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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_外伝16-2

Last-modified: 2012-01-08 (日) 04:01:34
 

「閣下、今更ですな。劉慶主席はやりますよ」
「それはそうだ、それは仮に私が事務総長に選ばれていてもやっていた」

 

私は、ブリュッセルの執務室でE.E.F.軍令部総長ウェリントン元帥の
連合軍の作戦計画に関する調査報告を受けていた。

 
 

失いし世界を持つものたち外伝16-2
「そして決戦へ…」

 
 

報告書に目を通す。
ザフトの現時点での保有戦力に連合軍が敗北する可能性は、ほぼなし、である。
報告書を読まなくてもそのくらいは解る。
もっとも、申し訳程度に、ザフトが何か新兵器を開発していた場合は変動しうるとある。
悪質な責任逃れに多少の不快感が生じる。
元帥はそんな私に気付かずに、報告書の説明を追えると私見を開陳した。

 

「私は別にブルーコスモスではありませんが、軍事的にザフト殲滅を支持してもよいと思います。
 もちろん選択肢のひとつとして、ですが」
「このまま事態が推移すれば、もちろん充分視野に入る。
 ジブリ−ルらが黙ったのも、この辺りを踏んでいるのだろう。
 その場合は我々の仕事が余計に増えるわけだ。全く困ったものだよ」

 

確かに純軍事的には、このまま進めばプラントごと抹殺すればいい話だ。今や核兵器も使用できる。
だが戦後の統治を考えると、いたずらに社会と経済に混乱と不安を加速させるだろう。
そうしたとき、間に合わせとその場しのぎでまとまっている連合が、うまくいくとは思えない。
統一体で内乱できればいい方だ。下手したらEEFも瓦解する。
元々、微妙なバランスで成り立っている組織である。
うまみや利益がないとなれば再び混沌とした状況になるだろう。

それを調整する苦労を鑑みれば可能な限り、戦争は軟着陸させた方がいい。
にもかかわらず、核兵器の使用も視野に入れた意向が出たのは、
政治主導で外交力強化に舵を切ってきたことに対して、
軍部とブルーコスモス過激派が巻き返したといえる。

 

「選択肢は元々少ないのだ。カナーバ外相の手腕に期待しよう」

 

外交手段として、こちらのとるべきアクションはしたのだ。
強硬派が無条件降伏など言い出す前に、公式な席での議論に出て欲しいものだ。
これでも譲歩しているだからな。
私はローズヴェルトではない。もっとも彼らがどうするかは、彼らの問題である。
それに現時点では軟着陸が最善であると思うが、状況は変わるものだ。
別に社会が安定するのであれば、プラント存続に固執するつもりもない。
ロンデニオンの連中とて、あれだけ喧嘩を売られているのだ。
我々が方針を変更しようと、気にするとは思えない。
しかし、カナーバ外相の様子を見る限りは、そこまで悲観的に考えなくてもいいように思える。
私は極秘会談で会った、若者のことが不意によぎり、補佐官に問う。

 

「あの、カナーバ外相の脇にいたのは、ザラ議長の息子だったな」
「はい、アスラン・ザラです。つい最近まで前線にいたそうですが、外相に取り込まれたのでしょう」

 

補佐官が、データを呼び出して見せてくる。
なるほど、これはアイドルにはふさわしい経歴だ。
実際の印象として、大きな父親を持つと潰れるというが、なかなかどうして理想が高そうな少年だった。
彼の青臭さに期待してみるのもいい。

 

「いずれにせよ、矢は放たれたのだ」

 

私は、椅子を回して窓から見える靄のかかる町並みを見る。
その光景に行く末の不透明さを重ね合わす。
神でないが故のもどかしさか。
願わくば、可能な限り多くの市民が望むべき方向へと向かって欲しいものだ。
そうでなければ、政治家になった甲斐がない。
そこまで考え、自分もやや青臭い感情がわき起こってしまったことに、自嘲めいた笑みをもらすのだった。

 
 

「そして決戦へ…」end.