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CCA-Seed_◆ygwcelWgUJa8氏_09

Last-modified: 2012-10-03 (水) 00:32:40

「ぼくの秘密を今明かそう――」

 

 これは、一人の男の物語だ。

 

 「ぼくは、人の自然そのままに、この世界に生まれた者ではない……」

 

 男の名は、ジョージ・グレン。

 

 「――ぼくをこのよう人間にした人物は、こう言った。『我々ヒトにはまだまだ未知の可能性がある。それを最大限に引き出すことができれば、我らの行く道は果てしなく広がることだろう』と――」

 

 ――C.E53年、ジョージ・グレンはナチュラルによって暗殺された。暗殺者は、既に世に生まれ出た自分がコーディネイターに及ぶ事は決してないと知った、十代の少年だった。彼の絶望は、『ファーストコーディネイター』と呼ばれた、新たな人類の象徴とも言うべき人物に集約されたのである。

 

 「彼はまた、ぼくに言った。『ヒトとヒト、そしてヒトと宇宙に調和をもたらす調停者(コーディネイター)たれ』と」

 

 彼の死が、すべての先触れとなったと言えるかもしれない。

 

 「――それが彼の、そしてぼく自身の願いだ。ぼくに続く者が今後、現れてくれることを願う――」

 

 ナチュラルとコーディネイター――その紛争の歴史は、『ファーストコーディネイター』と呼ばれた男の死によって、幕を開けたのである。

 
 
 

PHASE-9 燃える砂塵

 
 
 

 『……!』

 

 アムロは、夢をみているのだろう。医務室のベッドの上で寝ている彼の瞼は、ピクピクと痙攣していた。
 そのアムロの夢のなかの視覚は、閃光の奔流の中に揺れるアムロ自身のシルエットと、その閃光のむこうの白鳥をとらえていた。

 

 『ララァ・スン……!?』

 

 白鳥がビクッと意思ある仕草をした。そして、ザーッと音を立てるように変化して、その形が、流れるような黒髪を頭の左右でお団子のように丸めた褐色肌の愛らしい少女の姿に変身した。

 

 『なぜここにいる! 俺を追って来たとでもいうつもりかっ!?』

 

 思わず激昂したアムロの言葉とは裏腹に、ララァ・スンのイメージは瞳に涙を浮かべ、アムロにすがりつくようにした。

 

 『ああ……アムロ。本当にアムロ! ずうっと会いたかった!』
 『――ッ!?』

 

 驚いているアムロの背にララァの腕が抱かれる。

 

 『あなたがいなくなってから数え切れないほどの年月が流れたわ……。もう会えないかと思った。ああ、ようやく……!』

 

 彼女の悲痛な声がアムロに響く。

 

 『シャアがどこにもいないの! あの人の死を感じて、わたしは抱きしめに行ったのに。彼の魂が消えてしまって……! それからずっと一人ぼっちで生きてきたのよ!』

 

 そのララァの哀願にも似た叫びに、アムロはぞっと身を震わせた。

 

 『……シャアが!?』

 

 夢の中でそう叫んだところで、アムロは目覚めた。ふと周りを見ると、一つのベッドのところに人だかりができている。
 風がまた、吹き始めた。

 
 

 満天の星の下、しんと静まりかえった砂の海がどこまでも広がっている。生命の存在を拒む灼熱の大地も、星明かりを映してほのかに光るさまは、どこか夢のようにやさしく感じられる。
天にちりばめられた星々は、都市部で見るものとは違い、圧倒的なまでに鮮やかな光りを放っている。その星空を、黒く切り取る巨大なシルエットがあった。
 爛◆璽エンジェル瓠宗獣狼縅合第八艦隊が、その総力と引き換えにした地上へ降ろした新型特装艦は、本来の目的地から大きく離れ、アフリカ大陸北部、この砂の海にたどりついたのだった。

 

 「熱……下がんないな……」

 

 不安げにサイがつぶやく。彼女の視線の先には、高熱を出してうなされているフレイの姿があった。キラがかたわらに座り、その顔に浮かんだ汗を拭いてやっている。

 

 「――だからさ、感染症の熱じゃないし、内蔵にも特に問題はない」

 

 医務室の診察スペースでは、地球降下の前に乗り込んだ軍医が、キラやサイに説明していた。

 

 「今はとにかく水分を摂らせて、体を冷やすくらいしかできないでしょ」

 

 若い軍医の言葉に、キラたちはさらに不安げな顔になる。それに気づいた軍医が、なだめるように言った。

 

 「心配いらんよ。検査はしたし、異常はなかった」
 「でも……」

 

 気楽そうな軍医の様子に、キラは口を尖らす。すると、そこへ聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 「ン、みんな揃っているようだね」
 「え、アムロさん……!」

 

 アムロの姿を見たキラたちの顔に、笑顔が戻る。軍医も笑みを浮かべていった。

 

 「お、エースパイロット殿のお目覚めか。一応診察をしますので、こちらへ来てください」
 「彼女は? 苦しんでるように見えるが」
 「夢をみてるんですよ。どんな夢かは知りませんがね」

 

 言われて考え込むようなそぶりをしたアムロは、キラたちに「すまない、後で話をしよう」と言ってから、軍医に連れられて部屋を後にした。
 トールはそれを見送ってから、フレイのかたわらにいるサイに近づいた。

 

 「サイ、キラ……代わるから、少し休めよ」

 

 声をかけると、キラはベッドから苦しそうにうなされるフレイの額の汗をふき取りながら、「大丈夫だよ」と答えた。

 

 「でもキラ、あなたは帰ってきてからつきっきりでしょ? わたしたちにまかせて……」

 

 ミリアリアも言ったが、彼は少し顔を上げて、優しく微笑む。

 

 「みんなは艦の仕事があるだろ? ぼくは、戦うことくらいしかできないから……」
 「でも、キラ」

 

 気遣うミリアリアに対して、キラは苦笑しながら言った。

 

 「あ、でもサイにはいっしょにいてあげてほしいな。――目が覚めたときいると、きっと喜ぶだろうから」

 

 そういって、ベッドの上のフレイに目を戻す。キラのひたむきな態度に、サイは「……すまん」と言ってから、彼も看病に戻った。
 それまでフレイを見つめていたカズイが、トールのそばによってきて、ささやいた。

 

 「……ラクスって人は?」
 「カナードのやつにひっぱたかれた後、独房に入れられたらしいぜ」
 「そっか……。やっぱり脱走しようとしたのかな?」

 

 カズイの問いに、トールはしばらく考え込んだが、やがて顔をあげ、答えた。

 

 「いや、たぶん違うと思う。みんなを助けたいとか言ってるのが聞こえたから……。お嬢様なんだろ」

 

 ああ、と納得するカズイを尻目に、トールはふと思い出す。あのオーロラのような光はなんだったのだろう、と。

 
 

 「ここが、アラスカ」

 

 ムウの指が、モニター上の一点を指す。その指がつつっと下がり、世界地図を横断していく。

 

 「――で、ずうっと下がって……ここが、現在地」

 

 指が止まったのはアフリカ大陸の北端に近い場所だった。ムウは手を下ろし、ため息をつく。

 

 「やなトコに降りちまったねえ。みごとに敵の勢力圏だ」

 

二人は艦長室でコーヒーカップを片手に、ブリーフィング中だった。

 

 「しかたありません。あのまま彼らを見捨てるわけにはいかなかったのですから」

 

 カップを機械的に口元に運びながら、マリューは答える。その言葉とは裏腹に、彼女の表情には迷いがあった。
 ムウが言ったとおり、サハラ以北の地中海沿岸から大西洋沿岸にかけてのアフリカ共同体は、親爛廛薀鵐鉢瓩鯢縮世靴森餡範合で、ザフト軍がすでに手中としている地域のひとつだ。
彼らの艦爛◆璽エンジェル瓩蓮△泙気謀┸悗凌燭誕中に、単独で放り出された状態だった。しかも、乗組員はほとんどが実戦経験もない下士官か兵卒で、艦長はといえば二十六歳のマリュー自身なのだ。
 マリューは暗い顔でカップの中身を見つめた。そう、わかっている。これは自分の甘さだ。新型モビルスーツのことはもちろんだが、そのコックピットに乗り込んでいる少年少女の命を、彼女は惜しんだ。 切り捨てることができなかったのだ。

 

 「――ともかく」と、彼女は重い口調で言った。

 

 「本艦の目的、および目的地に変更はありません……」

 

 ふと、向かいに腰かけたムウが、「大丈夫か?」と優しい声音でたずねた。マリューは目を上げ、男の目が穏やかな色をたたえて自分を見つめているのに気づく。

 

 「ええ……」

 

 なんとか少し、笑みを浮かべることができた。だが、ムウの次の問いかけに、その笑みもこわばる。

 

 「――副長さんとも?」
 「……大丈夫よ」

 

 口に出してそう言ったものの、その言葉はひどく空虚に響いた。

 

 「なら、いい」

 

 ムウは腰を上げた。

 

 「じゃ、ちょっと嬢ちゃんたちのところに言ってから、俺は寝るよ。あんたももう寝な。艦長がそんなクタクタのボロボロじゃ、どうにもならないぜ」

 

 いつもどおりの軽い調子で言い、手を振って艦長室を出て行く彼を見送ったあと、マリューは冷めてしまったコーヒーを流しに捨てた。モニターの地図を暗い目で見つめる。
 ――これから、どうすればいいのだろう。
 目的地はわかっている。だが、どうやったらそこまでたどり着けるか、彼女には思い描くことさえできなかった。

 
 

 地中海にある一つの小さな島の砂浜にほのかな明かりが見える。その焚き火を囲むように数人の少年少女たちが座り、それを守るように九機のモビルスーツが囲っている。

 

 「夜の海って静かですね、アスラン」

 

 ニコルの声に、アスランはひんやりと冷たい砂丘の温度をパイロットスーツ越しに感じながら顔を上げた。

 

 「でも味方と連絡も取れましたし、すぐに来てくれますよね」

 

 備え付けのキャンプセットを使って火をともしながら、ニコルが嬉しそうに報告する。

 

 「そうか……」

 

 あいづちを打ちながら、アスランは別のことを考えていた。爛◆璽エンジェル瓠↓爛好肇薀ぅ瓩箸箸發法地球の重力に引かれて落ちた婚約者のことだ。
 ――ラクス……無事だろうか。それにキラ、お前はいったい。
 あの不思議な光に包まれた自分達が無事に地球降下を果たしたということは、その光の中心にあった爛妊絅┘覘瓩望茲辰織薀スも、たぶん大丈夫だろう。頭ではそう受け止められるのだが、どうしても落ち着かない。
自分の手の届かない場所へ行ってしまった彼女のことが、その赴く先が気がかりでならなかった。そこへ、ディアッカがひょうひょうとやってきて、彼らに話しかけた。

 

 「ん〜、どうやら『足つき』は近くに降りたらしいぜ?」

 

 それを聞いて、アスランは勢いよく立ち上がり、ディアッカに詰め寄る。

 

 「……近くに?」
 「みたいだぜ?」

 

 からかうように言ったディアッカに、横からイザークやってきて「どうした」と声をかける。アスランはそれを無視して問いただす。

 

 「……アラスカでは無い?」
 「いや、あの突入斜角からの降下地点はアフリカ大陸だな」

 

 にっと笑う彼の横から、同じように明るい笑みを浮かべたラスティが顔を出す。

 

 「はっはーん。ってことはだ、麗しのラクス・クラインはまだ手の届くところにいるってことなんだな」
 「そうか……そうだな。俺たちはまだ負けていない。――取り戻すんだ……!」

 

 まだ、手が届く……! ふつふつと闘志が沸いてくるのを自覚したアスランは、自然とこぶしを握り締めていた。
 夜の砂浜で淡い篝火に照らされる九機のモビルスーツの姿はまさに静観であり、見るものを魅了してやまない。
 ニコルは爛屮螢奪牒瓩了僂鮓ながら、ふとつぶやいた。

 

 「――でも、どういうことでしょうか」

 

 彼の声に、みなが一斉にそちらを見やる。

 

 「最後に見たオーロラのような光……あれは僕らも助けてくれたように感じました。そして……声も」

 

 アスランにも、あの現象は理解しがたいものであった。得体の知れぬ光が、敵も味方も守るだと? ……馬鹿げている。
 押し黙り考え込むニコルを見、ミハイルが明るい口調で話しかける。

 

 「色々あったが……我々はまだ生きてここにいる。そしてクラインの姫君も手の届くところにいる。絶望するには早いさ」
 「そうだな。ここにはあの『砂漠の虎』がいる、戦力は十分にあるはずだ」

 

 ミハイルの言葉にミゲルが続いた。

 

 「『虎』さんですかあ、どんな人なんでしょうね。怖い人だったら、僕嫌だなぁ」

 

 アイザックの独り言に、アスランたちは、やれやれと笑みをこぼした。どちらにしても、救助が来るまでは動く事ができない。今は漣《さざなみ》が聞こえるこの場所で、体を休めるしかないのだ。

 
 

 「マニュアルは見たけど、なかなか楽しそうな機体だねえ……。しかし、『ストライカーパックもつけられます!』って、俺は宅配便屋かあ?」
 「言うなよムウ。こんな状況なら、宅配だろうとなんだろうとやってみようって気にもなる」

 

 爛◆璽エンジェル瓩離タパルトデッキで、ムウとアムロがやれやれと会話していた。その視線の先には、ワイヤーで固定された流線型の機体がある。
 爛好イグラスパー瓠宗臭爛◆璽エンジェル瓩鉢爛好肇薀ぅ瓩了抉舁僂棒什遒気譴臣肋綏神鐺機だ。爛好肇薀ぅ瓩離僖錙璽僖奪を搭載できるこの機体は、そのままストライカーパックの火力を使用することも可能だが、電力消費の激しい爛好肇薀ぅ瓩法△垢个笋新しいバッテリーパックを届けるという役割も負っている。
 整備士のマードックが笑って応じた。

 

 「はは、大尉なら――じゃねえか、少佐ならどこへでもすぐさまお届けできます――てね」
 「ハルバートン提督の計らいとはいえ、この状況で昇進してもなあ」

 

 新しい階級で呼ばれたムウは、少々うんざりした顔だ。

 

 「アムロは中尉になったんだよな? うちの戦闘隊長をやってくれるのは助かるけどさあ……」

 

 ――どういうわけかアムロはハルバートンやモーガンから莫大な信頼を寄せられており、『出所不明で世間に疎い元軍人』、という肩書きにも関わらず、いきなり中尉となり、戦闘隊長まで任された。
そのことにムウも納得しているようで、マードックたちは首をかしげるばかりだ。もちろんアムロの事を信用していないわけではない。実際に彼の実力を目の当たりにしているのだ、頼りに思わないほうがおかしい。だが、彼と直接会ったことも無いはずのハルバートンたちが何故……? それだけが疑問である。
 ハルバートンが、クルーの階級をのきなみ昇進させてくれたのは、満足に人員の補充もできない状況下においては、せめてもの親心であったのだろう。だが――。

 

 「給料上がんのはうれしいけどさ……いつ使えんの?」

 

 ムウの言葉どおり、現状においてはなんの役にも立たない。アムロが苦笑で応じた。

 

 「生き延びろってことなんだろ? 提督は無事のようだし、補給だって用意してくれるさ」

 

 呆れるムウとは対照的に、アムロにはどこか余裕のようなものが溢れていた。ムウは「だといいけど」と返し、ため息をついた。

 

 「ガキどもは野戦任官ってことらしいっすよ。坊主は少尉で、生意気な方は中尉――まあ、パイロットですからね」

 

 そう、地球降下前に志願兵として採用されたキラたちにも、今は階級がある。サイやトールは二等兵の扱いだが、キラはパイロットという立場上、士官の階級が与えられていた。
――ちなみに、カナードはもともと正規の軍人である。キラが少尉で自分が中尉と聞いたときのカナードの嬉しそうな表情が今でも忘れられない。思い出しただけでも笑いがこみ上げてくる。

 

 「あーあ、あんなガキどもがねぇ……」

 

 機体のチェックをしながら、ムウが「やれやれ」とぼやく。

 

 「はっは、すぐ一人前になりますよ」

 

 笑い飛ばすマードックに聞こえないように、ムウはつぶやいた。

 

 「ま……確かに、なってもらわないと困るんだよね、実際のとこ……」

 

 とんでもない場所へ降りてしまったという事実は、クルーたちの気持ちを重くはしただろうが、実感をもって考えられないのか、おおむね平静に受け入れられていた。
まあ、マードックは特別なのだろうが――彼にとっては、機動兵器の状態を正常にしておくことが最優先事項、そのほかは別の人間の仕事、ということなのだろう――みんな、自分達の置かれた状況がいかに絶望的なものか考えられないのだろうか。
 きっとみんな、爛悒螢ポリス瓩らこっち、つねにギリギリの綱渡りをしすぎて感覚がおかしくなっているのだろう。

 

 「そういや、嬢ちゃんの熱は?」

 

 マードックに訊かれて、ムウは気分を切り替えようとした。

 

 「朝には下がったってさ。――なあ、あの光は……そういうものでいいんだよな?」
 「ン? ああ、そうだな。あれは彼女自身の力、というわけではないと思う。だがその受け皿になってしまった以上、何らかの影響はあるかもしれない」

 

 ムウは「受け皿ねえ……」とつぶやいたあと、頭をめんどくさそうにかいてからメンテナンスベッドに据えられた爛妊絅┘覘瓩鮓つめた。

 

 「……ったく、あれには誰が乗ればいいんだか」

 

 ここは足場の悪い砂漠である。カナードは爛丱好拭辞瓩濃抉臻し發鬚靴討發蕕Δ里望ましい。キラはエールストライカー装備の爛好肇薀ぅ瓩任覆蕁△覆鵑箸なるだろう。だが、爛妊絅┘覘瓩呂修Δ發いない。そして、ムウとアムロには爛好イグラスパー瓩農空権を確保してもらう必要があるのだ。

 
 

 「どう、フレイの様子は?」

 

 ミリアリアが沈んだ声で話しかけた。だが、答えるサイにはどことなく安堵したようすが見える。

 

 「ああ、もう大丈夫らしい。熱も冷めたし。いまはすやすやと眠ってるよ――な、キラ」
 「うん。一時はどうなることかと思ったけど……ほんと、良かった」

 

 サイの横でほっと胸を撫で下ろしているキラに、トールは声をかけた。

 

 「おっつかれさん! こっちも訓練が面倒でさあ。早く覚えなきゃならないのはわかるんだけど、バジルール中尉が厳しいのなんのって」

 

 明るい調子でいうトールの横で、カナードが不機嫌そうに言う。

 

 「軟弱者め」
 「なんだよ、白状者めっ」

 

 トールがあっさりと言うと、カナードがむっつりと彼を睨みつける。

 

 「ったくさあ。お前もフレイの看病くらい手伝えば良いのに」
 「……その必要があるのか?」

 

 彼はつまらなそうに言い捨てた。だがトールは「はぁっ?」とすっとんきょうな声をあげ、呆れた口調で言う。

 

 「おいおい、友達だろ? それくらいしてやれって」
 「オレがいつそうなった。オレは――」
 「元ユーラシアの『仲間』だろ?」

 

 ぐっと押し黙るカナードに、トールは追い討ちをかけるように「助ける義務があるんだよなー?」と楽しそうな笑みを浮かべて言った。ミリアリアもくすっと笑ってから、話に乗ってくる。

 

 「あーあ。キラはずーっと看病してたのに……」

 

 カナードは思いっきり彼女を睨んだが、ミリアリアもまた、トールと同じような笑みを浮かべて「『義務』なのよね?」と言ってきたので、彼は今度こそむすっとして黙り込んでしまうのだった。

 

 「ひょっとして……カナ君は女の子の看病すらできないのかしらねえー?」

 

 楽しそうに言うミリアリアに、キラは「まあまあ」と止めに入ったが、すぐさまカナードは立ち上がり、そそくさと扉を開けて部屋を抜け出した。

 

 「……どこ行くんだ?」

 

 カズイが呆れて言った。

 

 「たぶん、フレイのとこじゃないかな……? 結構単純なとこあるから」

 

 そう言ってから、キラは深いため息をつくのだった。

 
 

 誰もいない医務室のベッドからゆらりと身を起こした者があった。シーツの下から、服の上からでもわかるなめらかな線を描く背中が現れ、肩から鮮やかな赤い髪が流れ落ちる。
 フレイはけだるげに髪を書き上げ、誰かの足音が近づいてくるのを聞いていたが、やがてぱたりと枕に頭を落とした。

 

 「……あ、夢だったんだ」

 

 その言葉が何を意味しているのか、彼女以外に知るものはいないだろう。その時、荒々しく部屋へ入ってきた無頓着にどかりとベッドの横の椅子に座り込む。その物煩さにフレイはぎりと奥歯をかみ締めた。

 

 「最っ低……」

 

 彼女の声を聞いて、カナードはベッドの側にやってきた。

 

 「……め、目が覚めたのか」
 「何驚いてんのよ……。ていうか、なんで起きて早々あんたの声聞いてて、あんたの顔を見なきゃいけないのよ」

 

 フレイはたっぷりと嫌味を込めていったつもりだったが、彼はわずかに視線を落としがっくりと項垂れた。

 

 「……あんた、なにしにきたわけ?」

 

 呆れてベッドから身を起こしたフレイは「良い夢だったのに、ぶち壊しじゃないの」と、文句を言ってからかるくあくびをした。だが、口ではそう言ったものの、その表情には笑みがこぼれている。そう、本当に素敵な夢だった。美しい鳴き声で鳴く赤い鳥が、人の言葉を喋るのだから。
 ふいにカナードが立ち上がり、ドアへ向かって歩き出した。フレイは少しだけ慌てて彼に問う。

 

 「ちょ、ちょっと、どこ行くのよ?」

 

 聞かれたカナードは、振り向きもせずに言った。

 

 「……帰る。もうここにいても意味はない」

 

 フレイは少しだけ寂しくなって、独り言のようにつぶやいた。

 

 「……もう少しいてくれても良いじゃない」
 「なにがだ?」

 

 聞こえないように言ったつもりが、どうやらカナードの耳に入ってしまったらしく、彼は怪訝そうな顔をして振り向いた。ギクっと身を震わせて、フレイは慌てた。

 

 「へ!? いや……えーと。――そう、そうよ! あんたどうせトールたちになんか言われて来たんでしょ! このまま帰っちゃったらそれこそ負け犬じゃない! だから、もう少しここにいなさいよ。うん、そういうことよ! わたしがあんたに花を持たせてあげようっての!」
 とマシンガンのように言いながらフレイはわずかに火照った頭で思う。そ、そりゃこいつは顔は悪くないし? むしろ良い方だとも思うし? 
少しくらい一緒にいてあげても良いかなとか思っただけで他意とかそんなのは何も無いわけで……などと心の中で取り繕いつつちらと視線を向けると、彼はそんなフレイを疑うような目で見つめ、やがて納得したのか、椅子を引っ張ってきて乱暴に座った。

 

 「で、オレにどうしろと言うんだ」
 「……あんた何しにきたのよ」

 

 がっくりと肩をおとすフレイを無視して、カナードはそのままむっつりと黙り込んだ。彼女はため息をついてから、仕方なく自分から話を始める。

 

 「他のみんなはどこにいるの?」
 「食堂だ」
 「んと、ここどこ?」
 「医務室だ」
 「そうじゃなくて――」
 「地球だ」
 「だからあ!」
 「――? 爛◆璽エンジェル瓩澄
 「……アムロさんは?」
 「知らん」

 

 あ、やっぱ駄目だこいつ。何がどうとかじゃなくとにかく駄目だ。フレイはカナードを思いっきり睨んだが、それに応えた様子もなくけろりとしている。

 

 「ほんと、最っ低……。――ああそうだ、ラクスは?」

 

 フレイはまたそっけない答えが返ってくるのだろうと思っていたが、カナードはにいっと意地の悪い笑みを浮かべて答えた。

 

 「独房だ。――綺麗ごとしか語らない愚か者は力で躾けるのが一番だろう? あの表情は見物だった」

 

 そう言って楽しそうに笑い出したカナードに、フレイはわずかに感じた甘い感情が急激に冷めていくのを自覚し、「……ほんと、駄目よね」とうめく。彼はまたわけがわからないといった顔をして、首をかしげた。

 

 「何がだ?」
 「いいの。さ、行くわよ」

 

 そう言いながらベッドから身を起こし、立ち上がったフレイに彼は眉をしかめた。

 

 「どこへだ」
 「ラクスんとこ」
 「そうか、行って来い。オレは帰る」
 「あんたも来んのよ」

 

 カナードは「なにっ?」と言って驚きを隠そうともせずに立ち上がった。

 

 「なぜオレが……」
 「光栄に思いなさい。アルスター家の令嬢を護衛できるんだから」

 

 思い切りこき使ってからボロ雑巾のように捨ててやろうかなどと考え、機嫌良く彼女は部屋を後にした。カナードは悔しそうに顔を顰めてから、周囲のものに当り散らしながらフレイを追っていった。

 
 

 冷たい独房の一室で、膝を抱えて頭を伏している少女がいた。桃色の髪はくしゃくしゃになり、顔には涙の跡が見え、左頬ははたかれ赤くなっている。いつもいっしょのハロの姿も見えない。
 少し離れた場所から、痴話げんかのようなものが聞こえてきて、ラクスは頭を上げた。

 

 「――女の子に暴力振るうなんて最低よねえ。一度地獄に落ちればいいのに」
 「貴様――」
 「口答え禁止ーっ。わたしはアルスター、あんたはただの下士官」

 

 ――無事だった……! ラクスの顔がぱあっと明るくなる。だがすぐにその表情はもとの暗さを取り戻し、うつむいた。彼女が生死の境をさまよう原因を作ったのは、自分なのだから……。
 やがて、足音が扉の前で止まった。

 

 「ラクスーっ。起きてるー?」

 

 その声に、ラクスはビクっと体を震わせる。ナチュラルの初めてできた友達。今は、彼女にあわす顔が無いのだ。息を殺し、じっと相手が去るのを待つ……。

 

 「寝てるのかな?」

 

 とフレイがドア越しに言うと、自分の頬を叩いた男がつまらなそうに鼻を鳴らし、言う。

 

 「本当に寝ているのなら、寝息を立てるものだ」

 

 ぎくり、と心臓が跳ね上がる。

 

 「フーン? だってさ、ラクス?」

 

 と、フレイが勝ち誇ったように言う。ラクスは観念するしかなかった。

 

 「……はい」

 

 何がはいなのか自分でも良くわからなかったが、それしか言うことができず、思わず顔を伏せた。

 

 「ここって冷えるわね。カナード、上着よこしなさい」

 

 舌打ちをするような音がして、ごそごそと服を脱ぐ音が聞こえる。

 

 「ん、暖かい。――ね、ラクス。そこ寒くない?」

 

 「あ、はい。大丈夫です……。あの、フレイさん。怒っていないのですか?」

 

 ラクスは恐々と聞いた。その問いに、フレイが明るい口調で答える。

 

 「怒ってるわよ、ものすっごく。だからさ、こんどなんかおごってよね」
 「――え? あの……」
 「許してあげるって言ってんの。もう二度とごめんだけどね、あんな怖い思いは」

 

 彼女の言葉は、ラクスにとって救いであった。心の内がわずかにぽっと暖かくなる。吐く吐息が熱を帯び、今生きていることを改めて実感すると、ラクスは自然と笑みを浮かべていた。
 そのとき、別の声がしてきた。

 

 「あれ、カナードに、フレイも。気がついたんだ!」

 

 嬉しそうなキラの声がした。ラクスは一度、子犬のようにカナードの後をついて回るキラの姿を思い出し、ふふっと微笑む。

 

 ふいに、彼とは別の気配が扉の前で止まると、優しい口調で、その男が言う。アムロだとすぐにわかった。

 

 「ラクス・クラインさん。ずいぶんと無茶をしたようだね」

 

 ――無茶。ああ、あれは無茶な事だったのか、と改めて実感し、視線を落とした。

 

 「……みなさんを、助けたかったのですが……」

 

 結局、何もできなかった。今までの人生全てを、否定されたような気がした。

 

 「その気持ちは大切なことだ。誰かを守ろうという志は、失ってはならないと思う――」

 

 だが、アムロの声は優しかった。彼は続ける。

 

 「でもねラクス・クライン。人一人の力で、全ての人間を救う事なんてできやしないんだ。僕たちは……自分のできる範囲で、精一杯やることしかできない」
 「……それは、わかります。ですがわたくしは――!」

 

 思わず反論し、ラクスは言葉を詰らせる。わたくしは……何だろう、人の心も動かせず、戦う力も無いわたくしは、いったい……。
 扉越しのアムロがふっと息をつく。

 

 「――少し、昔話をしようか」

 
 

 「昔話……ですか?」

 

 キラは、そのまま座り込むアムロに釣られて床に腰を下ろし、聞いた。

 

 「ああ。僕がまだ十五歳の時の話だ」

 

 「えっ?」とキラが声をあげた。フレイは膝を抱えて壁に背を預け、体育座りの姿勢をとっている。カナードは興味がなさそうだったが、フレイがまだ帰ろうとしないので、動くに動けない。彼は腕を組んで壁に寄りかかっている。

 

 「僕は……十五の頃、戦争に巻き込まれてね――」

 

 キラははっとしてアムロを見やる。――ぼくと同じだ……。そう思い、自分達に優しく接してくれていた理由を理解した。

 

 「前線で戦ううちの隊に、補給部隊が来てくれたんだけど……その隊長さんが綺麗な人だったんだ。たぶん、あれが僕の初恋だったと思う」

 

 アムロはどこか遠くに思いを馳せるように、じっと一点を見つめている。

 

 「僕の隊には避難してきた民間人や士官候補生しかいなくて。僕が敵と戦うことになったんだ。親父が兵器開発に携わっていたこともあって、少し動かす事ができたから。
それと、大型トラックの免許を持ってた柄の悪い人と、近所に住んでた知り合いと、隊のまとめやくだった正規軍人の人と……戦力はそれくらいだった」

 

 そう言ってから、アムロは少し悲しそうに顔を落とす。

 

 「最初に、僕たちのまとめ役だった――リュウ・ホセイって人が死んだ」

 
 

 キラたちははっと息を呑んだ。思わずキラが「死んだって……?」と聞き返す。

 

 「ン? そのまんまの意味さ。僕を守るために、敵に特攻をしかけた。……後ろを取られて、どうしようもなかったんだ」

 

 フレイが何か励ますような言葉でも言おうとしたのか視線を泳がせたが、言葉が浮かばないのだろう、そのまま黙ってしまう。

 

 「その次に――初恋の人も……彼女も僕を守る為に、ね……。マチルダ・アジャンっていう、素敵な人だった」

 

 唖然としているキラを尻目に、アムロは更に続けた。

 

 「しばらくしてから……彼女と結婚する予定だった人に出会った。彼もまた、僕たちを守る為に戦って――」

 

 アムロは何かを考えるように目を閉じ、そのまま言った。

 

 「僕はその人に、マチルダさんを守れなかったことを謝ったんだ。そしたらね、彼が……『自惚れるんじゃない、アムロ君。君一人の働きでマチルダが助けられたり戦争が勝てるなんていうほど戦争は甘いもんじゃないんだぞ。
パイロットはその時の戦いに全力を尽くして後悔するような戦い方をしなれけばそれでいいんだ』っていって、叱ってくれたんだ」

 

 そういうアムロの顔は、とても悲しげに見えた。やがて、彼は顔を上げ言った。

 

 「ラクス・クラインさん。僕たちは人間なんだ。どうやったって敵わないものもあるし、守れないことだってある……」

 

 力強く励ますアムロの声の先から、すすり泣くような音が聞こえてきた。涙声で、ラクスは言う。

 

 「では……では……! わたくしはなにをすれば良いのでしょうか!? どうすればいいのでしょうか!? みなさんを……助けたいのにっ!」
 「それは自分で見つけなければならない。君が君自身の力でできる範囲のことで、精一杯できる何かを。……人類全てを救おうなんて、そんな奢った考えは――……ある人が、そんな考えを持っていたけれど……結局彼は……」
 アムロは一度言葉を切り、天を仰いだ。何かに思いを馳せるように、言う。
 「――ヤツもまた、純粋だったのかもしれない。ひたむきに人類全てを救おう……だけど……あんなこと、許されることじゃない……!」

 

 アムロの拳に自然と力が篭る。彼が忌々しげに顔を伏せ、うめく。

 

 「……でも、ヤツにそうさせてしまったのは…………」

 

 ぞっとするほど冷たい視線で一点を見つめるアムロは、何か取り返しのつかないことをしてしまったような、そんな特有の後悔の念を帯びていた。
 その様子に、フレイは「……アムロさん?」と心配げな声をかける。アムロははっと顔を上げ、またいつもの優しい表情に戻り、言う。

 

 「……いや。――大切な人も、家族も、守るべき人もいないような力じゃただ悲しみを生むだけだ。どれだけ力を持っていたとしても、大きな時代のうねりには逆らうことができないんだ。だからさ、僕たちはそのうねりの中で必死に生きていくことしかできない。僕は……そう思う」

 

 ああ、そうかとキラはようやく理解した。この人は、ぼくたちに自分を重ねているんだ、と。きっと彼は凄く苦しんでいて、今も後悔ばかりをしている。きっとこの人はぼくらを救うことで、かつて守れなかった人たちに贖罪しようとしているのかもしれない……。
 それは悲しいものの見方だ。とキラは思う。死者に贖罪するためだけの人生など……。
 カナードがつまらなそうに目を逸らす。フレイは悲しそうな顔でじっと何かを見つめている。暗くなってしまった雰囲気をほぐすように、アムロはあえて明るい口調で言った。

 

 「それに、僕はまだ人類に絶望なんかしちゃいない。人間は色んな壁を乗り越えて、種族の差や、ナチュラルとコーディネイターの問題だって、必ず解決できると信じてる」

 

 優しく、それでいて力強く諭すように言うアムロに、キラは顔を上げた。凄いな、と改めて思う。彼はひたむきに、人そのものを信じているんだ。そこにはナチュラルもコーディネイターも無く……。
 人を、信じる……。それは、簡単なように思えて、とても難しい。人の何を信じるのか、悪い連中はかならずいるのだ。では、どうやって……。きっと彼は、そういった世界の闇を見、それでも人を信じる道を選んだのだろう。何者にも屈しない強い心の持ち主。それが、キラがアムロに感じた素直な感想であった。
 自分にもできるだろうか、そんなことが……。キラにはわからない。まだまだ知らないことが多すぎる、世界は彼の想像している以上に広いのだから。

 
 

 「――どうかな? 噂の『大天使』の様子は」

 

 上官の声に、赤外線スコープを覗き込んでいたマーチン・ダコスタは顔を上げた。

 

 「はっ、依然何の動きもありません!」

 

 振り仰いだ先には、長身の精悍な男の姿があった。砂地用の迷彩服で包んだ体躯は引き締まり、面長な顔は日に焼け、独特の野性味を漂わせている。

 

 「地上はNジャマーの影響で電波状況が滅茶苦茶だからな。『お姫様』はいまだスヤスヤとお休みか……」

 

 男は言いながら片手に持ったカップを口に運び、そこで「んっ!?」と表情を変えた。ダコスタはさっと身構える。

 

 「なにか!?」

 

 異変でもあったのかと見守る彼の前で、上官は突然、満足そうに顔をほころばせた。

 

 「いや、今回はモカマタリを五パーセント減らしてみたんだがね、こいつはいいな!」

 

 どうやら飲んでいるコーヒーの感想だったらしい。ダコスタはがっくりと拍子抜けする。この上官のひそかな趣味は、コーヒーの自己流ブレンド法なのだ。いくらコーヒーの産地が近いとはいえ、そこまで凝ることはあるまいに――と、コーヒーなど黒くて苦いものとしか思っていないダコスタとしては、内心あきれるている。

 

 「次はシバモカあたりで試してみるかな……」

 

 こうしているとちょっと変わり者のふざけた男にしか見えないが、彼には別の顔がある。この男こそ、ザフト軍地上部隊における屈指の名将にして名パイロット、アンドリュー・バルトフェルド ――通称『砂漠の虎』であった。
 作戦行動中とは思えないほど悠然とした態度で、バルトフェルドはコーヒーを飲みながら砂丘をするすると下っていく。
 月の光を受けて、しんと白く光る砂丘の麓に、わだかまる影のように動かない巨大な機体とヘリコプターやバギー、そしてその周囲で動き回る男達の姿があった。
 バルトフェルドの姿に気づいた男達は、すばやく整列した。彼らの隊長が口を開く。

 

 「では、これより地球連合軍新造艦爛◆璽エンジェル瓩紡个垢觝鄒錣魍始する!」

 

 声を張ってはいるものの、その口調は無造作でさりげない。

 

 「――目的は、敵艦及び搭載モビルスーツの戦力評価である!」

 

 その彼の言葉を受けて、パイロットの一人がにやにやしながら質問した。

 

 「倒してはいけないのでありますかぁ?」

 

 すると、バルトフェルドは「うーん」と、少し考えた。

 

 「まあ、そのときはそのときだが……。あれは、クルーゼ隊がついにしとめられず、ハルバートンの第八艦隊がその身を犠牲にしてまで地上に降ろした艦である。そのことを忘れるな。……一応な」

 

 あっさりと最後に付け加えられた一言を聞いて、兵士たちの顔に自身に満ちた笑みが浮かぶ。上官と兵士の間に、揺るぎの無い連帯感が漂った。

 

 「では、諸君の無事と検討を祈る!」

 

 その声を合図に兵士たちが、さっと敬礼し、バルトフェルドも片手を挙げて返した。ダコスタが号令をかける。

 

 「総員、登場!」

 

 とたんに兵士たちが四方へ散った。おのおのが愛機のコックピットに収まると同時に、ダコスタが運転席に座る指揮車に、バルトフェルドも乗り込んだ。

 

 「うーん、コーヒーが美味いと気分がいい」

 

 瞬間、呑気そうに見えた男の瞳に、ちらりと物騒な光が見えた。

 

 「さあ――戦争をしに行くぞ!」

 
 

 〈第二戦闘配備発令! 繰り返す、第二戦闘配備発令――〉

 

 夜間艦内に鳴り響いた警報に、マリューやムウらは飛び起きた。慌てて身支度し、部屋を飛び出す。
 艦橋へ向かうサイの後ろから、フレイが走ってきたのをみて、彼はぎょっとした。

 

 「フ、フレイっ!? もう大丈夫なのか? 走ったりして……」
 「大丈夫よ。 それよりも敵が来たんでしょ?」
 「でもさ、まだ寝てないと……!」

 

 驚いて立ち止まっているサイを追い抜き、フレイは少し苛立った顔をして言った。

 

 「できることをやるって決めたばっかりなのっ」

 

 そう言って先に行ってしまうフレイを、彼は慌てて追いかけた。

 
 

 砂丘の向こうから、数発のミサイルが飛来する。七五ミリ対空自動バルカン砲塔システム爛ぁ璽殴襯轡絅謄襯鶚瓩それを迎撃し、撃ち落す。艦内にもその爆音は鈍く響いた。

 

 〈調整は完璧なんだな?〉
 〈もちろんですぜ。早めに配備されたおかげで、じっくりと弄ることができました〉

 

 左舷のカタパルトデッキでは、爛好イグラスパー瓩料阿妊▲爛蹐肇沺璽疋奪が最後の確認をしている。パイロットスーツに着替えたキラは、重力による制約を苛立たしく感じながら――もうコックピットまでひと飛びというわけにはいかない――爛好肇薀ぅ瓩望茲蟾んだ。

 

 〈――砂丘の陰からの攻撃で、発射位置特定できません!〉

 

 通信回線を開くと、艦橋のやりとりが流れ込んでくる。

 

 〈第一戦闘配備発令! 機関始動!〉

 

 エンジンが始動する振動が、かすかに艦内を奮わせた。続くトノムラの声に、爛好肇薀ぅ瓩魑動させていたキラは、さっと全身を緊張させる。

 

 〈五時の方向に敵影三! ザフト戦闘ヘリ爛▲献礇ぅ覘瓩罰稜А〉
 〈ミサイル接近っ!〉
 〈機影ロスト!〉

 

 ナタルの命令が挟まる。

 

 〈照明弾散布! 迎撃!〉

 

 キラがじりじりしてるところに、アムロから通信が入った。

 

 〈今回の戦闘から、僕が戦闘隊長を任されることになった。よろしく頼む〉

 

 いつものような余裕の表情に、キラはどことなく安堵を覚えた。そうだ、この人がいる限り、爛◆璽エンジェル瓩落ちることは無い。そう思える絶対的な実力と信頼を、アムロに寄せる事ができる。先ほどの話を聞いてから、その考えがよりいっそう深まったのだ。

 

 〈で、どうする? 敵の姿は見えないのだろう〉

 

 むっつりとした口調でカナードが言った。

 

 〈ン、まずは僕とフラガ少佐が出る。それで敵をおびき寄せるから、それまでは爛◆璽エンジェル瓩旅暖弔両紊捻戦してくれ。モビルスーツを出してくるだろうから、そちらを優先的に狙ってくれればいい〉
 〈――了解だ〉
 〈了解です、アム――レイ中尉〉

 

 カナードに続いてキラがそう返事をし終わると、モニターの中のアムロが優しく微笑んだように見えた。二機の爛好イグラスパーが瓮タパルトへ運ばれていく。通信からアムロとムウの会話が聞こえてきた。

 

 〈さて、と。空の王者が誰かを教えてやらないとな、アムロ〉
 〈そういう考えもできるが、少佐には敵艦を探してもらいたい〉
 〈ま……それもいいけどよ。一機で大丈夫か?〉
 〈大丈夫さ。――アムロ爛好イグラスパー畚个襪勝〉

 
 

 自身に満ちた声でそう言った後、アムロの爛─璽襯好肇薀ぅー瓩鯀備した爛好イグラスパー瓩発進し、続くように爛薀鵐船磧璽好肇薀ぅー瓩鯀備したムウの爛好イグラスパー瓩△箸紡海い拭ミリアリアの声が聞こえてくる。

 

 〈爛好肇薀ぅ瓠↓爛丱好拭辞瓠発進位置へ!――レイ中尉が敵を掃討してくれるので、二人はモビルスーツだけに集中して〉
 「了解だよ、ミリィ」
 〈いいだろう、了解だ〉

 

 ハッチが開いた。爛薀鵐船磧璽好肇薀ぅー瓩装着され、キラはカタパルトの上で身構える。ナタルの命令が最後に入った。

 

 〈――爛好肇薀ぅ瓠↓爛丱好拭辞瓠重力を忘れるな!〉

 

 リニアカタパルトが機体を勢いよく打ち出す。ナタルに言われていたにもかかわらず、急速に近づいてくる地表にキラは一瞬とまどう。

 

 「――うっ……!」

 

 着地の体勢が崩れ、よろけて膝をついた爛好肇薀ぅ瓩梁元で、細かな砂がさらさらと流れ落ちる。

 〈なにをやっている、下手糞!〉

 

 カナードの苛立った声が聞こえてきた。

 

 「だ、だって……」
 〈甲板の上でと言っただろう! 聞いておけ!〉

 

 キラは慌てて爛好肇薀ぅ瓩離好薀好拭爾鮨瓩せて爛◆璽エンジェル瓩留Ω森暖弔鉾瑤咯茲辰拭左舷には爛丱好拭辞瓩了僂發△襦ふうっと息をついてから、彼はカナードに聞いた。

 

 「こういうときって、設置圧を合わせればいいのかな?」
 〈ああ、そうだ。今の内に変えておけ。摩擦係数は……そうだな、マイナス十五か……。いや、二十だな〉

 

 そういいながら、モニターの中のカナードは常人にはありえない速度でキーボードを叩き出した。キラも慌ててそれに続く。

 

 「でもぼくたちこんなことしてて良いのかな? 中尉たちだって戦ってるのに」
 〈……よく見てみろ〉

 

 カナードの不機嫌な物言いに、キラは首をかしげながらカメラに映し出される外の映像を凝視する。だが、そこに一面に広がる青空があるだけだった。キラはまた騙されたと重い、不機嫌な声をあげる。

 

 「何もないじゃないか」
 〈艦の下を見ろ、馬鹿め〉

 

 え? と思い、彼は視線を落として砂の海を見やる。そこには無残な残骸を晒す、ボロボロの爛▲献礇ぅ覘瓩何機も横たわっていた。

 

 「全部倒しちゃったってこと……?」
 〈隠れてる敵がいるだろうが……それ以外のはそうだろう。だが残骸も少ない。陽動か、もしくは偵察といったところだ〉

 

 カナードは不機嫌そうに舌打ちをした。やがて、爛好肇薀ぅ瓩留親哀廛蹈哀薀爐僚だ気完了したとき、敵機の存在を知らせる警告音がコックピットに鳴り響く。
 砂丘の向こうから、黒っぽい影が躍り出た。

 

 「――なにっ……?」

 

 ヘリではない。キャタピラを駆動させて砂丘を疾走する機体は、宙に浮いた瞬間、シルエットを買え、四本の足で地表を蹴った。
 ――モビルスーツ……?
 しかしそのシルエットは、見慣れた二足歩行の人型とはかけ離れている。通信越しのカナードが、〈――ほう〉と声をあげた。

 
 

 「あれは……!」

 

 見慣れない機体に、爛◆璽エンジェル瓩隆篭兇任魯泪螢紂爾目を見開いた。機種を特定したサイが報告する。

 

 「敵機五! TMF/A‐八○二、ザフト軍モビルスーツ爛丱ゥ瓩罰稜А」
 「爛丱ゥ瓠?」

 

 ブルーグレイの機体は、まさに四本足の獣に似た形状で、背中に翼を負った姿は神話のグリフォンにも見える。重力下での安定性を重視した、地上作戦用に開発された機体だ。こと砂漠においては、四本の脚部によって身軽に飛び回ることができ、
キャタピラによる高速走行もお可能としたその運動性により、主力兵器として配備されている。

 

 「へえー、バクっと噛み付きそうだから爛丱ゥ瓩覆里な?」

 

 くだらない事を言ってるフレイをナタルは苛立ったが、それに構わずに命令を出した。

 

 「爛好譽奪献魯沺辞瓩膿箆を確保! 爛好肇薀ぅ瓩鉢爛丱好拭辞瓩鮓かわせろ!」
 「――了解! 爛好譽奪献魯沺辞疊射!」

 

 トノムラはこわばった表情でミサイル発射ボタンを押す。爛◆璽エンジェル瓩慮緝凜潺汽ぅ詒射管から、対空ミサイルが放たれた。それに応じて、ミリアリアが通信をいれる。

 

 〈キラ、カナード。爛丱ゥ瓩料蠎蠅鬚願い!〉

 
 

 ミサイルが発射されるやいなや、こちらに迫っていた爛丱ゥ瓩瞬時にその地点を離脱した。その先を目掛けて、爛好肇薀ぅ瓩劉爛▲哀豊瓩鉢爛丱好拭辞瓩龍綵住優潺蠎束火線ライフルが火を噴いた。 二機の爍猫瓩ら放たれた火線は、正確に爛丱ゥ瓩魎咾、やがて爆発をはじめた。
 二対の爆発の炎が、砂の海をあかあかと照らし出す。

 

 〈まずは二機っ!〉

 

 カナードがにやっと声をあげる。それにやや遅れて、もう一つの炎も上がった。

 

 〈――三つ目だ。残り二つを押しかえすぞ!〉

 

 アムロの爛好イグラスパー瓩上空から狙撃したのだ。爛好肇薀ぅ瓩鉢爛丱好拭辞瓩廊爛◆璽エンジェル瓩旅暖弔ら降り立ち、爛丱ゥ瓩侶涎發妨かう。

 

 「あ、ほんとだ。もうずれないや」

 

 ずれない足元を見て、キラは喜んだ。

 
 

 「あの一瞬で三機もやったぞ!」

 

 固唾を呑んでモビルスーツ戦を見守っていた爛◆璽エンジェル瓩隆篭兇法∋廚錣佐神爾上がった。が、そのときフレイがぶるっと身を震わせ、声を漏らす。

 

 「何、これ……? 誰?」

 

 その様子を見てわずかに目を細めたナタルに気づかずマリューはつい今しがた起こった爆発に目を奪われていると、アムロから通信が入った。

 

 〈南西から敵が来る。爛◆璽エンジェル瓩藁ゾ欧髻〉

 

 マリューははっとして命じた。

 

 「離床っ! 緊急回避――!」

 

 砂を高く巻き上げ、爛◆璽エンジェル瓩竜霏里ゆっくりと浮かび上がる。 やや遅れて、チャンドラが報じた。

 

 「南西より熱源接近っ! 艦砲です!」

 

 迫るミサイルを爛丱好拭辞瓩対装甲散弾砲で掃討する。

 

 〈こちらカナード。これより爛◆璽エンジェル瓩了抉腓鵬鵑襦それまでくらいは持ちこたえてみせてくれよ?〉

 

 カナードから皮肉ったような通信が入った。それに応答するミリアリアを横目で見ながら、ナタルが叫ぶ。

 

 「攻撃はどこから来た!?」
 「な、南西二○キロの地点と推測」

 

 と、サイが報告し、トノムラが、「本艦の攻撃装備では対応できません!」と、暗然たる事実を告げる。その直後、再びチャンドラの鋭い声が艦橋に響いた。

 

 「熱源、さらに接近っ!」
 「爛丱好拭辞瓠撃ち落せるか!?」

 

 マリューがそう聞くと、モニターの中のカナードは不敵に笑みをこぼした。

 

 〈誰にものを言っている。――当然だ〉

 
 

 「――爛◆璽エンジェル瓩っ……!」

 

 キラは飛び来る艦砲の軌跡をとらえ、うめいた。あれが全部当たったら、爛◆璽エンジェル瓩鰐技ではすむまい。
 そう危惧した直後、爛丱好拭辞瓩二二○ミリ怪六連装ミサイルポッドを放ちながら対装甲散弾砲構え、迫るミサイルを全て撃ち落した。
 キラはほっと胸を撫で下ろしてから、目の前にいる爛丱ゥ瓩鬟ッと見据えた。
 ――さあ、どうする……。
 爛丱ゥ瓩牢靴譴人融劼覇阿回り、爛好肇薀ぅ瓩鯔殤する。
 じっと前を見据え、爛▲哀豊瓩覗世い鯆蠅瓩襦A世Δ郎――!
 その時、警報《アラート》と同時に上空からミサイルが降り注ぎ、キラはあわてて機体を動かした。それの動きに合わせて迫る二体目の爛丱ゥ瓠四○○ミリ一三連装ミサイルポッドからミサイルがばら撒かれ、頭部バルカンでいくらか撃ち落すも、数発が直撃し激しい衝撃がコクピットを襲う。
転がるようにして追撃の火線から逃れようとするも、尚も爛丱ゥ瓩追いすがり、二連装ビームサーベルを口元に煌かせ飛び掛る。
即座に上空から正確な光条が爛丱ゥ瓩龍刺凜灰ピットを串刺しにし、アムロからの援護だと知るが、目の端で捉えた爛好イグラスパー瓩録啓蠅寮鐺ヘリを一機で受け持っており、これ以上の支援は不可能だと知る。
 最後の一機となった爛丱ゥ瓩油断無く旋回し、じわじわと爛好肇薀ぅ瓩筏離をつめる。キラは三五○ミリガンランチャーをばらまき、なんとかして距離を取ろうとするが、砂漠での機動は圧倒的にあちら側に部があるようで、思うようにいかない。
 再び警告音が鳴り響き、キラははっと息をのみ、エネルギーゲージに目をやる。バッテリー残量がいつの間にかレッドゾーンに近づいていた。
 迂闊だった、爛▲哀豊瓩鮖箸い垢たのだ。後ろにカナード、アムロもいるという安心感が、キラの注意力を散漫にさせたのだ。PSシステムが落ちれば、一発のミサイルでも致命傷になりかねない。
それでも、これで艦に戻ったらまたカナードに馬鹿にされるな、と考えるキラは、未だ戦争に徹しきれていない甘さが残っていた。それが、致命的な隙となる。
 ちょうど真正面に位置する爛丱ゥ瓩叛吉紳弌宗臭爛好肇薀ぅ瓩稜惴紊某惻茲覦豕,寮鐺ヘリからミサイルが放たれ、やや遅れて警報が鳴った。

 

 「……っ!」
 ぞっと身を震わせたキラであったが、瞬間、突然数台のバギーが躍り出、そこから放たれたいくつかの火線が迫るミサイル群を撃ち落し、戦闘ヘリの一機にもその砲撃は命中した。乗り込んだ者たちは手にしたランチャーからグレネードを発射し、勇猛にも爛丱ゥ瓩妨かっていく。
うちの一台がまっすぐ爛好肇薀ぅ瓩冒り寄り、助手席で金の髪をなびかせていた人物が、ワイヤを機体に向けて発射した。少女の凛とした声が響く。

 

 〈そこのモビルスーツパイロット! 死にたくなければこちらの指示に従え!〉

 

 ワイヤをアンテナとして経由し、送られてきた通信らしい。一拍遅れて、転送されてきた情報がモニター上に割り込んでくる。それは、付近の地図とおぼしき図形だった。地図上の一点が点滅する。

 

 〈そのポイントにトラップがある! 爛丱ゥ瓩鬚修海泙任びき寄せるんだ!〉

 

 さっきと同じ少女の声が指示を伝え、こちらの返事も待たずに音声は途切れた。キラは走り去っていくバギーを一瞬見つめる。
 相手が何者かもわからない。味方かどうかさえ。だが、ザフトと敵対する者たちであることだけは確かだ。
 既にエネルギーは底をつきかけ、爛▲哀豊瓩琉貳すら撃てないこの状況下……キラは心を決め、バギー群に従った。
 爛好肇薀ぅ瓩飛ぶと、あわてて爛丱ゥ瓩追いすがる。着地し、飛ぶたびにキラはエネルギーゲージを確認し、冷や汗をかく。

 

 「どうなるんだ……?」

 

 最後のジャンプで、爛好肇薀ぅ瓩話録涵紊離櫂ぅ鵐箸帽澆衫ち、焦らすように背後を振り返った。その機を逃さず、爛丱ゥ瓩襲ってくる。
 キラは十分に爛丱ゥ瓩魄き付け、その爪が届こうというときに、タイミングを計って再び爛好肇薀ぅ瓩鮃發飛び上がらせた。
 さっきまで自分が踏みしめていた場所、爛丱ゥ瓩着地した地面が、爆発音を上げて陥没した。そこは、この地方にいくつもある廃坑の上だったらしい。もがきながら地の底に落ちていく爛丱ゥ瓩蓮一瞬のちに凄まじい爆発に飲み込まれた。
爛丱ゥ瓩廃坑に落ち込むと同時に、例の少女たちが残留していた天然ガスに点火し、誘爆を引き起こしたのだ。廃坑を利用した巧妙な罠だった。

 

 「撤収する」

 

 バルトフェルドが告げると、副官のマーチン・ダコスタが夢から覚めたように彼を見やった。たしかに――まるで悪い夢をみていたようだ。だが、夢ではない。

 

 「――この戦闘の目的は達した。残存部隊をまとめろ」

 

 当初の戦闘の目的――敵の戦力評価は十二分に果たした。多大なる犠牲をともなって。一夜にして五機もの爛丱ゥ瓩失われた。そして何よりも、連合にとって輝かしい戦果を得る要因となったのが、あの戦闘機だ。『砂漠の虎』と恐れられるバルトフェルドも、こんな戦いを経験したことはない。

 

 「しかし……あのパイロット……」

 

 彼はここから戦闘を見ていた。戦闘機が出撃したと思ったら、一瞬で全ての戦闘ヘリ爛▲献礇ぅ覘瓩鮹,落とし、迫っていたミサイルも撃ち落した。それどころか爛丱ゥ瓩鯊┷造鉾見し、爛◆璽エンジェル瓩亮幼距離まで誘導していったのだ。

 

 「あれがナチュラルの仕業だと――?」

 

 バルトフェルドは唸り、皮肉な笑みを浮かべた。そう、こんなことをできるのは、ヤツしかいない。――クルーゼ隊が多大な犠牲の末に落としたという……。
 最後に彼は、ちらりと背後を見やった。

 

 「――ダコスタくん。 本国へ連絡だ。――『メビウスの悪魔』は生きていた、と」

 
 

 一方爛◆璽エンジェル瓩隆篭兇任蓮敵があらかた片付いたことに安堵していた。
 そのとき、ミリアリアのモニターにレーザー通信が入った。

 

 「フラガ大――いえ、少佐より入電です! 『敵母艦を発見するも攻撃を断念。敵母艦は爛譽札奪廛広瓠戞」

 

 彼女が電文を読み上げると、マリューが鋭い声をあげた。

 

 「爛譽札奪廛広瓠?」
 「『――繰り返す、敵母艦は爛譽札奪廛広瓠これより帰投する』――以上です」

 

 マリューの顔が深刻な表情を浮かべるのに気づき、ナタルが問う。

 

 「……爛譽札奪廛広瓩箸蓮」
 「爛譽札奪廛広瓩箸蓮宗愁▲鵐疋螢紂次Ε丱襯肇侫Д襯匹諒豐呂世錙

 

 マリューはまだ見ぬ敵艦を、闇を通して睨むような目つきになる。

 

 「……敵は、『砂漠の虎』ということね」

 
 

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