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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_外伝15-1

Last-modified: 2011-11-26 (土) 11:01:43
 

考えてみると、キラやトール、カズィたちとこうして遊ぶことも久しぶりな気がする。
遊ぶと言っても、僕は岸辺の木陰に寝転がり、アタリが来るまでようやっと届くようになった文庫を読む。
その脇で少し焦れてきたシンが、ルイ・フィリップ・ピレンヌ中佐に声をかける。

 

「ピレンヌ艦長、もうずっと釣れないですね」
「ま、君らのような若いモンには少し退屈かもしれないな」

 

釣りを始めて3時間、もう1時間ほどシンに当たりがない。
クチをとがらせるシンを見て、艦長は穏やかに笑う。
若者とひとくくりにされたので、俺は異論を呈す。

 

「僕は案外好きですよ、本読みながらのんびり出来る感じが良いですね」
「ちぇっ、別に俺もつまらないとは言ってないじゃないですか。
 でも艦長がもう24匹も釣っているのに、俺はまだ3匹しか釣れていないから不公平だと思ったんですよ」

 

俺は今日、ピレンヌ艦長に連れられ男仲間とロンデニオン後半部の周囲を廻っている
一次産業用コロニーに来ている。
魚介類生産が目的のコロニーだが、リラクゼーションのために岸釣りをを楽しめるようになっている。
沖釣りも出来るが、今日はそこまでやらなくてもいいだろうということになった。
目的は魚というよりも、各々の休養といっていい。

ピレンヌ艦長は、釣りが趣味だそうで、宇宙艦隊勤務の時もコロニーや、
施設の海洋プラントで暇を見つけては釣りをしているそうだ。
このコロニーに釣りをする環境が整備されたのは、艦長が陰で動いていたと、
まことしやかにささやかれている。
子供の頃に父親といった釣りが、少年の日の思い出として強く残っているからだそうだ。
地球出身ということだということで、だったらなぜ海軍を選ばなかったのかを誰かが聞いたとき、
艦長は青年時代に最も魅力的に映ったのが星の海だったと答え、
言いようのないかっこよさを感じたのを覚えている。
僕にはまだ出すことも出来ない雰囲気だ。手元の本から、海に視線を向けて波の揺らめきに目を奪われる。
すると脇で勝誇らしげな声が響き渡った。

 

「よーし!!これであがりですね!!!」
「強いですね、トールは」
「・・・」
「あっ、おい待てよトール。少しは先輩と上官に遠慮しろ」
「往生際が悪いぞ少尉」

 

海を眺めることもなく、カードに興じながら釣るのは、トールとニコル、カズィ、
そしてハンス・エイレン少尉にエミリオ・ボティ大尉だ。
大尉はピレンヌ艦長とともにフィッシング同好会を運営している。
今回初めてこういった一緒に行動することになったので、普段寡黙に見えるので少し不安だった。
けれども、カードを一緒に付き合ってくれる辺り、それほど人付き合いが悪い人ではないみたいだ。
艦長に隠れて何かを賭けているようで、ハンスさんはかなり真剣である。
ハンス・エイレン少尉はトマス・パトナム少尉やレーン・エイム大尉を通じて仲良くなった、
キルケー部隊の隊員で、明るく話しやすい人だ。
その彼が、やたら悔しそうである。何を賭けているのだろうか。
俺の顔を察して、シンがこっそり教えてくれる。

 

「どうやら、例のところから流れてくるエロいメディアを賭けているそうですよ。
 『全裸紳士の冒険―女医とナースの更衣室―』だっけかな」

 

トールェ・・・。こないだミリィに半殺しにされかけたのを忘れたのか。ま、リア充は死んでいいけどな。
それに例の組織には俺もお世話になっているから何も言えない。
ともかく俺は釣りと読書、そしてキラたちとの会話を楽しんでいた。
ヘリオポリスが崩壊して以来、ここまで穏やかな日常を過ごせることになるとは思わなかった。
もちろん、まだ戦争は続いている。
でもこうやってみんなと笑い会う日が来たことは、いいことなのだろうと思うから。

 

だけど、この穏やかな日がまたぞろ大騒ぎになるとは、
このときの俺、サイ・アーガイルは夢にも思わなかった。

 
 

失いし世界をもつものたち外伝15
「あの日見たアムロさんの顔を僕たちはまだ知らない」(前編)

 
 

トールたちのカードゲームを横目に、キラは何か解放されたような表情だ。
カードに飽きたのか、カズィがおもしろ半分で指摘する。

 

「今日はフレイもラクスもいないモンな」

 

その言葉に苦笑いするキラを見ると、俺も複雑な思いにさせられる。
もちろん俺はもう振り切れている。
あれはいろいろなことが重なったし、俺にも原因はあった。
こういうことを言うと、疑われるだろうけど、本気でそう思っている。
もしヘリオポリスが攻撃されなければ、ああいう事にはならなかったのだろうけど、
ホント巡り合わせがなかったんだと思う。フレイ・アルスターとは終わったのだ。
そのフレイと先日ロンデニオンに居候の身となったラクス・クラインは、
最近キラを巡り鞘当てを続けている。そのためキラは大いにくたびれているようだ。
きっかけは何だったのだろうか。俺がいつだったか、そうつぶやいたとき、
その手の情報に強い組織に属しているカズィが教えてくれた。死ね死ね団の情報網恐るべし。
有能な人々が、まじめに悪ふざけをするとたちが悪い見本だと思う。

 

※※※

 

実のところ、フレイはキラに対する負い目があったので、当初はそれほど積極的ではなかった。
むしろラクスとの何ともいえない精神的なつながりを見て(フレイにはそう見えた)、
今更あえて復縁できるのか、キラに甘えていいのかと思っていたそうだ。
ラクスの方でも、キラに好意はあったけれど、きっかけが得られないうちに、フレイとの再会を見て、
キラの気持ちはフレイにあると思ったし、ロンデニオンで彼自身の思いを見て、
積極的になれなかったそうである。
しかも、キラには父親の不幸や彼自身の出自の話もあったので、
そういう話をするのも遠慮すべきだという気持ちもあったようだ。
その微妙な均衡が崩れるきっかけは、キョルショー大尉であったという。
フレイとラクスがキラを挟んで、表面的な世間話に終始しているときに、
キョルショー大尉がキラを誘ったことから話は動き始める。
今からひと月ほど前のことだ。

 
 

「大尉、こんにちわ」
「よっ、ヤマト少尉!若い娘に囲まれてハーレム気分かな?」
「大尉・・・」

 

さっぱりとした表情でウインクして冷やかす大尉に、キラは顔を赤らめて困った顔をしたという。

 

「君たちもキラと過ごせて楽しいでしょ」
「ちょっ・・・そういうんじゃ!」
「うふふ、そうですわね」

 

ラクスの反応に、フレイは即座に顔を彼女に向けたものの、踏み込んで良いものか逡巡する。
そこに第2の爆弾が投下された。

 

「へぇ?そう。だったら中尉、私とこれから付き合いなさい。命令よ」
「はい?」
「えと、その、あれよ。少し落ち着いてきたし、あなたと話したい・・・というか、
 こないだのことで気落ちしているのか気になったのよ」

 

キラは、大尉の言葉に驚くと、次いで笑顔を見せる。
確かに好意を持たれていたけど、ここまで気にしてくれたことに、嬉しいとも思えたようだった。

 

「ありがとうございます。でも・・・」

 

その一方、ふたりに囲まれている状況で、他の女性のところに行くことに抵抗を覚えたようだ。
そこにラクスが抱えていた、ピンク色で角がついたハロが、飛び跳ねて叫ぶ。

 

キラ、デートカ!キラ、デートカ!

 

それに微妙に反応するふたりを見て、大尉は若干顔を赤らめ、照れながらふたりにいって見せた。

 

「あなたたち、キラのそばにいるのはいいけど、好きならちゃんと行動しないとダメよ」
「いえ、あの」
「ふふ、そうかもしれませんわね」

 

ふたりの少女の反応は、大人の女性の余裕を見せられたという思いと同時に、
キラを持って行かれてしまうという思いを持ったようだ。
ふたりは少しうつむき考え込む。
それにしても大尉はそういう凛とした姿勢をキラに見せればいいのにと、俺は思う。

 

「とにかく、ヤマト中尉、行くわよ」
「えっと、あの」

 

どうすればいいのか困惑するキラを大尉が連れ出そうとしたときに、フレイが動いた。

 

「あの・・・、大尉、キラが困っていますから、まずは引っ張らない方がいいと思います」
「あらそうなの?ヤマト中尉?」
「えっ、えーと」
「キラ?」

 

なおも混乱するキラにカチンと来たフレイは、少し唇をとがらせ、キラの腕を引く。
もちろん密着させた形である。

 

「フ、フレイ!?」

 

フレイは自分でも少し意外だった行動のようで、かなり顔を赤らめる。
紆余曲折こそあれ、彼女はキラに好意を抱いていたのだ。
ラクスでも複雑だったのに、突然現れた年上のおねいさんにさらわれるのは面白くない。
そのことが彼女にかつてのような行動力を与えたようだ。

 

「ふふふ」

 

その様子を見て、なおも笑うラクスに周囲の空気は確実に低下していった。
大尉もからかいはしたものの、自分から誘っているのに、小娘に邪魔されるのは少し面白くない。
よって少し意地になっていたようだった。
この段階で各々は、何か結末が見えていたわけではなかったようだ。
思ったよりも話が面倒な方向に行ってしまったが、収拾策がなかったのである。
もちろん周囲は止める気などない。おもしろ半分で眺めている。
そこに第3の爆弾が投下された。話を混乱させることに定評のある、スミス参謀がやってきたのだ。

 

「お、なんだぁ修羅場かぁ?でもあれだな、フレイ君の方が有利じゃないか。
 何せキラの気持ちは、精神的にも肉体的にも彼女にあるだろう。はっはっはっ」
「ちょっ!!参謀!!」
「えっ?」
「えっ?」
「へぇ・・・」

 

キラとフレイの微妙な関係については、当人たちとラクス以外が知らなかったことである。
大尉は知っていたので、別に気にならなかった。
別に相手が童貞だろうが、そうじゃないだろうが気にはしないという感じである。
未だ年下との付き合い方がうまくないだけだ。
けれども、フレイに気持ちがあることを第三者に言われ、それに驚くフレイを見るのは
やはり面白くない様子だ。
ましてや、キラの反応を見ればなおさらだ。
ところが、ふたりの少女はそれどころではない爆弾である。
特にフレイにしてみれば、完全に和解するタイミングを逸してそのまま離ればなれになっていたので、
自分に気持ちが残っていることに驚きを隠せない。
それと同時に、キラの思いにうれしさがこみ上げてくる。ぎゅっと、絡めた腕に力が入る。
ラクスにしてみれば、フレイという少女の存在が、キラとそこまでの関係にあるとは
さすがに想定外だったようだった。
彼女にとってキラは、自分を助けてくれた存在として、傷ついた彼を看病する中、
彼の思いを知ることで、純粋に好意をふくらませてきた人である。
その相手に思い人どころか、すでに付き合っているという爆弾である。
しかし、ラクスが見たふたりは、とても恋人同士のような関係に見えない。
彼女と自分は同じ土俵とくらいに考えていたのだ。
フレイに負けたくない。彼女は純粋に対抗心を芽生えさせた。

 

食堂にいる全ての視線が、突如起きた修羅場に好奇の目を向ける。最初に均衡を破ったのはラクスだった。
それは嫉妬と負けたくないという思いから出た行動だったかもしれない。

 

「キラ」
「えっ」
「私の思いは、あのときと同じです。私はあなたとともにありたいと思います」

 

そういうとラクスは、キラの顔をそっと両手で包み、口づけをする。

 

「「なっ!!!」」
「「オオッ!!!」」

 

この行動に、全くの野次馬の周囲は盛り上がった。
そこには、トールやミリィにニコル、レーンさんといった面々もいたらしいけれど、
そのときばかりは彼らも傍観者というか、背景だったらしい。

 

「もちろん、私とともにあって欲しいからといって、
 あなたをロンデニオンから引き離そうなどとは思いません。
 ですが、私はあなたにとって失いたくないほどに、愛しい存在なのです」

 

口づけの後、彼女は平静を保ちながら告白していたが、もはや顔は桜色に染まりきっていたという。
余談だけど、この表情にドツボにはまった一部兵の間に、
ロンデニオン共和国ラクス・クライン・ファンクラブに入会する兵士が続出したらしい。

 

「ラクス・・・」
「そんな目をなさらないでください、キラ。わかっています。
 私はあなたを困らせていることをしている。でも、押さえられません。
 今すぐ答えを出さなくてもよいのです。
 私は、この思いの旋律をあなたとフレイさん、キョルショー大尉の前で伝えたいと思いました。
 そして、フレイさんに伺いたいのです。キラのことが好きなのでしょうか」

 

正面からのストレート、あまりに直球すぎて逆に変化球の域に達したラクスのボールは、
周囲の面々を素直に驚かせたという。
俺はそれを聞いたとき、アムロさんが彼女のことを純粋だといったことの意味をわかった気がした。
フレイとは別のベクトルで箱入り娘なのだ。
キョルショー大尉は彼女たちの行動を見て、それまでの不満げな表情から楽しげなものへと変わっていた。
自分には出来ないやり方に好感を持ったのかもしれない。
フレイは目を見開き驚いていたが、キラから腕を放し、右手で髪を振り払う仕草をして彼女に言った。

 

「あんたって・・・、コーディネイターのくせにずいぶん馬鹿なやり方をするのね。
 でもいいわ、答えてあげる。私はキラが好き。今は胸を張ってそういえる」

 

その言葉にキラの目は大きく見開かれる。

 

「私はね、キラのことを利用したの。パパが殺されたのはあんたたちコーディネイターのせい。
 だから同じコーディネイターだったキラに戦わせて、復讐しようとしたわけ。
 守ると言ってパパを守れなかったキラに対する憎しみもあったわ」

 

ラクスはしっかりとフレイを見て話を聞く。

 

「でも、利用しているつもりが、そうじゃなくなったのよ。
 私自身がキラに惹かれていった、いえ、あのときは依存したといった方が正しいわ。
 キラは結局いつも自分の事じゃない誰かのことに必死で・・・。
 うまくいえないけど、気がついたら本当に好きになってしまっていたのよ。
 一度はあきらめたのよ。資格がないって。
 でも、キラの思いを聞いて、好きでいたいと思えるようになったの。
 その後に離ればなれになってしまったから、やっぱり罰が当たったんだと、またあきらめた。
 でも、三度も会えれば、自分の思いに正直なろうって思えない?
 そしてあなたのそれで決心がついたわ。
 私もキラを好きでいたい。キラに振り向いて欲しい。好きよ、キラ」

 

キラはもはや頭の容量をオーバーした状態だった。
食堂にいたマツバラさんに言わせると、キラにとっては人生最大のモテ期到来である。
キラを挟んで、ラクスは右手をフレイに差し出した。

 

「フレイさん、改めて握手をしていただけないでしょうか?」
「えっ」
「私たちは、キラを巡るライバルですから」
「いやよ。・・・あんたがコーディネイターだからじゃないわ。ライバルだからこそよ。
 だってそうじゃない?ライバルと握手なんて出来ないわよ」

 

フレイの表情は、どこか晴れやかで俺が昔見た、コーディネイターだからという理由で
拒絶したものではなかったという。
対等な相手と認めるものへの敬意から来るものだったという。
キョルショー大尉は、純粋に彼女らの誠実さに肩をすくめた。
少女に限らず10代が持つ、独特の思い切りの良さに、
心地よさと自分がこの色恋沙汰に関わることの面倒さを悟ったのかもしれない。

 

かくてヤヌスの門は開かれた。

 
 

この辺りのやたら正確な情報は、食堂にいた面々だけでなく、死ね死ね団や、
ロンデニオン・ゴシップ探偵団 Q and Mという新興団体からの情報提供もあった。
構成員不明、ロンデニオンの闇の組織ともつながりのない新たな組織である。
このことをあるときアムロさんに話すと、若いというのはいいなと、
ちょっと爺くさいコメントはいていたので、ちょっと格好が悪いと思った。

 

ちなみに俺がそれを聞いたときに感じたことはひとつだ・・・キラめ、爆発しろ。

 

※※※

 

とはいえ、父親のことや出自のことでさんざん悩んでいるところにこれだと、さすがに気の毒だとも思う。
その一件より、ふたりの少女はキラを巡りさやを当て続けている。
キョルショー大尉は、キラに対してはどちらかというとおねいさん的な立場でもいいようで、
その状況を楽しんでいるようだ。
目の前のキラは、やや枯れた表情で釣り竿に向かう。その姿は年齢不相応に哀愁を漂わせていた。
けれども俺が何か言うことは、どう考えても逆効果だから何も言わないことにしている。

 

「キラ、引いているぞ」
「え、あれ?来た来た!!」

 

慌ててリールを巻いていると、大きな石鯛が水面に浮かび上がる。しかし、キラは明らかに慌てていた。
そのため海面ではねて動く魚の動きに対応しきれずに、糸を切って逃がしてしまった。

 

「ちぇっ、せっかく大きな魚だったのに」
「慌てすぎだぜ」
「そうだな」

 

ピレンヌ艦長がキラにさっきの場合にどうやって対応すべきか指導している。
やっぱ、コーディネイターって言っても完全でも優位な人間でもない。
俺はいつか砂漠でアムロさんが言ってくれた言葉を胸に反芻させていた。
あの、穏やかな顔を思い浮かべながら。