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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_28-1

Last-modified: 2010-03-02 (火) 23:31:08
 

失いし世界をもつものたち
第28話「歌姫の出撃」(前編)

 
 

「こちらです!!!」

 

 マーチン・ダコスタ君に導かれ、我々はホテルの裏口に向かって走る。もちろん体力も考え全力疾走ではない。

 

「やれやれ、重力が恨めしいな」

 

 私よりも年長の作戦参謀である、トマス・ウィラー中佐が愚痴を漏らす。彼は肥満体というわけではないが、痩せ形でもない。年齢相応に衰えている。私もあまり他人のことはいえないが。
 裏口に到着すると、大型の装甲車が2台とトラックが待機していた。正面階段の連中は囮という事か。

 

「では分乗して下さい!!」

 

 ダコスタ君の意見に反論する。

 

「駄目だ!!全員をトラックに乗せる。分乗したら最悪バラバラになる危険性がある!!」
「しかし、提督方だけでも装甲車に!!」
「かまわん!!大尉!!!」
「Aye sir!!!Third squad forms line!! 後方警戒せよ!!!第1第2分隊は乗り込め!!!」

 

 警備主任のヴィーコ大尉の号令で、第3分隊は裏口に向かって警戒する。その間に我々は、ダコスタ君の制止を半ば無視する形であてがわれたトラックに乗り込む。

 

「どいてくれ!!操縦は自分が!!!」

 

 レーンが、乗っていたザフト兵を押しのける。

 

「ブライト!!」

 

 アムロがレーンの脇に乗る、どうやら4人は乗れそうだな。

 

「わかった!!クワトロ大尉!!貴方もこちらに来てくれ!!」
「了解した!!」

 

 クワトロ大尉が、アムロの隣に座ると私も乗り込む。それを確認したヴィーコ大尉が、分隊に号令を掛ける。

 

「第3分隊!!!トラックへ乗り込め!!!」

 

 第3分隊の面々は、直ちにトラックへと乗り込む。私は備え付けの無線で、前の装甲車に連絡する。

 

「よし、いいぞ!!ダコスタ君!!!!」
『了解です。続行して下さい!!!』
「わかった、とりあえずは続行しよう!!レーン!!」
「了解!!!」

 

 レーンがアクセルを踏み込むと、トラックとしては意外に速い加速で走り出した。

 

「ヴィーコ大尉!!周辺の警戒を!!」
「Aye ay sir!!!1分隊と2分隊は周辺警戒!!!」

 

 後ろより一斉に金属音が聞こえる。警戒といっても、まさかトラックから銃を突き出すわけでもない。即応出来る体制であれという事だ。こうして我々は、ともかくもホテルを脱出したのである。

 

 ※ ※ ※

 

 装甲車に従い、高速で都市を駆け抜ける。市民達は何事かと次々に車を端に寄せていく。私は再び無線を開く。この場合あまり傍受を心配しても仕方がない。

 

「それで、どこへ我々をエスコートするのか?」
『それほど遠くには行けませんよ。この2両を囮にして、あるビルに行きます。何分急いで来たもので、緻密な計画は期待しないで下さい!!!』
「わかった」

 

 私はとりあえずその旨を了承する。我々にとって議長暗殺未遂の一件は、突発事件の何物でもない。しかし彼らの言い様ではどうやら違うらしい。
 そして後ろに目をやる。作戦参謀のチャールズ・スミス中尉が、ハマー二等兵とステップマン二等兵に介抱されている。彼の制服は血まみれで、金色の参謀飾緒が赤く染まっていた。

 

「中尉の容態は?」
「あまり良くはありません。止血はしましたが、輸血しないといけませんし、肩胛骨の損傷は早く手当の必要があります」

 

 脇にいた、第3分隊長のボズワーズ曹長が報告する。それにしても早く離脱しなければならないが、どこに逃げるべきか。
 理想をいえば、地下に潜りたいところだ。何せ構造上すぐに宇宙に出ることが出来る。
だが、どう行けばいいのかが全く解らない。ニコル・アマルフィがその手の構造に精通しているとも思えないし、精神的に動揺している彼に正常な思考が出来ようか。
 それにオットー艦長であれば、おそらくコロニーへのダメージを考慮して、側面部分から機動部隊を突入させてくるだろう。
 いや、こちらの連絡までアクションは起こさないかもしれない。何とかしてオットー艦長と連絡を取る必要がある。

 

「ダコスタ君、外と連絡は取れないだろうか?」
『この状況ではかえって危険です!まずは続行して下さい!』
「やむえんか……」

 

 私が悔しさをにじませつつ断念しようとするが、クワトロ大尉は私に再考を進言する。

 

「いや、艦長。ここは傍受の危険を冒しても連絡すべきだ。このままだと脱出しても3隻でプラント本国の戦力全てとやり合う羽目になる」

 

 私がそれに答えようとすると、アムロが叫ぶ。

 

「レーン!!」
「ええ!!」

 

 ハンドルを捌いて左にずれると、そこにミサイルが着弾した。追撃部隊が追い付いたのか。後ろから歓声が上がる。

 

「さすがです、ニュータイプ!!」
「うるさいぞ!!だいたい上官にその言い方はなんだ!!」
「褒めているのですよ!!中尉殿!!」

 

 そうして騒いでいると、後ろに続行していたダコスタの部下が乗っていた装甲車が爆発した。

 

「俺の気が散ったら、ああなるからな?」
「「Aye sir……」」

 

 神経質気味のレーンをアムロがフォローする。

 

「レーン、おまえなら大丈夫だ。俺が言う前にハンドルを切れていた。その調子さ」
「アムロさん……はい!!!」

 

 そのやりとりが終わるやいなや、分隊員が報告の声を上げる。

 

「大尉!!後方よりジープ4台確認!!」
「艦長!!反撃許可を!!」

 

 大尉の上申に許可を出す。会場より我々の正当防衛はとっくに成立していよう。

 

「よぉし!!反撃を許可する!!ジープを排除しろ!!」
「Aye ay sir!5人ごとに横隊を組み、3列に並べ!!」

 

 各分隊長が復唱して指示を出す。

 

「Aye sir!! Form line!!」

 

 兵士達が、組体操のような姿勢で折り重なるような横隊形を組む。

 

「1列ごとに5秒ずつ斉射する!First line makes ready!!」

 

 金属音が鳴る。

 

「Present!!……Fire!!!!」

 

 一斉に先頭のジープ2台に射撃が加えられ、1台目が爆発する。2台目は命中したけれども、助手席から身を乗り出していた兵士が、道路に投げ出されただけで追跡を止めない。

 

「Second line makes ready!!」
「大尉!!ヘリからミサイル攻撃!!!」
「全員対ショック体勢!!」

 

 レーンの叫びに、皆が身構える。彼はハンドルを巧みに捌いてミサイルをかわす。兵士が怒鳴る。

 

「連中は市街地でもお構いなしか!!」
「落ち着け!!サットン!!連中だって慎重さ!だから爆薬の量も少ないし、ジープの方も重火器は控えている!」

 

 第2分隊長のミランダ曹長が、部下を小突く。

 

「重火器も持ってくるべきでしたかね?」

 

 運転席の窓を背にウィラー中佐がぼやくと、部隊を指揮するヴィーコ大尉が突っ込む。

 

「どうせ足りなくなりますよ」

 

 ジープは依然として3台だが、いつ援軍が来てもおかしくない。なにしろここは首都なのだ。私は大尉に指示する。

 

「大尉、残りのジープも排除しろ。このまま追撃されるのは面白くない」
「Aye sir!! Second line throws a grenade!! 」
「「「「「Aye sir!!」」」」」

 

 投擲された手榴弾で、先頭のジープ2台が爆発し後続の1台も巻き込まれた。兵士達が歓声を上げる。
 だが、上空には対地攻撃用と思われるヘリが2台に増え、片方にはミサイルランチャーを確認した。これはまずい。

 

「まだなのか!!」

 

 アムロがダコスタ君に声を荒げて確認する。

 

「もう目の前ですよ!ほら!」

 

 私の目前には、コロニー内にしては高層なビルがあった。何か公的機関があるのだろうか。

 

「あのビル下を抜ける道で降ります!!あそこにヘリは入ってこられませんから!そして車はそのまま囮となります。出来るだけ迅速に行動して下さい!!」
「わかった!!みんな!速やかに移動するぞ!!」
「Aye sir!!」

 

 トンネル内に停車すると、直ちに下車する。そして、装甲車とトラックは追尾の目をそらすために、そのまま走り出す。

 

「こっちです!!」

 

 ダコスタ君は、数名の部下と駆け出して、おそらくは非常口であろう、鉄の扉へ走り出していく。我々はそれに続行して、ともかくもビル施設内にと逃げ込んだのである。

 

 ※ ※ ※

 

 非常階段を上り、1階のフロアに出る。受付には、「アプリリウス市交通司令センター」とある。

 

「キラッ!!!」

 

 突然少女の声が上がった。私はその方向に目を向けると、ピンク色の髪をなびかせた少女がキラに飛びついている場面が目に入った。

 

「ラクス!?」

 

 キラがしっかりと彼女を抱きとめる。少女は堰を切ったように涙を見せる。

 

「キラ、キラ……」

 

 この少女がラクス・クラインか。私が彼女に対して抱いた最初の印象は、年齢相応に心を乱す少女であった。とりあえず彼女はキラに任せることにして、次の手についてダコスタ君に問う。

 

「さて、色々質問はあるが、まずは艦隊と連絡を付けたい。通信をさせて欲しい。君たちについて尋ねるのは、その後だ」
「ええ、外の艦隊にプラントを攻撃されちゃかないませんからね。こちらにどうぞ」

 

 私はクワトロ大尉とヴィーコ大尉にこの場を任せ、アムロとウィラー中佐を伴い通信室へ向かう。部屋に付くと直ちにウィラー中佐が回線を繋げる。

 

「司令、繋がりました!!」
「うん」

 

 画面には、オットー・ミタス艦長が映し出された。

 

『司令!!ご無事でしたか!!』
「艦長!あまり楽観出来る状況ではない。そちらの状況は?」
『救難信号を受信したので動き出したところ、グラディス隊と交戦に入りました!いったい何があったのですか?』
「歓迎会でハプニングがあってな、困ったことにいきなり陰謀の黒幕にさせられたのだよ」

 

オットー艦長は、いまひとつ正確には状況を理解出来なかったようだ。私の言い回しに原因があるだろう。だが、最初から説明している状況でもない。

 

「細かい話は後だ、我々はこれからなんとかして宇宙に脱出する。回収に来てくれ」
『しかし、どうやって出るのです?我々が外殻を突き破って突入した方が早いと思いますが?』

 

 その言葉にダコスタ君が、慌てて脱出方法を口にする。

 

「待って下さい!!このビルは、この都市の交通網を管理する施設です。その関係でビルの下には地下鉄の操車場があります。さらにその下に幹線整備用のエアロックがあり、そこからならば脱出が可能です。
 本当ならば、エレベーターを上って味方の艦艇に乗り込みたいところですが、そちらには囮としてこれから出撃してもらいます。ともかくプラントを破壊するようなことは止めて下さい!!!」

 

 多少青ざめた表情を見せるダコスタ君の話から、私は地下から脱出することに決めた。生存権は優先されてしかるべきだが、むやみにコロニーを破壊することは避けるべきだろう。

 

「艦長、聞いての通りだ。座標を送るのでシャトルでも何でもいいから我々の足下に横付けして欲しい」
『わかりました!!現在戦闘中ですので、最速で30分……20分で向かいます!!』
「頼む!!」

 

 通信を終えると、ダコスタ君に体を向ける。アムロが口を開く。

 

「さて、そろそろ助けてくれた事情を話して欲しいな」
「……とにかくフロアに向かいましょう。お話します」

 

 フロアに戻ると、キラがようやっとラクス嬢を宥め終えたのが目に入る。ラクス嬢は、顔を赤らめて自己紹介してきた。
 初対面の人間に泣き崩れたところを見せてしまったことが、恥ずかしいのだろう。

 

「はじめまして、私はラクス・クラインです」
「こちらこそ、ロンド・ベル司令のブライト・ノア准将です」

 

 互いに握手する。白く綺麗な手だった。

 

「今回の行動は、貴女の指示によるものですか?」
「私だけの判断ではありません。ですが、ここにいるのは私の意志ですわ」

 

 私はダコスタ君に目を向ける。彼はようやく今回の一件を語り出す。

 

「今度の行動は、こちらとしても想定外でした……」

 

 ダコスタ君は、まずはこの件を知るきっかけを話してくれた。どうやら前議長暗殺という混乱の中で、和平派は内密に我々ロンド・ベルと接触するために、シャア・アズナブルに連絡を取ろうと試みたそうだ。
 彼らははっきり言わないが、そのあたりは我々を利用する腹積もりがあったのだろう。そのときに偶然にホテルに入るラウ・ル・クルーゼを確認したそうだ。
 不審に思ったダコスタ君が尾行すると、大使館の役員と何か話している。どうやらクルーゼが大使館職員を焚きつけているのだという。その辺りの細かい事情に話が進む前にダコスタ君の部下から報告が上がる。

 

「副官殿!!まずいです!!かなりの陸戦部隊が到着した模様です!!」
「ちっ!思ったより早いな!2班はここで時間を稼いでくれ、15分すぎたら降伏していい」
「了解!」

 

 そこに突然外からロケット弾が打ち込まれた。轟音と共に、辺りが煙に包まれる。兵士達の毒づく声が聞こえる。

 

「ダコスタ君!!」
「ここで生き証人である提督方に死なれては困ります!地下のエアロックへ参りましょう!車両庫の脇ですから、車両などをバリケードにして持ちこたえましょう!」
「わかった!!総員……」

 

 そこでさらに間が悪い事が起きる。さすがにこの爆音でアマルフィ夫人が、目を覚ましたのである。

 

「ここは?」
「母さん、大丈夫ですか?」
「ニコル……」

 

 マダム・アマルフィは、周囲を見渡すと徐々に状況が理解出来てきたようだ。顔を青くすると同時に混乱して見せた。

 

「どうしてこんなことに、ニコル……」

 

 ニコル君にすがりつく。ニコル君の方は、動揺しながらも母親を落ち着けさせようとしている。

 

「母さん、いまはともかく生き残りましょう。このままでは何で僕たちがこんな目に遭ったことすらわからないうちに殺されてしまいます」
「ニコル……」
「ニコル君の言う通りです。マダム、貴女のことは我々ロンド・ベルが守ります。いまは従って下さい」

 

 ニコルと私の言葉に多少落ち着きを見せた彼女は、頷くとようやく立ち上がる。既にダコスタの部下が追跡部隊と銃撃戦を行い始めていて、状況はまさに混沌としたものといえよう。

 

「ブライト提督!!急いで下さい!!こちらです!!」
「わかった!!!総員続行するぞ!!」
「「「了解!!」」」

 

 ダコスタ君の案内で、我々は再び非常階段を下る。その途中で、アムロがダコスタ君に声を掛ける。

 

「マーチン・ダコスタ!さっきの説明では納得がいかないところがある!」
「何がです?」

 

 タラップの音が小気味良く鳴り響く。

 

「あのシャアモドキの奴が何か企んだことを事前に知って、何で止めなかった!?」

 

 シャアもどきという言い方に、一部兵士から笑いが漏れる。当のクワトロ大尉は後ろを振り向いていないので確認出来ないが、鼻で笑っているようだ。
 ダコスタ君は、後半の言い回しからクルーゼのことを指しているのだと理解して応答する。

 

「こちらだって準備はあります!!」
「そうは言うが、職員を引き留めることだって出来ただろう!!」

 

 ダコスタは無言になる。痛いところを突かれたのか。代わって語り出したのは、ラクス・クラインだった。

 

「仰ることはわかります。ですが、彼の目的がわからなかったのです」
「ラクス?」

 

 キラが問い返す。

 

「クルーゼ隊長が、ザラ議長を暗殺しようとする理由がわからなかったのです。ですが……」

 

 ダコスタ君が補足する。

 

「どうやら、シーゲル様を暗殺した実行犯を焚きつけたのもクルーゼ隊長であるという事が、その後わかりまして」
「なんでまたそんなことがわかったのだ?」

 

 ウィラー中佐が、息を切らせながら尋ねる。

 

「その辺も説明すると長くなるんですがね、偶然パズルのピースを手に入れたようなものです」
「まぁその辺りは後でいい。それで、ラウ・ル・クルーゼの目的は何なのだ?」

 

 クワトロ大尉が問う。ここが肝心なところだ。

 

「完全にわかったわけではありません。少なくとも、戦争の拡大を画策しているという事しか。これはザラ議長とはまた違う視点のようです」
「ほう、つまるところ我々はプラントにおける政争にまんまと巻き込まれた訳か」

 

 大尉が皮肉気に慨嘆する。対してラクス嬢は素直に我々に謝る。正直なところ謝られてもとは思うが。

 

「……皆様方を私たちの国の事情に巻き込んだことは申し訳ありません」
「ラクス……」

 

 キラは息を乱しながら、彼女を思いやる。ちょうど、その時に階段を下りきる。そこから廊下を数メートルくらい進んでいくと「操車場」と書かれた看板と分厚い鉄の扉が現れた。

 

「ラウ・ル・クルーゼにしろ、ザラ議長にしろ、彼らの独善的な意志で戦争が、このまま収拾付かなくなることは人類にとって不幸です」

 

 ラクス嬢は、何か決意したような表情をして主張する。

 

「国家がその強大な力を理不尽な形で使う事は許されません。だから、私は父を喪なってから数日考えて、決めたのです!!私は理不尽な組織の暴力に対して抵抗の歌を歌います!」

 

 私は、相次ぐ緊張と一連の問題が不透明であったことから、彼女の熱意にそれほど心を動かされなかった。

 
 

(後編へつづく)

 
 

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