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CCA-Seed_◆ygwcelWgUJa8氏_19_1

Last-modified: 2015-06-28 (日) 02:30:08

 爛◆璽エンジェル瓩ら整備ドックに続くタラップの上で、フレイはいらいらと右足で地面をぐりぐり踏みしめながら友人たちの到着を待っていた。すぐ隣でミリアリアが軽くあくびをし、釣られてカガリも同じようにした。
深くかぶった帽子の鍔をいじりながら、ラクスが何やら楽しそうにふわふわしている。流石にナタルとメリオルは落ち着いているようだが、フレイはそうもいかない。何故なら――。
 慌ててこちらへやってくる人影に、フレイは思い切り怒鳴り声をあげた。
 
 「おっそーい!!」
 「ご、ごめん」
 
 第一声にキラが手に持った少し大きめのバッグを揺らしながら必死に頭を下げた。
 
 「男が女の子を待たせるってどういうことよ!? 何、あんたわたしに喧嘩売ってるわけ!?」
 「まあまあフレイ、落ち着いてくださいまし」
 
 ラクスが二人の間にふわりと割って入る。彼女はそのままの笑みでキラと一緒にやってきたサイとカズイに視線を移す。
 
 「サイ様も、カズイ様も――」
 
 天使のような声色で優しく彼らの名を呼び、視線を正面のキラへと移す。
 
 「……『あの子』はまだなのでしょうか?」
 
 氷のように冷たい声色で、彼女は短く言った。キラ、サイ、カズイがぎくっと身を震わし、すぐ後ろにいたトールとカナードはわけのわからないと言った表情で首をかしげた。
 
 「いい加減にしていただかないと、流石のわたくしも堪忍袋の尾というものが――」
 「ちょ、ちょっと待って!」
 
 そう言うとキラはバッグからピンク色の丸い物体を取り出す。ラクスが「まあっ」と嬉しそうな声を上げた。
 
 〈ハロ・ラクス・ハロ〉
 
 丸いピンクのハロが、元気良く耳をぱたつかせ、ラクスの差し出した手のひらの上に飛び乗った。
 
 「ハロ……ごめんなさい、わたくしが心無い方たちにお貸ししたばっかりに、大変な目にあって……」
 「は……ははは……」
 
 キラたちの乾ききった笑いを聞きながら、フレイはああ、と思い出した。そういえばハロを壊されたとかで、しばらくラクスが不機嫌な日があったなあ、と。
 
 〈ハロ・今日モ元気ダナ・ラクス〉
 
 ラクスが驚いて目をぱちくりとさせた。尚も彼女の手の中で、ハロが耳をぱたぱたとさせる。
 
 〈ドウシタ・ラクス・ドウシタ〉
 「……まあ。ハロがとってもお喋り」
 「あー、そのことなんだけど……」
 
 カズイがぽりぽりと頭をかきながら前へ出た。
 
 「思考回路と言語機能が駄目になっちゃっててさ、最初から作り直したんだ」
 「……駄目、に?」
 
 ラクスがぎゅっと目を細める。カズイとキラが慌てて何かを言おうとするがその前にサイが一歩前へ出た。
 
 「思考と言語に制限がかかってたってことさ、ラクス・クラインさん」
 
 「げんご? せいげん?」
 
 ラクスの頭に?マークがふわりと浮かび、サイが続けた。
 
 「後から機能を増設するスペースもあって、俺たちはそれを追加したに過ぎないってこと」
 「は、はあ……」
 
 ちんぷんかんぷんですと言いたげな表情で、ラクスは首をかしげた。
 
 「えーと、何故ハロにそういうのがあったのでしょうか?」
 「ん? それは……うーん……」
 
 流石にこの質問は想定していなかったのか、サイが困ったように考え込んでしまう。
 ふと、キラがおずおず口を開いた。
 
 「たぶん、なんだけど。アスランはラクスの『ペット』としてハロを作ったんだと思う」
 「まあ、ハロはお友達ですわ」
 
 すぐさまラクスが反論した。キラが、うん、と頷く。
 
 「だから、いつでもラクスの『友達』にできるようにしてあったんだとう思うよ」
 
 ああと納得した様子のラクスが、にっこりとハロに笑いかけた。
 
 「ふふ、アスランったら。――これからもよろしくおねがいしますね、ハロ」
 〈ハロ・ハロ〉
 
 彼女はもう一度子供のように笑みをこぼした後、ふわふわとフレイのところへやってきてさっとハロを差し出した。思わずフレイは身を引く。
 
 「な、何よ?」
 「ハロですわっ」
 〈ハロ・フレイ・脳波・ヘン〉
 「はあ!?」
 
 こ、この丸いゴミくずめ……。後でこっそり虐めてやろう、決定だ。
 ふいにキラがしどもどして、言う。
 
 「あの、だから……トリィ、返して欲しいんだけど……」
 
 トリィとは、あの変な鳥のペットロボのことだ。ここ数日はフレイとラクスの部屋にいて、理由を聞くと、ラクスははんと鼻をならし、『担保です』と言っていた。
 ラクスがにっこりと微笑み、言った。
 
 「どの口がおっしゃっているのでしょう?」
 
 あーあ。とフレイはしょんぼりと項垂れるキラを端目で見る。先の戦闘中に聞いた、スーパーコーディネイターと言う単語は今も引っかかっている。カナードとキラの関係は、結局詳しくは聞かされていない。
彼らは本当に兄弟だったらしいこと、キラがカナードに負い目があるようで、彼を責めないで欲しいと言った事、カナードが先の戦闘のことをみんなに謝った事、トールが一度だけカナードを殴った事、艦内で知られているのはそれだけである。
だから、スーパーコーディネイターという名を知っているのは、恐らくフレイだけだ(ひょっとしたらマリューとかは知ってるかもだが)。その事だけは、ラクスにも言っていない。言えるわけがない。恐らくそれは、軽く口にして良いようなことでは無いはずだから……。
 
 「よし、んじゃ出発だな」
 
 カガリがうーんと気持ちよさそうに背中を伸ばした。
 
 「ガイドさんがいるんだっけ?」
 
 とミリアリア。
 
 「ああ、現地の住民に協力してもらったそうだ」
 
 ナタルが肩の筋肉をほぐしつつ言う。
 
 「信用できるんだろうな? そのガイドとやらは」
 
 むっつりと不機嫌なカナードが腰に手を当てる。
 
 「ええ。ハルバートン提督がじきじきに雇ったみたいですし、こちらで素性も調べましたから」
 
 メリオルがメガネの位置を直しながらさっと言った。
 
 「そうか。なら、良い」
 
 ……メリオルの言うことだけは素直に聞くんだ、と思いながら何となく複雑な気持ちでフレイはカナードの横顔をじっと見つめた。やっぱりというか、結構ハンサムというか、ええと、なんというか……。そんなつたない思考に陥ったフレイに気づくそぶりも無く、彼はさっさと出口へと向かっていく。
フレイが彼の後に続くと、さっと彼が振り返り、思わず目があってしまった。突然のことにかーっと耳まで赤くなるフレイであったが、カナードは気づかず
 
 「おい、行き先はどこだ」
 
 と聞いた。
 ラクスとカガリ、ミリアリアにからかわれながら駐車場にまでやってきたフレイは、先頭を歩いているメリオルに声をかける。
 
 「あの、ここなんですか?」
 「ええ。――ほら」
 
 彼女がすっと指を指した先に、二台の古ぼけたジープがあった。たまらずフレイが非難の声をあげる。
 
 「えー、あれー?」
 「贅沢を言うな。閣下がポケットマネーで出してくださったのだ。感謝はすれど文句を言う筋合いは無い」
 
 とナタル。
 
 「げ、ポケットマネーって……そうなのか?」
 
 カガリが意外そうな顔で身を乗り出す。ナタルが当然だと言わんばかりに胸を張り、何かを言いかけたが、それよりも早く、呆れ顔のメリオルがつぶやいた。
 
 「……ちゃんと経費から落とされてますよ、これ」
 「な、何!?」
 「はあ……貴女からかわれてるのよ。提督に」
 
 仰天して固まるナタルに、メリオルがやれやれと首を振った。すると――
 
 「……遅いぞ」
 
 六人乗りのジープの運転席から、一人の少女が顔を出した。見覚えのある顔に、フレイは「あっ!」と声を上げる。
 
 「コニール・アルメタさん、今日はよろしくお願いします」
 
 メリオルがさっと頭を下げた。
 
 「ガイドってお前だったのか、コニールっ!」
 
 勢い良くカガリがやってきて、コニールの頭を乱暴になでた。迷惑そうに彼女の手を払いのけようとするコニールであったが、更にやってきたラクスにも両の頬をぷにぷにとされて身動きができないでいる。
 
 〈ハロ・コニール・今日モ楽シソウダナ〉
 「た、楽しくないぞっ!」
 
 ばっと顔を赤らめたコニールが憤慨した。
 
 「もー、ラクスさんもカガリさんもその辺にしておきなさいよねー」
 
 ミリアリアが二人にもみクシャにされてるコニールをかばうようにして二人をどけた。一度照れくさそうに笑ったコニールであったが、ふと視線に飛びこんだハロに気づき、目をぱちくりさせる。
 
 「うわっこれ何だ!?」
 「ふふ、ハロですわっ」
 〈ハロ・コニール・元気カ?〉
 「あ、うん……元気」
 
 ラクスが差し出したハロにどぎまぎしつつ彼女は何が何だかわからないと言った様子で固まっているだけだ。ふとラクスがあることに気づき、首をかしげる。
 
 「あら、そういえばハロはコニール様の事をどこで?」
 〈教エテモラッタ・教エテモラッタ〉
 「誰に教えてもらったんだ?」
 
 カガリが首をかしげる。
 
 〈教エナイ・教エナイ〉
 「あ、こいつ生意気だぞ」
 
 なんだかおかしくなってしまい、口元を緩ませながらフレイは視線を男性陣の方へ移した。ジープの周囲やタイヤをカナードが丹念に調べている。
 
 「……何やってんの?」
 
 彼女の問いに、キラや苦笑しつつ答えた。
 
 「……爆弾が無いか調べてるんだって」
 
 呆れて言葉も出なかった。
 
 
 「………………」
 「………………」
 「………………」
 
 ……こんなつもりではなかった。おそらくここにいる誰もがそう思っていることであろう。
 否、気づくべきだったのだ。この可能性を……。
 四人乗りのジープに五人で乗ったキラ、サイ、カズイ、トール、カナードは、ぎゅうぎゅう詰めになりながら前を走る女性陣が乗ったジープの後を無言で続いていた。
 後部座席右端のトールが絶望しきった顔で窓から顔を外へ除かせる。
 
 「ミリィ……俺よりもフレイたちを取るのか……ミリィ……」
 
 とりあえず彼は先ほどからずっとこの調子なので合えて無視することにした。
 
 「カナードがいれば、せめてフレイとメリオルさんと……カガリくらいはこっちに来ると思ったのになあ」
 
 堕落しきった顔で言ったのは、同じく左端に座るカズイである。
 
 「……何の話だ」
 「へっ? カガリ?」
 
 運転席のカナードは良くわかっていないようだったが、無視してキラは隣のカズイにたずねた。
 
 「ああ、こいつと話すときだけ声が違うんだよ、こう……女っぽいっていうか」
 「だから何の話だ」
 
 キラは軽い嫉妬を覚えながらも、やはりカナードを無視してつぶやいた。
 
 「そっかあ、カガリもかあ……」
 「…………?」
 
 困った顔になったカナードを見かねてか、助手席に座るサイが苦笑気味に言う。
 
 「お前はそう簡単に落とせないってことさ」
 「ああ、まあ当然だな。オレは素人に落とされるほど優しくはない」
 「……言うねえ」
 
 と、カズイ。
 
 「当たり前だ、アルスターもユラのやつも、まだまだ甘いんだ。ま、メリオルならわからんがな」
 「へえ、メリオルさん?」
 
 にやにやとカズイが聞き返す。カナードはマジメな顔になり、深く頷いた。
 
 「ああ。……正直格闘戦では敵わないかもしれん」
 「え、メリオルさんってそんなに強いの?」
 
 信じられない気持ちでキラは後部座席から身を乗り出した。
 
 「強いさ。あいつのククリナイフの前にはあまり立ちたくないな」
 
 あまりにも以外な事実であったが、ククリナイフを構えた色っぽいメリオルの姿が思い浮かんでしまい、ちょっと良いかもと思ってしまったキラである。
 
 「ってことは、カナードはメリオルさんか」
 
 カズイがいやらしく言う。
 
 「……? まあ、そうだろうな」
 「フレイかと思ったんだけどなー」
 
 カズイが腕を組んで大げさに考え込む仕草に、キラは苦笑した。
 
 「アルスターと言えば……アーガイル、良かったのか?」
 
 終始涼しい眼で聞いていたサイが、「うん?」と聞き返した。カナードが短く「婚約さ」と言うと、サイはああと納得して口を開く。
 
 「俺が言わなくたって、たぶん父さんがそうしたと思うし。どうしようもなかったんだと思う」
 
 サイの、お父さん? 何やらわけがありそうだが……。
 
 「……ジンクス、か」
 「良くご存じで」
 
 短く吐き捨てたカナードに、サイがやれやれと言った。
 
 「ジンクス?」
 
 キラが聞くと、カナードが答えた。
 
 「有名な話さ。アルスターの名を告ぐ者は皆短命だってな」
 
 キラとカズイが「へーっ」と感嘆の声をあげた。
 
 「フレイのお袋さんも、その家族もみんな早くに死んじゃったらしくてさ。父さんもフレイの親父さんに頼まれて仕方なく……ってことだったんだ」
 
 そしてそのジョージ・アルスターも、宇宙で――。
 キラは何だかいたたまれなくなってしまい、唇を軽く噛んだ。
 
 「まったく、迷信で人を殺せるのなら苦労しない」
 「そういうのわかってない人が多いんだよ」
 
 やれやれと言ったカナードに、サイが寂しそうに答えた。
 
 
 「長老、ただいま!」
 「コニールか! 良くぞ戻ってくれた……」
 
 大きめの建物に止まったジープから、コニールが勢い良く降り立った。入り口の奥から、髭を首の下辺りまでたくわえた白髪老人がにこやかに出迎える。そのまま彼女は長老と呼ばれた老人の胸に飛び込み、彼もまた彼女を愛おしそうに撫でている。
 
 「街を案内することになったんだ、良いよね?」
 「ん?……ああ、もちろんじゃとも」
 
 一瞬何かを言いかけたような気がしたが、フレイは大して気に留めずにジープから降りる。続いてラクスがこそこそと人目につかぬように、カガリが勢い良く、ナタルが几帳面に、ミリアリアがきょろきょろと辺りを見渡している後ろでメリオルが周囲に警戒を怠らず油断なく降り立った。
 皆がぺこりと頭を下げていると、ややあってもう一台の男組みジープが到着し、これで全員揃った事になる。
 
 「ねえ長老、祭りに呼んでも良いよね?」
 「う、うむ……。ああ、良いとも、良いとも」
 「お祭りがあるのですか!?」
 
 ぱん、と両の手を胸の前であわせ、帽子を深々とかぶったラクスが嬉しそうに声をあげた。
 
 「うん、巨神様に豊作を祈るんだ。みんなでやろう!」
 
 嬉しそうに笑みをこぼすコニールの言葉に、フレイは思わず首をかしげた。
 
 「巨人様?」
 「巨神様。立ち話もなんじゃ、中にお入りなさい、お嬢さん方」
 
 長老が吟味するような視線でフレイたちをゆっくりと見渡し、奥へと入っていく。
 皆が彼の後を追うようにして、部屋の奥へと向かう。想像していたよりも中は広かったが、古びた面持ちの家具や作りは、まるで自分たちがタイムスリップでもしたのではないかと錯覚するほどのものであった。手がたくさんあるわけのわからない絵や象が並びんでいたが、この地方の神様かなにかかと思い納得した。
 やがて、客室へと案内されたフレイたちは、促されるまま古ぼったいソファーへと座った。フレイが座った位置は、つい先ほどまで人がいたのか、少しだけ暖かいのが気持ち悪かったが我慢した。
 
 「父さんたちは?」
 
 コニールが唐突に聞いた。
 
 「集会じゃ、いつものな」
 
 長老がそういうと、コニールは辛そうに視線を逸らす。そんな彼女の様子など目に入らず、カガリが興味身心といった様子でずいっと身を乗り出す。
 
 「なあ、巨神って何だ? でっかい神様とか?」
 「ほほう、お若いのに関心じゃの……巨神様に興味がおありとは」
 「どういうのなんだ?」
 
 カガリが興奮した子供のように目を煌かせ、フレイは横目で捉えながら呆れた。長老がうむ、と一呼吸おいてから言う。
 
 「巨神様とはの、犁霓静狙皚瓩謀仂譴垢詛鬚神のことじゃ」
 「白い巨神様、ですか? ホワイトドールとかそういうものでしょうか?」
 
 ラクスの問いに聞き耳を立てながら、フレイは出されたチャイという飲み物を口に運んだ。紅茶のような、ミルクのような、どちらともとれない独特の味だけど、とても美味しい。
 
 「その名は知らんが、発祥は南米とも日本ともモンゴルとも言われておる。アメリカもあったかの?」
 
 長老が思い出すようにして答えた。
 
 「つまり、どこから来たかわからないってこと」
 「ま、そうも言える。ここは巨神様を祭る街の一つ、ということじゃ」
 
 コニールがいたずらっ子のように口を挟み、長老は苦笑して続いた。退屈そうなカナードの隣で、キラがおずおずと小さく手を上げる。
 
 「どういうお話なんですか? その犁霓静狙皚瓩辰董
 
 この流れ……くだらない話しにつき合わされそうで嫌だなーと思ったが、表情には出さないように努めた。ひょっとしたら出てたかもしれないが。
 長老がうん? と言ってから、天井を仰ぎ見る。
 
 「遥か昔、まだ人の子が世界樹という楽園に住んでいた頃のこと――」
 
 長老が静かに続ける。
 ――天から鬼が舞い降りた。一つ目のその鬼は、次々と人々が住む楽園、世界樹を切り倒していく……。鬼が七番目の世界樹を切り倒したとき、人々の祈りが通じ奇跡が起きた。
七番目の世界樹の枝に光が宿り、白き犁霓性瓩誕生した。その犁霓性瓩量召蓮↓爛譽き瓩噺世辰拭宗宗
 そこまで話したところで、長老が一度言葉を切り、ふっと肩の力を抜いた。
 
 「と、ここまでが冒頭の話じゃ」
 「爛譽き瓠 神様の名前なんですか?」
 「正確には、神様のうちの一人じゃ。やがてその犁霓性瓠↓爛ンダム瓩琉貘欧鯊ねる王となる者の名で――まあ良い。続けよう」
 
 爛ンダム瓠 どこかで聞いたような名にもう一度質問しようと思ったが、長老に目で合図され、フレイは口を紡いだ。彼が続ける。
 ――爛譽き瓩砲聾斥佞通じなかった。人々はどうしたものかと悩んでいたが、世界樹の巫女と呼ばれていた少女、爛薀薛瓩砲世韻蓮↓爛譽き瓩慮斥佞わかったのだ。
爛薀薛瓩猟面のもと、爛譽き瓩魯離△琉貘欧鳩戚鵑魴襪咫天を駆ける白き馬と光の剣、光の弓矢を手に、たった一人で鬼たちと戦った。
それを知った鬼族の王子、赤鬼の爛轡礇襯讚瓩蓮⊃突Г梁覘爛▲泪襯ン瓩閥Δ豊爛譽き瓩魴發舛暴个襪、爛▲泪襯ン瓩鮖Δ気譟⊆分も倒されてしまう。だが、爛轡礇襯讚瓩楼賁燭鮗茲衫韻瓩拭0貎佑両女が手当てをしてくれたからだ
。その少女は言う。『もう戦いは止めにしましょう』爛轡礇襯讚瓩盡世Α『私は爛▲泪襯ン瓩鮗困辰拭だが恩人の君が言うのなら、やってみよう』と。
その少女こそが、世界樹の巫女爛薀薛瓩任△辰燭里澄爛轡礇襯讚瓩廊爛薀薛瓩鮓に乗せ、天を登った。この戦いを終わらせるべく、鬼の巣へと向かったのだ。
しかし、それを爛薀薛瓩さらわれたのだと勘違いした爛譽き瓩やってきて、爛轡礇襯讚瓩鮖Δ修Δ箸靴拭傷ついた爛轡礇襯讚瓩敵うはずも無く、彼は死を覚悟した。
しかし、光の剣が爛轡礇襯讚瓩魎咾海Δ箸靴燭箸、爛薀薛瓩間に割って入った。剣は少女の体を焼き、残ったのは呆然と立ち尽くす爛譽き瓩鉢爛轡礇襯讚瓩領した大粒の涙だけであったという。
 
 「――こんなところじゃな」
 
 長い話を終え、老人が一息ついた。
 
 くだらない話、どこにでもある、普通のおとぎ話。フレイが内容を知ってるような既視感を覚えたのはその所為だろう。だが、この胸に沸くいらだちは何だ……?
 ラクスがおずおずと言う。
 
 「あの、この爛轡礇襯讚瓩箸いκはどうなってしまったのでしょうか?」
 
 長老はしばらくの沈黙の後、もう一度口を開く。
 
 「今のが犁霓静狙皚畭莪貔瓠宗衆イ両呂世箸、始まりの章だとか言われているが、第四節、王の章で爛轡礇襯讚瓩郎討啗修譴襪里犬磧
 
 キラが何かを思い出したように表情を改める。フレイはその続きを知っているような錯覚を覚えたが、黙って次の言葉を待った。
 
 「悪魔王アクシズと契約を結んだ爛轡礇襯讚瓩聾覆梁里鯢垰狡擦悗畔僂─↓爛薀薛瓩鯀匹蕕擦茲Δ箸靴燭里犬磧B燭の犁霓性瓩立ち上がり、それを阻止すべく――」
 
 蘇らせる……? 違うだろう、という感想を何故か持った。この違和感は?
 長老が続ける。
 
 ――不死鳥となった爛轡礇襯讚瓩領呂篭大であった。一族で最も美しい姿を持つされる、鷹と融合した大空の巨神爛璽瀬鶚瓠9觀罎竜霓性爛▲好ル瓩蕕老命に戦ったが、爛轡礇襯讚瓩領呂楼豸に衰える気配は無い。
そしてそこへ、一族の王となった爛譽き瓩白き衣を身にまとい、現れる。二人の戦いは熾烈を極めたが、結果爛譽き瓩聾覆量燭鮖箸ぁ↓爛轡礇襯讚瓩閥Δ妨の中へと消えていき――
 
 「――ここでこの章は終わっておる」
 「爛轡礇襯讚疝佑燭舛どうなったかわからないのですか?」
 
 今度はラクスが口を挟んだ。長老が無言で頷くと、彼女はうーんと首を傾げる。彼がふっと肩の力を抜いて快活に笑った。
 
 「ま、良くある話じゃ。今となってはわしらもこんな話信じておらんよ」
 
 そりゃそうだ、とフレイは苦笑した。でも街の長老がそれで良いのか、ともこっそり心の中で突っ込んでおいた。
 
 「んじゃが、たまーに取材やら研修やらで来るものはいるのー。自分の子にその名前をつけるだとか言ってた者もおった」
 
 長老がのほほんと言うと、キラがまたおずおずと手を小さくあげる。
 
 「あの、本って無かったでしたっけ? その話の解説書みたいなの」
 
 問われた長老がひょいと片眉を吊り上げる。
 
 「誰のじゃ?」
 「えーと……すみません、名前のとこ擦れてて……木星帰りらしいですけど」
 
 長老はしばらく難しい顔になり、うーんと考え込んだ。やがてぱっと表情を改め、にこやかに言った。
 
 「すまん、覚えてないわい」
 「街の神様なのにそんなんで良いのかよー……」
 
 カガリがおいおいと呆れたように口を挟むと、長老は気を害した様子も無く返す。
 
 「お前さんたちだってイエス・キリストに何の感謝もせずにクリスマスを祝ったりするではないか。日本と言う国では、キリストの祭りを行った数日後にハツモーデとかいう仏陀の祭りをやると聞くぞ? 所詮は口実じゃよ、口実。街が潤えばそれで良いのじゃ。
だいたい今のご時勢にどっから来たかもわからん神様なんぞ、ナンセンスじゃよ」
 
 初詣ってそんなんだっけ? と何か変な違和感を感じたが、良くわからなかったので無視した。
 
 「そして、じゃ。今週ある祭りは、その光となったらしい倏堂Ε譽き瓩忘Gの豊穣を祈るお祭り、ということになっておる。実際祈ったりなどせんがの! 毎年祭りの日は――」
 
 ……その祭りとやらに、フレイは興味が無かった。でも、なんだろう。爛轡礇襯讚瓩鉢爛薀薛瓩量樵阿法¬な懐かしさと、違和感を感じる。これは……?
 
 「フレイ、どした?」
 
 カガリが心配そうに彼女の顔を除きこむ。フレイははっと我に返り、
 
 「ん、何でもない」
 
 と言ってから軽く息をつき、どこかで似たような話を聞いたんだろうと勝手に納得する。
 気がつけば、長老の話はとうに終わっていて、皆出発の準備を始めているところだった。何だか気まずい思いをしたフレイは、小声でカガリに尋ねた。
 
 「ね、何するんだっけ?」
 「聞いてなかったのか? 買出しだよ買出し。衣装に使うんだってさ」
 「衣装?」
 「……まったく。祭りのに決まってるだろ?」
 「そっか、ありがと」
 
 そう言ってカガリの後に続くフレイは、去り際に長老が小さく呻いた「卑怯者め……」という言葉に気づかなかった。
 
 
 期待していたことは一つも無かった。これが、キラがもった今日という日の感想である。フレイやラクスとのちょっぴり恥ずかしいハプニングやアクシデントなぞ起こる気配は一切無く、ひたすら荷物持ちをさせられ、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと振り回された時間からようやく開放されたのだ。
カナードを除く四人の男共は、みなぐったりとつい数時間前にチャイをご馳走してもらったソファーに死んだように倒れている。ちなみに女性陣は既に出かけてしまったので、今ここにいるのは男だけだ。にもかかわらずほっとしているのは何でだろう。
 
 「……ミリィ、俺よりもフレイたちを――」
 「もう良いから、それもう良いからトール……」
 
 限りなくしつこい友人のつぶやきに、キラはぐでーっとしながら返した。
 
 「腹、減ったね……」
 
 カズイがソファーの背もたれに顔を預けながらぼーっとつぶやいた。サイが時計を確認する。
 
 「げ、もう二時なのか……通りで」
 
 すると、おもむろにカナードが立ち上がり、肩をほぐしながらキラたちを見渡す。
 
 「おい、行くぞ」
 「行くって、どこに?」
 
 勘弁してくれよと言いげな視線でカズイが顔だけ向けた。
 
 「そういえば、知人が店を開いているというのを忘れていた。場所もこの辺だったはずだ」
 「へえ、昔の仲間ってやつか?」
 
 サイがさっと眼鏡のずれを直す。
 カナードの友達かあ、と興味を持ち、キラも立ち上がった。
 
 「行こうみんな、ぼくお腹ぺこぺこだよ」
 「そうだな、行ってみるか」
 「みんなが行くなら、俺も」
 「……ミリィ」
 「よし、決定だな」
 
 こうして、当初の期待を大きく裏切って、男五人で飯屋に行くことになったのだった。
 
 
 フレイとラクスに引っ張りまわされたり、着せ替え人形のようにされたナタルやコニールの困惑具合を楽しんだショッピングを終え、カガリたちは街の中で数機の爛好肇薀ぅダガー瓩日曜大工紛いのことをしている現場に遭遇し、言葉を失った。
ある機体は壊れた建物をコンクリートで舗装し、ある機体は補修作業中の作業員に資材を手渡ししている。
 
 「ぐ、軍の最高機密が……」
 
 まず最初に、ナタルが絶句した。よろよろと力なく壁に体を預ける彼女を無視して、カガリはあるものを見つけた。
 
 「あそこにいるやつが指示出してるのか?」
 
 古びたジープから身を乗り出し、指揮官と思われる男が無線機を片手にてきぱきと指示を出しているのが目に入った。
 
 「まあ、麦藁帽子」
 
 ラクスがふわりと言った。丁度こちらからでは男が被る麦藁帽子が邪魔で顔が見えないのだが……何か引っかかるぞ。麦藁帽子、麦藁帽子……。
 
 「あ、ちょっとナタ、どこ行くの!」
 「抗議してくる!」
 
 静止するメリオルの手を振り切って、ナタルが脱兎のごとく駆け出した。ふと、麦藁帽子の男を遠めで見ていたフレイが何やら困惑した様子でぽりぽりと頬をかく。
 
 「あー……わたしたぶんあの人知ってる」
 「……私も」
 「たぶん、私も」
 
 ミリアリアとコニールが短く続き、カガリも
 
 「じ、実は私も」
 
 と続いた。
 
 「は、ははははは……」
 
 ひとしきり乾いた笑いを堪能した後、カガリたちはとぼとぼとナタルを追った。
 ジープのところまで来ると、ナタルが呆然としているのが目に入ったが、無視した。
 
 「……あんた、何してんだ」
 
 「ん? おお、ユラ准尉か! 楽しんでおるようだな!」
 
 そう言うあんたは私たち以上に楽しそうだなと言いたかったが、ぐっとこらえることにした。えらいぞ私。だって一応上官だもん、少将だもん。
 
 「ハルバートン提督……な、何故このようなことを……」
 「うむ、一刻も早く祭りに参加したいのだがな、どうにも人手が足りないらしくて……モビルスーツを使うことにした!」
 
 呆然としていたナタルがようやく口を聞いたというのに、ハルバートンは彼女の心を更に打ち砕くようなことを平気で言うのだからたまらない。
 
 「いやー、作った甲斐があったというものだよ!」
 「……し、しか……し……」
 
 何だか可哀相になってきたナタルであったが、ハルバートンはどこ吹く風かと仁王立ちだ。
 
 「モビルスーツは……軍の……」
 「――作業が遅れてるぞ貴様ら! 夕刻までに終わらせるのではなかったのか!」
 〈無茶言わないでくださいよ! 人手が足らないんです!〉
 
 ナタルを無視してハルバートンが無線機を怒鳴りつけると、コンクリートで舗装をしていた爛好肇薀ぅダガー瓩外部マイクで応答した。
 
 「無茶でもやるのが軍人であろう!」
 〈ですから、人手が足らないんですって!〉
 「何だと! モビルスーツ隊は全機出撃しているだろう!」
 「ぜ、ぜ、ぜ、全機ですか!? 全機の爛好肇薀ぅダガー瓩このようなことをしてい――」
 〈それでも足らんもんは足らんのです!〉
 「ええい、ああ言えばこう言うやつめ! それでもやるのが軍人だというのが何故わからん!」
 
 完全に取り残されたナタルは、思わずほろりと来てしまいそうなほどに惨めで可哀相だった。
 
 「まったく、人手人手と簡単に言ってくれる。そんなものそこらへんに転がってるわけでも――」
 
 いらいらとハルバートンが首を振り、ふとフレイと視線が交差した。彼がぱちくりと瞬きをする。フレイがぎくっと身を振るわせた。ハルバートンの頭の上に、電球のようなものが見えたような気がした。
 
 「……おおっ」
 「……げっ」
 
  ………………。
 
 「――でぇ!」
 
 爛瀬ー瓩暴亰睫仁瓩下った。
 
 「――なんで!」
 
 装備はD装備だ、とかかっこつけていたが、Dは大工のDだ。
 
 「――こーなるんだぁぁー!」
 
 パイロットシートに座るカガリは、このやるせない怒りをオープンにした無線に思い切りぶちまけてやった。
 
 「良―じゃない、このわたしが直々にモビルスーツの操縦を教えてやろうってんだから」
 
 シートの後ろからひょいっとフレイが顔を除かせる。
 
 「嘘つけ! 絶対嘘だ!」
 「まあカガリさんったら、そうやって決め付けるものではありませんわ」
 
 シートの後ろから、ふわっとラクスが顔を出した。
 
 「……く、お前らぁ……覚えてろよ……」
 
 なんて友達甲斐のないやつらだ。自分が楽したいばっかりに私を売るなんて……。
 
 「あの、何で私まで……」
 
 罰が悪そうにしながら、コニールがシートの後ろから顔を除かせた。
 
 「良いじゃない、ガイドなんだし」
 「そうそう、ガイドさんですから」
 「そ、そうかなあ?」
 「そうよそうよ」
 「そうですわ」
 「そうかな!」
 「んなわけ無いだろ!? お前ら絶対間違ってる!」
 
 そう言うと、露骨に嫌そうな顔で「えー」と言うのがフレイ達なのだから手に負えない。
 
 〈ちょっとちょっとー、さっさと仕事に入りなさいよー〉
 
 通信機からミリアリアの小言が聞こえてきた。
 
 〈サポートは私たちがしますから、ユラ准尉はいつも通りにやってください〉
 
 と、メリオル。しばらくの沈黙の後、彼女は続けた。
 
 〈……ナタルのことは気にしないで良いわ〉
 
 「……うん、そうする」
 
 たぶんまだ気が滅入っているのであろうナタルに同情しつつ、カガリは操縦幹を握りなおした。
 
 〈それでは、今回のミッションを説明します〉
 
 メリオルがいつもの声色に戻り、続ける。
 
 〈まず、右側を見てください〉
 
 言われたカガリは「おう」と短く言った後、首を右に向け何も映っていないコクピットの壁に目をやる。
 
 〈違うわよ……モビルスーツでって言ったの〉
 
 呆れ返ったメリオルの声に、カガリは顔を耳まで真っ赤にさせて再び操縦桿を握り、モビルスーツのカメラを操作する。
 すぐ後ろで爆笑しているフレイたちなんて無視だ、絶対無視、断じて無視だ。
 
 〈台座に寝ている石像が見えますね? それを山の麓まで運んでもらいます〉
 
 シートに包まれているので良くわからないが、見れば簡素な台の上に十七メートルほどの巨大な人の像が寝そべっている。後ろではまだラクスがひいひいと笑いべそをかいている。
 
 〈いつもなら大人が数十人がかりで引っ張るそうですが……頑張ってください〉
 「そ、それだけかよ?」
 
 えらく簡単な説明にカガリは抗議の声をあげた。後ろでフレイとラクスが「右側って……右って……」とうわ言のように繰り返しながらまだ笑い続けている。
 
 〈私だってこんなミッション始めてで……あー……えーと、ハルバートン提督直々のご命令です。良い戦果を期待しています〉
 
 戦果って何だ戦果って。カガリはたまらず口を開いた。
 
 「なんかかっこつかないぞー」
 〈……わかってるわよ。――ハウさん、後お願いね〉
 〈はーい。そんじゃカガリさん、頑張ってね〉
 「おう」
 〈………………〉
 「………………」
 〈………………〉
 「………………」
 〈………………〉
 「って終わりかよ!?」
 「アッハッハ、おっかしー!」
 「ぷふふぅ!、カガリさんったら!」
 
 背後でフレイが馬鹿のように笑い出し、ラクスも釣られてけたけたと笑い声を漏らす。コニールは何だかついて来れていないようだ。
 
 〈えー、だってー〉
 「く、くそっ。カガリ・ユラ、爛瀬ー瓩任笋襪勝」
 〈はいはーい。やっちゃってねー〉
 
 ……どいつもこいつも! ああもういいや、さっさと終わらして冷えたジュースでも飲もう。カガリは爛瀬ー瓩鮴仭の側にまでよせ、かぶせてあるシートを一気にめくり上げた。ばさっと音を立てながら積もった砂埃が舞い、中から二本の角飾りを額につけた立派な巨神の像が出現する。
 
 「へへ、これが『ガンダム』なんだ」
 
 コニールが感慨深げに言う。フレイがふーんと覗き見た。
 
 「あ、そうだ! この子も『ガンダム』よね?」
 
 思わずカガリが「は?」と聞き返すと、フレイは更に身を乗り出し、コンソールを弄りモニターにOSの名称を映し出した。
 ――General
    Unilateral
    Neuro‐Link
    Dispersive
    Autonomic
    Maneuver
 と表示されたそれを、フレイはにっと笑みを浮かべて言った。
 
 「ほら、頭をつなげるとガンダムになるっ」
 「……んな読み方するのはお前だけだよ」
 「……まあ、フレイったら」
 「……変なの」
 「え? ええ!? 何でよぉ!?」
 「偶然だろ、ぐーぜん。まったくお前ってやつは」
 
 カガリが呆れてやれやれと首を振ると、フレイは唇を尖らせて「ふんだ」と言ってシートの後ろに戻っていく。
 カガリは石像に巻きつけられた幾本もの縄を爛瀬ー瓩離泪縫絅團譟璽拭爾飽らせ、その縄を肩にかけ、石像を引きずるようにして山の麓《ふもと》を目指した。
道中、幾度と無くからかわれたりもしたが、特に大きな問題も無く山の麓までたどり着くことができた。大きな岩山を人工的に削り取ったような場所であったが、カガリはそこが何となく大切な場所なんだなということは理解できる。
 
 「そこにある台座に立ててくだされー!」
 
 ふと、外部マイクが拾った老人の声にカガリが目を向けると、そこには先ほどチャイをご馳走してくれた長老が、数人の男たちと共ににこやかに手を振っていた。見れば、祭りのための飾りつけなどをしていたようで、大変そうだなあとカガリは思う。あのチャイ、美味しかったな。
 
 「わかった!」
 
 カガリは短く言い、十七メートルの巨神の像を台座に立てると、周囲の男たちから歓声があがる。我ながら見事な仕事ぶりだ。
 
 「ま、あんたにしちゃ上出来ね」
 
 フレイがからかうように言う。
 
 「ご苦労様でした、カガリさん」
 
 そう言いながら、ラクスがカガリの頭をなでなでとした。……ともかく、これで任務は終わりだ。帰ってジュースでも――
 
 「――カガリ!」
 
 フレイが叫ぶのと、爛瀬ー瓩動くのは同時だった。つい先ほどまでいた場所に、マシンガンが叩き込まれる。
 
 「な、何が……?」
 「痛、た……」
 
 突然のことに対処できず、ラクスとコニールは爛瀬ー瓩竜〆爐紡里鯊任舛弔韻燭茲Δ如背中や腕を痛そうにさすった。
 カガリは攻撃のあった方向に目を凝らした。切り立った崖の上から、一機の赤い爛献鶚瓩了僂見える。
 
 〈聞け! 連合の兵士! その『ガンダム』は破壊させてもらう!〉
 「『ガンダム』を壊すって言った?」
 
 フレイが探るように言い、コニールが呆然とつぶやく。
 
 「……お父さん?」
 「な、何い!? あれお前の父親か!?」
 
 カガリたちが驚いていると、赤い爛献鶚瓩稜惴紊ら、緑色に塗られた二機の爛献鶚瓩盪僂鮓修后
 慌てて長老が割ってはいる。
 
 「アルメタ待たれよ! 我々はもう連合と争うつもりは無い! ハルバートンとも約束をしたのだ!」
 〈約束など、そんなものは嘘だと決まっている!〉
 「だとしても、コニールたちを巻き込む道理は無いであろう!」
 〈――ッ! だから、俺たちは『白い悪魔』の『ガンダム』を破壊して、立場だけでも宇宙《そら》の側であると見せなきゃあならないんだろう!〉
 「世迷いごとを!」
 
 白い、悪魔……? ガンダムが? わけのわからないまま、カガリはその場で呆然としているだけであった。
 
 
 〈神話の王『シャルレ』よ! 盟友の鷹『アマルガン』よ! 我らを護りたまえ!〉
 
 赤い爛献鶚瓩燭舛一斉にマシンガンを構え、丁度真下に位置する巨人像向けて一斉に撃ち放つ。
 
 「カガリ、貸して!」
 「え? おい!」
 
 無理やりパイロットシートからカガリを退けると、フレイはすかさずフットペダルを踏み込んだ。爛瀬ー瓩瞬間的に崖を駆け上り、爛献鶚瓩箸竜離を一気に詰める。
 
 〈シャ、『シャルレ』よ!〉
 「馬鹿にしてー!」
 
 咄嗟に切りかかってきた緑の爛献鶚瓩鯤Гい里院△修領沼を一閃! しようと思ったところで、フレイはあることに気づいた。
 
 「あ、あれ? サーベルは!?」
 「危険でしたので外してもらいました」
 
 ふわっとラクスが答える。
 
 「ええ!? バ、バルカンとか――」
 「もちろん弾は入っていません。カガリ様が暴発でもさせたらたまりませんから」
 「カ、ガ、リぃ!!」
 「何で私だ!」
 「うっさい馬鹿!」
 
 再び爛献鶚瓩ショルダータックルを仕掛ける。フレイは思い切り舌打ちをしながら、爛瀬ー瓩了兩を低くさせた。機体と機体がぶつかる瞬間、フレイは相手の勢いをいなすように機体を半身逸らし、足払いをかける。
たまらずバランスを崩した爛献鶚瓩留ι間接に鋭い手刀をねじ込むように指し、続けて残った左肘にも同じようにし ておみまいしてやった。両腕をもがれた爛献鶚瓩戦意を失ったように尻餅をつく。
 
 〈ひ、ば、化け物!〉
 「ばっ――!? レディに何てこと言うのよ、大人の癖に!」
 〈――子供!?〉
 
 驚いて言葉を失っている爛献鶚瓩鯡技襪靴董▲侫譽い麓,良古を探す。もう一機の緑の爛献鶚瓩、バズーカを撃ちながら距離を詰めてきた。その動きの鈍重さに、フレイは鼻で笑う。
バズーカを難なく避けながら、フレイは爛献鶚瓩亮鷓っこに手刀を差込み、その首を飛ばした。その勢いで後ろに倒れながらも、懸命に空にバズーカを撃ちつつ、二機目の爛献鶚瓩眥戚曚靴拭
 
 「――後一機!」
 
 赤い爛献鶚瓩虜敵を始めたところで、大きな揺れがフレイたちを襲った。
 
 「な、何!?」
 「足元、崩れるぞ!」
 
 カガリが慌てて言う。
 ――しまった! 下には人が――
 フレイは瞬間的に爛瀬ー瓩魏誕させ、一機に崖を蹴り降りた。今にも崩れようとしている岸壁を、爛瀬ー畫澗里鮖箸辰堂,気┨む。
 
 「みんな逃げて! 崖が崩れます!」
 
 外部スピーカーに向けて思い切り彼女は叫んだ。男たちが慌てて逃げていく中、ふいに背後に気配を感じる。
 
 〈逆転したぞ連合のモビルスーツ!〉
 
 爛瀬ー瓩里垢闇惴紊農屬き爛献鶚瓩マシンガンを構える。フレイはかっとなって声を荒げた。
 
 「この状況で戦うってんですか!」
 〈連合の新型を手土産にすれば、爛競侫鉢瓩浪罅垢鮟けてくれる!〉
 
 この男は! フレイはぎりっと唇をかみ締める。
 
 「もう、もう止めようよ父さん!」
 〈――!? コニール? コニールがそれに乗っているのか!? コニールが!?〉
 
 娘の声に、男が驚愕した。
 
 「もう止めてよ! ナチュラルだとか、コーディネイターだとか、そんなのどうだって良いだろ!? こんなこと止めて、普通に暮らそうよ!」
 〈しかし、我らは――〉
 「わからずやの父さんなんて嫌いだよ!」
 
 目じりに涙を浮かべ、コニールが叫んだ。それとほぼ同時に、爛瀬ー瓩瞭上から崖がずり落ち、フレイたちに迫る。
 
 「やっばい!」
 
 思わず叫びながら、必死に思考をめぐらすも、良い案が浮かばない。かと言って逃げることも――。ちらと周囲を見る。まだ逃げおおせてない人が大勢いるんだ、逃げることなんて、できない!
 
 〈――うおお!〉
 
 赤い爛献鶚瓩、爛瀬ー瓩僚發砲覆襪茲Δ砲靴凸り出た。そのままスラスターを思い切り吹かせ、落ちてくる巨大な岩に向かって体当たりをし、岩は爛瀬ー瓩ら少しそれた位置へと墜落した。
 駆動系統がやられたのか、赤い爛献鶚瓩よろよろと起き上がろうとしたが思うように行かず、そのまま大地に突っ伏した。
 
 「もう良いぞー!」
 
 安全な場所にまで逃げた男たちが、両手を振って知らせてくれた。フレイはすかさずバーニアを吹かせ、一気に後退する。
 崩れ落ちる瓦礫に、『ガンダム』が埋もれていくのが見え、何故だかそれがとても哀しく思えた。
 
 
 「何があったんですか!」
 
 緊急事態の知らせを受け、キラたちは大慌てで山の麓まで走った。到着した頃にはもう終わっていたようで、そこにあったのは崩れた岩肌と静かに佇む爛瀬ー瓠△修譴魄呂辰討錣い錣い帆ぐ男たち。
 
 「何じゃ、お前さん方も来てくれたのか」
 
 と、長老がひょいと顔を除かせる。
 
 「戦闘があったようだな」
 
 カナードが短く言った。ふと爛瀬ー瓩梁元を見ると、コニールが自分の父親と思われる男性にぎゅっと抱きつき、フレイたちと何やら話をしている。楽しそうに笑みをこぼしている彼女たちであったが、キラは何か釈然としないものを覚えつつ長老の言葉を待った。
 
 「いや、何。もう済んだことじゃ」
 「……はあ」
 
 わけもわからずキラは応答した。そのまま長老が続ける。
 
 「ああいう姿だったのかもしれんな。『ガンダム』というのは」
 
 キラたちは皆状況が理解できず、ただ適当に相槌を打つだけであった。
 
 
 その事件から数日して、祭りが始まった。朝から続いた祭りに皆が楽しみ、例年以上に立派なものとなった。ただ、唯一今までの祭りとは決定的に違う部分があった。それは、巨神像の代わりに、無理やりペンキで白く塗られた爛瀬ー瓩、巨神様として街を徘徊して回ったことだ。
この申し出には流石のハルバートンも苦笑したが、この街の長である彼の頼みでもあったから断らずに実行に移した。
 
 「ふん、卑怯者め。子供を利用しおって」
 
 とある民家の屋上で、街を徘徊する爛瀬ー瓩鮓つめながら長老が忌々しそうに顔をゆがめた。
 
 「利用ではない、信じたのだよ、あの子たちを」
 
 巫女の衣装と呼ばれるサフランで色づけされた大きめの服、葉っぱで編んだとんがり帽子を被ったフレイたちを遠めで眺め、ハルバートンは独り言のようにつぶやいた。
 ――そう、既に賽は投げられたのだ。あの時、あの瞬間、私は彼らに全てのチップを賭けたのだから。
 ハルバートンは独房での出来事を思い出す。
 
 「戦いたいのならどこだってできると私は言っているのだ!」
 
 戦ってやると言ったカナードに、私はこう言ってやった。戦うことだけを求める者に、未来を託すことなどできないから。
 
 「さあ戦場へ送ってやろう! どこが良い、爛椒▲梱瓩、爛筌ン・ドゥーエ瓩、爛献屮薀襯織覘瓩! 好きな戦場を選べ!」
 「違う、オレは――!」
 
 まるでカナードは、失いかけたものを取り戻そうと必死に足掻く子供のようだった。ハルバートンは黙って彼の言葉を待つ。俯いたまま、彼が小さくつぶやいた。
 
 「……オレは、あの場所が……好きなんだ」
 
 良い返事だ。素直にそう思った。
 
 「頼む、オレを……もう一度オレを爛◆璽エンジェル瓩法∀△譴胴圓辰討れ……。あんな場所初めてだったんだ、あんなに楽しいと思ったは、初めてだったんだ……」
 
 ハルバートンは、静かに手を差し伸べた。
 
 「――来たまえ、パルス中尉」
 
 そうとも、私は彼らに全てを賭けたのだ。ナチュラルとコーディネイターの未来を、我々がこの先どこへ進むのかを、彼らの行動に――。
 力なく首を振り、長老が言う。
 
 「……我々の負けだ。レジスタンス活動は控える」
 「助かる。こちら側にも行き過ぎたものがあったようだ。信頼できる男を置いていく」
 
 やれやれ。爛◆璽エンジェル畭盪抉腓両魴錣砲函▲▲薀好の海豹どもに出されたガルナハン基地レジスタンス軍殲滅という任務、ひとまずは完了と言ったところだろう。この街に要塞を作るなど、あの能無しどもは碌なことを考えないようだ。しかし、とハルバートンは思う。
 まさかあの男が、補給の援助をしてくれるとは……。いや、それだけではない。ここ最近の異常なまでものモビルスーツ開発スピード、そして爛瀬ー瓩離屮薀奪ボックス……。
 間違いない、ムルタ・アズラエルは『決定的な何か』を掴んだのだ。果たしてそれは我らにとってどのようなものとなるのか――。
 『知将』と呼ばれたハルバートンでも、その答えを見つけることができないでいた。
 
 
 
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