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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_外伝09

Last-modified: 2010-07-07 (水) 23:30:45

ここまで事態が変化することは想定外だった。こんな事になるならば、弁務官を他の人物に任せ、アズラエル理事のルートからユーラシアとのパイプを強固なものとすればよかった。
自分の見通しの甘さに腹が立つ。まさか、ユーラシアが連合を離脱するタイミングを、オーブ攻略にかぶせるとはね。まんまとやられてしまった。
自分がどうしようもなく小さい存在であったと思わされる。経験豊富な各国の政治力に敗北した。ロンド・ベル相手に交渉事をした気分になっていた自分が恥ずかしい。
この悔しさを絶対に忘れることはないだろう。

 
 

失いし世界を持つものたち外伝・9
「ユウナの野望―天翔記―」

 
 

そして湧き起こるのはウズミ・ナラ・アスハへの怒りである。理想主義に酔いしれ国家を破綻させることなど、中世の君主国でもそうはないだろう。
ともかく、このどさくさでオーブが埋没してはかなわない。

 

オーブを脱出した後に、僕はカガリを励ましつつ、ヘリオポリス改めロンデニオンにおいて今後の方針を検討してきた。余談ではあるが、その姿勢を見てクサナギ艦長のソガ2佐は、僕への姿勢を大いに変化させてきた。
僕にしてみれば、相応の権力欲と大志、加えて若干の英雄願望を満たすために行動しているのに過ぎない。
全く予想外の事であったが、今後は軍部に対してもう少し影響力を行使出来るので嬉しい誤算である。

 

ともあれ、僕はブライト司令がプラントより帰還した後に、件の技術提供と亡命政府として承認してもらうことを迫ろうとしていた。まずはそこからである。
前者の交渉が相当に難航するであろう事は予測が付く。後者に関していえば、早急に自分たちの立場を明確にしなければならない。そうして初めて今後の行動も進められるというものだ。
今や立場は完全に逆転しているのだ。たかが戦艦一隻と性能的に劣っているMSが10機ではどうにもならない。

 

パパが処断されずに解任されただけというところをみると、先のサハクによるクーデターが前代表の意向によるものであるという事は推測出来る。
おそらくサハク家は、ほとぼりが冷めたところでホムラ・ナラ・アスハに、政権を委ねて背後から影響力を行使しようという算段であろう。
現在の首長でまともに政権運営が可能なのは、パパ以外にはサハク一族くらいである。さすがに僕もこの状況で並み居る勢力相手にひとりで国の舵取りが出来るとは思っていない。
ブレーンは不足しているし、支持基盤も弱い自覚もある。パパの地盤を継承出来ているわけでもないのだ。

 

カガリといえば、当初こそクーデターに激昂していたが、キサカや僕の言葉に徐々に現実を受け入れている。
良い傾向だ。
彼女は自身の情熱や行動力を知性と結びつけてくれれば、それなりにまともになるだろう。
そうなれば僕にとって強力なカードになる。
あまり賢くなられても困るが、後ろ盾のない僕にはアスハの影響力は不可欠だ。
自分の地盤を確保するまでは彼女を徹底的に利用させてもらう。

 

ところが僕が利用している情報屋から、思いもよらないネタが入ったので、ブライト司令の帰還を待たずにオーブ保有の施設であるアメノミハシラへと向かうことを決意した。

 

※※※

 

アメノミハシラは、我がオーブがマスドライバーに頼らずに物資及び人員を輸送するために建造した軌道エレベーターである。
しかしながら戦争の勃発やヘリオポリス再建の予算が優先されたために、未だ完成にはほど遠い状況だ。
けれども宇宙側からの作業と防衛力確保のために各種工場施設や軍事力が配備されており、現状は我が国保有の宇宙要塞といったところである。
連合への降伏後は、軍事行動の禁止措置等いくつかの制約がなされているが、連合側の混乱で事実上の放置状態である。
僕に言わせれば、ロンド・ベルにはここをあてがえばよかったのだ。
そうすれば取り込むことも出来ただろうに。
もっとも、こうも事態が推移するところまではさすがに予見出来なかったのだろう。

 

僕は、ソキウスと呼ばれる連合からの提供された兵士の案内で目的の部屋へと向かう。噂には聞いていたが、
ブルーコスモスも随分となりふり構っていなかったようだ。
僕は彼らのあまりにも無機質な印象に内心で肩をすくめる。ドアが開くと、酒の臭いが鼻につく。
薄暗い部屋には、生気の失せた女性がうなだれていた。

 

「やれやれ、情報を知ったときは信じられなかったよ」

 

僕は努めて軟派に話しかける。ある種の挑発と言っても良い。生気が感じられないままに、彼女は僕のことも見ずに口を開く。

 

「・・・ユウナの坊やか?」
「ええ、貴女の大嫌いな、セイラン家の馬鹿息子ですよ。ロンド・ミナ」

 

こりゃ重傷だな。ロンド・ミナは長いストレートを無造作に乱している。これではまるで行為の後のようだ。
異なることと言えば、行為の後に見られる高揚感など微塵もなく、憔悴していると言ってもいい風貌である。
少なくとも女性が、もちろん男性もというべきか、親しい相手にすらあまり見せて良い姿ではない。
最も、僕は憔悴した彼女の乱れた髪を見て、やはり女性はロングのストレートだなと、若干場違いな感情を抱いていた。

 

「何の用だ?」
「この状況下でそんな問いを発する辺り、よほど貴女は駄目になっていると見える」

 

繰り返す挑発にも彼女は反応しない。こりゃまだカガリの方がマシだな。僕は半ば彼女を自分の計画から外そうかと考えようとしたところ、独り言のように語り出した。

 

「・・・半身を失ってしまった。私はどうすればいい?」
「これはまた、僕にそれを聞くとは本当に抜け殻になっているようですね。
 すべきことはひとつ、オーブの再独立、まずはこれしかないでしょ?」
「・・・」

 

あまりにも自明なことにも気付かなかった自分を恥じているのか、彼女はグラスのワインを一気に飲み干す。
そして空のグラスに再び赤い液体を注ぐと、僕に目をやる。続きを促しているのだろうか。

 

「予想外の事は起きるもの、確かにそうだ。だがこれほどつまらないことで自らの目標が破綻するとは
 思わなかったよ。しかも説教までされてしまった。この私がだぞ?・・・もうどうでもいい」

 

そう、彼女は双子の弟を失ったのだ。それも、自らの判断ミスと油断によってである。
さらにいえば、どこの馬の骨ともわからぬジャンク屋によって殺されたそうだ。
身内の喪失は耐え難いものであろう。しかし、だ。僕ははっきりと怒りを覚える。ある意味では前首長に対する以上の怒りである。

 

「いい加減にして欲しいものだな」
「何?」
「君ら兄妹はコーディネーターだったんでしょ?その能力を駆使して、少しはものを考えたらどうですか。
 僕も情報網がないわけではない。
 君ら兄妹が荒唐無稽で馬鹿馬鹿しい目標を掲げていたことくらいは知っていますよ」

 

今時プラトンの理想国家みたいな体制を思考していたなど、最初知った際には失笑したものだ。

 

「・・・」

全く、ブルーコスモスじゃなくても、コーディネーターに対して呆れた感情がわき上がる。普段プライドが高いだけに、こうも脆いとはな。色々と思うところがわき上がり、僕ははっきりと声を荒げた。

 

「失ったものを嘆く前に、僕たちにはすべきことがあるだろう!!!
 王族のくせに果たすべき責任を果たさないつもりか!!今はそういう状況ではない!!
 国家は君のおもちゃではないぞ!!」

 

そうだ。このまま終わらせてたまるか。オーブを再び有力国家へと羽ばたかせなければならない。そうでなければ権力を持つ意味がない。全くアスハにしても、この双子にしてもあえて理想国家を目指す必要がどこにある。
国家は玩具ではない、システムなのだ。そのシステムの中で得られるモノを得れば良いではないか。どいつもこいつも分不相応に求めすぎるのだ。
どうしてうちの王族はそろいも揃って理想国家を求めるのだろう。おまえらはプラトンとかトマス・モア、ルソーにでもなったつもりか。
彼女は僕が声を荒げたことに多少驚きを覚えながらも、しばらく無言だった。しかし、しばらくすると普段の冷笑的な笑みを浮かべる。
普段と異なる点といえば、冷笑の対象が自分自身に対して向けられたものだったことだろう。

 

「・・・貴様に諭されるとはな。だが、不思議と不快はないな。私も失ってから気付くか」

 

彼女に生気が戻り始める。人間が立ち直る姿を見ることを生で見る機会などそうはないだろうな。だが、素直に思う。魅力的だ。
彼女は乱れた髪を手で振り払って立ち上がる。

 

「いいだろう、私も思うところはある。再び自らの意志で動いてみよう。まずは国家再建だな。
 少し待っていて欲しい、身なりを整えたい」
「僕は構いませんよ、魅力的です」

 

僕は素直に言う事にした。彼女の方はまたしても意外そうな顔をした。すると多少調子が戻ったのか、冷笑的な笑みを浮かべて言う。

 

「フン、ではこの場で抱いてみるか?」
「髪の長い女性は好きですが、もう少し健康的な体に戻ってから、ですね。
 それに自棄になって処女を捨てる事もないでしょう。
 あくまで個人的な重いですが、もっと女性は情熱的に抱きたい」

 

彼女は遣り込められたことに悔しさを覚えたのか、顔を赤くすると後ろを向いて上着を脱ぎ始めた。せめてもの反撃かな。以外に可愛い人だ。
ともあれここにいることもどうかと思い、僕は会議室で待つ旨を伝えて部屋を出る。ああいう女性は、弱っているときに落としてもおもしろみがない。彼女にも立ち直ってもらわないと困る。
僕ひとりで全ては出来ないのだ。もっとも、今回は彼女が弱っていたからうまく進んだ面は否めない。今後も彼女には油断は出来ないだろう。

 

30分後、身なりを整え本来の覇気を半分程度取り戻した彼女は、いつもの口調で今後の方針を問うてきた。

 
 

「それで、具体的にどうする?」
「まずは国内問題だね。一連の情勢でオーブも不安定な状況だ。
 国民にしてみれば、気が付いたら戦争に巻き込まれていたという感覚で不満も多い。
 しかも情報が錯綜していて、クーデター政権のサハクに責任を求める声も大きい。
 機動兵器開発の件が今次動乱の遠因だってね。まぁ間違ってはいないけど、この際それを利用しよう。
 現在政府中枢にいるコトー・サハク暫定首長と、同世代のホムラ・ナラ・アスハ、 
 場合によってはパパにも隠居してもらう。
 要は前首長と共に一連の問題を全てあの世代の責任に負わせようと思う。
 そのうえで僕ら若手の世代が、カガリを担いで政権を奪取する。
 うちの民衆はアスハが好きだから、カガリを代表にすれば収まるさ。
 そしてそれを支えるのは、使命感と国を守ろうという情熱に溢れた若い首長たちだ。
 うまくマスコミを使えば容易に支持が集まる。カガリを御輿に乗せて、実権は僕らが握ればいい」

 

彼女の目が鋭くなる。まぁそうだろう。本国の官僚は今回の件でほとんどがセイランよりになりつつある。ところが軍部はアスハとサハクで割れている。軍部を押さえていることは大きいが、実際の行政を押さえられては何かと動きにくいだろう。
またこれまでたいしたことないと軽んじていた相手が政治的に無視出来なくなるのだ。面白いわけがない。それに僕がその見通しを全て話していないことにも気付いているだろう。

 

「しかし連合がそれを認めるのか?」
「そこで情勢を利用しようと思う。EEFをこの問題に引きずり込む」
「どうやってだ?」
「それほど手の込んだことをしなくても良いさ。例えば日本へ書簡を送る。
 僕らは日本から分かれた国家だからね。
 政府には表だって連絡出来ないが、王室間の交流というものがある。
 手紙を送られたら無視はできないでしょ?」

 

予想もしない相手に働きかけることに、彼女は意外そうな顔をする。

 

「しかし、あの方は政治介入が出来ないし、する気もないだろう」
「だが、あの方はまともだから、無視は出来ない。書簡が届いたらリアクションはするだろう。
 そして朝河首相に通知はする。
 そうすればしめたもので、オーブと連合の状況に対して、対応をしなければならない。 
 そこからは交渉事さ、場合によっては僕が東京に向かっても良い」
「ふむ・・・」
「僕たちはなりふり構っていられないよ?君がシャワーを浴びていた時に連絡があったけど、
 EEFとロンド・ベル、国家としてはロンデニオン共和国として独立した彼らとの間に
 条約が締結される事が決まったようだ。このままでは、ますます一連の混乱で埋没しかねない」

 

多少は拙速でも動かなければならない。そのことは彼女も理解しているだろう。右手をあごに当ててしばらく考えると、僕の方針に対して一応の了解をした。

 

「いいだろう、それで私は何をすればいい?」
「当面は軍事力の確保と増強だね。なんといっても本国と違い、ここには無傷の戦力がある。
 いくら情勢を利用しても、実際に動き始めるまで数ヶ月はかかるだろう。その間に戦力を増強して欲しい。
 手段は任せます。
 僕はロンデニオンに戻り亡命政府を正式に樹立する。そしてカガリの啓蒙をしながら、各国に働きかける。
 当面は日本とロンデニオンだ」

 

そうだ、なりふり構っていられない。このままではオーブは本当に地上から消滅しかねない。
ナポレオン戦争のどさくさで多くの国家が消滅したことを思えば、危機感を持たなければならない。
何より僕自身の大志のために。ロンド・ミナと強い視線を交わした上で、僕は再びロンデニオンへと向かうシャトルに乗り込んだ。

 
 

※※※

 
 

私は今、宮中の一室に通されている。EEFに参加してからというもの、緊急に防衛計画を再編する必要があり、シベリア及び北海道地区と統一朝鮮との協議に多くの時間を費やしている。
そんな中で、宮内庁から公式には表敬と言う事で極秘裏に参内するようにとの連絡を受けたとき、私の驚きは少なくなかった。

 

何事だろうか。陛下の意向で政治家が参内することなど、今上陛下が即位されてからは初めての事だろう。
ここ百年は無かったのではないだろうか。
到着してしばらく侍従に案内されたソファーに座っていると、扉が開き陛下が宮内庁長官と共にいらっしゃった。

 
 

「総理、忙しいところすまなく思う」

 

私は立ち上がり何も言わずに頭を下げる。陛下は楽にするようにと言うと、ゆっくりと窓の側へ向かった。
私は直立したまま、体の向きを変える。
それほどの間はなかったはずだが、独特の緊張感が私に数十分にも及ぶような感覚を覚えさせる。
組閣の時もそうだが、やはりここは独特の場だと思う。いや、場ではない。その存在なのだろう。
国内にいる全ての人間にとって、政治的に左派であろうと、右派であろうと、その存在を無視することは出来ない。やはりこの国にとって、この存在は特別なのだ。
そういったことを考えながら、私は陛下のお言葉を待つ。陛下は如何に切り出そうか悩んでいるようにも見える。即位されて7年、まだ若さに溢れており、ここ数代においてもとりわけ信望が高い。

 

知的好奇心の強さから様々な行動をなされ、物事に対する洞察力はするどいからだ。もっともその頭の回転の良さからか、皇太子時代は多少毒舌のきらいがあり、物議を醸した。
これは留学先である、イギリスの影響であるようだ。その同年代で深い友情で結ばれてもいる現連合王国国王エドワード13世とも舌鋒鋭くベイリオル・カレッジのパブで大げんかしたことからも伺える。
そういった点も人気な点であるが。即位後は特にこういった場で発言を慎重にされているようだ。言葉を探しているのは、それゆえだろう。窓から国会議事堂をしばらく眺めた後、ようやく口を開かれる。

 

「あなたは多忙の身です。あまり時間を取らせてもいけないでしょう。
 先ほど、オーブ連合首長国の王族から私信が届きました。
 私的なルートを使ったにも関わらず、多分に政治的な内容であるので、首相に一任します」

 

宮内庁長官から、手紙を受け取る。私はそれを読むと眉毛がつり上がることを自覚した。

 

「これは・・・」

 

手紙にはオーブにて政変を起こすので、陛下を介して、非公式にEEFに対して支援を求める書簡であった。オーブは憲法上の天皇の立場について知らないわけではないはずだ。あまりにも無茶な内容である。我々が取り合うと思ったのか。

 

「非公式な場とは言え、私があまり踏み込んだ発言をするべきではないが、
 かの国の情勢を鑑みれば、詮無きことでしょう。動乱期の政治とはそういうものです。
 私に怒りは特にない、ようにする。総理にもよしなに」
「はっ」

 

陛下の言い様に口元は少し緩むものの、オーブ連合首長国め、よりにもよって陛下を利用するとは、内心の怒りを抑え状況を整理する。努めて冷静に考えてみれば、連中の目的に察しが付く。連中は抗議の場を設けることで我々を交渉の場に引きずり込む気だろう。
黙殺しても大事にはならないが、連中に乗せられて全くこちらにメリットがない、とも言い切れない。連中を助けてやる義理はない。けれども、仮にオーブで政変があれば、安全保障上の脅威が軽減する事は間違いないのだ。
現状の我々は、地球連合構成国である東アジア共和国と大西洋連邦に挟まれているのである。数日前にカオシュンが連合軍のオーブ占領軍と東アジア軍主力の部隊で陥落してしまったので、赤道連合との連絡が圧迫され、半包囲状態といっても良い。

 

ところが問題は複雑で、現東アジア共和国の首脳は2人とも現実主義者の上に穏健派のため、日韓の離脱という事態に対してきわめて冷静に対応しているのだ。
つまり、東アジアは連合内部にあって拡大ユーラシアに対して介入することに消極的なのである。なぜならば、いざ連合とEEFが全面衝突という事態になると、隣接する東アジア共和国が主戦場となるため自国の国力低下を招くと考えているのだ。
加えて言えば、全面衝突で生じるであろう、国内に残留している日本人や朝鮮人と漢民族との深刻な事態と言う事も避けたいのである。我が国と統一朝鮮が離脱出来た事情もこの辺にひとつの要因がある。
よって、現首脳が留まっている間は、無茶な行動には出ないだろう。しかし、オーブ占領軍は大西洋連邦で、カオシュン占領軍は大西洋連邦と東アジア共同軍である。我が国は太平洋側からの軍事的圧迫を受ける形となる。

 

そこで、オーブの政変が重要になってくる。成功しようが失敗しようが太平洋に展開する連邦軍戦力を大幅に減らすことが出来る。
最悪でも、カオシュン―マリアナ―ハワイのシーレーンを弱め、日本侵攻という選択をさせる余裕をなくすことが出来る。
それに現状の連邦はEEFよりもプラントだろう。情報省からの報告では、軍部がかなり強硬なブルーコスモスに染められているそうだからな。

 

オーブもあざといことをしてきたものだ。手紙には政変成功の暁にはEEFの参加を申し出ている。そして、EEF参加と引き替えに軍事的な支援を要請しているのだ。
これはつまるところEEFによる軍事支援ではなく、軍事同盟先であるロンデニオン共和国を巻き込みたいのだ。
いずれにせよ官邸に戻り次第、関係閣僚と協議して我が国としての方針を決めた上で、EEFとしての方針をランズダウン侯爵と連絡を取り協議していこう。
我々は再び第2次世界大戦の轍は踏むわけにはいかないのだ。万事を慎重に且つ、優位に動いていかねばならない。考え込む私に、陛下は外を眺められながら、独り言のように話される。

 

「不謹慎な言い様であるけれども、今度の戦乱において、我が国土に戦火がまだない事が不幸中の幸いです。

 エネルギー問題は深刻であるけれどもね。
 それでも、ここ一ヶ月において、あなたと川崎はよくやってくれていると思う。
 北海道が再び我が国に戻すために骨を折ってくれたのだからね。 
 いや、この場合は国:ネイションというよりは、領域:リージョンと言うべきだろうか。
 あなたはランズダウンとうまくやってくれた。そして川崎には辛い役割をさせていると思う」

 

本当はもっと語られたいのであろう。生来議論が好きな御方なのだ。私は直接的には答えなかった。

 

「冷静に且つ適切に行動して参ります」

 

一礼する。あまり長居をしても周囲に勘ぐられてしまう。陛下は、窓を眺めつつ口を開く。
やはり直接的な言い様ではなかった。

 

「早く戦が終わり、エドワード王と競馬にいきたいものです」

 

窓の外の天気はロンドン同様に灰色であった。私には、その天候がまるで今後の我々の進むべき道を照らす光を隠しているようにも思えた。

 
 

 ――「ユウナの野望―天翔記―」end.――