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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_30

Last-modified: 2011-05-02 (月) 15:30:58
 

失いし世界をもつものたち
第30話「コロニー群奪回作戦」

 
 

虚空の宇宙を50隻以上の艦隊が、見事な隊形を並べて進軍している。さすがに壮観だな。
これほどの艦隊を見る機会は一年戦争以来なかったのではないだろうか。
今回の作戦行動で我が軍は、私が直接指揮を執る第1戦隊とハルバートン提督指揮の第3戦隊を投入することになった。

 

いわゆる元アラスカ海上艦隊乗員から編成された艦隊である。総数は補給艦含めて10隻である。
基本的には海賊相手の作戦行動である。新規編成された戦力でも対応出来るだろうということで、実戦訓練も兼ねて第3戦隊を投入することになったのだ。
機動戦力は主にキルケー部隊を各艦に搭載した。率直に言って半ば実戦訓練的な側面がある。

 

EEF側にしても、今回の作戦は、今後におけるこちらとの共同作戦の訓練的な意味合いがあるだろう。
何はともあれ今後は共に軍事行動を行う機会が出てくるのだ。ある程度実践を伴う事を行いたいところであろう。
今作戦では、全軍の指揮を再編されたEEF第2艦隊司令のエクスマス子爵リチャード・ペリュー中将が執る。大西洋連邦のイギリス出身の軍人で、代々海軍軍人を輩出する家系だ。
祖先はナポレオン戦争で活躍して叙爵されている。その意味では、その直系の出自にしては宇宙軍を選んだという変わり種である。
作戦前での会食でその話題に触れたところ、これからは宇宙大航海時代になるだろうから、私がその先達者となると豪語していた。
視野が狭い類の軍人ではなく、その意味では全体の指揮を任せてもいい人物のようだ。

 

「第2艦隊旗艦ヨークシャーより入電、エクスマス提督です」

 

噂をすればという奴か。ズマ少尉が報告する。私は回線を開くように指示をした。画面に提督が映し出される。最終的な確認のつもりだろう。

 

「ブライト司令、予定通り45分後に所定の勧告を行う。勧告して10分後に作戦を決行する。その勧告に従わなかった連中に配慮する必要は無い。もっとも、ジャンク屋とは名ばかりの海賊どもが勧告に従うとは思えないがな」

 

彼の脇に立つ参謀長のアーサー・スキナー少将が咳払いをする。

 

「ともかく、今回の共同作戦は演習的な側面が強いが、きっちり成果を挙げよう。我が艦隊もMSの運用実験という側面があるからな」

 

作戦に先立ち、先行量産に成功したジム恐を6機供与している。ギリギリ間にあったというのが実情だが、こちらも実戦テストも兼ねているといってよい。
提督は配備したMSをいくつかのパターンを想定して運用することにしているようだ。すなわち、3機小隊による編成とメビウス部隊との連携を想定した編成である。
後者はジム:1・メビウス:6とジム:2にメビウス:4という編成だ。ちなみに、ジム恐はストライカーパック対応なので、早速EEF所属のジムには運用実験もかねて各種パックが装備されている。
またフェイズシフト装甲は今回見送られている。人的及び時間的な制約で手が回らなかったのだ。

 

もちろん、我が艦隊にも先行的に生産したジム恐を配属させている。フラガ少佐指揮下のアラスカ脱出組のパイロット達が搭乗する。武装は急造のため、M1のライフルを持たせている。
オーブには悪いが、M1用の予備兵装をそのまま転用したのである。シールドも同様にM1 使用である。
今後は、ライフルはグリプス戦役以来のビームライフルかジムライフルを、シールドはジェガン用のシールドか、連邦の既製シールドのどちらかを配備する予定である。
兵装については幹部に慎重論が強い。ストライカーパック対応にまでさせたのだから、ライフル等の兵装はこの世界の武装に準拠させるべきだというのである。
一方で補給担当や技術担当者からは、生産ラインの効率性からジェガン用に統一させてくれとの要望が出ている。今回ジム恐の兵装が間に合わせになったのは、その辺りでまとまらなかった側面も否めない。

 

スキナー参謀長が再び咳払いと共に上司を諫める。

 

「閣下、油断は禁物です。海賊相手とはいえ、戦力的には未知数です。最近ではやたらカスタマイズしたMSを運用している連中もいると聞きますからな。それに他勢力の介入する可能性もある事を忘れないで下さい」

 

提督は頷いて答える。

 

「もっともだ。だがあと2時間もすれば、月面から本多提督率いる第3艦隊も到着する。総数は100隻近くになるのだぞ。戦力的には圧倒している。仮にザフト軍や、冷戦状態の大西洋連邦が介入したところで、たかがしれている。
もちろん、所定の方針に基づいた対応をすることは大前提だ。連中の介入する可能性は、少ないとはいえ油断はせんさ。それに・・・」

 

私が言葉を繋げる。

 

「イレギュラーな機動戦力に対しては、我らロンド・ベルにお任せ下さい」
「大いに当てにしている、ブライト司令」
「では、あとは所定の作戦計画に基づいて」
「うん」

 

互いに敬礼し、画面を閉じる。向こうにしてみれば、異世界勢力との初の軍事行動だ。緊張があるだろう。
我々もアークエンジェルやオーブ軍、アラスカ艦隊との経験はあるが、どれも緊急的な状況下で綿密な準備の元に行ったものではない。
作戦計画に基づく本格的な軍事行動は、この世界に来て初めてである。行動の際には、可能な限り取り合っておきたい。

 

「よし、第2戦闘配備へ移行する。20分後に第1戦闘配備へと移行する。各員スタンバっておけ!」
「「了解!!!」」

 

※※※

 

戦闘ブリッジの各員は、ノーマルスーツに身を包み、独特の緊張感に支配されていた。何回実戦を経ても、この感覚だけは失うことはないだろう。

 

「時間です」
「いよいよですな」

 

副官のレーゲン・ハムサット少佐が声に出す。参謀長のジョン・トゥースもつられて言う。
今回の作戦計画は、参謀長と作戦部がEEFの要塞司令部並びに、宇宙艦隊司令部、そして今回実働する第2艦隊司令部と立案したものだ。
EEF軍令部は、大まかな方針は示したが、詳細はこちらに委ねると連絡してきた。ウェリントン元帥は、共同作戦を採る部隊間で詳細を決定し、まずは両軍に信頼関係を築かせることを重視したそうだ。
それについてアルテミス要塞司令官ロサコフ中将や、同要塞に駐留している宇宙艦隊司令のエーバーハルト中将は、地上で手一杯だからこちらに丸投げしたのだろうと、若干皮肉を述べていた。
ガルシア少将の罷免後、要塞の再建と宙域確保に本国の碌な支援もない状況で奮闘したふたりは、地上に対して毒を吐かずにはいられなかったのだろう。
もっとも、我々にしてみれば無理難題を押しつけられずに済んだのでありがたかった。

 

私がふたりに対して頷いてみせると、ズマ少尉が報告を挙げる。

 

「艦長、宙域のジャンク屋組合籍艦艇より、本作戦行動の不当性について抗議が来ています。返答はいかがしますか?」
「放っておけ、我々の関知するところではない。だいたいコロニー周辺の治安維持は、国家が担当すべき問題だろう。そもそもこの軍事行動に不当性があるとは思えない。
なにより、我がロンデニオンはジャンク屋に関する条約に批准していない。EEFが対処すべき問題だ」

 

私が先方の通信を一蹴するとほぼ同時に、提督の勧告が始まった。

 

「私は拡大ユーラシア連邦軍第2艦隊司令、エクスマス中将である!!これより拡大ユーラシア連邦並びにロンデニオン共和国連合艦隊は、本宙域の治安維持を目的に軍事行動を開始する。
周辺で活動中の艦艇で武装を有する艦艇は、直ちに武装を解除せよ。また、本宙域に存在するコロニー群は、本来地上の各国政府が管理するものである。
不法に居住するものに対しても容赦しない。コロニーに残りたい場合は、EEF管理下に入る事を示す旨を連絡すること。さもなければ攻撃する!!!なお、軍事行動は本勧告後の1時間後に開始する!!以後は投降以外の通信を一切受け付けない!!!以上!!!」

 

その勧告を聞いてしばらくすると、宙域を離れる艦艇をいくつか確認する。彼らについては問題ではあるが、今回は放置することにしている。まずは迅速なる宙域の確保が目的だからだ。
また、仮に作戦後に連中が戻ってきても、本作戦後に駐留する第3艦隊が対応すればいい。待避する艦艇の中には、エターナルらの姿もあった。ラクス・クライン一党には、あらかじめ鎮圧戦が行われるので、待避するよう通達している。
彼らはメンデルという放棄されたコロニーへと待避するそうだ。彼らに関する対応は、駐在大使のダービー伯とも協議した結果、終戦に到達させる上でひとつの手段に成り得るとしてうまく生存させようという事になっている。
そのため、メンデル周辺宙域は我が第1戦隊の担当宙域にしてある。続いて、艦隊司令から訓辞が前艦隊に行き渡る。

 

「第2艦隊並びにロンド・ベル艦隊将兵に告げる!!!本作戦は、作戦目的こそ治安維持であるが、EEFとロンデニオン共和国並びに、地球圏の今後における安定にとって重要な作戦である!!!諸君の検討を期待したい!!」

 

この訓辞に前後して、世界樹崩壊の後に残る、数少ない大型コロニー、テル・アブ・フレイラやエウローペーから数隻の艦艇からMSの発進を確認した。馬鹿な、この戦力に真正面から立ち向かうというのか。
連中にもなにか事情があるのかもしれないが、無謀と言うほかない。通信担当士官が、声を上げる。

 

「艦長!!コロニー・エウローペーから通信です!!『我々は、エウロペを中心に独立国を建設した。本宙域は、我が領土である。
宙域への進入に対しては自衛権を行使する。不当な侵略行為と後世に悪名を残したくなくば、直ちに撤退せよ』以上です」

 

艦橋にいた面々に何とも言い難い表情が現れる。まるで自分たちの事を見ているように感じているのかもしれない。メランが苦笑いする。

 

「これも、おそらく我々の影響なんでしょうなぁ」
「どこの世界にも、器だけ模倣して中身のない連中は現れるものですからな」

 

参謀長のトゥースが応じると、艦橋に乾いた笑いが響く。私自身も苦笑いを押さえられない。そこへ新たな連絡が来る。

 

「艦長!!第2艦隊旗艦ヨークシャーからです!」
「繋げてくれ」

 

画面には、エクスマス提督が映る。

 

「提督、通信は聞いたね?」
「はい」
「今年は建国ブームらしい。連中の行動は予想の斜め上だな」

 

彼は苦笑いを隠さない。もっとも、私も似たような表情であっただろう。

 

「どうしますか?」
「そもそも、独立宣言が出されたなどという話は聞いていない。あの通信が宣言だとしても、我々のすることに変わりはない。
だいたいコロニー・エウローペーは、旧ユーラシア所有のコロニーだ。テル・アブ・フレイアも旧汎イスラームが建造したもので、譲渡した覚えはない。
放棄したコロニーまでジャンク屋所有にされたらたまらん」

 

スキナー参謀長が一応の事実を指摘する。

 

「閣下、条約上そのような解釈も可能ですが?」
「やかましい、するとなにか?我々は血税で建造したコロニーを住所不定の連中に無償で献上しなければならないのか?馬鹿馬鹿しい。
連合政府の馬鹿どもめ、何であんなキチガイみたいな条約を結んだのだ。しかもご丁寧に現政府も・・・」
「閣下、それ以上は・・・」

 

参謀長が重ねて提督の放言を諫める。副官のケネディ少佐も参謀長にアイ・コンタクトを送っている。どうやら通信を止めさせたいようだ。
さすがに他国の軍との通信で政府批判をするのはよろしくないだろう。最も、提督と知り合い1ケ月ほど過ぎたが、この辺りの発言に自嘲をしていた記憶がない。
毎回参謀長が頭を抱えているだけだ。目の前で繰り広げられる、コメディ・シーンに対して、私はとりあえず作戦に変更無いと言うことだけ確認したかった。
どのみちこの宙域を管理するのは彼らだ。その辺りのゴタゴタは正直知った事ではない。

 

「提督、確認しますが、作戦に変更はないのですね?」
「ん?ああ、変更はない。」
「では、45分後に改めて」
「うむ」

 

双方の敬礼で通信を終えた。目の前には、我が連合艦隊には全く対抗出来る戦力ではないが、決して少なくない艦艇が展開しつつあった。
向こうの実力次第では、被害が出るかもしれない。私は気を引き締め、艦隊に進撃命令を出したのである。

 

※※※

 

艦隊は、中央をEEF第2艦隊の第1戦隊と第3戦隊、左翼を第2戦隊と第3戦隊、右翼をロンド・ベル艦隊で構成している。
機動兵器が展開できるように、横並びに1列、縦に2列になって進行する。機動兵器の展開という目的の他に、大兵力の圧力をかけ、戦意を喪失させようとする目的もあった。
もっとも、こちらとしても戦意をさっさと喪失して欲しい事情もある。メランが参謀長に話しかける。

 

「さて、ほとんど張りぼてに近いサラミスでどこまでやれますかね?」
「まぁ、急造使用ですからね。主砲はまだしも、対空火器やミサイルは間に合わせもいいところです。ジムだって突貫作業もいいところでしたからな」

 

実のところ、今作戦に投入したサラミス改級は、艦砲射撃が出来ればいい程度で実質砲艦レヴェルの代物である。作戦に間に合わすために、かなりの無理をして実戦に投入したのである。
なにせ、一部隔壁や兵装は未完成という代物だ。挙げ句に責任者のサナダ氏には、テストする暇なんて碌にないじゃないかと憤慨されてしまう始末である。
これまでの仕事に鑑みて、サナダ氏なら大丈夫だろうという、論理的な証拠のない妙な信頼が彼には注がれていたが。
それでも本作戦に、第3戦隊を投入したのは、オットー・ミタス大佐指揮の第2戦隊を本作戦へ投入すると、それこそロンデニオンを完成未満の艦艇で防衛とするという羽目に陥るからだ。
それでは、あまりにも無防備になってしまう。もちろん、EEFが援護してくれるだろうが、はなから当てにするのも問題であろうという意見が、艦長会議で大勢を占めたのである。
加えて旧アラスカ艦隊の艦長達が、士官や兵士達をいつまでも艦艇無しの状態で畑仕事や工場労働要員扱いにさせておくのが忍びないという訴えもあった。
そこには各艦艦長が、未だに艦艇を持たないために、会議における立場の弱さを打開したいという思惑も働いていたようだ。クワトロ大尉は、2人で話したときにその辺りを充分に留意しなければしこりが残ると進言してくれている。
そういった事情から、完成率60%にしか達していないサラミス改級で編成された、第3戦隊の投入になったのである。

 

ジムに関しても同様である。今回の作戦に間に合わせるために、先行量産型と言えば聞こえはいいが、突貫作業で間に合わせたようなものだ。
さすがにサラミスと異なり、武装とエンジン、つまりは間に合わせのバッテリーエンジン以外で手を抜くようなことはしなかったが。
設備が揃っていたとはいえ、一年戦争では半ば奇跡的とも言うべき大増産を可能にしたMSの改良型だからこそ出来たようなものだ。
ともかくジムを作ることに特化することで、ここまで生産にこぎ着けたのである。
おかげで本来最重要課題ジェガンなどの補給物資の生産や、νガンダムやペーネロペーのサイコミュ兵器が後手に回ることになったくらいである。
但し、予備部品はほとんど皆無で、なけなしの部品は全てEEF側に送付している。
つまり、我が艦隊に属するジム隊は、今作戦に関していえば大きな損傷したら使用不能という仕様である。
そうまでしてジム開発を優先した事情は、今後の交易を考慮した結果であった。

 

「出港時は技術関係者や工場要員が、ばったり倒れていましたからな」
「だが、本当によくやってくれた。彼らにはうまいものを食べさせてやりたいな。それにこの作戦が終了すれば、嗜好品も手に入りやすくなるだろう。彼らには優先的に配分してやる事で報いたい」
「全くですな」

 

参謀長やメランとこうしたやりとりをしていると、旗艦より指示が来る。

 

「艦長、艦隊旗艦より入電、2分後に一斉射撃、以後は所定に基づき各個に攻撃開始せよ。以上です」

 

私は、参謀長や副官、副長らと頷き会うと艦隊に対して命令を発する。

 

「全艦一斉射撃用意!!!15秒前からカウントする!!一斉射撃30秒後に機動部隊を順次発艦させ!!!」

 

部下が次々に復唱する。

 

「了解!!」
「全艦砲撃準備!!!15秒前よりカウントを取る!!!」
「ペガサス1より各機へ!!砲撃30秒後に順次発進!!準備せよ!!」

 

艦橋はいよいよ緊張の度を強める。考えてみれば、しばらくは戦闘をせずに済んできたのだ。改めて引き締まる思いがあるだろう。
前面には、あまり統制が取れているとは言い難い、13隻ほどの雑多な艦艇が、20機ほどの機動兵器と展開している。分散しつつあり、的を絞らせないつもりであろう。まもなく時間だ。

 

「カウント開始します!!15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1」
「各艦砲撃開始!!!!!!」
「ファイア!!!」

 

各艦から一斉にビーム攻撃が行われる。前面に展開中の海賊艦艇へ光が到達し、次々に被弾していく。我が艦隊の正面に展開していた艦艇は、4隻ほどいたが、次々に爆沈する。機動兵器は、混乱しつつも、こちらへと進撃を開始した。

 

各艦から一斉にビーム攻撃が行われる。前面に展開中の海賊艦艇へ光が到達し、次々に被弾していく。
我が艦隊の正面に展開していた艦艇は、4隻ほどいたが、次々に爆沈した。機動兵器は、混乱しつつも、こちらへと進撃を開始した。

 

「よし、以後の砲撃は艦隊の正面の上下角30度にはいる目標に行え、判断は艦長に任せる」

 

私はそのように指示すると、アムロに通信を入れる。

 

「MS隊出てくれ。艦隊はセネットの部隊とキルケー部隊で対応する」
「わかった」
「前面のだけが全てではない。むしろ待ち伏せや潜伏している可能性の方が大いにある。艦隊からの支援が届かない場合もある。気をつけてくれ」
「ああ」

 

アムロは頷き、ガンダムがカタパルトに乗る。

 

「MS隊発進する!!ガンダム、行きまーす!!!」
「ジャック・ベアード、同じくガンダムで出る!!」

 

アムロのかけ声と共に副隊長のジャック・ベアード少佐も量産型νガンダムで出撃する。各艦からも次々とMSが展開していく。中央に布陣するEEF艦隊からも機動兵器が次々と出撃する。
アルテミス要塞には、ダガーが配備されていなかったために、供与されたジムの他と隊長機用に配備されたコスモ・グラスパー以外は、殆どがメビウスである。
それでもストライカーパックが要塞に配備されていたのは、コスモ・グラスパーに対応するためである。
エクスマス提督によると、今後はメビウスを徐々に減らし、コスモ・グラスパーとMSの混成部隊を編成にするつもりであるという。

 

「ペーネロペー改、レーン・エイム出ます!!」

 

ペーネロペーは、ユニットの予備パーツをタクヤ・イレイとネェル・アーガマ搭乗の旧ユニコーン・スタッフの指揮の下で、宇宙使用に無理矢理改装した。
その改造には、かつてのペーネロペー修理と同様に悲喜交々した逸話を挟み、関係者は数日の徹夜作業で全員がラー・カイラム美人看護婦の世話になる事になった。
余談ではあるが、イレイ軍曹はその件で、ミコット・バーチとロンド・ベルに存在する某団体にボコボコにされたそうだ。しかし某団体とは何だろうか、モリス大佐は口を濁して私が知る必要は無いと述べていたが。

 

アークエンジェルからも、次々にMSが出撃していく。

 

「クワトロ・バジーナ、ガンダム出るぞ!!!」

 

本作戦より、クワトロ大尉はソートン中佐の量産型νガンダムに搭乗することになった。
本人はνガンダムに乗る事に多少違和感があったようだが、ドレッド・ノートよりも扱いやすいし、遊ばせるにはもったいない機体だったので乗る事になった。
塗装は深紅に塗り直し、せめてもの自己主張をしているようだ。そのうち改造を要求し始めるかもしれないな。

 

「キラ・ヤマト、フリーダム出ます!!」
「ニコル・アマルフィ中尉、ブリッツいきます!!」

 

ニコル・アマルフィは、先日正式にロンデニオン共和国の市民となった。階級はアカデミー上位成績での卒業と実戦経験に鑑み中尉としている。
機体はアークエンジェルに放置されたままであったブリッツである。

 

「ムウ・ラ・フラガ、ストライク出る!!」

 

キラやニコルは、クワトロ大尉と共に遊撃部隊として出撃後アムロと合流する。対して、フラガ少佐の指揮するジム恐部隊が、正式のアークエンジェル所属部隊となる。
アラスカで合流したパイロット達の士気は、ひたすら缶詰で訓練を受けていたけれども悪くない。

 

展開が終了すると、いよいよ機動部隊が進撃を開始する。アムロが号令を掛ける。今回の作戦では、EEF側の部隊も含めて機動部隊全体の指揮をアムロが採ることになっている。

 

「ホワイト1より各機へ!!機動部隊は、艦砲射撃の上下から挟み込む!!ロンド・ベル各機は上方、EEFは下方から敵艦隊に接近する!!!」
「ユーロブレード1、了解!!!異世界の戦術指揮をとくと拝見させてもらおう!!」

 

EEF機動部隊隊長のミシュレ大佐が応答する。レーン・エイムが、クワトロ大尉に付き従うキラやニコルに声を掛ける。

 

「海賊相手とは言え、これだけの部隊が動く戦闘は初めてだろ?気負わずにアムロ隊長や俺の後ろから付いてきて、大規模戦闘の感覚を学べばいい」
「「了解!!」」

 

その会話を聞きつつ、私が前面の艦艇が壊滅するのを確認したところ、旗艦から次の指示が来る。

 

「艦隊旗艦より入電!!!各艦へ、前面の艦艇はほぼ無力化した。砲撃は機動部隊の支援に切り替え、目標を包囲下に誘導に移行せよ!!以上!!」
「うん、いい頃合いだ。各艦へ指示を出せ」
「了解!!ペガサス気茲螻憧亙造咾乏撞,悄△海譴茲蟯和發遼し發六抉臻し發悗醗椶襦機動部隊は砲撃を利用し包囲出来るよう追い込め!!」

 

艦隊が支援砲撃へと移る直前には、機動部隊は抵抗戦力と接触していた。既に支援砲撃が必要ではないようなほどに、一方的な攻撃が加えられている。

 

「ジャンク屋とは名ばかりの海賊どもが!!!」

 

EEF艦隊の機動部隊将兵が叫ぶ。元大西洋連邦にせよ、元ユーラシア連邦にせよ、連合軍にとってジャンク屋は穏やかならぬ感情を有しているのだろう。
件のジム部隊がメビウスと連携して、ジンを撃墜する。メビウス2機が攪乱しつつ、さらに後続のメビウスがミサイルで牽制、最後にジムが射撃でとどめを刺す。
まるで実験場である。その光景を見て、複雑な思いを抱くが、ハムサット少佐は別の感想を抱いたようだ。

 

「しかし、こうもMSが民間で使用されるとは驚きです」
「こちらではMSの運用のあり方に違いがあるようだからな」

 

少佐の言葉に応じつつ、戦況のことを考える。前面の連中はだいたい片が付いたか。そこに旗艦より指示が来る。

 

「艦隊旗艦より入電!!ロンド・ベル以外は戦隊ごとに分散し、割り当て宙域に対して掃討戦に移れ!以上!!」
「よし、第2段階だ!!我が艦隊はC及びD宙域を掃討する!まずはC宙域へと進路を取れ!!」
「了解!!」

 

本作戦では、宙域を大きく4つに分けている。すなわち中央の最重要コロニーの集まる宙域をA宙域、左翼の前面にある小型コロニー群をB宙域と、我が艦隊正面にある旧世界樹残骸宙域をC宙域とした。
そしてコロニー、メンデルが存在するA、B、Cの後方にある広大なデブリ群をD宙域と設定した。陸戦隊の投入を必要とする領域はEEF艦隊が対応し、伏兵等が想定される宙域を我々が担当する形である。

 

とりあえずここまでは順調といってよかった。メビウスには被害が出ているが、艦隊にはダメージはない。だが、うまくいきすぎると逆に心配になってくるのは、どうにも苦労性が過ぎるだろうか。
私はそのような自問をしつつ、モニターで戦局を眺めていた。

 

※※※

 

作戦が開始されて3時間が経過して、反抗してくる連中も少なくなってきた。投降している連中もいる。
艦隊旗艦はコロニー、エウローペー等に陸戦隊を突入させている。
損害も第2艦隊ではメビウスが3機撃墜され、ロンド・ベルはジム恐の1機が不意打ちを受けて右腕を大破して後退した程度である。

 

アムロはA宙域で抵抗していた機動戦力を排除した後に部隊をふたつに分け、ロンド・ベルをC宙域に、EEF機動部隊をミシュレ大佐に任せてB宙域へと向かわせることにした。

 

「ホワイト1より各機へ!!!周辺警戒を厳にするんだ!!!チームで補い合うことを忘れるな!!」

 

機動部隊が、確実に周辺の戦力を駆逐していく。元々、強力な抵抗戦力が存在するわけではない。不意打ちに気をつけさえすれば被害もなく対応出来る。
艦隊の方は、中央の第1、第3戦隊はコロニーの制圧に傾注している。
一方で、左翼の部隊は小型施設群の抵抗が薄いこともあり、EEF第2艦隊副司令のブルックス少将はその場を第4戦隊に委ねて、自らが率いる第2戦隊を先行させてD宙域へと進軍した。
本来ならば我々が先んじて到着する予定であったが、サラミス級の練度や予想よりも潜伏戦力が多かったことから、緩やかな進撃を余儀なくされた。そのために予定よりもD宙域の到着に遅れそうである。

 

「思ったよりもかかりますな」

 

参謀長が、予定より遅延している事に多少のいらだちをもらす。

 

「第3戦隊の艦長達は、それこそ操艦のコツを学んでいるところだろうからな。
やむを得ないだろう。だが見てみろトゥース、機動部隊はいい働きをしてくれている」

 

画面には、的確に潜伏地域を捉えて、排除するか投降を行う部隊が映っている。
アムロやクワトロ大尉、レーンはその感覚を生かして潜伏する部隊を発見し、ジャックやタイラント、エリアルドなどのヴェテランは、豊富な経験に基づく判断で追い詰める。

 

「そこ!2時の方向仰角60!!隕石の裏!!!」
「了解!!」

 

アムロの声にキラが反応する。レーンもニコルに叫ぶ。

 

「スクリーン越しに殺気を感じるんだ!!」
「わかりました!!」

 

アムロとレーンは機体性能を生かして敵を引きつけ、キラとニコルが撃墜する。クワトロ大尉は各部隊に注意を喚起しつつ、インコムを駆使する。

 

「レッド1より、ローズ1へ9時の方向俯角20のデブリ裏に気配がある注意されたい。・・・そこだ!」

 

ガンダムより放たれたインコムユニットが、別の方向にいたジンを撃墜する。

 

「ローズ1了解!おまえ達!!左右から挟みなさい!!」
「「了解です!!!姐さん!!」」
「だから、やめなさいっての!!!」

 

こうして宙域に潜伏していた抵抗勢力は、確実に殲滅されていくか、投降していった。もっとも、艦隊練度とは別に投降に対応することが、進撃速度を遅くさせている要因でもあったが。

 

※※※

 

我々がようやくC宙域をクリアして、交代で補給整備をしながらD宙域へと進入したとき、それは発生した。

 

「艦長!!!EEF第2戦隊左舷10時の方向俯角50より熱源確認!!!砲撃です!!!」
「何だと!?」

 

私が反応するとほぼ同時かそれよりもはやく、艦砲射撃と見られる光がEEF第2戦隊の側面を襲う。その光のうちのひとつはとても特徴的なものであった。

 

「戦艦ローデシア大破、通信途絶!ドレイク級ハルガタ、タンタ爆沈!!」

 

単従陣で進んでいたEEF第2戦隊は、半ば無防備に攻撃を受け、3割の被害を受けてしまった。被害状況を確認していると、メランが口に出す。

 

「これは、陽電子砲ローエングリン・・・」
「まさか・・・」

 

ハムサットが絶句する間にも、周辺警戒を行うマレット少佐率いる索敵部隊が急行する。少しの間の後に過ぎに報告が上がる。

 

「艦長!!!熱源の出所に存在するデブリ群に艦隊を発見!!!大西洋連邦軍です!!総数15隻!!!どうやらミラージュコロイドで潜伏していた模様!!!」
「なんてことだ・・・」

 

メランが悔しさを漏らしていると、索敵担当のマレット少佐から画像データが届く。

 

「アークエンジェル級がいるのか・・・」

 

艦隊の規模は、戦隊よりやや多い程度の数だが、その中には漆黒に塗装されたアークエンジェル級の姿を確認する。陣形の位置から察するに旗艦ではないようだ。いずれにしても同級の保有する陽電子砲は脅威である。

 

「第2戦隊!!!散開しろ!!!的を絞らせるな!!!!」

 

エクスマス提督の檄が飛ぶ。ブルックス少将は、その指示を受けつつ反撃の姿勢を取る。

 

「何て様だ!!各艦体勢を立て直せ!!散開しつつ、進路変更11時の方向に転進しつつ反撃を加える!!機動部隊が来るぞ!!直掩隊!!突破させるな!!」

ところが、第2戦隊が反時計回りに連邦艦隊に並行しようと試みるが、連邦艦隊は機動部隊も含めて我が艦隊へと直進してきた。

 

「何だ!?」
「目標は我々なのか?」

 

機動戦力はともかく、艦隊戦力はこちらの2倍だ。しかもサラミスは特に防御力が弱い。加えて機動部隊は補給作業中だ。私に焦燥感が湧く。

 

「第1戦隊を前面に展開させろ!!!第3戦隊は後退しながら支援砲撃!!」

 

さらに、補給前に警戒していたフラガ少佐の部隊が即応する。

 

「ホーク1より、ホーク2、ホーク4へ迎撃するぞ!!左右に付け!!」
「「了解!!」」

 

ジム恐部隊は、1機後退しているが、残存2機がストライクの両脇に従い前進する。その後ろにはキルケー部隊が続く。

 

「敵艦隊の機動部隊を確認!!ダガータイプ15、メビウス20、ジン12、不明1!!」
「不明機だと、新型か?画像を出せ!!」

 

メインパネルに、ガンダムタイプが映し出される。

 

「ガンダムタイプか、またぞろ新型という訳か。データ収集しておけ!!」
「了解!!!」

 

オペレーターのジャンが応答するやいなや、意外な情報が寄せられた。

 

「艦隊旗艦より報告!!不明機体はユーラシアで建造していたハイペリオンだそうです!!」

 

第1報に対してどういう顔をしただろうか。
両脇にいる参謀長や副長と同じように、眉毛を歪めて報告内容を理解しようとしたが、よくわからないので早く次の報告をよこせというような顔をしていたのかもしれない。代表して副官が尋ねる。

 

「ユーラシアで建造していたものが、どうして大西洋連邦にあるんだ?」
「それが、先月開発後の実験運用部隊司令のガルシア少将が、部隊ごと大西洋連邦に亡命していたそうです!!」

 

なるほど、そりゃ身内の不祥事など晒したくないだろうな。連合崩壊時の混乱は、いろいろな問題を生じているだろう。
今頃艦隊司令部では、エクスマス提督が罵詈雑言を浴びせかけていることだろう。だが、この期に及んで大西洋連邦が我々と敵対する理由は何だろうか。
まして況んや、ミラージュコロイドで潜伏していたという事は、こちらの作戦行動を事前に把握していたという事だ。情報の漏洩が考えられる。
私がいくつかの問題を考慮する間に、フラガ少佐の部隊がハイペリオンと接触する。

 

「ホーク1より、ホーク2、4へ!!俺が正面から仕掛ける!!レフ!ユリア!!おまえらは脇から挟み込め!!」

 

フラガ少佐が、エールストライクを駆りビームを斉射したときに、驚くべき光景が現れる。まるでクリスタルの傘のような光がハイペリオンの前面に展開した。そして、その傘は、ビームを全く受け付けない。

 

「何!!!アルテミスの奴か!!!ホーク4!!!実弾で攻撃しろ!!」
「しかし傘が相手では!!」
「牽制した隙に距離を取る!!!俺らの装備じゃ無理だ!!!味方の射程距離まで引きつけろ!!デステ大尉!!支援よろしく!!」
「了解!!」

 

それでもただ引くことだけでは許されない。けれどもジムをここで大きな被害を出すわけにもいかない。フラガ少佐の指示を理解したのか、キルケー部隊のデステ大尉は、M1でフラガ隊の支援のために、半包囲を敷く。

 

「キルケー1より各隊へ!!一斉射撃だ!!Iフィールドのように無効化するわけもないだろう!!過負荷を与えれば!!!」

 

迎撃に出た5機のM1と1機のグスタフ・カールが一斉射撃を浴びせる。しかし、被害はない。

 

「M1の出力が足りないか!!!」
「大尉!!裏から仕掛けます!!!」
「やめろ!!!迂闊に近づくな!!!」

 

キルケー部隊のM1が速度を生かして間合いを詰める。しかし、前面に展開した傘は、球形となり機体を包む。

 

「全面に展開できるのか!!!」
「ハハッ!!!効かんぞ!!!!」

 

パイロットらしき高笑いが聞こえる。気のせいか、聞いたことのある声のような気もした。
それにしても回線を開いているのか。背後から仕掛けようとしたM1を援護しようと前面から仕掛ける。

 

球形の傘が、槍状になりM1に突進する。

 

「今その存在を消してやる!!!!」
「何!!!くそぉ!!!!!」

 

体をひねらせ回避を試みるが、シールドごと左腕と左肩を持ってかれる。

 

「脱出します!!!!」

 

彼が脱出したと同時に、機体が爆発する。今は無事の確認を出来ない。さらに続けて前面にいる機体も、強力な砲撃で吹っ飛ばされる。

 

「キルケー6、7ロスト!!!」

 

ハンス・エイレン少尉はグスタフ・カールでミサイルをたたき込んだが、実弾までも無効化にされたことに驚愕した。
さらに、ハイペリオンはバリアを球形に展開し直すとそこから射撃を開始するのを見て舌打ちする。

 

「くそがっ!!内側からはありなのかよ!!!」
「ずるっこい!!!」

 

他にもキルケー部隊の毒づきが次々に聞こえてくる。M1はさらに数機が被弾して、2機を後退させる羽目になった。
やはり、ジェガンの配備をもっと優先するべきであったのか。こちらは人的資源を無駄に出来る状況にないのだ。
いくらキルケー部隊に予備人員が多めにいたとはいえ、こちらの予備人員は補充の当てがない。
新型に対応しきれなかった自分の判断ミスが悔やまれる。どこかに慢心があったことも否めない。

 

「どれだけの耐久力があるんだ?アレの詳細は!?」
「いま、コレマッタ少佐が艦隊司令部に問い合わせています!!!」
「急げ!!!」
「ハイペリオンに突破されました!!!」

 

キルケー部隊の防衛戦を突破した連合軍は、ハイペリオンを戦闘にメビウスで艦隊攻撃を仕掛けてきた。残りのキルケー部隊は、ダガーの対応に追われる。だが、策がないわけではない。

 

「無理に狙うな!!!向こうを近づけさせなければこちらの勝ちだ!!!弾幕を厚くしろ!!!向こうはバッテリーだ!!!あれだけの出力のバリアを長時間維持できるとは思わん!!!負荷を与えて時間切れを引き起こさせろ!!!!!」

 

弾幕が一斉に開く。まずは牽制のためであるが、ハイペリオンは意に介さずに攻撃を受け止める。そこからビーム・マシンガンを乱射し、本艦や第1戦隊の艦艇に被害を与える。

 

「なんという兵器だ!!!距離を取れ!!!この位置では主砲は同士討ちになる!!砲撃は前方のみ!!各対空兵器で対応しろ!!」

 

レディング艦長の檄が飛ぶ。ピレンヌ艦長やコンタリーニ艦長も、予想外の機体に対して即応しつつも、これまでにない焦りも垣間見せた。

 

「スラスターを全て上にふかせ!!!急速下降250!!!同士討ちにならないように位置をかえろ!!艦首はそのままだ!!!全面の敵艦隊への対応を怠ってしまう!!!」
「弾幕が薄い!!!ラー・カイラムへの被害は最小限にさせろ!!最悪機体と旗艦の間に割り込む!!!」

 

さらに前方から艦隊の砲撃が来る。想定よりも進撃が遅いのは、ブルックス少将の第2戦隊が、回頭を終えて戦線に参加しているからだ。
それでも、このままでは無視できない被害を受けかねないだろう。とくに後方の第3戦隊を攻撃させるわけにはいかない。ミノフスキー粒子を使う必要もあるか。だが、その前にやれることはある。

 

「補給状況は!?」
「本艦終了まであと3分!!ラー・ザイムあと2分!!ラー・キエムあと1分!!アークエンジェル出せます!!!」
「構わんから、補給の終わったものから出させろ!!!!」
「了解!!!ペガサス1より全機へ!!!補給終了の機体は直ちに出撃せよ!!!」

 

まず補給の終了していた、アークエンジェルからクワトロ大尉とキラが出撃したとき、ハイペリオンが突然フリーダムへと攻撃の矛先を向ける。

 

「見つけたぞ!!!キラ・ヤマトォォォォ!!!」
「何!!!」

 

どういうんだ。先ほどまで、機動部隊の運用としては、それなりに理にかなった運用をしていたハイペリオンが、半ばがむしゃらにフリーダムに矛先を向ける。

 

「今だ!!!艦隊全体を後退させて距離を取れ!!!」
「了解!!!」

 

艦隊が後退し、とりあえずの危機は脱する。フリーダムとハイペリオンが半ば一騎打ち状態になる。

 

「くそ!!攻撃が効かないなんて!!!」

 

他の将兵と同じ感想を漏らす。ハイペリオンの射撃を回避しながら、攻撃を仕掛けるも、全く効き目がない。

 

「貴様を倒せば俺がオリジナルだぁ!!!!!」
「何ですか!?貴方は!?」

 

キラは叫びながら、ビームライフルを撃ち込むが、効果が薄いこと悟り、全武装による一斉射撃を加える。しかし、それでも効き目がない。
逆にバリア内からのビーム・マシンガンと連続して仕掛けてきたバリア突貫にシールドが破壊される。ハイペリオンから憎しみに溢れた言葉が、キラへ向かう。

 

「俺はカナード・パルス!!!貴様の・・・ン?くそがぁ!!!時間切れというのか!!またすぐに来てやる!!!キラ・ヤマト!!それまで誰にも殺されるなよ!!!」

 

前半戦でのエネルギー消費が、予定よりも激しかったのか。やはりエネルギー負担は相当なものだろう。ハイペリオンは反転して離脱体制に入る。
追撃しようとする各機に対し、クワトロ大尉が押しとどめる。

 

「かまうな!!!無理にこちらから消耗する必要は無い!!!他の機体に対する対応に専念しろ!!」

 

ところが、カナード・パルスの機体が後退すると、後方からもう1機のハイペリオンが進撃してきた。

 

「2機もいたのか!!!」

 

ハムサット少佐が、確認して叫ぶ。なるほど、時間差を書けたローテーション攻撃か。さすがに将官まで昇進する程度に優秀だという事か。
今度は、再びバッテリーが充分にある状態だ。面倒だな。私が再び対応を考えようとしたとき、補給の終えたアムロが出撃した。

 

「ブライト!!!俺がやる!!!」

 

νガンダムは、先発していたクワトロ大尉と合流する。

 

「シャア!!どうだった!!!」
「実弾やビームが駄目なのは間違いない!!ブライトの言うように負荷を掛けるしかあるまい!!!」

 

白と赤のガンダムと後方から、さらにペーネロペーが発進してきた。

 

「レーン!!牽制を仕掛ける!!!まずはミサイル!次にシャアがインコムで攪乱!!!キラとニコルは全ての火力を叩き付けろ!!そこに艦砲射撃、最後に俺が接近戦を仕掛ける!!!」

 

格闘戦を仕掛けるというのか。

 

「アムロ!!!接近するのは危険だ!!!」
「ブライト!!大丈夫だ!!それとラミアス艦長!!!ソードパックを射出してくれ!!」
「中佐?わかりました!!ホーク5!!ソードパック装備を輸送せよ!」
「頼む!!その間は牽制を掛ける!!いくぞ!!」
「「了解(だ)!!!」」

 

アムロに何か策ありか、対MS戦闘に関しては問題ないだろう。私はアムロに殆ど全幅の信頼を寄せる。そこに新たな報告があがる。

 

「艦長!!メンデル周辺に戦闘の光を確認!!!」
「何!?」

 

メインパネルをメンデルに切り替えると、確かに砲撃戦らしき光を確認する。

 

「これは!!ザフト軍とエターナルが交戦している模様です!!」
「ザフト軍だと!?」

 

この状況で何故戦端を開くのだ。しかもわざわざ我々が作戦行動を起こしたタイミングで。先日、プラントからの特使から得た情報を思い起こす。
一週間ほど前に、アスラン・ザラが指揮するザフトの一隊が、非公式にロンデニオンを訪問した。
当初はかなり警戒をしていたが、アスラン・ザラが最高責任者であったこと、さらに外交特使としてハーネンフース氏が派遣されてきたところに、事情があるということを察した我々は多少の悶着はあったが会談をすることになった。
その時に、プラントの外相カナーバが画策する講和構想の一端を知ることになった。
だからこそ、先にも触れたようにEEFの駐在大使ダービー伯爵との協議の結果、今作戦でラクス一党には触れないという事になっていたのだ。
だが、このような事態までは想定していなかった。我々の作戦行動中に海賊に襲われているならまだしも、ザフトの追撃を受けるとは想定外だった。
どうすべきか。ちなみに、ハーネンフース大使は非公式にではあるが、ロンデニオンに駐在することになった。この辺りの事情を回想するよりも、今は彼女らへの対応だ。参
謀長も思案顔で、うまい解決策がすぐに出ないようだ。

 

「艦隊司令部も承知しているとはいえ、公的に彼女らとの関係は明確ではありません。そのように対応するか微妙なところです。
支援して、向こうが息巻いても困る。アスラン・ザラの言い様では、バルトフェルド隊長も含めて、どういう思考をしているのか掴みかねますからな」

 

私は声に出さずに思案する。参謀長の懸念には全く同感である。それに下手にプラントの国内問題に巻き込まれるのも面白くない。けれども、ここで彼女らが全滅されても困るところだ。
極端なところ、ラクス・クラインが生存してくれればいいのだが、早々うまくはいくまい。エターナルを追撃しているという事は、カナーバ外相のいっていた、ザフトの主流派が行っているのだろう。
つまりは我々にも敵対的のはずだ。そこで最初の疑問に戻る。何故このタイミングなのか。しかし、考える時間はそれほどあるわけではなかった。

 

「エターナル艦隊所属のナスカ級が爆沈しました!!!」

 

戦況は明らかに不利のようだ。そこにフラガ少佐から報告が上がる。

 

「ホーク1よりペガサス1へ!!敵部隊はクルーゼ隊の模様!!!自分が迎撃します!!」
「フラガ少佐!!!バッテリーが持たないと考えられます!!ソードパック輸送後すぐにホーク5をそちらに回します。ランチャーパックを受け取って下さい!」

 

私が対応する前にラミアス艦長の指示が飛ぶ。まだ、感覚として、いや先のプラントの件もあり、我々の間に潜在的にザフトには即応するべきという感覚があったからか。
加えてフラガ少佐にとっては因縁の相手である。それにしても、何故クルーゼ隊とわかる。疑問が湧いたけれど、確かめる術はない。そのうちにコスモ・グラスパーが出撃する。
今回の作戦に先立ち、EEF側から供与されたものだ。機体にはトール・ケーニヒ准尉が乗っている。彼も候補生として、この数ヶ月は農作業と訓練の日々であったが、MSがまだ完全に配備されていない状況である。
そこで、今回の作戦では、かつて乗ったこともあるスカイグラスパーと操縦が似ていたコスモ・グラスパーに乗せてバッテリー補給の任務を担当している。私は決断した。多少流れに任せた観はあるが、ここはエターナルを援護すべきだろう。

 

「よし、フラガ隊にエターナル救援に向かわせ!!!場合によってはこちらと合流させろ!」
「よろしいので?」
「やむを得ない。このまま戦局の打開策がなければ、我々にも面倒なことが起きるだろう。むざむざ目の前で可能性を潰されるのも悔しい話だ」
「わかりました」

 

フラガ少佐が、メンデルへと向かい始めるとほぼ同じタイミングで、アムロは後から来たハイペリオンと交戦を開始した。

 

「スレッジハマーをくらえ!!!」

 

ペーネロペーから射出されたミサイルが、バリアに到達する。本体は無傷ながら、時間差を付けた攻撃で敵の視界を奪い、注意を引きつける。

 

「やってみるさ!!!」

 

そこにさらに攪乱のために、クワトロ大尉のオールレンジ攻撃が仕掛けられる。

 

「シュミレーション通りにはいかないか!!!」

 

ハイペリオンのパイロットがひるむ。

 

「今だ!!!主砲!!」
「「ファイア!!!」」
「ぬおう!!」

 

第1戦隊の一斉砲撃が襲いかかる。全段命中とはいかないが、数発の命中で確実に負荷を与えているだろう。

 

「さすがに危なかったが、これで証明されたな!!このアルミューレ・リュミエールの有効性が!!!」

 

そこにキラとニコルがたたみ掛ける。

 

「今度こそ!!!これで決めてみせる!!」
「確実に負荷を与えてみせる!!」
「効かないといっているだろ!!無駄だぁ!!!」

 

もちろんその間にも、ペーネロペーと量産型νの攪乱は続く。そこにいよいよアムロが接近する。

 

「アークエンジェルにいた異世界のGか!!!俺のスコアに・・・」
「まずはこれだ!!!」

 

アムロはソードパックに付いている、対艦刀シュベルトゲベールを持って接近する。
そして展開しているバリアを構成するために必要な、三角状の突起物に突き立てようというのだ。

 

「この長さならいけるか!!!」
「ざまぁないな!!!」

 

突き立てた対艦刀は、戦端から粉々になる。

 

「やはり、質量物では駄目か!!!」

 

アムロは間合いを取ると、ビームサーベルを持って再び近づく。

 

「あきらめが悪いぜ!!死ねぇ!!!」
「甘い!!!」

 

ネズミ花火のように打ち出されるビーム・マシンガンを、アムロは全く意に介さずに回避する。まさに本調子と言えよう。そして、再び接近するとビームサーベルを突起物に突き立てる。

 

「これで仕留める!!!」

 

一瞬、反発するように見えたが、アムロは最大出力で突き立て、ついにバリアを突破して突起物を破壊する。

 

「馬鹿な!!!!!」
「これで終わりだっ!!!」

 

バリアが解除されている面にサーベルを振り下ろす。敵パイロットは、慌てて逃げる姿勢を見せたが、首をはねられ、バックパックを破壊される。

 

「ぐわ!!」

 

バランスを崩したところ、キラとレーンの前に無防備を見せる。

 

「いまだキラ、レーン!!!」
「待避などさせん!!!」
「いっけぇー!!!」

 

ペーネロペーのメガ粒子砲と、フリーダムの一斉射撃がたたき込まれ、ハイペリオンは大爆発を起こした。何とか撃退したか。
だが、まだこちらに攻撃を仕掛けている連中もいる。ついでに言えば、火事場泥棒的に、先ほど逃げていた海賊の一部も連合と共に攻撃してきている。
艦隊司令部から増援が来ないのもそのためだ。特に第1戦隊はコロニー制圧任務中だけに、艦隊の防衛で手一杯であった。もっとも、2機目のハイペリオン撃退で、連合は後退する姿勢を見せ始めた。

 

「艦長!!!」
「今度は何だ!?」
「ザフト艦から国際通信!!!」
「戦闘中だぞ!!!正気か!?」

 

メランが叫ぶ。

 

「連合軍の捕虜を連合軍艦隊へ返還するとのことです!!!捕虜の名前は・・・何だ?フレイ・アルスターだそうです!!!」

 

何だと、彼女がどうして捕虜になったのだ。そもそも何でまたこんなところにいるんだ。いずれにしてもまずい。

 

「フ・・・レイ?」

 

明らかにキラは動揺を見せる。

 

「連合軍側からの応答が、国際通信で入ります!!」
「こちら連合軍旗艦カシミジュ、第3特務艦隊司令ジェラード・ガルシア少将である!!戦闘中に受け入れらるものか!!どうしても返還したければ、ポッドに乗せて射出でもしろ!!」

 

無茶苦茶な対応である。なるほど解任された理由は、聞かなくともわかるというものだ。

 

「艦長!!通信を傍受しました!!連合軍のアークエンジェル級ドミニオン艦長が、ガルシア少将に抗議している模様です!!これは・・・、ドミニオン艦長はナタル・バジル−ル少佐の模様!!!」

 

ナタル・バジル−ル、少佐になったのか。彼女の功績を鑑みれば妥当な人事だ。配属された艦隊が適切かどうかは知らないが。私にはやや堅いが優秀な女性で、色々と戦術論を聞きたがっていた印象が残っている。
だが、アークエンジェルに所属している乗組員の気持ちは複雑きわまることだろう。だが、ともかくも、止めておくべき奴がいる。

 

「ヤマト少尉!!!!」
「はっ、はい!!」
「間違っても、射出されたポッドを無理に回収しようと思うなよ」

 

少年は図星を疲れた表情を見せる。

 

「・・・でもっ!!!」
「これは命令だ!!!まず君がやるべき事は他にある!!」
「えっ!?」
「クワトロ大尉!!!キラとニコル、先発したフラガ隊と共にエターナルの援護へ向かってくれ!!」
「了解した!!!」
「少尉!!今はまずラクス・クラインを助けることを考えろ!!」

 

アムロもキラにフォローする。

 

「キラ、バジル−ル中尉、いやナタルならうまくやるさ」

 

アムロの言い様は妙なエロテックものだった。だが、助けるべきエターナル隊の状況は思いのほか悪かった。

 

「艦長!!ザフト艦隊の攻撃で、エターナル艦隊は再び一隻喪失!!!このままでは!!」
「エターナル被弾!!!同艦はメンデル内へと待避する模様!!!」

 

ヴェサリウスに追い込まれ、エターナルは中破状態でメンデル内へと逃げ込む。いよいよ危険のようだ。その証拠に救援信号も届く。
フラガ隊が到着しただけではどうにもならない状況だ。私は拙速であることを自覚しつつも決断した。

 

「本艦はこれよりエターナルの救助を行うために艦隊から離脱する!!!艦隊の指揮は一時ハルバートン提督に委ねる!!本隊は宙域確保作戦を続行せよ!!」
「司令・・・」

 

参謀長や副官の表情は複雑だったが、メランは察して何も言わない。

 

「本艦の護衛にセネット隊とタイラント隊を回せ!!それとウエスト隊はザフト艦隊に攻撃をしかけるんだ!!」
「・・・了解しました!!」

 

各指示は行き渡り、部隊は各々行動に移る。

 

「司令!!ヴェサリウスから機動部隊と陸戦隊がコロニー内に進入を開始した模様!!」

 

まずいな、本格的に押さえるつもりか。

 

「ホーク1よりペガサス1へ!!ホーク2、4のバッテリーが限界です、後退を許可されたい!!」
「許可する!!だが大丈夫か?」
「任せて下さい!!俺は不可能を可能にするのがモットーです!!オーバー!」

 

フラガ少佐は、そういうと部下を後退させるために、ランチャーで数度牽制砲撃を仕掛ける。その間にジム恐はアークエンジェルへと帰還する。

 

「さすがだな」
「ホーク1はヴェサリウスが横付けした港とは逆の港湾から進入を開始します!!」
「1機では危険だ!!後続はどうなってんの!!」

 

私の罵声に、ポンティ曹長が怒鳴りかえす。

 

「ザフト軍に新型機が確認され、その対応をしながらの戦闘のため、進撃が遅れています!」
「いいわけなどしている暇があったら、さっさと本艦も向かうぞ!!このままだとヴェサリウスもコロニー内に進入しかねない!」
「僕が行きます!!!」

 

そういうとキラはフリーダムを最大速度で反対側の港へ向ける。キラが港湾の出口に到達する頃、フラガ少佐からの連絡が来た。

 

「こちらホーク1!!エターナルはバランスを崩して不時着!!直掩機が防いでいるが、一部乗員は不時着した側にあるラボへと一時避難した模様!!
・・・くそっ!見つかった!ホーク1!交戦に入る!!!」

 

映像は入らないが、しばらくすると音声だけの会話が入る。

 

「エンデュミオンの鷹の新境地か!こんなところで会うとは奇遇だな!!ムウ・ラ・フラガ!!」
「うるせい!!わざわざ俺たちが戦闘を始めた頃にのこのこ出てきておいて、奇遇なわけがねーだろーがぁ!!!」

 

ザフト軍の隊長機の声、確かにこの不快な声は忘れもしない、ラウ・ル・クルーゼか。状況がつかめないが、2人の因縁が垣間見える。かつてのアムロとシャアを想起させる。
もっとも彼らが言葉をぶつけ合うようになったのは一年戦争末期だったが、彼らの場合はもっと大戦初期からの関係のようだ。

 

「だが、その機体のエネルギーはもはやあるまい!!」
「く、ぬおおおおおおおお!!!」
「少佐!?」

 

ラミアス艦長の不安な声が入る。艦橋の連中も確認する。

 

「ホーク1!応答せよ!!ホーク1!!!」
「ホーク1、ロスト!!!」

 

まさか、撃墜されたのか。

 

「ムウさん!!!こちらキラ・ヤマト!!ストライクは地表に不時着した模様!!」
「キラ・ヤマトか!!持ったく厄介だよ、君は!!!」
「僕を知っている!?」
「悪い冗談だよ!!君の存在は!!!」
「くそっ!!」

 

音声だけが口惜しい。その間に本艦は牽制射撃で中破したローラシア級を第3戦隊方向へと待避させた。

 

「これでっ!!!」
「ぬぅううううう!!!ふん・・・所詮作られしものか」

 

一瞬の沈黙をはさみ、キラが再度報告した。

 

「こちらヤマト少尉!!ムウさ・・フラガ少佐の無事を上空から確認しました!!けれども、敵の指揮官も撃墜しましたが生存していて、少佐と銃撃戦をしています!!」
「支援しろ!!!バルカンで吹っ飛ばせ!!」

 

ハムサット少佐が指示を出すが、キラは事態が変化したことを報告した。

 

「少佐が敵の指揮官を追って、施設に侵入しました!!ラクスもいるかもしれません!!自分も追います!通信終わり!!」
「キラ!!!・・・全く熱くなりやがって」

 

副官が毒づく。周りの影響だろうが困ったものだ。後で修正する必要があるくらいだ。ともかく状況が不明な以上はいくしかあるまい。

 

「よし!!タイラント隊も艦隊へ攻撃を仕掛けろ!!その間に本艦はヴェサリウスとは反対側の港から進入する!!」
「了解!!!」

 

ラー・カイラムは全速でコロニーの反対側へと回る。港湾に進入すると、こちら側は艦船用のハッチが閉じたままであった。

 

「艦船用のハッチを開けさせるんだ。そのうえでラー・カイラムはコロニー内へ進入する。メラン、後を頼む。私は陸戦隊を率いて先行し、少佐やキラを救援にいく」
「司令!!危険です!!私が行きます!」

 

メランがさすがに諫言する。だが、既に決めたことだ。次の指示を出す。

 

「大丈夫だ。アムロやレーンもコロニー内に回してくれ。クワトロ大尉らと共に進入したMSを落とさせる。前線の指揮はジャックに任せる。
・・・フラガ少佐やお姫様の近衛隊がいるだろうとはいえ、キラはこういう戦闘は苦手だろう。それに、どうにもきな臭い」
「は?」
「ザフトがこのタイミングの戦闘を仕掛けたことに、何か事情があるかもしれないという事だ。先行して確かめる」
「ニュータイプみたいなこと言わないで下さい!!」
「ともかく任せたぞ!!」

 

私はメランを宥めて艦橋を出ると、急いで上陸用のランチへと向かう。途中でハルマ・ヤマト氏と出くわした。
彼は、補給担当軍属の中尉待遇として艦に乗艦している。彼が中尉待遇である理由は、唯一息子よりも階級が下になる事は忍びないからだった。

 

「ブライト司令!!!私も連れて行って欲しい!!」
「ヤマト中尉!!無茶を言わないで下さい!!」

 

ヤマト氏はそれでも食い下がる。既に私の反応は予想していたのだろう。

 

「息子が追い詰められているのです!!!助けなくてどうして父親と言えましょうか!!」
「ですが・・・」
「例え血が繋がっていなくとも、彼は世界にひとり、私の息子です!!!」

 

私は、はっきりとハサウェイを意識させられた。子を思う気持ち、か。私は目の前にいる男ほどに父親を出来たのだろうか。

 

「・・・わかりました。時間がありません。付いてきて下さい」
「ありがとうございます!司令!!!」

 

彼を連れて、デッキ前のハッチに付くと、今度は義理の息子に出くわした。

 

「ブライトさん、いえ、司令!!自分もいきます!!陸戦部隊は人手不足のはずです!!」

 

シン・アスカである。彼を現時点でパイロッとして出すつもりは全くないが、准尉待遇のパイロット候補生という事にしている。
先日の交渉の結果である。確かに先のプラントで陸戦要員に大きく欠員が出たことは確かである。かといって連れていくわけにもいくまい。

 

「駄目だ。陸戦は君が思うほど甘くない」
「キツイ訓練は受けましたよ。それに、今回は人命救助なんですよね?人手は多い方がいいと思います!!」

 

彼のこうした言い様は、カツ・コバヤシを思い出す。こういうとき、無理に止めると隠れてでも付いてくるだろう。問答している時間も惜しい。
どうせ無理矢理来るなら目の届くところにいた方が、トラブルもおこらなくて済む。

 

「・・・身を守ること以外で発砲しないこと、そして私の命令に絶対に従うことが条件だ。もし破ったら二度と船には乗せないぞ」
「ありがとうございます!!司令!!!」

 

後で妹にもお仕置きさせよう。ランチに到着すると、警備主任のヴィーコ大尉が待っていてくれた。

 

「いつでも出せます。・・・坊主!馬鹿な事したら修正だけじゃすまないぞ!おまえの恥ずかしいネタを妹にばらすからな!
ついでにとっつぁんに頼んで整備員謹製スペシャルお仕置きフルコースを味合わせてやるからな!それを受けた奴は大抵が除隊するほどの恐怖のメニューだ。それに耐えたのはスミス中尉くらいだ、覚悟しておけ!!」
「はうい!!」

 

微妙にどもったな。シンの表情に一瞬和まされる。ともかく時間がない。全員のランチ乗船を確認すると、直ちに指示を出す。

 

「よし、これよりコロニー・メンデルへ突入する!!!大尉!!頼む!」
「了解!!!」

 

こうして私は、半ば勢いに任せたところはあるが、歌姫と仲間を助けるべくコロニー・メンデルへと進入していったのである。

 

第30話「コロニー群奪回作戦」end.

 

 

【次回予告】

 

「僕は貴方と違って、人類に絶望していません!!」

 

第31話「少年の真実」