Top > CCA-Seed_373 ◆lnWmmDoCR.氏_第31話
HTML convert time to 0.012 sec.


CCA-Seed_373 ◆lnWmmDoCR.氏_第31話

Last-modified: 2008-06-18 (水) 00:10:45

「うああああああっ」

 

 何度叫びにもならない叫びをあげただろう。それに呼応するようにデストロイはスキュラ、ツォーンを吐き出す。
しかし未だ向かってくるMSを落とすことはできないでいた。

 

「くそっ、くそっ、くそっ!何で落ちねえんだよ!この敵はよおっ!」

 

 スティングは怒りを露にし、それでもトリガーを引きまくった。
視界には血の色にも似た赤い翼をもったMSが見たこともないような速さで砲撃を避け、小賢しくビームライフルを放つ。
ビームに対し機体がダメージを食うことはないが陽電子リフレクターに弾かれるたびに目の前がまばゆく光るのがスティングの怒りを助長していた。

 

「なんなんだよ!お前はよおっっっ!」

 

 光が収まるとそのMSはさっきよりかなり近い位置まで接近している。シュツゥルムファウストとイーゲルシュテルンで対応することで接近を拒んだがもう幾度となく懐に入られようとしている上にだんだんと距離が詰まってきている。
その赤い翼をもったMS。デスティニーのパイロット、シン・アスカは驚くほどに冷静だった。

 

「…さっきより距離が詰められた…次は行けるかな…もう…こんなことは終わりにさせてやるからな…」

 

 シンの脳裏にはステラ・ルーシェの眩しいほどの笑顔と、泣き叫ぶ顔、そして安らかな(シンはそうは思ってはいないが)死に際の顔が浮かびあがり、そして消えて行った。

 
 

 代わりに浮かび上がるのは目の前にいる敵に対する憎しみや恨みではなく、乗っているだろうエクステンディッドに対する哀しみ、憂い。
おなじエクステンディッドだったステラは本当は戦いたくなどなかった。自分や周りの人が幸せに暮らすのをただ望んでいる娘だった。
そんなステラと目の前のデストロイのパイロットとをトレースさせることでシンの心にはそのような感情があふれ出してきた。

 

 それとともに呟いた言葉。目を見開くとシンの瞳は光の反射が消え失せ、頭の中が妙にすっきりとしている。相手の攻撃がスローに見え、機体のポテンシャルを存分に発揮できる感覚に捉われる。
攻撃の種類を見極め、避けるべき攻撃、シールド(ビーム、実体ともに)で防げる攻撃を冷静に考えてから対処する。考えてから起こした行動が十二分に間に合う。
 デストロイのツォーンとスキュラがチャージされる一瞬を突きシュツゥルムファウストをアロンダイトで切り落とし、離れ際に高エネルギービーム砲を放ち一旦距離をとる。
恨めしく睨むようなデストロイの眼光を受けながらデスティニーは翼を開き光の翼を展開させると、幾重にも残像を残しながらデストロイの懐目指して突っ込んできた。

 
 

 ちょうどその時だっただろうか、デストロイのコックピットに座っているスティング・オークレーには声が聞こえていた。

 

「なんだよ、まだあんな奴らの言う事聞いちゃってる訳?」

 

 なんだ?とスティングは一瞬のうちに思う。

 

「…スティング…もう…やめようよ…」

 

 生意気そうな声とぼーっとしている声。知らないはずなのに知っている声。
頭ではそいつらのことを思い出そうとしているが体はトリガーを引き続ける。

 

(なんなんだよ…お前らは…知らねえ奴が知ったふりしてんなよ!)

 

 そう心の中でしか思っていないのに声はそれに返事をよこす。

 

「なんだよ!スティング!僕のこと忘れちゃった訳!ひどくね!?」
「…スティング…わたしの…こと…」

 

(しらねえ、知らねえんだよ、お前らの事なんか…)
「お前らの事なんかよおおおお!!」

 

 スティングはもうどの兵装のトリガーだろうがお構いなしに引きまくっていた。しかしそれをも突破してデスティニーは迫ってくる。
目前まで迫ったデスティニー。スティングにはその動きが不思議とゆっくりと見えた。

 

(なんだ…あのMS…泣いてんのか?)

 

 トリガーを握る手から力を抜いた途端、アロンダイトがコックピットを無情にも貫いた。
薄れる意識の中スティングは光の中に聞こえていた声の主の姿を見る。そして思い出す。

 

(アウル…ステラ…)

 

 アウルが憎まれ口を叩く。

 

「負けちゃったな。スティング。」

 

 ふっ、と笑いスティングが答える。

 

「そう、だな。でも、もう…いいよな?」

 

 ステラがにこりと笑って答える。

 

「もう、いいよ。」

 

 くくっと素直にうれしそうにスティングは笑い、そしてアウルに話しかけた。

 
 
 

「おい、ボール、持ってるか?バスケットボール。久しぶりにやろうぜ?」
「へへっ、待ってました!んじゃ、行きますか。」

 

 ステラがうれしそうにスティングに話しかける。

 

「むこうはね、お花がすごいの。きれいな川も。あたたかくて、きもちいいの。」
「馬鹿。そりゃ三途の川ってやつだぞ。渡っちまったのかよ。」

 

 アウルとステラは聞かずに走って行ってしまう。そして振り返り、

 

「スティング〜、早く来ないと行っちゃうぜ!」

 

 と叫んだ。スティングは二人に向かって歩き始めがら、つぶやく。

 

(行かないわけねぇだろう。お前らは俺がいなきゃ何にもできないだろうが。それにお前らは俺の…)

 

 引き裂かれたデストロイのコックピットの中、スティングの体に魂と呼ぶ存在はもう既に残っていない。しかしその体は手を前に伸ばしながら口を動かした。

 

「へへっ…俺の…」

 

 その言葉の続きは爆炎とともにかき消される。しかし、スティング・オークレーは確かに言った。

 

 俺の家族、だからな…、と。