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Ace-Seed_∞_第04話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 02:13:19

久しぶりだな。プラントに来ていたか。
で、突然ここまで押し掛けて来た訳はなんだ……“リボン付き”についてだと?
それは私がアレにどれだけ煮え湯を飲まされたかわかって言っているのか?
……言ってるんだろうな貴様は。
アレについては余り話したくないが、話さなければどうせ帰らないんだろうな。
ならさっさと帰って貰う為に手短に話すとしよう。
アレと出会ったのは血のバレンタインから丁度1年経った時だった……

「総員、用意は良いか? これよりオペを開始する」
《了解!》

勢い良く帰って来た言葉に満足しつつ、私は己の愛機を月面へと降下させていった。
ヘルハウンド作戦……オペレーション・ウロボロスの一環として発動されたソレは、
地上においては残り少ないマスドライバー施設を持つビクトリアを、
宇宙においては連合の第八艦隊が駐留するプトレマイオス基地をを同時に攻撃する大規模な作戦だった。
私が率いる部隊はプトレマイオス基地を攻略の先陣として、それに参加していたのだ。
今回の作戦に当たって支給された改良型のジンの調子はすこぶる好調で、私の士気もそれに呼応するかのように高まっていた。

《行け!行け!》
《こちらホーキンス隊、敵と交戦を開始した》
《ホーキンス隊に遅れるな、続け!》

「……ふむ、これならば何とかなるか」
《けど隊長、例のヤツ……“死神”の姿がまだ確認されてません》
「“死神”だろうが所詮1機のMSだ。気にしすぎるな」

当時、ZAFTではあるMSの事が噂になっていた。
中立コロニー“ヘリオポリス”で製造されていた連合製MS“G”。
その中で、クルーゼ隊が唯一強奪し損ねた“G”があった。
肩と盾に青いリボンが描かれたそのMSは、ヘリオポリス以降のクルーゼ隊の追撃を軽々とあしらい、
挙句の果てに十数機のジンを落とし、更には奪った“G”の内1機さえ撃破したという。
その結果、殆どのMSを失ったクルーゼ隊は本国へ帰還。
隊長であるラウ・ル・クルーゼは更迭されたと噂されていた。

そのMS……“リボン付き”はクルーゼ隊の報告が正確ならば確かに強いと言える。
MSとMAのキルレートが1:3〜5とされる現状において、MS対MSで1:10以上のキルレシオは正直異常だろう。
だが、そうであっても所詮は一機のMSだ。
全体の戦局に大して影響は及ぼすまい……そう考えていた。

だが……

《!? ストレード隊の反応が消えていく!?》
《IFFにないヤツが一機……これは、MSか!?》
《白いMS……ヤツだ! “リボン付き”だ》
「出てきたか。総員、バッテリーとバーニアの燃料はまだ余裕があるな?」
《大丈夫です》
「よし、ヤツを足止めするぞ。フォーメーションGだ。墜とそうと思うな。足止めだけで良い」

部下の声を聞きつつ、私はモニターの先に見えるそのMSに向けて銃を構える。
トリコロールの派手な色彩に彩られたその肩には青い、捻くれたリボンが描かれていた。

「では、攻撃を開始する」

MMI-M729エンジンが生み出す圧倒的な速度を利用した一撃離脱を“リボン付き”に次々と仕掛ける。
一瞬で射程内から離れていく改良型ジンは、まだ1機も落とされていない。
PS装甲とビーム兵器という燃費の悪い武装を持つGシリーズは私たちのジンより稼動時間が短い。
それは既に本国から知らされていた。
その上、“リボン付き”は最低でもストレード隊を撃破して来た以上、それだけエネルギーを消費している。
ならばこちらよりあちらのバッテリーが尽きる方が早い、それまで足止めすれば良い。
“リボン付き”は無駄な発砲を抑えているようだが、それがどれだけ影響を及ぼすか……。

《隊長、“リボン付き”の色が!》
「……PSダウンか。トドメを刺すぞ」

灰色に変色していくMSを見て、部下が歓喜の声を上げる。
PS装甲は残り電力が底を尽くとその機能を停止する、アレはその証だからだ。
内心ではこんなものかと失望しつつ、私は攻撃の支持を出した。

……その瞬間、部下たちが一撃離脱を止めて、動きが鈍った間隙。
2機の部下たちのジンが爆発した。

「何だと!?」

ジンを貫いたビームは灰色に染まったままの“リボン付き”の銃から。
更に1機のジンが上から放たれたビームを受けて大破する。
見上げれば“リボン付き”と同じトリコロールカラーで塗られた戦闘機が凄まじいスピードで向かってきていた。
“リボン付き”のバックパックを装着したその戦闘機から次々と放たれるビームは当たらなくてもこちらの機動を満たすには十分。
それを逃さぬとばかりに、“リボン付き”も次々と射撃してくる。
まるで吸い込まれるかのように撃ち落されていくジン。
最後に振り返って見た光景は、“リボン付き”のバックパックが戦闘機の物と交換され、
色を取り戻したリボン付きが他の方面へと飛び去っていく姿だった。

その日、プトレマイオス基地攻略は失敗に終わった。

情けない話だが、当時から私は相手を過小評価する癖があった。
色を失った“リボン付き”を見て油断して、あの有様だ。
だが戦場であえて守りの要であるPS装甲を落とし、こちらの油断を誘うという行動。
あんな行動を起こせた“リボン付き”の心臓にはきっと毛が生えているに違いないな。
出来れば解剖して見てみたいものだ……ん?
冗談だ冗談。
さぁとっとと行け。もうアレの事は思い出したくないからな。

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