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A.G.160(仮)

Last-modified: 2014-03-07 (金) 22:48:37

A.G.160
地球連邦軍とヴェイガンの戦いは激化し、パワーバランスの逆転を押し切れなかった連邦軍は
技術開発部に多額の予算を投じて多くの新戦力の開発に没頭していた
その結果いくつかある研究チームの一つが、ヴェイガンのステルス技術に対抗できる索敵システムの完成に近づいていた

 

連邦軍総司令部ビッグ・リングの会議室に多くの将校が出席し
この装置の開発チームの長である女性「テレーゼ」がパネルに移した図を用いて説明している

 

「今までレーダーや熱源探知でも発見は不可能でしたが、この光波システムなら理論上発見が可能です
 探索距離の問題から多少数は必要ですが、実戦で投入できれば防衛力の飛躍的な向上を見込めます
 既に試験機は完成していますし、幸い実験の場所には事欠かないでしょう」

 

将校達がヒソヒソ話す中、テレーゼはそれを見渡しながら説明を続ける
一通り説明し終わると、小話がざわつきになりそこかしこから疑問の声があがる
しかし1番奥の席に座っていた男が立ち上がると一気に静まり返り全員が注目した

 

「話は大体わかった、投じた資金に見合う物が得られそうで安心したよ
 試験のために必要な物は責任者のターナム大佐を通して報告してくれ
 申し訳ないが予定が詰まっているので、私はこれで失礼させてもらうよ」

 

「御足労頂きありがとうございました、ゴッツ副司令」

 

副司令が挨拶して会議室を出てから、数分で他の将校も次々に立ち去って行った

 

会議が終わって少ししてから、ビッグリングの一室にテレーゼと彼女の部下何人かが集まった
彼女たちは高そうな椅子に座るスキンヘッドの男、この部屋の主の前に立っている
視線を少し落とせば机には「ロイ・ターナム大佐」と長細いネームプレートが置いてある
彼は大変上機嫌な顔をして葉巻の吸い口をガリガリ削っている

 

「今回のプレゼンは最高の出来だったな、んん?これで全員司令部に名前を覚えられるぞ」
「そんなことより、実験配備の場所決まったんですか?」
「…そうだな輸送部隊の護衛艦に同乗してもらう予定だが
 まだ人員の選定が終わってないんだ、少ない予算のプロジェクトだし慎重にやらんと」

 

自分の話に興味を示さないテレーゼを見上げてため息をつく
優秀な部下だが人当たりの悪さは以前からで、いつ自分の上官の機嫌を損ねるのかは彼の悩みの種だった
今も後ろの部下は満足そうな顔をしているのに、彼女は気をつけしたまま目も合わせようとしない

 

「一応言っておくが戦闘が行われることは前提だ、じゃなきゃ装置の実験にはならんしな」
「そうですか、落とされてもデータは可能な限り送ります」
「まぁ今のとこ人員選考を通ってるのは全員実績のある奴らだ
 そう簡単に死ぬことも無いだろうけど一応な、一応」
「お気遣い感謝します。特にお話が無いならまだ作業が残ってますのでこれで」

 

声を掛ける間もなくテレーゼは回れ右して部屋を出て行った
ターナムは勧めようと思っていた手元の葉巻を思い出し、残った研究者たちを見まわす

 

「何してんだ……お前らも早く行け!…まったく」

 

短時間のうちに不機嫌になったターナムはその場に居た者を追い出し、葉巻に火を付ける
イライラしてたせいか煙が喉を通ってしまい咽返すと、いよいよ顔を真っ赤にして葉巻を床に叩き付けた

 

テレーゼ達がビッグリングで上級将校達に研究成果の発表を行っている頃
地球のあるところで連邦への武力蜂起が起こっていた
武力蜂起とは言っても主犯のグループが持ち出したのは型落ちもいいとこのワークローダーで
ガラス張りのコクピットの機体がどこから調達したのかビームライフルを持っている
彼らは居住区にある公営の市民ホールに立て籠もり、その周囲にワークローダーを立たせてしきりに反連邦を煽っていた

 

「は〜あぁ、これいつになったら終わるんだよ」
『コクピットで居眠りなんかしたら歩兵部隊に行かされんぞ、詰まんなくてもしっかり見張っとけ』
「だって見ろよアレ、自然崇拝の宗教家が重機持ち出して『我々は力には屈しない』だってよ
 そもそも矛盾してるし負けんのわかってんなら一々面倒な事させんなっつの」

 

盛り上がっている現場から離れたところで、アデルが4機並んでいる
パイロット達の中で一人やる気のなさそうにしている「ランド」が望遠で現地を覗く
視線を変えるとサイドモニターでは足元の様子が映り込み、士官と地元警察が急造テントの周りを走りっている
鎮圧部隊が陣取ったのは町の有名な公園で、大きな樹がいくつも立っている
MSが小隊分居てもサッカーができそうな場所だが、少し進めば居住区に住宅が立ち並んでいる

 

「あんなの一々作戦立てなくてもなんとかなんだろ」
『一応民間人なんだぜ?それに警察もあらかた配置は終わってるようだし、もうすぐ出番だろ』
『お喋りはそこまでだ、内部に潜入した捜査官から指導者一味の中にヴェイガンの疑いありだそうだ
 テロリストなのか革命家なのか知らんが気取った自然満喫クラブの奴らと一緒にとっ捕まえてやれ』
「了解、じゃあ自分が、1番機ランドが先行するから他は遅れるなよ」

 

盾を構えて散開するように進むアデル、時代が進んで新型のMk2の配備も徐々に進んでいるが、ここではまだ現役である
足元の町を壊さないように歩いて進むと、反乱グループの半分くらいは銃を持った巨人にビクついて逃げて行った
ワークローダーの持つライフルの銃口がこちらに向けられ、どちらが先に引き鉄を引くかジリジリと歩み寄っていく

 

格闘もできそうな距離まで近づくと、ワークローダーのマニピュレータがトリガーを引き
発射されたビームはランド機の盾に当たって弾かれる
2発目を撃たせる前にランドは素早く盾をライフルに押し付ける
至近距離で盾にぶつかったビームが銃口を裂いて銃身を爆発させる

 

「民生品の豆鉄砲がぁ!直撃でも怖かねぇや!」

 

ライフルの爆発で両手がひしゃげた機体が尻餅をついた所に、さらにランドは正面から蹴りを入れる
ドッズライフルをコクピットに向けるとマイクを切り替えてスピーカーに出力する

 

『降りろオラ!余計なマネしたら愛機の風通しよくしてやるからな!』

 

慌てて飛び出した中年の男が走って逃げようとするが、どこからかぞろぞろ出てきた警察に取り押さえられる
周囲を見渡すと味方のアデルも順々に重機を片付け、重装備の機動隊がホールに突入を開始していた
一息ついていると、突入した部隊の警察無線が入りこむ

 

『ホールの2階席に敵多数!上を取られてる!』

 

ランドはすぐにホールの近くまで行くと、内部の見取り図を画面で何度も確認する
シールドを外した手で壁面に触れて大体のポイントを予測すると、思い切り振りかぶって壁を殴り抜く
内部では突然MSの腕が突っ込んで来た衝撃と、その瓦礫で敵が混乱しているのが少しだけ見える
腕を入れたまま体勢を変えると丁度スピーチ等で立つ舞台とその真ん中に人が立っていた
映像を拡大するとその男は何かのスイッチを押してから突入した部隊に射殺された
すると残ったホールの2階部分が爆発し天井が崩れ落ちる

 

「自爆した?……片田舎で過激派かぁ、時代遅れなやり方だ」
『助けてくれ!こいつ武器を隠し持ってやがった!』

 

味方からの通信に慌てて街を見渡すと、味方のアデルがビームサーベルで盾ごと頭を切られていた
よく見ると相手のワークローダーの1機だけ「MSの腕」を持ってその手のひらから出るサーベルを振っていた
ランドは破損した味方に更に「腕」を振り上げる敵機に素早く照準を合わせて発砲した

 

テロ行為への対策本部として急ぎ足で建てられたテント
少し前まで見下ろしていた場所でランドは地元基地の司令に呼び出されていた

 

「ランド曹長、頼んでいた物はいつごろ届くかな?」
「既に手元にはありますから今からでも、追加の注文ですか?なんでも外から持ってきますよ」
「さすが元特殊部隊だ、そんな曹長に頼みごとがある」

 

司令は手元の書類をランドに手渡し、辺りを見回す
周辺では今でも後片付けに追われる警察や兵が駆けまわっている

 

「思いっきり秘匿情報って判が押されてますけど、ここでいいんですか?、自分はいいですけど…」
「混雑してる上に皆せわしなく動いてるしな、私のオフィスなんかよりよっぽど安全だ」

 

途端に怪しく見えてきた封筒を開けると、何枚か書類が出てくる
どれも旧式のタイプライターで打たれたようなもので、さらに総司令部の直筆署名が書かれている
おそらく限られた枚数のみ発行されたものだろうことは見て分かった

 

「新兵器の実戦テスト部隊へ推薦ですか……自分は前線が嫌になったからここに来たんですけど」
「分かっちゃいるんだがな、今回の一件どうしても曹長の力が必要なんだ」

 

司令の言い方から計画への参加が本当の目的でないことを悟るランド
ため息を吐いて書類を封筒に戻し司令に返す、もう大体話の察しは付いていた

 

「で、自分は何をすればいいんですか?正直あまり気は進みませんけど」
「君に頼んでいた酒があるだろう、実はもう君に決定しているたんだがキッカケが必要でな」
「俺が軍規違反したっていう体で送り込もうってわけですか…」
「あとさっきの無許可の発砲だね、あれは威嚇用だって話聞いてなかっただろ」

 

既に決まっていたような話に露骨に嫌な顔がでるランド
しかしそこまで話が進んでいるならやらないといけないと無理やり納得する

 

「それで、地球で起こってる事件の犯人が宇宙にいるんですか?」
「疑わしいものは目星をつけてある、それは追々話すとして、無事に戻ったら好きなとこに異動させてやる」
「本当ですか?……良いことを聞きました是非参加させてください」

 

ランドが掌を返したように参加を志願したのは、達成した見返りに前線嫌いの彼が求めた物が見えたからだった

 

事件から数日経ったある日、ランドが所属する基地に戦艦が移送されてきた
ディーバ級7番艦「ルードウィヒ」、緑と白のカラーリングは片田舎の基地には似つかない
そして基地にはランドへの辞令が張り出され兵たちの間で噂になっていた

 

「おいランド!ホントに行くのか?お前あんなに『もう前線は行きたくない』って言ってたのに」
「仕方ない、基地に酒持ち込んだのバレたんだとよ」
「あれは司令も頼んでただろ」
「上から査察がもうすぐ来るらしいからな、部下の為にウソつくリスク考えたら
 そりゃ隠すより全部押し付けて左遷させた方が早いだろうよ、上は一兵卒の話なんて取り合わないしな」

 

大きなバッグを背中と片手で持って格納庫に向かうランドに、仲間が何人も寄ってきた
一応実験は秘密の作戦で、表向きは新造戦艦の初航行で物資の移送任務であり
ヴェイガンに襲撃される可能性は高いと、多くの者が認識している

 

「まだこの前助けてもらった時の礼もしてないのに残念だな」
「あんなもん恩の内に入らねぇよ、お前も達者でやれよ」
「帰ってきたら一杯奢るよ!」
「帰ってきたら、な」

 

さっさと歩を進め、背を向けたまま仲間に手を振る
格納庫ではルードウィヒの点検と補給が行われ、作業員は少数だった
タラップから中に入り艦内地図を見て自分の部屋を探していると誰かに声を掛けられる

 

「こんな田舎に寄ってまで拾う奴ってのはお前か…」
「田舎ったって、ここからのコースが1番狙われずに上がれるとこだって知らないの?そいでお前誰よ?」
「本部まで同行することになった連邦中央情報局の者だ」
「あぁそう……でしたか、どうぞよろしくお願いします」

 

ランドは露骨に怒りを買わない内に退散するのが吉と見て、エレベーターまで駆けていった
自分の部屋を見つけて中に荷物を放り投げると、大きく深呼吸して作戦への緊張とその後の報酬に高揚した

 
 

 
 

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