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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_24

Last-modified: 2009-12-02 (水) 02:23:53
 

第24話「失った王女と少年の決意」

 

オーブの宇宙戦艦イズモ級クサナギは、まるで子供向け玩具のようにバラバラになっているパーツを組み立てている。まさか人型になりはしないだろうな。
同艦はロンド・ベルにて駐在していたソガ2佐が、艦長を担当することになったそうだ。元々宇宙軍士官だったようだから適任であろう。
周辺の警戒は、第3戦隊が搭載していた早期警戒機を主体として行っている。元々我々の捜索と、場合によっては撃破も想定していたので、攻撃能力と索敵能力は充実しているようだ。

 

「第3戦隊に早期警戒型ジム靴配備されていたのは僥倖でしたな。」

 

警戒状況を確認するメランが体を浮かせながら話しかけてきた。

 

「ああ、連邦政府は我々の消滅によほど慌てたらしいな。ともかくグッゲンハイム大将に感謝しよう。」

 

その言葉に含まれる複雑な心中を感じ取ったのか、メランはさらに混ぜ返す。

 

「そうなると、今頃アデレードは蒼白でしょうな。」
「ざまあみろだ。」

 

艦橋にひとしきり笑いが上がる。だが、私は内心では帰還することが理論的にではなく、情勢的に困難になったのではないか。その思いが心を不安にさせる。
おそらく、メランもそれがわかるから冗談で混ぜ返すのだろう。そこにルイスが報告を上げる。

 

「艦長!セイラン大使からです。クサナギの組み立てにはまだ時間がかかるので、その間に今後の方針について議論したいとのことです。」
「機敏だな。いいだろう。30分後に艦長会議を行う。各艦に連絡回してくれ。ああ、あとMSの指揮官級も集めておいてくれ。プラントの連中もな。」
「了解です。」
「会議室へ降りる。メラン、任せるぞ。警戒態勢は続行しろ。それと、会議の時間になったらブリッジをシーサーに任せて降りてきてくれ。」
「わかりました。」

 

ユウナ・ロマはこの敗北に何を思うか。彼は我々をオーブに取り込みたがっていたし、コロニー譲渡にも反対の姿勢を貫いていた。いまどのような心境なのか。
しばらくオーブ政府は、我々の技術に対する関心どころではあるまい。
1時間前に、ウズミ代表の死亡が確認された。公式にはクーデター派による殺害だが、真実を知る我々には事実上の自殺に等しい行為である。
もう少しやりようはあったとは思うが、私が口を出す類の話ではない。現在はクーデターを起こしたコトー・サハク氏が臨時政権を樹立し、連合政府と停戦交渉する旨の演説を行っている。
分析に関しては情報参謀に任せる事にした。これら一連の事態をユウナ・ロマは、どこまで想定していたか不明である。けれども、彼の考えや方針にも大幅な修正が必要なことは想像に難くない。

 

「全権大使は何を話したいのでしょうか?」

 

ブリッジを出て、エレベーターに向かうためにグリップを握ると、後ろから副官のハムサット少佐が声を掛ける。

 

「彼自身も状況を整理したいのだろうが、本命はヘリオポリスで我々が何をするのかという関心だろうな。」
「話しても大丈夫でしょうか?」

 

エレベーターに入るため、グリップを離して振り向いて答える。

 

「そこまでまずい話をするつもりもない。私自身が考える国家像はあるけれどもな。アムロや大尉、各艦長らとも話していきたい。だが、そういったこととは別に、オーブに対する姿勢は検討せねばならんな。」

 

副官が入ったことを確認して、私はエレベーターの扉を閉めた。

 

※※※

 

定刻である30分後に会議は開かれた。参謀と各艦長、そしてオーブ・プラントから大使等の関係者が集まった。
パイロットは佐官および小隊長とクワトロ大尉とヤマト少尉、加えてアスラン・ザラをはじめとするザフトパイロットも出席している。
オーブ側の面子に違和感を持ったが、その疑問はすぐに部下が解消してくれた。

 

「カガリ君は?」

 

先任参謀のトゥースがキサカ1佐に尋ねる。

 

「クサナギに残しています。閣下のことを始め色々ありましたので、今は泣くなとはいえません。」
「そうですか。」

 

なんであれ身内を亡くすことは辛いことだ。先任参謀もそれ以上聞こうとはしなかった。会議ではまず、艦隊内の問題について議論が交わされた。
第1にヘリオポリス到着後に旧水上艦隊将兵のために艦艇を建造することが決定された。艦船建造はヘリオポリスの工場施設で可能である旨を確認している。
資材に関してはヘリオポリスに付属する隕石から精製するか、輸入するかは到着後に検討する事でも一致した。
だいたい、この場にいるオーブ・プラント政府に対して即座に要求出来るものでもない。前者はとうてい対応出来ないし、後者は現状とても友好状態にない。
最も、友好状況にない国の大使がこの場にいること自体変な話なのだが。

 

次に正式にアムロ・レイが機動兵器群の総責任者となることが決まった。次席指揮官にジャック・ベアード少佐、戦術アドバイザーとしてクワトロ・バジーナ大尉が就任することも合わせて決まった。
クワトロ大尉の登用には、ハモンド艦長がいくつか確認を求めてきたが、既に我々が大尉とある程度うまく付き合っている状況で、積極的に反論をすることはしなかった。
ちなみに第3戦隊のパイロットとMS戦力は、連邦政府が如何に慌てていたのかがよくわかる。今頃は本当に蒼白になっているだろう。すなわち、Zタイプの投入や、因縁のあるパイロットの一部参加などがそれだ。

 

なかでも一番象徴的なのが、カール・マツバラ中尉だろう。彼はグリプス戦役後にコロニー公社にて勤務していたが、エリアルド・ハンター大尉や、コンラッド・モリス中佐の失踪を受けて連邦の意向を受けて復隊させられた。Zプロンプトに搭乗している。他にも、ネェル・アーガマ機動部隊指揮官のシャーリー・ラムゼイ大尉にZプルトニウスを、第3戦隊の大隊長であるバーナー・サイモン少佐にはデルタ・プラスを配備する措置を執っている。シャーリーは1年戦争以来の古参兵で、ロンド・ベル在任も長い。サイモン少佐は、第1次ネオ・ジオン戦役以来のヴェテランである。

 

しかし、こうした高性能機の配備は、部品の問題を抱えることになる。νガンダムは、互換性でどうにかごまかしてきた。ペーネロペーは、稼働時間を犠牲にする形で運用してきたという事実がある。そのあたりはヘリオポリス到着後に問題となるだろう。

 

これら議論を行った上で、ヘリオポリスへの航路について検討する事になった。最短距離にはユーラシアの宇宙要塞アルテミスが存在している。
無用の混乱を避けるために大きく避けるコースを採ることになった。
但しユーラシアが、艦隊到着前にヘリオポリスを接収する動きを見せた場合は、敵対してでも最短行動を取ることも決められた。また転移に関する問題は、ヘリオポリス到着後に腰を据えて議論することで一致した。

 

艦隊内部の問題に一応の結論が出たところで、オーブとプラント関係者の問題に移った。まずプラントの外交関係者とアスランらの扱いである。基本方針としては、ヘリオポリス到着後に艦艇を以て送還する形でまとまった。
そのためしばらくは行動を共にする事になる。航海の途上で、互いに山積する課題について協議することで合意した。特にフリーダムの扱いは、双方にとって頭が痛い問題である。

 

オーブに関しても、当面情勢が安定するまでクサナギは行動を共にする事までは決まった。またクサナギやラー・カイラムに避難した住民は、意向を聞いた上でヘリオポリスに定住し、ロンド・ベルの市民となることになった。
これは、避難民代表として会議に参加していたタロウ・サナダ氏が、その旨を提起した。ユウナ・ロマは留意するよう説得したけれども、コーディネーター系の市民が特に現状のオーブで生活することを危惧したのである。
難民問題に関する議論の後でユウナ・ロマが、技術提供に関する問題を提起しかけたところ、カガリ・ユラが入室してきた。ユウナ・ロマは一瞬だが不快な表情を見せたけれども、すぐに笑顔で将来の元首候補を気遣って見せた。カガリ・ユラは、まず一同に謝罪した。

 

「迷惑を掛けた。許して欲しい。」

 

その真摯な姿勢に少なからず驚いていると、彼女は何か決意した表情で話を始めた。

 

「キサカやマーナから話は聞いている。それにお父様からも遺言を頂いた。私自身は今後、未熟な若輩者ではあるが、オーブとそこに住む臣民のために出来ることをしていきたい。」
「あえて、ここでこうして宣言される。具体的には何をされるおつもりか?」

 

年長者であるピレンヌ艦長が諭すように語りかける。見方によっては少し意地の悪い質問かもしれない。そう、卒業論文を審査する指導教官のように。彼女は少し考えてから、ゆっくりと答えた。

 

「私は、お父様の理想と現実の違いを考えつつ、これまで学んだことを生かすことで実現していく。その理想とは、コーディネーターとナチュラルが共存して繁栄出来る国家にすることだと私は思う。
そのためには人々の意識を変えるための教育の拡充などをしていかねばならない。けれども、目前にはクーデター政権があり、連合の軍事占領という現実がある。
なにより、お父様は死ぬことで責任を取られたが、そのことに対する大きな批判が出てくることを受け止めていかなければならない。私は・・・」

 

カガリ・ユラは、一度体を震わせ、涙を浮かべる。しばらくの間、彼女は話す事が出来なかった。その理由は、続く言葉聞いて納得した。

 

「死という選択をしたお父様を、いや父を認めてはいけないのだと思う。私は実際に世界を見て、さらには提督の講義などで学んできた。
政治は結果責任なんだ。最後まで生きて責任を取ろうとする手段があったはずだと、私は思う。」

 

彼女は、あの死が出来レースであったことを承知で発言しているのだろうか。発言からは読み取れない。

 

「だから、具体的にという質問に対して私が言えることは、オーブの情勢が安定した段階で帰国し、アスハ家の者として国政に関与していく。手段や過程についてはまだうまく言う事が出来ない。」

 

少女は、父親の死に直面して大きな決意をしたのだろう。この場で決意表明することが果たして妥当なのかは別にして。
キサカは感動した様子を見せる。ユウナ・ロマは多少面倒な表情を見せたが、私の視線に気付くと眉毛を広げて目を見開き感銘したふうを見せた。
質問したピレンヌは、彼女がそれなりに考えているという点だけ納得したようで、特に発言しなかった。そもそも質問が出過ぎた事だと考えたのかもしれない。
カガリ・ユラの演説が終わると、ちょうどクサナギより合体、もといパーツの結合が完了したという報告が入ってきた。

 

私は、オーブの技術供与に関する問題をヘリオポリス到着後に話す事を提案し、会議は散開することになった。
事実上の先送りではあるけれども、この宙域にいつまでも留まる状況ではないだろう。

 

※※※

 

会議が終わり、各員が自艦に戻っていった。アムロは、少し休憩してから機動部隊の指揮官達と打ち合わせたいと希望し、各部隊指揮官と共に会議室に残留した。
私も参謀連中とヘリオポリス到着後の国家制度について検討しようと考えていた。けれどもここ数日の戦闘でくたびれていたので、検討する旨だけ話して、明日以降に議論しようという事になった。
参謀連中が解散し、副官と共に自室に戻る途中で、キラがアスラン君とカガリ・ユラと話している場面に出くわした。なにやら深刻な話のようだ。アスラン君が、私に気付いて敬礼した。

 

「ノア提督!」

 

キラも習って敬礼したが、カガリ・ユラは涙を浮かべて動揺している。

 

「どうした?」
「いえ、それは・・・」

 

アスラン・ザラは言いにくそうに口ごもる。いったい何だというのだ。代わりにキラが口を開く。

 

「ブライト司令、司令はあのときウズミさんと少し話されていましたよね。何か聞いていませんか?」
「何をだ?」
「キラッ!」

 

カガリ・ユラが止めようとする。

 

「いいんだ。カガリ、司令は信頼出来る人だ。話してもいいと思う。」

 

カガリ・ユラにそういうと、キラは事の次第を話し始めた。内容は大いに驚くべきもので、ハムサット少佐も目が点になっている。
曰く、キラ・ヤマトとカガリ・ユラ・アスハは、双子の兄妹という可能性があるというのだ。これはキラの言葉はうれしいが、安易に話すべき事柄ではないだろう。
もちろんそれを考慮した上で、私を信頼してくれているのだろうが。ともかく、私はウズミ氏から何も聞かされていないことを伝えた。
そしてアスラン・ザラが、あまり事を大きくしないためにも、この面々以外ではできるだけ話さない用にすべきであると発言をした。

 

これには私も賛意を示す。また、クサナギにはキラの両親も乗艦しているから、後日に2人の気持ちの整理が付いてから事情を聞くことにしようという事になった。
それにしても、写真の人物はキラの母親でも、カガリ・ユラの母でもないという。仮にカガリ・ユラはウズミ氏の実の子ではないとすると、大きな問題が生じるのではないか。
仮にも世襲王朝だろう。もちろん、私はオーブの法律に精通しているわけではないから、その辺りは不透明ではある。
例えば中世期の東ローマ帝国のような、在任中に徐々に権限を共有して正統性を持たせるような手段を執っているのだろうか。
これは東ローマでだけではなく、同じく中世期の神聖ローマ帝国においても執られた措置だ。あるいは実力を重視する傾向でもあったのか。
ただ実力という点では、カガリ・ユラは今日の決意表明を考慮しても、未成熟という印象を持つけれど。

 

いずれにせよ、私も口外しないことを約束し、その場は解散することになった。沈んでいるカガリ・ユラを励まして、キラにクサナギまで送らせることにした。
こうも脆く見えるのは、先ほどの決意表明で気力を使い果たしたのであろう。アスラン・ザラもアークエンジェルへ向かうというので、クサナギまでの同行を許可した。

 

先ほどの会議でプラント大使一行には、アークエンジェルに乗艦する旨を了解してもらっているという事情もある。それというのも、既にラー・カイラムは避難民を満載していて、余裕がない状況だからである。
くわえて格納庫は、キルケー部隊のM1で溢れている。それは各艦も同様の状況だが、もともと搭載数の少ないアークエンジェルには、比較的空きがある。
ゆえにジャスティスにはアークエンジェルに乗艦してもらうことにしたのだ。アスラン・ザラにとっても親友であるキラと話す時間が作れたので、特に不満はないようだ。

 

私自身としては、もう少し時間があればキラとゆっくり話したいと思いがあった。けれども、それはヘリオポリス到着後であると考え、彼らと別れて自室に戻る事にした。

 

※※※

 

それから数時間が過ぎ、私は空腹を覚えたので、アムロと食事をしつつ国家体制について話そうと考えた。
そこで会議が終わっていることを見越してアムロに連絡を取った。
するとその場にはレーンとジャック、そして作戦に関する打ち合わせで残っていたクワトロ大尉がいたので、彼らも誘うことにした。

 

最初は、彼らと食堂で食べるつもりであった。けれども、食堂は避難民となった人々でごったがえしていて、とてもゆっくり話せる状況にはなかった。
そこで私はタムラ炊飯長に司令執務室に運ぶように頼み、執務室へ戻ることにした。向かう途中で、後ろでグリップを握るアムロが問いかけてきた。

 

「ブライト、で、どのようなやり方でやっていくつもりなんだ?」
「ン・・・?ああ、そうだな。こういう通路で話すのも何だと思うが、素案みたいなモノはある。」

 

私はグリップを離して、エレベーターの前に立ち止まり、ボタンを押す。

 

「どのようなビジョンを持っているのか、是非聞かせて欲しいな。」

 

クワトロ大尉がアムロの隣に立って話しかけてきた。

 

「今回の難民を受け入れで、正確な数字は算出していないが、人口は1万人弱の規模になる。これは中世都市とほぼ同程度の規模と言っていい。」

 

エレベーターが到着し、一同が中へと入る。

 

「だから、モデルとしては中世から近世に掛けたスイスやヴェネツィア型の共和政を施行していくことを想定している。」
「ほぅ。」
「すまない、俺はよく知らないのだが。」

 

クワトロ大尉とアムロがそれぞれに答える。レーンとジャックもアムロと同様に少し難しいようだ。

 

「意志決定については、結局のところ我々異邦人の意志が反映していかなければならない。ゆえにヴェネツィア共和国型の意志決定機関を形成する必要がある。
一方で、市民の意志反映が担保されるべきだ。そこは規模も大きくないので直接民主制を採用したい。」

 

エレベーターが着いたので、各々が私の部屋に向かって浮遊を始める。

 

「ヴェネツィア型の意志決定機関とは具体的に何ですか?」

 

レーンが問うてくる。

 

「うん?ああ、国家の重要な問題、つまりは軍事と外交問題だが、それを十人委員会という貴族で形成した合議で決めるのだ。
もちろんこの場合は、貴族ではなく各艦艦長がそれに該当する。その一方で・・・」

 

私の部屋に着いたので、一旦話を切り上げて、全員を中へと促す。

 

「その一方で、内政上の問題に関しては市民集会による意志決定を行おうと思う。大まかにはこの辺りだな。
他にも司法など検討すべき課題は非常に多い。ただあまり複雑にするつもりもない。
結局のところ組織として出来上がっている、ロンド・ベルの軍組織を元に運用せざるを得ない。軍事政権であるという批判は、甘受せねばならんな。」
「確かに、国家の上層意志に関しては、軍事組織から形成し運用せざるを得ないだろうな。
ヴェネツィア型ということは、艦長が終身の元首(ドージェ)と言う事になるが?」
「全く不本意だが、他に候補がいない。大尉、やってみるか?もう一度国家元首という奴を。」
「本気で言っているか、艦長?指導者など2度もやれば十分だ。」

 

その冗談とも本気とも取れる言葉に、一同は苦笑とあきれた表情が混ぜ合わさった反応を示す。

 

「まじめに言わせてもらえば、現状一同の信頼を最も受けている人物は艦長だよ。艦長以外の指導者が出たところで無用の混乱が生じるだけだろう。」

 

大尉の言葉には全員が頷く。そこにタムラの部下が料理を運んできたので、食事を取りながらの議論に入る。

 

「もちろん、我々が去った後のことを考えるのであれば、元首に無制限の権限を与えるわけにはいかない。
今後我々が元の世界へ帰還するときに、受け入れた人々を無責任な形で投げ出すわけにもいかないからな。
繰り返すが基本的な国家制度はヴェネツィアとスイスの混合制度にすべきであると考えている。」
「なるほどな。」

 

クワトロ大尉は、議論を楽しんでいる様子だ。ただ、アムロ達は少し置いてけぼりの感が否めない。
もちろん、議論の途中でアムロやジャック、レーンが基本的な確認をすることで、議論はより深みを増していくことになっているのだが。

 

「ブライト、スイス型と言うが具体的にはどのような制度を行うのだ?」
「ああ、私も詳細に通じているわけではない。地球連邦が成立した頃は代議制を取っていたようだが、重要な案件は全国民による投票行動を重要な意志決定としていたようだ。
そこでというわけでもないのだが、さっきにも言ったように人口規模を考えれば直接民主制は可能ではないだろうかと考えている。
スイスというよりは、古代ギリシアのポリスや共和政ローマの市民集会を想起してもらった方がいいと思う。」
「だが、艦長。オーブの市民は君主政の統治で暮らしてきた人々だ。すぐになじむのだろうか?」
「そこは私も危惧している点ではある。だが、一応議会はあったようだし、選挙制度になれていないと言う事ではなかろう。
それにな、たとえ軍事政権となる事が明白でも、将兵の心情、もっとはっきり言えば私自身の心情からも、共和政体の体裁は作っておきたい。
貴方は違うが、我々の多くは地球連邦という民主共和政体で暮らし、その制度の元で戦ってきたのだから。」

 

それがどれほど腐敗し、制度疲労をおこしていたとしても。クワトロ大尉は、少し考える様子を見せたが、私の意向に賛意を示した。

 

「現状でやり用は色々あるだろうが、ひとつの手段として妥当であると思う。法制度に関しては、連邦憲章と諸民法を元に施行するのか?」
「そうせざるを得ない。我々はゼロから建国できる程の人的、資源的、知的基盤はない。」
「そうだな。それで今後の経済基盤に関してはどうする?」
「うん、もちろんいくつかある。ただもともと私が素案を言う場ではあるが、皆に何か意見はないか?聞いてみたいな。」

 

一同を見渡す。しばらくの沈黙の後にアムロが意見を述べた。

 

「コロニーである以上、最低限の食料は農業プラントで自給自足が可能であると思う。
問題は艦隊の推進剤やヘリウム3、その他の軍事物資や生活物資が必要になるかと思う。だから鎖国など出来ない。交易をする必要があると思う。」
「その通りだ。かの東洋の島国日本とて鎖国など実際に出来ていたわけではない。となると問題は何を商品にするかと言う事になるが?」

 

クワトロ大尉が、切り返して問う。

 

「そりゃ、あまり幅は広くないな。軍事技術を利用して生産した工業製品というところか。」
「そうだ。だからブライト艦長。私はオーブへ技術を全面的に供与すべきではないのではないかと思うのだ。
むしろ、独立した国家として技術を独占化して、加工貿易で生計を営む様にするのだ。」
「だが、それはオーブと利害を対立することにならないか?」
「そうだ、だが冷たいようだが、我々が生きていくうえで、オーブが邪魔になるのであれば無理に友好国である必要は無い。
コロニーは事実上手に入ったわけだからな。確保した上で、約束を反故にしてもかまわんだろうと思うが。」

 

私自身も考えなかったと言えば嘘になるが、はっきりと口には出せなかった。その言葉にアムロは明らかに反発を覚える。レーンやジャックも良い顔はしていない。

 

「だが、それでは俺たちは信用出来ない集団として、他の勢力からも交易者として認められないかもしれない。
場合によっては武力制裁の対象になる。貴様がルナツーでやったようなやり方が通じるとは思えない。」

 

クワトロ大尉ことシャア・アズナブルは、かつて第2次ネオ・ジオン戦役の際に講和を締結しておいて、連邦宇宙軍の最大拠点ルナツーへ武装解除をすると見せかけ進入してこれを奇襲した。
そして一時的に同基地を無力化に成功したことがある。しかも、同基地に貯蔵されていた核兵器をも奪い、地球に落とすアクシズに合わせて投下しようとしていたのだ。
あの作戦は、シャアには、地球寒冷化作戦後の後にあってしかるべきビジョンがないという疑念を呼び起こさせる、ひとつの要因ではあった。

 

「手厳しいな。だがそれほど突飛な話でもないと思うがな。というのも、当のオーブが混乱状態だ。そこを突けばどうとでもなると思うが?」
「・・・確かにそこは一理ありますね。あれだけ世話になっておいて言うのも何ですが、あの国はどこか胡散臭いところがありました。
政情不安につけ込んで、供与の無期限延期とでも通告するというやり方が出来るかもしれません。」

 

ジャック・ベアードが、消極的とはいえ大尉に理解を示し、それを踏まえた意見を述べる。アムロは複雑な表情を見せる。これがシャアの意見でなければ、ここまで反発しないのかもしれない。

 

「ジャックと大尉の意見には、十分に検討に値する価値を含んでいると思う。まぁ、向こうさんもその辺りは想定しているとは思うがな。
私自身としても、皆の意見とそれほど離れてはいない。その辺りのことは今後より議論を深めていく必要があるだろう。レーン、君はどう思う?率直な意見を聞きたい。」
「オーブという、そこに住む人々ではなく、国家が信用出来ないと指摘される少佐殿の意見は同感です。ですが、アムロ隊長の主張される信義の問題は、軽視すべきではないと思います。
利害関係や欲望という現実があるからこそ、虚構にまみれようとも誠実であるという姿勢を持ち続けるべきと考えます。」

 

黙っていたレーンが、意見を述べる。誠実さ、か。ある種の理想主義とも受け取れる言葉に笑みを持つ。私がさらに議論を行おうとしたところで、部屋のチャイムが鳴った。
何事かとドアを開けると、シン・アスカとマユ・アスカがユウジ・サナダ氏と共に立っていた。

 

「何か用事ですか?ともかく入って下さい。」

 

サナダ氏に促されて、兄妹も入室する。彼は我々が食事中であることに気付き、まずは詫びてきた。

 

「食事中でしたか。申し訳ありません。」
「かまいません。それで、どうしたのですか?」

 

兄妹に目をやると、当然のことであるが2人とも明るい様子はない。ただ、シン君の方には何か薄暗い感情が漂っている。
サナダ氏は非常に言い出しにくそうだ。あまり気持ちの良い話題ではないようだな。私はそこから何となくいくつかの予想を頭に浮かべる。

 

「実は・・・」

 

サナダ氏が、切り出そうとしたとき、シン君が用件を述べる、というよりは叫んだ。

 

「俺は戦う!!!」

 

率直に言って私を含めて、ある程度予想出来ていたのか、一同に驚きは少ない。

 

「志願するというのか?」
「はい!!」
「ロンド・ベルに入り、どう戦っていくつもりだ?」
「パイロットです!」

 

少年の目には強い決意が宿っている。これはどうしたものか。私はパイロット連中を見渡す。
複雑な表情を見せる一同の中で、アムロと目が合う。彼は私に無言で頷くとシン君に問いかける。

 

「なぜ、パイロットをやりたいんだ?」
「単なる憧れではないです。生活していくには働かないと駄目でしょう?」

 

いかにも即席で作ったような理由だ。私はその理由が有効でないことを伝える。

 

「そこは安心して欲しい。サナダ氏から事情は聞いているだろうが、君たちは今後ヘリオポリスで生活していくことになる。
君たちの境遇を考えれば、十分な援助はするつもりだ。その年齢で働くこと、稼ぐことを目的に軍に志願をする必要は無い。」

 

そう指摘すると、シン君はたじろぐものの必死に食い下がる。

 

「でも、これから人手は必要でしょう!」
「そうだとしても、君の手を借りなければならない事態ではない。君がどう思うのではない。私の判断だ。」

 

シン君は、私の座るテーブルに両手を叩くように置き、頭に浮かんだことを口に出す。
ただ、その言葉は私の怒りの導火線に火を付けるには十分であった。

 

「俺は、戦えました!!父さんの敵だって、MSだって倒せました!」
「自惚れたことを言うな!!!そんな感情で戦場に出てきても君が死ぬだけだ!!マユ君を残して死ぬ気か!!」

 

私の怒号にさすがにひるむ彼を諭し始めたのは、意外なことにクワトロ大尉だった。

 

「君の本音は敵討ちか。だが、それはむなしいだけだぞ。」
「そ、そんなことはない!!」
「シン君。昔、君のように父親の敵のために復讐に身を染めた男がいる。」
「えっ!?」

 

クワトロ大尉は、サングラスを外すとゆっくりと語り始めた。

 

「かつて、君のように父親を殺した相手に復讐しようとした男がいた。その男の父親は君の父上と違い、政治家で暗殺されたのだ。
しかもその男の父親を殺した一族は、その男と幼い妹、そう、ちょうど君たちのような年齢だった兄妹をも、殺そうと様々なことをしてきたのだ。
男は、父親のことや追跡や暴力から逃れる中で、その一族に復讐することを決意する。君と違うのは、彼は自分の力不足をまずは認め、何年も雌伏したのだ。
その間に知識を蓄え、体を鍛えた。くわえて言うならば、妹がある程度の意志を持つまでは離れなかった。
準備が終わると男は名を変え、戦乱が勃発したこと生かして復讐を実行する。男はMSで行おうとはしなかった。陰謀という手段でそれを為そうとしたのだ。
そうして男は学校の同期で、端から見れば親友と見える間柄であった、一族の人間を殺すことに成功した。だが、実際に復讐をしたときに男の気持ちは何の高揚感も、感動もない。
そのために多くの時間を費やしたというのにな。ただむなしさが残り、自分を笑うことになったのだ。」

 

その独白は、シン以上に私やアムロ達に感慨を呼び起こさせる。私はあのシアトルでのガウ攻撃空母の特攻という記憶を思い出す。
そう、後にギレン・ザビが追悼演説を行う原因となるガルマ・ザビとの戦いだ。
シンの方は、復讐の行為そのものに対する思いについて考えているように見える。そもそも、これが独白であることをわかっていないかもしれない。

 

「男は、高揚感のない中で、自分が復讐以外にすべきことは何であろうかと考えた。そう、父が政治の場で掲げた思想に人類の未来を賭けたのだ。
そして希望を見いだした。だが、戦乱は不幸にも見いだした希望を失わせることになる。ある意味では報いなのかもしれん。復讐という、負の感情に支配されて生きた男に対するな。
君はそういったむなしさと、生涯に渡り向き合っていけるだけの覚悟はあるのか?」
「シャア、貴方は・・・」

 

アムロが言葉を濁す。私はララァ・スンについてはよく知らないが、カミーユ・ビダンのことも含まれていると受け止めた。
シンは無言で俯いている。その表情は読めない。マユちゃんが抱きついて諫める。

 

「やっぱりやめて、お兄ちゃん。マユ、お兄ちゃんがいなくなったら、もうどうして良いかわからない!。」
「君はまだ側に幼気な妹が側にいるのだろう。彼女に対する思いも捨て復讐に身を焦がすのか?」

 

私は改めて、志願に関して思い留めることを促した。

 

「大尉の言う事にはおおきな、非常に大きなものが含まれている。今、君が聞いたことをよく考えてみてくれ。あまり自分を粗末にするな。
君を守ったソートン中佐は、君が復讐に走ることを望んで守ったわけではない。君たちが、未来だと信じて逝ったのだ。」
「でも、俺は・・・」

 

そこに、ロバート・ポンティ先任曹長から報告が挙がってきた。

 

「艦長!!索敵部隊のマレット少佐が、敵影補足!連合軍艦隊と思われます!」
「待ち伏せか!?シン君、ともかく話は後で改めてしよう。ロバート!ルイスも聞いているな!全艦に通達!!第1戦闘配備!!」
「了解!!警報鳴らします!」

 

鳴り響くブザーの中で、アムロ達は部屋から飛び出していく。私は立ち上がるとサナダ氏たちに指定区画へと戻るように促す。

 

「戦闘になる可能性が大いにある。サナダさん、2人を連れて指定区画へ!」
「わかりました、ご迷惑を掛け申し訳ない。では。」

 

結局のところシン君は、なおも納得のいかない表情ではあった。けれども、サナダ氏に促されて部屋を出て行く。
その表情に一抹の不安を感じたが、戦闘を前にしてそちらに意識を割こうとまでは考えなかった。

 

※※※

 

ノーマル・スーツを着込み、戦闘ブリッジに入ると先任曹長が報告を上げてきた。

 

「データ照合!!アガメムノン級が2隻、ネルソン級が4隻、ドレイク級10隻の艦隊です!!」
「かなりの戦力だな。」

 

メランがつぶやく。

 

「これまでの戦闘を考慮しているのでしょう。
ほぼ何もないこの宙域に配備していたということは、我々とオーブの脱出勢力に対する追い打ちが目的の艦隊であろうかと考えます。」
「徹底的だな。それとも我々に対する警戒だろうか。」

 

先任参謀の意見に、メランが応じる。そこにルイスが報告を上げる。

 

「連合艦隊旗艦ペンテリコンより、通信要求です!!回線開きますか?」

 

私に視線が集まるのがわかる、若干の間を置いてルイスに答える。

 

「いいだろう。オープンでいい、回線開け。」

 

画面には、見覚えのある人物が浮かび上がった。

 

「こちら連合軍特務艦隊司令ヒサオ・ホフマン准将である。当艦隊はロンド・ベル並びに残存オーブ軍へ降伏を求める!!
本要求が受け入れられないというのであれば、地球連合政府より、貴艦隊に対して武力を持ってあたるように命令されている。」
「ホフマン大佐か・・・」

 

我々よりも複雑な感情を持つだろう人物が、アークエンジェルより通信に介入する。

 

「ホフマン君!!そのような要求は拙速に過ぎる!なぜ上層部を諫めなかった!!」

 

ハルバートン提督だ。

 

「閣下・・・。私とて組織人です。不本意であろうとも、命令があれば従います。
連合軍、いや大西洋連邦は貴艦隊を武力で取り込もうと政治決定したのです。私はそれに従う義務があります。」
「ホフマン君・・・」
「重ねて問います。降伏を求めるが返答は如何に!!」

 

彼がこのような立場になった理由には様々な事情があったのだろう。その立場には同情を覚えるが、降伏を受け入れる義理まではない。

 

「准将!!我々ロンド・ベルは、いかなる勢力に対しても従属的な立場になる事をよしとしない!!よって、貴官の要求を拒絶する!!!!」

 

さらに、オーブ側は全権大使という肩書きのあるユウナ・ロマが拒絶する。

 

「ホフマン提督!!我々は外交特使である!!軍事的な圧力には屈しない!」

 

ほとんどわかっていたという表情で、ホフマン准将は頷く。

 

「そうおっしゃると思っておりました。残念です。では、これより武力を以て事に当たりたいと思います。」

 

ホフマン准将は、敬礼をすると通信を切った。メランが確認する。

 

「司令!!」
「わかっている!!これより我が艦隊は前方敵艦隊を突破する!!またミノフスキー粒子を使用するぞ!!ミノフスキーレヴェル1で、どの程度効くか試す!」
「了解!!!」
「もちろんその後徐々にレヴェルを上げること事もあり得る!!各艦にはミノフスキー散布下の戦闘に十分留意するよう連絡するんだ!!」
「了解!!」
「アークエンジェルを先頭に中央突破隊形を形成するぞ!急げ!!!」

 

命令と同時に陣形を整え始める。まずアークエンジェルを先頭に、その後ろに3艦長が布陣する。その後ろにロングフォード、アルスターがクサナギを挟んで並ぶ。
最後尾にラー・カイラムとネェル・アーガマが固める。連合艦隊は鶴翼の陣形で半包囲態勢を敷こうとしているようだ。双方とも機動兵器群を射出していく。
こうして我々は、この世界の宇宙で初めての戦闘に突入していくのであった。

 

第24話「失った王女と少年の決意」end.

 

次回予告

 

「我々は本気で君たちと共に歩みたいと思っている。」

 

第25話「ユーラシアからの使者」

 

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