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556 ◆GHLUSNM8/A氏_第六話

Last-modified: 2011-09-19 (月) 23:38:49
 

第六話 「全員集合だよ、アムロさん!」

 

C.E.70年12月28日、アムロ隊旗艦ヴェサリウス――――――――

 

「アムロ隊長、はやくブリッジに行きましょうよ」
「そう急かすなよ、ミゲル。どうもあの椅子には慣れないんだ」
「んなこと言ってもしょうがないでしょう。ほら、久しぶりにアスラン達と会うんでしょ?」
「………そうだな」

 

アムロとミゲルはリフレッシュ・ルームで雑談をしていた。
ザフトと連合の間で戦争が始まってから、すでに10ヵ月以上経過している。
その間、アムロは最前線で輝かしい戦歴を残す事になったが、
アスラン達は彼の配慮で後方に配置されていた。
そして今日、ついにアムロ隊は全員揃う。

 

「隊長の教え子とあっちゃ、俺もあいつらに先輩風吹かせられないな」

廊下を歩きながらミゲルが呟く。

「実戦経験はミゲルの方があるだろう。それに君はエースじゃないか」
「冗談じゃないですよ。『ザフトの白い彗星』の子弟なんかと比べられちゃ、情けなくて泣けてくる。
 隊長、あなたは世界樹攻防戦で戦艦6隻を沈めた化物なんですよ」
「その呼ばれ方は気に喰わないんだけどな。それに相手にMSがあったら、ああは行かないさ」

アムロとミゲルはこの戦いで最も付き合いが長い。
二人は互いを信頼していて、アムロ隊のMS部隊はこの二人を中心に固い結束で結ばれていた。

 

扉が開くと、そこには懐かしい顔が並んでいた。
「みんな、久しぶりだな」
「兄貴もお変わりなく!」
「武勇伝はお聞きしていますよ、アムロ隊長」
「僕も聞きました。戦場でアムロ隊長と一緒に戦った人は握手を求められてましたよ」
「自分もアムロ隊長の下で戦える事を夢見ておりました!」
アムロはその中に見慣れない顔を見かけると、微笑を浮かべたまま声をかける。
「君がラスティか。僕はアムロ、こっちがミゲルだ。アスラン達とは知り合いだと聞いているが」
「は、はい!ラスティ・マッケンジーです。ザフトの英雄にお会いできて光栄です!」
「僕はそんな大した男じゃない、だから肩の力を抜いてくれたら助かる。
 それに、これから僕達には特務が待っているんだ。今から緊張してもらっては困る」

 

曰く、『白のアムロ』 『白い彗星』 『エスパー』 『アムロの後ろに立つな』
アムロにまつわる噂はザフト内でも数知れず、その存在は連合の中では恐怖と憎悪の象徴、
ザフトの代名詞とまでになっていた。
まさに生ける伝説。初対面で緊張しない方がどうかしているのだ。
直立不動のままブリッジを浮遊するラスティの初々しさにアムロとミゲルは笑いを禁じ得ない。
「おいおい、どこまで飛んでいくつもりだよ?」
「は!?っとと、すいません!………あれ?そういえば、今『特務』って聞こえた気が………」
ラスティという青年は、どうやら非常にコミカルな性格らしい。
そんな彼をアムロが穏やかな視線で見つめているので、ミゲルがアムロの代わりに話す。

「そういや、アスラン達にはまだ言ってなかったな。俺達アムロ隊は、評議会直々に特殊任務を拝命した」
「どういうことだ、ミゲル?」
「口のきき方は変わっちゃいねぇな、イザーク。まぁいいさそんな事は。
 これは最高機密なんだが、どうやら連合のナチュラルどもが生意気にもMSを開発したらしい」

イザークを含むアムロ隊に配属されたばかりの五名は言葉を失う。
それはザフトの絶対的有利を覆す事実であり、コーディネイターに圧倒的に劣るはずのナチュラルが
今やすぐ足もとに迫っている事を告げるものだった。

 
 
 

三週間前・パトリックの執務室―――――――――――――――――――

 

「アムロか、入れ」
「アムロ隊のアムロです。この度はどういったご用件でしょうか?」
部屋の中には国防の長たるパトリックをはじめ、ザフトの最高幹部達が集まっていた。
その顔には怒りと、それを覆う不安が透けて見える。

「連合内部の内通者から、この戦争の行く先を左右する重大な資料が送られてきた」

唐突に話し始めるパトリック。内通者の存在すらアムロは知らなかったが、
ここで話の腰を折るわけにもいかずただ話に耳を傾ける。

「これはザフト、ひいてはプラントの脅威だ。悪夢に近いかもしれん。
 ナチュラル風情が、MSを開発するなどな!!………とにかく、これが送られてきた資料だ。
 忌々しい事に、これは我らのMSを圧倒的に凌駕する」

連合もようやくMSを………。アムロはさして驚かなかった。
諜報活動が空しくなるほど、戦場には技術が氾濫するのだ。
MS技術だっていつまでも秘匿できるわけがない。
かつて連邦がMSを開発したのと同じだ。

 

………連邦?ジオン?なにかのテレビアニメだろうか。
アムロは頭に浮かんだ不可思議な単語に首をかしげながらも、パトリックから資料を受け取る。
「なっ………!?」

 

その時アムロに電流走る。
書類にはMSの大まかな性能や装備、開発目的などの情報と共に、何枚かの写真が添付されていた。
そこに写されていたMSはなんと―――――――――――――――

 

「ガン、ダム………」
「なんだそれは?」
「い、いえ。このMSを見て、なんとなくそのような名称かと………妄言です。気になさりませんよう」
「いやお前はMSの第一人者でもある。このガンダムとやら、失われた記憶に関係するのだろう。
 それにGとしか呼ばれぬのでは闇を助長してしまう。名を与える事で少しでも恐怖が和らぐのなら、
 今後これをガンダムと呼称しよう」
「国防委員長がそうおっしゃるなら」

アムロは再び写真に目を落とした。懐かしさを覚えるととともに、そんな自分を不安に思う。
写真に写る六体のMSは彼の記憶の根幹に深く関係しているようだ。

 

「それにしても、この資料を送った奴は喰えんな」
「内通者、でありましたか?」
「正直に言えば、内通者ではない。誰かも知れんのだ。
 大西洋の者か、モルゲンレーテか…他の地球国家か。送りつけておいて、名前しか教えんとは」
「しかしこれ程の機密ならば、それなりの地位でなければ手に入らないと思います」
「思い当たる地球の高官の名前と照らし合わせても、該当しなかった。恐らく偽名だろう」
「なんという名なんです?」
「自ら連合、ザフト、オーブのどれでもない第四を名乗るとは、随分と意味深な名前だ。
 それは―――――――――――――――――」

 
 
 

場面は再びヴェサリウスに戻る。

 

「俺達の任務はな、そのMS…『ガンダム』とやらを奪う事だ」
「MSの奪取………その為に僕達は」
「そうだ」
アスランの問いに答えたのはアムロだ。
ガンダムという響きにいまだ困惑しているのか、自然に声色は固くなる。

 

「その六機を奪うために、オーブのコロニー・ヘリオポリスへ潜入する。
 先遣隊は僕、アスラン、イザーク、ディアッカ、二コル、ラスティだ。
 工業系の大学へ学生交換として行くことになる」
「兄貴が学生って、さすがに無理あるぜ」
「茶化すなよ。僕は名目上、講師という事になっている。それなら大丈夫だろう?」
「ははっ、確かにそれならオーケーです。で、結構はいつに?」
「MSが運び込まれる期日の詳細が分からない以上、早い方がいいだろう。
 明日には出発、早ければ明後日には入港になる」

 

では、出発まで各自待機。とアムロは言い残しその場を去ろうとする。
それぞれ久しぶりの再会に話も弾んでいるようだが、その話から一人だけ抜け出してきた。

「アムロさん!」
「どうした、ニコル?」
「いえ、ただ感謝したいんです。僕をまた、アムロさんの部隊によんでいただいたこと」
「君の戦いぶりは報告を受けているからな。仲間を守るため、随分と無茶もしたみたいじゃないか」
「あの平手打ちは、効きましたから」

ニコルは無邪気に笑う。アムロもそれに応える様に優しげな微笑みを浮かべた。
しかし、ニコルの表情はすぐに真剣なそれに戻る。

「では改めて。アムロ隊長、一つ気になったのですが」
「なんだ?」
「情報提供者の名前、なんていうんです?」
「ああ、そのことか………。確かに気になるだろうな」

アムロは少し目を細めて、どこか遠くを見るような眼で言った。それはまるで、何かを懐かしむように。

 

「クワトロ・バジーナというらしい」