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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_27-1

Last-modified: 2010-01-31 (日) 18:01:26
 

失いし世界をもつものたち
第27話「プラント動乱」(前編)

 
 

 艦隊が出航して4日後、我々はプラントが視認可能な領域まで到達した。

 

「面白い形ですね、確かに砂時計だ」

 

 作戦参謀のチャールズ・スミス中尉が、メイン・パネルの映像を眺めて言う。確かに我々の世界にはない、面白い形をしたコロニーだ。
 中尉の言うように、砂時計のような形をしている。おそらく砂時計の底辺部に都市があるのだろう。

 

「スミスさん、その言い方をする人は必ずしもプラント、というよりコーディネイターに好意的ではない人々が使う言葉なので、気をつけた方がいいです」
「そうか。それはすまない。気をつけるよ」

 

 キラ・ヤマトがやんわりといった。今回の航海では、フリーダムの問題やシーゲル・クライン前議長とのパイプを有している関係で同行している。そのためこの数日は、彼とよく話すことができた。
 キラとゆっくり話し込む機会を得たのは、オーブ以来である。彼はオーブでの講義以後、自主的にいくつか本を購入して、勉強していたらしい。
 特に『君主論』を読んだあと、マキャヴェッリ的な感覚にはなじめないそうだ。アムロはそれを聞き、むしろ君の年代では当然だと話していた。

 

「若いうちから、そういうことが絶対であるような受け止め方をされても困る。大事なのは、反発としてどういうアンチ・テーゼを持てるかということさ」

 

 アムロに続き、その場にいたクワトロ大尉も頷きながら言う。

 

「そうだな、君がどう思うかが大切なのだ。他人にどうこう言われるのではなく、君自身が自らの意志によることなのだ」

 

 ここ数日改めて感じるのは、どうも彼は答えを急ぎすぎているように見える。彼なりに関わった戦争に対して思うところがあるのだろうが、その性急さは危うさも感じる。
 2人の指摘に対して、自分の未熟を感じたのか赤面している彼に声を掛ける。

 

「キラ、急ぐことはない。今の君はロンド・ベルの一員だ。全てを1人で解決しようと考える必要は無い。相談すべき人間はたくさんいるし、なにより君に全てをさせようとは誰も思ってはいない。君は部隊の一員として感じたことを素直に言っていけばいい」
「ブライトさん・・・」
「仮にみんなに間違っていると言われても、それは悪いことではない。議論とは意見を出し合うことに意味がある。君は臆さずにどんどん発言していくといい。怖いおじさんが多いかもしれんがな」
「・・・はい!」

 

 その時の彼はまるで小動物のような表情であった。彼のこういった側面こそ、フレイ・アルスターが絆された理由のひとつだろう。
 天然ジゴロという奴だな。サイ・アーガイル伍長が怒りに燃えた理由もわかるというものだ。そういえば先のオーブ戦でアスラン・ザラと合流した後で、キョルショー大尉からキスされていたな。その場面を思い出す。

 
 

「ヤマト少尉!!」
「はい?」

 

 アスラン・ザラやハーネンフース大使らと協議した後で、各々が時間に戻り始めたとき、キョルショー大尉がキラの元へとやってきた。

 

「部下を助けてもらったこともあるし、お礼しなくちゃね。別にこう恋愛の対象としてみる訳じゃなくて、そう。感謝よ、感謝。つまりは……」
「隊長、やるならさっさとしてあげたらどうですか?」
「うるさいわねっ!!」
「いででっ!隊長っ、彼が見ていますから優しくして!!あだだだ!」
「?」

 

 鞭でゴードンをはたく。それを見てキラは無意識に首をかしげる。彼にとっては無意識でも、いや、だからこそ何かときめくものがあったようだ。

 

「ああ、もうっ!ん……」
「ムグッ!?」

 

 その場にいた一同は、呆然としていたな。私も目を大きく開けた記憶がある。キラは自分が何をされたのか理解すると一気に真っ赤になった。

 

「……フンッ!これで部下のお礼はしたわよ!!あたしが口にするなんて滅多にないんだからね!!」

 

 同じく耳まで赤くした大尉は、呆気にとられているキラを残してその場を去って行った。彼女はどうやら戦場とことなりこちらの戦場は不慣れのようだ。
 残った人間は一様に苦笑していたが、彼女の部下達だけはニヤニヤしていたな。もっとも、その一件は彼女の母艦であるラー・ザイム整備班員たちを、どす黒い感情に駆り立たせたらしい。
 保護意欲を掻きたてるタイプなのだろう。メアリー君もニコル・アマルフィに対してやや行き過ぎな看護をしているようだし。まぁロンド・ベルのパイロットにはいないタイプだからな。

 
 

 私がいささか脱線した回想に浸っていると、アムロが話しかけてきた。

 

「ブライト?どうした」
「ああ、おれも死ね死ね団の気持ちが理解出来たと思ってね」
「?」

 

 訝しんでいたのはアムロだけではないだろう。私の視線の先にいたキラもきょとんとした顔を見せている。私は咳払いすると、話題を変えた。

 

「クワトロ大尉、カナーバ外相との協議から、なにか感ずることはなかったか?」
「そうだな、少なくとも我々を扱いかねていると言う事が正直なところだろうな」

 

 昨日の晩に、入港と会談に関する基本的な打ち合わせを外務委員長である彼女と行った事を思い出す。

 

「彼女は和平路線の人物だが、現議長はそうではない。にもかかわらず、こうして会談や協議に応じるのは、様子見と言うところだろう。
 いい加減に異世界という事実を信じられなくとも、我々が彼らに与えた損害に関しては無視できる数値ではないからな」
「そうだな……」

 

 私は右手をあごに添えて考える素振りを見せると、オットー艦長が口を挟む。

 

「では、到着した途端に全員捕縛なんて事もありはしないか?」
「だから昨日、護衛を引き連れていくことを渋々ではあったが、了承させたのだ。何せこちらは総大将がいるのだ。そのくらいのことを要求しても罰は当たらん」
「だが、万が一と言う事もある」

 

 オットー艦長の慎重な意見に、スミス中尉が口を挟む。

 

「ミタス艦長、ですからこちらの海兵だけでなく、ラー・カイラムからも警備主任以下MPの半分を引き連れてきたのです。それに、昨日MSは最悪コロニーに突入させると打ち合わせたではないですか」
「うむ、それはわかるが、司令に何かあることはロンド・ベルに危機的な状況をもたらすことになる。慎重であるに越したことはない」

 

 私は艦長だけでなく、皆が感じる漠然とした不安を和らげる事にした。

 

「艦長、一般論としてイレギュラーと対応する場合にそれほど性急な対処をするとは思えないな。それにアムロとクワトロ大尉、そしてレーンが同行するのだ。人間のそういった感覚には、敏感だ。その分は対応出来るさ」
「それは3人がニュータイプだからですか?」
「本人らを前にはっきり言うな。NTはエスパーではないぞ。まぁ君はアクシズやあの事件を見ているから、そう感じるのも無理はないが」

 

 その言葉にオットー艦長は苦笑する。私も彼の苦笑するところがよく理解出来たので、苦笑で応じる。アムロとクワトロ大尉は何だろうかと訝しんでいる。キラが口を開き駆けようとしたとき、オペレーターが声を上げた。

 

「艦長、前方に艦隊を確認しました。ザフト軍の出迎えと思われます」

 

 新任早々に異世界へと転移するという幸運に恵まれた、当直のエリザベス・バーナビー少尉が報告する。彼女はネェル・アーガマの通信主任であるジャン・ボラード中尉の部下だ。
 ここ数日近くで話す機会を持ったが、快活で雀斑がチャーミングな女性である。サイド1の通信オペレーターだったらしいが、上司のセクハラに頭に来てひっぱたいた翌日に転属命令が下りたらしい。

 

 ネェル・アーガマのクルーは、退役等の事情があるものを除いて、あの「ラプラス事件」以後の配置転換が極力抑えられている。連邦の上層部が例によって情報を隠蔽したかったからだ。
 それでもあの事件での戦死者は多かったし、退役などの事情から補充人員は必要なので、各部隊で上層部や上司とトラブルを起こした人員が送り込まれてきている。女性が多く、セックスに関する問題である事例が多い。
 そのため若い女性士官や兵士が多い。だがそれが妙な憶測を生んでいる。他艦の乗員やネェル・アーガマの古参乗組員からは、なんで若い女性士官ばかり転任してくるのだ。何かおかしくはないか、そう囁かれている。
 実はハサン先生と共にミタス艦長が何か企んでいるのではないのか。ネェル・アーガマとラー・カイラムがロンデニオンにいるときに、やたら合コンがあるのは実は2人が企んでいるからだろう。などと本人には不本意な噂が立てられている。もちろんオットー艦長は、上層部から左遷されてくる人事ついて基本的に受動的であって、別に若くて美人の女性士官を漁色しているわけではない。

 

 ちなみに男性の左遷先は我がロンド・ベルの他に、外惑星方面艦隊がある。外惑星といっても、火星軌道と木星軌道を担当する艦隊だ。本来はベクトラ級が配備される予定だった艦隊で、建前は木星航路並びに太陽系外の脅威に対応するために編成された部隊である。
 もっとも扱いの悪さはロンド・ベルといい勝負だ。広大な空間を担当するくせ装備が満足ではなく、一部では戦前のサラミス級をそのまま運用しているらしい。軍歴のサルガッソーなどと揶揄される所以だろう。
 とはいえ退役しない限り地球圏の最果てにて勤務することと、異世界での五里霧中生活ではさすがに最果て勤務の方がマシだろうな。彼女はどちらが良いいのだろうか。私が彼女を見ながら埒もないことを考えていると、疑惑のオットー艦長が確認を取ってきた。

 

「司令、メイン・パネルに回します。よろしいですね?」
「ン……。ああ、すまない。やってくれ」

 

 画面に白い制服に身を包んだ妙齢の女性が現れた。

 

『ザフト軍、グラディス隊隊長のタリア・グラディスです。これより出島に貴艦隊を誘導します』

 

 凛とした姿勢を見せるが、表情には多少の緊張も感じ取れる。

 

「ロンド・ベル司令のブライト・ノア准将です。先導よろしく願います」
『では、こちらの指示に従って下さい』
「わかりました、艦長」
「了解。航海長!!向こうの信号を確認しろ!!」
「了解、確認します!」

 

 それにしても出島とはまたマニアックな言葉を持ち出したものだ。確か17世紀の日本だったな。海禁政策をしていた江戸幕府が、外国と交易するときに窓口としていた施設だったはずだ。
 島国が海禁するあたり、同じく島国でありながら海の向こうへ出ていったグレート・ブリテンとの相違が興味深い。もっとも、イングランドの場合は出ていった人々の多くが国内では生活できなかったのだが。
 そんなことを考えているうちに、先方の艦隊から発光信号が挙がる。航海長のアビゲイル・ングロ少佐が、確認したのち報告する。寡黙な黒人女性で、娘を元の世界に残しているそうだ。

 

「信号確認、続行します!!」
「うむ、続行せよ」

 

 そのやりとりが済むのを見て、私はオットー艦長に次の指示を出す。

 

「艦長、ハーネンフース大使とアスラン君達を艦橋に呼んでくれ。入港時にここにいた方が便利だろう。あと他の随員にも退艦準備をさせてくれ」

 

「わかりました。副長、一行のエスコートは任せる」
「はい艦長」

 

 副長のレイアム・ボーリンネア中佐が、敬礼して艦橋から去る。彼女はラプラス事件を艦長と乗り越え、信頼の絆を深めたそうだ。
 最も艦橋要員によると、あれは信頼じゃなくて不倫の香りがするという話だ。不倫はいけない。レイアムは未亡人だが、オットーには家庭があったはずだからな。

 

 ところがその半日後、出島に到着すると我々は予想もしない事態に直面することになった。
 曰く、我々が出島に入港したわずか2時間程前にクライン前議長が暗殺されたというのである。

 
 

 (後編へつづく)

 
 

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