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CCA-Seed_125氏_第22話

Last-modified: 2008-01-09 (水) 20:18:04

戦艦ミネルバの士官室

 

大尉待遇で迎えられているアムロに与えられた部屋は只今ちょっとした喧騒に包まれていた。

 

『ヤダヤダーー!!ツノツケテ赤クヌッテ…ブゲラッ(ブツン)!!!』
「まったく……」

 

ぴょんぴょん飛びながら五月蝿く喚き散らす赤いハロに堪えかねたのか、電源を切って黙らせたアムロは痛むコメカミを抑えつつ、今までほっぽったままだったメイリンに向き直る。

 

「すまない、メイリ…」

 

と彼女が腰掛けたベッドに目をやると、そこには必死に笑いをこらえようとしているのか枕に顔を押し付けて肩を震わせているメイリンの姿があった。

 

「プ、ククッ……プフフ」
「……メイリン?」

 

仏頂面でアムロが声を掛けるとメイリンは慌てて起き上がり「あ、ご、御免なさい」と取り繕おうとするが、それでも堪えきれずに吹き出してしまう。
目に涙すら浮かべているメイリンを複雑な顔で見るしかないアムロだったが、フウっと息を漏らして真向かいの椅子に座る。

 

「そんなに滑稽だったかい?」
「ち、違うんですよ、アムロさん」

 

ようやく落ち着いたのか涙を拭いながらメイリンが微笑みながら畏まる。

 

「なんがか…凄いギャップがあって……。アムロさん、普段は凛としてて凄く頼りがいがある感じなのにそのペットロボット…ハロですよね…相手だと感情剥き出しでドタバタするんだもの」

 

などと上目遣いで言われた日にはアムロとしてもグウの音も出ない。

 

「…僕は断ったんだけどね、コレを乗せるのは」

 

と苦々しげに言うアムロ。

 
 
 

ペットロボットが畏くも戦艦に乗っているのにはちょっとした訳があった。

 

今朝、補給を終えて後は出港を待つだけというミネルバにいきなりギルバート・デュランダル議長がラクス・クラインを伴って現れたのだ。
急な来訪に艦長以下主だったクルーは慌てて艦橋に降り立った。
まず、議長は連絡も無しに来たことを詫びた後、今後の作戦及び戦火に期待するといった訓示を述べた。
ラクスも「無事な帰還を願っております…etc]と言ったことを…主にアスランの顔を見ながら…言った後、どういう訳かアムロの前まで進み出て「はい☆」てな形で持っていた『赤いハロ』を差し出してきたのだ。

 
 

これにはアムロ以下その場の全員が?マークを頭上に浮かべるしかない。

 

その様子に苦笑した議長が説明するには…

 

「実は今度、このペットロボットを商品として売り出そうかという企画があってね。かねてより歌姫が愛用しているとあって商品化の希望が殺到していたんだよ。
それではイメージUPも兼ねて、第一線で活躍している戦艦に少しの期間乗せてもらって、内部のクルーとの交流の様子を記録してもらおうと思ったわけだ」

 

これはプラントにいる民衆が日頃の兵士を知るいい機会にもなるからね、などとさわやか〜な笑顔でのたまうデュランダル議長。
勿論、難色を示した者はいた………タリア・グラディス、アスラン・ザラ、アムロ・レイ…そしてルナマリア・ホークの四名である。

 

タリアとアスランは純粋に職務の弊害、及び艦内の風紀の低下を心配しての意見だったが「ほんの僅かな期間だし、もし問題が発生したら即座に機能を止めてくれて構わない。これも市民を元気付けるためだ」と言われると引き下がるしかない。

 

アムロは……説明は不要だろう。何が悲しくて自分にとっても愛着深い『ハロ』に寄生している(←失礼)元宿敵(?)を傍に置かなくてはいけないのか。
しかも、どうもキナ臭い感じがする(ラクスの後ろに控えて微笑むサングラスの秘書…サラの存在も手伝って)、疑いたくもなるというものだ。

 

ルナマリアに至ってはもっと単純だ……気に喰わない…どういうわけか気に喰わないのである。
自分でも説明は出来ないのだが、向こうの『赤いちんちくりん』も自分を敵として認識しているらしい…のっけから噛みつかれたりしたし……。
しかも『この赤いちんちくりん』は何故か自分の憧れているアムロさんに懐いているのだ(アムロが聞いたら断固否定するだろうが)。

 

しかし、一介のパイロットに過ぎない二人では大して意見も言える筈もなく、艦長が承諾したのなら引き下がるしかない。

 

「このコのこと、お任せしますわね。貴方に懐いているようですから☆」
「……………善処します」

 

かくして、『ニッコリ笑顔で差し出すラクスと、対称的になんとも嫌そ〜〜な顔で受け取るアムロ』といった構図と相成ったのである。

 
 
 

やれやれといった具合に事の顛末を思い出したアムロは「いい迷惑だよ」と電源が切れて今は大人しい物体を見つめる。

 

「でも、アムロさん…」
「ん?」

 

言おうかどうしようか逡巡した後、メイリンは微笑みながら言う。

 

「そのコの相手をしてるとき、普段より活き活きしてますよ」
「……そうかい?」
「あ〜、認めたくないって顔してる」

 

フフフフっと年齢相応に笑うメイリンを見ては否定する気も起きず、アムロも苦笑する。

 
 

「あ!いっけない、もうこんな時間!!もうすぐ交代の時間っ!!」

 

時計を見ればあれからかなりの時間が経っている。

 

「胸の痞えはとれたかい、メイリン」
「あ、はい!有り難うございました!!」
「いいさ、それじゃあ一緒に出ようか」

 

とアムロは立ち上がると、徐に備え付けの机の上にあるT字型の金属の様な物を手に取った。

 

「あの、アムロさんって戦闘の際はそれをいつも身に付けてるってシン達が不思議がっていましたけど………」
「ああ、御守り……いや、違うな。俺がいまこうして存在していることの証…みたいなものだよ」

 

そう言ったアムロの顔を、メイリンはこの先、忘れることはなかった……その、表情はなんとも儚げで…例えようのない孤独をほんの少し浮き彫りにした表情を。

 
 
 

アムロ達が退室してすこしの時間が流れた…沈黙が支配する部屋だったが、艦を揺らすほどの振動が起こった。

 

ズズ……ン

 

カチ、ブブン
何かの拍子か電源が入ったのか、ハロの瞳が明減した。

 

『ミトメタクナイモノダナッッ!!!!!!!』

 

起動して早々、意味不明なことを叫んだ赤いハロだったが周囲に誰もいないことに気付くと何やらぶつぶつ云いながら(?)、ベッドの上にテーンテーンと飛び乗った。

 

『・・・・・・・・・』

 

そして、壁の一点をじぃっと見つめる……穴が開きそうな程、その先にある光景が見えているかのように………

 
 
 

「ガンダム……」

 

アムロは紺碧の空の下、戦場を睥睨するかのごとく浮遊する青き4対の翼を持つ機体を見つめる。

 

連合、オーブの待ち伏せを受けたミネルバは迎撃を敢行。
シン、アスラン、そしてアムロに艦の護衛をさせ主砲のタンホイザーで一掃する作戦に出た。

 

何とか敵を艦に近づかせないことに成功し、射線軸を確保したタリアは主砲の発射を指示した……その時である、天空より一条のビームが降り注いだのは………

 
 

その頃、ミネルバのブリッジは騒然とした空気に包まれていた。

 

「アーサー!被害状況は!?」
「だ、大丈夫です!!主砲の所々に穴が空いた事による爆発のみで誘爆の危険性は無いそうです!!たった今、ダメージコントロール班を向かわせましたぁ!!!」
「負傷者は!?」
「今のところ重軽傷者のみです!!」

 

そこまで矢継ぎ早に指示を出してから「そう…」と、やっと一息つく余裕が出来た。
危なかった・・・その一語に尽きる。
もし、エネルギー充填中に直撃を受けていたら最悪誘爆に次ぐ誘爆で墜落、撃墜もありえた
そうならなかったのは…

 

「彼のお陰ね」

 

モニターの端に写る、海面を滑るように滑走しているザクを見つめる。

 

あの時、タンホイザーの発射を指示する直前に先行するアムロが声を送ってきた。
その声はブリッジにいる者全てを彼のザクが映るモニターに目を向けさせるほど緊迫したものだった。
そして一様にギョッとした。

 

今まさに彼の銃口が<ミネルバ>に向けられ、そこから光が迸ったのだ。

 

傍目からしたらアムロが自軍の戦艦に攻撃を行うようにしか見えなかったし、タリア自身も息を呑んだ。
しかし、彼が撃ったのは『ミネルバ』ではなく『ミネルバの主砲の僅か手前の空間』であったのだ。
そのことに気付いたのは横殴りの衝撃がミネルバ全体を襲ったあとであった。

 
 

「…………」

 

ギリギリだった。
モニターに映る母艦の様子を見ながら(主砲は黒煙を上げているが航行に支障はないようだ)吹き出た汗を拭う。
あの時、海面を滑りながらミネルバの援護をしていた時、背中に怖気が走った。
まるで冷たい氷柱が背骨を駆け抜けてゆく様な感触。
そして気が付いた時には(いや、無意識にといったほうが正しい)機体の上半身を捻って何もない空間にビームを放っていた。
その際、何か叫んだかもしれない。
今となっては偶然の産物としかいいようがない…『飛来したビームを辛うじて相殺したのは…』。

 

コンマ一秒、いや零コンマ一秒遅かっただけであのビームは主砲を貫いていただろう。
しかも、完全には相殺できなかったようで、ビームの粒子が幾つか穴を空けたようだ(こちらは出力を最大にして撃ったというのに)。

 

アムロは気付けなかったが、あの瞬間、膝に留めてあるT字型の物体が緑色に薄く発光したのだのである。
まるで意思を持つかの如く……

 
 

戦場は混乱の様相を呈してゆく……