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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_18

Last-modified: 2009-09-26 (土) 09:41:25

第18話「全てを失いし男と希望を抱く少年」


 

艦隊と離脱した部隊はユーコン湾を出て、ホーパー・ベイに到達した。とりあえず落ち着きたかったが、ザフト軍の追撃を考慮すれば、直ちに部隊を再編して離脱したいところである。
私は残存戦力と被害状況をまとめることを参謀にまかせて、副官とハサン先生ら医療班を従え、ハルバートン提督やラミアス艦長をはじめアークエンジェル・クルー、キラ・ヤマト、そしてシャア・アズナブルと話し合うために艦を降りた。

降りたときに目に入ったのが、ヤマト少尉が離脱するときに助けたザフト兵を介抱している様子だ。どうやら気を失ったらしい。ハサン先生に目配せする。
先生は頷き少尉の方へと向かった。私はまずハルバートン少将のところへ向かった。アンカレッジは既に自力航行ができることが不思議なくらいに破壊されている。
退艦作業を艦長らしき人物と指揮していた提督は、私に気付き歩いてきた。

「ブライト司令。このたびは亡命受け入れ感謝する。」
「いえ、あくまで緊急避難的な措置です。今後のことを真剣に話し合わなければなりません。」

場合によっては意に反する措置を執らなければならない。

「全くです。」彼も真剣に同意する。
「アンカレッジは駄目ですか。」大破と言ってもいい状態のアンカレッジを見上げる。
「ああ、リューリクに旗艦を移す。航空機はアークエンジェルへ搬入させよう。」
「それと、我が艦隊に合流することを望ましくないと考えている者にも、船を供与すべきでしょう。」
「そうですな。だが、この領域では離脱させても危険であると思う。この現状でのこのこ一隻で戻ったりすれば謀殺されかねない。
貴艦隊はオーブへ向かうのだろう?そこで帰国措置等を行いたい。」

 

言いたいことがやまほどあるが、あまり時間はない。

「・・・わかりました。ともかく移送作業が終了次第直ちに出航しますが、アークエンジェルで話し合いたいと思います。
まだ正式にあなた方の亡命を認めるかどうかは、艦長会議の決を採らねばなりません。あとで迎えを出します。」
「了解だ。」

彼と握手をして別れると、キラ・ヤマトのところへ向かう。副官のレーゲン・ハムサット少佐が話しかけてきた。

「司令、よろしいのですか。」
「うん?見殺しにもできまい。それにアークエンジェルは戦力の増強になり得る。人員だってラミアス少佐たちだけでも残れば御の字だ。
彼女はもう戻れないだろう。ハルバートン提督もな。」

ハムサットはなおも心配そうな表情を見せる。

「わかっている。ともかく慎重に議論していこう。今回の一件はどのみち騒ぎになる。」

副官は頷くと押し黙った。私はともかく生きていてくれた少年、キラ・ヤマトに会うために彼がいた方向に足を向ける。
そこには既にラミアス艦長をはじめ、アークエンジェル・クルーやレーン・エイム中尉などパイロット連中が集まってきて、彼をもみくちゃにしている。

「生きてやがったか!!」
「心配かけやがって!!」
「つか、なんだ?その格好、似合わねぇな!」

ヤマト少尉は人だかりの外にサイ・アーガイル二等兵とカズイ・バスカーク二等兵を見つけ、彼らのところへ歩く。

「サイ、カズイ。」
「よく、生きていた。おまえ・・・。」
「うん・・・、ごめん。ありがとう。」

サイの肩に手を置くと、私とラミアス艦長の前に歩いてきた。

「お話したいことがたくさんありますね。」
「ええ。」
「僕もお聞きしたいことがたくさんあります。」
「そうでしょうね。」
ラミアス艦長が応じる。また連邦将兵の手荒い歓迎と違い、フラガ少佐が指摘する。

「ザフトにいたのか?」

キラ・ヤマトはラミアス艦長とフラガ少佐に一方的な宣言をした。

「そうですけど、僕はザフトではありません。そしてもう地球軍でもないです。」

一同がポカンとしている。私も同様だ。

 

「・・・何いってんだ?」

レーン・エイム中尉が、全員が心中で感じたに違いない疑問を口にした。

「僕はあのMSをある人から受け取りました。あの機体を託された責任として、地球連合軍にこの機体のデータを取らせるわけにはいかないんです。」

状況がつかめない一同の中で、ラミアス艦長が提案した。

「キラ君、とりあえず話し合いましょう。そのMSについてはとりあえず我々から手を触れ無いことを約束します。」

私自身も何が何だかわからないが、ともかく私も声をかけようとした。けれどもその行動は久しぶりに聞く声によって遮られた。

「ブライト艦長。」

電撃を受けたような感覚を覚えて振り向くと、かつて友だった男が歩いて来た。ヘルメットで表情は見えない。
何を言うべきだろうか。その悩みはもう1人の友によってすぐに解決した。

「・・・貴様までこの世界に来ていたとはな。」

振り向くとアムロ・レイが銃を構えていた。

「アムロ・・・。」

銃を突きつけられた男がヘルメットを脱ぐ。間違いない、シャア・アズナブルだ。彼は目を細め、アムロに体を向けた。

「どうしてわざわざ俺の前に姿を現した?返答によってはここで殺させてもらう。」
「アムロ、私は貴様に殺されてもかまわないと思っている。私とて恥という言葉を知っているつもりだ。
だがこうしてこの場に来たのには理由がある。それを聞いた上で殺すならかまわない。」

久しぶりに聞く彼の声は、やや虚無感を含んだものであった。

「貴様・・・。」

アムロは憎しみにとらわれた表情を見せる。ラミアス少佐たちはアムロのこのような表情を初めて見たのではないか。驚き戸惑っている。
私自身、心穏やかではない。この男が急ぎすぎなければ、ハサは死なずにすんだ。胸にどろりと、どす黒い感情が包む。
だがこの場ではともかく言い分を聞かねばならない。腰の銃を叩き、頭を振って私がアムロを止めようとしたとき、意外な人物が割って入った。

 

「アムロさん!!待ってください!!」
「キラ!?」

ザフトのノーマル・スーツに身を包んだ、キラ・ヤマトがアムロ・レイの前に手を広げてシャア・アズナブルの前に立った。

「キラ、どくんだ。」
「キラ君。行為はうれしいが、私は彼にそうされるだけのことをしたのだよ。」
「やめてください、アムロさん。あなたはそんな表情をしては駄目です。」

私とアムロはキラ・ヤマトの行動に少なからず驚いた。彼に何があったのだ。

「キラ、こいつは俺たちの世界にとって許されないことをしたんだ。それを許容することはできない。」
「アムロさん、それはここでこの人を撃ったところで何も解決しないじゃないですか。」
「そんな簡単な言葉で済まされるような事じゃない!!」
「でもぼくは知っている人同士が殺し合うところを見たくありません!!」

本当にキラ・ヤマトに何があったのだろうか。周囲の人も緊張して3人を見つめる。特に我々地球連邦出身者たちは複雑な表情だ。
かくいう私もそれほどみんなと変わらない。だがこの場を押さえる役は私をおいて他にいまい。

「アムロ、ともかく銃をおろせ。少なくともシャアに戦闘の意志はないようだ。話を聞いてからでも、その引き金は引ける。」
「ブライト・・・。」

アムロは舌打ちをすると銃をおろす。周辺に安堵の雰囲気が広がる。もっともロンド・ベル側は私を含めて、複雑な表情を捨てきれなかった。

「ありがとうキラ君。アムロ、まずは私が生き残ってしまった経緯を説明させてもらえないだろうか。」
「・・・わかった。」

アムロが頷く。私は長くなるのであれば、艦で話すべきであると提案し、一同はアークエンジェルに移動した。
その30分後、艦隊はアンカレッジを放棄し、残存戦力の再編成が終了させて一路オーブへと向かうことになった。

 

※※※

アークエンジェルにおいて集まった一同を前に、まずはキラ・ヤマトとシャア・アズナブルにアラスカ脱出の経緯を話した。2人は連合のやり方に驚くと同時に嫌悪を覚えたようだった。
我々の話に関しては簡潔に終えて、次にシャアとキラに関するこれまでの経緯をシャアが話すことになった。
またこの会話は全艦に放映されるように設定している。今回の事態は全員が知るべき事柄であるからだ。特に連邦出身者にとって、シャア・アズナブルのインパクトは無視できない。
彼の生き残った経緯とキラに会うまでの経緯を要約すると以下の通りである。

アクシズで意識が飛んだシャアは、気がついたらデブリ帯を漂流していた。死後の世界かと思ったが、そうでもない。だが周囲にはアクシズもアムロもいない。
しばらく状況を整理した結果、彼は自分が全てを失ったことを理解した。残り少ない空気の中で相応の死を迎え入れようとしていた。
そこへたまたま航行していた、ザフトの軍艦ヴェサリウスに救助される。シャアは救助された相手が自分の知らない未知の勢力であることを理解し、データをとられる前にサザビーのコクピットにあるデータを破壊した。
そして疑われることを承知で記憶喪失のフリをすることにした。すぐにばれるような嘘だったが、別にここで殺されてもかまわなかったという。アムロはシャアが淡々と死についてどうでも良さそうな風に話すことに、いらだちを隠せないように聞いていた。
ともかく尋問も受けた結果、どうやら自分がおかしな世界に来てしまったことを知った。だが無理に抵抗する気も起きない。惚けるのもやめようと思い始めた。どのみち真実を話しても精神病院送りだろう。だが別に送られてもどうでもよかった。
ネオ・ジオンを失い、全てが失敗し、ララァのところへも行けない現実にどうでもよくなったのである。ところが、たまたま同乗していたプラント元首の令嬢であるラクス・クラインがその境遇に同情を覚えたらしく、取りなしてもらえることになった。
シャアは彼女の純粋な目に惹かれるものを感じて世話になる気になったという。・・・このロリコンめ・・・ともかくシャアは漂流者という扱いで、シーゲル・クライン最高評議会議長の家に逗留することになった。
議長は娘の行動を咎めることもなく、自宅の一室を与えて生活させてくれた。
シーゲル・クラインは記憶喪失という気安さからか、世界情勢や自身の政策などを話してきたらしい。シャアはそこから世界の現状を知り、あきれると同時にこの世界で自分がいよいよ必要とされない異邦人であると認めたのである。

 

このときの心理状況についても彼は淡々と話していた。ここまで話すのを聞いていると、彼はすでに燃え尽きていたように感じる。
地球寒冷化作戦に失敗し、ライヴァルにも破れ、死ぬどころか、全てを失い、そのうえよくわからない世界で生かされている現実に空虚さを覚えていたようだ。

その彼に転機が訪れるのが、転移して2ヶ月くらいが過ぎた日のことである。我々ロンド・ベルがこの世界に転移してきたのだ。私の記者会見を見て衝撃を受ける。
なんと私とアムロ・レイがいるではないか。そのとき確かに再び戦士の火が燃え上がったが、同時にいまさら何をしようというのだという思いもふくれあがった。
アムロには完膚無きほどに破れている。今更どの面下げて彼の前に出て行くというのだ。なにより今の自分には行動を実行する手段がない。なにしろこの世界では精神病院行き一歩前の人間だ。
さらなる無力感に苛まれ、陰鬱な日々を過ごすことになる。

そこへ、キラ・ヤマトが運び込まれてきたのである。当初、傷ついた少年に対して、特に感傷も湧かなかった。けれどもラクス・クラインはキラ・ヤマトと知り合いだったらしく、献身的に介護した。
シャアはラクス・クラインがキラ・ヤマトに執着する理由もわからなかった。だから一生懸命看病する彼女にその理由を問うた。ラクス・クラインはキラ・ヤマトにかつて助けられたことを話し、その時の恩を返したいという。
その意気に彼女の看病を手伝うことにしたそうだ。・・・このロリコンめ・・・その後に彼が意識を回復し、キラの物語と重なるのである。

シャアがキラに会うまでの経緯は以上である。

 

※※※

さて、シャアとキラが地球に至る経緯は以下の通りである。

キラ・ヤマトを連れてきたのは、マルキオ導師という人物で、彼に対してシャアはうさんくさいものを感じていた。
元々彼は宗教家が好きではないし、SEEDという概念があることを説かれたが、信用できなかった。
だがラクス・クラインはそれなりにその概念に希望を見いだしているようであったそうだ。
シャアはその概念を我々の世界で言うニュータイプのようなものかと捉え、人類全てがニュータイプとなるべきと考えた、かつての自分を見るようで自嘲に近い感情を抱いた。
このときシャア・アズナブルはラクス・クラインに目が純粋な、そう汚れのない理想から来たものである事を理解したそうだ。
そうか、自分はそこに惹かれるものがあったのか。自分にはついぞ無かったものに惹かれたのだという。私に言わせればそういった感覚を持てるシャア・アズナブルも純粋だと思う。

キラ・ヤマトは意識を回復するとある種のTPSDになっていたそうだ。ラクス・クラインは彼の看病を通して、改めて戦争の根絶を願うようになる。
シャアによると彼女は純粋に世界平和を望んでいたそうだ。手段や方法論に具体性はないけれども、と付け加えたが。
キラが回復して数日後、シーゲル・クラインとシャアを含めた4人でティー・タイムを過ごしていた。
そこへザフト軍のオペレーション・スピットブレイクが、アラスカ攻撃を目的にしている件を外務委員のアイリーン・カナーバから聞かされる。
キラはショックを受けたが、ラクスに対して仲間たちを助けたいことを告げた。戦争で自分ができることなどそれほどあるワケじゃない。
だけど自分の力で仲間を助けることができるなら助けたいと。

 

アムロ・レイやブライト・ノア、つまり俺だが、我々との交流を経て考えるようになったという。
ラクスはキラの決意を知ると、決意を果たすための剣を与えるといいだした。
そして彼女は2つキラに注文した。できることなど少ないなどと言わずに、真剣にこの世界に対して何ができるのかを考えて欲しい。そしてその行動によって世界を平和に導いて欲しいと。
ラクス・クラインはそれをキラに願った上で自分も平和のために歌うと言った。少年と少女の決意にシャア・アズナブルも決心した。
この世界に来たことに意味があるならば、彼らを正しい方向に導くことではないか。その決心にはかつてカミーユ・ビダンを導けなかった贖罪の意味もあった。
だがその前に最後のけりを付ける必要がある。アムロ・レイに会い、その決意を話した上で、彼に裁定を任せることだ。もちろんそこで殺されてもかまわない。すくなくともこのままでララァは笑ってくれない。

シャアはシーゲル・クライン親子とキラに自分の素性を明かし、協力する旨を伝えた。
キラとラクスは驚いたが、シーゲルはどこか世を皮肉に見ていた彼を見ていたので、記憶を失っていないことにむしろ納得したようだったという。シーゲル・クラインはシャアにこう話した。

「私は貴方の言うことが事実であるならば、この世界を救えるのは異邦人であるあなた方であると思う。どうかキラ君やラクスにとって道標であって欲しい。私も協力は惜しまない。
いや、私も動かねばならない。君たちを見て決心が付いたよ。私自身にも大きな責任がある。なんといっても、ついこのあいだまで私は国家元首だったのだからね。
まずは娘が言ったように君たちがなすべき事ができるように取りはからおう。そして私も世界の混迷を払うため最善を尽くす。」

シャアはシーゲル・クラインの行動に危うさを感じたが、さしあたりロンド・ベルのところへ向かうには彼の協力が必要なので、黙っていることにした。
シーゲル・クラインは人脈をフル活用してザフト軍の工場に向かい、ニュートロンジャマーキャンセラーを搭載し、核動力で動くZGMF-X10Aフリーダムをキラに与えた。
そしてシャアにはその試験タイプとして製造されたYMF-X000Aドレッドノートを、その予備パーツを組み上げ、パーツの無かった頭にジンの頭部を付けたものを与えさせたのだ。
塗装はシャアの要請により、赤く塗装された。そして輸送船で突入ポイントまで向かい降下して、合流するに至ったのである。

 

※※※

シャア・アズナブルの語りに対して沈黙する一同を前に、キラ・ヤマトが発言する。

「僕たちはこの世界がこれ以上、争いに包まれるのがいやなんです。」
「キラ君、では君はそのMSフリーダムを使い、何をするのか。」

ジェームズ・レディング艦長が問いただす。

「争いを止めるために行動します。」
「具体的に何をするのか。」
「僕の手に入れた力で、争いの源を断ちます。」

決意に満ちた目だが、あまりに傲慢ではないか。シャアもやや皮肉な目を向けている。

「冗談ではない!!!」

ルイ・フィリップ・ピレンヌ艦長が激怒した。

「自惚れるな!!たかが1機のMSで戦争が終わるものか!!」
「でもっ!僕はこの戦争を何とかしたいんです!!」

ピレンヌは続ける。

「戦争の争いを断つだと!?貴様は戦争が戦闘マニアのサヴァイバル・ゲームと勘違いしていないか!!
いいか!!戦争とは結局のところ政治の延長なんだ!!争いの源を武力で断つと言うことは人類を滅ぼす事と大して変わらん!!
そこで立っている男がかつて行ったようにな!!」

彼はシャアを指さす。シャアは誰よりそれを理解しているのか何も言わない。

「・・・っ!!」

キラ・ヤマトはたじろぐ。私もピレンヌよりかは幾分穏やかに指摘する。最もそれでも怒気ははらんでいたと思う。

「キラ君、それでは無政府主義者のテロとたいしてかわらん。貴様は争いの源を根絶した後に、人類社会を導くヴィジョンがあるのか。」
「それは・・・。」
「無いのであれば急ぎすぎた結論など出すな。人類はそれほど愚かではない。第一次世界大戦の後で人々は不戦条約まで結んでなお戦争を回避できなかった。
望まなくても戦争は起こるという現実がある。まず、君はそうした歴史、あるいは教養を学ぶべきだ。君が望む事を達成したいのであればね。」
「ブライトさん・・・。」

キラが私に対して、あの柔弱な表情を見せる。気を張っているが、本質的に彼は強い男ではない。
そういったところに変化がないことに私は喜びを覚えたが、それを表情には出さず、言うべきことを続ける。

「君がもし、ここで学びたいというのであれば、ロンド・ベルへの亡命を受け入れる。
だがそうでないというのなら、君は残念ながら我が国にとっても危険な存在だ。今日は見逃すが、次に会うときは問答無用で打ち落とす。」
「ブライト司令!!」

ラミアス艦長が慌てる。彼の友人らも同様だ。

「当然だよ、君のような存在を国家に属してきた軍人として許すわけにはいかない。」

そう、私はマフティー・ナビーユ・エリンの二番煎じを許すわけにはいかないのだ。しかも自分が少しでも面倒を見た少年がそうなることを。

「キラ、悪いことは言わないから俺たちと来い。難しいことはたくさんあるし、俺もまだ完璧じゃないが、おまえにはまだ知るべき事が多いと思う。」

レーン・エイムが諭す。アムロも続ける。

「キラ、急ぎすぎた結果はそこにいる。レーンの言うとおりだ、俺たちと来い。そして、この世界にとって自分は何ができるのか見極めてから、行動してからでも遅くはない。君は若いんだ。」
「レーンさん、アムロさん・・・。わかりました。僕はまだ全て理解できたワケじゃないけど、僕が知らないこと、知るべき事を学びたいと思います。お世話になってもよろしいでしょうか。」
「・・・歓迎する。ヤマト少尉。」

アムロはキラと私のやりとりをひとまず満足したのち、私に振り向いて言った。

「ブライト、シャアはどうすべきだろうか。正直に言って、今の俺にはこの場で冷静な判断はできない。今の話を聞いてなお、引き金を引くべきだという思いが強い。だから、艦長に任せたい。」
「アムロ・・・。」

シャアと私は同時に困惑する。おいおい、俺だって簡単には割り切れないぞ。
周囲の視線が私に集中する。私は腕を組みしばらく黙考した。脳裏にハサの処刑が浮かぶ。彼の主張も。
シャアが言う異邦人として与えられた役割にも思いを馳せる。だが、私はそれでも異邦人がこれ以上介入することには違和感がある。
我々はシャアと違い、この世界で死すべき理由はない。我々が戦うべき対象は、たとえいくら不満があろうと地球連邦にある。
とはいえ、それを理由にシャアを殺すことはイコールではない。私は考えた末に、結論を出した。

「シャア・アズナブル。」
「どうする?ブライト艦長。」

私は渾身の鉄拳を彼に叩き付けた。

「ぐわっ!!」
「ブライト(艦長・司令)!!」

一同は唖然として私を見る。アムロでさえ、最初目が点になっていた。

「今のはカミーユの分だ。そしてこれがブレックス准将の分!!」
「ぐはっ!」

もう一発お見舞いする。

「そしてこれが貴様に踊らされて死んでいった連中の分だ!!!」
「ぐわぁ!!」

ロベルト、アポリー・ベイ、ヘンケン・ベッケナー、エマ・シーン、レコア・ロンド、アストナージ・メドゥソ、ケーラ・スゥ・・・そして、マフティー・ナビーユ・エリン。

シャアは艦橋の壁に叩き付けられる。

「言いたいことはやまほどあるが、とりあえずこれで俺の気持ちは済ませることにする。以後大尉はアークエンジェル所属とする。無用の衝突は避けたいからな。」
「やってくれる・・・な、ブライト。」
「貴方の行動が、本当のものであるかは、貴方の行動次第だ。それと合流予定者にも明言しておくが、我々の基本方針はこの世界への非介入であることも覚えておいてくれ。」

あまりの殴り方に若い連中は少し引いている。

「さて、幹部会議を始める。提督、及び艦長と各参謀、佐官級は会議室へ、またクワトロ大尉とヤマト少尉もオブザーバーとして参加を許可する。皆来てくれ。」

皆が一様にため息を漏らして、艦橋を出ていく。通路を歩いているとき、アムロは少し毒気を抜かれた笑みをこぼして話しかけてきた。

「ふっ、ブライト。おまえこれじゃ専制君主だぞ。」

共に歩いていた艦長たちは笑い出す。あながち間違ってない指摘に私は憮然としたが、もっともなので、自分も苦笑させられることになった。
皆の笑いが一通り済むとアムロは重ねて訊ねてきた。

「なぜ大尉と?」
「俺自身がシャアを味方として遇することに、違和感があるからだ。一種の逃避だよ。
それに大佐格の扱いをするわけにもいかん。これは整理が付くまではそうさせてくれ。」
「なるほど。」
「だが・・・。」
「ん?」
「やはり奴はシャア・アズナブルだよ。」
「・・・そうだな。会議の後でもう一度、奴と話してみるよ。」
「アムロ・・・。」
「大丈夫だ。念のため銃も持っていかない。やるとしたらブライトみたいにぶん殴るだけで済ませることにする。」

それからアムロは何か考え込んだので、私はそっとしておくことにした。そして、私も彼と話をしてみようと会議室に付く頃には考えるようになれていた。
もちろん全てがチャラにできるとは思わないが。

 

※※※

会議室に付くと、我々はある意味でシャアとキラ以上に問題な案件を討議することになった。
すなわち、亡命部隊の扱いである。残存戦力は艦艇9隻、航空機5機、輸送用ヘリコプターが3機に人員が1万2541名である。
自分たちの数倍では済まない連中がやってきたのだ。補給参謀のトムスン少佐は二日酔いでもないのに青い顔をしている。

とりあえず決まったことは、我々の軍事機密以外の基本的な情報の開示と、口減らしである。
現実問題として、将兵の多くは帰属する国家を簡単に捨てられないだろう。こちらとしてもこれだけの規模の将兵を養えない。
提督及び各艦の幹部が兵士に説明し、祖国への帰還は可能であることを話した上で、自己の判断に委ねさせる。
おそらくはこんな傍目には正体不明の流浪の傭兵集団に映るような部隊に、望んで参加する脳天気な奴はいないだろう。
そして帰国に際して何か問題がある場合は、申し訳ないが提督に責任をとってもらうことで一致した。
ハルバートン提督はもとより自分がその立ち位置にいることは覚悟していたので了承してくれた。
外交チャンネルはペロー参事官を通すことも決定した。場合によってアズラエル氏にも頼まなければならない、見返りは求められようが。
それらを決めた上で、もう一つハードルを高くした。亡命後、尉官以下は情報の統制と発言権の制限を一定の時間受けること。
これは特に陸軍将兵にあてた「肩たたき」である。基本的にこの大人数のほとんどが陸軍であるからだ。
もっとも、艦隊の方針に対する発言権は水上艦隊側にもある程度課すべきだという意見も出たので、水上艦隊の艦長には当面の間は艦長会議の議決権を一隻につき0.5とした。
水上艦の艦長の一部には異論も出たが、最終的に不承不承ではあったが受け入れた。そこまで決めた後で会議は一度休憩を入れることにした。
アラスカ艦隊の幹部が将兵への説明を行うためである。いよいよ統制国家だな。
周りの人間が休憩を入れていく中で、私は自分の意に沿わない選択をし続けていることに憮然としていた。

ただでさえ狭い選択肢をさらに狭めたという自覚とシャア・アズナブルに対する言いようのない感情が私の心を重くしていた。

第18話「全てを失いし男と希望を抱く少年」end.


次回予告

「この世界で生きていく以上は、生きる者の責任は負うべきだと思うが?」

第19話「異邦人の苦悩」