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CCA-Seed_373 ◆lnWmmDoCR.氏_第33話

Last-modified: 2008-06-24 (火) 18:56:20

 その日シンはミネルヴァ艦内でシュミレーターによるMSの戦闘訓練を行っていた。
シュミレーション上の敵機の撃墜音に交じり艦内放送が聞こえた気がしたシンはすぐさまシュミレータ―から飛び出したが、艦内放送はほとんど聞き逃してしまった。
近くにいた兵士に至急ブリーフィングルームへと来るように、と言っていた事を聞くとブリーフィングルームへと走る。
 その最中、ちょうど横の通路から出てきたレイとぶつかってしまう。相手がレイだと気付くと

 

 「レイ、大丈夫か?ごめん、俺急いでて…」

 

と気遣ったが

 

 「ああ、問題ない。俺も急いでて確認しなかったのも悪い。」

 

レイは相変わらず冷静な口調で答える。

 

 「レイが急ぐって珍しいな。」

 

シンがからかい半分に言うと

 

 「何を言っているシン。俺もお前も、一緒に呼ばれただろう。MSパイロットは全員だ。」

 

艦内放送を聞き逃した、とは少し言いづらかったのでそれ以上何も言わなかった。

 

ブリーフィングルームへと二人して入るとそこにはすでにアムロ、アスラン、ルナマリア、そしてデュランダルが座っているのに気付き背筋を伸ばして敬礼をする。

 

 「掛けたまえ。」

 

というデュランダルの言葉で敬礼を解き座席に座ると同時にデュランダルが口を開いた。

 
 

 「みんな、先日の戦闘ではご苦労だったね。君たちがいなければどうなっていたかわからんよ。昨日の会議ではミネルヴァの
 MSパイロット全員が叙勲の候補に挙がるほど誰もが君たちの働きを認めている。特にシン・アスカ。」

 

シンが

 

 「はい!」

 

と力強く返答するとその元気良さにアムロは少しだけ安心する。

 

 「君には今までの功績、特にフリーダムの件、ベルリンでの地球軍大型MSの件そして今回のヘブンズベース攻略戦の功績を踏まえて“FAITH”にしてはどうかと私は思うのだが、どう思うかね?」

 

この問いに全員が驚き、そしてルナマリアが

 

 「すごいじゃない!シン!あんたまでFAITHになるなんて。これでミネルヴァだけでFAITHが三人もそろうことになる  のね!」

 

と心底喜んでくれているようだった。

 

当のシンはと言うと神妙な面持で少し悩んでいる様子で、喜んでいるルナマリア以外の三人はシンの方を見ているだけ。
アムロは少し険しい位の表情で見ているがシンはそのことには全く気付いていなかった。そして意を決したように、

 

 「デュランダル議長。そのように自分を評価いただき大変光栄です。」

 

と答えた。
デュランダルは少し微笑むと

 

 「では。」

 

とシンが申し出を受け入れてくれたと喜ぶ。が、

 

 「大変申し訳ないのですが、FAITHへの任命はできればやめていただけたら、と思います。」

 

さして表情を変えないままデュランダルはその意図を知りたがった。

 

 「自分は、まだ実戦に出てからさして時間が経っていません。経験が圧倒的に不足しているんです。
  それなのにたまたまMSが人よりうまく扱える、と言うだけでFAITHとしての責任、名誉、期待などにうまく応える自信がありません。
  それに…これが一番の理由となるのですが、今ここでFAITHとして任命されると自分自身、ここが到達点だという風に考えてしまうかもって思ったんです。なんて言うか…ここで満足してしまうんじゃないかって…」

 

デュランダルはそれを聞くと声高に笑った。そして

 

 「君はまだ自分に不満があるようだね。いや悪いことではない。人間は今の自分に満足してしまったら、そこで成長は止まるものだ。
  そうなると立ち止まるしかなくなる。それからまた走り出せれば良いのだが、人は止まってしまい楽を覚えるとなかなかまた走りたがらないからね。」

 

ルナマリアが

 

 「なんでよ〜」

 

とシンに絡んでいる処にブリーフィングルームの艦内電話が鳴り響いた。

 
 

ルナマリアが素早く立ち上がりそのまま受話器を取ると
いくつか返事をした後、

 

 「議長、カーペンタリアから通信が入ってるとの事です。そのままお繋ぎしますか?お部屋へ回しますか?」

 

その場にいた全員がはっとする中、デュランダルは

 

 「ここで聞くよ。ありがとう。」

 

と即答すると受話器を取った。

 

通信先のカーペンタリアと言うとオーブに最も近いザフトの基地。そして議長への直接の通信、その事から
内容を予想することは難しくはない。そのことを踏まえ、デュランダルはこの場で聞く事を決めたのだった。

 

シンはと言うとそのことにはやはり気づいている様だったが表情はいつものように表には出ていなかった。
デュランダルは通信先に2度程 “それは確かな情報か?” と聞くことがあったがその他は割合聞き流すかの如く話し、
通信を切った。そして5人の方へと体を向けるとひとつ溜息を漏らし、

 

 「今の通信だが…皆も状況的に把握できたろう?ジブリール氏の行方の事だ。」

 

シンが落ち着いた声で聞き返す。

 

 「オーブ、ですか?」

 

その場の空気が一瞬凍りついたかのような静寂の後、

 

 「ああ、その通りだ。氏はオーブのセイラン宮に匿われているとの事だ。これは確かな情報でユウナ・ロマ・セイラン及びウナト・エマ・セイランとの接触の様子も確認が取れている。
  引き渡し要求をしようと思うが…正直我々が氏を探している事を知った上でのこの所業。正直に要求に応じるとは聊か思えん…」

 

シンはまたも落ち着いた様子で

 

 「オーブ本国と開戦する事になる、と?」

 

と聞き返す。オーブ出身であるシンがそのことを言った事で他のパイロットは何とも言えない表情になっている。

 

 「それもやむなし…かな。あくまで要求に応じなかった場合だ。そして悪い報告がもう一つある。」

 

またもデュランダルはため息を漏らし、

 

 「実は、昨日の未明の事だが…メンデル周辺を警戒中の部隊が何者かと交戦、戦闘不能に陥る、という事態が起きた。」

 

5人が一様に驚きの声を上げるとデュランダルは続きを話す。

 

 「これは未だ確かな情報か確認が取れていないのだが…その何者か、というのがどうも“エターナル”らしいんだよ。」

 

この“エターナル”という言葉にアスランが椅子から立ち上がりながら反応し、アムロは隣に座っていたルナマリアに、

 

 「エターナルって言うと確か3年前の…」

 

と確認すると、

 

 「ええ。3年前のヤキン・ドゥーエ戦役の終盤にプラントから強奪、その後、歌姫の騎士団の旗艦として“活躍”した宇宙戦闘艦です。戦役後のどさくさで行方不明のまま処理されちゃいましたけど…」

 

と、“活躍”という言葉を強調することで皮肉とする。

 

 「しかも、だ。エターナルから発進したMSはZGMF−X88Sガイア、それにフリーダムとよく似た機体、だと言う。どこからそんなものを調達したのか…」

 

半ば放心気味にアスランが

 

 「フリーダム…キラ…?」

 

とつぶやく。

 

 「本当にその者たちが“エターナル”でそれに乗っているのがあの『ラクス・クライン』なら、オーブとザフトの間に介入するつもりかもしれん。
  まったく厄介な者達だな…ジブリールにしろラクス・クラインにしろ…しかもそれが同じ陣営に立とうとしている等考えたくもないんだが…私は立場上常に最悪を予想しなくてはならないしね。」

 

それに対し、

 

 「逆に言うと厄介者が一同に会す、という事です。うまく立ち回れば二つとも片が付く。」

 

とシンが言う。デュランダルは深く頷き

 

 「それも全てオーブへの引き渡し要求の結果次第だ。では、私は失礼するよ。」

 

と言い、デュランダルはブリーフィングルームを出て行った。

 
 

その後5人は各々が無言のまま椅子に座っていたが、アスランがふらりと立ち上がると部屋から出ていく。
それを見てシンが続いて出て行き、追いかけるようにアムロが立った。
艦内の廊下を歩くシンに後ろから声がかかる。

 

 「アムロ隊長?どうしたんです?」

 

シンはさっきの態度の事を聞かれる事が分かっていながら、あえてとぼけたふりをする。

 

 「…シン…この間はすまなかった…」

 

シンは一瞬あっけにとられ、何のことかを不思議に思う。

 

 「この間、食堂で言っただろう、ジブリールがオーブに向かうとしてもその前に見つかるはずだ、と。」

 

 「ああ、そのことですか…あれは隊長が俺を元気付けるために言ったことでしょう?それに奴がオーブにいるのは
  あなたのせいじゃありませんよ。」

 

 「しかしだな…」

 

(この人…本気で俺を心配してくれてるんだな…)

 

そう思ったシンは自分の心の内をこの人にだけは話しておかなくちゃいけない、と思った。

 

 「大丈夫ですよ。この間、隊長に気にするな、とは言われたんですがやっぱり考えずにはいられなかったんです。
  オーブが一番可能性高いよなって。」

 

シンは決意めいた眼でアムロを見ながら話を続ける。

 

 「俺、今だから言えますけどオーブにいたころはオーブって国がほんと好きだったんです。
  ナチュラルだから、コーディネーターだからって何もないし、一生戦争とは無関係でいられるんだって、そう思ってました。家族が仲良く暮らして、学校に行って友達と遊んで…そうやって平和に生きてくんだろうなって。」

 

シンの脳裏にはオーブで暮らしていた頃がフラッシュバックする。父や母、そして妹の笑顔、家族に囲まれた幸せな時間。

 

 「でも…3年前、地球軍にオーブが攻められて…それでも地球軍に屈しない態度はすごいと思いました…でも…それが俺の家族を殺し…国を焼き…オーブを変えてしまった。
  今のオーブはその国名だけが存在を続け、中身はまったく別な国です!それを撃つのに…俺は躊躇いはしません。  いや、俺が撃たなきゃいけないんです。あの時のオーブの生き残りとして、あの頃のオーブが好きだった者として。
  その理念に殉じた沢山の人の想いを思い出させるために!…そう考えたら、ちょっと気持ちが楽になりました。
  さっきの態度も無理をしていたわけでもなく、そういう考えからなんですよね…。」

 

アムロは初めてシンの本心を聞いた気がした。そしてそれが”オーブを撃つ”理由を無理にこじつけた訳で無いことも感じ取ることが出来た。

 

そしてアムロはかつてカミーユ・ビダンに言った言葉を思い出す。

 

 “戦いの中で助ける方法もあるはずだ”

 

と。それが人であろうと国であろうとその考えには変わりはない。シンの言葉はその時の自分の言葉とよく似ている。
滅ぼすため討つのではない。生かすために撃つのだ。

 

 「シン…それがお前の本心ならもう俺は何も言わない。しかし忘れるな。お前の周りには仲間がいる。決して一人ではない。
  一人で何もかも背負い込む必要はないんだ。」

 

そう言うとシンは穏やか笑い

 

 「はい!ありがとうございます!」

 

と言い、振り返り歩き始めた。その足取りには迷いは見られなかった。

 
 

翌日、ミネルヴァはオーブ領海近くを航行していた。
三時間ほど前になるがデュランダルがオーブ政府に対し、セイラン親子とジブリールが接触している証拠となる画像と共に引き渡し要求を突きつけた。
が、いまだオーブ政府から返答は行われてはいない。返答の期限まであと二時間程。その時間をこのまま迎えると言う事はすなわち開戦を意味する。

 

ミネルヴァデッキ内はあわただしく人が走り回っていた。その中にアスラン・ザラはいた。
かつてアレックス・ディノとしてオーブに居住していた彼は、今自分が置かれている状況に正直戸惑いを感じているが、しかしザフト軍人として、いや、一個人として今回の問題は許すべきではないと考えている。
そして同時に “カガリが残っていたらこんな事にはならなかったかも”という思いがあった。
そしてそのカガリを拉致したアークエンジェルと親友だったキラ。

 

 (あいつを三度討たなくてはならないのか…)

 

 かつて友は自分の仲間を殺し、自分は友の仲間を討った。それは一度は許しあった罪。
しかし友は戦場に舞い戻ると仲間を次々といたぶった。多くの死傷者が出た。友は直接手を下してはいない。それを免罪符にするように。

 

「キラ…お前がまだそんなふざけた手段で自らの罪に言い訳をするというのなら…俺は迷う事無く!三度お前を討つ!」

 

オーブにキラが来る事を半ば確信しつつ、アスランはレジェンドのコックピット内で覚悟を決めた。

 
 

そして回答期限まで残り30分となった時、オーブ政府から全周波にて通信が入った。
そこに映し出されたユウナ・ロマ・セイラン。彼はへらへらとした表情でしかしながらはっきりと

 

 「オーブ政府を代表して要求に対し回答する。貴官等が引き渡しを要求しているロード・ジブリールなる人物は我が国内には存在しない。
  それにも関らずこのような武力による恫喝には大変遺憾に思う。よって直ちに軍を退かれる事を要求する。」

 

すでに戦闘準備を終えているミネルヴァはじめ、ザフト軍。
その通信をνガンダムのコックピット内で待機しつつ聞いていたアムロはその通信に呆れながら

 

 「本物の馬鹿だ…」

 

と、つぶやく。

 

アムロと同じように自機のコックピットにて通信を聞いていたシン、アスラン。
両名とも開戦するなら要求に対し何の回答もしないだろう、と思っていた。
この通信はオーブを撃つ事に覚悟を決めていた彼らの逆鱗に大いに触れた。
ミネルヴァのブリッジに居たデュランダルは表情を変えぬまま、

 

 「攻撃開始。」

 

とだけ指示を出した。タリアの号令でブリッジが遮蔽し、ミネルヴァが戦闘態勢に入ると共にMS部隊が発進し始めた。
先にセイバーとνガンダム、そしてレジェンドが発進しデスティニーが射出される。

 
 

デッキから射出された瞬間、シンは一瞬目を細めた。

 

皮肉にも空は蒼く眩しく輝いていた。

 
 

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