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BRAVE-SEED_5-632氏_02

Last-modified: 2010-04-01 (木) 20:06:13
 

 瞬兵達と一旦別れ、タクヤ達は街の中を調査することにした。実際にはただの息抜きである。

 

「あれはなんでしょうか?」

 

 一緒に降りたシリアスが、街の一角にあるアイスクリームショップを指差した。

 

「アイスクリーム屋さんだね」
「アイスクリーム……」

 

 表情筋こそ動いていないものの、シリアスの視線はポップな看板に釘付けだ。足元で彼の愛犬・レイザーが、お座りをしたままシリアスを見上げて軽く2,3回尻尾を振った。

 

「日本円が通じたらな〜」
「おまえ、今月の小遣いの残高あと150円だろ」

 

 カズキは白い目でタクヤを見た。そういうカズキの残高は後500円だ。
 シリアスはガラス窓の向こうに見えるアイスクリームカップやソフトクリームの看板に視線を的確に合わせていた。

 

「シリアスって意外と甘い物好きだったんだね」

 

 ダイは初めて知った事実に少し嬉しそうに声を弾ませた。シリアスの子供らしい一面がどんどん出てくるのは良いことだ。

 

「でも……」

 

 ダイの財布の中もだいぶ少ない。ドランやアドベンジャー達が食糧を調達してくれないからである。

 

「あ」

 

 もう別の店の方を向いていたタクヤが、声をあげた。

 

「おまえらちょっとそこの角に隠れてろ」
「え?」
「いいから早く!」

 

 タクヤは3人を路地に押し込むと、アイスクリームショップの窓ガラスにベッタリと張りついた。

 

「何やってんだ、あいつは」

 

 やがてタクヤの横を、赤い髪をショートカットにした高校生ぐらいの女の子が通りすぎていく。同時にタクヤは盛大なため息をついた。

 

「はあー……」

 

 女の子は店の中に入っていくと、しばらくしてトリプルのコーンを持って出てきた。そのタイミングでまたタクヤがため息を吐く。

 

「どうしたの?キミ。さっきからため息ついちゃって」

 

 流石に気になったのか、女の子が話しかけてくる。

 

「あ、いえ…その…お財布、落としちゃって……お母さんに、お小遣いもらったばかりなのに…」
「ふーん……」

 

 女の子はペロリとアイスクリームを舐めると、少し上を向いて何か考えるような仕草をした。

 

「いいわよ。一個ぐらいならおごってあげる。一人でヒマだったしね」
「本当?! ありがとう、お姉さん!」

 

 タクヤはぱあっと表情を輝かせると、路地に向かって声をかけた。

 

「おーーい、皆! このお姉さんがおごってくれるって!」
「え?!」

 

 驚く少女の前に、次々と3人の少年が飛び出してきた。

 

「ありがとうございます!」
「お姉さん最高!」
「このような種類のアイスクリームは初めてみました」

 

 一人、礼も言わずに店の中に入っていく少年を、女の子は睨みつけた。

 

「ちょっと、アンタ達!」
「「「「ごちそうさまで〜〜〜〜す!」」」」

 

 ルナマリアは店の外のパラソル席で、アイスクリームにがっつく子供たちを眺めていた。本当ならアスランとデートをしているはずが、こんな子供たちに奢らされているなんて腹立たしい。しかも全員トリプルを頼みやがって。

 

「なんでこうなっちゃんだか……」
「いや〜! 食った食った! お姉さん、ありがとう!」
「助かりました!」
「ごちそうさまでした」

 

 早々にコーンタイプを食べ終わる3人の横で、一人だけカップを頼んだ水色の髪の少年が黙々とアイスクリームを食べている。足元では躾の行きとどいた大型犬がお座りをしている。

 

「あんたね、さっきもそうだけどお礼ぐらい言ったら?」

 

 ルナマリアは面白くなさそうに目を細めて少年を眺める。

 

「ごちそうさまでした」

 

 少年はそんな言葉にはまるで頓着せず、自分のペースでアイスクリームを食べ終わると、ポケットからレースのついたハンカチを取り出して口元を拭った。

 

「このようなアイスクリームは初めて食べました。大変に美味しかった。礼はもちろんするつもりです。貴女の名前は?」
「ルナマリア・ホークよ。
 ま、わざわざ礼をしにくるようなものでもないけどね。第一、あたしはこう見えても軍人なの。お子様とこれ以上つきあっていられないのよ」

 

 ルナマリアはバッグを手に取ると席を立った。

 

「あんまりそうやって他人にたかってるんじゃないわよ。いいわね?」
「はーい」

 

 という元気な声に続いて、

 

「ああいう言い方するヤツに限って、何か期待してたりするんだよ」
「それに軍人には見えませんね」
「少し抜けてそうだしな」
「でも、良い人だよ。お礼はちゃんとしないとね」

 

 ワザと言っているのか判別の付きにくい会話が聞こえてきて、ルナマリアは拳を震わせた。

 

 * * *

 

『主よ、どうやら戦闘領域に突入してしまったようです!』

 

 アドベンジャーが焦った声で報告してきた。

 

「ああん?」

 

 ポテチを齧りながら顔をあげる主たちの前のスクリーンに、一隻の空中戦艦を取り囲む艦隊が見えた。

 

「う〜ん……これはちょっと卑怯な気がするけど……」
「けど、俺らがこの辺りの事情にツッコむわけにもいかないだろ。事情があって戦争してるんだし」
「あんまり後味は良くないけど、テキトーに進路変更しちゃってよ」
『いいえ、そうもいかないようですよ』

 

 モニターが切り替わり、シリアスの顔が画面の半分に映った。

 

「何かあったのか?」
『あの囲まれている戦艦に、ルナマリア・ホークの生体反応を確認しました』
「ええ?!」
「それってアイスクリームの人?!」
『そうです』

 

 タクヤが立ち上がってポテチを飲み込む。

 

「だったら話は別だ! あの戦艦を助けるぞ!」
『心得た!』

 

 主たちの後ろで、ドランがヘッドライトを瞬かせた。
 一方、キャプテンシャークとその代理主の方は、もう少し話の続きをしていた。兄を真似た海賊衣装を着るシリアスに、キャプテンシャークが話しかける。

 

『……っと、少し離れたところに、漁夫の利を狙ってる輩がいるぜ。おまけに船長の反応までありやがる』
「こんな時に兄上が現れるとは、実に都合が良い。そちらはシャランラに任せましょう」

 
 

「くそっ! なんで、オーブがっ! こんなところまでっ!!」

 

 悪態をつきながらも、シン・アスカは必死にインパルスを駆って戦場を飛び回っていた。複数方向からのロックオンアラートが入る。全部は対処しきれない。被弾をできるだけ少なくするため、海面ギリギリを飛ぶ。
 と、いきなり真下の海中からビームランスが伸びてきた。

 

「っ!」

 

 急上昇をかけようとした途端、いきなりインパルスが浮き上がった。

 

「?!」
『無事か?』

 

 かなり上空まで行ったところで機体が解放される。ようやくカメラをそちらに回したシンは、青空の中でやたらとキンキラと輝く機体に目を剥いた。

 

「あ、アンタは…」
『主の命により助太刀する!』

 

 それだけを言うと、金色のMSは同じく金色の翼を羽ばたかせて戦場に向かって飛んでいった。

 

「な、なんなんだよ!」

 

 MSについている翼が羽ばたくなんて考えられない。シンの目の前で、もっと信じられないことが起こった。
 金色のMSの両肩から、何かが発射された。良くは見えないが、真下の海の水面の様子からかなりの風が発生したのだというのがわかる。それは水面を割って海中のアビスガンダムを空中にまで引っ張り上げた。

 

「マジか……」

 

 アビスガンダムは空中に磔にされたように微動だにせず、金色のMSはそれに向かって腰の実体剣を引き抜いた。大仰に飛びあがり、一気にアビスガンダムを縦に斬り裂いた。
 派手な爆発だった。あれほど苦戦させれていたアビスが、自分達の手に戻らないまま、あっさり破壊された。爆風に煽られた落下傘が、連合艦隊に向けて流れていく。

 

「あれ? アビスに落下傘なんてついてたっけ……」

 
 

 ミネルバのブリッジの中は、凍りつきかけていた。目の前の物体を見て多少なりともはしゃぐような声をあげているのは普段は落ち着きのないアーサーだ。

 

「あれ、凄いですね。メイドインジャパンのSLは空を飛ぶことができるって聞いていましたが」
「問題はそこじゃないでしょ?!」

 

 艦長のプライドを以て副長を張り倒さなかったタリアは、彼の能天気な一言に少しだけ我を取り戻す。
 各MSに目を向ければ、ハイネのグフの目の前で、槍を持った金色のMSがガイアガンダムを破壊。カオスガンダムは、シルバーを通り越してプラチナレベルに光るMSが手に持ったランサーで串刺しにしていた。
 そしてミネルバに群がりにきたムラサメやウィンダムは、上空から突然降ってきたとしか言いようがない青いMSによって、次々と撃ち落とされていった。

 

「彼らはなんなの?」
「わかりません。味方をしてくれているようですが……」

 

 青いMSの右肩にマウントされているのは多分ミサイルランチャーだろうが、実体弾なのにPS装甲など紙のように引き裂いていく。爆発した後には、パイロットをぶら下げた落下傘が漂うばかりだ。

 

「最近の連合やオーブのMSってパラシュート付きなんですね」

 

 またどうでもいいことを…をタリアはアーサーを睨みつけたが、どうでもよくないことに気付いた。

 

「どういうこと?」

 

 やがて混合のMS隊が全滅すると、青いMSはルナマリアのガナーザクウォーリアがいる艦上へと回る。

 

「いけない、すぐにシンを呼び戻して!」

 

 ザクウォーリアの目の前に、青いMSが降りてきた。胸の辺りが何か動物を模しているようだが、ルナマリアはそれがサメだとはわからなかった。

 

「な、何よ……やるってんなら相手になるわよ!」

 

 オルトロスを構えるが、あのランチャーの威力を見せ付けられた後では、その声は震えていた。
 青いMSはホバリングしたまま、まるで人間のように腕を組むと、野太い男の声が聞こえたきた。

 

『宇宙の海はオレの海。
 海賊戦艦キャプテンシャークとは、オレ様のことだ!』
「は……?」

 

 ルナマリアが呆けて射撃のタイミングを逃している間に、青いMSの胸の口が開き、中から小柄な人影が出てきた。

 

「もう、なんなの?」

 

 黒い服を着た子供は、マントをバッと翻すとルナマリアの方を向いて大見えを切った。

 

「私は、悪に染まりしこの星を元の姿に戻すため、大宇宙の神が使わした正義のヒーロー!
 その名も宇宙海賊イリアス・イーザックなのですっ!
 ルナマリア・ホーク」

 

 突然名前を呼ばれ、ようやくルナマリアは我に返った。

 

「な、なんであたしの名前を…」
「礼はしましたよ」

 

 奥から大型犬が、少年の足元に寄り添うように出てきた。

 

「あっ…!」

 

 アイスクリームショップでの出来事が脳裏に浮かぶ。

 

「ちょ、ちょっと、あんた……」

 

 だが少年はルナマリアの制止も聞かずにMSの中へと戻っていく。そして少年を格納したMSは、巨大な魚――鮫――へと変形し、空飛ぶSLに合流すると、そのままいずこかへと飛び去って行った。

 

『ルナ、大丈夫か?!』
『無事か?』

 

 ようやくシンが戻ってきて、レイのブレイズザクファントムも反対側の舷から姿を見せる。

 

『なんだったんだ、あいつらは?』
『わからない。ルナマリア、君には何かを伝えていたようだが?』
「あ、アイスが……アイスクリームが助けに来たのよっ!!」