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CCA-Seed_◆ygwcelWgUJa8氏_12

Last-modified: 2012-10-03 (水) 22:12:04
 

 「おおっとぉ!」
 「うわあ! すげー! これで十五機だぜ!」
 「へえーっ!」

 

 爛◆璽エンジェル瓩虜幻審頁叱砲琉豎僂如⊂年たちが次々に興奮した声を発していた。通りすがったキラとトール近づいて、声をかける。

 

 「あれ? みんないる」
 「なにやってんだ?」

 

 爛妊絅┘覘瓩離轡潺絅譟璽拭爾鮗茲螳呂鵑任い織潺螢▲螢△筌ズイが振り向く。

 

 「あ、トール、キラっ。見て! この子すごいの!」
 「わぁっ!? また一機!」

 

 シミュレーターに座り、操縦桿を握って画面上の爛妊絅┘覘瓩鯀爐辰討い燭里魯ガリだった。興味を引かれたラクスも寄ってきて背後から覗き込み、楽しそうな笑みを浮かべた。

 

 「すごいですわカガリさま。とてもお強いのですね」

 

 カガリは得意げに笑い、トリガーを引いた。画面の中では最後の敵機が撃ち落され、シミュレーション終了をしめす画像に切り替わり、被験者の成績が並んでいく。

 

 「ま、私がダントツでトップだろうな」

 

 まんざらでもない笑みを浮かべて、画面をちらっと片目で見た。キラがそれを読み上げる。

 

 「えーと、なになに……あ、トップはアムロさんだね――。げ、撃墜数百二十機!?」

 

 「えーっ!?」と一斉に少年たちが画面を食い入るように見つめた。
 「百機ってどうやって落としたんだろう……」
 「二位はカナードか……。なんでナチュラルなのにアイツより上なんだろう」

 

 カズイが呆れ顔でぽつりと言い、サイも続いた。ふと、ミリアリアが嬉しそうに笑みをこぼした。

 

 「あ、トールは四位だって! カガリさんは三位かあ」

 

 トールが照れるように笑みをこぼしてから、言った。

 

 「まあ、これくらいは頑張らないとな。サイだって三機撃墜して、五位だぜ?」

 

 見れば、確かに五番目にはサイの名前もある。「私だって二機落としたわよ?」と楽しく言ったミリアリアの横で、カズイがボソッと「俺、出た瞬間落とされた……」とつぶやいている。そこへマードックが苦笑しながらやってきた。

 

 「よう、坊主ども。やってるな?」
 「まあ、マードックさま。いつもご苦労様です」

 

 ラクスがペコリとお辞儀をした。彼はむず痒そうな顔をした後、少年たちに言った。

 

 「盛り上がってるとこ悪いんだがな。そのシミュレーターは当てにならないらしいぜ?」
 「へ? なんでですか?」

 

 キラが首をかしげた。彼は苦笑したまま答えた。

 

 「少し前に中尉がこれをやったんだがな……やっぱ駄目だってよ、回避プログラムのルーチンやら何やらがさ」
 「なーんだ。せっかくそこそこ頑張れたと思ったのになあ」

 

 ぽりぽりと頭をかいて言うマードックに、トールが大げさに落ち込んで見せながら言う。その横で、更に落ち込んだようにカズイがぼそっとひとりごちた。

 

 「俺、それでも出た瞬間落とされた……」
 「操作に慣れるってことでは良いとは思うから……元気出して、カズイ」

 

 キラが慌ててフォローに入ったが、カズイは顔を落として乾いた笑いをしたまま動かない。サイがそれを横目で見ながら、マードックに質問した。

 

 「どれくらい違うんですか?」
 「うん? いや、俺は戦闘に関しては詳しいわけじゃねえからなあ。全体的に単調だとか、動きが少ないとか、そんなこと言ってたなあ」
 「カナードは何て言ってたんですか?」

 

 ミリアリアが首をかしげながら質問した。

 

 「『クズシミュレーターめ……』、だってよ。そう言ってケリまで入れて戻ってったぜ」

 

 やれやれと首を振りながら答えたマードックに、みなが苦笑した。そんな彼らの声を聞きながら、カガリは爛妊絅┘覘瓩亮楕を物欲しそうな目で見上げる。その姿に気づいたブライアンが、あわててその前に立ちふさがった。

 

 「ダメダメ! ダメだよ、本物は」

 

 カガリはちょっとがっかりして、口を尖らせた。

 

 「……わかってるよ!」

 

 そう言いつつも、彼女は憧れの目で、鈍く輝く鋼の巨人をいつまでも見上げていた。

 
 
 
 

PHASE-12 砂塵の果て

 
 
 
 

 「だいたい、なんでわたしがこんなことしなくちゃならないのよ」

 

 誰もいない爛◆璽エンジェル瓩猟模で、少女が苛立たしげにつぶやいた。台車にはビニールに包まれた制服が並べられている。
 フレイはそれを手に取り悔しそうにため息をついた。

 

 「――これ、ラクスの仕事じゃない……」

 

 たまたま食堂へ寄ったところ、そこにいたふくよかな体型の温和そうな顔立ちをした四十代半ばの男性――ムラタ料理長に呼び止められ、クリーニングをした制服をクルーたちの部屋に届ける羽目になってしまったのだ。
ラクスがトールたちのところに差し入れを持っていっているため、他の仕事をやる人間がいなくなってしまっていたそうだ。爛◆璽エンジェル瓩凌夕衂埖がここまで酷いのかと呆れたが、まさかその白羽の矢が自分に来るとは……。フレイはもう一度深いため息をついて、台車を走らせた。

 

 「あら、お手伝いかしら? 関心ね」

 

 ふいに、かん高い女性のような声で呼ばれ彼女は振り返った。が、その姿を見てうっと顔を顰める。

 

 「フ、フラガ少佐……気色悪いです」
 「おいおい酷い言い草じゃないか。せっかく和ませてやろうとしたのにさあ」

 

 声の主は、オカマのように小指を口元にあて体をくねらせたポーズをとっていたムウであった。これがあの『エンデュミオンの鷹』の姿だと言われても、誰一人として信じる者はいないだろう。フレイは呆れてため息をついた。

 

 「和ませるってなんなんですか?」
 「ため息ついてたろ。つまらなさそうにしてたからさ、こう……俺の溢れる愛情で慰めてやろうとしたのさ」

 

 ひょうひょうと言うムウに、フレイは嫌悪感を隠そうともせずに言ってやった。

 

 「ほんと気色悪いんで止めてください。ていうか何か用なんですか? 人呼びますよ」
 「うおっ……マジか……」

 

 これには流石に応えたのか、ムウは肩をがっくりと落として落ち込んでしまった。いや、たぶん本気で落ち込んでなどいないのだろうが。

 

 「いやあ俺今暇でさ。坊主たちをからかってみようかなあ、とか考えてたわけよ」
 「わたし仕事してるんで邪魔しないでください」
 「え? ああ、……うん。俺が悪かった……」

 

 顔をひきつらせて謝るムウだったが、奥からやってきた影に顔をぱっと明るくし、手を振りながら大声で叫んだ。

 

 「あ、キラく〜ん! 元気ぃ?」

 

 明らかに引いているキラの様子にかまうものかと、ムウは彼に近づいて言った。

 

 「よう、俺今暇でさあ、ポーカーでもやろうぜ。ババ抜きとか、チェスなんてのもあるぜ?」

 

 キラの肩に腕を回しながら笑みを浮かべたムウに、キラは迷惑そうに言った。

 

 「あ、あの……。ぼくこれから爛妊絅┘覘瓩裡錬咾鯆汗阿靴覆ゃいけなくて……」
 「いいじゃんかよ。そんなの後に……って訳にもいかないか。そりゃ不味いよなあ……。あーあ、せっかく遊び相手が見つかったと思ったのによお」

 

 大げさに落ち込んだ素振りを見せているムウに、更に声がかかった。

 

 「なんだよ、アンタ暇人なのか?」
 「ですが、きっとフラガさまにも何かできることがあるはずですわ」
 「『鷹』も腐ったものだな。エンディミオンクレーターでの活躍は誇張か何かか?」
 「あ、フレイが働いてる。珍しいこともあるのね」

 

 カガリ、ラクス、カナード、ミリアリアが揃って現れ、キラが彼らに声をかけた。

 
 

 「あれ? みんなどうしたの?」

 

 その問いに、カガリが胸を張って前へ出た。

 

 「爛妊絅┘覘瓩裡錬咾鯆汗阿垢襪鵑世蹇 ナチュラル代表として来てやったぞ」

 

 エッヘンと言うカガリの横に、ラクスがあわせるようにふわっと前へ出た。

 

 「わたくしのお仕事を、フレイさんがお手伝いしてくださっていたようで――」

 

 フレイはぱっと笑みを浮かべて、すかさずビニール包みの制服をラクスの前に差し出した。

 

 「そうよ。ほんと面倒なんだから。んじゃ、後はよろし――」
 「それでお礼を言いに来ましたのっ。フレイさん、お仕事頑張ってくださいねっ」

 

 ぱんっ、と目の前で手を合わせて嬉しそうに微笑んでから彼女はぺこりと頭を下げて、食堂の方へふわふわと小走りで戻っていってしまった。

 

 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんたの仕事でしょうに!」

 

 彼女の叫びが通路にむなしく響いた。奥から「わたくしは応援していますわ〜」という声が響いてきたのを聞いて、フレイが軽く舌打ちをする。カガリが呆れて頭をかいた。

 

 「けっこうちゃっかりしてるよな、あのラクスっての」
 「くっ……。まあ良いわ。――ミリアリア、手伝ってよ」

 

 ラクスのことはもう良い、フレイは次の標的に声をかけた。

 

 「ごっめーん。私さあ、戦闘管制の訓練やらなきゃいけないのよ。ほら、パイロットも増えてきたし、やること一杯で大変なのよねえ」

 

 そう言ってから、「じゃねっ」と言って艦橋へ歩いていくミリアリアに、フレイが慌てて声をかけた。

 

 「ちょっと、友達を見捨てる気?」
 「そうよ、私は悪い女なの。さよならフレイ」

 

 振り向こうともせずに、右手を軽くヒラヒラさせながら奥へと進んでいくミリアリアを見送りながら、フレイは思い切り地団駄を踏んだ。
 そして、彼らは一斉にカナードを見やる。

 

 「で、お前は何で来たんだ? むしろいつからいたんだそこに」

 

 カガリの問いに、カナードは無表情のまま動かない。キラがもしや、と顔をあげた。

 

 「ひょっとして、カナードも暇だったり……?」

 
 

 彼はぐっと顔を顰めたが、何も言わないの見るに、どうやら本当に暇だったようだ。

 

 「じゃあさ、爛妊絅┘覘瓩裡錬喞召垢亮蠹舛辰討茵
 「断る。オレがやる理由がない」

 

 カナードはつまらなそうに即答してみせたが、その答えを予想してたかのようにキラは軽く口元で笑みをこぼした。

 

 「でも、ぼくじゃあ上手くできないんだよなあ……」

 

 カナードの目元がぴくっと反応した。それを見てキラは更に続ける。

 

 「やっぱりぼくじゃ駄目なのかなあ……」

 

 キラはちらとカナードを見やった。どうやら何かを悩んでいるようだ。これで止めとばかりに彼は少し大げさに言った。

 

 「ぼくよりもOS書くのが上手くて凄くて……そんな人、どっかにいないかなあ……?」

 

 そう言い終えるや否かのタイミングで、カナードはきゅっときびすを返しどこかへ向かって歩き出した。カガリが呆れてキラに問いた。

 

 「アイツ、どこ行くんだ?」
 「格納庫だよ。それじゃぼくも爛妊絅┘覘瓩里箸海砲い襪ら、何かあったら呼んでね」

 

 どうも最近カナードのパターンを読めてきたらしいキラが、満足げに笑みをこぼしながら言った。彼は手を振って挨拶をしてから、カナードの後を追ってゆっくりと歩き始めようと体の向きを変えた。そこに、カガリが慌ててキラの腕を掴み取る。

 

 「っておい。OSの調整って格納庫でやるのかよ!? 私がここまで来たのはなんだったんだ、ていうか何でお前はわざわざここまで来たんだよ!」
 「どっかにカナードがいないかなって思ってさ。適当に歩いてれば会えるかと思ったんだけどすぐに見つかってよかったよ」

 

 悪びれた様子も無く言うキラに、カガリは呆れて肩を落としながら後を追うように歩るきだした。その時、キラはあっと何かを思い出したように振り返り、ムウに言った。

 

 「そうだフラガ少佐。OSを書き換えるときのパイロットをやってくれません? 人が乗ってる状態で注文を聞きながらのほうがはかどると思うんです」
 「ちょっと待てえ! 私がいると言っただろう!」
 「でもさ、カガリは軍人じゃないから駄目だよ」

 

 さくっと述べたキラに、カガリは悔しそうに地団駄を踏む。それを無視してムウが肩をほぐしながら言った。

 

 「ま、暇だし良いか。よし、んじゃ行こうぜキラ」

 

 そう言って格納庫へ向かって歩き出した二人の背中を、カガリは「くっそー!」と漏らしながら悔しそうににらみつけた。そんな彼女の肩に、フレイの手がぽんっと触れる。

 

 「それじゃ、あんたはわたしの手伝いね」

 

 にいっと意地悪な笑みを浮かべて言う彼女に、カガリはがっくりと肩を落としてうなだれた。

 
 
 
 

 宇宙につり下げられた砂時計のようなプラント――爛▲廛螢螢Ε后Ε錺鶚瓠その底部に広がる海に、ぽっかり浮かんだ島々のひとつで、男はエレカを走らせていた。周囲は閑静な住宅街だ。適度な湿度を保った風が彼の黒髪をなびかせている。
やがて彼は、高級住宅地の中でにあってもなお広い地所を持つ、一軒の邸宅に続く私道に車を乗り入れ、門の前で停めた。門柱に取り付けられたカメラが車両を認識し、緑のランプが点灯した。

 

 「遺伝子工学研究所所長ギルバート・デュランダル。シーゲル・クライン閣下との面会の約束で参りました」

 

 コンピューターがデータを照合し、門を開いた。デュランダルはそのまま車を進めた。

 

 執事に取り次がれて待ちながら、彼はまるで灯りが消えたような空気の重さに、眉をしかめる。

 

 「やあ、来てくれたのか」

 

 階段を下りてきた初老の男が、彼に声をかけた。デュランダルは軽く頭をさげる。

 

 「お久しぶりです、閣下」
 「そう余所余所しい言い方は止めて欲しいと言ったのだがな。いや、元気そうでなりよりだ」

 

 シーゲルは疲弊した様子で言った。デュランダルはそんな彼の様子を見て、心配するように語り掛けた。

 

 「お倒れになったと聞きました」

 

 だがシーゲルは、彼の心配をよそに力強く微笑んで見せる。そして階段の下まで降り立ってから言った。

 

 「前線の者たちはザフトのためにと頑張っているのだ。私がこの程度で倒れるわけにはいかんよ」
 「……ですが、クライン姫の捜索が打ち切られたと耳にしました」
 「私とて、一国のトップを行くものだ。そのような判断を下さねばならない時も……ある」

 

 口ではそう言ったものの、彼の表情は重い。そこへ、もう一人の来客を告げる声がかかった。シーゲルが「通せ」と言ってから、階段に腰を下ろす。

 

 「だが、父親としては……失格なのかもしれん」
 「彼女はプラントのアイドルでもあります。捜索を続けることに意義を唱えるものはいないと感じたのですが」

 

 デュランダルの言葉に、シーゲルは一度だけ顔を強く顰めた。そして、つぶやくように言った。

 

 「……ラクスが連合に捕らわれてからな。プラント内で反連合を訴えるものが大幅に増えた。連合撃つべし、ナチュラル撃つべし、などと街頭で高らかに演説するものまで出てくる始末だ」
 「それは……存じております」

 

 デュランダルは吟味するようにシーゲルを見つめながら言った。彼はもうため息をついてから、いっそう老け込んだような顔をして言葉を続ける。

 
 

 「――爛ペレーション・スピットブレイク瓠帖鳥笋領呂任詫泙┐れないところまで来てしまったのだ」

 

 爛ペレーション・スピットブレイク瓠宗愁僖肇螢奪・ザラが掲げる作戦だ。それは地球侵攻作戦爛ペレーション・ウロボロス瓩虜能段階であり、最後の宇宙港として地球連合が頑強に守り続けているパナマを攻略するための作戦である。

 

 「戦禍が広がればその分憎しみが増すというのに……! いったい我々はどこへ向かおうとしているのだろうか。時々ふと考えて、虚しくなったりするのだ」

 

 デュランダルは何か慰めの言葉を口にしようとしたが、客人として通された人物に気づき、さっと敬礼をした。

 

 「これは、ザラ委員長どの。ご無沙汰しています」

 

 やってきたのは、パトリック・ザラだった。彼はいつものように憮然とした態度を崩さずに、ちらりとデュランダルを見やる。

 

 「久しいな。研究施設の方はどうだ?」
 「難しいものです。ですが新しい発見もありました。『SEED』、というものは不確かなものと言われてきましたが――」
 「実在するのかね、そんなものが」

 

 パトリックの疑わしそうな表情を、デュランダルはさらりと受けながら言った。

 

 「ええ。ですがそうではないか、といえるものが見つかっただけなのです。それにどのような効果があるのかまでは、現状では発見できていません」

 

 SEED――それは、過去に一度だけ学会誌に発表され議論を呼んだことのあるものだ。ナチュラルとコーディネイターに関係なく発生し、それを持ったものは世界を導く、などと言われていたが……。

 

 「同じ事だ。『優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子』など、都合が良すぎる。そんなものがあるのなら、もう戦争は終わっておるし……最初から起きもしない」

 

 表情を変えずに言った彼に、デュランダルは苦笑した。そんな中、ふと思い出したかのように、パトリックがシーゲルに言った。

 

 「――ラクス嬢は、まだマルキオとかいう男とつながりを持っていたのですかな?」
 「さあ、私にはわからん……。――もっとも、今となってはどうでも良いことだ。あの娘は……」

 

 そこからの言葉を発する事ができず、シーゲルはうなだれた。だが、それを見てパトリックがにっと笑みを浮かべていった。

 

 「『足つき』がアフリカ大陸に落ちた、というのはご存知ですかな?」
 「ああ、聞いている。たしか『砂漠の虎』がいたな、あそこには」

 

 落ち込んだ様子で続ける彼に、パトリックが続ける。

 

 「ジブラルタル基地が近いですな」

 
 

 彼のもったいぶるような言い方に、シーゲルが顔を顰めた。

 

 「……何が言いたい?」

 

 軽く睨むような視線に、パトリックは慄然として答えた。

 

 「あそこを任されている男は、ラクス・クラインのファンだそうです。――アスランから手紙が届きましてね。前線にいるものは彼女の捜索を諦めていない、と」

 

 シーゲルは思わず立ち上がった。

 

 「だが、捜索の打ち切りは……」
 「それでも諦めていないものたちがいる、ということです。我々のような者に、前線の詳しい状況などわかりませんな?」

 

 励ましと少しばかりの皮肉をこめて言ったパトリックの隣で、デュランダルが「ふむ」と声を漏らした。

 

 「それでしたら、もう一度ラウ・ル・クルーゼにチャンスを与えてみてはいかがでしょう。彼は有能な男です」

 

 これこそが、デュランダルがここへ来た目的の一つだ。だが、パトリックはまるでつまらないものでも見るかのように吐き捨てた。

 

 「中立のコロニーを崩壊させ、『足つき』も破壊できず、ラクス・クラインの救出にも失敗。多大な犠牲を払ったというのに、ハルバートンの一人も撃てずに戻ってきた男をか?――アスランも死に掛けたというのに……」
 「これは手厳しい」

 

 特に気にしたようすなく告げたデュランダルに、パトリックはああそうか、と思い出したように言った。

 

 「そういえば、やつと貴様は古い友人だったな。歳の離れた弟がいると聞いたが――まあ、そんなことはどうでもいい。ヤツには後方での指揮を取ってもらう」
 「それが妥当なところだろうな。――たしかレイ・ザ・バレルと言ったな? 姓が違うのは生き別れだと聞いたが」

 

 何かを考えるような様子のシーゲルに、デュランダルは軽く笑みを浮かべて返した。

 

 「ええ、ザ・バレル氏が引き取ってくださっていたのですが、今は私の家で生活をしています。――その彼の成績は、なかなか優秀なのです」
 「言っておくが、前線に出させる気は無いぞ」

 

 パトリックが遮るように言った。だがデュランダルは驚いた素振りも見せず、軽く会釈をしてみせる。

 

 「これはザラ委員長。お見通しでしたか」

 

 そんなデュランダルを、パトリックは見ようともせずに付け足した。

 

 「まだ幼いのだろう?」
 「今年で十四になりますが……特例として送ってやる事はできないでしょうか?――爛┘凜デンス・02瓩里海箸發△蠅泙后H爐砲倭納舛ある、と」

 
 

 爛┘凜デンス・02瓠その言葉に、シーゲルとパトリックが同時に目を細めた。

 

 「……解析は進んでいるのか?」

 

 シーゲルがパトリックに問う。

 

 「アマルフィが指揮を取っていますが……。全てを解析することは不可能ですな、未知の部分が多すぎます。――ですが、それから吸い出したデータより、開発されはじめた機体があります」
 「爛殴ぅ牒瓩盍に完璧な形で完成したと聞いた。……それほどのものなのか?」

 

 困惑したような表情で言うシーゲルに、パトリックが答えた。

 

 「ええ。我々の技術の更に先を進んでいます。せめてコクピットが残っていれば、もう少し解析も早まると思うのですが。無いものを言っても仕方ありません」

 

 そう述べて、パトリックは入り口の扉に向かってゆっくりと歩き出した。

 

 「デュランダル所長。現在開発中の爛縫紂璽潺譽縫▲爛轡蝓璽梱瓩砲覆蕁考えておこう。――あれはかなりの機体になる」
 「感謝します、ザラ委員長」

 

 一礼するデュランダルに背を向けたまま、パトリックは続けた。

 

 「アスランの未来の花嫁になるかもしれない女性の父親の様子は、それほど酷いものではなかったようだ。私は先に失礼する」

 

 そして、彼は部屋を出て行った。クラインは、パトリックの出て行った扉を見つめながら、遠くにいる愛娘に思いを馳せる。

 

 「ラクス……お前は今どうしているのだ……?」

 

 やりきれない思いが、震える唇から漏れた。

 
 
 
 

 爛◆璽エンジェル瓩離┘鵐献鷁擦、岩壁をかすかに震わせはじめた。
 周囲では男たちに交じり、タッシルからの避難民達までもが、戦闘準備に忙しい。怒鳴りあい、バギーに弾薬を積み込む者、洞窟から走り出て、また駆け戻る者、家族と慌しく別れを告げるもの――。
 凄まじい喧騒の中で、カガリは一人の女性に呼び止められた。アフメドの母親だ。
 砂漠の陽射しがすでにその肌に皺を刻み始めていたが、この地の女性に多く見る、はっとするような美しい目をしていた。彼女は黙ってカガリに手を差し出した。

 

 「――え?」

 

 カガリは首をかしげながら手を出す。すると女は彼女の手のひらに、緑の石を置いた。この地で産出する、マラカイトの原石だ。カガリの目はしばし、その鮮やかな緑に惹きつけられる。細かな横縞が、まるで絹に織り込まれた繊細な模様のようだ。

 

 「なに? これ……」

 

 カガリが戸惑って尋ねると、女は柔らかな声で答える。

 

 「……あの子が以前、見つけたものだよ」
 「アフメドが……」

 

 カガリは驚いて返そうとした。

 

 「だめだ。それなら大事なものだろう?」
 「もらってやって。あの子が、カガリにやると言っていたから」
 「私に……?」

 

 カガリは手のひらの石を見つめた。肌に染みるほど鮮やかな、美しい色だった。

 

 「この石は邪悪なものを吸い取り、危険が近づくと知らせてくれると言うわ……。持っておきなさい」

 

 女は穏やかな声で言い、そっとカガリの手に手を添えて、石を握らせる。

 

 「あんたは生きて戻るんだよ……」

 

 カガリは涙ぐみながら、こっくりうなずいた。

 

 「ありがとう……」

 

 アフメドの母親が立ち去ると、キサカが側に寄った。

 

 「――それは?」
 「アフメドが……私にって」

 

 彼女には、アフメドがなぜこの石を自分に残してくれたかわからない。
 かたわらに影のようにたたずむキサカが、じっとその石に目を落とし、ややあって低くつぶやいた。

 

 「……綺麗な石だな」

 

 そして、それきり黙りこむ。
 そのときサイーブの声が、ざわめきを圧して響いた。

 

 「――行くぞォ!」

 

 先頭のバギーが動き出した。作戦が始まるのだ。カガリたちも急いで自分達のバギーへ走った。

 
 
 
 

 「――動き出しちゃったって?」

 

 爛譽札奪廛広瓩隆篭兇貌ってきたバルトフェルドの問いに、オペレーターが答える。

 

 「はっ! 東へ向かい進行中です」

 

 モニターを見てアスランたちはごくりと息を飲み込んだ。
 バルトフェルドは地図を確認した。

 

 「タルパティア工場区跡地に向かってるか……。ま、ここを突破しようと思えば、僕が向こうの指揮官でもそう動くだろうからな」

 

 まるで大目に見てやるように言う。

 

 「隊長……」

 

 命令を待つダコスタの顔を見て、バルトフェルドは困ったように、だが楽しげに首を振った。

 

 「うーん……もうちょっと待って欲しかったが……しかたない」
 「出撃ですか!」

 

 イザークが声を弾ませて身を乗り出す。バルトフェルドは、彼の隣で決意を込めた目をしているアスランを見てからにっと微笑み、クルー達に命じた。

 

 「爛譽札奪廛広瓠発進する! コード○二! 爛圈璽肇蝓辞瓩鉢爛悒鵐蝓次Εーター瓩紡播鼎靴蹇 捕らわれのお姫様を助けに行くぞお!」
 「はっ!」

 

 クルーたちがとたんに慌しく動き始める。アスランたちが飛ぶように艦橋を去り、格納庫へ向かって行くのを尻目に、バルトフェルドは腕を組み、苦笑した。

 

 「お姫様にアプローチをかけさせてしまうなんて、無礼千万だなあ」

 

 ダコスタたちは、いつものことと適当に聞き流しているが、バルトフェルトは動じた様子無く、にやりと人の悪い笑みを浮かべた。

 

 「――せめてものお詫びに、盛大な花火で歓迎しないとな」

 
 
 
 

 「なんだぁ? まだ食ってないのかあ?」

 

 爛◆璽エンジェル瓩凌堂で、キラのトレイを後ろから覗き込んでムウが咎めた。

 

 「だって、戦闘前に食べたりしたら中のもの出しちゃわないかなあって……」

 

 キラが慌てて反論した。するとムウは心外そうに言った。

 

 「俺たちはこれから戦いに行くんだぜ? うんと食っとかなきゃ力、出ないでしょ」

 

 たしかにパイロットたるもの、戦闘前に食事を済ませ、血糖値をあげておくべきなのだろう。ちらりと隣のテーブルに目をやると、カナードも同じく食事を取っている。

 

 「お待たせしましたわ〜。はい、キラさま。頑張ってくださいね?」

 

 ふわふわと厨房からやってきたラクスが、キラのトレイの上に、持ってきた料理をふわりと置く。ドネル・ケバブだ。ムウは自分も隣に座って、同じものにかぶりつき、うーん、と満足げな声を漏らす。

 

 「やっぱ現地調達もんはうまいねえ。――ほらほら食え。ソースはヨーグルトのがうまいぞ」

 

 ふわふわと厨房に戻っていくラクスを尻目に、ムウが白い容器に手を取り、手渡そうとする。キラは慌てて横のチリソースに手を伸ばした。

 

 「あ、あの、ぼくこっちの方が好きなんです」
 「やれやれ、お子様だなあお前らは」

 

 からかうような笑みを浮かべて、ムウは言った。

 

 「お前……『ら』、ですか?」

 

 ムウは「うん?」と言って隣のテーブルに座っているカナードを顎で示した。見れば、彼が食べているのも、同じ料理だ。チリソースのかかったドネル・ケバブを口に運ぶその表情はいつもと変わらないように見えたが、どことなく満足げな雰囲気が漂っている。

 

 「アムロのやつだって、ヨーグルトソースで食べてたぜ?」
 「ええ? でも、街ではチリソースかけてたんですけど……」

 

 「食べ比べたんだろ。やっぱり違いのわかる男ってのは俺やアムロのことを言うんだな、うん」

 

 しみじみと言うムウに、キラは唇を尖らせた。それでも、この人に口では勝てないだろうと思い、目の前の料理にかぶりつく。

 

 「あ、やっぱり美味しい」

 

 口の中でもぐもぐとよく味わいながら、キラはふと思い立った事をムウに問う。

 

 「少佐はこんなとこにいていいんですか? 中尉はもう出てったみたいですけど」
 「あいつが真面目なんだよ。戦闘隊長ってのもあるし、忙しいんだろうけどさあ」

 

 ひょうひょうと言うムウに、キラ更に聞いた。

 

 「手伝ったりとか、しないんですか?」

 

 ムウはぴくりと眉を震わせて、ドネル・ケバブを口に運ぶ。そして幸せそうな笑みを浮かべて言った。

 

 「あー、うまいなあ」

 

 このおとこは……、とキラは口元の端を吊り上げて呆れたが、まったく気にしたそぶりを見せずに料理を食べるムウを見て、もう一度がっくりと頭を下げた。
 そしてキラは思う。もうじき戦闘だというのに――幼い頃からの親友であるアスランが自分達と戦いに来るというのに、驚くほど心が平常であることに。
 ひょっとしたら、迷いを捨てるということはこういうことなんだろうか……。兄弟のように一緒だったアスラン。でも、今は……。そんなキラの心のよりどころが、カナードなのかもしれない。自分に良く似た、キラには無いものをたくさん持っているもう一人の自分。少なくとも、キラの目にはそう映っていた。
 もぐもぐと口の中の料理をかみながら、キラは物思いにふけった。だがそれは、鈍い地響きのような爆音に遮られた。

 

 「――なんだ!?」

 
 
 
 

 爛◆璽エンジェル瓩竜鐔散茲砲泙覇呂い森豌擦料阿法▲ガリたちはその爆発を眼にしていた。地平線を見えない手が撫でたように、目の届く限りの地雷原がほぼ同時に火を噴く。一泊遅れて、凄まじい轟音が地響きとともに駆け抜けていき、黒煙が立ち上って空を覆いつくした。レジスタンスの間に動揺が走る。
 サイーブはバギーの上で立ち上がり、怒鳴った。

 

 「うろたえるな! 攻撃を受けたわけじゃない!」

 

 たしかに、地雷が無駄になった事をのぞけば、損害をこうむったわけではない。だがこのことが彼らに与えた心的ダメージは大きい。

 

 「あれだけの地雷を、一瞬で……?」

 

 一人がつぶやく。
 それだけでも、相手の技術力に対する恐れを抱いてしまう。が、もっとも恐ろしいのは、彼らが入念に準備し、立てた作戦が、すべて的に看破されているという事実だった。

 

 「……くっ!」

 

 カガリは歯を食いしばった。先日見た、派手なシャツを着た敵将の姿と、死んでいった仲間の顔が思い浮かぶ。
 ――あんなふざけたやつに……!
 あんなやつのせいで、アフメドたちが死んだのだとしたら――それではあまりに報われない……!
 サイーブの言葉が、耳に届いた。

 

 「――『虎』もいよいよ、本気で牙をむいてきたようだな……」

 

 そうだ。いままでのはやつにとって、お遊びだった。
 カガリも思う。
 ――だが、今日こそは、本気になるところまで追い込んでやる……!

 
 
 
 

 「爛妊絅┘覘瓩枠進のスタンバイをたのむ!」

 

 アムロが爛好イグラスパー瓩離灰奪ピット内から身を乗り出してマードックに指示を出している。
 余っている爛妊絅┘覘瓩砲弔い討了惻┐澄爛好肇薀ぅ瓩爛丱好拭辞瓩被弾、もしくは消耗した場合、即座にこれに乗り換えて発進させるという手はずだ。

 

 「武装はどうします!」
 「ビームライフルとマシンガンを持たせておけばいい!――シールドも忘れるな!」

 

 パイロットロッカーで着替えを済ませたキラも、爛好肇薀ぅ瓩離灰奪ピット内に収まる。

 

 〈連中には悪いが……レジスタンスの戦力なんぞ、はっきり言ってアテにならん〉

 

 モニターの中のムウが切り口で言う。

 

 「ええ。地雷原がすべて突破されたって……?」

 

 そう言ってキラは顔をうつむいた。

 

 〈当てにはしていなかったよ。作戦に支障は無い〉

 

 アムロが優しく言った。カナードが不機嫌そうに鼻を鳴らした音が通信から漏れ聞こえてくる。

 

 〈学習能力の無いクズどもは、オレたちの邪魔をしなければどうなろうと知ったことではない〉
 「そう言う言い方は無いと思うけどなあ……」

 

 キラは口を尖らせて文句を言ったが、カナードは無視して爛丱好拭辞瓩鬟タパルトデッキへ進めていく。彼はちぇっとため息をついた。

 
 
 
 

  「――レ、レーダーにっ……!」

 

 カズイが勢い込んで口をひらき、舌をもつれさせる。レーダーにいくつかの光点が浮かび上がり、こちらへ向かってくる。トノムラが後を引き取る。

 

 「レーダーに敵機とおぼしき影! 撹乱ひどく、数は補足不能! 一時半の方向です!」

 

 チャンドラも声をあげる。

 

 「その後方に大型の熱量二! 敵空母、及び駆逐艦と思われます!」

 

 爛譽札奪廛広瓩箸修領輯呂世蹐Α先触れのように戦闘ヘリが、肉眼でも見え始めた。マリューは、きっとそれを見据え、戦闘開始の指示を出す。

 

 「対空、対艦、対モビルスーツ戦闘、迎撃開始!」

 
 
 
 

 「本当にエールでいいのか!?」

 

 マードックが念を押すのへ向けて、「爛丱ゥ畫蠎蠅砲浪侘呂茲蟲‘偉呂任后」と、キラは答え、ハッチを閉じた。奥には、ハマナ曹長が爛丱好拭辞瓩虜埜紊療生,鬚靴討い襪里盡える。

 

 〈爛好イグラスパー甍豺罅▲侫薀機、発進!〉

 

 ランチャーパックを機体後部に装備したムウの爛好イグラスパー瓩、一足早く発進して行く。

 

 〈爛好イグラスパー疇鷙罅▲譽さ 発進!〉

 

 左翼にユニコーンの横顔とαを合わせたようなパーソナルマークが塗られた爛好イグラスパー瓩魯▲爛蹐竜‖里澄エールパックを装備して、ムウを追うように発進する。
 爛─璽襯好肇薀ぅー瓩装着され、爛好肇薀ぅ瓩定位置につくと、ミリアリアの声が促した。

 

 〈続いて爛好肇薀ぅ瓠↓爛丱好拭辞瓠△匹Δ勝〉

 

 キラはモニターの中に映るミリアリアに、軽く微笑みかけた。

 

 「それじゃ、行って来るよミリィ。――あれ? フレイはいないんだ」
 〈忘れ物したんだってさ。ほらあのお守り、食堂に置いてきちゃったみたい。だらしないわよねえ……〉

 

 呆れたように言う彼女の後ろで、ナタルの咳払いが聞こえた。ミリアリアが慌てて姿勢を正したのを見て、キラは笑みをこぼす。フレイの笑顔は、キラにとっては高嶺の花であり、彼女が見せるそれがとても愛おしい。もちろんサイとの間に割ってはいる気も勇気も無く、心の隅で想っているだけでしかない。
それでも、コーディネイターのキラやラクスに隔てなく接してくれる彼女の姿が、救いであった。その彼女が見えないのはわずかに残念であったが、それならそれで、無事に帰ってきて彼女の姿を一目見ようと決めるのがキラである。

 

 「キラ・ヤマト、行きます!」

 

 リニアカタパルトに射出され、キラはすぐさま周囲の状況をとらえた。巨大な陸上母艦爛譽札奪廛広瓩もう一隻の艦を従えて近づいてくるのが彼方に見え、空には戦闘ヘリ爛▲献礇ぅ覘瓩筍孱圍錬明鐺機爛ぅ鵐侫Д好肇ゥ広瓩無数に飛び交い、爛◆璽エンジェル瓩坊欧譴燭っている。
レジスタンスのバギーかランチャーが撃ち上げられ、一機のヘリを落としたが、まるで焼け石に水だ。
 ムウの爛好イグラスパー瓩ひらりと旋廻し、爛▲献礇ぅ覘瓩傍―討魴發舛けた。あっという間に二機のヘリが被弾し、黒煙の尾を引きながら落下していく。『エンデュミオンの鷹』は地上に降りても健在らしい。
 爛譽札奪廛広瓩離魯奪舛開き、爛丱ゥ瓩鯏任出した。モニターがそれを拡大し、キラはコーディネイターならではの視力でカウントする。

 

 「――四……五機か!」

 

 そう確認したとたん、上空から一機の爛好イグラスパー瓩風のようにやってきて、ビームをマシンガンのように撃ち出した。不意と突かれた爛丱ゥ瓩蓮突如降りそそぐビームの雨を回避することができず、五機すべてがコクピットを貫かれその場に鎮座した。

 
 
 
 

 慌てて食堂までやってきたフレイは、ムラタ料理長に自分のお守りの事を聞いていた。あれを持っているだけで、恐怖心が和らぐ大事なお守り。父親との繋がりを実感できる不思議なお守り……。

 

 「あ、あの。これくらいの小さな、金属の塊知りませんか!? 英字のTみたいな形で……」

 

 身振りで説明する彼女に、ムラタはああ、と声をあげて教えてくれた。

 

 「それなら、ラクスさんが持ってってくれたよ。――あれ? でも、入れ違いにはならないと思うけどなあ、艦橋《ブリッジ》へ向かってったんだし……」

 

 首をかしげて言うムラタの顔に、だんだんと皺が寄せられていく。

 

 「……道に迷っちゃってるかもしれないね」

 

 ラクス・クラインは時々そうだ。意識してるのかわからないが、時折とんでもないところから現れ、理由を問えば迷子になってしまったと照れながら笑みをこぼす。その天使のような笑みを思い出しながら、フレイは毒づいた。

 

 「あの子は、もう!」

 

 フレイは身を翻して走り出した。

 
 
 
 

 「爛瓮咼Ε垢琉魔瓩もう来ている!?――バルトフェルド隊長!」

 

 凛とした声が、爆発音の聞こえてくる格納庫の高い天井に跳ね返り、バルトフェルドは振り向いた。鮮やかなオレンジに黒の縞、ヘルメットにはご丁寧に牙まで描きこまれた、『虎』をイメージしたパイロットスーツ姿だ。爛ぁ璽献広瓩ら身を乗り出すように叫んだのは、アスランだった。

 

 「私たちが出ます!」

 

 バルトフェルドは肩を竦めて、ため息をついた。

 

 「うちに残っていた爛丱ゥ瓩呂いなり全滅だ。頼むよ」
 「はっ!」

 

 アスランはそのまま爛ぁ璽献広瓩離灰奪ピットに流れ込み、ハッチを閉めた。

 

 〈アスラン・ザラ、爛ぁ璽献広畚个襪勝〉

 

 そのまま出口へと向かい、クルーゼ隊の面々――イザークの爛妊絅┘覘瓠▲妊アッカの爛丱好拭辞瓠▲縫灰襪劉爛屮螢奪牒瓠▲薀好謄とミハイルの爛丱ゥ瓠▲潺殴襪瑠色に塗られた爛丱ゥ瓠▲轡曚劉爛轡亜璽妊ープアームズ瓩法▲▲ぅ競奪の爛競Α璽鉢瓩後に続いた。僚艦からも、ジブラルタルから来た爛丱ゥ瓩燭舛出撃していくようだ。

 

 「――歌姫の騎士団が行く、か」

 

 バルトフェルドは、愛機に向かいながらひとりごちた。

 

 彼の独白を聞いていたアイシャが、ふふっと笑ってラダーにつかまった。彼女も淡いピンクのパイロットスーツに身を包んでいる。二人はコックピットに引き上げられながら、バルトフェルドも笑う。

 

 「……肩入れしすぎているかな?」
 「いいえ」

 

 アイシャは軽く言う。

 

 「でも、良い子達ね」
 「ああ、そうだな。あんな子が欲しいのかい?」
 「さあ?」

 

 いたずらっ子のような笑みを浮かべて言うアイシャを軽く抱き寄せ、バルトフェルドも微笑かける。彼は高揚しているのだ。囚われのお姫様を救い出すために集った少年たち……。このようなシチュエーションは、彼の愛するものである。
 二人は愛機のコックピットにおさまった。派手なオレンジ色にペイントされた獣型の機体は、爛丱ゥ瓩鬟戞璽垢紡臧なパワーアップがなされたバルトフェルド専用機TMF/A‐八○三爛薀乾キ瓩澄G愧罎砲脇麩∩のビーム砲が装着され、口にくわえるような形でビームサーベルが装備されている。
 副座式コックピットの前席には射撃手、後席には操縦士が座る。前席にはアイシャが、するりと滑り込んだ。射撃に関しては驚くべき事に、彼女は一流の腕前を店、隊のどのパイロットにも引けを取らない。標的を見極め、ためらいなくトリガーを引くことができるのは、女ならではの特質なのかもしれない。

 

 「じゃ、艦を頼むぞ、ダコスタくん」
 〈はっ!〉

 

 モニターに映ったダコスタは、苦り切った表情を作りつつ、どことなく嬉しそうだった。日ごろ、指揮官たるものは前線に出て戦う必要は無い、などと説いているくせに、やはり彼にとってもバルトフェルドは、モビルスーツのコックピットにおさまっている時が自然なのだろう。
 バルトフェルドは前方を睨み据えた。

 

 「――バルトフェルド、爛薀乾キ瓠⊇个襦」

 
 
 
 

 「爛乾奪肇侫蝓璽鉢甅爛丱螢▲鵐鉢瓠△謄А璽叩」

 

 ナタルの号令が、爛◆璽エンジェル甦篭兇剖舛。敵艦に激しい砲撃が向けられるが、自身も被弾し、艦体をひっきりなしに大小の衝撃が襲う。衝撃に顔をゆがめながら、ナタルがマリューに呼びかけた。

 

 「艦長! 爛蹇璽┘鵐哀螢鶚瓩了藩儺可を!」
 「だめよ! あれは地表への汚染被害が大きすぎるわ!」

 

 マリューが驚いて拒否する。

 

 「しかし……!」

 

 ナタルが不満げな表情になるが、それを抑えこむようにマリューは言い放つ。

 

 「命令です!」
 「……了解しました」

 

 しぶしぶナタルは引き下がった。彼女の耳にはマリューの言葉は綺麗ごとのように響くのだろう。そんな甘い事を言っていて、艦が堕ちたら元も子もないと言いたいに違いない。
 そんな中、爛好イグラスパー瓩駆逐艦に集中砲火を浴びせかけ、爛▲哀豊瓩ら発された強烈なビームが、甲板で砲台として使われていた爛競Α璽鉢瓩魎咾、艦体に突き刺さる。 次の瞬間激しい誘爆が起こり、駆逐艦は速度を落とし、転進した。

 

 「やった……!」

 

 敵艦の戦線離脱に爛◆璽エンジェル甦篭兇沸く。だがそのとき、激しい衝撃が背後から艦を突き上げた。

 

 「なに……!?」

 

 トノムラが体を立て直してレーダーに目をやり、息をのむ。

 

 「ろ、六時の方向に艦影……!? 敵艦が……!」
 「なんですって!?」

 

 マリューは思わずCICに顔を向ける。六時の方向――真後ろだ。ナタルが歯噛みする。

 

 「もう一隻、伏せていたのか!?」

 

 発進された数機の爛丱ゥ瓩箸箸發法後方からの一斉射撃が爛◆璽エンジェル瓩鮟韻Α

 

 「艦砲、直撃コース!」

 

 トノムラがわめき、マリューとナタルが同時に叫ぶ。

 

 「かわせ!」
 「撃ち落せ!」

 

 もはやこれまで、そう思ったとき、慌てて爛丱好拭辞瓩ミサイル郡に向かって対装甲散弾砲を放った。迫るミサイル群に散弾の雨が命中し、誘爆していく。だが、全てを撃ち落す事はかなわず、数発のミサイルが直撃した。

 

 「――くぅっ……!」

 

 被弾した艦は大きく傾き、タルパティア工場跡地に突っ込んだ。かつてレアメタルの採掘、精製を行っていたこの工場は、現在、砂漠の中に放棄されていた。吹き寄せる砂に埋もれかけていた建物を、爛◆璽エンジェル瓩竜霏里轟音を上げてなぎ倒し、めり込むように止まっている。

 

 動かなくなった爛◆璽エンジェル瓩法後方の敵艦より発進した三機の爛丱ゥ瓩迫る。揺れる艦内で、ナタルが必死の抗戦を命じる。

 

 「爛悒襯澄璽鉢瓠↓爛灰螢鵐肇広瓠△謄А璽叩」
 「――こ……これは……!」

 

 敵艦の情報を分析していたトノムラが、はじかれたように声をあげた。

 

 「爛譽札奪廛広瓩茲雖爛ぁ璽献広瓠↓爛妊絅┘覘瓠↓爛丱好拭辞瓠↓爛屮螢奪牒瓩糧進を確認!」

 

 報告を聞いたマリューは、来たか、と顔をしかめる。クルーゼ隊が爛譽札奪廛広瓩望茣呂靴討い燭海箸蓮▲ラたちの報告から聞いていた事だが、この身動きの取れない状況で現れるとは……。
 彼女は焦りを感じ、パイロットシートのノイマンに向かって叫ぶ。

 

 「スラスター全開、上昇! これでは爛乾奪肇侫蝓璽鉢瓩亮誉が取れない!」

 

 だがノイマンが苛立ちを隠す事もできず、叫び返す。

 

 「やってます! しかし船体がなにかに引っかかって……」
 「翼が建物の骨組みに引っかかっているようです。――これでは、身動きが取れません!」

 

 メリオルが悔しそうに声をあげた。外では爛丱好拭辞瓩敵艦より発射されるミサイルを撃ち落しつつ、必死に爛丱ゥ瓩鯀蠎蠅砲靴討い襦H狃はそれを、歯噛みしながら見つめた。

 
 
 
 

 「これは……いけませんわ……」

 

 おろおろとラクスは周囲を見渡した。彼女がやってきたその場所は、慌しく声が飛び交う格納庫だった。補給に戻ってきたムウの爛好イグラスパー瓩法∪鞍兵達が取り付いて大急ぎで作業をしている。ふいに、後から声がかかった。

 

 「ちょっと! わたしのそれ、返しなさいよ!」

 

 彼女がはっと振り返った先には、ぜえぜえと激しく息をついているフレイの姿があった。ラクスは驚いて声をあげた。

 

 「まあ、お仕事は!?」
 「それ無いと嫌っ!」

 

 彼女が苛立たしげに指を刺した。ラクスが「あら?」と、手に持ったお守りを彼女に差し出した。

 
 
 
 

 爛好肇薀ぅ瓩鉢爛丱ゥ瓩宙で交錯した。次の瞬間、爛好肇薀ぅ瓩話綯呂掘↓爛丱ゥ瓩魯咫璽爛機璽戰襪膿燭弾鵑弔棒擇衫かれ、爆発する。キラは息つく間も無く、機体を横に走らせた。次の瞬間、今までいた位置にミサイルが降りそそぐ。
キラはそれが発射された位置を目掛けて、ライフルで狙撃する。ビームが貫き、激しい誘爆を起こしながら、二機目の爛丱ゥ瓩散った。

 

 「カナードと……シミュレーションをしてたから……良かったけど……この数じゃあ!」

 

 コックピットの中で激しく息をつきながら、キラは声を荒げた。アスランと再開してから事情を説明したキラは、あれからしばらくカナードに戦い方を教えてもらっていた。彼だけではない、トールも、サイも、皆がキラの事情を知り、彼の心を支えてくれてる。フレイだって……。だから、キラはここで負けるわけにはいかないのだ。
 その時だった。爛◆璽エンジェル瓩後からの砲撃にさらされたのは。

 

 「しまった! 爛◆璽エンジェル瓩……!」

 

 驚き、慌てて援護へ向かおうときびすを返したキラだったが、突如放たれたビームにさらされ、間一髪のところをシールドで受け止めた。

 

 「なにっ……!? アムロさんの攻撃を突破してきたのがいた!?」

 

 爛譽札奪廛広瓩亮囲で、Xナンバーや橙の爛丱ゥ瓩蕕魄豕,覗蠎蠅砲垢襯▲爛蹐遼姫厂屬鯑庸砲靴討た機体がいたのだ。――振り返ったキラが目にしたのは、見た事の無いオレンジ色の機体、そして寄り添うように迫る爛ぁ璽献広瓩世辰拭

 

 「……アスラン! それに、隊長機か!」

 

 容赦なく撃ち掛けられるビームをシールドで避けながら、キラはライフルで応射した。

 
 
 
 

 「爛◆璽エンジェル瓩っ!」

 

 廃工場に突っ込んだまま、身動きが取れなくなった爛◆璽エンジェル瓩傍い鼎、カガリとキサカがバギーを停める。

 

 「エンジンをやられたのか……!? これでは狙い撃ちだぞ!」

 

 キサカが爛好肇薀ぅ瓩了僂魑瓩瓩篤を巡らす。と、その隙をついてカガリが車から飛び降り、爛◆璽エンジェル瓩妨かって駆け出した。

 

 「カガリ!」

 

 それに一瞬遅れて気づいたキサカが、すぐあとを追おうとするが、目の前で起こった爆発に阻まれて更に彼女との距離が開く。その間にカガリは爛◆璽エンジェル瓩離魯奪舛ら駆け込んだ。
 格納庫へ駆け込んだ彼女の姿に、マードックが目を見開く。

 

 「おい、なんだ――嬢ちゃん!?」

 

 カガリは彼に目もやらず、まっすぐ爛妊絅┘覘瓩剖遒唄鵑襦

 

 「なにすんだ!? おい、嬢ちゃん!」
 「機体を遊ばせていられる状況か!?」

 

 咎めるマードックに怒鳴り返し、カガリは一気にタラップを駆け上がろうとする。その時、何者かに飛びつかれ、思わずバランスを崩した。

 

 「それはいけません!」
 「ラ、ラクス・クライン!? なんでここにいるんだよ、お前捕虜だろ!」

 

 力の限りカガリを引きとめようとするラクスに向かってカガリが怒鳴った。更にそのすぐ後ろから別の苛立たしげな声。

 

 「ちょっと! わたしのそれ返してよ!」

 

 言いながらラクスをカガリから、引き離そうとする。カガリは二人を無理やり引きずるようにしてタラップの残りを上りきり、三人はコックピットになだれ込んだ。

 

 「こいつで出る!――お前ら邪魔だぞ、出てけよ!」

 

 シートに座ったカガリが、脇に体勢を崩してへたり込んでいる二人の少女たちに向かって声を荒げる。フレイも負けじと声を上げげカガリにつかみかかる。

 

 「あんたが出なさいよ! 馬っ鹿じゃないの!? こんなことしてただじゃすまないんだから!」
 「カガリさま、今ならまだ間に合います! わたくしたちが出てもどうにもならないのです!」
 「うるさいっ!――全員下がれ! 吹っ飛ぶぞ!」

 

 なおもすがる彼女たちを一喝して、カガリは対外スピーカーごしに怒鳴った。この騒ぎにほかの整備士たちも驚き、寄ってくるが、痴話げんかのような言葉に慌ててあとずさる。

 

 「ハッチ開けろ!」
 「あんた少し黙りなさいよ馬鹿!」
 「開けてはなりません! カガリさま、どうか落ち着いてください!」
 「あああ〜もう! 今どきのガキはぁ〜っ!」

 

 マードックは大事な機体を案じて髪をかきむしったが、カガリが早くもライフルを構え、「壊してでも出るぞ!」と言い出したので、腹をくくったように叫んだ。

 
 

 「ハッチ開けてやれ!――落としたら承知しねえからな!」

 

 脅し文句を最後に隔壁がしまり、爛妊絅┘覘瓩カタパルトレーンに運ばれる。カタパルトに打ち出される瞬間のGに、カガリは息をつめた。フレイとラクスは、シートベルトなどをしているわけがなく、そのGで体を打ち付けられた。
 カガリは爛妊絅┘覘瓩鮹肋紊肪綯呂気擦襪函△修里泙泙寮いで砂に足を取られ、思い切り転がった。

 

 〈爛妊絅┘覘瓩発進……!?〉
 〈誰が乗っている!?〉

 

 艦橋で問答をしているマリューとナタルの声が漏れ聞こえてきた。カガリは怒鳴った。

 

 「私だ! カガリ・ユラだ!」
 「このバカガリ! 戻れって言ってんのがわかんないの!?」
 「まあ、そのようなはしたない言い方をしてはなりません」

 

 モニターの中に映るマリューの顔が、驚愕に変わる。

 

 〈あ、あなた達、なんてことを……!〉

 

 その様子を見て、ラクスが慌てて声をかけた。

 

 「ち、違いますっ。わたくし、今回は止める側です」
 「おい、これどうするんだ!? 足が取られて身動き取れないぞ!」
 「ああ、もう……なんで二度もこんな思いしなきゃならないのよお!」

 

 懸命に操縦桿を操作しながら狭いコックピットの中でじたばたと暴れる三人の少女の前に、一機の爛丱ゥ瓩襲い掛かる。そこへ、慌ててやってきたムウの爛好イグラスパー瓩立ちはだかり、それを抑えた。

 

 〈おいおい嬢ちゃんたち、そのOSはコーディネイター用だ! ナチュラル用のにきりかえねえと!!〉

 

 彼の言葉に、カガリの顔が蒼白になった。

 

 「聞いてないぞそんなの!」

 

 そんなカガリの様子にフレイが呆れて頭を抑えている横で、ラクスが上目遣いで手を上げた。

 

 「あの、わたくし少しだけならできるかもしれません」

 

 カガリが驚いて反応する。

 

 「パイロットか!?」

 

 「OSを切り替えるくらいなら……この子に」

 

 そう言って服の胸の部分を軽く首元から広げると、中からピンク色の丸い物体が〈ハロ・ハロ〉と飛び出してきた。

 

 カガリは慌ててシートからキーボードを引っ張りだし、ハロの前に持ってきた。ハロの耳に当たる部分から手のようなものがにゅっと突き出る。だがそれよりも早く、更に一機の爛丱ゥ瓩迫る。
 ――しまった!
 慌ててトリガーを引くも、ろくに照準をつけずに撃った所為か一射目でバランスを崩し仰向けに横転、そのまま数発と放たれたビームはあさっての方角に飛んでいってしまうだけだった。

 
 
 
 

 爛◆璽エンジェル瓩隆篭局婉瓩如敵艦砲が爆発した。衝撃で電気系統がショートして、コンソールから火花を噴出し、みなが悲鳴を上げる。
 いぜん爛◆璽エンジェル瓩録汎阿が出来ない状況だった。ノイマンはさっきからあちこちのスラスターを作動させ、浮上しようとするが、金属のギシギシたわむ音が聞こえるばかりで、抜け出す事ができない。
 そのとき偶然、カガリの放ったビームが建物の残骸を吹き飛ばした。

 

 「――外れた!」

 

 ノイマンが思わず歓声に近い声をあげ、操縦桿を引く。建物の破片を振り落としながら、爛◆璽エンジェル瓩竜霏里持ち上がる。すかさずマリューが命じた。

 

 「面舵六○度!――ナタルっ!」

 

 促されるまでも無く、ナタルも叫んでいる。

 

 「爛乾奪肇侫蝓璽鉢畩判爛叩」

 

 視界が開け、砂の海に浮かぶ巨大な空母が見えた。

 

 「――てェェーッ!」

 

 爛◆璽エンジェル瓩亮臻ぁ二二五センチ二連装高エネルギー収束火線砲爛乾奪肇侫蝓璽硲唯烹沓鵜瓩火を噴いた。
 太い熱戦は爛譽札奪廛広瓩慮緝主砲を貫き、そばに配置されていた爛競Α璽鉢瓩爆発に巻き込まれ、誘爆を起こして火球に包まれる。
 爛譽札奪廛広瓩蝋煙を上げ、砂の海で座礁したように動きを止めた。

 
 
 
 

 周囲で繰り広げられる戦闘に気を取られる余裕もなく、キラは爛ぁ璽献広瓩鉢爛薀乾キ瓩量垤兇法△覆鵑箸耐えていた。爛薀乾キ瓩遼じから放たれたビームをシールドで防ぎ、そのまま爛ぁ璽献広瓩妨けてビームを放つ。
だが爛ぁ璽献広瓩呂修譴鬚劼蕕蠅伐麋鬚靴討澆察△修里泙浣射してくる。迫るビームの光りをシールドで受けるも、爛薀乾キ瓩了僂見えないことに気付いたキラは、慌てて周囲を見渡した。
 その隙を目掛けて、爛薀乾キ瓩バーニアを吹かし爛好肇薀ぅ瓩鉾瑤啌櫃辰拭
 ――やられる!
 キラは慌てて体勢を立て直そうとしたが、次に想像した衝撃は一切来なかった。一瞬遅れて、爛ぁ璽献広瓩サーベルに持ち替え、キラに襲い掛かる。接触回線が開き、相手の声が漏れ聞こえてきた。

 

 〈ラクスを返してもらうぞ、キラ!〉

 

 はっとして顔を上げたキラは、慌てて爛薀乾キ瓩鮹気靴拭N磴梁眥控,廊爛好肇薀ぅ瓩鯡技襪靴董△修里泙洵爛◆璽エンジェル瓩妨かって走り出していた。

 

 「――しまった……! 卑怯だぞアスラン!」
 〈アイドルを人質にしておいて、良く言う!〉 

 

 爛ぁ璽献広瓩シールドで爛好肇薀ぅ瓩鮖廚だ擇蠱討飛ばす。
 ――強い!
 キラは荒い息をつきながら、ゲージに目をやりはっとする。パワーが残り少ない。こんなところでモタモタしている暇は無いのだ。

 
 
 
 

 一方爛薀乾キ瓩離灰奪ピットでは、アイシャが黒煙を上げる爛譽札奪廛広瓩傍い鼎。

 

 「……まずいわよ、アンディ」

 

 バルトフェルドも舌打ちした。

 

 「『足つき』め! あれだけの攻撃で、まだ!?」

 

 落ちるのは時間の問題かと思われた爛◆璽エンジェル瓩空に浮かび、自分達の艦は勢い良く黒煙を噴出している。手持ち爛丱ゥ瓩呂曚箸鵑瓢弔辰討い覆ぁイザークたちは、ユニコーンの爛好イグラスパー畫蠎蠅防死に防戦を繰り広げているが、あれではこちらの掩護にまで手が回らないだろう。
 いつのまにか逆転した形勢に、バルトフェルドは歯噛みをして、爛薀乾キ瓩魘遒襦
 ついに眼前まで迫ってきた爛◆璽エンジェル瓩鬚箸蕕┐茲Δ箸靴燭箸海蹐如△佞い飽豕,離皀咼襯后璽弔鮖覲Δ涼爾魏切る。イザークが乗る機体と同型のモビルスーツ、爛妊絅┘覘瓩澄

 

 「まだパイロットがいたか。だがその動きではあまりにも――!」

 

 爛薀乾キ瓩郎修梁臙呂鮟海蠏擇跳躍し口元のサーベルで切りかかった。爛妊絅┘覘瓩とっさに相手がシールドでガードして見せたのを見て、彼の口元に笑みがこぼれる。

 

 「反応は良いようだが、まだまだ!」
 〈貴様……『砂漠の虎』か! あの時はよくも!〉

 

 威勢のいい声が接触回線で聞こえてきた。バナディーヤで会った、金髪の少女の顔が脳裏に浮かぶ。彼は一瞬顔を顰めてから言った。

 

 「ただのレジスタンスくんが、そんなものに乗っていいのかね!」
 〈敵にまで言われてどうすんのよ!――ちゃんとその子抑えてて!〉

 

 先ほどとは別の声が聞こえてきた。このプライドの高そうな声は……あのきつい口調の赤毛の少女だ。バルトフェルドは首をかしげて問いただした。

 

 「おいおい、無断出撃かい? おいたが過ぎるぞカガリ・ユラくん!」

 

 軽い苛立ちを込めて、バルトフェルドは爛薀乾キ瓩鯀らせ、爛妊絅┘覘瓩貌麩∩ビームキャノンを撃ち放つ。爛妊絅┘覘瓩蝋欧討堂麋鬚靴茲Δ箸靴燭、慣れない動きの所為か足をもつれさせ横転した。
だがそれが功を制したのか、爛薀乾キ瓩ら放たれたビームは反れ、爛妊絅┘覘瓩鰐欺のまま残った。彼はもう一度舌打ちをして、止めを刺すべく飛び掛った。そのとき――。

 

 〈まあ、バルトフェルドさま!〉

 

 この声にも聞き覚えがある。それも、昨日今日に出会ったものではない。今度こそバルトフェルドは目を見開き、驚愕の声をあげた。

 

 「――ラクス・クライン!?」

 

 想定外の事態に不意を突かれ、爛薀乾キ瓩枠瑤啌櫃蹐Δ斑茲鉾瑤鵑世泙淨阿を止めた。その大きすぎる隙目がけ、爛妊絅┘覘瓩魯咫璽爛機璽戰襪鯒愧罎ら引き抜き、一気に振り下ろす。光の刃が愛機に迫る。バルトフェルドははっとしてスラスターに逆噴射をかけるも、サーベルの切っ先で前足を切られ、慌てて距離を取った。

 

 「くっ。 前足をやられた……!」
 「熱くならないで! 負けるわ!」

 

 アイシャが叱るように言い、バルトフェルドは唸る。

 

 「わかっている!」

 

 メインモニターの中で、爛妊絅┘覘瓩ゆっくりとマシンガンを構えるのが見えた。その動きは鈍重そのものだったが、どこか不気味なものさえ感じさせられる動きだった。

 
 
 
 

 狭い爛妊絅┘覘瓩離灰奪ピットの中で、ラクスは必死に暴れるカガリを抑えていた。

 

 「離せラクス! 私は戦わなければならない!」
 「お馬鹿なことをおっしゃらないでください!――フレイさん、逃げられますか!?」

 

 OSをナチュラル用に切り替えたところで、カガリが再び前線に出ようとしたのを、ラクスが慌てて止めに入り、フレイが何とか爛妊絅┘覘瓩鯀爐辰騰爛◆璽エンジェル瓩北瓩蹐Δ箸靴討い燭箸、あの『砂漠の虎』と出会ってしまった。
 どうやら腐ってもコーディネイターであったらしいラクスが辛うじてカガリを押さえ込み、彼女は悔しそうに顔をゆがめている。

 

 「キラたちがOSいじってくれたおかげで使えない事は無さそうだけど……あんな早いの相手には無理よ!」

 

 フレイが上ずった声をあげる。無理だ、逃げれない、勝てるわけが無い。言いようの無い恐怖がフレイの心を支配していく。ラクスが意を決して声をかけた。

 

 「わたくしを人質にしてくだされば……!」
 「だめよ!」
 「何故です!?」

 

 すかさず反論するフレイに、ラクスが負けじと聞き返す。彼女は目の前で様子をうかがうように佇む爛薀乾キ瓩鰲砲澆弔韻覆ら言った。

 

 「黙ってて! だいたい何でわたしがこんなことしなきゃなんないのよ!」

 

 言いかけた言葉を遮りつつ、彼女は弱音を吐くように叫んだ。友達を、盾にして逃げるような真似はしたくない。それでも、怖い。死にたくない。指先が震える、頭が真っ白くなる、逃げ出したくなる……。

 

 「なら私に代われ! あんなやつコテンパンにしてやる!」

 

 カガリがそう叫んだ瞬間だった。フレイの脳に『ラ、ラ、ラ……』と、ハープの弦が奏でるような音が――いや、女の歌声のようにも聞こえた。あるいは聴覚が捉えた音ではなく、五官を超えた先にあるなにか――それは、宇宙で初めてモビルスーツに乗ったときから経験していたことであった。
父を失い、自分の命すらも失ってしまうかと思う恐怖の闇に怯え、それまで眠っていた『何か』を……それは、『お守り』から発せられた光の粒たちが彼女を――いや、本来ならば、普通の人間ならば誰もが持っているはずの『全く新しい何か』の目覚めを告げる産声だったのかもしれない――。
 脳髄が別の生き物のように蠢動し、頭蓋から溢れ出る感覚に、フレイは思わず額を両手で押さえた。
 『ラ、ラ……』と呼びかける音がいよいよ強くなる。膨脹した脳髄が白い閃光になって額をつき抜け、虚空に向かって解き放たれたように感じた時、フレイは全身を貫き通す鋭い殺気を知覚した。
 自分に向かって放たれる殺気の光にはっとして爛妊絅┘覘瓩鯀らせた。今までいた場所を、一条のビームが走りさる。

 

 「気がつかなかった!?――カガリがうるさいから!」

 

 悪態をつきながら必死にモニターに目を凝らす。そこには爛好肇薀ぅ瓩良死の猛攻を突破し、迫りつつある爛ぁ璽献広瓩了僂あった。赤いモビルスーツの中に浮かぶ男のイメージが脳裏によぎり、フレイは顔を顰めた。
 爛ぁ璽献広瓩涼罎妨えるパイロットスーツすらも透けて、黒髪の少年の姿のイメージが脳裏に入り込んでくる。

 

 「アスラン・ザラ? あの機体?」
 「まあ、本当ですか!?」

 
 

 ラクスがぱっと笑みを浮かべた。

 

 「乗ってるじゃない!」

 

 フレイは当たり前のように叫んだが、ラクスは訳のわからないと言った表情で眉を寄せた。今度は別方向から殺気を感じ、フレイは慌てて操縦桿を握りなおす。そのイメージの光を辿り見れば、爛薀乾キ瓩後方へ回り、自機に向けてビームを放とうとしているところだった。その中にいる男性が、声をあげた。

 

 『聞こえるかアスラン! 何でかわからんが、その機体にラクス・クラインが乗っている!』
 『ま、また!? どうすれば……!』
 『行動不能にする! 回りこんで挟み撃ちにするぞ!』

 

 この会話はフレイにしか聞こえていないものだ。バルトフェルドが向けた意識の方向に向けて、右手に持ったマシンガンを噴かせた。放たれた銃弾は、まるで吸い込まれるように爛薀乾キ瓩離咫璽爛ャノンに命中し、爆発した。

 

 「……当たった!?」

 

 無数の銃弾に晒された爛薀乾キ瓩呂垢阿気泪ャノンを切り離して爆煙に紛れ込んだ。煙に巻かれて相手の姿が確認できない。目の前の様子に集中している彼女は、ポケットにしまっている『お守り』が淡い光を漏らしていることに気づく暇も無く、再びマシンガンを構えた。

 

 「どこに……。――こっち!」

 

 吹き荒れる砂塵すらも透けて見える男の意思を目掛け、フレイは再びトリガーを引いた。放たれる銃弾の雨にあわせるかの用に爛薀乾キ瓩砂煙の中から飛び出す。無数の弾がメインカメラと後ろ足に着弾し、ついに爛薀乾キ瓩沈黙した。

 

 「違う、まだいる……。息がある? そう、あるのね。なら……」

 

 もはや自分でも何を言っているのか理解していない。ただ、感覚の命じるままに指を動かす、それだけで良いのだ。感覚の糸を手繰り寄せた先に、敵がいる。それがいま彼女が感じているものであった。
 ラクスが懇願するように抱きつく。

 

 「もうお止めください! バルトフェルドさまが死んでしまいます!」
 「死ぬ……? まだ来る!?」

 

 背後に悪寒を感じた。力強く、優しさに満ちた力強い信念、そしてわずかな迷い。
 爛妊絅┘覘瓩呂罎蕕蠅販れるような動作で身を翻す。すぐ横をビームの光りが鋭く走った。構わずマシンガンを放つが、迫り来る爛ぁ璽献広瓩裡丕啻甲の前では碌にダメージを与えることはできなかった。敵機は憤慨したような気迫を発し、サーベルを抜き斬りかかる!

 

 〈バルトフェルド隊長を、よくも!〉

 

 接触回線から聞こえてきた声に、ラクスがぱあっと笑みをこぼし、何かを言いかける。その前にフレイが叫んだ。

 

 「ラクスを殺すわ!」
 〈――なっ!?〉

 

 フレイはすかさずバックパックからビームサーベル抜きさり、切りかかる。慌てて回避しようとした爛ぁ璽献広瓩世辰燭、サーベルの光刃はその右腕をとらえ、切り裂いた。
 爛ぁ璽献広瓩残った左腕で、中破した爛薀乾キ瓩鯤えて飛び去っていくのを彼女は肩で息をしながら見つめた。少し遅れて、灰色の爛好肇薀ぅ瓩慌てた様子でやってきた。
 フレイにとって、長い長い、一瞬の出来事だった。

 

 〈フレイ! また出てきちゃったって……〉
 「……遅いわよ馬鹿」 

 

 もう一度深く息をついてから、去り行く爛ぁ璽献広瓩鯣瓩靴修Δ妨つめているラクスに声をかけようとしたが、体も口これ以上動かずそれもかなわなかった。つまらなそうな顔をしているカガリに小言を言う事気力も無い。
 先ほどの声は聞こなくなっていた。

 
 
 
 

 片腕で爛薀乾キ瓩鮖戮┐討い觧もあり、その重さで速度が出し切れないでいる爛ぁ璽献広瓩離灰奪ピット内で、アスランは通信回線を開いた。

 

 「ダコスタさん!」
 〈――アスラン君?〉

 

 被弾した爛譽札奪廛広瓩砲い襯瀬灰好燭、モニターに映った。殺気立ち、疲れた顔をしていたバルトフェルドの副官は、アスランの苦痛に満ちた顔を見て息をのんだ。それを見て、アスランは彼らを、ひどく不憫に感じた。彼らは信じていたのだろう。
バルトフェルドが何かを命じれば、すべてうまくいく――形勢はまだひっくり返せる。当然ではないか。彼は『砂漠の虎』なのだから――。
 アスランは視線を落としながら、こう告げた。

 

 「……我々は敗北しました。これ以上は無理です、撤退を!」
 〈そんな……馬鹿な!〉

 

 ふいに、ロックオンを知らせるアラートが鳴り響き、あわてて視線をやると、僚艦を全て落として来た敵の爛丱好拭辞瓩爛ぁ璽献広瓩鯀世辰討い拭 上空からは、それの支援をしていた『エンデュミオンの鷹』も、自分らを撃つべく戻ってきた。

 

 「勝敗は決しました。今戻らねば全滅します!」

 

 そう断言すると、モニターの中のダコスタが唇を噛み締めて撤退命令を出し始めた。ふと、映像が乱れきったモニターの中から、声が聞こえてきた。

 

 〈……アスランくん、僕らを捨てて逃げたまえ〉
 「隊長!? ご無事で……!」

 

 彼は顔をほころばせ喜んだ。

 

 〈行きなさい。敵が迫ってきているわ〉

 

 バルトフェルドと共にいたあの女性の声も聞こえてきる。はっと顔をあげたアスランは、口元を引き締める。

 

 「貴方たちは、今のザフトには必要な方です!――それに、仲間を見捨てる事なんて、俺にはできない!」
 〈だが、このままでは君も助からないぞ!〉

 

 爛薀乾キ瓩僚鼎気如∈修紡を取られそうになった爛ぁ璽献広瓩離灰奪ピット内に、彼の怒ったような声が響いた。だがアスランは怯まなかった。一度ラクスの可愛らしい笑顔を頭に浮かべ、つづけて仲間達の顔を思い出す。

 

 「それでも、俺は……!」

 

 彼には見えていたのだ。辛うじて爛好イグラスパー瓩量垤兇鯑庸砲靴浸圧,離皀咼襯后璽弔了僂髻爛ぁ璽献広瓩鯀世Ν爛丱好拭辞瓩法∋圧,離皀咼襯后璽弔一斉に攻撃を仕掛けた。彼らはすれ違いざま、アスランに声をかけた。

 

 〈生きてるなアスラン! 『黄昏の魔弾』の逃げっぷりを見せてやるぜ!〉

 

 丁寧にも橙に塗られた爛丱ゥ瓩魘遒蝓△修譴廊爛ぁ璽献広瓩僚發砲覆襪茲Δ北り出た。

 

 〈バルトフェルド隊長は負傷しているのだな? ならば、最高の医者を教えてしんぜよう〉

 

 ミハイルもまた、爛丱ゥ瓩鮃みに操り、爛好イグラスパー瓩帽況發鮖迭櫃韻襦

 

 〈爛▲汽襯肇轡絅薀Ε畢瓩僚鼎気法↓爛妊絅┘覘瓩和僂┐童せてくれた! 下がれ、アスラン!〉
 「イザーク! 足止めを頼む!」

 

 〈任せろ!〉と怒鳴りながら、爛妊絅┘覘瓩魯掘璽襯匹鮃修┐篤遊發鬚靴討い辰拭すぐさま転進して攻撃を仕掛けてきたユニコーンの爛好イグラスパー疚楹櫃韻董↓爛競Α璽鉢瓩鉢爛丱好拭辞瓠↓爛轡亜璽妊ープアームズ瓩一斉に砲撃を開始する。

 

 〈は、早く帰りましょうよお!〉
 〈OK、良い案だアイザック。だがアスランたちを回収してからだぜ?〉
 〈お願いですからもう少し緊張感を持って戦ってください!〉

 

 無事だったか。とアスランは安堵の笑みをこぼした。あの『メビウスの悪魔』を相手に良くここまで……。 
 爛屮螢奪牒瓩鉢爛丱ゥ瓩、爛譽札奪廛広瓩慮緝付近から飛び出してきた。

 

 〈爛譽札奪廛広瓩呂泙斉阿韻泙后▲▲好薀鵝〉
 〈もう一頑張りしてくれるってよ! なかなか男を見せる艦だぜ!〉

 

 彼はまた顔を綻ばせる。――そう、爛譽札奪廛広瓩機能を停止させてから、二人は艦の護衛についた。爛好イグラスパー瓩ら繰り出される攻撃を懸命に阻止しながら、彼らの帰る場所を守り続けていたのだ。

 

 「ニコル……ラスティ!――さあ、バルトフェルド隊長!」

 

 アスランは、もう一度バルトフェルドに呼びかけた。短い沈黙の後、爛薀乾キ瓩離皀離▲い妨が灯り、起動を始める。やがて起動音が静まり、爛薀乾キ瓩浪れた脚部をしまい、キャタピラを出して走行モードへと姿を変えた。モニターの中に、ヘルメットを外し、額に包帯を巻いたバルトフェルドの姿が映った。

 

 〈やれやれ、だが女性を焦らすのもだ。お姫様にはもう少しだけ待っていてもらおう!〉

 

 彼らは全力で機体を走らせ、一目散にバナディーヤを目指した。
 日は、もう完全に昇りきっていた。

 
 
 
 

 「『明けの砂漠』に」

 

 サイーブの掲げた杯に答え、マリューも自分の杯を上げた。

 

 「――勝ち取った未来に」
 「――戦士たちに」

 

 アムロがふいに言葉を発した。サイーブたちは彼を見てから、静かに頷いた。

 

 「じゃあ、まあ、そういうことで」

 

 ムウが無意味に締めくくり、ナタルとメリオルを含めた六人が杯を合わせた。ナタルが一口ぐっと飲んで、酒の強さにむせ返る。メリオルは苦々しい顔をして、なみなみと注がれた物体をじっと睨んでいる。マリューが同じものをくいっと空けるのを見て、彼女たちは「信じられない」という目で見つめ、サイーブは今まで見せた事の無い顔で、陽気に笑った。
 レジスタンスたちの拠点である岩山の前に、大きな焚き火が燃やされ、人々は勝利と避けに酔ってはしゃぎ回っている。それを見ながら、ムウが言った。

 

 「……でも、まだ大変だな、あんたたちも」

 

 彼は杯を持ったまま肩をすくめる。

 

 「『虎』を打ち破ったってったって、ザフト自体がここから消えるわけじゃない。やつらは鉱山が欲しいんだろ? すぐ、次が来るぜ」

 

 祝杯の雰囲気に水を刺すような発言だが、この場の誰もがとがめない。それが真実だからだ。サイーブは杯を置き、かたわらにあった銃を取った。

 

 「――そのときは、また戦う」

 

 彼らの祖先が、そうしてきたように――。

 

 「戦い続けるさ、俺たちは。俺たちを虐げようとするヤツらとな……」

 

 決意を込めて言う彼の前に、アムロが一歩前へ出て言った。

 

 「ならば、あなた達を虐げる輩を出さないようにするのが、俺たちの本当にするべきことなのかもしれないな」

 

 サイーブはにっと笑みを浮かべて、言った。

 

 「期待しないで待っているよ」

 

 目の前軽く笑みをこぼしながら握手をしている誇り高き戦士たちを、マリューは尊敬のこもった目で見つめた。人々は様々な理由で戦うのだ。いつか戦いがなくなる日を夢見て――。

 

 「とうさん」

 

 ヤルーが彼らに近づいてきて、呼びかけた。

 

 「戦士を送る祈りをするって、長老が」

 

 彼らは腰を上げた。死者を送り、生きている者たちはその意志を確認する。
 ムウが、ぽつりとつぶやく声が聞こえた。

 

 「本当にするべきこと……か……」

 

 弔砲が谷間にとどろき、死者の名が呼び上げられる。岩山から返る木霊は、どこか死者の国からのいらにえにも聞こえた。

 
 
 
 

 そこから少し離れた岩山の影で、少年たちは出された料理を口に運び、疲れを癒やしていた。

 

 「大変だったんだってな、キラ」

 

 サイが串に刺さった肉と野菜を口に運びながら、キラに語りかけた。

 

 「うん。でも……アムロさんやカナードがいてくれたから、大丈夫だったよ」

 

 「そっか」と安心したように漏らしたサイの隣で、カズイがでも、と付け足した。

 

 「フレイ大丈夫かな? あの後倒れちゃったみたいだけど……」
 「今ミリィとラクスが見てくれてるみたいだけど……うーん?」

 

 トールが考えながら言った。ふいに、苛立った口調で声がかかった。

 

 「――気が抜けただけだろう」

 

 「そうなの?」と、キラはカナードに聞き返した。

 

 「何の訓練も積んでないただのナチュラルの小娘がモビルスーツに乗って戦ったんだ。それに――あのカガリとかいう馬鹿女、足手まといも良いところだ」

 

 苛立たしげに言ってから舌打ちをする彼に、トールがまあまあとなだめに入る。

 

 「そのへんにしておけって。お前はすぐ手が出るからなあ……。いきなり顔に蹴りってのは流石にまずいぜ?」

 

 あの後、爛妊絅┘覘瓩ら降り立ったカガリに迫り、言葉を発する前に問答無用で回し蹴りをぶち込んだカナードの姿を思い出し、キラは可哀想な事したなあと顔を顰めた。まあ実際キラにも、大好きなフレイを危険な目に合わせたということで苛立った感情もあったのだが。それでもいきなり蹴り飛ばすのはどうかと思う。カズイがまたぼそっと言った。

 

 「倒れたあの子のお腹にもう一度、だったよね……」

 

 サイが表情を引きつらせながら付け足すように言った。

 

 「もう一度っていうか……何度もだったよな」

 

 もはや咎める気も起きずに、呆れた表情で少年たちは彼を見やった。

 

 「銃殺にしてやるところをあれだけで勘弁してやったんだ。感謝はされど、文句を言われる筋合いは無い」

 

 どことなく満足げに言うカナードに、乾いた笑いをしながら少年たちは目を合わせないように他所を見やる。ふいに、彼らの目に、二人の少女に連れられて出てきた少女が止まった。キラは驚いて声をかけた。

 

 「フレイ! ラクスに、ミリィも!」
 「みなさまお揃いですのね」

 

 フレイに寄り添うようにしていたラクスがふわふわと言った。続けてミリアリアが軽くため息をついた。

 

 「聞いてよー。フレイったらさ、ただ気が抜けただけだったのよ?」

 

 ミリアリアにじとっと睨みつけるように見られたフレイは、気恥ずかしげに唇を尖らせて目を逸らした。

 

 「べ、別に良いじゃないの……」
 「良くなーい。その所為でアタシはずぅーっとフレイの看病してたんだからねっ」

 

 にっと笑みを零したミリアリアに続いて、ラクスも嬉しそうに手をぱんっと合わせて言った。

 

 「まあ、わたくしも看病したのですよ?」

 

 ふわっと笑みを零して迫るラクスに、フレイは更に悔しそうに視線を逸らした。

 

 「でも、何事もなくて良かったよ。ほんと、一時はどうなることかと思ったけど」

 

 キラは安心して胸を撫で下ろした。
 ふとラクスが指を口元に当てながら聞いた。

 

 「これからわたくしたちはどこへ行くのでしょうか? 砂漠に下りてしまって、どうするのでしょう」

 

 彼女のふわりとした問いに、カナードが不機嫌そうに答えた。

 

 「まあ、紅海へ抜けて、インド洋から太平洋に出るのが妥当だろうな」

 

 ラクスはまた嬉しそうに笑みを浮かべて、声をあげた。

 

 「まあ、海へ出るのですね! わたくし海は初めてですの」
 「海かあ、久しぶりだよなあ」

 

 トールがしみじみと言った。その横でカズイがうーんと首をかしげた。

 

 「行ったこと無いんだよなあ」

 

 幸せそうな笑みを浮かべながら、ラクスが励ますように声をかけた。

 

 「きっと素敵なところですわっ。美味しいお魚さんもいっぱいいるはずです」
 「ラクスさんって結構食い意地張ってるわよね」

 

 ミリアリアがふいに漏らした言葉に、彼女の体が固まった。ぎこちない仕草で振り向いて、言った。

 

 「そ、それは……地球の食べ物は美味しいので……」
 「ふーん?」

 

 興味もなさげに言うミリアリアの隣で、フレイがちらと視線を彼女のお腹から首、顎のあたりに向け言った。

 

 「少し太ってきたんじゃない?」

 

 ぎくっと身を引かせているラクスを尻目に、カズイがぼそっと言った。

 

 「――そういえば最初の時も、お腹が空いたから、だったよね」

 

 みなが、ああそういえば、と思い出している中、ラクスだけが言葉を聴くたびにびくっと体を震わせた。
 その時、空砲の音が聞こえてきた。死者を追悼するために、レジスタンスの人たちが打ち上げたのだ。彼らは釣られて夜空を仰ぎ見る。
 満天の星たちが冷たい目で、彼らの行方を見守っていた。

 
 

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