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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_13

Last-modified: 2009-05-12 (火) 11:47:44

失いし世界を持つ者たち
第13話「アークエンジェルが失いしもの」

 

画像が途切れた。艦隊は東からその場へ向かっており、大して待つこともなくソソ近郊の爆発地点に到着する。その光景に言葉を失う。
機体の中で待機させるべきであっただろうか。だが機体も激しく損傷している。上空の雲行きは怪しくなりはじめ、赤道周辺で特有なスコールが起こりそうな雰囲気を醸し出してきた。

 

「司令・・・。」

 

ウィラー中佐が判断を仰ぐように言葉を漏らす。一方で回線から少女の声が悲痛にヤマト少尉の名を叫んでいる。しかし戦場において感傷に浸ることは許されない行為であることを、改めて認識させられる報告が届く。

 

「こちらA3!!南方から先ほど後退したはずの敵編隊が戻ってきました!!追われています!!救援を!!」

 

トール・ケーニヒ二等兵のスカイグラスパーからの救援要請だ。戦場の外を偵察させたことが徒となったか。

 

「ジェガン部隊は!?」
「敵の後退に併せて後退しつつあります。こちらを援護する必要もありましたから・・・。」

 

作戦参謀は悔しさをにじませた表情を浮かべる。このタイミングで敵が引き返してくることは私も想定できなかった。

 

「すぐに戻させろ!!A3を救助するんだ!!ペーネロペーが早い、いけるか!?」
「だめです!!稼働時間がまもなく限界です!!一度戻さねば!!」

 

メランが叫ぶ。まさかこちらの消耗を待っていたのか。一瞬最悪の状況が頭をよぎる。

 

「司令!!ソノブイに反応あり!!潜水艦と思われる反応を3つ確認しました!!」

 

これは壊滅した味方の救助か、それとも敵の本命か。後者であれば相手はこちらに関して十分な情報を持っている上での対応だろうか。雷がとどろき、一気にスコールが大地をぬらす。

 

「司令!これでは部隊が飛行して救援に向かうことが困難では?」
「風が出ているわけではない。行かせろ。・・・それとペーネロペーに帰還命令をだせ。」
「わかりました。」

 

作戦参謀は頷き指示を飛ばす。確かに危険はある。だが友軍の危険に比べれば躊躇する問題ではない。私はスカイグラスパーに自ら指示を出す。

 

「ケーニヒ二等兵!!いま味方を向かわせた!ともかく逃げろ!!戦おうなど思うな!!」
「りょ、了解!!!」

 

しかし直進させるべきか。我々は現在ガタルカナル島の北部にいる。南方から直進すると山を越えなければならない。
そも、飛行訓練なしの未熟練兵をこのスコールの中を突っ込ませるべきなのか。

 

「艦長、A3はひとまず高度を上げ、雲の上にて待機させるべきでは?」

 

メランが私と同様の危惧を抱いたのだろう。

 

「そうだなA3には高度を上げさせ、上空待機を命じさせ。」
「了解です。」

 

しかし、直後に声が上がる。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

少年の叫びとともに、A3の反応が島の南部の山でロストされる。

 

「馬鹿な!!何があった!!」
「・・・水中MSです。」
「索敵班!!!どこをみていた!!!!」
「申し訳ありません・・・潜水艦に気をとられていて・・・。」
「くっ。」

 

対潜訓練の不足がこんな形で現れるとは。報告は続けてあがる。

 

「ソートン・ベアード両隊、沿岸部でディンと接敵!!」
「別働隊が艦隊予定進路上の敵を駆逐しました!!」
「潜水艦3隻のうち、2隻が浮上!!MSを出すものと考えられます!!」

 

これではきりがない。私は決断した。

 

「ラミアス艦長・・・。」
「・・・。」
「マリュー・ラミアス艦長!!」
「は、はっ!!」

 

マリュー・ラミアスは立て続けに起きた部下の喪失に唖然とした風体であった。

 

「ここは我々が支える。アークエンジェルはこれより現戦闘空域を離脱せよ。」
「なっ!!」

 

ラミアス艦長は目を見開き言葉を返す。

 

「何故です!!」
「このままでは消耗戦になる。負けるとは思わんが、貴艦がダメージを受けないとは言い切れん。
こないだのように集中砲火を受ける可能性もある。健在なうちに戦線を離脱するんだ。ザフトはここまで戦力を投入しているんだ、ここを抜ければ追撃はないだろう。」
「で、ですが。」
「最初の仕事にケチはつけたくない。それに貴艦とて、こういう事態を想定してなかったわけでもないだろう。」

 

なおも逡巡するラミアス艦長にバジルール中尉がしびれを切らした。

 

「艦長!!ブライト司令のおっしゃる通りです!!我々の任務はアラスカへの到達で、敵の殲滅ではありません!!・・・彼らのことは残念ながらMIAと考えるべきです。」

 

中尉も苦渋の表情を見せる。彼女とて辛いだろう。

 

「ナタル、・・・わかりました。本艦はこれより戦闘空域を脱出する!!」
「それでいい。」

 

ラミアス艦長はなおも拳を握り、体をふるわせ、己を責める様子を見せる。彼女も動揺しているのだろう。

 

「彼らの捜索は任せてくれ。最善は尽くす。」
「・・・頼みます。どうかご無事で。」

 

ラミアス艦長は唇をかみしめ、敬礼する。私は答礼した後、回線を切り改めて全軍に指示を出す。

 

「全部隊へ!!!これより我が艦隊はアークエンジェル脱出まで時間を稼ぐ!!艦隊は島の南部へ移動!!すでに戦闘状態にあるマニバサへ戦力を集中し敵を撃破する!!」
「了解!!!」

 

各部隊へ連絡が回る。まずは戦力を集中し再編しなければ。そして、もう1つの問題のためにパネルを開く。

 

「セイラン弁務官!!」
「なにか。ブライト司令。」
「行方不明者の捜索を要請したい。」
「キラ・ヤマトとトール・ケーニヒか。しかし彼らは連合軍所属である。我が国としては中立を冒す危険がある。それに彼らの捜索は貴艦隊とも関係がないはずだが。」
「彼らはオーブ国籍保持者であるはずだ。国民を見捨てるのか。」
「オーブ国籍を持とうとも連合軍所属には違いない。」
「人道的な見地でお願いしたい。・・・ストライクの回収もできると思うが。」
「ふむ・・・。」

 

セイラン弁務官は首肯した後、口を開いた。

 

「帰国後に見返りがあることを期待しているよ。」
「感謝します、閣下。」

 

足元を見る。だが彼はそういったことができる男なのだ。むしろ己の役割をよくわかっている。

 

「よろしいのですか、艦長。」

 

メランが確認してきた。

 

「腹立たしいが、しばらくは助けにいけん。オーブの領土外縁からスクランブルをかけた方が早いだろう。」
「大して変わらないのでは。」
「負傷している可能性は高いのだ。早く動ける連中を使えるなら使うべきだ。」

 

私はそう言い放ってモニターに目を向ける。MSの戦闘空域まで後5分弱というところか。

 

「艦長、マライタ島方面から民間機が接近しています。」
「なんだと?どこの所属だ、問い合わせて下がらせろ!!」

 

この状況下で接近してくるとは、どんな脳天気だ。

 

「艦長、確認が取れました。ジャンク屋ギルド所属のMSです。オーブ政府の依頼でホニアラへ向かうとのことです。」

 

その辺はすでに戦闘は停止している。残敵も撤収しているので巻き込まれることもない。

 

「わかった、その辺なら戦闘に巻き込まれることもなかろう。所定に従い対処してくれ。」
「了解!!」

 

再びモニターに目を向ける。こちらの損害は現時点では軽微で深刻ではない。だが向こうも警戒して間合いをとりながら戦うので、決定打がとれない。援護射撃をしたいが、この雨では主砲は減衰してしまい、必ずしも有効打にはならない。

 

しかしながら、我々の移動とともにスコールは南部にも降り始めと、するとディンはスコールを警戒したのか後退を#br開始した。

 

「追撃をする必要はない!!部隊を集結させ、損害の確認を優先しろ!」

 

水中部隊もこちらに接近してくる様子がない。連中の目的はわからないが藪をつつく必要もない。10数分後、部隊は集結しMSの一部は着艦して整備を受けつつ、警戒を続けたが、敵は本格的に後退したので、警戒態勢へと移行させた。
すぐに2人の救助に行きたかったが、スコールは思いの外激しく、捜索班が遭難する恐れもあったので、天候の回復を待つことになった。

 

※※※

 

天候は2時間ほど荒れ模様が続き、落ち着く様子もなかったので、私は少年たちの生命の危険を考慮し、捜索を前倒しすることを決めた。
ザフト側の襲撃を考慮して、艦隊を二手に分け、ラー・エルムとラー・ザイムをトール・ケーニヒの捜索にラー・カイラムとラー・キエムをキラ・ヤマトの捜索に充てることにした。

 

ソソ近郊に近づくと、天候は回復を始めた。赤道周辺の天気とはこういったものだろう。ヤマト少尉がロストした地点には、既にオーブの捜索隊が展開していた。
彼らの調査は1時間ほど行われており、負傷したザフト兵を1人発見したという報告を受けた。私はアムロとハムサットを伴い、オーブの救助艇に向かった。
途中にストライクの損傷はひどく、離脱させた判断に間違いはないと思わせた。だが、未だ彼が見つからないことに不安は残る。

 

オーブ側の救助艇に到着するとランボーことレドニル・キサカが我々を出迎えた。彼の話によると、カガリ・ユラも乗船していて、いまザフト兵と面談しているらしい。
どうやら第1報を聞いていてもたってもいられず、キサカとVTOLでこちらに来たそうだ。どこまでも行動的な娘だ。私はハムサットに捜索の指揮を任せ、まずはザフト兵と面会することにした。
部屋に入ると、カガリ・ユラが激昂してザフト兵に銃を突きつける場面に出くわした。

 

「キラは・・・いい奴だったんだぞ!!」
「おい!!何してる!!!」
「うっ、離せ!!」

 

銃を突きつけるカガリ・ユラを慌てて引き離し、銃を取り上げる。

 

「君は自分が何をやっているかわかっているのか!!キサカ二佐!!なんで彼女を見張りもなしで会わせていた!!」

 

私は銃を奪うと、キサカに銃を渡しながら、セキュリティの甘さを問いただす。

 

「申し訳ない。まさかこうなるとは。」

 

認識が甘すぎる。彼女の性格はわかっているだろうに。

 

「・・・知っているよ、やっぱり変わっていないんだなぁ。」

 

ザフト兵は独り言のようにつぶやく。そうか、この少年がアスラン・ザラか。どこかであったような印象があるが、彼の独白に気をとられて思い出せなかった。
ヤマト少尉から聞かされていた私とアムロはともかく、我々に取り押さえられたカガリ・ユラには衝撃的な事実だった。

#br
「キラを知っているのか?」
「ああ、よく知っているよ。」

 

そこでアスラン・ザラの口から、彼の視点からみたキラ・ヤマトに対する思いや、この戦争への思いを聞くことになった。
要点をかいつまむと、小さい頃から仲の良く互いの性格をわかり合えるほどの友人であったこと。そのキラ・ヤマトが同胞にもかかわらず敵対したことに納得がいかない。
少なくともコーディネイターにとっては自衛の戦争であるのに、ということだ。さらに、同い年で、戦いが苦手にもかかわらず、自国のために戦った同僚が撃墜されてことが、我を忘れて特攻まがいの攻撃を行わせたという。
アスラン・ザラの涙ながらの告白にカガリ・ユラは同じく涙を流しながら、納得できずアスランにつかみかかる。

 

「殺されたから、殺して、殺されたから殺されて、それで最後は本当に平和になるのかよ!!」

 

彼女の発言は感情的でとくに意味がないものであるが、身近な人間が失われるということはこういうことなのだ。理性ではない。今度は彼女を止めようと思わなかった。
凶器を持っていないこともあるが、自分がキラ・ヤマトを失ったことに意外にショックを受けていることに気付いたからだ。私はキラ・ヤマトとともに酒を酌み交わした夜を思い出す。
あの内向的だが、強い決意を持った少年がフレイ・アルスターを抱いた話で真っ赤になりながら話している様を思い出す。そう、私はどこかで彼を息子にダブらせていたのだ。
アムロは察したのか、私に目を向けると何も言わずにアスラン・ザラにつかみかかるカガリ・ユラの肩に手を置く。アスラン・ザラはアムロの軍服に不思議に感じたのか、口を開く。

 

「あなたは?」
「アムロ・レイだ。話すと長くなるからかいつまんでいえば、キラの友人で傭兵だよ。」

 

キラ・ヤマトの名を聞き、なおうちひしがれる少年にかける言葉はない。一方で正規軍人が戦場で戦った結果にここまで動揺するのもどうかと思うが、こういった経験は正規兵といってもそうあることではない。
あまり責められることではなかろう。そもそもこういった少年を正規兵として前線に出すことに異常さを感じる。もっとも1年以上経過した戦争では、あり得ることか。
それでも仮にも国家が、成年の基準が異なるかもしれないが、18歳未満を戦場に投入することに強い違和感を持つが。アムロもいいたいことがある表情を見せるが、口に出せずにいる。本来彼は饒舌でもオープンな性格でもない。
カガリ・ユラはアムロに抱きつく形でなおも泣いている。アスラン・ザラも膝を抱えて泣き続ける。なんともやるせない雰囲気の中で、オーブ兵が入室してキサカに耳打ちする。

 

「ブライト司令。」
「ン・・・、なんだ?」

 

キサカが私に近づき小声でささやく。

 

「彼をザフト側へ返還したい。オーブで回収した以上は、捕虜扱いにはならないし、このまま入国させるわけにもいかない。」
「そうか。ではそちらから国際チャンネルで通信を送る形でいいだろう。まだ周辺に潜水艦がいるはずだ。」

 

回線を開くと、同じく捜索にきていたと思われる潜水艦と連絡が取れたので、オーブ救助艇は返還のために移動することになり、我々は残留して捜索することになった。
上空にあがる飛行艇を見送りながら、アムロが口を開く。

 

「人は世界が変わっても度し難い。」
「アムロ。」
「俺はキラを助けてやれなかった。レーンに任せて、アスラン・ザラを捕縛する支援ができたはずだ。」

 

アムロが悔しさをにじませる。私自身もここ最近ようやく整理がついた感情が乱されていることから、かける言葉が出てこない。
私たちはしばらく、雨上がりに浮かぶ虹を呆然と眺めているだけであった。

 

※※※

 

ラー・カイラムに戻ると、捜索の指揮を執っていた副官のハムサット少佐から報告を受けた。

 

「司令、残念ながらヤマト少尉は発見できませんでした。」
「そうか。」

 

ハムサットにも無念の色が浮かぶ。しかし骨も残らず燃え尽きることなど、あの程度の爆発であるのだろうか。私が思考を始めようとする前に、少佐は続けて報告した。

 

「ですが、ブリッツのパイロットが発見されました。」
「ほう、どこで。」
「破壊された機体のコクピットで発見されました。オーブ側が回収する際に、我々が発見しました。
意識不明の重体で、飛行艇よりも本艦の方が設備は整っているので、艦内へ搬送させました。ハサン先生がみています。」

 

モハメド・ハサン軍医中佐はエゥーゴ時代からの部下で、アーガマ退艦後はネェル・アーガマに在艦していた。
彼はラプラス事件の際に同艦が損傷した後に、退役した軍医の後任としてラー・カイラムへ配属された。腕は確かだが、一部女性兵からエロ親父と噂される。

 

「重体ということは、最悪の事態もあるのか。」
「予断は許さないとのことです。」
「わかった、ではまだザフト側には知らせないでいいだろう。変な誤解を与える可能性もあるからな。先生が最善を尽くしているのだ、余計に気負わせない方がいい。」
「了解しました。」
「ブリッツは?」
「オーブが回収していきました。」

 

少々嫌悪感を覚えたが、頭を振ってそれを打ち消すと、ここでの捜索を打ち切る決定を行い、副官に合流するように指示を出した。
私は椅子に座り艦橋から外を見渡す。訳のわからない世界にきて、戦い、そして失うか。度し難い存在だな。私は自嘲気味に笑ったが、艦橋の人間に築かれることはなかった。
5分後に別働隊から連絡が入り、トール・ケーニヒが重体で発見されたという報告を受けた。アークエンジェルに連絡を試みたが、ニュートロン・ジャマーの影響で繋がらなかった。
私はこれ以上の捜索は無意味であることを判断し、オーブへ帰還することにした。赤道の夕日は、私にやるせない気持ちを強くさせた。アークエンジェルだけでなく、私にとっても失ったのもは小さくないことを感じつつ。

 

第13話「アークエンジェルが失いしもの」end.

 
 

【次回予告】

「あまり騒ぎを起こしてほしくないといったのだがね。」

第14話「広がった波紋」