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556 ◆GHLUSNM8/A氏_第七話

Last-modified: 2011-11-09 (水) 17:12:15
 

第七話 「第1村人発見だよ、アムロさん!」

 

ヘリオポリスには、何の問題もなく入港する事が出来た。
アムロ達の乗るザフト艦は民間船を徴用したもので、外面・内面、識別信号、
何をとっても完璧な送迎用シャトルであり、ザフトの痕跡は一切ない。
船内にはカラオケセットまであるほどだ。

 

「拍子抜けするほど、楽に入れましたね」
「これも君のお父上が英断を下したからだな、アスラン」
「10割、母のおかげですよ」

 

プラントと連合との間に戦端が開かれてから早1年弱、その間に様々な事が起きた。
中でも人類史に残る事件は『ヴァレンタインの悲劇』『エイプリル・フール・クラッシュ』だろう。
そして、パトリックの英断は後者に関係する。

 

NJ(ニュートロンジャマー)―――――――それは核分裂を抑制するという驚異の戦略兵器であり、
前線だけでではなく銃後も機能不全に陥れてしまう恐怖の国力減退兵器である。
これを地球全土に埋没させる計画こそ『オペレーション・ウロボロス』であった。
この計画を発動させようと躍起になったのもパトリックならば、
これを取りやめにしようと提案したのもパトリックだ。
アスランが語るには妻・レノアの存在が大きいらしいが、家族でどのような会話があったのかは、
アムロの知る所ではない。
というか、一国の重大な決断が家族会議で決まってしまうという事がアムロには怖ろしすぎたのだったが。
とにかく、NJはその効力範囲を大西洋連邦を始めとする連合主力国と
反コーディネイター国家にのみ限定して撃ち込まれた。
そのため、ザフトは中立国や反連合国家とは比較的良好な関係が築けているのだ。

 

「外に敵を見つけて連帯するというのは人の心理だが、もしウロボロスが発動されていれば、
 プラントはその敵になっていただろうな」
「ザフトが地球圏で兵站を維持できるのも、このオーブのような国家があるからですしね。
 今に思えば、全てのナチュラル共と一度に戦うのはあまりに無謀です」
「あのイザークが、言うようになったねぇ!」
「なんとでも言えディアッカ。敵の力と己の力、客観を持って分析した結果だ。
 それに、ナチュラルは我々より劣る存在だが、何も全滅させようという野蛮な思想は持たん」
「イザークが丸くなるなんて、こりゃ兄貴のおかげかね?」

 

アムロ達は談笑しながらシャトルから降り、空港内を歩いている。
その姿はどこから見ても軍人には見えない。
そこにいるのは気の良い青年と活発な5人の若者だった。

 

「さて、先方には今日中に挨拶だけでも済ませておかないとな」
「工業カレッジのカトー教授、でしたっけ?」
「ああ。それにしてもこのコロニー、移動手段は全て自動操縦か…?
 進んでいるというか、オートメーション化というか」
「ところ変われば品変わる、ですよ兄貴!とりあえず乗ってみましょう!」
「お、おいディアッカ。別に電車でも良いじゃないか。別にわざわざ無人の車に乗らなくたって………」
「ひゃっはー!動かし方がさっぱりだぜー!」

ディアッカは完全に浮かれていた。
オーブが科学先進国であるのもさることながら、純粋な戦闘任務ではない事も、彼に開放感を与えている。

 

「おい、イザークはわかるか?」
「わかるわけないだろ、初めてなんだから。こういう時には現地人に訊くのが一番だ………
 おい、そこの眼鏡!!」
「………え、もしかして僕?」
「たわけ、お前しかいないだろうが。そこのお前だよ、幸薄そうな眼鏡」
「しょ、初対面で失礼な奴だな!お前こそ変な髪形しやがって!」
「誰がちびまる子ちゃんだ!?」
「そこまでは言ってねぇよ!」
「………はぁ。落ち着けイザーク、今のは明らかにお前に非がある。少し黙って頭を冷やせ」
「アムロた…さん………。りょ…わかりました」

アムロがイザークと眼鏡の少年の間に割って入る。到着早々これかとアムロは頭を抱えた。
この赤服たちの保護者になってからというもの、彼と頭痛薬は常に一緒の名コンビとなっている。

 

「すまないね。僕はアムロ、さっきのはイザークだ。初めての土地だから、すこし緊張してるんだよ」
「い、いえ。大丈夫ですよ、気にしてませんから………………そのぉ…」
「どうしたんだい?」
「あの…アムロさんってお名前なんですね」
「あぁ………」

ザフトのエース、白い彗星。その名を知っていても、別におかしくは無かった。
ラクス・クラインの顔は知らずとも名は知っている、プラントの著名人とは外に出ればその程度なのだ。
逆にいえば、出回るのはせいぜい名前までである。

「僕の名前もすっかり有名になってしまったね。まったく、『彼』には困ったものだ。
 おかげで『僕』が『アムロ』と名乗ると嘘臭くなってしまう」
「それは…大変ですね」

眼鏡の少年は愛想笑いを浮かべる。
アムロの言葉を冗談として受け流したという事は、すなわち『ザフトの白い彗星』であるアムロと
目の前にいるアムロは別人だと少年が納得したという事である。
有名すぎる名前は、偽名を使うより確かに相手を騙せた。

 

「袖すりあうも多生の縁、と言うし、君の名前を教えてもらっても良いかな」
「ええ、教えてもらってばかりでは不公平ですから。僕の名前はサイ・アーガイルといいます」
「よろしく、アーガイル君。ところで、一つ聞きたい事があるんだが」
「なんですか?」
「さっきも言った通り、ここは初めてでね。車に乗りたいんだが………」
「ああ、ヘリオポリスの車は公共物ですからね。
 無料で乗れるし、乗り捨てれば自動的に待合所まで戻るんですよ」
「さすがは、オーブといった所だね。随分と社会福祉がしっかりしているようだ」

アムロは感心したように微笑むが、内心で少し呆れていた。
世界は明日をも知れぬ戦火にあるというのに、この国はそれをまったく無視しているのだ。
自分達には関係ないと、自分たちは大丈夫だと、思っているのだ。
これだけの無人車を走らせるのにいくらかかるのだろう。
国民の足腰を守る為に、国民の生命を危険にさらしている事にはならないのだろうか…。

「(連合にMSを作っておきながら、戦争には我関せず、といった感じだな)」
「どうしました?」
「いや、ちょっと考え事をね。………つまり僕達はこの車に乗るだけでいい、というわけか。
 ハンドルも付いているようだが…オーブの交通法は知らないからな、運転するわけにもいかない」
「行き先を教えてくれれば、僕がセットしますよ。音声認識だと時々バグが出るんで、タッチ式なんです」
「頼むアーガイル君。行き先は工業カレッジだ」
「ええっ、そうなんですか?奇遇だなぁ、ちょうど僕も向かう所だったんです」
「なら君は学生か。ちょうどいい、乗り合わせていかないかい?」
「はい、喜んで!」

 

こうしてアムロ達は二台に乗りわけて、カレッジへと向かう。
アムロ達はまだ知らない。これからガンダム奪取計画までの間、
サイ・アーガイルとその友人たちが自分たちとどんな関係になるのか――――――――――――――。

 
 

ヘリオポリス某所―――――――――

 

「あら、サイじゃない」
「フ、フレイ…!」

カレッジに向かう途中、サイがせっかくだからと寄ったアイスクリーム屋。
そこにいたのはサイの友人で見目麗しい赤毛の美少女、フレイ・アルスターだった。

「そっちは?見ない人たちだけど………」
「おい女、『そっち』だと?口のきき方に…!」
「止めるんだイザーク!………悪かったね、僕はアムロ。
 プラントから来て右往左往していた所を、アーガイル君に助けられたんだ」
「あ、ご丁寧にどうも…私はフレイ・アルスターです」
「イザークとは違って礼儀正しいね。随分と育ちのいいお嬢さんのようだ」

 

(アルスター?どこかで………ああ、たしか大西洋連合事務次官がそんな名前だったような…)

 

地球の要人の名は一応網羅しているアムロは、すぐにその名に思い当たった。
もしかしたら、これは非常に有益なパイプでは…。
いや、そんな偶然は無いだろう、と心の中でため息をついたアムロは、
こんな些細な事も戦略に関連付けてしまう自分に呆れていた。

 

(それに、本当にそんな高官の娘であったら軽々と自分の素性を明かしたり、
 ましてやこちらの思惑に乗ってくれるはずがない)

「あぁ、分かります?私のパパは事務次官なんですよ!」

口軽っ!!!

「あ、あはは。そうなんだ………」

 

アムロはなんとなく思った。
ここでの日々も波乱に満ちたものになるだろうな、と。

 
 

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