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Ace-Seed_626氏_第20話

Last-modified: 2013-12-25 (水) 21:40:48

ヴァレー基地攻撃より少し前――L5プラント

プラント評議会は各議員が右往左往の混乱に陥っていた
過去からいままで、プラントはもっぱら、評議会議長の手腕に依存し、その議長の提案・議案を審議する。
そんなものになっていた――それがいつか?と、問われればパトリック・ザラが評議会議長になった頃からだろう。
戦時においては最高権力者の専制にしてしまったほうがやりやすい。
これは大西洋連邦の前身、アメリカ合衆国でも同じことをいえる。

だが、C.E71年に戦争が終わり、ギルバート・デュランダルが議長になった後もその体質は改まることはなく。
ラクス・クラインは無自覚にも、それを終戦からいままで放っておいてきた。
いや、彼女の場合あるいは確信的にそうしたのかも知れない。『ラクス・クライン』という絶対者が政治を行なうのだから。

しかし、残念なことにそんな彼女の外交・政治感覚はお世辞にも上等とは言えない…。
軍事面についてはザフトの統括に二度、三度と裏切ったもの罰を与えることなしに上層部に据え、
国政においては自国のプラントは二の次で、戦災の保障を世界各地――ベルリンなどに割いていた。
これは地球のブレイク・ザ・ワールド被災国の狙い通りとなった。

さらに、大国ならばどこの国でも当たり前のように持つ諜報機関を、彼女は『ターミナル』に依存することで
その努力を怠ってきた。それらのツケが吹き出していた。その結果がこの評議会の混乱につながっていた…。

「議長、オーブ:アカツキ島が謎の国籍不明戦艦の攻撃を受けました――」

始まりはこんな報告が議会中の場に飛び込んだことから…
普段ならどんな話題が評議会に挙がろうとも、面皮のおしろいを歪ませることはないかったが、
あからさまに何も知らない――寝耳に水。そんな反応・表情を示すクライン議長

『オーブが攻撃を受ける』など、彼女にとったらどんなことよりも重大なことだ。
だが、そんな情報について一片も彼女の元に流れてくることはなかったのだから…

それは当然のこと。といえば当然だった。そも『ターミナル』とは各地に居る者がそれに情報を流すことから始まる。
『国境なき世界』――その情報を誰も流さないのだから彼女の元に流れることなどまずありえない。

他の評議会議員はそんなクライン議長の情報に付和雷同するのみだった。
そのツケから生まれた混乱の中、バーネル・ジェセックは黙ってその様子を見ている。
彼だけ唯一、『フレスベルク』を持ち出した組織のことも、その目的も分かっている人間だったから…

数日前――

無能な『議長』の肩書きをもつ小娘に悟られないよう、
プラントが支払うべき賠償の矛先をオーブに振る交渉に奔走し、疲れ果てジェセックはプラントの自宅に戻った
それを待っていたかのように秘匿回線で彼の下に交信が来た

映っていたのは、今回の開戦直後に姿をけしたエース

《ジェセック、調子はどうかね?》
「!?アントン・カプチェンコ…何故君が?」
《死んだとは言わせないさ…ところで…君に少し伝えたいことがあってね…》

そういって話し始めたことはあまりにも突飛な――常軌を逸した話しだった

『ロゴス』が開発していた『フレスベルク』と呼ばれる巨大ガンシップをもって
停戦条約締結地オーブ:アカツキ島を攻撃。加え、ビラをまき、組織『国境なき世界』の目標を宣言、プラントへ向かい攻撃、
その作戦後『V2』という新型の長距離攻撃兵器でプラント、オーブ、ユーラシア連邦、アジア共和国、
そして大西洋連邦の主要各国首都に攻撃を叩き込むというクーデター

『なぜそんなことをするのか?』などとは聞くことはない
ジェセック自身、そんな兵器があれば真っ先に『撃ってしまえ』といえるほど現実にウンザリしていたのだから

マルキオの救世主を信奉する宗教に乗っ取られたオーブ、プラント
それを許容することで、それらを傀儡として自国の利益を図るその他、各国
そして理解しながら政変を起こす事など出来ず、ただ国民の明日の命を保障するために奔走することしか出来ない彼自身
あまりにも屈辱だった――プラントという国を建ててきた時期を、戦った彼にとっては納得がいかなかった

だが、クラインの娘がもつカリスマの高さ故に、結局、出来ることは些末なことのみ――
そこでふって沸いたように『国境なき世界』のクーデター
『これに乗らない手はない』とジェセックは考える
しかし、ひとつ疑問があった。その疑問を問いただすことは、自らの死につながるかもしれないが聞いていた

「カプチェンコ…ひとつ聞きたい。何故、その『V2』をすぐに使わない?
 それで君達の『破壊という名の創造』を達成できるだろう?」

その質問に対し、待っていたとばかりに苦笑を浮かべ向こう側の人物は答える

《自分が育てたものが、いびつだったから破壊したくなるというのは分かるだろう?
 だが、戦うには大儀が必要だ。それを知らしめてから…だよ。
 …君にこうやって話しをしているのは、君に我々の愚行の"銃後"を任せたいんだ》
「……"銃後"?どういうことだ?」
《各国の腕利きを集めた『国境なき世界』といっても、所詮あの強大な軍事力の前には太刀打ちなど出来ない
 だが、我々のクーデターは世界が今まで溜め込んできた膿を取り除き、小さな楔を打てると信じている…》

その言葉でジェセックは理解する『目の前の男は死ぬ気だ』と

「…それでいいのか?君は――
 こうやって私にそんな情報を流しているということは、君が盛り立てた『国境なき世界』すら裏切っている。
 君は"総ての裏切り者"として歴史に名を刻むかもしれないんだぞ?――それで?」

《良いも悪いもない。要は自分が許せない…ただ、それだけだ。『裏切り者』そう呼ばれるのは本望だよ。
 自らを"神"と称する愚か者を祭り上げる手伝いをしてしまった自分には相応しい…》
「その果てに君は死んで、後片付けはわたしか?」

その言葉で止まるはずがないと分かっていながら、死地に向かう男に皮肉を向ける

《…それがそこまでの人生から未来への役割だろ?私は軍人で君は政治家。ならば"破壊"は私が行なうことだ。
 パトリックもシーゲルも死んだ今、頼めるのは君だけなんだ。…後は頼む》

そういって通信が切れる。
同時に膨大なデータがジェセックのコンピューターに転送されていく

――内容は、先の議長ギルバート・デュランダルが宣言した デスティニープラン
そのプランが『SEEDを持つ者』という者が世界の頂点に立つ、そんなメンデルの狂気に裏打ちされたものであると
証明する、データ、資料、それらが事細かにモニターに表示されていく――

さらに、同じように『SEED』を救世主――神と定めたマルキオの宗教資金の流れ、
各国――大西洋、ユーラシア、アジア連合の政治家が行なう、宗教組織への資金援助・武器援助のルート
これだけで確実にオーブとプラントが転覆し、かつ地球連合は根本から揺らぐものだ

それらを読んでいき、ジェセックは最後に手書きの一文が記されていることに気が付く

『GGが…プラントを作った君たちが原初に思い描いた。
 人類をソラに導く"コーディネーター"としての【プラント】を作ることを祈る』

そう資料の最後にかれていた

「くそ!!」

結局、政治家の自分はパトリックもシーゲルも、そして彼らに誘われる形でプラントに来た軍人も、何一つ救えなかった
モニターはひび割れ、そこに叩き付けた拳からは出血していたが、それにかまわずジェセックは殴り続けていた

――

「で、ではオーブに被害状況を確認し、至急援助の用意を…」

年相応の娘といえる、乱れきった振る舞いを議長が見せる中、ジェセックは内心
『さんざん自分がやった手法を人にやられた時は取り乱すか…』と鼻で笑い、それを表に現すことなく提案する

「議長、ひとまず我々のすべきことは『御友人』の居るオーブの心配ではなく、謎の戦艦の現在の所在地では?
 万が一プラントに現れたら今度は我々が被害を受けてしまいます」

その提案を受け、ラクスは大西洋連邦及びユーラシア連合に打診しろと指示を出し始める。
それを尻目に議会を退席したジェセックは、包帯を巻いた手で拳を作り呟く

「カプチェンコ…君の理想を叶えられるかは分からない――だが、この機会と情報は最大限に使わせてもらう」

『国境なき世界』という世界へのクーデターを受け、プラントで政変が起ころうとしていた…

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