Top > CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_22
HTML convert time to 0.037 sec.


CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_22

Last-modified: 2009-11-07 (土) 12:32:53
 

第22話「刻の涙と虹の光」

 

私は諸事を片付けて、副官のレーゲン・ハムサット少佐とオノゴロ島の港湾部に向かった。
とりあえずキラと、突然現れたアスラン・ザラを訪ねるためである。群がる野次馬をどけて視界が広がったとき、私の目に入ってきたのは、カガリ・ユラ嬢が2人に抱きついている場面だった。

 

「この・・・バッキャロー!!!」

 

つくづく体育会系な姫だ。私は思わず苦笑させられる。まっすぐな思いは時として物事を単純化してくれる。こう思ったのは私だけじゃないらしく、キラやアスラン・ザラも苦笑しているようだ。そこに後ろから声があがる。

 

「アスラン・ザラ君!」
「ハーネンフース大使!」

 

駐在オーブ大使のユリウス・ハーネンフース氏だ。アスラン・ザラが敬礼する。大使の声には怒気が含まれていた。

 

「突然戦場に現れ戦闘に参加するとは、どういうつもりか。本国からの指示かね?」
「特務隊フェイスとしての判断です。自分はそこにいる人物への事情聴取が目的です。」

 

アスラン君はキラに体を向ける。大使は納得した様子を見せない。

 

「だが、それにしても戦闘に参加する必要は・・・」

 

ここでこれ以上話が展開することは好ましくない。

 

「大使、ここでは人目に付きすぎる。ラー・カイラムの一室を提供しますが?」
「いや、しかし・・・」
「大使、場合によっては公にしかねる事態かもしれません。」

 

オーブ駐在高等弁務官のメインザー中佐が指摘する。この役職は実質大使である。
弁務官という役職名は、もともと公然組織となる前であることや、全権大使を置くと手続きが面倒であったことなどから、外交官として何か役職名として妥当なものを検討した際に引っ張り出してきたものである。
まぁhigh commissionerにあるcommissionerの名詞形を考えれば、それほどおかしなものではない。ただ、もはや公然の組織になり1ヶ月以上が過ぎている。
今更だが全権大使にしてもいいかもしれない。ただ、それをオーブと対話できる状況ではないが。メインザー中佐を見て、場違いな方向に思考を働かせかけたが、大使の返答で現実に戻される。

 

「わかりました。」
「待って下さい。ブライト司令、私も同席させていただきたい。我が政府は、彼の戦闘参加に関する前後関係を知る権利はあると思う。」

 

大使の了承に合わせて、ユウナ・ロマ・セイラン弁務官が割って入ってきた。彼は今回の戦闘では、ラー・カイラムに乗艦せず、外務省で他国と交渉していたはずだったが。
この騒ぎでこちらに来たのだろうか。ハーネンフース大使は一瞬考えるそぶりを見せたが、アスラン・ザラの戦闘介入という事実の前には無下にできなかった。ともかく我々はこの厳しい夕日の光に照らされる埠頭を後にした。

 

※※※

 

結論から先に話すと、アスラン・ザラはラクス・クラインからキラ・ヤマトがフリーダムを保有しているとの情報を正確に知ることになったという。

 

私は現状のプラントの情勢を思い出す。現在のプラントはアラスカの作戦失敗の頃より早期講話派が、活動を開始して大きな論争になっている。早期講話派の中心人物は、前最高評議会議長シーゲル・クラインである。特にパナマ攻略後に大きな勢力になりつつある。

 

「開戦の当事者が、こうした発言をすることに違和感や反発をもつものが多いだろう。だが!!あえて言わなければならない。今時大戦は我々の独立を希求するものであった。もはや対話に十分な成果は、得られたのではないか。
連合が全てのマスドライバーを喪失した。これは大きな契機ではないか。けれども、情勢を鑑みるに戦争は現在のところ終わる兆しが全くない。それはなぜか!それは双方の人種差別感情である!
残念ながら現在の我が国にも、かつての白人のごとくコーディネーターの優位論が幅を利かしている。だが!!その感情は連合との戦争を救いのない方向へ導きかねないのだ。そのようなことはないと楽観する意見もある。
だが!!!あえて問いたい。我々は新しい人類なのだろうか!!否!ジョージ・グレンは「仲介者」を期待したのであって、新しい人類たろうとはしなかったはずだ。しかしながら友人たる現議長は、そう考えてはいないようだ。それは傲慢な意見だ。
友人だからこそ進言したい!!我々が独立を達成し、人類社会の中で過ごしていくためには、その考えは障害にしかならない!!だが!!私に対して、そのような発言をする資格なしと指摘する人物がいる。その批判に対しては甘んじて受け止める。
あえて逆説の言葉で語らせて貰おう。だが、だが、である!今時大戦の当事者だからこそ、この戦争を悪い意味で人類最後の戦争にしてはいけないのだという思いがあるのだ!!」

 

さらにその令嬢のラクス・クラインが、音楽番組で発言した。

 

「みなさん、既に戦争が始まり1年以上がたちました。その戦火はすさまじく、悲しむべきことです。これ以上の戦争は、ナチュラルとコーディネーターの間により深刻な対立を招き、人間を滅ぼす事になりかねないのです。私は一刻も早い和平を望みます。」

 

この“but”speechと娯楽番組においてのラクス・クラインの発言は、内外に波紋を広げることになった。外では中立国のスカンジナヴィア王国が、仲介を申し出たのである。まず国王のグスタフ・アドルフ5世が発言した。

 

「プラント政府が停戦を希望するのであれば、我が国は連合政府に対して働きかける用意がある。」

 

続けて同国のハーラル・ヤノスラーフ首相も議会で仲介になる事を表明したのである。但し連合政府は、事実上黙殺している。最高評議会は、特に議長を中心とした主戦派が反発した。

 

「選挙で敗北して日も浅いというのに、ご自身の責任を棚上げにしてよくもそんなことが言える!!」

 

反論の口火を切ったのは、国防委員長のユーリ・アマルフィだ。彼は息子の戦死の報を受けた後に、主戦派に傾いている。彼はニコル君の生存にどう思うのだろうか。
そして続けて主戦派の頭目である最高評議会議長のパトリック・ザラが、人種優位を基本とする演説を行って反論した。

 

両者の論争は、戦争継続に関するものだけでなく、やはり人種的な感情をはらんだ複数性を有したものであった。その状況下で閣僚の外交委員長のアイリーン・カナーバが、パナマ制圧の後に条件付きで和平案に賛同したのである。
彼女は現実的な妥協を目指すべきであると主張し、その意見にタッド・エルスマン議員など議会の有力者も少なからず講和論に賛同した。そのため議会は現在のところ紛糾しているようだ。オーブ戦に対して明確な姿勢をとれなかった要因ともなっている。

 

さて、時系列は前後したが、その状況を踏まえてアスラン・ザラの話を進めていく必要がある。彼は本国に戻ると、アラスカの敗北と最新鋭の機体の強奪を知らされる。動揺する中で彼は、父親よりストライク撃墜の功績と七光り人事から、特務隊フェイスに任命されたのである。
その最初の任務は新型機強奪事件の調査であった。アスラン・ザラは新型機にニュートロンジャマー・キャンセラーが備わっていることに驚きを受けたが、そこは国の方針として受け止め、ともかく任務に就くことにしたのだそうだ。

 

調査は司法委員長のジェレミー・マクスウェルと、特務隊フェイスの司令であるレイ・ユウキとすることになった。ともかく困難なことは、誰が強奪犯かわからないことである。
司法相もユウキ隊長も、新型機が政権内部にすら知らされていないくらいの極秘開発だったからこそ、特定は容易だと想定していた。
なにしろ、司法相を含めて閣僚クラスでも知らされていないことだったのだ。ところが全く特定できない。ともかく情報を知り得ただろう人物の情報を調べたのにも関わらず、何もわからなかった。
立場上知り得たであろう前議長すら調べたが、特段疑わしいものは出てこなかったという。

 

その後は他の2名にすべき公務が多々あるため、アスラン・ザラが単独で捜査することになった。かくて彼は司法省の一室で情報部の職員と資料を基に調査することになった。
国内はその間にパナマの攻略に成功し、アラスカ敗戦の動揺は沈静したものの、そこにクライン親子の反戦演説が行われ、国内は大きな論争が行われる状況となっていた。
彼はラクス・クラインの変化に、少なからず困惑していたけれども、会いに行かなかったという。この辺りに彼の性格が表れていると私には感じた。

 

さて、彼は困惑した感情を脇に仕事に打ち込んでいたところ、気になる情報を見つける。それは事件の翌日に、クライン邸にいた記憶喪失の人物が亡くなったという記事だ。
確証はないけれども、タイミングとして引っかかるものを感じたのである。彼女に会おうかと考えたその時に、ようやく提出されたアラスカの被害報告より、撤退したザフト兵の中から正体不明機の情報が入ってきた。
調べたところ、どうやら問題の機体である。その後の状況から少なくとも問題の機体は、先日異世界から転移したと自称する、と彼は考えていた、ロンド・ベルに合流したようだ。
では地球に行く必要がある。その前に気になった情報と胸に刺さった感情を解くために、婚約者であるラクス・クラインに会うと称してクライン邸に向かったのである。

 

クライン邸に着くと、クライン前議長に迎え入れられ、ラクスのところへと向かった。そしてラクス・クラインとお茶を飲んでいるときに、いくつかの話題の後に彼女から戦争について話を切り出されたのだという。

 

「アスランはこの戦争をどうやって収拾できると考えていますか?」
「もちろんプラントの独立とユニウスセブンの賠償を連合が承諾したときです。」
「しなければ永遠に戦うのですか?」
「・・・。お父上と和平を求める活動をしていることは知っています。確かにパナマの陥落はそのきっかけになるかもしれません。
ですが、現状のところ連合は黙殺しています。向こうが応じていない以上は、終わることはないでしょう。
その間に何もしないわけには行かないと思います。」

 

ラクス・クラインは、特に動じた様子はなかったらしい。そのうえで彼女は、さらに問うてきた。

 

「こちらから譲歩することはできませんか。」
「・・・。それは政府が決めることで、軍人の私が決めるべき問題でありません。」

 

ラクス・クラインには失望したふうでもなかったが、残念な表情は見せた。
一方でアスラン・ザラにしてみれば、彼女の問いかけは彼女に対する違和感が増えることにしかならなかった。
ただ、そう言った感情は出さずに、訊ねた目的を済ませることにした。

 

「そうだ、ラクス。ここに滞在していたシャアという人は、なぜ亡くなったのですか?」
「彼はいるべきところへと戻られたのです。」
「?」
「キラと共に地球のロンド・ベルにいます。」
「ラ・ラクス、何を言っているのです?」
「シャア・アズナブルという御方は、ロンド・ベルの方々と同じ世界から来たそうなのです。ですから、彼らと行動を共にしていたキラと共に地球に向かったのです。」
「いや、キラは・・・。」

 

動揺するアスラン・ザラに、ラクス・クラインはたたみ掛けてきたそうだ。

 

「貴方が殺しましたか?」

 

アスラン・ザラは、驚きと動揺が織り混ざり即答できなかったという。

 

「貴方は、敵であるという理由で友人であるキラを撃ちました。ならば私も撃ちますか?『ザフト』のアスラン・ザラ?」
「俺は・・・。」

 

彼は答えることができなかったそうだ。そこに彼女の父親が2人の会話に割って入ってきた。

 

「ラクス、それは軍人であるアスラン君には酷な質問だよ。」
「クライン前議長・・・。」
「お父様、ですが1人1人の意識から変えていくことは必要であると思うのです。」

 

前議長は2人の茶会に入り、アスランとラクスに語りかけた。

 

「私も意識の改革は必要だと思う。公職に就いている人間に問いかけることもな。けれども答えや返答を性急に求めるものではない。」

 

そう娘に語りかけた後で、アスラン・ザラに自身の意向を伝える。

 

「さて、アスラン君。事情はラクスが話したことが真実だ。私はシャア・アズナブルとキラ・ヤマトに機体を与えてロンド・ベルの元へと向かわした。
それはロンド・ベルという存在が、我々の世界に1つの方向を促しうる可能性を秘めていると考えるからだ。」
「なぜ、そこまで言い切れるのです!」
「キラ君は戦争のむなしさを知った少年で、シャア・アズナブルは、人類の可能性を語れる男だったからだ。」

 

その話を聞いたとき、シャアが合流したときにクライン前議長と政治的な対話をしていたことを思い出した。
前議長はなおも動揺するアスランに自身の考えと1つの提案をした。

 

「私は、新しい可能性を持つ人類にとって調整者であれという、ジョージ・グレンの意思を尊重したい。彼らに私は可能性を見いだしたのだよ。彼らは人類の新たなる可能性かもしれない。
だから彼らの進むべき道に力を貸したのだ。私も元首経験者だ。逃げはしない。だが、彼らと話してから、もう一度私とラクスに会いに来てから考えてくれないだろうか。」
「・・・ラクスと閣下がされたことを私が理解できるとは思えません。ですが、俺は自分自身の気持ちに決着を付ける必要はあると思います。だから地球に行き、会わなければならない奴に会います。
それまでは、閣下。国家元首としての誇りと、ラクスの婚約者として、逃げないという貴方を信じます。ですからとりあえずは判断を保留します。但し、彼らと話を終えたとき場合によっては、即座に通報させていただきます。」
「それでいい、感謝するよ。」
「アスラン、ありがとう。貴方のそういう誠実なところは好きですよ。」

 

シーゲルは穏やかに応じ、ラクスは少し顔を輝かせて感謝したそうだ。好きという言葉を、考えてみたらあまり言われていなかったアスランは、多少顔を赤らめてから屋敷を去り、地球に行くために屋敷を後にしたそうだ。

 

さて、地球に行くとしてラクスからの情報を貰ったとはとてもいえない。ただ、元から未確認機に対する調査として、出撃する手続きは行っていたので、問題はなかった。
そしてジョン・ウィラード隊長が指揮する部隊が、ちょうど地球に対して大規模な補給部隊を出撃させるところだったので、それに便乗して地球圏に向かうことにしたのである。そうしてこの場にやってきたというわけだ。

 

※※※

 

アスラン・ザラの話を聞き終えたとき、一同は、いや、キラとクワトロ大尉は除かれるかもしれないが、一様にどう反応して良いのかわからない、というものであった。

 

「クライン前議長は正気なのか・・・。いや、そもそも君は前議長に対して、いや確かに即断できる性質の・・・。」

 

このハーネンフース大使の言葉は、戸惑いと動揺の混合した感情から吐き出されたもので、その場にいた人間が共有していたと言ってもいい。
何ともいえない一同の中で、作戦参謀のスミス中尉がクワトロ大尉に問うた。

 

「大尉はいったい何をクライン議長に吹き込んだんですか?」

 

もっともだ。クワトロ大尉は、肩を上げて戯けて見せた。

 

「それほど大それたことは言っていないさ。この世界に対して簡単な批評をしただけだ。」
「そうはいうが、彼はそうも貴方に期待する理由は何だ?」

 

ピレンヌ艦長が追求する。

 

「そうだな、キラ君が決意したとき、私なりの人類社会のあり方を話したことは認める。だが、それが彼にそこまで影響を与えるとはな。」
「まさか、ニュータイプ論を説いたのか?」
「ピレンヌ艦長、私は伝道師ではないぞ。ただ世界を誤った方向に導きたくないのであれば、すべきこと、すなわち人類の意識が穏やかな方向に改善されるべきであると述べただけだ。
そして、そのためには狂気めいた今時大戦は終わらせるべきだといったくらいだよ。私自身、転移した世界においてさえ、刻の涙が流れ続けることに思うところがある。
だが、それほど突飛なことは言っていないし、言う資格もないさ。ただ、前議長の方は異邦人を利用しようとしている節を多分に感じるがな。」

 

クワトロ大尉はピレンヌ艦長に語る形で皆に話す。ハーネンフース大使は頭が痛いのか左手で頭を支えている。さもあろう。
私はシーゲル・クラインという人物が彼なりに、この救いの少ない戦争に向かい合おうと考えていると感じた。
ただ、我々を利用しようという意識が露骨に過ぎて不快にも感じる。長時間に渡る戦闘のためかもしれない。

 

「シャア、クライン前議長はどう俺たちを利用しようとしていると思う?」

 

アムロが、クワトロ大尉に問う。アムロは無意識なのか、それとも割り切れないのか呼び方がしばしば交差する。

 

「そうだな、私をダシにして我々と交渉の席を持つくらいは考えているだろう。大使、貴方の上司であるカナーバ外相は、クライン前議長とは昵懇なのだろう?」

 

急に声を掛けられた大使は、ハッと顔を上げる。そして、襟首をただして答える。

 

「そうだ。だが、昵懇だからと言って外相の指示によるロンド・ベルとの接触が、クライン前議長が絡んでいると結びつけることはナイーブな論理だ。」
「それはそうだ。それに今の貴方はそれ以外にいいようもない。だが、前議長が我々という存在を用いて、プラントにおいて優位な立場を得ようとしているだろう。
政治的な問題だけでなく、軍事的な要因も含めてな。あるいは後者の方が強いかもしれんが。」
「大尉、少し礼を失していると思うが。」

 

クワトロ大尉の言いように、メインザー中佐がたしなめる。私は一連の会話を黙って聞くことに徹している。まだ、自分が発言して方向性を示すには、情報がたりないと思うからだ。
例えば、このハーネンフース大使は政治的にいかなるスタンスなのか。彼の発言は真意からなのか。クワトロ大尉の発言がどれだけの影響を議長に与えているのか。疑問は尽きない。
もちろん私としては、プラント政府に利用されることは好ましくないと考えている。だが、オーブが崩壊した後のことを考えなければならない。
ヘリオポリスを拠点とする以上は、宇宙に露骨な敵対者がいることは決して好ましいことではないのだ。もちろん連合との全面対決こそ、今回の戦闘でもその片鱗を見たが論外である。
全くなんと我々は綱渡りに等しい行動を求められているのだろうか。そうこう考えていると、アスラン・ザラはキラに視線を合わせると彼の席に向かい、その前に立つ。

 

「キラ、俺はおまえを親友だと思い、戦いの中でどこかで迷いがあった。それはヘリオポリスでおまえと会って以来ずっとな。俺は戦いに徹しきれなかったんだ。
何でおまえが敵に、地球軍になるのかも理解できなかった。けど、戦いにはそういうことだってあるんだ。父親が子供を、夫が妻を殺すことだってある。
そういうことだってあるとわかっていたのに、おまえを敵として撃ち切れなかった。
そのために俺は戦友を失うことになった。俺はおまえを許せないこと以上に、自分を許せない。迷いが自分ではなく、俺にとって大切な友人を失わせることになったことだ。
だから、俺はおまえに対するしこりが消えない。だが、その一方でラクスからおまえが生きていると聞かされて、うれしいとも感じているんだ。
だから、フリーダムの問題だけじゃなく、おまえと会って話さなければならないと思ったんだ。俺自身の気持ちに決着を付けるために。」

 

人間とはそういうものだ。実際に起こらないとそうそう行動はとれない。いや、行動すらとれない場合も多い。キラからも聞いていたが、仲の良い友人であったのだろう。
私も多くの友人を失い、果ては息子まで失った。アスランの独白に対してキラも答える。

 

「アスラン、僕はそのことには答え続けている。君は僕にとって大切な友達だ。けれどトールやサイ、ミリィだって大切なんだ。僕はみんなを守りたかっただけなんだ。でも、戦ってしまった。
僕たちは身の回りにそういったことが起きないと、変わることができないのかな?僕はそれじゃいけないと思う。僕たちは本当なら殺し合わなくても理解し合えたはずなんだ。
けれども僕たちは戦ってしまったんだ。僕はこうしたことが、これ以上起こって欲しくない。でも、具体的にどうすべきかわからない。だから、僕はこのロンド・ベルでそれを学びたい。」

 

キラの言葉に、アムロとクワトロ大尉は誰にも気付かれないくらい、おそらく私くらい付き合いが長くないと気付けないくらいだが、沈んだような雰囲気を纏う。
おそらく私もそうではないのか。あのとき、友人の喪失を受け止めることに必死で、息子のケアを怠ったのではないだろうか。話し合うこともせずに。私の回顧をよそに、2人の会話は続く。

 

「どうしてそうなるんだ?この人たちは信頼に値する人々なのか?」
「うん、少なくとも地球軍やザフトよりかは、はるかに信用できるよ。」

 

アスラン・ザラは、少し考え込む。しばし沈黙した後に答えた。

 

「キラ、おまえが前に進みたいということ、そしてこの戦争を止めたいという気持ちはとりあえずわかった。まだ納得はできないけどな。
だが、ラクスがおまえにフリーダムを与えて、おまえもその機体で行動しようとしたことは理解できない。それは俺が志願して軍に入ったからだと思う。
ユニウスセブンのように、自分たちが理不尽な理由で殺されたくないという思いからこの戦争に身を投じた。そのためには集団としてまとまらなければならないと信じている。
多分ラクスやおまえと俺でそこが違ったんだと思う。戦うきっかけが違うんだ。
だからこそ、さっきの話と矛盾するかもしれないが、受け身のまま戦い続けたおまえがニコルを殺したことに、自分への気持ちと同様に許せない気持ちがあるんだ。」

 

彼の言い様は理解できる。組織内での目標達成と個人レヴェルの目標の達成は、イコールではない。
かつて私もエゥーゴの現実に苦しんだ経験がある。だが、彼の苦悩はある意味で矛盾したものをはらんでいる。
とはいえ、すっきりと解決できる類のものではない。組織と個人の折り合いの付け方など個人が片付けるべき問題だ。
アスラン・ザラにとって不幸だったのは、組織に入り現実との矛盾を学んでいるところに、そういったしがらみを意に介さずに行動しようとした友人と婚約者がいたことだろう。
もちろんキラは今、我々と共に行動することでそれを学ぼうとしているが。苦悩するアスラン・ザラに、ハサン先生が口を挟んできた。

 

「アスラン君、戦う理由は様々だが、少なくとも死者は君を縛る鎖ではないぞ。ただ、君は運がいい。メアリー君!」

 

彼はニコルとディアッカを連れてきて待機させていたようだ。トールも共にいる。アスランは心底から驚き、次の瞬間目に涙をたたえて彼に抱きついた。

 

「ニコル!!!!!」
「アスラン、無事でよかった!!」

 

2人は固く抱きしめ合い、無事を確かめ合う。

 

「俺もいるんだけど・・・。つか、さっきから俺のこと忘れてね?」

 

ディアッカが苦笑気味に指摘する。その言葉に思わずトールが笑い、釣られてキラやアムロも吹き出す。確かに存在感があるというのに忘れられることは滑稽だ。
私や部屋のみんなも笑いに包まれる。彼のおかげで多少和んだ後、ユウナ・ロマが話を切り出した。

 

「アスラン・ザラ君、一連のいきさつは理解したが、今度の戦闘介入は法的に妥当なのか。場合によっては、我が政府は君を機体没収の上で、拘束しなければならない。」
「おい、ユウナ!何を言っているんだ!」

 

カガリ・ユラが噛みつく。だが、これはユウナ・ロマが正しい。無論彼が乗ってきた機体の性能を知りたいという欲求もあるだろうが。アスラン・ザラはニコルとの抱擁を終え、ユウナ・ロマに向き直る。

 

「私は特務隊フェイスです。フェイスに所属するものは、事実上の白紙委任状を有しているとご理解ください。
私はその権限を持って、駐在オーブ大使館職員保護とフリーダムが連合側に捕縛される危険性を考慮して戦闘に介入することを判断しました。ご不満ならこちらの大使か、本国へ抗議ください。」
「・・・全く便利な権限だな。」

 

彼は忌々しげにいう。その気持ちは理解できる。私はユウナ・ロマに心の中で同情した。不快さを隠さないユウナ・ロマを脇に、アスラン・ザラは私の方を向いて問いかけてくる。

 

「ブライト・ノア司令。質問があります。」
「何か?」
「貴方はフリーダムの機能を利用しようと考えですか?」
「嘘をついても仕方ないから、はっきり言うが大いにある。私はこの世界に来てから一貫して自分たちの生存権を確保するためには何でもする。
但しキラ、いやヤマト少尉がやたら厳重にプロテクトをかけていてね。利用しようがない。疑うのであれば確認するといい。」

 

アスラン・ザラは、その件に驚きキラに目をやる。キラはまなざし強く頷いて答える。

 

「託された重みはわかっている。個々で誰かが利用しようとしたら、自爆させてでもそれを防ぐよ。」

 

もっとも、私としてはニュートロンジャマー・キャンセラーの技術は、数ある選択肢の1つに過ぎないので、それほど固執していないということもある。
私とキラの言葉にアスラン・ザラはどう感じるだろうか。実のところ信用されなくても特にどうということはないのだが。
問題が生じた場合は、彼の納得を得ることよりも、まだ頭を抱えるハーネンフース大使を通して政治レヴェルで決着を付ければいい。
それこそ個人を納得させるのでなく政治体という組織を納得させればいいのだ。具体的に如何にすべきかを考えようとしたとき、レディング艦長が発言した。

 

「さて、それでどうするね?アスラン・ザラ君。」

 

その言葉に全員がアスラン・ザラに視線を向ける。

 

「と、いいますと?」
「君はとりあえず事情聴取できた。ともかくもここに来た目的は果たしたわけだ。それでどうするね?本国に直ちに報告するなり、ヤマト少尉を捕縛するなり色々考えられるが。
もちろん我々としては、ヤマト少尉の捕縛など了承できない。君がこれからどうする気なのかを知りたい。」

 

アスラン・ザラは、もちろんそれについて考えてなかったわけではないだろうが、すぐに返答しなかった。できなかったという方が本当のところだろう。
彼は自分の信念と、現実の矛盾が生じたときに迷いやすい性格ようだ。根がまじめなのだろう。

 

「現在のところオーブは戦闘状態です。とりあえずは、情勢が落ち着くまでオーブ大使の安全を保証するための行動を優先したいと思います。」
「それは大使館に張り付いて防衛するのか、それともロンド・ベルないしオーブ側と共同戦線を形成すると言うことか?」

 

レディング艦長が再び問う。基本的には後者が聞きたいところなのだ。オーブ側の人間がいるので、我々は密約のことを表にできない以上、行動を問う場合は持って回した言い方しかできない。
最もレディングや私は政治家ではないので、その辺りうまくやれていないかもしれない。ユウナ・ロマ辺りは察しているかもしれないな。
そのことに気付いたのか、精神的に立ち直ったハーネンフース大使が、正式に表明した。

 

「セイラン殿下、我がプラント大使館職員一同は、この情勢下において自分たちの安全確保を目的に、ロンド・ベルに避難します。」
「ふむ、それは我が政府の陥落を前提にしているようで不愉快な表明ですな。」

 

発言しようとしたカガリ・ユラを押さえて、不機嫌にコメントして見せた。大使は特に意に介さず所見を述べる。

 

「無論、我々は連合の不当な侵略に対して、オーブが屈することがないことを期待しています。
ですが、現状において我が政府の支援を拒否し、ロンド・ベル以外の支援なしでこのまま戦闘が推移したとき、我々の安全は確実なものではないと考えます。
特に連合の一部の暴発した将兵が、貴国の主要施設を破壊するまえに、感情から我々を攻撃する危険性はゼロではありますまい。」
「なるほど、不愉快でありますが、ともかく大使に何かいえる状況でもない。私には特に権限があるわけではないが、外務省及び首長に伝えておきましょう。」

 

ユウナ・ロマの発言からその意向をくみ取ることはできないが、ともかく大使職員は正式に艦隊へと避難することになる運びとなった。大使がアスランに正式に要請する。

 

「ゆえに、アスラン君。君には当面ロンド・ベルに乗艦した本職の護衛を要請する。」
「了解しました。」

 

ようやく話がまとまりかけたところに、ニコル・アマルフィが意外な提案をしてきた。

 

「ブライト司令、そういうことであれば、明日の戦闘は僕たちも参加させてください。フェイスの指揮下に入ったことにすれば、後で大きな問題にはならないと思います。」

 

その提案には魅力を感じるが、本当に問題はないのか。それにディアッカはともかくニコルは、その目で戦闘に耐えうるのか。

 

「しかし君たちは・・・。」
「それに僕たちが乗っているか何て、向こうがわかるわけではないはずです。」
「俺たちも頭数に入れれば、楽になるんじゃないですか」

 

彼らの思いは理解できるし、実際頭数が増えるのはありがたい。だが・・・。

 

「司令、彼らは信用できます。ここ最近は隊の連中とも仲良くやっている。それに今回はザフトが相手ではありません。それにディアッカの言うとおりで、連中には誰が乗っているかなどわからないでしょう。」

 

アーネスト・ソートン中佐が、彼らをアシストする。彼は寡黙な男だが、体格の重厚さと強い意志が、部下にとって強い信頼を集めている。まさに部隊の要となっている男だ。
この1ヶ月、医務室で彼も彼らとの交流を深めたのだろう。料理が趣味で、よく差し入れていると聞く。彼は部隊内に存在する料理愛好会『美食クラブ』で、重要な料理人であるという。
ちなみに私は結成されてしばらくはそんな組織があることを知らなかった。我が部隊には他にも多くのクラブがあるらしい。困ったものだ。
不毛な思考に対して頭を振り、戦力が多い方がいいという判断から、彼らの参加を容認することにした。せっかくの機体を遊ばしておく手はない。

 

「いいだろう。但し、ニコルは艦隊の直掩のみに専念することが条件だ。それともうひとつ、肝心のアスラン・ザラ君はそれで何か問題はあるか?」
「いえ、異論ありません。」

 

こうして、暫定的ではあるけれども、2人のパイロットがアークエンジェルに配属された。最も法務官のモリス中佐は、いやな顔をしたが。
解散すると、アスラン・ザラは、キラ・ヤマトを呼び止めていたが、私にはすべきことが山積みなので、とりあえずは艦橋に戻ることにした。
ただ、アムロがキラとの話に参加するようだったので、そこは彼に任せればいいとも思ったのだ。

 

我々がこうした議論や、ささやかな休息をしている間もオーブ空軍と海軍が小競り合いをしていたが、大きな衝突にはならなかった。
連合軍は占領したアカツキ島で増援を集め、戦力を再編しているからだ。ともかくも、こうして我々は慌ただしい一日に幕を閉じたのである。

 

※※※

 

翌朝9時、連合軍の攻撃が始まった。特に奇襲をしないところをみると、戦力に自信があるのだろう。確かにアカツキ島から出撃してきた航空機群が、ヤラファス島に殺到する。
オーブ軍も迎撃するが、如何せん数が足りない。連合軍は昨夜のうちに増援が到着して数が増えている。それにしてもそうまで躍起になる必要があるのかとも思うが。
いや、昨日想定以上の損害を受けたために、かえってプライドを傷つけたのかもしれない。大軍にとって自軍よりも少数の敵に苦戦するというのは、屈辱以外の何物でもない。

 

昨日の北東艦隊と北西艦隊は合流して44隻という陣容で、オーブ第1艦隊に攻撃を開始した。
オーブ側はアカツキ島を防衛していた第2艦隊の残存戦力を統合しても29隻で、戦力差がより開いた状況で迎え撃つことになった。
連合軍は一斉攻撃を行い、オーブ艦隊は早々に3割以上の被害を出してしまう。この被害に慌てたオーブ軍令部は、早々に支援要請を我々に出してきた。
しかし、こちらにも航空機群の波状攻撃は殺到してきている。それにアカツキ島からこちらに対する揚陸部隊が投入される危険を考えれば、大規模な部隊派遣は避けるべきだ。ここは遊撃部隊を派遣すべきだな。

 

「アムロ、すまないが出てくれ。遊撃部隊でヤラファス上空の航空機群を撃破してくれ。」
「わかった。」
「ペーネロペーの稼働時間程度戦ってくれればいい。」
「ああ。」

 

νガンダム以下、遊撃部隊がカタパルトより射出される。

 

「ガンダム。いきまーす!!!」
「レーン・エイム、ペーネロペー出る!!!」

 

アークエンジェルからも、フラガ少佐、クワトロ大尉、そしてキラが出撃する。今回はアークエンジェルに2機直掩が付いているので、あの艦の防御力はより高まっている。

 

「アスラン・ザラ君、君はニコル、ディアッカと共に艦隊の防空に専念してくれ。」
「わかりました。ですが、フェイスの自由裁量権があることはお忘れなく。」
「我々に不利なことをしなければかまわん。」
「感謝します。アスラン・ザラ、ジャスティス出る!!」

 

ヤラファト島北西の海岸陣地は壊滅しつつある。揚陸艦を突入するまえに、上陸を阻害する要素を排除する算段だろう。
飛来する航空機をアムロは、ビームライフルでなぎ払う。

 

「おちろ!!」

 

最初の射撃を問題もなく当ててしまうのは、さすがはアムロ・レイだというところか。彼は射程に入った爆撃機の護衛を次々に火球にしていく。
キラやレーンが全周囲攻撃で駆逐することに対して、アムロとシャアはライフルだけで周囲の敵機を撃墜していく。これで連合の爆撃は軽減されるだろう。
だが、遊撃部隊の前に、海岸線の防衛はズタズタにされてしまった。これは昨日受けた損害から完全に立ち直っていないことも大きい。

 

「戦力を集中投入してきましたな。」

 

メランが損害状況を見て独り言のように述べる。先任参謀はそれに応じる形で発言する。

 

「アカツキ島を押さえたのが大きいな。昨日の艦隊は3つの島にそれぞれ攻撃を掛けてきたが、今日はオノゴロに対して航空機攻撃に留めて、ヤラファス島に絞っている。連中も我々の防御が堅いことは、織り込み済みだろう。
まずはアカツキとヤラファス島の海峡を確保した上でこちらに攻撃を仕掛ける気だな。それにオーブ側の艦隊戦力を排除することを優先しているようにも見える。
艦隊を喪失したら上陸を防ぐ手段は、航空機とSFS に乗るMSしかないが、艦隊が壊滅したら海上迎撃は困難だろうからな。」

 

私にはそれに付け加える。

 

「それだけではない。オーブ軍令部は、オノゴロの航空機部隊をヤラファスに回し始めている。首都防衛を優先させるつもりだろう。
こちらの防衛は我々をあてにしているということだが、やっかいだな。連合はオノゴロの戦力低下を見越してから時間差攻撃をしてくる可能性もあるんだ。」

 

そこに報告が挙がる。

 

「ヤラファス島に北西海岸に輸送機接近中!!」

 

画面を見ると、アムロたちが戦っている地点より50km北の海岸に輸送機部隊が迫っている。どうやら爆撃部隊は陽動も兼ねていたようだ。まんまと乗せられたことに悔しさが込み上がる。先任参謀が聞いてくる。

 

「遊撃部隊を回しますか?」
「そこまで面倒見なくてもいいだろう。それに爆撃部隊を潰走させれば目的は達成だ。無理に付き合う必要は無い。」
「わかりました。」

 

すでにアムロ率いる遊撃部隊は、ヤラファスに飛来した100機近い航空機部隊を10数分で半数も撃破している。彼らだけで全滅させかねない勢いだ。
それだけ援護して突破されるのであれば、もはや海岸線で食い止める必要性はない。軍令部の方もそれを想定して、首都に向かう国道に新しい防衛戦を再構築させている。
海岸の防衛線は持って30分というところだろう。オーブ側からは、新しい防衛戦構築まで支援要請が入ったので、アムロたちは継続してヤラファス島で戦うことになった。

 

私は戦況を鑑みるに早くも引き際を考え始めていた。

 

※※※

 

10時15分に、北東より28隻の艦隊が進入してきた。昨日カグヤを攻撃してきた艦隊だ。但し戦力は増強されている。8隻からなるオーブ第2艦隊の第2戦隊と第1・第5ミストラル部隊を合流させたカグヤ防衛部隊は、迎撃を開始した。
連合艦隊は今回の進入に対して、対潜ヘリと垂直離陸型航空機を集中投入して、ミストラル部隊を殲滅にかかる。ミストラル部隊は、投下されたソノブイで場所を特定され、対潜ミサイルの大量投入によって駆逐されていく。
対潜戦術を本格的にされ、ミストラル部隊は一方的にやられてしまう形になってしまった。昨日と違い、連合側はミストラルが潜伏している可能性を十分考慮して攻撃してきたため、ミストラル部隊はかなりの損害を出していく。

 

「出し惜しみしないな。やってくれる!ミストラルはひるまずにそのまま肉薄して艦隊攻撃に専念しろ!
艦隊と機動兵器で対潜ヘリ部隊を攻撃するんだ!!カグヤを奪われたら最後だぞ!!」

 

第2戦隊司令のトダカ1佐が叫ぶ。そうした状況に軍令部からはまたしても救援要請が来る。
マスドライバーのあるカグヤ島の陥落は、この戦いの敗北と同義ともいえる。
しかし我々をあてにしすぎだな。オーブ軍には予備戦力がないのだろう。これは持って今日中か。

 

「司令、支援要請に対して割く戦力ですが、副司令の水上艦隊をカグヤ防衛に回してはどうでしょうか?」

 

トゥースが提案してくる。

 

「それは大きな戦力の分散にならないか?」
「最終防衛ラインはカグヤです。先に戦力を回しておくのもよろしいかと。宇宙艦隊より足が遅いのですから。
オーブが陥落するという事態を迎えた場合、南方なり宇宙なりに脱出する時に、カグヤ島は脱出が行いやすい位置にあります。」
「ふむ、だがカグヤ防衛部隊はかなりの攻勢を受けている。水上艦隊に被害が出ることは避けたいな。」
「リゼル部隊とアークエンジェルを回しましょう。それで対応は可能かと考えます。」
「いや、ラー・キェムがいいだろう。アークエンジェルはフラガ少佐とクワトロ大尉の電力供給の問題がある。」
「そうでしたな。」
「よし、ハルバートン提督とピレンヌ艦長を呼び出せ!」

 

画面に2人の映像が映る。

 

「提督、水上艦隊をカグヤ防衛に充てる。直ちに転進してくれ。ピレンヌ艦長、ラー・キェムはリゼル部隊の補給ポイントとする。君の船もカグヤに向かってくれ。指揮は提督にお願いする。」

 

「了解した」「了解!」

 

通信回線を閉じると、私はリゼル部隊を一度戻して補給した上で向かわせるように指示を出す。リゼル部隊を転戦させると、こちらの前線戦力はジェガンと量産型ν、ザフトの3人になるが十分に支えられる。

 

「頼むぞ、ウエスト、タイラント!!」
「任せてください!!シュウジとマック、ロバートは俺に、シャルルとフィッシャー、ジュリアはウエストのケツに付け」
「「了解!!!」」
「よっしゃ!TMS乗りは常に切り込みが鋭いことを教えてやるぞ!!下手なまねしたら神と俺の愛するアイルランドに代わって特製イングランド料理を食わせてやるから覚悟しろ!!」
「「「了解!!」」」

 

タイラントの号令でリゼル部隊が飛び立っていく。

 

「艦長、第2・第3ミストラル部隊より連絡、潜水艦隊が西方より進入してきました。」
「迎撃させろ。」

 

水中で戦闘が開始される。こちらにも対潜ヘリが10数機投入され、ミストラルを攻撃してきたので、ラー・エルムの機動部隊を向かわせる。

 

「頼むぞ、ボティ!!」
「任せてください!健吾!!突っ込むぞ!リンダ!後ろから支援するんだ!!」
「はっ!!」
「了解!!」

 

同部隊隊長エミリオ・ボティ大尉は、かつてアポリー戦死後のリック・ディアス隊の指揮を務めたこともある古参パイロットだ。
第1次ネオ・ジオン戦争で負傷のためアーガマを退艦したが、第2次戦役では、ロンド・ベルに参加して部隊の中級指揮官として部隊を支えている。
同じエゥーゴ出身のレディング艦長とのコンビネーションは絶妙である。一ヶ月の間にクワトロ大尉と何度か2人きりで話すことがあったらしい。
彼は直接の部下として、もしかしたら我々以上に釈然としないものを持っていたのかもしれない。

 

彼はSFSを駆り、重装型が砲撃によって混乱する対潜ヘリをあっという間に蹴散らしていく。それでも対潜攻撃に遭ったミストラル部隊の損失は、無視できない状況だ。
こちらの戦線が優位に進んでいるのは、MSがこちらに投入されていないということも大きい。もちろん投入されていても我々は有利に戦闘を進めることはできる。
だが、艦艇4隻と所属機動兵器群では守れる場所は限られる。そうこう考えているところに、アムロから連絡が入る。

 

「ブライト!オーブ側の防衛ラインの構築も終了した、一度そちらに戻って補給整備をしたい!!」
「わかった。とっつぁん!!受け入れ頼む!すぐに出せるようにしてくれ!」
「わかりました!」

 

アムロたち遊撃部隊が後退したとほぼ同時に、例の新型が前線に投入されてきた。真正面からぶつけてこないつもりか。賢しいな。
北部の防衛ラインは新型3機とダガー部隊の突入で、わずか30分の戦闘で戦線が崩壊させられた。南部戦線は、ダガー部隊の猛攻を受けたが、こちらは何とか戦線を維持している。

 

「艦長!!オーブ第1艦隊が抜かれました!北部タマハマ海岸に強襲揚陸艦が突入しました。」
「数は?」
「およそ5隻です。」

 

崩壊させた戦線から進撃するつもりだろう。次々と戦力が展開していく様子が画面に映る。こうした映像が流れていても、我々には何もできない。
遊撃部隊の整備をどんなに急いでもあと30分はかかるだろう。北部の防衛はもはや難しいな。
連合軍が北部海岸から進撃する場合は、島の中央にあるハウメア山とその周辺にある山々の谷間を走る国道が首都への最短距離だ。オーブにとっては首都防衛の最終ラインになる。
いまごろ軍令部の面々は青い顔してそのラインに戦力を再編させようとしているところだろう。

 

「艦隊はどうか!?」

 

先任参謀が確認する。オーブ第1艦隊は16隻に減少し、全艦が被弾しているが、依然として抵抗を続けている。
だが北部海岸で迎撃することはもうあまり意味がない。だがその辺はオーブ軍令部の指示に期待するしかない。
10時50分、軍令部は第1艦隊に対して南方へと転進を命じた。北部防衛を放棄したのである。こうしてヤラファス島の北部一帯は連合軍占領下に置かれることになったのである。

 

※※※

 

11時25分、オーブ第1艦隊は追撃してきた連合軍艦隊35隻と交戦状況に入った。

 

「連合艦隊の半数が沿岸攻撃を開始し、残りはこちらに向かってきます!」
「これ以上はやらせるな!!主砲の照準に入り次第、撃ちまくれ!!オーブ軍艦隊の意地を見せよ!!」

 

マツカタ大将の号令の元、第1艦隊は最後の力を振り絞り連合艦隊に攻撃を開始する。その攻撃をアムロたち遊撃部隊が支援する。
ロンド・ベル本隊は断続的に続く対オノゴロ爆撃部隊を排除にあたるために、オノゴロを動けない。しかし戦力の分割によって、徐々に空爆を許し始めている。
これはオーブ側の機動部隊の戦力が低下していることも大きい。

 

「艦長、軍令部周辺にもミサイルが飛来してきます。」
「これは、航空機ではありません!!潜水艦からの攻撃です!」

 

オペレーターが次々に報告してくる。残存ミストラル部隊ではカヴァー仕切れていないのだ。

 

「迎撃しろ!!ミサイルを打ち落とせ!」

 

前方艦隊では、遊撃部隊が次々と艦艇を血祭りに上げる。アムロは艦橋と武装をピンポイントで攻撃し、艦艇の交戦能力を奪う。
あえて撃沈しないことで、損傷した艦艇を支援しなければならない状況にしようというのだ。

 

「僕だって!!」

 

キラも、その姿勢を真似ようとする。だが、弾薬庫に命中して艦船は爆沈する。

 

「くそっ。」
「あんまりうまくやろうとするな!」

 

レーンが慰める。そのレーンは、あまりそういうことにこだわらず、確実に直掩機や艦艇を撃破していく。クワトロ大尉も同様だ。
連合側は直掩機の大半と艦隊戦力の4割を失うことになった。

 

連合艦隊はそのあまりの被害に鑑み、一度後退を開始した。ヤラファス島の占領地域で部隊を再編しようというのだ。
我々はその後退に合わせて遊撃部隊も後退させる。連合の新型機部隊も補給のためか、北部戦線から後退した。我々も早急に次の戦いの迎撃順部を行わなければならない。
かくてヤラファス島の戦いは両軍にとって一時的な停戦状況となったのである。

 

※※※

 

13時15分、ヤラファト島北部戦線に連合軍の猛攻が開始された。軍令部から支援要請が入る。私は直ちにアムロ指揮の遊撃部隊とキルケー部隊を差し向ける。
報告によると新型こそいないものの、上陸戦力の7割を投入してきているようだ。先の状況を考えれば遊撃部隊の投入でかなり押し返せるはずだ。

 

同時刻、カグヤ島での攻防戦はリゼル部隊の投入で完全にオーブ側優位になった。連合軍は20隻にまで減少し、転進して北部沿岸を攻撃しつつ主力艦隊へ向かう。
どうやら合流するつもりだ。だが、深追いできる状況ではない。オーブ側も追撃はできなかったので、連合軍水上艦隊はその規模を再び増大させたのである。

 

13時35分、コレマッタ少佐より外部の状況に関する情報が届く。
中立各国とプラント友好国、そしてユーラシア連邦が抗議声明を出したが、東アジア共和国は一切発言することなく、事実上黙認したようだ。
これは詰んだな。ユーラシアが何か行動するとしても、今日明日にどうにかなるとは思えない。
オーブが期待していた旧宗主国にあたる日本を含む東アジア共和国の介入は絶望的になった。
ユウナ・ロマは計算違いに動揺しつつ、東アジア共和国を罵っているという。声明が全くない辺り、東アジアで何かあったのだろう。
プラント政府に対しては宰相ウナトが救援要請をすべきと主張するも、ウズミ代表は拒絶したらしい。彼は着地点を如何に考えているのか。

 

「これは、オーブ政府が降伏するのも時間の問題では?」
「そうだな、逆になぜこの段階で声明を出さないのかが気になるな。」
「確かに。ですが、彼にどのような思惑があるにせよ、我々もそろそろ戦線を離脱する準備をすべきかと思いますが。」
「そうだな・・・。」

 

そこに報告が挙がる。

 

「艦長!!!連合艦隊が南進を始めました!!沿岸部ではなく、こちらに向かっています!!例の新型も確認しました!!鳥形と大砲付きです!!さらに後方降下部隊を有する航空機部隊を確認!!!」
「遊撃部隊がいない処をおそうつもりだろうな。」

 

副官のハムサットがつぶやく。私は対応を指示する。

 

「アスラン君とディアッカを前に出せ!!彼らが戦闘しているとこに包囲攻撃を掛けるぞ!!セネット大尉!パットとシモンで囲い込め!!!艦隊は前方の艦隊に攻撃を開始しろ!第1艦隊と半包囲するんだ!!」
「「了解!!」」

 

まずは下駄に乗ったバスターが散弾を撃って動きを牽制する。

 

「そうら!!」

 

新型がにわかに速度を落とすと、そこにジャスティスが一気に距離を詰める。

 

「でぃあああああ!!」

 

斬りかかるジャスティスに対して、大砲付きがジャンプして飛び上がって回避する。鳥形は軽くなった機体を一気に速度を上げて突っ切る。ジェガン部隊のパトナムとイレーヌが叫ぶ。

 

「「突破される!?」」

 

連中はできるだけ早く地べたに行きたいのだ。私は彼らに叫ぶ。

 

「させるな!後ろからたたみ掛けろ!!」

 

そこに輸送機が突っ込んできた。

 

「艦長!!敵の降下部隊のうち、一機が急速に突っ込んできます!!!」
「何!?」
「馬鹿なこんなところに輸送機だと!!」

 

セネットが叫んで回避する。一方シモンはバランスを崩して海に落下した。その輸送機の上に大砲付きが飛び乗る。

 

「「打ち落とせ!!!」」

 

私も含めて各艦艦長が同時に号令する。輸送機は被弾するが、オノゴロ島の海岸部に突っ込んだ。目的を果たしたのだ。

 

「艦長!!オノゴロ北西より艦隊確認!強襲揚陸艦の模様です!!その先頭には死に神型を確認!!オーブ迎撃部隊では歯が立ちません!!」
「あれは!!午前中にヤラファスに揚陸していた奴らか!!フットワークが軽い。」

 

メランが半ば感心したように言う。次いでトゥースが悔しさをにじませ言う。

 

「この位置からでは防ぐことはできませんな。ザフト部隊は新型に、ジェガン部隊は正面からの航空機部隊に対応しています。艦隊も前方の攻撃で対応できません。いくら防衛戦とはいえ、こうも後手に回るとは・・・。」
「悔しがっている暇はない。上陸部隊の戦力を算出すること急がせ。場合によって直掩機をそちらに回さなければならん。」
「了解しました。調査に入ります。」

 

こうして14時、オノゴロ島にもついに上陸を許すことになったのである。

 

「艦長!!陸戦部隊も上陸した模様です!!」
「いよいよだな。ベアードとハンター大尉のラー・キェムの部隊を割く。迎撃させろ!」
「了解しました!!」

 

こちら側の戦力が徐々に分散され、消耗されていく中で、ヤラファス島北部戦線は遊撃部隊の活躍もあり、どうにか押し返しつつあった。
南部戦線もオノゴロの戦力が回されていることもあり、未だ戦線を支えている。
そこに再び潜水艦からミサイルの飽和攻撃が開始された。今度は我々の迎撃が回らず、オーブの対空陣地のみで対応するが、支えきれずにオーブ軍令部周辺は火の海になった。
この事態を受けて、オーブ軍令部はカガリ・ユラをカグヤに待避させることを決定した。彼女は難色を示したが、ハシモト大将とキサカの説得に促されて退去した。
彼女の退去とほぼ時を同じくして、第2次飽和攻撃が開始された。この攻撃でロンド・ベルの後方にあるモルゲンレーテの一部施設や軍令部、山間部にも着弾した。山間部では山火事が発生した。そこに軍令部から要請が入る。

 

「司令!!オーブ軍令部から緊急電です!!市民のシェルターにも攻撃があり、このままでは危険なのでロンド・ベルに避難させて欲しいとのことです。」
「馬鹿な!!何を言っているんだ!!連中は正気か!?」

 

メランが叫ぶ。先任参謀も怒鳴る。

 

「オーブ軍は何をしている!!!」
「上陸してきた部隊の対応で手が回らないそうです!」
「戦力の大半をヤラファスに回しているからな。」

 

私は毒を隠さずにオーブ軍の要請に腹を立てる。いくら何でも無責任すぎる。王女には十分護衛を出すが市民を守らないというのか。私ははっきりと嫌悪を持った。そこに連絡が入る。

 

「艦長!!シェルターから通信!!アスカ氏です!」
「回線繋げ!」

 

画面にはユウジ・アスカ氏が映る。

 

「司令!!ご不快かとは思いますが、曲げて避難を受け入れてください!!
避難した市民にはコーディネーターも多数いるため、連合軍の無法行為を恐れています!!この周辺のシェルターでは、これ以上の攻撃に耐えられません!!」

 

彼の言うコーディネーターには当然自分の子供も含まれているのだろう。確かにアスカ一家を始め、この2ヶ月世話になった連中だ。
助けたい。しかし、人情とは別に指揮官として、いや自分が背負う「国家元首」として、他国の市民を守るために部隊を危険にさらすべきか。
否だ、しかも我々は異邦人として非介入を唱えてきたではないか。安易にやるべきではない。既に危ない橋を渡っているのだ。
私は左手の受話器を握りつぶす程力を込め、沈黙する。そこに部下から声が上がる。

 

「艦長やらせてください!あの気のいい技師たちを殺したくありません!!」

 

海に落ちたシモンを救助したパトナム少尉だ。

 

「艦長!!自分からもお願いします!!」
「艦長!!」

 

キョルショー大尉とハンター大尉だ。

 

「司令!!アークエンジェルを後退して彼らを救助したいと思います!!!」

 

ラミアス艦長も上申してくる。

 

「艦長!!いえキャプテン!!エゥーゴ時代の艦長なら、市民のためにすぐにでも決断しているはずです!!」

 

シーサー・・・。

 

「ブライト!!!話は聞こえた、すぐにでも戻るぞ!!」
「艦長、間に合わせてみるぞ!」

 

アムロ、シャア・・・。目を閉じたとき、息子の声を聞いた気がした。

 

「父さんは正義を貫くためにエゥーゴに参加したんだろ!!!」

 

ハサ・・・。私は決断した。

 

「・・・彼らを救助する!!ラー・カイラムは後退してシェルターの近くに着陸する!!!ソートン!!!救助の間は直掩頼む!!!」

 

「了解!!」
「司令・・・。ありがとう。」
「子を思う親の気持ちはわかるつもりです。避難するときはいくつかのグループに分けて行ってください。
できるだけまとまって行動願いたい。それと連絡のために各グループ・リーダーは携帯通信端末を持って避難してください。端末は開いたままでいつでも話せるように!」
「わかりました!!!」

 

アスカ氏は後ろを振り向き指示を出し始めた。私も部下に矢継ぎ早にすべきことを指示する。

 

「ミカエルとロマゾフ、ジュリオ、ミンはソートンと共に周辺警戒!!!それと、アムロたち遊撃部隊を呼び戻せ!!!艦隊はジェームズに任せる!!!
前方の艦隊を寄せ付けるな!!それとグレイス大尉!!コレマッタ少佐は別任務がある、貴様が常時避難民を誘導しろ!!」
「「「了解!!!!」」」
「シーサー!!」
「了解!!!後進一杯!!!」

 

ラー・カイラムは戦列を離れ、シェルター区画へと向かう。その間既にオノゴロ島には連合軍部隊が上陸を完了させ、いよいよ軍令部に迫ってきている状況だ。

 

アムロたちが戻るまで早くても30分か。市民の救助を持ってオノゴロは放棄だな。

 

「艦長!!!陸戦部隊と戦車隊の一部が、本艦の後退に釣られてこちらに向かってきます!!」
「オーブ軍は!?」

 

メランが怒鳴る。

 

「目前の大軍を迎撃するのに手一杯です!ハンター大尉たちもMS部隊と交戦中!!」
「ブライト司令!!!俺がやります!!」
「アスラン・ザラか!!頼む!!!」

 

ジャスティスが上空から攻撃を掛ける。

 

「よし、今のうちだ回収作業はじめ!!」
「了解!!」

 

第一陣の500名がシェルターから駆け出す。

 

「急ぐんだ!!」

 

タロウ・サナダ氏が、リードして避難民を誘導する。まずは問題なくできているな。

 

「艦長!!前方より死に神型が突っ込んできます!!!その後方からもMS部隊です!!」
「前方に弾幕展開!!!!ジャスティスを前に出せ!!」

 

前方にビームの雨が降り注ぎ、進撃が鈍る。

 

「第1陣回収完了しました!!!続けて第2陣500名行きます!!リーダーはアラキです!」

 

アスカ氏が叫ぶ。

 

「あとどのくらいいるんだ!!!」

 

メランがアスカ氏に確認を求める。

 

「第2陣を除いて、1000名ほどです!!」
「何ぃ!?」

 

艦橋にいる面々に表情に焦燥感が湧く。

 

「メラン!!決めた以上は今更だ!!諸君もだ!!守って見せろ!!」
「はい、申し訳ありません。」「「了解!!!」」

 

その間にさすがに本艦の後退を本格的に怪しんだらしく、第3陣の回収中にこちらにも兵力を回してきた。

 

「艦長!!鳥形がジャスティスに突っ込んできました!!」
「さすがに2機相手は荷が重いぞ!!」

 

トゥースが汗を垂らして指摘する。

 

「やむを得ん!!ミカエルとロマゾフを前に出せ!!ジャスティスを支援させろ!!!」
「了解!!!」

 

新型機を含めたMS部隊とジャスティスとジェガン部隊が戦う下で戦車と装甲車部隊が突破する。

 

「司令!!!このままでは第4陣の避難中にも到達されます!!」
「ミサイルでなぎ払え!!」

 

ラー・カイラムからミサイルが発射され、地上部隊は撃破されていく。だがそこにさらに攻撃が来る。

 

「艦長!!!潜水艦から第3次ミサイル攻撃来ます!!!」

 

もちろんこれは我々だけを狙ったものではない。けれどもこちらに飛来するものには対応しなければならない。

 

「打ち落とせ!!!」

 

弾幕で次々と打ち落とされるが、一部は避難民の近くに、そして1発が本艦に着弾した。

 

「被害状況報告!!!」
「左舷上甲板に被弾!!損害は軽微です!!」
「左舷!!!弾幕薄いぞ!!何をやってんの!!避難民は!?」
「軽傷者が数名出た程度です!!第4陣回収率76%!あと3分もあれば完了します!!!」
「医療班を回収口に待機させ!!」

 

アスカ氏から通信が入る。

 

「ブライト司令!!シェルターの人間は全て脱出できた。これから私も家族を引き連れてそちらに向かう!!」
「わかりました!!お気を付けて!!グレイス大尉!指示は頼む!!」
「はっ!!」

 

画面には最後の避難民が50名程度の集団で全力疾走している。どうにかなりそうだ。私は内心安堵を感じていた。
そのときだ、どうやらマユちゃんらしき少女が転倒してしまった。にわかに艦橋に緊張が走る。だがすぐに起き上がり走り出した。
ところが少し走るも、何かを落としたことに気付いたらしく、戻り始めた。

 

「何だ!?どういうんだ!!」

 

メランが思わず私と似た口調で叫ぶ。兄であるシン君が連れ戻そうと走って戻る。そのときだ、連合軍MS部隊がアスランたちの防衛している方向とは別な方角から攻めてきた。
それに対応すべくジェガン部隊が、そちらに向かった直後に突破してきたレールガン装備の戦車隊が、ラー・カイラム目がけて砲撃を開始した。
そしてそのうちの数発の流れ弾が、父親の集団に直撃してしまった。

 

艦橋の全員が言葉を失った。何てことだ・・・。その間に数発が本艦に着弾で正気に戻る。

 

「戦車隊を排除しろ!!アスカ氏は!?」
「通信は生きています!!!!おそらく息子さんたちを心配して集団の最後尾にいたことで、・・・粉々にはならなかったようです!!!」

 

しかし、映像に目をやると、状況は絶望的のようだ。連合軍は我々が彼らを防衛していることを深読みしたのか、装甲車部隊をアスカ一家の方に接近させる。

 

「いかん!!!!」

 

そう叫ぶと、ソートン中佐は自らの機体を親子の前に立たせ、彼らを守ろうとする。

 

「大隊長!!!!」
「ソートン!!」

 

彼が目の前で守ろうとする家族は既に終焉を迎えようとしていた。呆然とシンが立ち尽くす。彼の通信機から、絶望的な状況のみが音声も含めて伝わる。

 

「父さん・・・、母さん・・・。」
「シン・・・マユ、逃げるんだ・・・。」

 

母親の方は駄目だろう。モニターからでもわかる。そしてこの世界に来て初めての友人もまた、息を引き取ろうとしている。

 

「おとうさん!!いや!!」

 

泣き叫ぶマユに、我に返ったシン君が妹を正気に戻そうとする。

 

「マユ!!ここは危ない!!速く逃げるんだ!!!」
「いやぁ!」

 

錯乱する妹を揺さぶるところに、再び連合軍が近づく。

 

「くそったれ!!!ミン!ジュリオ!!サポートしろ!!」

 

ソートンはそう言うと、ジェガンを壁にさせてアスカ家族を守る。そしてソートンは、自機を片膝つかせてマイクで叫ぶ。
それでも動かない兄妹に危機感を覚えたソートンは、コクピットを開けてバルカンを斉射しながら近づく連合軍をなぎ払い、アスカ親子のところへ近づく。彼は叫ぶ。

 

「おまえたちが未来なんだ!!やらせはせん!!!!!2人とも!!!機体の手のひらに乗るんだ!!!」

 

しかし、マユ君は錯乱状態だ。シンも必死に説得するが動かない。業を煮やしたソートンが愚痴る。

 

「やむを得ん!!」

 

そう言うと彼はコクピットを降りて、その巨体を突進させ2人のところへ駆け出す。

 

「大隊長!!無茶です!!」
「戻れソートン!!」
「やめるんだソートン!!」

 

ジュリオとメラン、そして私が同時に叫ぶ。

 

「たとえここが、異世界だろうが、子供は人類の、いや!!生きとし生けるもの宝なんだ!!!こんなことで死なせるか!!!」

 

マシンガンを乱射し接近する兵士をなぎ払うと、シンと協力してマユちゃんを無理矢理抱えてマニュピレーターのところへと走る。
その時、破壊された装甲車から何とか離脱した兵士が、彼らの方向に発砲した。そして、ソートンは2人をかき抱いて壁となる。おそらく、6発は食らっただろう。

 

「大隊ちょおぉぉぉ!!!!!」
「ソートン!!!!」

 

ソートンは特に苦しそうな姿を見せず、2人の安全を確認した。

 

「無事か?」
「う・・そだろ。」
「おじさ・・・」
「それなら、いい。」

 

それが、アーネスト・ソートン中佐が最後に発した言葉だった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ソートンを撃った兵士は、ジュリオのジェガンのバルカンで吹っ飛ばされる。そこにダガー部隊が襲いかかってきた。

 

「ちっくしょぉぉぉ!!マユ来い!」

 

そう言うと、シン君はマユちゃんの手を無理矢理引っ張り、量産型νガンダムに乗り込む。そして動かし始める。馬鹿な。

 

「後ろにいるんだ!」
「お兄ちゃん。ひっくもういやだよぉ!」

 

マユちゃんは泣くことをやめない。そしてシン君は再び叫ぶ。

 

「くっそうぉぉぉぉ!!!!あんたらがぁぁぁぁ!!」

 

ビームが放たれ、陸上部隊が吹っ飛ばされる。

 

「ここからっ!!ここからっ!!消えてしまえぇぇぇぇ!!!!」

 

叫ぶと同時に、攻撃をしてきたダガーに反撃を加える。ダガーは1発目こそ避けたが、半ば錯乱して乱射してくる量産型νの攻撃に対処しきれず、彼の激情が込められた攻撃を受け撃破された。

 

「うおぉぉぉぉ!!!!」

 

ようやく南部戦線を通過してきた遊撃部隊に、シン・アスカの精神的爆発が伝わる。

 

「この感覚は!!いかん!」
「これは・・・!憎しみの感情が、意識を変える!!駄目だ!」

 

シャアが気付いたように言葉を漏らす。そしてアムロが叫ぶ。2人は同時にシン・アスカの思惟を捉えたのか。レーンもアムロの指示を待たずに急速に速度を上げ、音速の早さで機体を動かして突進する、そして叫んだ。

 

「シン!!!!!守るんだろおぉぉぉぉ!!!!!」

 

レーンの絶叫がこだまする。そしてそれは突如として起きた。

 

「何だ!?この感覚は!」
「これは!サイコフレームが反応している!」

 

アムロとシャアが同時に叫ぶ。

 

「艦長!!!こ、これは・・・転移時とお、同じ反応です!!!!西方の台風からです!!」
「何だと!!!観測班!!全ての調査機能を使い、確実にデータを取るんだ!!!」
「りょっ、了解!!!」

 

しかし、何が原因なんだ?状況に思考が追いつかない。

 

「艦長!!台風の方向より光が!!!」
「あれは!!!」
「まるで・・・アクシズの時のようだ!!!!」
「何が起こっている!!?」

 

それを見る将兵が動揺を見せる。私も彼らを批判できない。その虹の美しさに、一瞬見とれてしまったのだ。台風の暴風域方向から虹色の光が広がり、そこから3隻の艦艇が現れた。

 

「「あれは!!!!」」

 

なんということだ。その場にいた全員が絶句している。あの白い、私にとって思いで深いアーガマを思わせる船は!!

 

「確認はどうか!!艦艇照合急がせ!!それと通信を入れるんだ!!!」

 

モニターにはネェル・アーガマとクラップ級が2隻、映し出されていたのだ。私はわき起こる動揺を抑えて部下を怒鳴る。オペレーターたちは確認すると声を震わせ叫ぶ。

 

「照合確認!!!あれは第13独立機動艦隊の第3戦隊です!!!!」
「通信は!!!!」
「回線繋がりました、モニター出します!!」

 

画面には、それほど時間も過ぎていないというのに、懐かしさを感じる顔が映る。

 

「こちら地球連邦軍第13独立機動艦隊、第3戦隊司令のオットー・ミタス大佐です!ブライト司令、ご無事でしたか!」
「オットー艦長か!残念だが、あまり無事な状況ではない。説明は後だ、現在我々は戦闘中である。データを送るから、側面を突いてくれ!!」
「何言っているのですか!?」
「いいからさっさとMSを投入するんだよ!!やるんだ!!!」
「はっ!!」

 

ネェル・アーガマを旗艦とした第3戦隊は、ジェスタを中心とする機動部隊を出撃させてきた。また側面を突かれた連合艦隊は再び混乱状態に陥る。
その間にレーン・エイムが帰投し、ラー・カイラム周辺の敵をなぎ払う。続けて後方からアムロたちが戻り、シンが戦っていたMS部隊は壊滅した。
シン・アスカは、叫びながら後退する敵を追撃しようとした。

 

「アムロ!!あれを止めろ!!!」
「わかった!!」

 

νガンダムが、量産型をしっかりと押さえる。

 

「しっかりするんだ!!!俺だ!!アムロだ!!!わかるな!!」
「はぁっ、はぁっ・・・。くそぉぉ!」

 

彼は未だ呼吸荒く動揺し、激しく操縦桿を叩く。何とかシンを確保したようだ。そこに報告が挙がる。

 

「艦長!!ヤラファト島の南部防衛線が崩壊しつつあります!!」
「司令!!軍令本部からです、我、本部施設内侵入を許しもはや指揮能力なし、以後は各自の指揮官が各個に判断すべし。とのことです。」
「艦長、オーブ行政府より連絡です。残存戦力はカグヤに集結せよ、以上です。」

 

これまでだな。おそらくカグヤで何らかのアクションを採るのであろう。

 

「艦長・・・。」
「各部隊はカグヤまで後退せよ。先行してかまわない。アムロたちは艦隊の直掩を頼む。ジュリオとミンにシン君たちを連れてこさせろ。ラー・カイラムも浮上して直ちに向かう。避難民は?」
「・・・最後の集団は彼ら兄妹のみですから、完了しています。」
「そうか・・・。ラー・カイラム発進!!進路カグヤ島!!!」

 

私は一通り指示を終えると、椅子に深く体を預ける。さすがにこの状況で指揮官が呆然とするわけにはいかないが、私は失ったものに心を重くしていた。戦闘は未だやむ様子を見せない。

 

第22話「刻の涙と虹の光」end.

 

次回予告

 

「全艦順次大気圏を離脱せよ!!!」

 

第23話「失ったものを抱き、暁の空へ」

 
 

 戻る