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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_23

Last-modified: 2009-11-22 (日) 23:05:30
 

第23話「失ったものを抱いて、暁の空へ」

 
 

突如現れたネェル・アーガマら第13独立機動艦隊の第3戦隊も含めて、艦隊はカグヤに集結した。
共に後退したオーブ第1艦隊は既に戦闘に絶えられる艦艇は残存10隻中4隻という状況である。連合軍は指揮系統の崩壊したオーブ軍を降伏させつつ進撃している。
まもなく首都に入場するところだ。連合軍はまずはヤラファス島の確保を優先しているので、こちらへは攻撃を控えている。いつでも攻撃できる余裕からか、それともマスドライバーへの配慮かはわからない。いずれにしても連合軍指揮官は、これまでの経緯もあろうが慎重に事を進めるつもりのようだ。

 

私は連合軍の早期攻撃の可能性は低いと判断し、部隊をカグヤに集結させた後で乗員を交替で休息させた。私自身も精神的に消耗しており、執務室で休息を取っている。
目の前のモニターは、戦況が映し出されている。ヤラファス島は、後退する部隊と降伏する部隊などで大混乱である。代表であるウズミ氏と各首長たちは、こちらに避難してきていた。降伏を受け入れる場合でも、首脳陣が捕縛されている事態は避けたいというところだろう。

 

半ばぼうっとしてモニターを見ている。覚悟していたとはいえ、異世界において部下を失ったことに悔しさがこみ上げる。私はまた過ちを犯したのだろうか。
いや、私も、そして彼も後悔はないと思う。なぜならば未来を守る事ができたのだ。希望という名の種子たちを守ることは年長者の義務であろう。
たとえ異世界であろうとも、である。考えてみれば不器用な男だったな。アムロ当たりにいわせると上司に似ると言う事だろうが。
彼が命をかけて守った兄妹の様子に思いを馳せる。30分程前のデッキでのことだ。

 

※※※

 

ラー・カイラムのMSデッキは整備で慌ただしい。確実に来るだろう次なる戦闘に備えるためであることはいうまでもない。
私は艦橋をメランに任せて、アスカ兄妹の様子を案じてデッキに来たのである。
量産型νガンダムの傍らには、機体を運んできたジュリオ・ディスベペ少尉とミン・ドクマン少尉も心配して見守っている。
コクピットの側でアンナ・ハンナが説得している。

 

「みんな心配しているわ、ともかく出てきて!」

 

両少尉は私を見ると敬礼した。ジュリオが報告する。

 

「兄妹そろってふさぎ込んでいるようでして・・・。」

 

私も何ともいえない表情を浮かべる。そこに整備班長たるとっつあんこと、ピート・シェリトン少佐がやってきた。

 

「何だ?まだ中にいるのか!他の修理もあるんだ!!引きずり出せ!!」
「班長!!しかし無理強いしては!」
「やかましい!!そんなこと言っていたら明後日になっちまう!!!怪我をしているかもしれん!外から強制的に開けさせろ!!よろしいですな。艦長?」

 

確かにこのまま放って置くわけにはいかない。私は黙って頷く。

 

「よし!強制解放するぞ!太一!俊作!!念のためクッションとネットを用意しろ!ベント!は強制解放コード入力!!」
「「「了解!!!」」」

 

ひとしきり支度をすると、ハッチにコードが入力される。幸い突然落ちてくるようなことはなかった。私はアンナと共にコクピットを覗く。
そこには私は親を失った兄妹がさながら寄り添うようにうずくまっていた。ただ兄の方は未だ操縦桿を握りしめたままだ。どう声を掛けるべきか。躊躇っていると、後ろから声を掛けられた。

 

「ブライト・・・。」

 

振り向くと、アムロ・レイとレーン・エイムがいた。彼らも心配した表情を浮かべる。
私はとりあえず、彼らに中の様子を見せるため体を動かす。アムロが私の向かいに立ち、レーンが中に入る。

 

「怪我はないか?」

 

兄妹は反応しない。レーンはシン・アスカの腕を掴み、操縦桿を握りしめたままの状態を解く。
そしてその脇で兄にすがりつく少女にも目をやる。

 

「立てるか?」

 

うなだれている少女の肩に手を置き、シンに声を掛ける。

 

「シン、ともかく外に出よう。ここにいても仕方がない。ほら、マユちゃんをこのままにもできないだろう?」

 

妹に対する心配からかようやく反応を示す。シンはマユに外に出るよう促し、自らもゆっくりと外に出てきた。だが俯いているので表情はわからない。

 

「シン、マユちゃん。」

 

私が声を掛けると、マユちゃんの方は表情を崩して私に飛びついてきた。

 

「ふえぇぇぇぇぇん!!」

 

その姿を見て、シンは悔しさがこみ上げてきたようだ。

 

「くそっ、・・・なんでっ・・・こんな事に・・・」

 

その様子を見て私は、少女を抱いたままシンに近づき、彼の体も抱きしめ、2人を両腕でかき抱いた。

 

「ちょっ、なにすん・・・」
「もういい、とりあえず今は肩の力は抜いていいんだ。よくマユちゃんを守ったな。」

 

その言葉に少年の心は決壊した。

 

「くっ、くそ・・・。う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ふえぇぇぇぇぇん!!」

 

しばらくの間、私は孤児となった兄妹を抱きしめ続けたのである。
アムロは顔をしかめて顔を振り、レーンはこうした事態に慣れていない様子で、何ともいえない表情だ。
そこにハサン先生とメアリー・ポールマン曹長がやってきた。

 

「艦長・・・」
「先生、怪我はないようだが、精神的にまいっている。この子たちに鎮静剤か睡眠薬を頼みます」
「わかった。メンタルなケアが必要だろうからな。メアリー、マユちゃんを頼む。」
「わかりました。」

 

そこにトラジャが大声で叫んできた。

 

「艦長!!!オーブ政府から連絡があったそうです!副長から艦橋に一度戻ってきて欲しいとの事です!!」
「わかった!!」

 

私は答えると、アムロに顔を向ける。

 

「アムロ、任せて良いだろうか?」
「ああ、任せてくれ。」

 

私は艦橋に戻ると、そこでオーブ側が求めてきた、転移してきた艦艇についての事情を説明した。
その後で休憩を取るために自室に戻ったのである。

 

※※※

 

私は改めて完全に孤児となってしまった兄妹について考える。今後どうすべきであろうか。最善の方法を考える必要があろう。
あとでサナダ氏にでも話す必要があるな。アスカ氏とソートン中佐の死亡は苦い思いを呼び起こす。
戦場では何が起こるかわからないとはいえ、このような犠牲が生じるとは。
そして今回の犠牲は、いかに練度が高く技術的に優位がある部分があるとはいえ、厳然たる事実を突きつけられた思いがする。

 

「個々の戦闘で勝利しても、所詮は戦術レヴェルの勝利に過ぎないと言う事だな。」
「艦長、言葉が漏れていますよ。コーヒーです、どうぞ。」
「レーゲン・・・」

 

副官のレーゲン・ハムサットは少し躊躇いを見せたが、まっすぐ目を見て私に話しかけてきた。

 

「艦長、あまり背負い込まないで下さい。我々だけではありません。アムロ中佐だっているんです。確かに自分も、ご子息のことではお力には為れませんでした。
ですが、我々艦隊将兵は艦長を信頼しています。この異常な状況下でも艦長の元で結束していることが、何よりの証拠です。」
「少佐・・・。すまない、少し気が滅入っていたようだ。ありがとう、頼りにしている。」

 

副官の言葉に暖かな気持ちになる。そこにノックがあり、アムロがジャック・ベアード少佐とトゥースを連れてやってきた。

 

「ブライト、いいか?」
「かまわん。なんだ?」
「ソートンの後任について話さなければならない。それに第3戦隊にも状況説明をしないとな。それでトゥースとジャックを連れてきたんだ。」

 

そうだったな、階級的にはアムロに任せるべきだが、彼には引き続き遊撃部隊を率いていてもらいたい。それに部下の性格やクセは、ベアード少佐の方が精通している。
何しろソートンの補佐役を長らくしてきたのだ。だが、アムロが指揮する上での心理的な安心感、いわゆるカリスマは無視できない。私はしばし思案した上で、素案を述べた。

 

「アムロ、大隊長はおまえに任せたい。だが運営面での不安があろうから、今後はジャックをおまえの補佐役に回す。
但し遊撃部隊の状況によっては、ジャックが主力の指揮を執る形にしたい。また作戦面ではクワトロ大尉もそこに加えたい。遊撃部隊はフラガ少佐を副隊長にする。」
「多少複雑になりますが、それでよろしいかと思います。アムロ中佐にも全体の統括運営と書類仕事に慣れてもらいたいですからな。
かつてのロンド・ベルより、規模は大きくなっていることですし。」

 

先任参謀が条件付きで賛意を示す。私は頷くと2人に声を掛ける。

 

「どうだ?2人とも。」
「問題ありません。」
「俺もかまわない。だが、なぜシャアを?」
「そりゃ、おまえと大尉の関係がこの部隊のカギになると考えるからだ。
大尉の作戦立案能力は活用したい。・・・それに殺したいときは近いところにいた方がいいだろう?」

 

私の混ぜ返しにアムロは、降参したように手を上げて笑って見せた。

 

「茶化すなよ、わかっている。俺はパイロットしかできないからな。それに奴の考えを近くで知るのも悪くないと思う。了解だ。」

 

2人の同意を得て、私は端末にアクセスして臨時の命令書を打ち出す。

 

「よし、艦長会議で決定するまでの暫定措置ではあるが、アムロ・レイ中佐を大隊長代行に命ずる。」
「了解だ。艦長。」

 

アムロはやや形式的に答える。それが済むのを見て、先任参謀が次の問題に話を転ずる。

 

「司令、オーブ側から呼び出されないうちに、第3戦隊の連中に状況説明をしたいのですが。」
「そうだな、急ではあるが、15分後にラー・カイラムで艦長会議を開こう。連絡頼む。」
「了解しました。」

 

どうやらこれ以上の休息は許されないようだ。私はコーヒーを飲み干し、部屋を後にすることにした。

 

※※※

 

実際には25分の時間を要したが、ラー・カイラムの会議室には艦隊幹部が集合した。
私はトゥース大佐に状況の説明をさせた上で、この世界からロンド・ベルに参加させた面々を紹介させた。

 

「信じられん・・・なんてことだ。」

 

オットー・ミタス艦長以下、第3戦隊の幹部たちが受けた衝撃は、数ヶ月前の自分たちを彷彿させる。
特にシャア・アズナブル本人の登場は想定外もいいところで、アムロ・レイ生存以上に目を点にさせていた。

 

彼らがこの世界に転移してきた事情は、以下の通りである。第13独立機動艦隊行方不明の報告は、地球連邦軍参謀本部を大いに慌てさせたそうだ。
というのも例の報道が行われた直後なので、第13艦隊が造反したと考えたらしい。
参謀本部のメジナウム・グッゲンハイム大将は、公式には後詰めとして衛星軌道に展開していた第3戦隊に降下命令を出し、いざというときは撃墜するように命令したという。
いざとなればネェル・アーガマにて封印処置を施している、RX-02号機バンシィの使用許可まで出したそうだから、背筋にはさぞ寒いものを感じていただろう。

 

ちなみにこの2号機がネェル・アーガマに搭載されていたのは、多少の事情がある。
ラプラスの箱を巡る一連の事件が収束した際に、ユニコーンは研究調査で北米のオーガスタにあるニュータイプ研究所、通称ニタ研に運ばれた。
けれども、その時にバンシィの方はそのままネェル・アーガマに預ける形となったのだ。
この2機は揃うと恐ろしいことになる事は実証されていたので、同じ場所で研究ないし保管することは望ましくないと判断されたためである。
実のところそれはパイロットと込みの作用であると考えられるが、連邦政府上層部にとってはそんなことは些細なことであった。

 

そこで問題になったのは、どこに保管すればいいのかという点である。解体してしまうことも手であったが、件の大軍縮で予算措置が降りなかったのだ。
結局どこかに封印という事でまとまるところであった。ところがどこに保管すればいいかで揉めているうちに、担当者の転属などでうやむやになり、ネェル・アーガマで厳重封印と言う事になったのである。
同艦に保管されたのは、艦長のオットー艦長が軍内部では事件に精通しているということ、第13独立機動艦隊に預けておけば何か問題が生じたときに言いがかりを付ける理由にもなるという理由である。
もちろん我々に押しつけることで、自分たちに責任が来ないようにしたこともある。

 

さて、グッゲンハイム大将の命令は、オットー艦長を腹立たせるには十分だった。
彼はラプラス事件以後、そうした連邦のやり方にうんざりしていたが、自ら13艦隊を捜索する機会であるとポジティヴに物事を捉えて、命令を受け入れ降下したそうだ。
私の人となりから、激発する形で造反することはないと信じてくれたのだ。彼はあの事件で最も成長した人物の1人かもしれない。最も、運のなさは相変わらずだが。

 

ともかく、降下して問題の豪州近海を捜索していると、海上にバルーンで浮かんでいたグスタフカールを4機ほど発見して回収した。
他の捜索隊もSFSやグスタフを回収したという報告から、どうやら遭難したのではないかという推論が出されたという。もちろんこれには大きな反論が提出された。
いくらなんでも浮遊して移動する宇宙艦隊が、記録上それほど大規模でもない台風に負けて残留物・生存者共になしで壊滅するなどあり得ない。
けれども肝心の艦隊は行方不明であったので、どうにも結論が出ない。やがて他の部隊が捜索を断念する中で、第3戦隊のみが捜索を続ける形になった。
あらゆる手段で捜索した結果にもかかわらず、一向に発見できずに時間は流れ、数ヶ月が経過した。
転移当日の第3戦隊は捜索活動を終え、生活物資を補給するために、仮の母港であるブリスベーンへと向かっていた。その時に嵐に巻き込まれて気絶し、気がついたら戦場であったという事である。

 

ネェル・アーガマ副長のレイアム・ボーリンネア中佐が簡潔の事情をまとめた報告を行った。以上の報告に最初に反応したのは、クワトロ・バジーナ大尉である。彼の発言に、第3戦隊の面々は緊張した様子だ。

 

「今回の報告から考えると、そのバンシィに搭載されているサイコフレームとこちらのMSのサイコフレームが反応したという事か。すると両世界でサイコフレームを有するものが共振したと言う事なのだろうか。」
「仮説としては説得力があるが、まずはそれを調査した上で判断すべきだ。ことは我々にとって至上命題であるからな。」

 

ジェームズ・レディング艦長がクワトロ大尉に応ずる。この問答を見てやはり第3戦隊の面々は不思議な面持ちで眺めている。2人の議論は重要であるが、この状況で深く突っ込むべき話題ではない。私は2人の議論を遮る。

 

「ジェームズ、大尉。今はそのことを議論すべき状況ではない。ともかく以上が我々と諸君らの置かれた状況である。望もうと望まぬともな。
そしてここ2日に渡る戦闘の結果、我が艦隊はもはやオーブの防衛が困難と判断せざるを得ない。よって、大気圏を離脱して譲渡されたコロニー・ヘリオポリスへと向かう。
突然の展開で心の整理もできないとは思うが、ともかく宇宙へ上がるまで細かい説明はできない。何か最低限度の点で確認しておきたいことは?」

 

クラップ級巡洋艦ロングフォード艦長、ジェラルド・ハモンド中佐と同級アルスター艦長ウィリアム・ガルブレイス中佐が挙手をする。私はハモンド艦長から発言を認める。

 

「ともかく紆余曲折あったにせよ。自立は維持できているということですか?」
「そうだ。」

 

ハモンド艦長は、一年戦争の時に家族をサイド1で亡くして志願した軍人である。
それ以来軍歴を重ねて、艦長就任は第1次ネオ・ジオン戦争直前のペズンの反乱である。
彼はα任務部隊所属のサラミス改級カンバーランドを指揮してペズンの反乱を戦った。
その後サイド5駐留艦隊、ルナツー駐留艦隊を経て我が艦隊に着任した。
ルナツー駐留艦隊所属時に、シャアのだまし討ちに遭い、カンバーランドを失っている。
その事を鑑みるに、シャア・アズナブルには簡単にはぬぐいきれない感情があろう。
ちなみにルナツー駐留艦隊から第13独立機動艦隊に配属された理由は、第2次戦役におけるルナツー失陥の責任についてオブラートに包まず上層部を批判したためだ。

 

「譲渡されたコロニーに関するデータについて確認したい。部下たちに説明する必要がありますからな。」
「わかった。だがそれも宇宙に上がってからだ。安心して欲しいが艦隊幹部に対して私は情報を閉ざすつもりはない。」

 

ガルブレイス艦長は、コンタリーニ艦長よりも若い人物だ。艦長就任も第2次ネオ・ジオン戦争後である。初陣はデラーズ紛争で、観艦式に参加した中で生き残った数少ない士官のひとりである。
その後はほぼ全ての戦役で軍歴を重ねた経験を持つ。艦長就任後は環月方面艦隊に所属し、指揮官としては艦隊で第一次ネオ・ジオンにおいて軍歴を重ねた。
だが月面破壊未遂事件で艦隊はアウーラとの戦闘で壊滅し、自艦も中破する苦い経験も味わっている。そして事件後に艦隊壊滅に伴う再編で13艦隊に配属された。
理論を重視しすぎる傾向があるが、感情には流されない男だ。但し趣味の邪魔をされた時を覗いては、であるが。

 

2人の艦長へ回頭した後に、艦長会議は正式に戦線離脱を決定した。その前に海上艦隊に対する扱いに対して議論を始めようとしたときに、ウズミ・ナラ・アスハからの会談要請を受けたので、会議は一旦休会することになったのである。

 

※※※

 

我々はウズミ・ナラ・アスハ代表にマスドライバーの管制施設に呼び出された。
我々というのは、各艦艦長と先任参謀、メインザー中佐、アムロをはじめとした遊撃部隊パイロット、そしてプラント全権大使であるハーネンフース氏とアスラン・ザラ達である。

 

オーブ側は、ウズミ代表の他に首長クラスとカガリ・ユラ、ユウナ・ロマらがいた。会談は立ったままの形で行われた。

 

「司令、よく来てくれた。おそらくこれが司令と話す最後の機会となろう。」
「閣下・・・」
「お父様!何をおっしゃるのです!」

 

ウズミ代表は玉砕する覚悟を決めたのか?私はその発言の意図を訝しむ。

 

「もはやオーブが独立を維持できることは困難な状況である事はお解りであろう。
我々は恥ずべき事に市民の防衛すら君たちに託してしまっている。ここまで離脱せずに共に戦ってくれたこと感謝する。だがこれ以上付き合う必要はあるまい。」

 

カガリが何かを悟る。いや、この場にいる全員が同じ事を思ったであろう。

 

「市民に対する支援もある。ここまでの責任は我々が取る。だが、たとえオーブを失おうとも、失ってはならぬものがある。
世界はこのままでは人種対立のまま救いようもないジェノサイドの応酬で滅びてしまうかもしれないのだ。
連合にはムルタ・アズラエルに代表されるブルーコスモスがおり、プラントにはコーディネイターの優位を唱えるパトリック・ザラがいる。」

 

アスラン・ザラが俯く。確か彼の父親であったな。また彼のアズラエル氏に対する見方も多少私と異なるが、その辺は黙っていることにした。

 

「彼らの戦いが仮にどちらかの勝利に終わったとしよう。確かにそれだけで人類は滅びることはないかもしれない。だが、その後はどうなるのか?起こる紛争の全てが殲滅戦という形になるのではないだろうか。私はそのような未来を恐れるのだ。人類は一度味わった果実を忘れることなどできはしないのだ。別に進むべき未来があるのであれば、その可能性を求めるべきではないか。少なくとも人類は調和を求めることもできた時代もある。私はその方向性に持って行きたかった。しかしながら事ここにいたってオーブがそれを為すことは不可能である。だから、諸君らに託したい。この世界における笛吹き士、いや篝火になってほしい。君たちはその種火であると考えている。」
「その種火が新しい世界を照らすと?」

 

マリュー・ラミアス艦長が、やや震えた声で応ずる。

 

「困難な道となるし、諸君らが全て「失いし世界を持つものたち」だからこそできると信じている。マリュー・ラミアス、そして不本意きわまろうがブライト・ノア提督。」

 

私は彼の決意にラミアス艦長ほどの感情を動かされなかった。確かに立派であるし、覚悟もあろう。心動かされるもの言葉ではある。
だが事ここに至るまで本当に他の手段はなかったのだろうか。そしてなにより我々の行動は一貫してこの世界に対して積極的には干渉しないというスタンスであるというのに。
結局は他力本願なのか。だがそれは出過ぎたことであるので口には出さないことにした。

 

「ともかく準備に入りましょう。明朝には出立できるように致します。」
「うむ。それと、最後の公式人事を発令しておこう。ユウナ・ロマ、君をロンド・ベル駐在全権大使とする。そして、表敬のためにカガリ・ユラも同行させる。」
「わかりました」
「お父様!!!!」

 

娘の叫びを無視して続ける。

 

「全権大使は、クサナギにてロンド・ベル艦隊をヘリオポリスへと導くように。」
「わかりました。直ちに準備に入ります。」

 

ユウナ・ロマは直ちに部屋を出て行く。

 

「では諸君らも。」
「そうですな。よし、総員直ちに取りかかるぞ!」

 

ウズミはカガリ・ユラの頭を撫でるとキラを見やる。なぜキラを見たのかは私には理解できなかった。
当のキラもそう思っている様子だ。その違和感を持っていると、代表が声を掛けてきた。

 

「司令。少し2人で話したい。よろしいかな?」

 

意図がわからないので、私は非礼を承知したうえで条件を付けた。

 

「彼らも同席させたいがよろしいか?」

 

アムロとクワトロ大尉を指さす。アムロは若干「何で俺かよ」という表情を見せたが、私の意図に感づいたのか何も言わなかった。大尉も黙って頷く。

 

「時間がないし、私が無理を言っているからな。いいだろう。」

 

こうして、大気圏離脱に伴う準備を先任参謀とハルバートン提督らに任せて、私とアムロは近くの個室へと向かった。

 

※※※

 

個室には画像が移り、宇宙への離脱を準備する艦隊が映し出されている。
代表と会談する前に、オーブ軍総司令代行のマツカタ大将とも協議して、水上艦隊は全艦オーブ側に譲渡されることになった。
水上艦隊将兵には、ヘリオポリス到着後に艦艇を建造しなければならないことになるけれども、地球に置いていくわけにはいかない。
アークエンジェルの大気圏離脱は、よくわからない装置が取り付けられた。陽電子砲を発射するとPositronic inter なんとかといっていたが、まぁ宇宙にあがれるのであれば問題ない。
そうした映像を見ながら、ウズミ氏は静かに切り出した。

 

「よくも巻き込んでくれたなと思っておられるであろうな。」

 

全くだ。私は多少苦笑いの表情で肯定した。

 

「だが、君たちはこの世界に望まなくとも大きく関わり、既に各勢力から無視できない存在になりつつある。それは理解していると思うが。」
「不本意ですがね。過大評価が過ぎる。」
「そう、過大評価というのは恐ろしいものだ。だが、虚像は実像よりも大きく映るものだ。」

 

全く間の抜けた話だ。確かに我々の技術は、一面において脅威である。けれどもハードのみで戦争はできない。
それは今回の戦いがよく示している。戦争など所詮は技術的な優位だけで勝てるようなものではない。
しかしながら一度味わった果実が忘れられないように、味わったことのない果実に対する好奇心も抑えることはできないのだ。人間はだからこそ楽園を追われることになった。ウズミ氏は続ける。

 

「さて、その話について私がどうこう言っても仕方がない。本題に入ろう。これから、我々は大芝居をやらかす。」
「芝居ですか?」

 

アムロが聞き返す。

 

「そうだ。諸君らが離脱した後、マスドライバーと軍事技術関連施設は破壊する。そうすると、当然のことながら怒りに震えるグループが現れる。サハク一門が主導してクーデターが発生するだろう。」

 

そういうことか。

 

「新政権は、私を殺害した上で連合に無条件降伏を行い。連合への参加を承諾するだろう。
だが、この一連の問題に対して起こる市民の不満は、コトー・サハクが辞職することでけりを付けさせる。その後はホムラが再び代表に就任して臨時政府がすべてを取り仕切る。」
「それで、我々に何をしろと?」

 

私が問う。いや、既に意図はわかっているが、それでも確認しておきたい。

 

「次世代を担う首長達は本件について一切あずかり知らない形を取りたいと言う事だ。」
「だが、サハク一門は貴方の意見を受け入れたのか?サハク家と貴方の間には我々にさえ不和を感じさせるような印象があるが。」

 

クワトロ大尉が指摘する。

 

「そうだな。だが、彼らも連合に対して怒る事情があるのだ。反連合とオーブの存続。この2つ点で我々は一致した。」

 

その事情について、我々が問うても詮無いことだ。クワトロ大尉は腕を組んで鼻息を漏らす。アムロが確認する。

 

「次世代というと、カガリ・ユラやユウナ・ロマ、ロンド・ミナらのことを指しているのですか?」
「そうだな。彼らがいかなる判断をするかは定かではない。なにより私が彼らの進むべき未来に口を出すその資格もないだろう。
だが、彼ら自身が選択する機会を作るまでは、大人の義務であると思う。」

 

アムロも大尉同様に、何も語らなかった。既に議論すべき時間ではないとわかっているのだ。私は最終的にウズミ氏の願いを条件付きで受諾した。

 

「・・・わかりました。ですが、我々がお約束できるのは、とりあえず彼らがいるべき場所に戻るまで、ひとときの間に宿るべき止まり木を提供することだけです。
条約による規定とは別に、住むべき場を与えて頂いた事に対する恩義の返礼としては、誠意に欠くとは思いますが。」
「その気持ちだけで十分だ。ありがとう。そうだ、アークエンジェルに乗艦するヘリオポリスの学生達の家族や退艦した連中もマスドライバーより打ち出すイズモ級クサナギに乗艦させた。
連合から何されるかわかったものではないからな。」
「ご配慮、痛み入ります。」

 

ウズミ氏は、最後に少しいたずら小僧のような表情で話を切り出した。

 

「最後にひとつ聞きたいことがある。君たちの世界でニュータイプとはどういうものであるか教えてくれないか?」

 

その質問は予想もしなかったので、その言葉に切り返す言葉が出なかった。

 

「我々とて情報くらい収集する。どうせ長くとも1日生きているかわからぬ身だ。教えてくれてもいいだろう?よく整備員が冗談交じりに話していた言葉であると聞く。君たちの世界で人が目指すべき存在なのかね?」

 

そのこと言葉に対して、アムロとクワトロ大尉が答える。

 

「宇宙に出ることで人類が、感性を研ぎ澄ます事で、互いに共存しわかり合える存在となる。そういった考えです。」
「そして宇宙に進出した人類の希望であり可能性だ。」
「・・・素晴らしい考え方だ。もう少し早く知りたかった。願わくは人類が互いに共存しわかり合える、ニュータイプになれることを祈っている。」

 

私とアムロ、大尉は彼と握手を交わし、敬礼して部屋を去っていったのである。

 

※※※

 

夜明けと共に、各艦は行動を開始する。私は陽電子砲をぶっ放す危なさから、アークエンジェルを先頭に離脱させることにした。

 

「艦首上げ20!ローエングリンスタンバイ!!」
「「了解!!」」

 

ラミアス艦長の号令が出される。彼女の部下でCICで武器を管制しているダリダ・ロー・ラパ・チャンドラ2世少尉とジャッキー・トノムラ少尉が応ずる。

 

「艦長!!北東方向より例の新型3機と航空機群接近!!総数35機!!!」

 

索敵担当のロバート・ポンティ先任曹長が報告を上げる。私は無言で頷き指示を出す。

 

「大気圏離脱行動を優先とする。SFSの機体では小回りが効かん。レーン、キラ、アスラン君で迎撃してくれ!指揮はレーンに任せる!アスラン君!異論あろうが従ってくれ!」
「「「了解!!」」」
「アムロ!!後部甲板から支援を頼む!!」
「わかった!」

 

ルイスが報告する。

 

「マツカタ提督から入電!!!譲渡された艦隊を持って支援するとのことです!!またウズミ代表からも発進を催促しています!」
「よし!!全艦順次大気圏を離脱せよ!!!!!」
「てぇー!!!」

 

アークエンジェルから、陽電子砲が打ち出される。同艦は推力を上げて上昇していく。

 

「第3戦隊続けて上昇開始せよ!」
「了解!全艦大気圏離脱シークエンスを開始する!!」

 

オットー・ミタス艦長の号令で、3隻が上昇を開始する。その時左舷に爆発が起きる。オーブ艦隊が一隻爆沈したのだ。

 

「キラ、アスラン君!!水上艦隊援護はする必要ない!!突破してくる奴だけ打ち落とす!」
「「了解!!」」

 

ペーネロペーとフリーダム、ジャスティスが、艦隊進行方向の左後方にデルタ隊形を採る。

 

「艦長!!新型3機とスカイグラスパーが6機突入してきます!!」

 

もう1人の索敵担当ジャック・ヤン・ジュニア軍曹が報告する。

 

「迎撃させろ!連中の足だけでも止めるんだ!!」
「了解!!直ちに通達します!!」

 

MS管制担当のフィリップ・パヴィリヤ軍曹が指示を伝える。

 

「ピレンヌ艦長!!!」
「了解!!ラー・キェム、ラー・エルム、ラー・ザイムはこれより先発します!!」

 

前に展開する転移して以来従う3隻が上昇を開始する。

 

「発進急いで下さい!!」

 

キラが叫ぶ。言われるまでもない。ただこれは我々ではなく、オーブ艦に向かって言っているようだ。レーンは作戦を指示する。

 

「高速戦を仕掛ける!!全速で接敵して一撃を加えたのち、背後からもう一撃してラー・カイラムに乗るぞ!!」
「アスラン!!」
「ああ!!」

 

3機は速度を上げて、追撃部隊に向かう。

 

「くらえ!!!」

 

ペーネロペーからミサイルが撃ち出される。展開したミサイルは突進する機体群から渦巻きのように散開して目標に向かっていく。その時報告が挙がる。

 

「オーブ宇宙戦艦クサナギ!マスドライバーに射出されました!!」
「よし、本艦も続くぞ!!シーサー!!」
「了解!!機関最大!大気圏離脱シークエンス、スタート!!!」

 

艦全体に負荷がかかる。画面には第一撃を加えた瞬間が映る。ミサイルの着弾と接敵は同時であった。
航空機は2機が火球となり、2機がバランスを崩して海に突っ込む。そして、キラとアスラン・ザラの攻撃で大砲付きは海面に叩き付けられる。

 

「よし!もう一発お見舞いして、退くぞ!」
「了解!!」
「わかった!!」

 

本艦が回収の件もあり、徐々に上昇を開始する中で、クサナギが高速でマスドライバーの軌道を進んでいく。
大砲付きが落下したが、残り2機はひるまず追撃してくる。まずは片方がそれぞれ本艦とクサナギを狙う。
3機は全速で後ろから仕掛ける。しかし、わずかに鳥形がクサナギに迫る方が早い。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!」

 

レーンは、ペーネロペーの性能をいかんなく引き出し、後ろに迫るが追いつかない。その時だ、本艦後方からビームが放たれる。

 

「やらせるか!!」

 

アムロが後部甲板から狙撃したのだ。羽を撃たれてバランスを崩して速度を落としたところにレーンが斬りかかる。

 

「落ちろ!!」

 

サーベルで後ろから斬りかかり、右腕が切り落とされた。鳥形も海中に落下する。

 

「よしっ!」

 

レーンは直ちに上昇してラー・カイラムの後部甲板へと向かう。後は死に神型と航空機だ。
スカイグラスパーにはレーンが背後からミサイルとメガ粒子を打ち込む。そして死に神型にはキラとアスランが接近戦を仕掛ける。

 

「「うあぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

死に神型が反転しようとしたその隙を突いて、甲板に着地したレーンとアムロが射撃する。

 

「くらえ!」

 

再び反転してビームを防御しようとしたときに、後ろから斬りつけられた。両腕を落とされた死に神はバランスを崩す。アムロが叫ぶ。

 

「キラ!アスラン!!急げ!!間に合わなくなる!!!」
「「くぁあぁぁぁぁぁ!!!」」

 

フリーダムとジャスティスは落ちる死に神には脇目も振らず、全速で上昇を始める。

 

「艦長!!!新型は無力化出来ました!!」

 

ヤン軍曹が喜びの感情を込めて報告する。

 

「よし、アムロには引き続き追撃の航空機を警戒させろ!キラとアスランには直ちに帰還させるんだ!!」
「了解!!!」

 

レーンは邪魔になるので、νの後ろに付く。その間にもぐんぐん高度が上がる。クサナギも、軌道を離れて本艦を一気に追い抜いていく。

 

「クサナギ、マスドライバー射出完了!!一気に上昇します!!!」
「キラとアスラン・ザラは!!」

 

メランが怒鳴る。

 

「本艦との距離、100m!!まもなく搭載出来ます!!しかし後方より突破してきた航空機5機を確認!!!」
「アムロ!!!!レーン!!!」

 

私も受話器に声を叩き付ける。

 

「キラ!アスラン!!あたるなよ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

先にフリーダムが追い付く。νがその手を掴む。続けてジャスティスだ。外れた攻撃が一部本艦に着弾するが、損害はきわめて軽微だ。

 

「くぁぁぁぁぁぁ!!!」
「アスラン!!!」

 

フリーダムと支援で手を出せないνの代わりに、ペーネロペーが手を差し出す。後方の機体がアムロの攻撃で火球となっていく。
ジャスティスはその隙に何とかフリーダムの手を握る。そして、双方ともはからず、そしてレーンも後方への射撃体勢を取る。
次の瞬間、3機がもてる最大の火力を後ろの航空機部隊に叩き付けた。必死に追撃していた連合軍は全て火の玉となる。

 

「全艦搭載完了!!!」
「シーサー!!」
「わかってます!!!」

 

ラー・カイラムも最終加速に入っていく。その時、マスドライバーが、地上の施設が次々と爆発していく。

 

「司令・・・」

 

先任参謀が言葉を漏らす。

 

「・・・各員その場で敬礼せよ。」

 

艦橋にいたものは全員で敬礼を行う。火に包まれるカグヤ島を後にして、我々はこうして暁の空へ、地球の重力から解放された世界に向かって飛び立ったのである。

 
 

第23話「失ったものを抱いて、暁の空へ」end.

 

次回予告

 

「俺は戦う!!」 

 

第24話「失った王女と少年の決意」

 

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