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CCA-Seed_◆ygwcelWgUJa8氏_39

Last-modified: 2013-02-10 (日) 20:49:18

 目を覚ますと、そこは見慣れぬ天井であった。覚醒しきれない頭で、のろのろとつい先ほどまで見ていた夢を思い出す。
 ああそうだ、きっかけはそんなものだったな……。
 夢の中で愛する人が、自分とは遺伝子の相性で子供ができないと嘆き、別の男を夫として自分のもとから離れていった。こんな些細なことで、私はコーディネイターの未来が無いと感じたのだ。だが、それはあながち間違いではない。
感情論を置いておくとしても、子をなせない個体同士が多数存在するということ自体が、種の限界を示しているのだから。多様性を失った遺伝子に、未来など無いのだ。最初は、より遺伝子学を高め、科学の力によりその困難を克服することができるのだと考えた。
ナチュラルに対して驕っていたつもりは無かったが、今思えばそれでも心のどこかで彼らを見下していたのかもしれない。
……あの時見つけたデブリには、ナチュラルの可能性が詰まっていた。コーディネイターの我らが作り上げたモビルスーツを遥かに超えた性能。神話の王。爛ンダム瓠ザフトの科学をもってしても解析不可能ないくつもの機能。爛汽ぅ灰侫譟璽爿瓩覆匹その筆頭であろう。
コクピットに溶接されたその金属粒子はコーディネイターの思念には何の反応も示さなかった。ゆえに科学者達はその存在が何を意味しているのかを知らず、無駄な時間を消費することとなる。強いて言うならば、その差が連合と爛廛薀鵐鉢瓩虜8紊魴茲瓩燭噺世辰討皺畍世任呂覆ぁ
爛汽ぅ灰侫譟璽爿瓩ラウの意思に反応するまで、その重要性に全く気づけなかったのだから。
 そこまで考えて、ギルバートはやっと状況を理解した。まず、『何故私は生きている』と。
 あれは夢であったのかと疑ったが、体を起こそうとして走った胸の激痛がそうで無いと告げていた。
 友人に撃たれた、という何とも言えない虚しさがまず胸を駆け、やがてそれは記憶の糸を紡ぎ、撃った本人がラウではない事を思い出した。
 何故、自分で手を下さなかった……?
 今更自分の手を汚したくないと言う安直な思考に従って行動するような男ではないだろう。
 私を撃った男は、誰だ。顔は見えなかった。
 しかし、容赦の無い執拗な撃ち方だったのは、何となく覚えている。
 確実に始末する、そしてそれを半ば楽しみ、矜持としている、そんな撃ち方だった。
 だのに、私は生きている。
 ある者はそれを奇跡と呼ぶかもしれない。あるいは、神の悪戯か。
 ……そんな事が現実に起こりうるのだろうか。
 ラウは、明らかに何かを知っていた。
 疑うべきだったのか? 彼の事を。
 しかし……。
 力なくそのままベッドに身を預けると、ややあって扉が開き、タリア・グラディスが目に涙を浮かべ駆け寄った。
 
 「ああ、ギルバート」
 
 名を呼ぼうとしたが、声はでなかった。それを察知したのか、タリアはわずかに首を振り大丈夫と告げ、ギルバートの手を優しく握る。
 彼女は言った。
 爛廛薀鵐鉢瓩砲蓮核爆弾が設置されていたと。
 そして、この戦乱の元凶であるギルバート・デュランダルに対し、ラウ・ル・クルーゼは国民を人質に取り、爛廛薀鵐鉢甬腸颪魃討覗爐辰討い燭里世函
 ギルバートは、確信した。
 それは、推測だとか、そうであって欲しいだとかいう希望的観測ではなく、直感として、彼の親友として理解した。
 彼は、私が死なないと確信し、殺すつもりで私を撃った。
 明らかな矛盾であるが、それ以外の考えが思い浮かばない。
 議会を影で操る。
 内心可笑しく思い、ギルバートは笑いを堪えるのに苦労した。
 子供染みた、ラウとの勝負の最後の一手。
 この幼稚な嘘で、世界を騙し通してみろと、そう言っているのかもしれない。
 友達にしか、わからない事がある。
 ギルバートに兄弟はいない。しかし、それがいたとしたら、彼のようなものだったのかもしれないと、そんな事を考えていた。彼ならどうするだろう、彼ならばきっとこうしているだろう、これは嘘だろう、これは事実だろうと、そういう判断はできる。
 だから、ギルバートは彼の打った最後の一手に、正面から戦ってみようと思っていた。この人生と言う娯楽に、遊びに、勝負にもう少しだけ付き合ってみようと。
 どこまで貫き通せるか、あの賢く聡明な少年達を、欺き通せるだろうか。
 そして、同じようにして、理解した。
 シーゲル・クラインを始末したのは、君だったのかと。
 
 
 
 
PHASE-39 律動
 
 
 
 
 爛ーティ・ルー瓩猟命ルームで、フレイはオーブにいるカガリに長距離通信を入れていた。音声と映像にラグはあるが、贅沢は言えない。これもジブリールが自慢していた技術革新の成果の一つだとかまた例によって本にすれば数ページあるのでは無いかと言うほど説明を長たらしく繰り広げたが、全部忘れた。

 〈それで、本当なのか? ラウ・ル・クルーゼっていったあの男、爛廛薀鵐鉢瓩凌傭を人質に取ってたってさ〉

 カガリの口から告げられたのは、爛廛薀鵐鉢瓩範合から『一応の事実』として知らされたことである。実際爛廛薀鵐鉢瓩らは稼動状態の核爆弾が発見され、議長のギルバート・デュランダルも瀕死の状態で見つかれば、少なくともデュランダルという男はそれに関与していないか、あるいは切り捨てられたかという予測はできる。
しかし、フレイは言うのだ。
 
 「嘘よ。絶対に違う」
 
 と確信を持って。
 
 〈でもなー。デュランダル議長だっけ? 本当に危なかったんだろ? 後数分でも遅れれば死んでたとか、心臓をかすめてたとかさ〉
 「そこまでは聞いて無いけど……」
 〈こっちは聞いてるさ。なんてったって核、撃たれたんだからな〉
 
 ふんと不機嫌に鼻を鳴らす彼女の仕草はカナードそっくりだった。
 
 〈銃弾はさ、心臓に命中する位置だったんだってさ。でも体の中でわずかに軌道がそれて――そんなの、狙ってできるものじゃないだろ? だから、クルーゼは本当に議長を殺そうとしたとしか――〉
 「そんなこと……無いもん……」
 
 何だか、嫌な感じだった。まるで父親の悪口を言われているような――。
 すると、カガリが慌てて
 
 〈あ、いやお前の言ってること信じてないわけじゃないんだって〉
 
 と釈明した。
 
 「……嘘ばっか。信じてないって顔に出てる」
 〈そんなこと無いって! 私がオリジナルなんだとか、そういうことも全部信じる。でもさ、まずは事実を認めてくれよ。間違いなく……ええと、心臓を狙って、だな……〉
 
 殺す気だった、と言いたいのだろうが足りない頭で難しいことを言おうとしてる所為かぎくしゃくしている彼女が少しおかしかった。
 
 〈ともかくだ! 心臓を狙って殺すつもりで撃っても絶対に死なないって確証があったってこと! なのか……?〉
 「んもう、自分で何言ってるかわかってる?」
 〈あーもう! 良いよ、私はお前を信じる! あいつは殺す気は無くて、絶対に助かる保証があって撃った!〉
 
 うむ、と納得してモニターの中で踏ん反り返るカガリが妙におかしくてフレイはまた笑みを浮かべた。
 
 爛ーティ・ルー瓩猟命ルームで、フレイはオーブにいるカガリに長距離通信を入れていた。音声と映像にラグはあるが、贅沢は言えない。これもジブリールが自慢していた技術革新の成果の一つだとかまた例によって本にすれば数ページあるのでは無いかと言うほど説明を長たらしく繰り広げたが、全部忘れた。
 
 〈それで、本当なのか? ラウ・ル・クルーゼっていったあの男、爛廛薀鵐鉢瓩凌傭を人質に取ってたってさ〉
 
 カガリの口から告げられたのは、爛廛薀鵐鉢瓩範合から『一応の事実』として知らされたことである。実際爛廛薀鵐鉢瓩らは稼動状態の核爆弾が発見され、議長のギルバート・デュランダルも瀕死の状態で見つかれば、少なくともデュランダルという男はそれに関与していないか、あるいは切り捨てられたかという予測はできる。
しかし、フレイは言うのだ。
 
 「嘘よ。絶対に違う」
 
 と確信を持って。
 
 〈でもなー。デュランダル議長だっけ? 本当に危なかったんだろ? 後数分でも遅れれば死んでたとか、心臓をかすめてたとかさ〉
 「そこまでは聞いて無いけど……」
 〈こっちは聞いてるさ。なんてったって核、撃たれたんだからな〉
 
 ふんと不機嫌に鼻を鳴らす彼女の仕草はカナードそっくりだった。
 
 〈銃弾はさ、心臓に命中する位置だったんだってさ。でも体の中でわずかに軌道がそれて――そんなの、狙ってできるものじゃないだろ? だから、クルーゼは本当に議長を殺そうとしたとしか――〉
 「そんなこと……無いもん……」
 
 何だか、嫌な感じだった。まるで父親の悪口を言われているような――。
 すると、カガリが慌てて
 
 〈あ、いやお前の言ってること信じてないわけじゃないんだって〉
 
 と釈明した。
 
 「……嘘ばっか。信じてないって顔に出てる」
 〈そんなこと無いって! 私がオリジナルなんだとか、そういうことも全部信じる。でもさ、まずは事実を認めてくれよ。間違いなく……ええと、心臓を狙って、だな……〉
 
 殺す気だった、と言いたいのだろうが足りない頭で難しいことを言おうとしてる所為かぎくしゃくしている彼女が少しおかしかった。
 
 〈ともかくだ! 心臓を狙って殺すつもりで撃っても絶対に死なないって確証があったってこと! なのか……?〉
 「んもう、自分で何言ってるかわかってる?」
 〈あーもう! 良いよ、私はお前を信じる! あいつは殺す気は無くて、絶対に助かる保障があって撃った!〉
 
 うむ、と納得してモニターの中で踏ん反るカガリが妙におかしくてフレイはまた笑みを浮かべた。
 
 
 
 流石にそのまま爛廛薀鵐鉢瓩悄△箸いΔ錣韻砲發いず、連合の艦隊は爛筌ン・ドゥーエ瓩琶箋襪鮗けることとなり、キラは久しぶりに自由な時間を満喫する事ができた。あのジブリールが無駄に豪語しただけはあって、確かに爛ーティ・ルー瓩寮験莇間は見事なものであった。
戦艦の通路が広いのは、機材や負傷兵を運ぶ為という理由はあるそうだが、この爛ーティ・ルー瓩呂っとそれ以外のどうでも良さそうな理由がいくつもあるのだろう。トールたちと夕食を済ませ、岩風呂を堪能し、いつものように人気の無くなった食堂を占領している姦しい三人組が目に留まる。
 
 「追悼コンサートだってさー」
 「んー? 誰の?」
 
 フレイが頬づいてぼーっと言うと、ミリアリアがさも興味なさげに答え、フレイはそのままほうっと息をはいた。
 
 「ラクス・クライン」
 「あー」
 
 ミリアリア何とも言えない表情で食堂でてきぱきと後片付けを始めるレノア・アルスターとか名乗りだした例の少女を見据える。
 
 「ミーア・キャンベルねぇ……」
 
 感心してるのかしてないのかわからない顔でフレイが言うと、奥からラクスがひょいとやってきて
 
 「爛廛薀鵐鉢瓩呂匹Δ覆辰討い襪里任靴腓Α」
 
 と尋ねた。
 マユが明日の朝食用に冷凍庫から解凍するものを冷蔵庫に移しながら、ラクスをちらと横目で軽く睨む。
 
 「ん、聞いてないの?」
 「わたくし、コック見習い」
 「そ。パトリック・ザラって人だっけ? 結局冤罪だったとかそんなんで釈放されて、そのまま評議会を新生ザフトに明け渡した……だっけか?」
 「まー、だいたいそんな感じ。ギルバート・デュランダルって人もザラって人に従うってさー。私達と大して変わらないのにねー、年とかー」
 
 とミリアリアが答える。
 どこか複雑な表情になったラクスが、そのままフレイの隣の椅子にそっと座る。そんな彼女の様子を察したのか、フレイはやれやれと苦笑し、ぽんぽんと頭を撫でた。 
 おほんとわざとらしくマユが咳払いをすると、ラクスはすぐに「んっ」と自分の頬をぱしぱしとはたき、厨房に戻っていく。
 何もかもが上手く行く事なんて無いんだよなとキラは少しばかり寂しい気持ちになりながらも、フレイがどこか気落ちしている事に気づいていた。
 
 
 
 その頃、爛廛薀鵐鉢瓩任呂△詭簑蠅鮖|里靴討い拭
 
 「爛椒▲梱瓩襲撃を受けている!?」
 
 慌てて告げられた報告に、アスランはぎょっと目を瞬かせた。
 
 「どこの部隊だ……?――ラウ・ル・クルーゼか!」
 
 今この状況で仕掛けてくる勢力と言えば、彼らくらいしか思い浮かばないのも事実。だが気になる情報もある。あの日、あの時、ラウと共に軍を抜けた者は、ザフトの兵だけでは無かったということだ。連合の艦隊から、地球の部隊からも幾人もの兵が軍を脱走したという報告が入っている。だが、何故? ようやく訪れた平和を無下にしてまで、戦う理由があると……? 何か目的が、求めるものがあるのならそれを要求してくるだろうと思ってはいたが、それすらも彼等はしないのか……?
 ……今爛椒▲梱瓩老茲靴凸断なら無い状況にあるのは確かだ。あそこにはまだ稼動可能な爛献Д優轡広瓩――。
 
 「そ、それはわかりませんが、既に爛椒▲梱瓩望鐫鵑垢觀海砲和燭の損害が――」
 
 男の言葉にはっと思考の海から引き戻されたアスランは、同時にあることにも気づいた。
 
 「爛廛薀鵐鉢瓩砲蓮▲▲好和緝修、来る予定だったな……?」
 
 問われた男は、さっと顔を青ざめさせる。爛廛薀鵐鉢瓩魯ーブに核を撃ちこんだのだ。会談の為とはいえわざわざ呼び寄せたのは無礼なことではあるが、かの代表があちらから来てくれるとの申し出を、終戦を迎えたばかりの爛廛薀鵐鉢瓩牢新泙垢襪靴できなかったのも事実である。確か、彼女を乗せたシャトルは一度補給のために 爛椒▲梱瓩魏陲靴董宗
 
 
 
 「どうして助けに行かないんですか! カガリなんですよ!? 今すぐにでも向かって、助けてあげないと!」
 
 艦橋《ブリッジ》にまで押しかけてきたフレイが怒鳴ると、ナタルが「準備はしている!」と苛立ち返す。
 
 「嘘ばっかり! 艦の補給は終わってるってマードックさん言ってたもの!」
 「爛ーティ・ルー瓩世韻農莵圓靴討匹Δ覆襦?」
 「だってカガリなんですよ!?」
 「わかってはいる!」
 「だったら――!」
 
 ナタルとて、彼女を救いたい気持ちは同じである。だが艦長である以上、クルーの命を最優先に考えたいし、敵の数もまるでわかっていない状況でたった一隻の艦で乗り込むほど無謀な戦略を取るつもりは無い。ナタルはぎりと奥歯を噛み、誰にも聞こえないよう「私だって……」と呻いた。
 が、終始無言に努めていたアズラエルが、ふと顔をあげ真面目な顔で告げる。
 
 「あー、ええとバスカーク君? 爛◆璽エンジェル瓩膨命ヲ。ジブリール君を出させてください」
 「りょ、了解!」
 
 ジブリールはすぐに現れた。
 
 「ジブリール君。爛ーティ・ルー瓩離謄好箸蓮△修舛蕕任匹海泙任笋螢泪轡拭」
 〈ハッ。無論全て滞りなく。完璧に仕上げたものを、用意したのです〉
 「『あれ』も、こっそり?」
 〈無論です――使うのですか?〉
 「ええ。それでは、行ってきますヨ」
 〈了解しました〉
 
 モニターが消えると、アズラエルがそのままナタルに向き直る。
 
 「爛ーティ・ルー瓩論莵圓靴泙后
 「なっ!?」
 
 馬鹿な、と言う思考と、良かったという二つの感情が入り混じりナタルはどう答えるべきかわからず言葉を詰まらせた。
 
 「どちらにしても、この爛ーティ・ルー瓩膨匹い弔韻覺呂覆鵑涜減澆靴泙擦鵑茵爛潺離侫好ークラフト疆觝椶里海隆呂砲蓮▲諭」
 「しかし……!」
 「もう一つあります」
 
 無茶だ、という前にアズラエルが遮り、続ける。
 
 「できればこのまま隠し通したかったんですけどネぇ。状況が状況ですし……」
 
 もったいぶった口調にわずかな苛立ちを覚えたが、ナタルがぐっとこらえ続きを待つ。
 
 「この艦は、爛潺蕁璽献絅灰蹈ぅ畢瓩鯏觝椶靴討い泙后
 
 ざわとクルーが湧いた。メリオルでさえも、目をぱちくりさせて振り返っている。
 
 「隠し玉……ということですヨ。本来ならばもっと違う用途で使う予定でしたが……この際仕方ありません」
 
 爛潺蕁璽献絅灰蹈ぅ畢瓩鯏觝椶靴神鏨呂髻▲淵織襪話里蕕覆ぁそれだけの大出力の爛潺蕁璽献絅灰蹈ぅ畢瓩鮖藩儔椎修箸靴慎蚕僂砲篭欧蹐靴い發里魎兇犬燭、同時にそういうものが存在するということだけで、爛廛薀鵐鉢畭Δ紡腓な恐怖や不信を募らせることになるだろうとも感じていた。
連合と爛廛薀鵐鉢瓩把結されようとしている条約の中に、爛潺蕁璽検.絅灰蹈ぅ畢瓩侶鎧利用禁止の項があると、ナタルは聞いている。もしもそれが決まれば、この爛ーティ・ルー瓩和減澆修里發里タブーとなる。せっかく作った新造戦艦、お蔵入りにしたくは無いのがアズラエルの本音であろう。
 
 「作戦は任せます、僕はそっちのほうはからきしのようですからネ? ですが、一刻を争う事態ということはわかっています」
 
 彼がちらとフレイを流し見ると、彼女はぎゅっと拳を握り締めた。
 
 「皆さん、頼みましたよ。オーブは僕の大切なお財布なんですかラ」
 
 
 
 連合の新造戦艦爛ーティ・ルー瓠その加速力は見事なものであった。ザフトの誇る高速艇エターナル級ですらも追いつくことはままならず、護衛にと申し出た爛潺優襯亅瓩鬚盡る見るうちに引き離し、観測領域外へと消えていった。
 
 「凄いものだな」
 
 と漏らしたのは、キャプテンシートに座るアデスである。ザラ新議長の計らいで艦長から外されたタリアに代わり指揮をとることになったが、事実クルーの練度には満足していた。
 ――あの新米の赤服が、やるようになったではないか。というのがアデスの感想である。既に十五に満たないクルーは艦を降りているため、以前はメイリンという少女が勤めていた通信シートにはゼルマンの艦から生還を果たしたクルーの一人であるアビーが座っている。
 が、それでもわずかにアデスがいらだつことがあった。その原因に向けて、アデスは臆せずに、迷惑だという意図もはっきりと込めて言う。
 
 「議長、今からでも遅くはありません。爛廛薀鵐鉢瓩砲戻りになっては?」
 
 問われた新生ザフトのトップ、アスラン・ザラが首を振った。
 
 「主犯者がラウ・ル・クルーゼだというのなら、我々は立場を示さねばなりません」
 
 道理はわかる。だが、君がいなくなったらまた爛廛薀鵐鉢瓩亙裂するぞ、と言う言葉を飲み込みアデスはむっつりと既に姿が見えなくなった爛ーティ・ルー瓩旅圓先を見据える。
 
 「アスハ代表を、私の命を賭して守れたのならそれで良い。オーブの国民や連合の市民も納得してくれるはずです」
 
 そりゃそうだろう。だが――。
 カリスマ性とやらはあるかもしれないが、これでは政治はやれんだろうな、とアデスはやれやれと首を振る。
 モビルスーツデッキで出撃を控えるイザーク達の気持ちが痛いくらいわかった。
 
 
 
 警報《アラート》が鳴り響くよりも早く、フレイは格納庫《ハンガー》の爛Εンダム疇睇瑤播┐梁減澆鮹粒个靴討い拭やがてそれは鳴り、思い切り舌打ちをした。
 ――急いでいるのに!
 爛潺蕁璽献絅灰蹈ぅ畢瓩慮果時間は有限であり、決して無尽蔵に使用し続けることができるものではない。これから爛潺蕁璽献絅灰蹈ぅ畢疊動かというタイミングでの出会いは不幸な事故ではない。おそらく、この艦の存在が漏れていたと見て間違いないだろう。それが消滅した爛蹈乾広瓩了弔靴榛埜紊梁掻きであったことをフレイは知らない。
 ミリアリアから情報が告げられるよりも早く、爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩読み取ったデータが転送され、爛Εンダム瓩離皀縫拭爾鳳任圭个気譴襦
 牋譟五ダガー瓩三機、内一機は爍.W.S.P.瓠脳波制御システムを搭載した特別機。
 足止めをされる。遅れる。カガリが……。
 気がつけば、フレイは艦橋《ブリッジ》に通信を入れていた。
 
 「艦長、わたしが敵を引きつけます!」
 〈馬鹿を言うな! 今の爛ーティ・ルー瓩ら単機で飛び出せば置いていかれる!〉
 「いかれませんよ! 爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩離僖錙爾覆蕁∪鐺後でも十分爛椒▲梱瓩肪り着けます!」
 
 それは、苦し紛れの嘘でも、焦りから出た誇張でも無かった。学習型AIの爛譽き甅爛轡礇襯讚甅爛薀薛畛或輿瓦討ら導き出された最善の策。
 
 〈しかし……〉
 
 とナタルが躊躇するのは、フレイの身を案じているから。それが、わかるからフレイは言葉を慎重に選んだ。
 
 「大丈夫です。やれます。だから信じてください……」
 
 それは懇願に近かった。本当は、カガリを自分の手で助けたい、すぐにでも会って、もう大丈夫だよって言ってあげたい。
 
 〈…………わかった。だが、無茶はするな。君の命は、君が思ってるほど軽いものではない〉
 
 短い沈黙の後、観念したようにナタルが言うと、フレイは嬉しくなってにっと笑みをこぼした。
 
 「大丈夫ですよ、わたしの命は世界一重いんですからっ」
 〈ハッ、その意気だ〉
 
 やがて格納庫《ハンガー》が慌しくなり、着々と出撃の準備が進められていく。爛Εンダム瓩鉾錣気襪茲Δ豊爛淵魯肇好肇薀ぅー瓩装着され、爛Εンダム瓩廊爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩箸覆辰拭とはいえ爛淵ぅ船鵐押璽覘甍豕,世韻任發修譴覆蠅僚杜未澄爛好拭璽殴ぅ供辞瓩泙播觝椶垢詬祥気蓮∈は無い。完全に単機での出撃となる。
 
 〈フレイ、推進剤を使いすぎないでね。帰って来れなくなるかもしれないわよ……〉
 
 緊張した面持ちでミリアリアが言う。
 
 「ん、平気よ。わたしがそんなヘマすると思う?」
 〈すると思うから言ってるの。あなた、好きな人の為になると時々周りが見えなくなってるわよ〉
 「そんなこと……」
 
 当たっているかもしれない、と思った。現に今彼女は周りが見えていない。爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩教えてくれなければ、フレイはまだつまらない我侭を続けていたかもしれない。
 
 〈爛淵ぅ船鵐押璽覘畚个襪勝 爛淵ぅ船鵐押璽覘疊進!〉
 
 マードックの号令が周囲に飛び交う。爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩脇段無,任△蝓▲タパルトへは自力で向かわねばならないため他の機体とはやや勝手が違うのだ。
 フレイはそのままちらと爛妊絅┘覘瓩魄貶佑垢襦ぱっと通信モニターが開き、アムロが映り込む。
 あっと思うよりも早く、彼がふっと微笑し言った。
 
 〈アスハ代表の事は僕たちに任せてくれ、少尉〉
 「はい、大尉。あの馬鹿のことお願いします」
 
 すると、ふふと彼は微笑み、〈わかった〉と短く告げた。
 ぱっとモニターが消えると、移り変わるようにして心配げな顔をしたキラが映りこんだ。
 
 〈……フレイ〉
 
 フレイは、何も言えなかった。相応しい言葉が浮かばなかったと表現するべきかもしれない。強がるべきか、それとも本当は怖いんだと言うべきか、わからなかった。 
 彼はわずかに逡巡した後、目を見て言った。
 
 〈フレイならできるよ。頑張って〉
 
 それは、フレイが期待していた言葉とは違っていた。
 なんだろう……。とても辛くて、悲しかった。それは、少女の我侭であったのかもしれない。
 フレイは何も返せずに無言で通信を切り、そのままカタパルトへと進んだ。
 
 〈針路クリア! 爛淵ぅ船鵐押璽覘疊進どうぞ!〉
 
 ミリアリアの元気な声が響く。帰ってこなきゃな、ミリアリアにも、カガリにも会いに。キラにだって、わたしまだ何も言って無いんだから。フレイは左右の指でアームレイカーをぎゅっと握る。
 
 「フレイ・アルスター、爛淵ぅ船鵐押璽覘畊圓ます!」
 
 一気に加速し、無限の蒼き虚空へと投げ出された爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩料甘啓囲モニターの後方で、爛ーティ・ルー瓩更に加速し、同時に爛潺蕁璽献絅灰蹈ぅ畢瓩鯣動させた。これで、爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩呂發Ρ膰遒鰺彑舛垢觧はできない。
 再び前を見据え、全天周囲モニターの高解像度グラフィックスが最大望遠で捉えた三つの光を映し出す。それぞれのAIが正確に識別し、爛─璽襯瀬ー瓩二機に爍.W.S.P.ダガー瓩一機だと示す。
 ――裏切り者の、偵察部隊。
 短く反芻し、同胞ではないと言い聞かせる。
 遊んでやるつもりは無い。フレイは両翼のバインダーに装備された十基もの小型無線誘導端末爛疋薀亜璽鶚瓩鯏験し、「爛侫.鵐優覘瓠」と気合をかけた。
 全てが意思を持ったようにして高速で散らばると、それぞれが敵牋譟五ダガー瓩鮗茲螳呂澎貔討頬し發魏辰┐襦7彌祝椶發慮条が同時に輝き爛瀬ー瓩鮟韻Δ、全機が舞うように全てを回避し、フレイは驚愕した。
 
 「うそ、強い!?」
 
 これはフレイの知らないところであるが、ラウに連れられて軍を抜けた者は、全てが己の出生に呪いを秘めた者達であり、即ち戦闘用コーディネイターであり、あるいは強化人間である。ゆえにこの三機の爛瀬ー瓩縫侫譽い勝っているものは、機体の性能のみであった。
 元来爛疋薀亜璽鶚瓩里茲Δ幣型の誘導端末は、小さすぎてモビルスーツのコンピュータグラフィックスは描写しきることができない面もある。無論技術の進歩によりそれは解消されつつあるが、今度は別の問題が生じた。一機だと思っていたはずの敵が、同時に十数に分かれるのだ。
AIは混乱し、それがミサイルなのかどうか、あるいは突如現れた敵と誤認し全てにロックオンをしようとするため、 対応が遅れる。それが、爛疋薀亜璽鶚瓩龍みであるから、情報の読み取り速度が極端に早い、コーディネイターの中でも特別な存在、戦闘用に改良された特殊なコーディネイターや、AIに頼らずに敵意を感知するガンバレル適性保持者でなければまともな応対はできない。
 フレイは短く思考し、敵は後者だと結論づけた。
 三機の爛瀬ー瓩散開し、爛─璽覘畫備の二機が左右から挟みこむようにして爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩鯆匹さ佑瓩襦
 フレイは指先のアームレイカーでメガビームライフルを拡散モードに変更し、右方向の爛瀬ー瓩冒世い鯆蠅瓩拭
 
 「――当てる!」
 
 ばっとビームの粒子が弾け、散弾として爛瀬ー瓩暴韻こ櫃る。爛瀬ー瓩藁沼を器用に使ったアンバック回避で避けきると、そのまま主兵装のビームライフルを構える。フレイはもう一度声を上げた。
 
 「爛侫.鵐優覘瓠」
 
 敵がトリガーを引くよりも早く四つの光条が爛瀬ー瓩瞭溝里魎咾い拭F瓜に押し寄せる強烈な悪寒。フレイははっとして左腕に備え付けられたシールドをわずかに上にあげた。
 直後にもう一機の爛─璽襯瀬ー瓩ら放たれたバズーカが直撃し、耐ビームシールドを施された専用のシールドが弾け飛んだ。
 ――威力が改良されてる!?
 爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩離掘璽襯匹鮑佞バズーカ。機体に直撃していたら、PS装甲であろうと持たなかったかもしれない。
 その思考がわずかな隙となり、フレイは一手、隊長機の対応に遅れた。死角から抉りこむように迫る爛瀬ー瓩離咫璽爛機璽戰襪法■腺匹自動で反応しメガビームライフルを盾にスラスターを全開にして一気に後退する。強烈な加速にフレイは「あうう」と声を漏らしながら内臓が軋むような錯覚を覚えながらも、背後から接近する爛─璽襯瀬ー瓩箸垢谿磴い兇泙法右手首から滑るようにして排出されたビームサーベルで胴を横なぎにした。
 
 「後、一機……!」
 
 かはと息を吐き一度距離を取り、爛疋薀亜璽鶚瓩鯡瓩圭偲鼎魍始する。
 使い切った爛疋薀亜璽鶚瓩離┘優襯ーが少しずつ回復している様を視界の端に入れながら、早く、早く! と苛立った。 そのわずかな焦りを読み取ったのか爛瀬ー瓩スラスターを吹かせ一気に距離をつめる。フレイは短く舌打ちをして、同じようにしてビームサーベルを構えた。
 爛瀬ー瓩劉爍.W.S.P.瓩冒備されたビームブーメランが爛疋薀亜璽鶚瓩箸靴栃たれる。同時に、辛うじて一発ずつではあるが爛疋薀亜璽鶚瓩虜謄船磧璽鹸偉擦掘▲侫譽い呂戮蹐蠅抜イい真阿鱧咾瓩拭
 
 「爛侫.鵐優覘瓠」
 
 出し惜しみは無用! 搭載された十基全てを放出し、たった一機の爛瀬ー瓩冒世い鯆蠅瓩襦
 
 「――落とせる……行け!」
 
 フレイは、功を焦った。それは彼女が戦いを始めてから未だに直らない大きな欠点。
 光条が放たれるよりもわずかに早く、爛瀬ー瓩倭備された爍.W.S.P.瓩鯤離させた。しまったと思うよりも早く、爛疋薀亜璽鶚瓩廊爍.W.S.P.瓩鬮爛瀬ー瓩噺軫Г靴燭泙沺攻撃し、これで爛疋薀亜璽鶚瓩忙弔気譴浸張┘優襯ーは0となった。
しかし、兵装が残り少ないのもあちらとて同じのはず。爛好肇薀ぅーパック瓩箸力携を前提に作られたマシン、かつて自分が乗りまわした機体だから、その特性は嫌と言うほどわかっている。それゆえに、かつての自分よりも爛瀬ー瓩鮖箸い海覆好僖ぅ蹈奪箸砲呂錣困な嫉妬を覚えた。
 一刀のビームサーベルを構え、四○ミリ口径近接自動防御機関砲爛ぁ璽殴襯轡絅謄襯鶚境瓩鬚个藥気ながら迫り来る爛瀬ー瓠フレイは機関砲を翼部バーニアを全快にして回避しつつ、ビームサーベルを握らせ加速した。
 虚空の中で二機のモビルスーツの光刃が交差し、わずかなスパークを撒き散らせたまますれ違う。
 
 「そうよ、爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩寮能に、勝てるわけが無いんだから!」
 
 もう一度、今度は確実にやる……! そしてそれは相手も同じのようだ。震え上がるほどの敵意と闘志を、コクピット越しにひしひしと感じる。二機は同時にスラスターを吹かせ、一気に距離を詰める。
 すれ違いざまに左手首からビームサーベルを滑り出し、同時に切りかかる。既に予測されていたのか、爛瀬ー瓩發泙森から二対目のビームサーベルを抜き去り応戦。
 ――かかった!
 フレイは胸部に搭載された陽電子破城砲爛蹇璽┘鵐哀螢鶚瓩魎秡阿療目掛け最低出力にしばら撒いた。
 だが、フレイの目論見は浅はかであった。爛瀬ー瓩廊爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩瞭垢鮟海蠑紊押▲▲ロバティックに爛蹇璽┘鵐哀螢鶚瓩魏麋鬚靴討澆擦燭里澄これにフレイは反応できない。爛瀬ー瓩呂修里泙泪咫璽爛機璽戰襪鬮爛淵ぅ船鵐押璽覘甼刺瑤妨け――
 即座にAIが反応し、スカートアーマー内部に装備された隠し腕に握られた二対のビームサーベルが爛瀬ー瓩瞭溝里鯲焼紊にすると、フレイははっと我に返った。爛瀬ー瓩綺麗に胴がばらけやがて誘爆を起こし漂うデブリの一つと化した。同時に襲う、死者の最後の念が、酷く汚い言葉でフレイを罵ったのを耳にした。それは通信で聞こえたのか、心で捉えたのかは定かではない。
 同時に誰かが『呑まれるな』と言うと、フレイの心はわずかに楽になった。死者に心を奪われると、そのまま魂を引かれて同じ結末になってしまうから。
 緊張から開放されぜえと息を吐くとパイロットスーツのバイザーが白く濁った。フレイはそれすらも邪魔に感じヘルメットを脱ぎ去り、索敵をAIに任せリニアシートに背をどさりと預けた。
 爛疋薀亜璽鶚瓩翼部バインダーに再び装着され充電が開始される。
 
 「……カガリ」
 
 友人の安否を想い呟いてみても、返事は返ってこなかった。
 
 
 
 それは、幸運であったのか。
 カガリはただ爛廛薀鵐鉢瓩帽圓だけだと皆を説得し、シャトルで護衛もつけずに向かうと言った。その強引な手口にやれやれと皆が閉口し従うのみであったが、キサカを始めとする、所謂親衛隊の面々から抗議に合い、結果カガリはオーブの誇る巡洋艦爛サナギ瓩埜かうことになった。
 だから、カガリ達はなすすべなく蹂躙されるということは無く、辛うじてだが敵に対して抵抗という姿勢を見せることができたのだ。
 だが、それが不運の始まりであった。
 そうしなければ、おそらく彼女達は有効な捕虜として捕らえられていただろう。だが、カガリという血気盛んな少女が爛▲ツキ瓩能亰發靴燭箸△譴弌△修譴鰐棲里陛┐箸覆襦O合から拝借した技術により、爛▲ツキ瓩離灰ピットは三百六十度全てを写す全天周囲モニターとなっている。
連合共通の企画である球体状の操縦桿アームレイカーを採用しているが、カガリはこれを気に入ってはいなかった。指がすっぽぬけやすい。
 丁度足元にあたる位置に映し出されている爛サナギ瓩離タパルトにビームの粒子が直撃し、わずかに爆発をあげる。
 だが、心配している余裕は無い。あの程度では落ちない筈だと言い聞かせ眼前の巨大モビルスーツに視線を戻す。
 醜いモビルスーツが言う。
 
 〈我が爛螢献Д優譽ぅ鉢瓠 勝、て、る、かぁー!?〉
 
 ロングビームライフルをばら撒きながら啖呵を切る敵の巨大モビルスーツ爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩、再びカガリに狙いを定める。
 
 〈お姫様は、どんな声で鳴いてくれるのか! ハハーッ!〉
 
 下種なパイロットが敵にいるとフレイ達から聞いていた。ならばそれがこいつかと思い立ち、カガリは爛▲ツキ瓩鮓綢爐気擦拭F瓜にカガリを守るようにして取り囲うもう三機の爛▲ツキ瓠L杵澄∈のオーブにはまだ爛▲ツキ瓩鯲婿困垢襪世韻了餠發鰐気ぁあったとしても、それは復興に使うべきだ。
だからこの爛▲ツキ瓠,蓮⊇秧茲淵ーブ産では無い。アズラエルに開発データを引き渡すのを条件に、テストヘッドの一つとして数機、連合の工廠で作られたものである。ちゃんと全機がカガリのもとに送られたのだと信じたいが、アズラエルであるから怪しいところだと踏んでいた。
 
 〈カガリ様、大丈夫!?〉
 
 元気よく言ったのはアサギだ。同じくカガリの周囲の爛▲ツキ瓩砲蓮▲泪罐蕁▲献絅蠅登場し、これほどの戦闘になるのなら人選を間違えたかもしれないと考えていた。単純な技量で言えば、正規の部隊から持ってくるべきだったか、あるいはワイドか、ファンフェルトか、ガルドか……。
 単純に話し相手として楽しいからと言う理由だけで連れてきてしまった彼女達であったが、幸運なことに先に挙げた彼らよりも大きく上回っている部分が一つだけあった。そしてそれは、おそらくこの戦場では無類の力を発揮するのも事実だろう。
 
 「アサギ、ジュリ、マユラ! タイミングを合わせるぞ!」
 
 カガリが指示を出すと、三人の娘達は一斉に散開し、爛▲ツキ瓩稜愽瑤鉾えられた筒状の無線誘導端末に意識を込める。フレイ仕込の動作で、カガリははあっと息を吐ききった。四人の娘が同時に叫ぶ。
 
 「爛侫.鵐優覘瓠」
 
 一機につき七基搭載されたM五三一R誘導機動ビーム砲塔システムが同時に命を宿し、計二十八もの黄金の獅子が虚空の星空に解き放たれた。
 使うには、まずは気合を入れると良いとフレイが言っていた。結局は使い手の脳波、思念が強力であるかや、どれだけ正確な指示を出せるかで爛疋薀亜璽鶚瓩龍さは決まるのだと。そしてフレイが偶に言う爛侫.鵐優覘瓩箸いβ羯譴蓮¬に言いやすくてしっくりくる、とカガリは感じていた。何でそう呼ぶんだと聞いても、本人ですらわかっていなかったようだが。
 黄金の獅子が爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩鮟韻Δ函△修譴鬚ばうようにして爛瀬ー瓩ら放たれた無線誘導型爛ンバレル・ファントム瓩展開し、爛▲ツキ瓩了盪劼鮠絏鵑訛度で応射する。
 ――対応しきれない……!
 爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩ビームソードを両手両足に輝かせそのまま獣のように距離を詰める。カガリは懸命に応射したが、敵の加速力は爛▲ツキ瓩鮠絏鵑辰討い拭
 
 〈カガリ様!〉
 
 ジュリが慌てて援護に入ろうとするが、カガリはそれに背を向け行動で拒絶した。彼女達には荷が重過ぎる、こいつの実力は本物だ。自分でも、一体どれだけ持つか……。それでも、ここで死ぬわけにはいかないと思うと、同時に別の事が脳裏に過ぎる。
私が、オリジナルだというのなら、カナードがキラに見つけたという、人間の『たが』を外す何かが、私にあるはずだ、と。意識して使えるのか? それは、わからない。自分の身が危険になれば、きっとやれるさという楽観的な考えもあった。うまくいかなければ、そこまでだ。どのみちこのままでは、同じ結末になるのだから。
 眼前にまで迫る爛螢献Д優譽ぅ鉢瓠ぞわり、ぞわりとカガリの心が氷のように凍てついていく。数多の雑念が消え去り、目の前の敵だけを殺す機械のようになる。あらゆる思念を受け流し、カガリは全てを拒絶した『個』となり、それは弾けた。瞳孔が完全に開ききり、全身の血液が沸騰しそうなほどの高揚感。
ああ、これでは他者と理解しあうなど絶望的だと感じたとき、カガリは振り下ろされた爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩領章咾鮖造蠅としていた。身を支配するのは、ただどう斬るか、どう撃つか、どう殺すか、それだけである。『極限にまで研ぎ澄まされた集中力』、それこそが、その『たが』の正体であった。
そしておそらくそれは、その道を極めた真の達人が、更に度重なる修行を経て偶然会得できるようなものなのだろう。たとえば、宮本武蔵や佐々木小次郎。ひょっとしたら、人を操る才でいうところのアドルフ・ヒトラーもそうであったかもしれない。それがたまたま、最初から備わっていた。それだけのことだった。それは『精神疾患』の類なのかもしれない。
 カガリは己がよだれをたれながしてることにすら気づかず、目の前の敵を殺すことにだけ集中していた。どうすれば上手く斬れるか、それだけが彼女の思考を支配する。これは違うと感じながらも、これに頼らねばならない己の弱さが悔しかった。
 
 
 〈流石は『ニュータイプ』! だが、それは違うよなぁ!?〉
 
 相手の言葉を聞き、思考する余地は今のカガリには無い。今斬れるんじゃないかと感じた時には既に両の足をなぎ払っていた。すぐさま爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩詫夙パーツで再生していく。
 まだだ、まだ斬れる。まだ撃てる。隙だらけじゃないか。そう感じたとき、痛みもなく違和感もなく、ただ客観的に自分の体が動かいことに気づいた。所詮カガリは『オリジナル』なのだ。父がその母体をコーディネイターとした理由が、そこにあった。
 指先一つ動かすことができず、カガリはその理由が全身の筋肉ががくがくと痙攣を起こしているのだと気づくことはできない。ただ、今斬れる、今撃てる、それだけだ。強化されたコーディネイターの肉体ならば、それもできよう。しかし、カガリの肉体は紛れも無くナチュラルのそれであり、物理的に動くことはもはや不可能であった。
どこかが骨折しているかもしれない。内臓も損傷しているかもしれない。『この力』は、度重なる訓練によりふさわしい肉体を得、その結果手に入れたものでなければ、何の意味も持たないのだから。
 爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩離僖ぅ蹈奪箸何かを言い放ちビームサーベルを振り下ろす。ああ、今斬れるのになと思うと同時に、その腕に何かが巻きつき焼き千切られた。
 はっと我にかえり辛うじてフットペダルを踏み込み爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩鮟海衄瑤个垢函黄昏色に塗られた爛哀姚瓩割って入った。
 MMI‐五五八爛謄鵐撻好鉢瓮咫璽爛宗璽匹鮃修┯事な立ち回りを繰り広げる爛哀姚畫蠎蠅法互角の戦いをしてみせる爛螢献Д優譽ぅ鉢瓠カガリは呼吸すらも苦しくなりながら、格が違うと自覚し始めていた。戦いに殉じるものとしての、覚悟の差が、そこにある。ここで一人でも多くの敵を殺そうとする為だけに戦う相手と、生きるために戦うカガリとでは……。
 
 〈カガリ様、大丈夫!?〉
 
 ジュリが慌てて爛▲ツキ瓩鯤きかかえ、マユラ機が周囲を警戒する。すぐ後方から三機の爛疋爛肇襦璽僉辞瓩爛哀姚瓩了抉腓鵬辰錣襪函∈E戮論弔塗られた爛哀姚瓩、爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩了抉腓貌った。
 ――ナチュラルも、コーディネイターもいるのか……。
 ああ、これでは本当に戦争ではないか。
 また、起こったのか。こんなに早くに。コーディネイターとナチュラルの、民族同士の争いではない、ただの戦争が、また……。
 カガリがぎりと無力さを噛み締めていると、力強い粒子の濁流が敵の爛哀姚瓩鮟韻Δ里鯡椶砲掘同時にわずかな鈴の音が聞こえる。
 ――来てくれたのか……。
 カガリはその懐かしい巨大なプレッシャーの壁に安堵し、意識を失った。
 
 
 
 「敵は手強い、今までと同じだと思うな!」
 
 アムロが厳しく言うと、カナード達は〈了解!〉と答えてくれるのがわずかな親心を満たしてくれるように感じていた。確かに敵部隊は皆熟練者以上のパイロットたちだ。だが、それはかつて戦った『ネオジオン』の爛ラ・ドーガ疉隊も同じ事だし、それと戦ってきたという自信と経験が、アムロを奮い立たせる。
 アムロの戦術は、いわば未来の戦術である。爍叩ィ邸キ瓩任蓮▲皀咼襯后璽弔誕生してまだ二年あまりしかたっていない。モビルスーツ対モビルスーツの戦略、戦術が余りにも未熟なのだ。だがアムロは違う。そのモビルスーツ対モビルスーツの戦いを、十年以上繰り広げてきたのだから。
アムロこそが、モビルスーツ戦術の始祖であるのだから。多くの兵が教科書や教えを頼りにそれを習う中、アムロだけは違うのだ。アムロの取った戦い方が、教科書となり、教えになっていったのだから。無論、過去の戦いの中で偉人達が生み出した多くの戦術も統合され、全てがアムロの中で生きている。
それが、アムロの強みであり、他者との決定的な差であった。全人類の十年を超えるほどのモビルスーツ対モビルスーツの全てが、アムロの中に宿っているのだから。
 アムロが操縦桿のトリガーを引くと、連動して爛妊絅┘覘瓩離咫璽爛薀ぅ侫襪ら粒子が放たれる。それは吸い込まれるようにして一機の爛哀姚瓩北臣罎掘△笋て爆発した。
 ――強いな。
 と言うのが初撃の感想である。
 だが、カガリの気配は消えてい無いし、他に知った者たちの息遣いも感じる。あの少女達と行動を共にしているうちに、衰えていた感覚が少しずつ戻ってきたのかもしれないと思うと、同時に迫る三機の爛瀬ー瓩房係泪潺蠡亢自動バルカン砲塔システム爛ぁ璽殴襯轡絅謄襯鶚瓩鬚个藥気、怯みすらせずに突撃してくる敵意は見事だと感じる。
ビームライフルの安全装置を外し、アムロはそれをビームマシンガンとして扱った。小刻みに断続的に放たれる粒子の雨に碌な回避運動もとれず、まずは一機。左右に別れた爛瀬ー瓩両方から挟み撃ちにすべくスラスターを煌かせ襲い来ると、アムロはそのままフットペダルを踏み込み爛妊絅┘覘瓩魏誕させ敵機を追い抜いた。
 慌てて追いすがる二機の爛瀬ー瓩鬚りぎりまでひきつけてから、アンバックを利用した急激な宙返りと同時に、死角でチャージし続けたビームを一気に放出すると、それは散弾のようにしてばらけ二機の爛瀬ー瓩鯤源通り蜂の巣にした。
 きらとモニター正面に輝くものを見つけると、それが隊長機なのだと知る。爍.W.S.P.瓩鯀備した爛Εンダム瓩任△辰拭2召砲盧膿訓垉,髻△肇▲坤薀┘襪良埃蟶櫃鯒佑蠅弔帖▲▲爛蹐魯咫璽爛薀ぅ侫襪鯱⊆佑靴拭9みな回避で避けきって見せた爛Εンダム瓩M九四○九L爛凜Д好弌辞瓩鯤つと、アムロはそれを仰け反るようにして避け、そのまま腰部のアタッチメントに装備されたバズーカを二射ほど撃つと、一撃目を辛うじて避けた爛Εンダム瓩任△辰燭二撃目には気づかず、そのまま何が起こったのかもわからずに爆散していった。
 流れ行く爛凜Д好弌辞瓩鮹イΔ函▲▲爛蹐郎討哭爛椒▲梱瓩房茲衂佞べく爛妊絅┘覘瓩鯀らせた。
 
 
 
 事実、キラは苦戦を強いられていた。爛疋薀亜璽鶚瓩倭瓦独鬚韻蕕譟▲┘優襯ーが尽きたために充電をせざるを得なくなっている。キラは二丁のビームライフルで援護射撃を加えながらも、先読みの甘さを呪っていた。
 同時に、シン達を艦の護衛に回して正解だった、とも思っていた。
 爛ーティ・ルー瓩慮什澆寮鑪呂蓮↓爛妊絅┘覘瓠↓爛好肇薀ぅフリーダム瓠↓爛魯ぅ撻螢ン瓠↓爛宗璽疋ラミティ瓠↓爛▲ツキ瓠↓爛オス瓠↓爛イア瓠↓爛▲咼広瓠↓爛好拭璽殴ぅ供辞瓩龍綉,任△襦爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩いれば、まだ戦況は楽だっただろうか、と思うのはキラの弱さであり、恥じねばならない部分だと自覚していた。
 だが、後が無いのも事実。爛ーティ・ルー瓩廊爛潺蕁璽献絅灰蹈ぅ畢瓩鮖箸ぁ敵の防衛網を掻い潜ってここにいるのだ。敵のど真ん中に、突っ込むのと同意義であるのだから、背水の陣であるとナタルが言えばそうだと思わざるを得ない。
 とにかく、爛椒▲梱瓩良隊と合流しなくては……。
 視線をめぐらしモニターに映る戦場をくまなく探すと、絶対に見つけたくなかった相手の内の一つを見つけてしまい、キラは己の運の悪さを呪った。
 
 「カナード、爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩澄
 〈あの下種か!〉
 
 同時に、目的の姿も捉える。
 
 「爛サナギ瓩函↓爛▲ツキ瓠帖帖? 襲われてる!」
 〈行くぜ!〉
 
 トールの爛宗璽疋ラミティ瓩一気に加速し、カナードがそれに続くとキラはやや後方に位置し、充電の完了した爛疋薀亜璽鶚瓩鮖梓陲曚匹个藥気い拭
 
 それぞれの爛疋薀亜璽鶚瓩機械的な動きで威嚇と援護射撃を加えていく。
 黄昏色の爛哀姚瓩、一機の蒼い爛哀姚瓩塙眤戦闘を繰り広げている。だが腕の差はそこにあった。黄昏の爛哀姚瓩キラ達に気づいたのか、わずかに射線をあけると、蒼い爛哀姚瓩呂修譴魴笋搬えたのか一気に斬りかかる。キラはMA‐M二一KF高エネルギービームライフルを連結させ長距離射撃モードに切り替え、そのままトリガーを引いた。高速で撃ちだされた粒子が蒼い爛哀姚瓩北臣罎掘黄昏色の機体はそのままそれを蹴り飛ばし次の標的を探した。
 それとほぼ同時であった。けたたましい爆音を、コンピュータが識別し音としてスピーカーが再生しキラの鼓膜を激しく震わせる。
 
 「な、なに!?」
 
 情けない声をあげてしまったというわずかな羞恥心に顔を歪め、キラは音のしたほうに機体を向けた。
 
 〈――やられた、爛献Д優轡広瓩澄〉
 
 カナードが苦渋を浮かべ言うと、ややあって爛献Д優轡広疇睇瑤ら誘爆が起こり、やがてそれは巨大な爆発となって広がり始める。
 
 「敵の目的は、爛献Д優轡広瓩稜鵬……?」
 〈だが、やつらが何を求めて戦っているのかが読めん……!〉
 
 仮に奪ったのだったら、彼らは爛献Д優轡広瓩箸いΧ力なカードを手にすることになっただろう。しかし、それをしないと言う事は単純に爛献Д優轡広瓩枠狹にとって邪魔な存在だったという事だ。
 果たして彼等の本当の目的は――
 やがて再び翼のようなものを広げるモビルスーツを目にし、それが爛筌ン・ドゥーエ瓩埜た機体と同じものだと理解したところで、敵と認識していた全てのモビルスーツが姿を消した。
 爛妊好謄ニー瓠宗臭爛廛薀鵐鉢瓩離如璽織戞璽垢ら抹消されていたため、詳細な情報を得ることができなかった。だが爛廛薀鵐鉢瓠∀合双方の科学者により、爛凜ワチュール・リュミエール瓩鰺用して全方位に爛潺蕁璽献絅灰蹈ぅ畢瓩鬚个藥気、それを映し出しているというのだという事実が明らかになった。しかし、それだけでは説明がつかないものもある。
 映し出されるモビルスーツの動きが、正確すぎるのだ。爛潺蕁璽献絅灰蹈ぅ畢瓩捻任圭个垢箸い辰討癲⊇蠢Г榔覗を再生しているだけに過ぎない。しかし、モビルスーツが戦場に出始めてからまだたったの二年だ。あれだけ正確で繊細な映像を、全ての機体に幻であると気づかずに偽らせるために必要な戦闘データを集めるには、二年では余りにも短い。
 せめて、十年以上もの長い戦いの歴史が蓄積された戦闘データでも無ければ――。
 姿を消したまま攻撃を加えてこないのを見るに、恐らく彼らはまだその時では無いと判断しているのだろう。あの爛螢献Д優譽ぅ鉢瓩離僖ぅ蹈奪箸垢蕕發修譴暴召辰討い襪里澄もしも、彼らが備える最後の戦いが訪れた時、恐らく爛妊好謄ニー瓩領呂録燭鉾揮される。
 それは、とてつもなく恐ろしいことであった。
 
 
 
 爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩爛椒▲梱瓩謀着すると、既に戦闘は終わった後であった。カガリの気配は感じている、ならばまだ生きていると思うのがフレイであるが、その気配がわずかに散漫的なものであるから、寝ているのか気を失っているのかのどちらかだと確信した。そしてそれが健やかなものであるから、急を要する負傷は無いのだ、とも。
同時に知った者たちの感覚を見、それが女性のものであるとわかれば、そこからアサギたちの姿を思い浮かべれるのはたやすいことであった。
 爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩貌海れるままに機体を残存艦隊の合間を縫うようにして進めると、丁度爛椒▲梱瓩離疋奪阿貌港する爛サナギ瓩鯊えた。ややあって、後方に爛ーティ・ルー瓩鯣見し、フレイはほっと胸を撫で下ろした。
 そのまま爛サナギ瓩鵬,靴けてやろうかとも思ったが、カタパルトに被弾しているのを見、流石にちと怒られるかと爛ーティ・ルー瓩某墨を取り直す。それでも、悠々と爛サナギ瓩慮緤を旋回するのは忘れずに、爛ーティ・ルー瓩粒頁叱法團魯鵐ー》へとフレイは降り立った。
 とんと胸部装甲を蹴り、爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩瞭部にパイロットスーツを押し付け、そっと「ありがと」と囁くと、キラがまるで迷子の我が子を見つけた親のような顔をして慌てて飛び寄った。
 
 「フレイ、大丈夫!? 怪我とかしてない!?」
 
 ま、ついたばかりでごった返す格納庫《ハンガー》にラクスは来れはしないだろうと思い(最近はそれでも来そうだったが)、フレイは手を振った、
 
 「うん、そっちも大丈夫だった?」
 
 うん、まあ一番に出迎えに来てくれたし、合格っとわずかに弾んだ気持ちでキラの胸に飛び込むと、彼の後ろからひょいとステラが飛び出す。
 
 「フレイだ〜」
 
 やっぱりこの子、可愛いなぁ。見ているだけで癒される。なんて不思議な生き物なんだろう。
 そのまま天使のようなステラをぎゅっと抱き締め、フレイはようやく肩の力を抜けたのだった。
 
 
 
 意識が戻った時は、爛サナギ瓩琉緻骸爾離戰奪匹某欧されていた。何となく何が起こったのかは覚えている。ちらと視線だけで体に目をやると、全身に包帯が巻かれており、とりあえず絶対安静らしい事はわかった。
いや、ひょっとしたら代表だからとか、どうせガチガチに固定して無いとすぐに動き出して逆に迷惑をかけられるだとかそんな事を思われていただけかもしれない。全く持って心外であったが、実際ここまでされなかったらたぶんカガリはすぐにでも起き上がって艦橋《ブリッジ》に向かうつもりであったから別に誰かに文句の一つでも言ってやろうだとかいう気にはなれなかった。
 ただ、問題は……。
 たぶん、あいつが来る。
 一番会いたかったけど、今は何となく一番会いたくないような、タイミング的に最悪なような――そんな事を思っていると、その相手が一番最初にやってきたのだから、カガリは諦めるしかなかった。何せ第一声が
 
 「うわ、だっさ。ミイラ女」
 
 だったのだから。
 
 「……それが包帯だらけの大親友に言う言葉か」
 
 とむっつり返せば
 
 「だぁってたいしたこと無いんでしょ? どーせあんたすぐ勝手にどっか行っちゃうから無理に固定されてんのよ」
 
 と返すのがフレイであるし、事実そうなのだから反論できない。
 
 「あのなぁ……そこはほら、『その包帯どうしたの? 大丈夫?』とかさ、こう……もっと心配げに言ってくれても良かったんじゃないかー?」
 「はぁ? 何言ってんのあんた馬鹿じゃないの?」
 「こ、の、……」
 
 余りにも薄情な言い草に友達やめてやろうかこのやろうなどと心にも無いことを考えていると、やや遅れてやってきたラクスがニタニタとフレイを見つめているのを見、「どした?」と問えば今度はラクスがフレイに攻撃をする番であった。
 やれ真っ先に爛ーティ・ルー瓩鮓かわせろと怒鳴り込んでっただの、ナタルどころかアズラエルにも噛み付いて我侭言い続けただとか、果ては爛ーティ・ルー瓩林を自分から買って出たとか。カガリがにやけてフレイをからかってやるには十分すぎるほどの燃料を投下してくれた。
 少し遅れてキラたちが来て見れば、まずトールがフレイに
 
 「良かったなフレイ」
 
 と屈託の無い笑顔で言った後に
 
 「心配して凄かったんだぜ? 『どうしてカガリを助けてあげないんですか!』ってさ」
 
 と付け足せばカガリはもう満足であった。
 うむうむと満足していると、耳まで顔を赤くしたフレイがばつの悪そうに視線を逸らす。これで良いのだ。
 彼らと短い談笑をしていると、やがて足取りも荒くミリアリアがやってきて
 
 「ごっめーん、遅くなっちゃった!」
 
 と言って扉をあけ、そのままフレイに飛びついた。
 
 「良かったねーフレイ! カガリさんの怪我たいしたこと無くて! ほんと、フレイはカガリさんの事になるとすぐ無茶するんだから、心配してたのよ!」
 
 カガリには大満足であった。
 それでも、お見舞いに来たサイやカズイ、ミリアリアといったブリッジクルーはすぐに戻らねばならなかったし、曲りなりにもモビルスーツ隊副隊長を務めるカナードも同じであった。
 去り際に彼は言った。
 
 「『機能』とやらの結果、なんだろ?」
 
 問われたものが、実際はどういうものなのかカガリには良くわからない。恐らくはそうだ、としか言えないのだ。
 
 「たぶんな」
 
 と返すと、カナードは短く考え、「お前の結論を知りたい」としっかりと目を見据えて言った。それは、真剣な眼差しである。
 
 「結論?」
 「そうだ。『ニュータイプ』だとか、そんな事を言われてるお前が、マルキオの言う『SEED』とやらを使ってみせたんだ。何か思うところはあったんじゃないのか?」
 
 その言い草に、カガリは可愛くない弟だと苦笑したが、先の戦いで感じたそのままの事を告げた。
 
 「……これは、『違う』よ。人の革新だとか、そんな大層なもんじゃない」
 「……ま、そうだろうな」
 
 概ねカナードも同じ結論に達していたのだろう、たいして驚きもせず彼は受け入れた。
 
 「強いて言うなら――これはただの『暴力』なんじゃないかって思う」
 
 わずかにラクスが悲しげな顔をして視線を逸らす。
 
 「これがさ、たぶんなんだけど、長いこと訓練とか修行とかしてさ、それで手に入れたものなら良いんだよ。でも、何もせずに最初から与えられたのなら、それは間違ってるんだ」
 
 それがカガリの見出した答えであり、カナードは「そう、か」と満足したように告げた。
 
 「親父達の研究は、結局間違ってたって事なんだよな」
 
 どこか寂しげな表情を浮かべるカナードを、カガリは何だか少しばかり可愛い存在に見えてきた。頭でっかちで、思考だけで先行してしまって、ほどほどに賢くほどほどに間の抜けた馬鹿なやつだ。
 
 「でもさ、『これ』が無ければ私は死んでたかもしれないぞ? ユーレンって人が何を思ってたのか何て今となってはわからないけど、結果として私はこうしてここにいるんだから。だったら、それに良いも悪いも無いんじゃないか?」
 
 別に、慰めてあげようだとか、会ったことも無い他称実の父の行いを正当化するつもりだとかでもない。ただ、カガリはありのままを受け入れて、それで良いと思っていた。
 正義で人を殺す人間がいれば、悪事の結果で人を生かす事もある。過ちもまた、人を救えるのだ。全ては、結果として現れる。そこに、どのような邪悪があったのかはわからない。目を背けたくなるような悪が蔓延っていたのかもしれない。
 それでも、カガリは彼等とやがて出会い、こうしてここにいる。今を生きているのだ。過去の事はいけないことだけど、その結果として今ある未来と現実を、カガリは肯定していた。案外良い世界じゃないかと。悪くないし、結構楽しいぞ、と。
 目をぱちくりさせていたカナードは、やがて苦笑し、言った。

 「参ったよ、ネーサン」

 と。
 
 
 
 〈太陽風速度変わらず。フレアレベルS三、到達まで予測三○秒〉
 
 もうじき『風』が吹く。きびきびと作業を続ける部隊の様子が映しだされるモニターを一瞥し、また別の情景が映し出されるモニターに視線を移した。
 凍りついた海、白く立ち枯れた麦の畑、行き交う人波の絶えた街並み――宇宙空間にぽっかりと浮かぶ大地には、どこか侵しがたい静謐が漂う。凍った大地の一角に、磨き上げられた美しいモニュメントがあった。そこに刻まれた文字は、ここで爛罐縫Ε江鯡鶚瓩調印されたむねを記している。
 そう、ここが悲劇の地爛罐縫Ε后Ε札屮鶚瓩了蝶爾世辰拭砂時計の底に当たる大地は、急速減圧によって沸騰した形のまま凍りついた海に取り巻かれ、外壁を形作っていたハイテンションストリングスが、自己修復ガラスの残骸をわずかにまとわりつかせている。
そのストリングスに、びっしりと無数のワイヤーが巻き付けられていた。各所に巨大なテンキーを備えた起動装置が設備され、作業ポッドによる入力がいままさに終わろうとしていた。作業を終えた部下たちの機体が、ゆっくりと爛罐縫Ε后Ε札屮鶚瓩ら離れていく。
 
 〈放出粒子到達確認。フレアモーター、受動レベルまでカウントダウン、スタート〉
 「マティス、状況はどうか」
 
 仮面の男が姿を現したのは、部下からの報告とほぼ同時であった。
 
 「順調よ。滞りなくね。そちらはどう? 爛献Д優轡広瓩惑鵬できたみたいだけど――」
 
 マティスは形の整った顎に細い指をあて、ふむと短く思考した。当面の不安要素であった『いくつか』の爛献Д優轡広瓩稜鵬は全て完了した。マティスとしては、アムロ・レイやハルバートンの一人でも殺せてれば尚良かったのだが、あえて今それは言うまい。
 肩まで切りそろえられた自慢の黒髪を指先で弄りながら、彼女は続ける。
 
 「爛蹈乾広瓩鬟咼蕁璽秒に潰されたのは、誤算だったわね……。結局、その所為で何フェイズも早めねばならなくなったのだから」
 
 もともと計画では、爛蹈乾広瓩肋緤佞世洩任咾気擦襪世韻里呂困世辰燭里澄浄化の儀式と呼ぶべきか、爛蹈乾広瓩聾私が混同しすぎた。それを爛蹈乾広瓩遼楝里任△覽嫉AIが判断し、監視者の一人であるマティスが一時的に全てを預かり――。
 だが、その目的は費えた。ビラードと、ブルーノの手によって……。外と内の裏切り者。彼ら二人は、最初からそういう手はずだったのだろう。ビラードが爛蹈乾広瓩魴發繊▲屮襦璽里それを補佐し、あるいは弱った爛蹈乾広瓩魎袷瓦望辰卦遒襦帖帖
事実、ビラードはマティスすらも知りえない赤いモビルスーツを建造し、それを使い爛蹈乾広瓮瓮鵐弌爾留れ家と施設、そして太平洋中心の深海奥深くへと沈められていた爛蹈乾広疔楝里竜嫉AIを巨大な施設ごとこの世から消し去ったのだ。絶対安全だと思われていた場所を、あろう事か物理的に……。
辛うじて退避したバックアップメモリーを、ブルーノが消去することで、もはや爛蹈乾広瓩牢袷瓦忙爐鵑世噺世辰椴匹ぁだがマティスは、わずかな疑問も残していた。爛蹈乾広瓩陵弯佑燭舛蓮⇔匹ぁだが擬似AIの封印場所など、マティスですら知りえなかったことである。それを、一体どうやって……。
 だが、それもここまでだ。
 マティスは、もう一度爛蹈乾広瓩鮖困澆世修Δ箸靴討い拭
 そしてその為には、もう一度戦争を起こす必要があった。
 コーディネイターとナチュラルの対立は、面白いように上手くいってくれた。爛罐縫Ε后Ε札屮鶚瓩乏砲魴發噌めば、それだけで会戦には十分であったのだから。無論そこまでナチュラルの思想を変えていくのは大変な作業であったが、一度できたのだからまたできるという自信も持っていた。
 
 この戦争は、爛蹈乾広瓩砲茲辰動き起こされた。
 コーディネイターとナチュラルの対立? 人の可能性? 進化? 種の存続? それは幻想だ。
 全てが、人によって、意図的に起こされた歪み。
 結果として、コーディネイターが利用されただけでしかない。
 戦闘が起きれば、人が死ぬ。物が壊れる。人を殺すために武器が使われる。人を生かすために医療器具が必要だ。食料が、燃料が、機材が、人が、その全てに、金が動く。
 動いた金には、税金がかかる。それは国の収益となる。
 戦争によって、世界が潤うのだ。
 そしてその中からわずかな蜜を吸うだけで、十分に爛蹈乾広瓩禄瓩ぁ▲咼蕁璽匹蕕北任椶気譴襪泙任瞭麌看もの間栄華を極めてきた。
 世界の永久の平和と反映の為、科学の発展の為、罪も無い市民の為に、罪も無い市民を殺し、戦争を起こす、明らかな矛盾。
 それは、増えすぎた人類を間引くべきだと判断した爛蹈乾広瓩竜浸人格のもたらした最良の答え。
 人口を減らしながら、今を生きる人々を養える。戦争によって科学も発展する。良い事尽くめではないか。
 ふふ、だが、たった二百年。所詮はそんなものだ。擬似AIとはいえ、その一生は短かった。
 だから、もう一度作ろう。今度は何年持つかな? せめて百年は持って欲しいが、さて?
 ま、どうでも良いことだ。作るのはそう難しく無いのだから。
 その為に、我々のような監視者がいる。
 そこまで辿り着けなかったのがビラードの誤算。
 無理も無い。マティスですら複数いるうちの監視者の一人でしかないのだから。たまたま、監視する番が自分に回ってきた、それだけでしかないのだから。
 かつてはあのアルスター家もまた、監視者の一人であったそうだ。
 だが、己が監視者だと気づかないものも多数存在している。彼らは単純に、監視者として相応しくないから知らされてい無いだけだ。無論、その『相応しくない者』が何世代か続く事もある。アーガイル家、クライン家、アスハ家がそうであるように、いつか産まれ出る『相応しい者』にのみ、その役割が知らされるのだ。
 マティスは己の役割を全うしようとしていた。爛蹈乾広瓩虜栃圈復活を。
 だが、彼女には少しばかりの野心があり、野望がある。だからこそ『相応しい者』としてここにいるのだ。ただ爛蹈乾広瓩鮖困澆世垢世韻任鰐滅鬚ない。私だけの爛蹈乾広瓩砲靴茲Αもう他のものはいらない。私のためだけの、私による、私の爛蹈乾広瓠
 
 〈――粒子到達。フレアモーター作動……!〉
 
 観測担当者の興奮した声に、マティスはようやくかと呆れ顔を向けた。ストリングスに取り付けられた起動装置が次々と作動し、稼動ランプが灯っていく。それはまるで巨大なクリスマスツリーが点灯されていくようにも見え、この場に不釣合いな暖かい感動がマティスの胸を満たした。
だが、電飾がきらめく爛廛薀鵐鉢瓩了蝶爾蓮△修糧しさにもかかわらず、この瞬間、恐るべき力を帯びた凶器へと変じたのだ。
 太陽風は太陽フレアと呼ばれる現象によって引き起こされる。太陽黒点上空のコロナに蓄えられたエネルギーが、一気に放出される現象をフレアといい、その現象によって放出されたプラズマが太陽風の正体だ。太陽風内の荷電粒子は太陽の磁場をも運んでくる。
それに磁場に包まれた別の物体をさらせば、その物体を動かす力が生じる。磁石同士が引き合うようなものだ。フレアモーターとはつまり、太陽系全体を巨大なモーターに見立てた装置だった。
 まず、爛罐縫Ε后Ε札屮鶚瓩涼浪屡電所から発生させた電力によって、ストリングスに巻きつけたワイヤーに電流を流す。これが電磁コイルの役目を果たし、爛罐縫Ε后Ε札屮鶚瓩魘力な磁場で包み込む。その磁場が太陽風磁場と干渉しあい、この巨大な墓標を地球に向かって押し出すのだ。
その力はわずかではあるが、いったん軌道から離れた爛廛薀鵐鉢瓩了蝶爾禄杜呂飽かれ、優雅に宇宙空間を滑っていくはずだ――眼下に浮かぶ蒼い惑星に向かって。
 世界は、再び混沌へと導かれるだろう。
 コーディネイターとナチュラルの戦いは、焚き起こす事こそ簡単であったが、所詮は民族紛争に近いものだ。コーディネイターの未来は最初から無いようなもので、結局長続きしない。だから、今度のはもっと派手にやろうと決めた。
 既にいくつかの国は掌握してある。爛罐縫Ε后Ε札屮鶚瓩陵邁爾砲茲詒鏗欧和紳腓覆發里世蹐ΑD吐箸あらゆる地域を襲い、全てを押し流す。その混乱に乗じて、息のかかった小国がそうでない小国を侵略する手筈になっている。ちょっとした領土問題になるだろう。最初はそんなもので良い。そこから、少しずつ歪みが生じていく。
助けられたはずの命、奪われた命、それを尊いものだと考える心優しく気高く正義の心を持った者たちが、その国々を許さないだろう。やがて行き過ぎた正義が、何の罪も無いはずの、その国に住む市民を襲うだろう。そうならなくても、そうさせる。かつてジョージ・グレンを殺した少年のように。
そうして、その家族達を不憫に思う者が生まれ、いくつもの正義が生まれ、やがてそれは互いを侵略し合い、戦争が生まれる。
 世界中が巻き込まれるだろう。
 完全な宇宙戦争にしようか。それも、大規模な。
 いや、やはり地球で行い、多少なりとも首都国家に被害が出た方が金の周りが良くなるだろうか?
 そこまでは、難しいかもしれない。ならばやはり中東辺りがベストだろうか。
 次オーブを狙うのは難しいかもしれないから、今度はフィリピンや日本辺りが良いだろうか。
 ……今度はコロニーが落ちるかもしれない。
 そうすれば、コロニーの落ちた地域の復旧に、また機材、人、その食料、あらゆるものが必要になる。新たなコロニーも作らねばならない。同じことだ。
 たまらない。ワクワクする。人は更に次のステップに進めるのだ。
 
 〈爛罐縫Ε后Ε札屮鶚瓠移動を開始しました……!〉
 
 虚空に浮かぶ巨大な大地が、ゆっくりと、だがたしかに動き始める。
 これから始まる惨劇の大地に期待を膨らませサディスティックな笑みを浮かべるマティスの背に、ラウが小さく「下種な女め」とつぶやいたのを、彼女は気づきもしなかった。
 
 
 
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