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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_25

Last-modified: 2010-04-11 (日) 00:57:05
 

失いし世界をもつものたち
第25話「ユーラシアからの使者」

 
 

 双方の艦隊から機動兵器群が射出されていく。私はアークエンジェルにいる、アスラン君には出撃しないように指示している。また、クサナギにはミノフスキー粒子使用は伏せ発光信号で情報を送ることを伝えている。
 彼らには自衛行動を除いて戦闘を回避するように要請している。そもそも、指揮系統と権限的な問題で、彼らには命令出来ない。その意味でクサナギは非常に扱いにくい存在だ。
 もっとも粒子散布に関しては、プラント側に対する問題からアークエンジェルにも艦橋とMSパイロットにしか教えていない。
 前方では、陣形を覆うように機動兵器が展開されている。遊撃部隊とTMSを陣形の戦端に布陣させる。連合が鶴翼を崩さず包囲姿勢を見せれば、中央突破した後に背面展開を行うつもりだ。
 突破の指揮はアムロに任せ、ジェガン・ジェスタ部隊は艦隊と共に前進させる。指揮は左翼をベアード少佐に、右翼をムゥ・ラ・フラガ少佐に委ねる事にした。
 当初はトライスターのギャレット少佐に任せようともした。ラプラス事件まで私の指揮下にいたので意思疎通も十分だ。

 

 けれども対連合軍と言う事で残酷なようであるが、相手の対応についてはフラガ少佐が有利であろう。それにエールに換装したとしても、ドレッド・ノートと合わせてバッテリーの問題から今回の遊撃任務には適さないという事情もある。
 サイモン少佐はTMSなのでアムロの指揮下に置く。第3戦隊には、TMSの他にジェスタとジェガン、スタークジェガンが主力として配備され、予備機として回収したグスタフカールが4機ほど搭載されている。
 佐官の増加で部隊編成も今後課題となろうが、とりあえずは現行の編成で対応するしかない。
 展開を終えつつある双方の配置を見て、私は連合軍の展開戦力におかしな点を見つけた。

 

「あれはザフトの機体ではないのか?」

 

 展開する連合機動部隊には、航宙機メビウスの他にジンが相当量に混ざっていたのである。

 

「あれが噂に聞く傭兵という奴ではないでしょうか」

 

 先任参謀のトゥースが答える。

 

「なるほど、しかし話には聞いていたが軍用MSをこうも正規軍以外で使えるとな」
「まぁ、我々の世界とは事情も経緯も異なりますからな」
「全くだ。その辺りはこちらの物差しで見ても仕方ない。やるべき事はかわらん。ともかく、一気に突破して振り切るぞ」

 

 トゥースは頷くとモニターに目を向ける。私も画面に目を向け、展開報告が来るまで攻撃のタイミングを考えることにした。そこに報告が挙がる。

 

「艦長!!格納庫からです!! シン・アスカがMSに乗ろうとして暴れているそうです!!」
「なんだぁ!?」

 

 部隊展開の報告かと思っていた一同から、誰とはなしに気の抜けた声が上がる。

 

「どういう事だ?」

 

 私が確認を求める。

 

「どうやらソートン中佐のνに乗り込もうとしていたところを、一度は整備班が気付いて取り押さえたそうですが、うまく逃げられ混乱しているようです!」
「馬鹿者が!!子供相手に手間取るとは!!」

 

 メランが無実のオペレーターに罵声を浴びせる。私は格納庫に回線を繋げる。

 

「班長!! どういう事か!!」
『艦長、面目ない!!』
「謝罪はいい、状況は!?」
『無重力を利用して、すばしっこく逃げていてな。手間取っている』
「ともかくそちらで対処しろ、こちらからは説得出来る人間を回す。万が一コクピットに入った場合は・・・」

 

 通話の向こうから、アンナの声が聞こえる。

 

『班長!! コクピットに入られました!!』
『馬鹿野郎!!!何してやがる!!!』
「班長!!すぐに機体を拘束しろ!!それとハッチを強制開放させるんだ!!!動き出したら事だぞ!!」
『了解!!』

 

 指示を与えて回線を切ると、私は直ちに居住区に回線を繋ぐ。

 

「サナダさん、マユちゃんはそちらにいますか?」
『はい、いますが』
「いまから貴方とマユちゃんで格納庫に行ってもらいたい」
『どうしたのです?』

 

 状況がわかっていないようだが、ゆっくり説明する暇がないので私は半ば怒鳴りつけるように用件を伝える。

 

「シン君がMSに乗り込んで出撃するつもりなんだ!!マユちゃんに説得させてくれ!!」
『なっ!!わかりました、すぐに向かいます!』

 

 回線を切ると同時に報告が挙がる。

 

「艦長!!ソートン機に回線繋げられました!!」
「艦長!!!敵艦隊が進撃を開始しました!!あと20秒でこちらの射程距離です!!」
「回線繋げろ!!それと、各艦には射程に入り次第、進撃方向に一斉射撃!全軍で敵艦隊中央を突破する様に伝え!!!」
「了解!!」

 

 メイン・モニターに目をやると、艦隊が前進を始めている事を確認する。
 その右のサブ・モニターにシン・アスカが、一般のノーマルスーツに身を包んで浮かび上がる。私はいらだちを隠さず怒鳴りつける。

 

「そこで何をやっている!!!」
『また連合軍が来たんだろ!!俺だって戦える!!』
「馬鹿なことを言うな!!!たかが一度動かせてみせたくらいで何が出来る!!」

 

 そう言いつつも、かつてはジュドー・アーシタを半ば強引にスカウトしたときは、むしろ部下の意見を無視して彼をZに乗せようとしたことをふいにと思い出し、怒りの表情を緩めそうになる。
 その不意に湧いた感情をぐっとこらえる。思いにふける時ではない。

 

「敵艦隊、射程に入ります!!!」

 

 ポンティの声に受話器を押さえて指示を出す。

 

「攻撃開始!!!メラン!!船の指揮は任せる!!」
「「了解!!」」

 

 指示から数秒の間を置き、各艦が砲撃を開始する。私は画面に映る少年の説得を再開する。最も半ば時間稼ぎであったが。
 もうひとつのサブ・モニターでは整備員が、量産型νの拘束を試みている。シンは私との会話で気付いていない。

 

「いい加減にしろ!!シン!!宇宙では増長は死に直結する!!貴様を出すほど人手に困ってはいない!!」
『でも!!キラさん達だって・・・うわっ!』

 

 量産型νは、固定用のロープなどのあらゆる拘束道具で取り押さえられる。

 

「彼らと君では事情が異なる!!!」
『何がだよっ!!ちくしょう!!』

 

 彼は椅子を強く叩く。私は、父親を失ってわずか2日の少年に対する配慮が欠けていたことを後悔した。だが、それと今回の件は別問題だ。

 

「班長!!後は任せる!!サナダ氏も来るから協力して対応しろ!!」
『了解!!坊主はどうします?』
「任せると言った!場合によっては独房に入れることもやむを得ない!!」

 

 私は受話器を置き、モニターに目を移す。敵艦隊が二手に分かれていることを確認した。こちらが戦闘を避けようとしていることを見越されていたか。
 対応が後手になったことに悔しさがこみ上げる。ともかく、シン・アスカに関しては戦闘後に考えることにし、彼のことをとりあえずは頭の中から消すことにした。

 

 ※ ※ ※

 

 私がシン・アスカの事にかまけているとき、戦場では連合軍が砲撃を回避して二手に分かれて進軍してきた。
 敵の陣形は半包囲を企図していたとすれば、こちらの中央突破の姿勢から戦術を変えたと想定される。つまり、まだ通信機器に致命的な影響はないという事だ。

 

「レヴェル1では、不十分かな」
「アークエンジェルにも確認させます」

 

 先任参謀が確認のする間に、敵艦隊から砲撃が開始される。艦隊戦で第一撃があたることはそうそうない。

 

「砲雷長、砲撃の指揮は任せる。何かあれば別途指示は出す。」
「了解!!敵艦の砲撃点から現在の予想ポイントだせ!!!」

 

 砲雷長が部下に指示する。宇宙での砲撃戦は、地上以上に敵の行動を予測する事が求められる。ミノフスキー粒子散布下であればなおさらだ。先任参謀から報告が挙がる。

 

「司令、アークエンジェルのレーダーに対する影響は、Nジャマーと同程度だそうです」
「よし、ミノフスキーレヴェル3に上げ!!」
「了解!!」

 

 一方で機動部隊の方に目をやる。宇宙という事もあり映像は不鮮明ではあるが、メビウス・ジン混合部隊とジェガン部隊の衝突が目に入る。フラガ少佐からの情報で、メビウスの対応はいくらか準備があり、各隊長には伝えてある。

 

「メビウスは速いし装甲もあるが、今の連合のアーマー乗りは練度が高かない!!むき出しの主兵装を狙って無力化しろ!!!バルカンはこちらの装甲で十分防げる!!」

 

 右翼のフラガ少佐が改めて各部隊へと指示を出す。彼の指揮下には臨時でネェル・アーガマのジェガン及びスタークジェガン部隊が指揮下に入る。

 

「わかったわ!!グレイ、援護は任せるわ!!いつものように行くわよ!おまえたち!!」
「「了解、姐さん!!!」」
「・・・姐さん禁止っていっているでしょ!!!もうっ!」
「わかった!!クレア!!援護任せた!!ヘンリエッタ!ファン!続け!!!」
「「「了解!!!」」」

 

 キョルショー大尉とハンター大尉が応じる。両隊は部隊を二分してアタックとディフェンスに別れて交戦に入る。後方の部隊がミサイルとビームで牽制したところを仕留めていく。
 ジンの方はこれまでも交戦したこともあるので、特段問題なく対処出来ている。さらにその背後にはキルケー部隊のM1が並び、いわば三重の防壁を形成している。抜かれはしまい。一方の左翼ではジャック・ベアードが指示を飛ばす。

 

「全機!!メビウスは兵器を狙えばいいが、ジンは傭兵だ!手練れの可能性がある!気を抜くな!!」
「了解だジャック!宇宙での久しぶりの実戦だ、ダリル、ヨハン!!新生トライスターの実力を見せつけてやるぞ!!」
「わかりました!」「はっ!!」
「よし、いくぞ!!トリッパー!健吾!」
「おまえの背後は打たせやしねぇさ!!」
「了解です!ボティ隊長!!」

 

 トライスターとラー・エルム機動部隊、そしてアルスターとロングフォード所属部隊も交戦態勢に入る。本艦の部隊が背後に布陣する。

 

「全機かかれ!!」
「他の連中に後れを取るなよ!!」
「突破された連中を確実に落とすぞ!!」

 

 ロングフォードのニールセン大尉とアルスターのコリンズ大尉も部下と共に続いていく。
 セネット大尉は部下を制御する。脅威と感じたジンではあるが、見たところ装備は不統一で連携もうまくいっていないようだ。ミノフスキー粒子の影響如何では、有利に働くかもしれない。
 そして、進行方向が空いた遊撃部隊は、速度を上げて艦隊に襲いかかる。

 

「無理に撃沈させる必要は無い!!機関や武装を狙い、継戦能力を奪うんだ!!」

 

 アムロの号令でTMSが散開していく。彼はサイモン少佐とレーン、キラを率いて連合軍直掩隊をなぎ払う。

 

「フン!!装甲が堅いといっても、メガ粒子には耐えられまい!!」

 

 レーンは、ミサイルを放つとそれを回避しようとするメビウスにメガ粒子砲を打ち込み火球とする。

 

「動きが直線的すぎだ!!」

 

 サイモンが射撃で接近してきたジンを打ち落とす。

 

「そこぉ!!!」

 

 アムロは射程に入った数機のメビウスに対してビームライフルを2連射する。すると突撃してきたメビウス2機が同時に火球となった。とりあえず前半は有利といって良いだろう。

 

「どうにかなりそうですな」

 

 トゥースが安堵を漏らす。

 

「ああ、だが油断は出来ん。それにこの戦いにおける、もうひとつの目的も忘れるな」
「ええ、まもなくレヴェル3です」

 

 ミノフスキーレヴェルが3となると、アークエンジェルからレーダーに対する影響がNジャマー以上であるとの連絡が来た。さらに、連合軍側の動きにも多少の混乱が見られる。

 

「ふむ、では最大レヴェルである10だと、相当な影響力を持つことになるな」
「ええ、改めて自分たちのカードが恐ろしいものかがわかりますな」

 

 モニターの画面を確認しながら、事実を述べるとメランが応じる。

 

「ああ、ともかくこれで必要なデータは取れた。レヴェルを4に上げよう。それで分離した艦隊の連絡は、ほぼ寸断出来るだろう。その隙にさっさと突破しよう」
「そうですね」

 

 艦艇への攻撃は、アークエンジェルとネェル・アーガマ並びに本艦が担当している。これは砲門の射角の問題に他ならない。クラップ級の砲撃は前方には機体が来たら牽制にのみ使用させる。ミサイルも使用制限を課し、基本的には艦隊の防空に専念させる。

 

「突破してきた連中は消耗している!!引きつけて確実に落とすんだ!」
「主砲!!無理に狙う必要は無い!!!!進軍ルートを牽制するだけでいい!」

 

 レディング艦長とピレンヌ艦長が檄を飛ばす。前方ではキラが連合直掩機とミノフスキー粒子散布下での戦闘に苦戦している映像が見られる。

 

『くっ!!照準が!!』

 

 キラの声がノイズ混じりに聞こえてくる。

 

「キラ!!あまり機械に頼るな!!!宇宙では勘を働かせろ!!」
「勘、ですか!?」
「そうだ、センサーと予測を組み合わせろ!!ミノフスキー・テリトリーじゃロック・オンなんて気休めだぞ!!!」
「了解です!やってみます!!!」

 

 レーンは、キラにミノフスキー散布下の戦闘について教授する。確かに広域に攻撃出来る機体として共通性があるから、キラを指導する役目は彼が的確かもしれない。
 キラは、フリーダムのフルバーストを避けて、ビームを以て牽制したところをレールガンで狙い撃つ。その戦術でまずはメビウスに命中させる。

 

「それでもう戦えないはず!!撤退するんだ!!」

 

 しかし、次のジンはそのやり方では落とせない。だが向こうも動きに戸惑いがあるように見える。計器類に支障が起きているのだろう。
 ジンがごつい銃をフリーダムに向けた直後、横からアムロがビームライフルでそのジンを撃墜した。

 

「大丈夫か!?」
「ありがとうございます!」

 

 アムロは応じる間もなく部隊に命令しる。

 

「TMS隊たたみ掛けろ!!タイラント!シャーリー!旗艦をやるから、支援を頼む!!」
「了解!!God save Ireland!!!」
「くっ!!プルトニウスはあたしでは使い切れないか!!でもねっ!!」

 

 タイラントとシャーリーが、アムロの指示で連合軍旗艦『ペンテリコン』に迫る。ペンテリコンは、対空砲火と主砲の牽制を始めた。
 リゼルとプルトニウスが、その速度を生かして攻撃を避け、蜂のような一撃離脱戦法によって主砲を撃破する。
 そしてアムロが、左舷から機体を回転するネジのように回りながら対空砲火を回避して肉薄した。

 

「これでっ!!!」

 

 νガンダムから、ビームが数発放たれる。2発が後部の噴射口に命中し、もう1発が艦橋付近に命中する。
 あの位置では艦橋を吹っ飛ばす打撃は与えられないだろう。だが、司令部機能には致命傷だ。その間にも報告が挙がる。

 

「連合軍ネルソン級、ウエスト隊の波状攻撃で2隻撃沈!!」
「左翼ドレイク級3番艦に本艦とネェル・アーガマの攻撃が命中!!撃沈の模様です!!」
「敵艦隊!第3波ミサイル攻撃を開始の模様!!」
「ミサイルは直掩隊並びに対空砲火で迎撃しろ!!砲雷長!!主砲は射程に入った敵艦を無力化するんだ!」

 

 連合艦隊のミサイルは誘導能力を失っていて、見当違いの方向に向かうものが続出した。けれども挟撃されているので、艦隊には十分脅威な進路を取るミサイルもある。
 機動部隊が、連合軍機動部隊と交戦しつつ迎撃する。危険な軌跡を描くミサイルの半数は打ち落とせたが、残りの半数は艦隊を以て対処した。
 さらに、その隙を突いて数機のジンとメビウスが、第1線を突破して肉薄するものが現れた。

 

「やらせるか!!全機迎撃!!艦隊に近づけさせるな!!!」

 

 セネットの号令の下、ジェガン部隊が突破してきた部隊に殺到する。優勢に進むと考え、他の状況を確認しようと別のモニターに目を向けたとき、報告が挙がる。

 

「艦長!!敵機動部隊の攻撃でジェガン2機がダメージを受けました!!両機共にシールド及び左手が損傷!!」
「後退させろ!!!誰の機体か!!!」
「パットとミンです!!ミン機の損傷はひどく、負傷した模様!!」
「戻させろ!!医療班を回せ!!」

 

 メランが、状況を確認する。

 

「ジンの重装備攻撃から、アルスターを守ってくれたようですな」

 

 このとき、既に連合艦隊は艦艇の4割を失い、機動兵器は7割近い損害を受けていた。
 さらには、ミノフスキー粒子による通信妨害と旗艦ペンテリコンの大破によって完全に混乱をきたした。
 敵の機動部隊も損害の大きさから追撃する様子はない。
 特にMS部隊は第3派のミサイル攻撃と組み合わせた攻撃を跳ね返されると、もはや戦意をなくしているようだった。
 私は艦隊が挟撃領域を突破するのを確認し、戦線離脱体制へと移行させる。

 

「よし!!TMS以外を帰還させろ!!!全艦最大戦速でミノフスキー・テリトリーを離脱する!!!」
「了解!!信号弾射出!!!」

 

 艦隊は増速し、機動部隊が帰還を始める。

 

「各部隊の損害を確認してくれ」
「了解」

 

 艦隊は、その15分後に散布領域を離脱した。6月14日の14時26分の事である。

 

 ※ ※ ※

 

 戦闘が終了して40分が過ぎた。艦隊は警戒態勢を続けている。
 私は通常艦橋にて、参謀やアムロらと被害状況とミノフスキー粒子の影響度について議論していた。そこに新たな報告が挙がる。

 

「艦長!!R5のモリオカ中尉が、進路方向から小艦隊を発見したとのことです!!」
「何だと、このタイミングで増援か?数は!?」
「確認します!!」

 

 少しの間を置き、ルイスが振り向く。

 

「アガメムノン級が、1隻にドレイク級が4隻です!」
「妙ですな」

 

 増援にしては遅すぎるタイミングにトゥースも首をかしげる。

 

「ミノフスキー粒子の影響かもしれません。状況がわからないので、偵察を送ってきたのではないでしょうか」
「それにしては、規模に疑問を感じます。アガメムノン級が空母のような役割を有しているのであれば、既に機動戦力の迎撃も受けている距離です」

 

 グレイス大尉の意見にスミス中尉が異論を提示する。そこにルイスが再び振り向く。

 

「艦長!!モリオカ中尉から再度連絡!!連合艦隊より停戦信号を確認とのことです!!」
「なんだと!?」
「さらに、先方はこちらとの通信を要求しています!!」
「司令・・・」
「・・・ともかく、向こうが話し合いたいというのであれば応じよう。モリオカ中尉に先導させろ。それと警戒中のTMSを半分こちらに戻せ。ああ、中尉にも念のため2機ほど支援に向かわせておけ」
「了解しました!!」

 

 その10分後、艦隊は互いの視認可能領域にまで接近する。

 

「先方から改めて通信要求が来ました!」
「回線開け」

 

 画面には、いかにも英国人という風情の男が立っていた。

 

『お初にお目にかかる。私はダービー伯ジェームズ・スタンリーです。
ユーラシア連邦の今後に関わる重大な案件に関する交渉を任されている。これ以上は、貴艦に乗艦して会談する際に説明したい。乗艦許可を願う』
「ロンド・ベル司令のブライト・ノア准将です。話の意図がまだ正確に掴みかねるので、いくつか確認したいがよろしいか?」
『もちろんです』
「ユーラシアに関する案件とおっしゃったが、英国は大西洋連邦に属していると理解している」
『既に公式発表が為された時間であるため、隠すつもりはない。我が連合王国は、6月14日のグリニッジ標準時13時を以て大西洋連邦を離脱し、ユーラシア連邦に参加することになった』

 

 全員がその情報に唖然とする。

 

『バトラー首相は、12時にバッキンガムにおいて国王エドワード13世陛下との会談を終え、13時に会見を行い英連邦市民に公式発表しました。
私はこれに先立ち、連合王国とユーラシア連邦の双方より委託を受けて参上した次第です。繰り返し、私と随員10名の乗艦許可を頂きたい』

 

 私はあまりにも大きな状況の変化に驚いたけれども、対話であれば元々拒むつもりはなかったので、直ちに伯爵に乗艦許可を与えることにした。

 

 ※ ※ ※

 

 現領域に留まるわけにはいかないので、移動しながら緊急艦長会議が行われることになった。一同の視線が集中する中で、ダービー伯爵が簡潔に状況を説明する。

 

「英国に合わせて、日本国、統一朝鮮民国においても同時刻に東アジア共和国の離脱とユーラシア参入を宣言している頃でしょう。
またイスラーム圏の統一的な行政区分ないし自治領域の建設を条件に、汎イスラーム会議と赤道連合も参加することになります。
これら宣言に伴いグリニッジ標準18時にユーラシア連邦は、拡大ユーラシア連邦(Expanded Eurasian Federation:E.E.F.)に再編する発表が行われる予定です。
既に議会やル・ゴフ大統領にも工作は済ませました。よって本日中には一連の事態を収拾するという名目で、ユーラシアの現内閣は総辞職を行い、ランズダウン侯爵を首相に新内閣を選出する運びとなっています」

 

 確かにここ数日はオーブ戦に従事していたので、対外的な情報が入る環境にはなかった。そもそも情報員を各地に派遣しているわけでもない。
 けれどもここまで事態が変化することは想定していなかった。レディング艦長が特使に質問を投げかける。

 

「日本と朝鮮の参加はどういう事情か?機密にあたらない範囲で教えて頂きたい」
「私自身も両国と深いパイプがあるわけではないから、表象的な話しかできません。基本的には旧中華人民共和国の影響力拡大に対する懸念です。
ことに大西洋連邦が連合事務総長と大統領を兼任する際に行った、大規模な工作は東アジアにあった潜在的な問題に火を付けることになりました。
いわゆる中・日・韓を中心とした構成国の議席や権限に関するバランスの問題です。また、日本に関して言えば千島列島を含んだうえで北海道を日本の行政管轄下に戻すことも、参加条件として魅力的であったと考えます。
朝鮮国は、日本が離脱すれば中華との均衡が崩れ埋没するという危機感でしょう」
「では、汎イスラームと赤道連合は?」

 

 重ねる形でピレンヌ艦長が問う。

 

「両国は宗教と文化、並びに行政単位についてかなりの好条件を与えられたからであると考えます」

 

 航路の関係上、ニュースを受信することが可能な領域を通過していたので、ニュース映像を映しながら話し合われることになった。
 日本では朝河首相が、モーニング姿で今上天皇に深々とお辞儀をしている姿が流される。宮中の映像と並んで、首相が記者会見でマスコミに応じている映像が映っていた。
 朝鮮国は李大統領が怒号の中で力強い眼差しを以て会見して責任説明を果たしている。イギリスでは、ダウニング街でバトラー首相が演説を続けているようだ。
 汎イスラーム会議議長のイブン・ハーメイは、パン・イスラームが多文化社会の中で実現できる意義を強調する。
 赤道連合では、シン代表理事が東南アジア及び南アジアの再編とユーラシア参加に伴う経済的な意義を強調しているようだ。

 

 いくつかのニュース映像を確認したが、マスコミも予想外の事態であったようで半ばパニック気味に報じている。我々でさえ騒然としたのだ。この世界の人々が受けた衝撃は我々の比ではあるまい。
 現にアラスカで合流した面々は、未だに事態を整理することが出来ていない。もっともハルバートン准将は、ホフマン准将のこともあったからだろう。
 これら各地域に関する基本的な事情を確認するための質疑が、一段落すると特使は立ち上がり2枚の記録メディアを差し出した。
 特使が情報参謀のコレマッタ少佐にメディアを渡す。一連の操作をすると、画面には見覚えのある人物が現れた。

 

『お久しぶりです。ブライト司令』

 

 ブルーコスモスの盟主である、ムルタ・アズラエル氏だ。我々は少なからず驚いたが、彼の方はヴィデオなので、我々のリアクションには反応せずに話を続ける。

 

『司令ならばオーブにおける戦闘も生き残っているであろうと確信しています。僕としては司令との対話を重ねたいところだったのですが、僕も多忙で今回はヴィデオ・レターでのご挨拶する形となり申し訳なく思います』

 

 彼は笑みを絶やさずに残念がって見せた。

 

『さて、僕はいま拡大ユーラシア再編に関する最終的な協議の関係で、ブリュッセルにいます。もちろん、今回の件は僕だけが黒幕のごとく主導したわけではありませんよ。宗教界とランズダウン侯爵ら中道派も協力してくれました。むろんブルーコスモスで僕を支持する人たちもね。
僕たちは、今時大戦が泥沼になる形で長期化することを避けるという点で一致しています。各々の間に相違はありますよ。ですが現状の連合政府が存在する限りは、混迷の度合いは深まり世界大戦や再構築戦争以上の傷跡を残すことになるでしょう。我々はそれを回避するために新たな国際秩序を形成しよう考え、まずは今回の再編をもくろんだわけです。さて、その辺りはダービー伯からも伺えばいいことです。
ともかくも僕は、オーブが行ったように技術上の取引を希望します。もちろん、いち企業の代表としての要請ですよ。ブルーコスモス盟主としての見解については、お会いしたときに議論しましょう。
近々改めてお伺いするつもりですが、先に要求を述べておこうと思いましてね。というのも、先のアラスカの件とオーブにおける問題から、司令はブルーコスモスと僕に対する不信感を深めていることでしょう。ですから余り警戒をして欲しくないと思いまして、先にこうして連絡を差し上げた次第です。
基本的にはこちらから資金提供をないし資源等をそちらに輸出するので、見返りを求めるというものです。順調に事が運べば、来週末にはそちらへ赴くつもりなので、細かいことはそれまでに。
ではとりあえず今回はこれにて失礼します。近くお会い出来ることを楽しみに。では』

 

 映像が切れる。

 

「まさか、アズラエル氏が工作しているとは」
「オーブ戦の時に表立っていなかったのは、政治工作を行っていたからだったのか」

 

 各艦長や参謀達からざわめきが起こる。

 

「よろしいですかな?では、もうひとつのヴィデオを見て頂きたい」

 

 特使が先を促す。コレマッタ少佐はもうひとつのメディアを起動する。次に画面に映ったのは、ランズダウン侯爵だった。
 彼の方もこれまで幾度かニュースで知っている。髪は白く、多少戦線が後退している。髭を蓄えた初老の紳士だ。

 

『初めまして、ランズダウン侯爵ロバート・ペティ・フィッツモーリスです。映像媒体で失礼します。
アズラエル氏も似たようなことをいっているでしょうが、今後を考えれば私も直接お会いしたいと考えている。ですが、情勢がそれを許しません。誠に申し訳ないと思う』

 

 幾度かの演説や会見でも受けた印象だが、ダービー伯と同様にまさに貴族然としている様に感じる。
 けれども、悪い感じを受けないのは彼の人柄なのか。あるいは外交官や政治家としての老練さだろうか。

 

『われわれは本気であなたがたと共に歩みたいと思っている。連邦参加までは望まぬが、同盟の締結を申し出たい。細かい内容に関しては、ダービー伯に伝えてあります。無論修正点などの協議には応じる用意がある』

 

 映像を見ながら、私は我々がまた新たなる決断を迫られる局面に来たことを理解した。艦隊進路に広がる宇宙の闇は、まるで我々の行き先を暗示しているかのようだった。

 
 

 第25話「ユーラシアからの使者」 end.

 

 

【次回予告】

 

 「もはや大西洋連邦に統治資格なし!!」 

 

 第26話「連合崩壊」

 
 

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