Top > CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_外伝13-2
HTML convert time to 0.006 sec.


CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_外伝13-2

Last-modified: 2011-11-05 (土) 16:10:57
 
 

失いし世界を持つものたち外伝13
「小さな防衛戦」(後編)

 
 

彼がしばらく歩いて行くと、ついにメアリー曹長が現れた。
どうやら市庁舎前の噴水で待ち合わせていたようだ。くそっ私服かわいいな。

 

「すみません、お待たせしてしまいました」
「いいのよ、今きたところだし。ニコル君が向こうから歩いてくるのを見るのもかわいくて楽しかったわ」

 

その笑顔を見て俺の後ろから、壁を殴る音や頭を打ち付ける音が聞こえる。
マイクをつぶす音もちらほらと漏れてくる。
続くふたりの甘い会話(主観)に、いかなる処刑がいいか考えていると、
会員0001であるジャック・ベアード少佐がもうひとつの警戒対象の動きを伝えてきた。
普段ならば襲撃対象の少佐であるが、今回は共通の目的のため、
またファンクラブ幹部として協力関係にある。

 

「天馬が女神を連れてそちらに向かっている」
「らーじゃ。各位警戒しつつ散開、変な行動をしていると思われるなよ」
「「らーじゃ」」
今作戦における、最大危険要素であるコードネーム天馬こと、ブライトキャプテンが噂の女性と歩いてきた。

 

「ブライト司令、母さん」
「ああ、ニコル君」
「あらニコル」

 

ブライトキャプテン・・・。やはりエマリーさんで不倫の味を覚えていたのか。
いや、あの件の後だしキャプテンに限ってそんなことも・・・。

 

「母さん、今日は買い物だったんじゃないですか」

 

ここ1ヶ月というもの、地球、月、コロニー群からの輸送路が安定し始め、
いろいろと物資がロンデニオンにもそろい始めている。
妙な嗜好品も紛れているのは、13のひとつ裏物資取引の会が暗躍しているためだ。
実は、補給参謀のトムスン少佐も優先的に酒を回すことを条件に取り込まれていたりする。
酒以外はきわめてまっとうな人なのになぁ。
などと思いながら、目の前の会話に聞き耳を立てる。

 

「ええ、でも先ほどアムロさんとブライト司令に偶然お会いして、食事をすることになったの。
 そうしたらアムロさんが急に用事を思い出したとかで、港に向かってしまったのだけれど、
 せっかくだからって、ふたりで食べてきたの」
「そうだったんだ」
「ふふ、いろいろと気分転換になったわ」
ロミナ夫人は、少女のような笑みを見せる。くそ、かわいいな。

 

「ニコル、君たちはデートか?」
「し、司令まで!」
「あら、あたしは間違えられてもかまわないわよ、ニコル君」

 

よし、殺そうか。そうした声が背後から弾倉に弾が装填される音とともにが聞こえる。
まて、キャプテンの前ではさすがにまずい。

 

「あら、じゃあふたりはどういう用事なのかしら?」

母親が、女親らしい好奇心で尋ねる。

「あんまり困らせてもダメね。実は、あたしに花を選んでもらいたいというので・・・」

 

あたしの花・・・だと・・・。俺の豊富な知識によれば、花とは隠語のはずだ。
つまり自分の体を選ばせると言うことか。もはや怒りで会話が聞こえてこない。諸君、確定だな。

 

「・・・そういうことか、ならば拘束しては申し訳ないな。今度夕食でも食べよう」
「ありがとうございます」

 

ブライトキャプテンも容認するのか。もう死ねばいい、みんなリア充なんて死ねばいいんだ。
パトナム少尉が肩を叩く。
「総団長、ふたりがビュー・ペガサスに入ります!!!」
あれはタムラ料理長のお店だ。彼のお店には手が出せない。
料理長を敵に回すと、我々の食に関わるからな。
ブライト司令たちは、ビュー・ペガサスの向かい側にできた喫茶店へと入っていく。
お茶をこよなく愛するオットー艦長とレディング艦長が、先日ユーラシアより参加したエリアス艦長と
同じ趣味を持っていることで意気投合したので、同じ考えの連中を集めて始めたお店である。
オットー艦長が正統派の紅茶を淹れ、レディング艦長が各地の特色あるお茶を探求し、
エリアス艦長は茶道も含めた日本茶に関する知識が深いので、
やたらハイレベルな喫茶店が出来てしまった。

 

とりあえずキャプテンは、しばらく安全だな。
その後のビュー・ペガサスでの会話は語る必要あるまい。腹が立つだけだ。
食事を終えて店を出てからも2人に対して、再び追跡を始める。
しばらく歩いていると、彼らの正面からアムロ隊長とレーン・エイム大尉が歩いてきた。
なぜかマユちゃんも一緒である。

 

「やぁニコル」
「アムロ隊長、レーン大尉にマユちゃん、こんにちわ」
「散歩かい?」
「ええ、食事したので少し歩こうって事になりまして。隊長やレーンさんこそ、どうしたんですか?
 隊長は用事で港に行ったと司令が行っていましたけど」
「ン・・・。ああ、案外早く片付いてね。そこで、買い物につきあわされているレーンにあったのさ」
「レーンさんとマユちゃんが?」
「こないだ無理矢理約束させられてね」
「だってこないだお兄ちゃんと待っていたのに、マユラさんに呼び出されて来なかったからだもん。
 これは罰ゲームなの!!」

 

やはり隊長は、キャプテンに気を遣ったようだ。さすがニュータイプである。
また、若干1名その光景に怒りを持つ少年もいる。

 

「マユ・・・、レーンさんの腕にあんなにしなだれて・・・。お兄ちゃん以外にはしなかったのに・・・」
「こちらレッド・コメット。やはりここは、私のプチモビで殺るべきだろうか」

 

シン、ダメー。今出たら台無しだろう。大尉、自重してください。

 

「あれ?」
「気付いたか?レーン」
「ええ、何だってこんなところで殺気が?」

 

まずい、ふたりともスタンガンで眠らせよう。ニュータイプは気配が敏感すぎる。

 

ぐえ
ぐわ

 

妙な声とともに後ろと回線から沈黙が訪れた。隊長とレーンは、消えた殺気に不思議に首をかしげている。

 

「ふたりして気を回しなのかもな」
「ここ最近がいろいろありすぎたんですよ」
「そうだな」

 

笑いあうふたり。何とか誤魔化せたようだ。

 

「おふたりともすごいですね」
「うーん、それほどの意識ではないと思うけどな。
 スクリーン越しに殺気って気付くだろ?その延長みたいなものなんだけどな」
「あんまり全能と受け取られても困るな」
ふたりとも、ニコルの関心に苦笑いで応じる。
「でも、そういう感覚が研ぎ澄まされることは、いいことではないでしょうね。
 私もそういうところって悲しいことかもしれないわ」
「曹長、同情がほしいわけでもないぞ」
「そういうつもりでもありませんけど、そう受け取られてしまったのであれば申し訳ありません」
「いや、俺も少し過敏だった。すまない」
「いえ、今度彼のピアノでも聞いてみたらどうですか?」

 

柔らかい笑みでふたりにニコルのピアノを勧める。そういえば俺もまだ聞いていないな。
全く同じタイミングでレーンも同調する。

 

「そういえば俺も聞いていないな、これから聞きに行こうか」
「レーン、それはいくら何でも」
「お兄ちゃん!!!今日はマユと買い物するの!!!」
「まだ何か買うのかよ・・・」
「漫画だってやっと帰るようになったんだから、いくの!」
レーンはアムロとマユちゃんに駄目出しをされて辟易する。やっぱ鈍感は罪だな。
「わかりましたよ、俺が野暮って事ですね。じゃあニコル、またな」
「ええ、今度是非聞いてください」

 

会話は終わり、彼らはそれぞれの方向へと歩いて行く。あれ、この方向は・・・。

 

※※※

 

「こ、ここは・・・」
「ニコルの家じゃないか!!!戻ってきたのか!」
「ま、まてよ。美人の母上は今、司令とデート中・・・つまり」

 

つ、連れ込みだと・・・。
あ、あの人畜無害そうな顔して、連れ込みだと!!!
ここでファイト一発なのか!!!
たしかに今の共和国で安全にできる場所は限られているが・・・もはや疑う余地はあるまい。

 

「総員第一戦闘配備!!!」
「「応ッ!!!!」」
天馬を監視していたはずのベアード少佐も、ゴム弾装備ではせ参じてきている。

 

「プチモビも用意しろォ!!!大尉!!!!!」
「了解した」
赤く塗られたプチモビが起動する。

 

「横断幕はいいか!?」
もちろん、俺たちは単なる嫉妬の徒ではない。
横断幕には 『末永く爆発しやがれ、おめでとう』 という文字が書いてある。

 
 

「突撃ィィィィ!!!!」

 

家の周囲を取り囲み、ハンマーで破壊行動を始める。プチモビは上昇して屋根を破壊しようと試みる。

 

「うわぁ!!!!」
「きゃあ!」

 

ところが、囲いを破壊した段階で、予想よりも早い悲鳴が聞こえる。野外・・・だと・・・。

 

しかし、集結するとそこには、ピアノとその近くに父親の写真と花瓶にはきれいな花が飾られている。

 

どうやら、父親に捧げる花を相談していたようだ。花は隠語でも何でもなくそのまんまの意味だったのだ。
それで、その選ぶ条件に野外でピアノ、これはコロニーにおいてあったが持ち主不明だったので、
弾けるニコルに譲渡されたものだ、これを引くことを条件に曹長が快諾したらしいということか。

 

そこに、赤いプチモビがアマルフィ邸の屋根に轟音を響かせ落下する。
あー・・・、気まずい雰囲気が流れる。

 

メアリー曹長は絶対零度の視線を我らに浴びせ、ニコルは破壊されて自宅と横断幕を見て呆然としている。
そこに、背後から聞き慣れた低い声が、怒りに満ちて聞こえてきた。

 

・・・おまえたち・・・いったい何をしているんだ・・・

 

青筋と血管の浮き上がらせた、ブライトキャプテンがそこにいた。
苦笑いをしながら崩落した家を見ると、すでに赤いプチモビには大尉の姿はない。
逃げ足だけは一流なんだから。
私は一応弁明の機会を与えてくれる人物に振り向いて答えた。

 

「ふ、ふたりを祝福しようと」

 

答えると同時に意識が飛んだ。次に激痛で目を覚ましたとき、俺は自習室にいた。

 

※※※

 

関係者全員ぶん殴り終え、やや疲れ気味のブライトキャプテンは傍聴席に戻る。
周りは本来止めるべきところだろうけど、その気迫とある種の手打ちの儀式という思いが各々にあったのか、
誰も、本来一番厳しいはずのモリス中佐も黙ってみていた。
キャプテンの呼吸が整うのを見て、両手を組み、その頭を乗せて深いため息を吐いた中佐が、
アムロ隊長にふる。

 

「これより判決を言い渡す。陪審を代表して、アムロ中佐よろしく頼みます」
「わかりました」

 

隊長は陪審席から立ち上がり、用意された紙を読み上げる。

 

「有罪である。
 罪状を鑑みれば連邦軍法並びに連邦法、特に前者の項目から考慮すれば極刑に当たる。
 が、今回の件はその用は罰則を与えること自体が酷くばかばかしいという結論が、
 陪審員一同の一致したところだ」

 

アムロ隊長も読み上げることすら億劫そうである。
だが、頭を振って一応の体裁は整えようと毅然とした表情を作る。

 

「しかし、無罪放免というわけにもいかない。
 よって、罰則はコロニーのミラーを手作業を持って掃除すること、
 メアリー曹長へのお百度土下座、加えて向こう一ヶ月は飲酒や娯楽の制限を申し渡す」

 
 

※※※

 

こうして、ロンデニオン共和国建国後、初の裁判沙汰にまで発展した事件である、
「アマルフィ家崩落事件」は幕を閉じることになった。
ちなみに、何であれで極刑ではなく、せめて禁固刑にさえされなかったかというと、
あまりにも規模がでかすぎて処罰すると国の生産力や運用に支障を来すレベルだったらしい。
闇の組織恐るべし。ついでに、翌日アムロさんとブライト艦長にクワトロ大尉が呼び出されていたけど、
何があったのだろう。
ここの生活は本当に飽きないし、毎日が馬鹿騒ぎみたいだ。それでも思う。

 

僕は思うこんな大人になりたくない。

 
 

追記:結局家が破壊されたので、ブライト艦長の家にニコル親子は暮らすことになったそうな。
それと、クワトロ大尉はそのあと一週間あうことはありませんでした。未だにナゾです。

 

−トール・ケーニヒの日記より抜粋

 

「小さな防衛戦」end.