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Ace-Seed_∞_第01話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 02:08:05

編者勝手に注釈。「デス種はエースコンバットに似て」スレに投下された短編である。
◆xzwaKglpEo氏の他にも書いている職人さんが居る。


ん、アイツについて……だって?
これまたきつい事聞くなアンタ。
俺がアイツのおかげで酷い目に遭わされた事を知ってて言ってるのか?
まぁ、良いか。話してやるよ、と言っても俺がアイツと遭ったのはたった2回しかないんだが。
そうだな……。

アイツとの一度目の遭遇のはアイツが初めて姿を現した月面のグリマルディ戦線だった。
当時のZAFTはNJの影響下ってのもあって破竹の進撃でな。
俺自身も二桁いくくらいの敵を落としてエースって呼ばれてた。
今思えば失笑物で、当時の俺はただ他よりほんの少し腕が良かったってだけなのに頭に乗ってた訳だ。
だからかもしれないな。アイツと真っ先にぶち当たる羽目になったのは。
その時の俺は、最前線でルーチンワークのように小回りの効かない連合のMSを撃ち落していた。
そんな時だったよ、ヤツが来たのは。

《レーダーに反応……なんだ1機か》

最初は何時も通りのお客さんだと思ってた。

《おい。何時ものメビウスじゃねぇ……速いぞ!?》

だが違ったんだ。

《樽野郎か! だが単機で突っ込んで来るなんてな!》

アイツは死神だったんだ。俺たちに死を運ぶ、な。

アイツが乗っていた機体は有線端末機ガンバレルを搭載したメビウスゼロ。
俺たちの間ではそれなりにはやるが所詮ナチュラルの機体って評価でガンバレルの形状から樽野郎なんて言われてた。
当時の俺は自信過剰の坊主だったから、ソイツを見ても所詮ナチュラルなんだ、俺が撃ち落してやるよって感じでさ。
76mm重突撃機銃を乱射しながらヤツ目がけて突っ込んだんだよ。
だが当たらない。当たらないんだ。まるで柳か風のようにアイツは銃弾をかわすんだよ。
そのうち……俺はどんどんソイツが恐ろしく見えてきた。
その気持ちに負けてアイツ目がけてフルスロットルで突っ込んで、そして交錯した。
その時はチャンスだと思った。メビウスはMA……航宙機だからな。
交錯した後、方向転換するのにはMSより時間がかかる。後ろから狙われたらアイツだって……って思ったんだな。
そして俺は振り向いて撃って……しかしそこには何もいなかった。
一瞬、何が起こったのかわからなかったよ。
だが次の瞬間には上から喰らった銃弾の衝撃で俺は嫌でも思い知らされたんだ。
アイツが俺の後ろじゃなくて上を取ってたって事で。
当時俺と同じ現場に居たヤツはもう全員居ないから推測でしかないが……
多分メビウスゼロのガンバレル、アレのスラスターを使ってより高速でインメルマルターンしたんだと思う。
無茶な話だよ。地球より重力が弱い月とは言えあんな機動をすればパイロットにかかるGは相当な物だろうに。
咄嗟にコクピットの辺りをカバー出来たのは僥倖だったのか、それともアイツがあえて狙わなかったからか。
どっちにしろ俺は月面とキスしてお寝んねする羽目になった訳だ。
暗くなっていく視界の中で最後の見えたのはヤツが次々と俺の仲間を墜としていく姿と、
ヤツのガンバレルの一部に描かれたエンブレム。
そう、メビウスの輪のように捻じくれたリボンだけだった。

次に気が付いた時には全力で逃げるナスカ級の医務室。運良く撤退する僚機に拾われたらしい。
最も、俺以外のヤツはアイツにやられて既に遠くへ旅立っちまってたらしいが。
その後の顛末は知っての通り、敵味方見境なしのサイクロプスで両方とも大きな被害が出た。
けど俺はサイクロプスの事よりアイツの方が恐ろしくてな。
戻った時すぐに意見を上申したよ。
MSに脱出装置を付けてくれ、それが無理ならせめて銃弾を防ぐ為のシールドを付けてくれってな。
だけど落とされたヤツの意見になんて誰も耳を貸さない。その上、当時はナチュラルを見下す傾向が強かったしな。
そんなコーディネイターを圧倒的に上回るナチュラルなぞ居るかって一笑されたよ。
その後は前線に戻る事になって、何時もびくびくしていたよ。何時アイツがまた俺の目の前に姿を現すかってな。
配属された艦の連中にも相当嘲笑われた。かつてのエースが今じゃただのチキンだって。
それでも良かった、そんだけアイツは俺に死のイメージを刻み込んだんだ。

そして5ヶ月が過ぎて……もしかしてサイクロプスに巻き込まれてアイツは死んだんじゃないかと思った頃だった。
連合の新型MSを奪取するという任務で俺は中立コロニーであるヘリオポリスに向かって……俺は見たんだ。
肩にあの捻じくれたリボンが描かれた白いMSをな。
パニックになった俺はあの時のように銃弾を乱射して、それをアイツは軽々と避けて……

《あぁっ、ミゲルがやられた!?》

また俺は撃墜された訳だ。

こうやって今も生きていられるのは、俺の生き汚さと言うより……死神の気紛れのおかげなんじゃないか?
その後撃墜された時、骨折した俺は命からがら逃げ出したヴェサリウスと共に本国まで輸送されて、後はアイツと直接戦う事はなかったしな。
アイツの方はアンタが知っての通り、ヘリオポリスに侵攻したクルーゼ隊を追い散らし、プトレマイオス攻略戦で華々しい戦果を挙げ、
その後各地を転戦、我がZAFTが誇る数々の部隊を撃破していったって訳だ。
正直な話、こちらが降伏しなかいで終戦を迎えたのが、今でも不思議なくらいでさ。
出来れば戦場では二度と会いたくないね。

……まぁこんな所か。アンタはこれからどうするんだい?
次の相手に話を聞きに行く? そいつはご苦労さん。
じゃあ俺は失礼するよ。俺もこの後教えなくちゃいけないからさ。
ZAFTの若いルーキーたちが、俺のようにアイツにあっさりやられない為に……な。

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