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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_03

Last-modified: 2009-03-21 (土) 20:05:31
 

失いし世界を持つ者たち
第3話「邂逅」

 
 

 私や乗員が茫然としていると、彼の方でも違和感を持ったのだろう。
 一瞬、不思議そうな顔をしたが、すぐに気を取り直して、話を切り出した。

 

『みんな、1カ月も連絡せずに心配をかけてすまなかった。
 訳はあとで話す、すぐにこちらに来てくれ。そこは危険なんだ』

 

 10年振りに聞く彼の肉声は、全く趣旨のわからない内容のものだった。

 

「アムロ」

 

 艦橋にいたすべての人間が言葉を失っている中で、私は他人が居る場所ではずいぶんと口にしていない、友人の名を呼んだ。
 部下たちは一斉に私を見る。恐怖心から好奇心へと変化させた表情を浮かべて。
 私はその視線に対して目を配らせると、ともかく話を切り出そうとした。

 

「アムロ、おま「艦長!!!」

 

 索敵手が唐突に声をあげた。

 

「カーペンタリア湾方向から、先ほどの不明機と同様の反応が大量に発生しました!
 その数多数!最低でも20機以上いる模様です!」
「何だと!」

 

 馬鹿な、20機以上だと? テロリストにしては規模が大きすぎる。

 

『ブライト、頼む! 詳しい事は合流してから話す!』

 

 アムロの言葉からは焦りを感じる。危険性が高いのは確かだろう。
 いずれにせよ、状況が不透明すぎる。いまは拙速でも動くべきだ。

 

「……わかった。座標はトレースしている。こちらからそちらに向おう」
『すまない』
「いや、いい。ともかくこちらは異常事態であることは理解しているが、状況が全くわからない。
 詳しくはあとで話そう」
『了解だ』
「一旦回線を切るぞ、敵をまかなきゃならん」
『わかった』

 

 通信を切ると、私は即座に指示を出す。

 

「各艦に発令! 本艦はこれより襲来する不明機編隊をかわして、友軍と合流する! 
 ミノフスキー粒子戦闘濃度散布! ……何をしている!さっさと行動しろ!」
「りょ、了解!」

 

 私は状況が飲み込みきれない部下たちに対して檄を飛ばすと、シートに身を沈め、右手で顔を覆って考えをまとめようと試みたが、無理であった。
 率直に言って、私自身もよく混乱していないと思う。ここ数日の出来事が目まぐるしかったので、感覚が鈍くなっているのかもしれない。
 かといって、指揮官である以上は軽々に動揺するわけにはいくまい。

 

「司令、直掩機を収容しますか?」
「そうだな、撤退に専念しよう。だが甲板に待機させておけ。……とにかくこのわけのわからない空域から離脱しないとな。
 ……そうだ。各艦へ連絡、艦隊速度は不明機をまくまでは最大だ。追撃を振り切ったのちは巡航速度とする」
「了解!!艦隊旗艦より全艦へ、艦隊は最大速度とせよ」

 

 こうして我々第13独立機動艦隊は、状況の把握もままならないうちに、アラフラ海を後にすることになった。
 こちらに向かってきた不明機編隊は再び私にとって理解しがたい行動に出た。
 ミノフスキー粒子散布後、散布空域に突入した途端に停止し、10分以上もの間そこで動きを停止したうえ、撤退行動に入った。しかもわからないのは、散布空域から出ると、再び追跡行動をはじめ散布空域に突入してきたのである。
 そして再び空域内で停止すると、数分そこで留まったのち引き返し始め、今度は完全に撤退した。

 

   ▽   ▽   ▽

 

 私は不明機編隊の完全撤退を確認すると、戦闘配置を解除させて索敵担当者以外を半舷休息とし、
 後をメランに任せて艦橋を出て艦長室へ向かった。
 途中で『キルケー部隊』のレーン・エイム中尉に出会った。熱くなりやすいが若く優秀なパイロットだと聞いている。
 ……マフティーと最も多く戦ったのは彼だ。そのせいか私を避けていたところがある。
 宿敵の正体が私の息子だったのだから、無理もない。
 中尉は敬礼すると、話したいが距離感をつかめず、どう切り出していいのかわからない青年独特の顔を見せた。

 

「どうした? 中尉」
「司令。実は隊長から許可を頂き、艦橋に報告しに行くところでした。司令はお休みになられるのですか」
「ああ」
「では、司令にも報告しておくべきだと思います。通路ではありますがよろしいですか」
「うん」
「実は『ペーネロぺー』……というより『オデュッセウスガンダム』のチェックをしていたのですが、
 操作もしていないにも関わらず、サイコミュが起動していたことがわかりました」
「サイコミュが……か? それは例の嵐のときにか?」
「はい……司令はなぜお分かりに?」
「わざわざ人をよこしてまで報告する必要があると聞けば、そのくらいはニュータイプでなくともわかる。
 それで、データは取ったのか」
「はい、こちらです」

 

 彼の持っているデータを読む。なるほど、たしかに起動しているな、しかも異常な数値だ。
 あとで確認すればわかるだろうが、おそらく時間も同じであろう。
 エイム中尉はどことなく居心地が悪そうな気配を放っている。

 

「中尉、この機会に言っておく。
 貴様がマフティー捕縛に関わり、その過程で彼の素性を知ったからといって、私に気を使う必要はない。
 貴様は軍人として最善を尽くした。私に対して後ろめたく思う必要はない。むしろ気を使われていると感じる方が不愉快だ。
 以後そんな態度で私に接するようなら修正されることと思え!」
「申し訳ありませんでした! 以後気をつけます!」
「わかればいい、ではそろそろ艦橋に行って報告してこい ……そうだな、今度飯でも食おう」
「喜んでご相伴にあずかります。では、失礼します!」

 

 エイム中尉と別れて部屋に戻った私はベッドに寝転がり、一息ついた直後、色々と感情がうねりだして気が狂いそうになって絶叫した。
 あまりにも常識外の出来事が起こりすぎて受け止めることができない。
 脳が叫ぶことで感情を整えさせようとしている。
 叫び終えると、冷静になり、気恥しくなったので、本棚から「気付け薬」を引っ張り出して、グラスに注ぐ。
 豊潤な香りが心を落ち着かせる。

 

 ……状況を整理しよう。
 少なくとも、あの嵐が原因でおかしな事態になったのは間違いない。ただ、天候が回復した今となっては確認できない。

 

 次に我々がマフティー残党ないし反連邦勢力と考えていた正体不明機だ。
 彼らの一連の行動から、私は馬鹿馬鹿しいが、事実から考えると論証するに、ある結論に向かっていた。
 それは、あの連中はミノフスキー粒子散布下の戦闘に全くの素人であるという結論だ。だが、そんなことがあり得るのか。
 ミノフスキー粒子が発見されて40年以上たっている。
 現在の学校教育において、ミノフスキー物理学は高等理系教育の基礎と言ってもいいし、初等教育でも歴史の授業で必ずやるはずだ。
 仮に敵の全員が、学校に行っていないとしても、一年戦争におけるミノフスキー粒子の軍事利用が重要であったことは、マスメディアでさんざん喧伝されている。
 そもそも、MSを扱うテロリストが、ミノフスキー粒子を知らずに戦闘行為をすることなど、料理人が道具の使い方を知らずに料理をするようなものだ。
 だが、あの2度の散布空域での停止は、それ以外に説明がつかない。
 あれだけ空域に留まりながら、ジャミング展開時の基本行動である散開索敵すらしなかったのだから。

 

 そしてアムロ・レイについてだ。
 なぜ彼は10年前と全く変わらない姿で私の前に現れたのか。しかも1ヵ月と言っていた。
 つまり彼の時間感覚は10年前であるということだ。それと、エイム中尉の報告が心に引っかかった。
 ……私は、ある仮説が浮かんだが、あまりに荒唐無稽で口に出すべきでないと感じ、混乱する頭を休めることにした。

 

   ※   ※   ※

 
 

 ……ああ、夢だな。
 そう感じるのは、サイド1のロンデニオンにある自宅の書斎に座っていたからだ。

 

「父さん」

 

 振り向くと、マフティー・ナビーユ・エリンのノーマルスーツを着込んだハサウェイが立っていた。
 失望と悲しみの色を目に浮かべて……

 

「ハサウェイ……」
「父さんはエゥーゴで『正義』を求めて戦ったのに、何で体制を変革できなかったのですか?」
「ハサ……」
「父さんはさ、シャア・アズナブルやハマーン・カーンを否定するけど、結局は体制に使われただけじゃないですか」

 

 息子は私の心を抉る。これは夢のはずだ。

 

「人類すべてが流動性のない階級社会に組み込まれるなんて、救いがないじゃないですか。
 なんでそんな体制を守ろうと思うのです! 腐りきった体制は、体制そのものを変革しない限り、根本的な解決にはつながらないんだよ!」
「……それが、お前がテロリストになった理由か」

 

 夢のはずなのに、私は息子と話しているような感覚を覚えた。

 

「父さんは卑怯だよ! あなたはシャアのように政治的な影響力もあったのに、エゥーゴにいた時も、軍に復帰しても行動しなかった。『政治』から逃げたんだよ!!」
「……1人の人間ができることは限られている。人はその時に与えられた最善を尽くすしかない」
「大人の逃げ口上を!」
「ハサウェイ、地球連邦が絶対民主制であることを忘れるな。
 政治家は民衆を映す鏡だ。彼らに問題があるなら、我々にも問題はあるのだ。
 改善したいのであれば、我々が選挙で投票するか、立候補して政治家となって体制を改革していくことがルールなんだ。
 奇麗事のように聞こえるかもしれないが、それ以上のことはしてはならないんだよ。
 武力をもって抵抗できるのは、体制による理不尽な暴力に対してだけだ。
 私がティターンズやジオンを許すことができないのは、罪もない人々を己のエゴで虐殺したことだ。
 ……おまえは、それをしたんだぞ」
「地球連邦政府がそれをしていないとでもいうのですか、『人狩り』を見てもそれを言えるのですか!!父さん!!」
「ハサウェイ……」
「人の犯した過ちは、人によって粛清すべきなんだ!!」
「……おまえに聞きたかったことがある。
 人類なり官僚なり粛清するのはいいが、おまえはその後に世界をどうやって導こうとしたんだ?
 その為の明確なビジョンも無しにテロリズムに走ったのなら……お前はただの犯罪者だ」
「僕は……」

 
 

   ※   ※   ※

 

 全身が汗でべとついている。悪夢という奴は、ストレスを発散させたいときに見るというが、いくらなんでも最悪だ。エイム中尉と話して、息子のことを思い出したからかもしれない。
 思えば夢のように、親子で政治の話などしてこなかった。
 だがあれは夢だ。自分が考えないようにしてきたことを、息子の姿に出して言わせたのだろう。
 私は確かにその立場と発言力を持ちながら、政治に関わらなかった。
 私が出会った政治家は大抵が俗悪か、政治意識など抱いてもいない連中で、数少ない例外がブレックス・フォーラ准将や、ジョン・バウアーだった。
 私は政治家を嫌悪し、近くによろうともしなかった。また正直に言って、なにより艦が好きだった。そうして、私は取り返しのつかないところまで来てしまったというのか。
 頭を振り時計に目をやると2時間が経過していた。しかし、全身から発汗したおかげか、すっきりした感覚もあった。
 ……もう少しで合流のはずだ。私はシャワーで汗を流し、軽食をすませてから艦橋に向かった。

 

   ▽   ▽   ▽

 

 艦橋では、メランと当直の参謀が難しい顔をして、報告書を読んでいた。後部パネルに目をやると、航路情報が示されている。あと数分もすればカメラで確認できるな。

 

「なにか問題があったのか?」
「艦長。それが、奇妙なんです。
 艦長が休まれた後、連邦軍施設とのコンタクトを試みていたのですが、通常回線で反応があったのです」
「ほう。別に私を起こしてもかまわなかったんだがな」
「それが……とにかく、ご覧ください」

 

 通信文に目を通すと、確かに理解不能な内容であった。
 地球上で知られている限りの「あいさつ」が書かれている。しかもその横に絵を用いて、その時の動作や場面を説明している。その下にはたいして性欲を湧かせない男と女の裸があり、円周率など数学の公式などが載っている。また、圧縮ファイルには音楽がついてあった。
 似たような内容の文面をどこかで見た記憶があるが、思い出せない。私が思案していると、メランが文面内容から、私を起こしてまで報告することではなかったと弁明している。
 私はそれを聞き流しながら、この文面の心当たりを記憶に尋ねていた。

 

「失礼します」

 

 艦橋に入ってきたのは、先の戦闘で査定マイナスの判断をした新任の参謀である。
 そういえばと、彼も休んでいたことを思い出す。食事を済ませて少し横になると言っていた。それにしても、あまりに眠そうな顔だ、修正しておくべきか。

 

「どうされましたか、司令。難しい顔をされて。悪い夢でも見られたのですか」

 

 そのうえ無神経にも地雷を踏んだ。

 

「お前さんがしまりのない顔をしているから呆れているんだよ」

 

 どうやら私の表情に何か感じ取ったのか、メランがやんわりと窘める。やはり10年近く付き合うと、いろいろと察することができるようだ。

 

「失礼しました」
「いや、以後気をつけてくればいい」

 

 この参謀は無能ではないのだが、着任以来どうも迂闊な感じがする。お調子者ではないし、空気が読めないわけではないのだが。
 ……ナイメーヘンの士官学校出身だったな。そこでどんな教育を受けたのか……いや、もともとの性格なのだろうか。

 

「大尉、引き継いでおくべき状況を教えてください」
「ああ、周辺事態に異常はない。ただ、変な通信文を受信した」
「なんですか」
「これだ」
「どれどれ……これ、地球外生命体に対してこちらが知的生命体であることを教えるために伝える文面に似ていますね」

 

 そうか、『ボイジャー計画』の銅板だ。
 ボイジャー計画とは、旧世紀の末に当時の宇宙開発の中心的な役割を担っていたアメリカ合衆国が、宇宙探査に出した探査機だ。
 ボイジャーには地球外生命に接触した場合、探査機が知的生命体によって作られたことを示すために取り付けたプレートがあり、それと構図が似ているのだ。
 ……そういえば士官学校の頃に万が一地球外生命体に接触した場合について講義を受けたな。笑うことをこらえて聞いていた記憶が蘇る。
 だが疑問が解けたところで、解決には至っていない。どうしてこちらの回線を無視して、こんな冗談めいた通信文を送ってくるのだ。
 私はふと、休む前に考え付いた荒唐無稽な推論が頭をよぎったが、軍人が口に出すべき種類の意見ではないと思い、すぐに打ち消した。索敵員が報告してきた。

 

「艦長。正体不明船をカメラに捕らえます」
「うん?ああ、パネルに出せ、それとデータ収集を」
「了解!メインパネル出します。画像解析装置起動、データ収集開始します」

 

 パネルに映し出された船に、私は絶句した。
 初めて見るにも関わらず、コンピューター解析を待つまでもなく、艦構造がひと眼で理解できる。
 馬を連想させる艦体、おそらく分かれた艦首の左右部分にMSの格納庫があり、両舷にメガ粒子砲が備え付けているのであろう。
 そして、夕日が照りつけてオレンジ色になっているが、元々は白を基調とした配色であることは一目了然である。
 私はアムロがこの船に惹かれた気持ちを理解できた。この感情を持つことができるのは、この艦隊では他にはいまい。

 

「『ペガサス級』に見えるな」
「ええ。しかし、ペガサス級の新造計画なんてありましたか?」

 

 『ペガサス級強襲揚陸艦』は1年戦争時に地球連邦軍が建造した艦船で、『強襲揚陸艦』と位置付けられるまで名称が二転三転した奇妙な艦である。
 そもそもネームシップの1番艦『ペガサス』より2番艦『ホワイトベース』が早く完成するあたり、実験艦の色合いが濃い。だがその潜在力は計り知れない。
 1年戦争の時代で、MS運用能力と強力な戦闘力を併せ持ち、単独での追加装備なしで大気圏突入並びに離脱能力を備えた、まさに万能艦であった。

 

 大戦時に私が指揮を務めたホワイトベースの戦果は、もはや軍内部の神話であろう。戦中から戦後にかけて何隻か就航し、独立戦隊を中心に配備されていた。
 戦後の連邦軍は軍備再建といっても、平時だったのでそれほどペガサス級を建造しなかった。
 運用した私などに言わせれば、ペガサス級はかつての海上戦力における空母の役割を果たせ、ゼータガンダムタイプのMSに頼らずに衛星軌道上からの強襲等が可能な、戦術的にも戦略的にも大いに可能性を持つ艦であると信じている。
 もっとも連邦軍は今後の計画でサラミス級にもカイラム級やクラップ級と同様に大気圏離脱及び突入能力を付加させる予定らしいので、ペガサス級の需要が減る可能性は大きい。
 数年前に他ならぬ本艦で行われたミノフスキークラフトの運用実験で技術が確立している以上、現状で就航している艦艇を多目的化させるという考え方は、予算という観点からも優れていよう。国庫は無限ではないのだから。
 そう考えると艦政本部の連中が優秀に見えてくる。しかし、そうなると目の前にいる新造艦が存在する理由を説明できない。

 

 だいたいペガサス級はホワイトベースのこともあり、戦後に就航した船は概ね建造の時点から専門誌などに紹介されて、軍部の宣伝材料とされていた。
 8番艦だったか7番艦だったか、『アルビオン』がその例だ。もっともそのアルビオンは『デラーズ紛争』でケチがついてしまったが。

 

 思案を重ね、メランや参謀たちと議論しているうちに、いよいよ目視できる距離まで接近してきた。やはりホワイトベースを思い起こさせる。

 

「艦長、不明艦からロンド・ベルのコードで通信が入りました。レイ大……中佐からです」

 

 通信員が、アムロを大尉と呼ぼうとして、彼が二階級特進していたことを思い出し、修正して報告した。
 たしかにこの場合どちらの階級で呼ぶべきだろうか。

 

「回線繋げろ」
「了解」

 

 パネルを開くと、そこにはMSの操縦席ではなく、艦橋が映し出されていた。
 そして、見慣れぬ制服を着たアムロと、後ろには同じ制服を着た2人の女性と男性が1人、敬礼している。
 おそらく士官だろう、その顔には緊張が浮かんでいる。私が答礼を済ませると、彼の方から声をかけてきた。

 

『ブライト』
「アムロ」

 

 この間には誰も入れまい。
 少なくとも、我が艦隊でブライト・ノアとアムロ・レイという組み合わせに感情を動かさない者はいないだろう。
 現に艦橋では、先ほどと同様にあまりに非現実的な私と彼の会話を静かに見守っている。

 

「アムロ……何から話せばいいかわからん。ともかく、よく生きていてくれた」
『ああ、ブライトもな。少し老けたんじゃないか?その似合わない髭のせいか』

 

 ……少しだと?
 私はやや眉に皺を寄せた。10年で少し老けたということは、10年前に既に老けているということではないか。
 似合わない髭という言葉にも憮然とさせるものを感じたが、アムロは特に気にせずに話を続けた。

 

『ブライト、まずは紹介する。
 俺がデブリ帯で漂流していたところを助けてくれたこの艦の艦長、マリュー・ラミアス少佐だ』
『地球連合軍第8艦隊所属、アークエンジェル級強襲機動特装艦『アークエンジェル』艦長、マリュー・ラミアス少佐であります』
『副長のナタル・バジルール中尉であります!』
『機動部隊隊長、ムウ・ラ・フラガ少佐であります』
「地球連邦軍、第13独立機動艦隊司令並びに南太平洋管区司令代行、ブライト・ノア准将だ」

 

 答礼しつつ、目の前にいる士官の見慣れない制服と申告してきた聞いたこともない組織名、私は寝る前に一笑に付し、先にも打ち消した推論が、急速に現実味を帯びてきたことに、心臓の鼓動が速くなっていく。

 
 

『ブライト……信じられないかもしれないが、ここはおれたちのいた地球じゃない。別世界の地球なんだ』

 
 

 艦橋の人間がその言葉を咀嚼できずにいる。
 とんでもない事態になったことに対する衝撃の一方で、彼らしい躊躇をしながら言葉を紡ぐ様子を見て、私は彼がアムロ・レイであることを改めて認識し、はじめて彼が生きていたことに喜びの感情を持っていた。
 だが振り返るならば、この邂逅は私が自分の世界を失った瞬間であった。