業用車両と様々な人と機械でごった返していた。それもそうだろう。ここ「アーモリーワン」軍事工廠ではZAFT新型機種、“セカンドステージシリーズ”や新鋭戦艦“ミネルバ”のお披露目を含めた大規模な軍事式典が行われるのだ。プラント本国からも遠く離れたL4くんだりまで評議会高官を含めた多くのプラント市民も来訪してきている。気合も入るはずだ。

「ここまで混雑していればさすがに辟易してくる・・・・」

そんな喧騒の中に二人の男がいた。一人はスーツ姿にサングラスをかけた、黒髪の東洋系の男。もう1人はZAFTエリートの証である“赤服”に身を包んだ金髪碧眼の青年。

どちらもかなりの美形だが、どちらともどことなく他者に対し冷たい印象を与える雰囲気を纏っていた。

「“あれ”の準備はもう出来ているんだったな?」

「ええ、すでに“ミネルバ”に内密に運び込んで有ります。」

黒髪の男が尋ねると、金髪の男はそれに答えて言う。

「グラディス艦長以下数名以外は新型の支援戦闘機だと聞かされているそうです。」

「ふっ・・・・なるほど。確かに素人目にはそうとしか見えまい。」

“あれ”はモノがモノだけに公表ぎりぎりまで徹底的に機密として扱われねばなるまい。この式典での“あれ”の存在の公表は世界にかなりの衝撃を与えるだろうことは明らかだ。ZAFTの“脅威の技術力”を世界に示す事となるはずだ。


「シンは・・・自由行動だったか?」

「はい。久しぶりの休暇だといって張り切っていました。」

「だろうな。まあせいぜい骨を休めておけばいいだろう。帰ってくればまた・・」

「“地獄”・・・・ですか?」

「ふっ・・・・まあな・・・・」

そう二人が話し合っている時だった。

「レイーっ!」

二人に、正確には金髪の赤服の男が何者かに呼びかけられる。どうやら女のようだ。

二人が振り向いた先には、こちらに近づく一台のバギーがいた。バギーの上には二つの人影があり、一人は赤い髪に一本はねた髪(俗に言うアホ毛)が特徴的な、“レイ”と呼ばれた青年と同じ“赤服”の少女。もう一人はオレンジ色のメッシュが前髪に入っている整備服の少年だ。バギーですぐ側まで近づいてきた二人は金髪の青年――――レイ=ザ=バレルという―――――の隣にいた黒髪の男に気づくと急に畏まった様子を見せる。


「あ・・・あ・・・ジン、ジン長官でありますか?自分は・・・」

「ルナマリア=ホーク・・・・隣のはヴィーノ=デュプレだったな。」

「は、はい!覚えていただいていて光栄であります!」

「あります!」

赤髪の少女――ルナマリア=ホーク――も、メッシュの少年――ヴィーノ=デュプレ――もともにガチガチだ。どうやらこの「ジン」という黒髪の男がそうとう恐ろしいらしい。




「・・・・・レイ。私はここで別れる。お前は先にミネルバへ向かえ。」

「ジン長官、どちらに・・・・・?」

「議長に用がある。もうそろそろ到着するはずだ。・・・・ではな・・・・」

そういい残すと、男は喧騒の中に消えていった。

「・・・・・・ふぅーーーう・・ビックリした!こんな所にあの人がいるなんて思わなかった!」

「全くだよ・・・・・しかしレイ・・・お前良くあの人と二人っきりでいられるなぁ。」

男がいなくなって急に緊張を解いて肩をほぐすルナマリアとヴィーノ。

「別にどうといったことは無いが・・・・」

「あーあ!やっぱり“飛び級”のエリートは違うわね。あたし、あの人なんか苦手なのよね・・・妙に重苦しいと言うか・・威圧感があると言うか・・・・」

「わかるわかる!なんかあの人の前にいるだけできちっとしてないとあの爪の長い手でズタズタにされそうで・・・・あー!想像しただけで怖くなってきた。」

「“NISAR”だったっけ?あの人そこの長官なんでしょ。レイやシンもそこにいるんだったわよね?」

「ん・・・・・まあな・・・・」

「それにしても前々から気になってたけど“NISAR”っていったい何をやってる所何だよ?シンに聞いてもはぐらかされただけだし・・・もう一年だっけ、まだアカデミー生の特例でレイとシンが“NISAR”に引き抜かれてからさ。」


「悪いが・・・・守秘義務があってな・・・・・詳しくは話せん。」

「ふーん・・・まあそんな事だろうとは思ってたけど・・・でも、色々と噂は聞いてるわよ。」

ルナマリアが何か含む所があるかのように笑いながら言う。

「噂?」

「そう、噂!なんでも新技術を搭載したMSの開発してるって。」

「マジなの!どうなんだよレイ!それぐらいは教えてくれても・・・・」

「・・・・(なるほど、その程度の噂なら情報漏洩ではなさそうだ)」

ルナマリアの話を聞いてそう考えるレイ。なぜなら自分達がテストパイロットをしているのは“MSですらないのだから”。

「それはそうと、俺はもうすぐ行くぞ・・・・・」

話を切るようにして言うレイ。

「あーっ!はぐらかして・・・まあいいわ。いつかきっと聞き出してやるから・・」

「それよりもレイ、これから歩いてミネルバまで行くのかよ。いくらなんでも遠いだろ。乗ってく?」

そう言って自分達の乗ってきたバギーを親指で指すヴィーノ。

「できればそうしたいところだが・・・・いいのか?」

「いいのよ。どうせアタシ達の休憩時間で余裕はあるし、向かってた格納庫はミネルバに近いし・・・。」

尋ねるレイに気軽に答えるルナマリア。

「そうか・・・・では同乗させてもらおう。」

「はいどーぞ・・・・・それじゃしゅっぱーつ!」

「はいはい・・・・それじゃ行くよ!」

レイを乗せて、バギーはミネルバへと出発した。



「だが、強すぎる力は、また争いを呼ぶ!」

オーブ連合首長国代表カガリ=ユラ=アスハはそう叫んだ。だが、そんな彼女の懇親の叫びも・・・・

「いいえ、姫。争いがなくならぬから、力が必要なのです。」

この老練な政治家、ギルバート=デュランダルには軽くいなされるだけだった。

この二人の応対を聞きながら、アレックス=ディノは、いやアスラン=ザラは思わずため息をつきそうになる。

(やはり・・・・・違いすぎる・・・・・)

そう、違いすぎる。政治家としての“格”が。カガリの真っ直ぐな気性はアスランの好む所だし、そういう所にアスランは惚れた訳だが、カガリのこういう部分はあまりにも政治家に不向きだ。政治家とは清濁併せ呑むようでなくてはならないし、自分の感情を自由に制御できるようでなくてはならない。カガリの性格はこういったことにあまりにも向いていなかった。さきほどからもカガリの言葉は軽くいなされてばかりで、本来この秘密会談の目的「オーブから流失した技術、人的資源の軍事利用の停止」については遅々として進んでいなかった。


(だけど・・・・・・・)

所詮今は彼女のいちボディーガードに過ぎない自分には、陰ながら彼女を励ます事ぐらいしかできない。それがはがゆ・・・・

「おや・・・・?」

そんなアスランの思考を断ち切ったのはそんなデュランダルの声だった。アスランやカガリがデュランダルの視線の先を見ると、そこにはこちらに向かって歩いてくる一人の男がいた。ブランド物のスーツにトレンチコートを見事に着こなした、長身痩躯の男で、その顔はサングラスで覆われていた。


「議長・・・・どうやら取り込み中のようですね・・・・・」

「いや、君もこちらにきたまえ。」

遠慮して立ち去ろうとする男を議長は引きとめて、カガリの方に向き直る。

「姫、ご紹介しましょう。彼は・・・」

その時だった。突如響き渡る警報。

「なんだ・・・・・」

そう呟くカガリ。その時・・・・突如少し離れた所の格納庫の扉をまばゆい光が突き破った。



「くそったれ!」

全くもって“くそったれ”だ。今日は厄日なんだろうか、とシン=アスカは考える。

ひさびさにあの“鬼”から開放されて休暇を楽しもうかと思えば友人には“ラッキースケベ”とか言われるし・・・・そもそもぶつかってきた方はあっちの女の子方だったじゃないか。いや、確かに胸掴んだ自分も悪いと思うけど。でもあれは事故というやつで・・・それにしてもあの女の子は可愛かったなー。なんせ胸が・・・ゲフンゲフン。いけない。そんな事を今は考えている場合じゃない。ミネルバに戻った直後、私服から着替える間もなく鳴り出した警報。そして突然の召集。何が起こったか解らないが兎に角格納庫に急がないと。シンは格納庫への廊下をひたすら走る。


「マッドさん!一体何があったんですか!」

格納庫に駆け込んだシンはチーフメカニックのマッド=エイブズに尋ねる。

「おう!シン、来たのか!てっ、なんだその格好は!」

シンは私服のままだ。

「今はそんなことどうでもいいでしょ!とにかく状況を教えて下さい!」

「おお・・・俺もまだ良く解らんが“セカンドステージシリーズ”の新型機が誰かに奪われたらしい。」

「んなっ!なんでそんな・・・・」

「知るか!俺が聞きたいところだ!それより、“イーグル号”の準備は出来てるぞ!」

「ありがとうございます!ところで、ジンさんとレイは?」

よかった、“あれ”の整備は済んでいるらしい。しかし、後の二人のパイロットは到着しているのだろうか。

「いや、まだ着てない。連絡も上手く取れてねぇみたいだ!」

しかしマッドの返答は最悪に近いものだった。

「!くそ、こんな時に!・・・・・わかりました、マッドさん!俺一人で出ます!」

「お、おい・・・だけども“あれ”は・・・・・」

「背に腹は換えられません!自分ひとりで何とかして見せます!」

そう言うと、“イーグル号”のコックピットに乗り込んだ。



<ブリッジ!聞こえますか!こちら“イーグル号”シン=アスカ!発進許可を!>

「格納庫より通信!発進元は“イーグル号”!シン=アスカです!」

「シン!よかったちゃんと戻ってきてたようね。」

オペレーター、メイリン=ホークからの報告を聞いたミネルバ艦長、タリア=グラディスはそう言った。ブリッジのモニターの一つにシンの顔が映し出される。

「おい、シン!なんだその格好は・・・パイロットスーツに・・」

<今はそんなくだらないこといってる場合じゃないでしょう!早く発進許可を!>

モニターに映ったシンの私服姿を咎めるミネルバ副長、アーサー=トライン。それに言い返すシン。

「だが・・・・この状況下で支援戦闘機一機出したところで・・・」

<“イーグル号”は支援戦闘機じゃありません!とにかく今は早く出してください!時間がないんでしょう!>

「なっ、それはどういう・・・・・・。」

<それと、レイとジンさんはまだ来てないんでしたね!だったら“ジャガー号”と“ベアー号”を自動操縦で発進させて下さい!>

「なっ!シン!さっきから何を言って・・・・戦闘機を自動操縦で出したところで撃墜されるのが関の・・・」

「わかったわ・・・彼の言う通りにてあげて・・。」

「かっ、艦長ぅううう!」

シンの言っている事の意味が分からずやたら慌てまくるアーサーにタリアはそう言った。他のブリッジクルーも驚いたようにタリアに目をやる。

(全く・・・・やりにくいわね・・・・)

“イーグル”、“ジャガー”、“ベアー”。この三機の戦闘機の正体についてミネルバ艦内で知っているのは自分や、チーフメカニックのマッド=エイブズといった、僅かな人間だけだ。無論、議長直々の黙秘命令でもあり、議長がそこまでする訳をタリアはよく知っているのだが、このような非常事態ではやりにくくてしょうがない。


「かんちょうぅ!何を言ってるんですか!ちゃんと冷静に・・・・」

「冷静になるのは貴方よ、アーサー。とにかく今は彼の言う通りにしてあげなさい。」

「しかし・・・・・解りました。メイリン!」

「はい!“イーグル号”発進準備開始します!」

ブリッジに若い二人の声が響き渡った。



ゆっくりと“イーグル号”を乗せたリフトがカタパルトデッキへとせり上がる。それにあわせるように、前方のハッチの扉が開く。

<ハッチ開放、射出システムのエンゲージを確認。カタパルト推力正常。進路クリア!“イーグル号”発進準備よし!“ジャガー号”、“ベアー号”は自動操縦で連続射出!“イーグル号”発進してください!>


機内に響くメイリンの声。それに対しシン=アスカは叫ぶ!

「イーグル号!シン=アスカ!行きます!」

次の瞬間凄まじいGがシンの体にかかった。



「うぇえいいいいいいいいい!」

「くっ!」

「ぐっ、うわっ」

「大丈夫か!カガ・・・っくそ!」

くそっ!“これ”に乗って窮地を脱するつもりが、逆に窮地に陥ってしまうとは!アスラン=ザラは“ZGMF−1000 ザクウォーリアー”のコックピットの中でそう考える。


突然始まったMS戦から逃れるために、とっさに“ザク”に乗り込んだはいいが、それが“敵”の注意を引いてしまったらしい。黒い“ガンダム”タイプとの大立ち回りをする羽目になってしまった。とっさのショルダータックルで相手の射撃武器を封じたものの、


今度は接近戦闘である。ザクにはビームトマホークしか装備されてなかったから、それはそれで都合が良かったわけだが、いかに新型の量産機とはいえ性能の差はいかんともし難く、しかもカガリを乗せている上に、2年のブランクは大きかった。切りあいを初めてから、逃げ出す隙を見つけるどころか、徐々に押され始めている。しかも・・・・・


「!し、しまっ・・・!」

背後より緑色の“ガンダム”タイプが接近してくるのを許してしまっていた。とっさに回避しようとしたものの、間に合わずザクの左腕を持っていかれる。

(やられる!)

左腕を敵のビームサーベルに切り落とされた衝撃で、ザクは体勢を崩してしまっている。そんなザクに、緑色の機体より光刃の一撃が振り下ろ・・・されなかった。

「「!」」

突如緑の機体の背中で何かが爆発する。棒立ちになった緑色の機体の真横を、赤色の戦闘機が凄まじいスピードで通り過ぎた。いや、赤い戦闘機だけではない。赤い戦闘機を追うように白い戦闘機と黄色の戦闘機が飛んでくる。黒い機体も、緑の機体も、そしてアスラン達のザクも、カメラで三機の戦闘機を追う。


(助かった!)

どうやらあの赤い戦闘機がミサイルか何かを放ったのだろう。助けられたことを感謝すると同時に、アスランは軽い失望感も抱いていた。せめて戦闘機ではなくてMSが助けに入ってくれれば状況がより好転するものを・・・戦闘機では・・




(・・・・・!おい・・・・・ちょっと待て!)

戦闘機の様子がおかしい。空中で赤、白、黄色の順に一直線に縦に並んだかと思うと、急速に互いの距離を詰めているのだ。

(あのままじゃ・・・・激突して吹っ飛ぶぞ!)

そう思った矢先だった。三機の戦闘機が若干“変形”したかと思うと、三機が凄まじい勢いで激突したのだ。一瞬、空中で爆散する三機を幻視するアスラン。しかし・・・


「「っなああああああ!」」

その光景にアスランもカガリも叫ぶしかなかった。激突したと思った三機は突如変化をはじめ、瞬く間人のような形をとったのだ。その姿は・・・・・・・・

「MS!いや違う!」

「・・お、鬼!」

赤い二本の角を生やした巨人が人工の大地に降り立った。



「チェェエエエエエエエエンジ!ゲッタァァァァアアアアアアアア!ワン!」

体から噴出すような凄まじい裂帛とともにシンはレバーを起こす。それとともに、彼の乗る“イーグル号”のみならず、“ジャガー号”、“ベアー号”も同時に形状を変化させる。そして、三機は凄まじいスピードで“合体”した。手が伸びる。足が伸びる。そして頭部が飛び出て、二本の角が生える。




        “千の神の祈りも 正義の意味も知らず”



       “争いの歴史の中に 奴はわが身を映し出す”



  改めてコックピットの中から周囲を見渡す。立ち込める黒煙。立ち上る炎。



            “胸に募る 使命感は何だ!”



        “地獄のような炎の海に その理由を求め戦う”



      思い起こされるのはあの赤い風景。赤い炎、赤い小さな手。

              そしてあの青と白の死神



           「何でこんなこと・・・・・・・・」



  シン=アスカは叫ぶ。緑と黒の機体、“カオス”と“ガイア”へと向けて。

            胸に沸き起こる激しい衝動のままに



         「また戦争がしたいのか!あんた達は!」



         “怒れ竜の戦士よ 悪の野望叩き潰せ”

        

         “急げ若き勇者よ 闇祓い世界に光を”



           “Until the dying day”




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