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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_31

Last-modified: 2011-05-02 (月) 15:31:58
 

失いし世界をもつものたち
第31話「少年の真実」

 
 

混沌とした戦況下、私は部下と歌姫を救出するために、
陸戦隊と共にランチに乗り込みコロニー内に突入した。
自ら現場に出向いたのは、ザフト側の行動の不自然さに疑問を持ったという気持ちもある。
目前には赤茶けた大地が広がり、テキサスコロニーを思い起こさせる。
ランチの高度が下がると、重力を感じはじめた。
そこに後方から6機のMSが駆けつける。

 

「司令!!こちらオター1、ハンター大尉!!参謀長の命令により、これより陸戦隊直掩に入ります!!」
「了解した、よろしく頼む」
トゥースとメランが心配したのだろう。さすがに申し訳ない気持ちが湧く。

 

「さすがにお目付がつきましたね」
警備主任のヴィーコ大尉が苦笑いする。大尉も内心同じ思いなのだろう。
「仕方あるまい、前回のプラントの件もあるからな。
 クワトロ大尉が先行しているとは言え、それにアムロたちが到着するまで、まだ少し時間が必要だろう。
 MSに遭遇したら洒落にならん」

 

そのクワトロ大尉はコロニー反対側の港湾部でザフト側の増援と戦闘している。
アムロとレーンは最前線からこちらに戻っているので、もう少し時間が必要だろう。
そこで本体の直掩を担っていた、ラー・キェムの機動部隊が臨時の近衛部隊となったわけだ。

 

「艦長!!前方よりザフト軍確認!!数は10!!新型もいます!!」

 

ふむ、予想よりも戦力が多いな。外でタイラントが指揮するリゼル隊が艦隊と交戦している以上、
それほどこちらに戦力は避けないだろうと考えていたが。
ザフトはラクス一党を殲滅することに何故そこまでこだわるのだろうか。
私の疑問はり醸造される。たが、その疑問に対する答えを出すには目前にある危機を避けてからだ。

 
 

第31話「少年の真実」

 
 

私はランチのインカムで指示を出す。

「オター1!!迎撃しろ!!曹長!!回避行動任せるぞ!!!」
前方の敵機から、一斉に射撃が開始された。
ランチがジェットコースターのような動きで回避をはじめ、
オター1こと、エリアルド・ハンター大尉が迎撃を開始する。

 

「アンリ!!着地して支援砲撃!!連携を切り崩せ!!俺が上から仕掛ける!!
クレアはルイージとファンで牽制してくれ!!ヘンリエッタはランチから離れるな!!」
「了解!!隊長、無理はしないで下さい!!」
「わかっているよ、クレア!」
通信が終わると、オター1は急上昇し、オター5は降下して砲撃体制に移る。
そしてオター3以外が、速度を上げて敵機に向かう。数で不利だというのに、分散するのは危険ではないか。
そう考える間に、オター5が岩の台地に着陸する。

 

「オター5!!これより支援開始します!!」

重装型ジェガンが、腰を据える体制をとってビーム・キャノンを発射する。
すると、ザフトの編隊は一度分散して、隊列を組み直す。
そこへ重装型は牽制を加え続けて編隊を攪乱させた。
ザフト側は、支援装備をしたジンが重装型へと反撃をしようとするが、上空からオター1が強襲する。
もちろん、その攻撃に対してザフト側は手をこまねいているわけではなかった。
ザフトの指揮官機と思われる新型機が、後方支援隊に重装型を狙わせようとしている。
攪乱されつつも残りの部隊を半分に分け、一方をオター1に対し、
残りをオター2の率いる正面に対応させようと動いた。
私にはエリアルド・ハンターの行為が、やや危険なように感じた。
どうにも、彼は普段から積極的に危険を引き受けようとする傾向がある。
死に急いでいるわけでもないからこそ、もう少し慎重になってほしい。

 

「自分は、仲間と部下には何があっても生き残って欲しいだけです」

 

エリアルド・ハンター、ティターンズの旗のもとで自らの正義を信じて戦った男は、
グリプス戦役の最終決戦にも参加していた。
つまりは私の指揮する部隊と交戦していたのだ。
彼との出会いは、私にティターンズの全てがバスク・オムやジャマイカン・ダニンガンのような連中では
決してなかったことを、改めて思い起こさせた。

彼がロンド・ベルに参加したときのことを思い出す。

 

「もちろん、恩人であるモリス中佐があのような人事を受けたことが、大きな理由である事は確かです。
 事情は既にご存じでしょう。体制に刃向かいすぎた末の島流しという奴です。
 けれども、司令、自分はロンド・ベルへと赴いたもうひとつの思いがあります。
 あのときエゥーゴは勝者として、敗者であるティターンズの正義も背負ったのです。
 それをシャア・アズナブルは踏みにじった。対して司令はロンド・ベルを率い立ち向かう。
 そうするならば、自分は再び前線でパイロットとなります。自らが信じる正義のために」

 

そう語る彼をまっすぐに見る。その青い眼は、未だに輝きを失ってはいなかった。
正直に言えば、その時の私に、その目は少しばかりまぶしいものに感じた。
少しばかり意地の悪い言い方で問うたかもしれない。

 

「・・・きみにとっての正義?」
エリアルドは、私の様子に気付かずにはっきり答えた。

 

「自分はティターンズが過ちを犯したことを背負います。
 自分自身は、常に自らの正義と職務に忠実でありました。
 そうすることが地球連邦をよりよくする事になると信じていたのです。
 しかしながらあの戦いで自分は、多くの ものを失いました。
 そうしたものを持つからこそ、やるべき事があると思うのです。私はそれを背負います。
 生き残った人間として、この世界に対して責任があると思います。だから自分は戦うのです。
 失礼を承知でお聞きしますが、司令もエゥーゴに正義があったからこそ、
 あの戦いに参加されたと思います。これでは、答えになりませんか?」
「・・・君のような人物が、我が隊に入隊してくれることに感謝する。君とこうして話せてよかった」

 

アムロ・レイを失ったその時の私には、よどんでいた気持ちが、
少し、ほんの少しばかり晴れたように思えた。
そして彼との対話は、第2次ネオ・ジオン戦争やラプラス戦役、月面破壊未遂事件を通して
体制にうんざりし、引退してレストラン屋の親父になろうと考えていた私に、考え直す機会を与えた。
単に世界に埋没するのではなく、ジオン・ダイクンの二番煎じとしてやれることがあるのかどうか、
考える機会としての市民生活を考えさせた。
ハサの事で、そのような考えも吹っ飛んでしまったが。
しかし今や異世界とはいえ、私はこうして政治に深く関わってしまっている。皮肉なものだ。

 

私の思考をよそに、エリアルド・ハンターは、コロニー中央の低重力を利用して攻撃を回避する。

 

「やらせないさ!!!」
エリアルドのジェガンは、シールド・ミサイルを2発発射して最も近くにいたジンの左手を
武器と共に破壊し、ビーム・ライフルは正面の新型機を撃ち抜く。
そしてスラスターをふかして減速し、急上昇した相手の上空にかわして背後から射撃する。

 

「これで!!!」

急旋回しようとしたジン2機をライフルで火球にする。
さすがに腕がいい。大地に背を向けハンター大尉に対して、そこを狙う敵機を部下たちが牽制する。

 

「隊長の顔に傷など付けさせませんよってね!!!」
ハンター大尉は、部隊内でも女性士官から人気だという話を何とはなしに思い出す。
後ろの兵士の一部が、どことなく暗い表情をしている。
ジェガン隊は一斉に射撃を加えて、迎撃部隊をひるませる。
我々のランチに攻撃を与える隙も与えない。それでも数は多い。
オター6がシールドを左手ごと吹っ飛ばされる。
これはパイロットの腕と言うよりも、シールド・ミサイルを発射しようとしたときに、
別方向からの射撃が運悪く着弾したためである。

 

「くっ!!こんな事で!!」
「ファン!!無理はするな!!!ルイージ!!アンリ!!サポートしろ!!」
「「了解!!!」守ってやります!!!」
どのような状況でも数の差は、精神的にも嫌な影響を与える。

 

「ちっ、数が多いと・・・」
ハンター大尉が毒づいたその時、新型機からロケットアンカーが発射され、
インコムのように彼の機体を囲い込む。

 

「「隊長!!!」」

1機でいたため、不意を突かれたか。私にも焦燥感が湧く。

 

「甘いな!!!」

 

一閃、ビームが新型機を撃墜する。
クワトロ大尉のガンダムが飛来してエリアルドを狙う新型機を撃破したのだ。
彼はさらにインコムで背後から、数機のジンを撃破する。
これを受けこちら迎撃しにきた部隊は後退を始める。
彼の後方には、ケーニヒ准尉のコスモグラスパーが続行してきた。フラガ少佐の支援のためである。

 

「クワトロ・・・大尉・・・」
「君が私を嫌う理由はわかるつもりだが、礼くらいはいってもいいだろう?」

 

一瞬、ジェガンとガンダムに硬直に近い間が生じる。
エリアルドがシャア・アズナブルに抱く感情は想像に難くない。
ある意味ではボティと同じ気持ちを共有しているかもしれない。
余談ではあるが、エリアルドとボティは独特の親交を深めている。
立場は違えどもグリプス戦役を戦い抜いたという思いからだろう。
そして、2人ともキラ・ヤマトよりレーン・エイムと大尉の一件を聞いて色々と思うところがあったという。
ともあれエリアルドは、大尉に対してむしろ自分の気持ちを恥じたようだった。

 

「申し訳ありません大佐、いえ大尉。助かりました」

 

クワトロ大尉は苦笑いで応じる。
「かまわんさ、それが私の業だと思っている。ブライト艦長!エターナルの不時着まで先導する。
 遠くに見たが、さすがに1機で向かうわけにはいかないからな。きてくれるか?大尉」
「もちろんです。大尉、先任として指示願います」
「ブライト艦長、よろしいか?」
「任せる、それとオター6はランチの護衛にまわってくれ」
「了解!!」

 

こうして、我々は迎撃を払いのけ、エターナルの着底ポイントへと向かっていった。

 
 

エターナルが着底している場所では、カオスともいうべき戦闘が繰り広げられていた。
ザフトのMSが同型機同士で撃ち合い、地上では岩場や遮蔽物を利用して銃撃戦が行われている。
機動兵器がその支援を使用にも、互いに必死にそうはさせまいと妨害する。
そこへ、我々の到着である。

 

「状況は?」
「はいっ、エターナルは着底し対空戦闘中の模様、また所属機は12、いや11機です!!」
先任曹長の脇で、臨時のオペレーターをしていたシンが報告する。続けてきた報告も読み上げる。
「艦長、ケーニヒ准尉からです。ザフト側は先ほど撤退した部隊と併せて22機とのことです!!」
「かなりの戦力ですね」
ヴィーコ大尉の指摘に同意する。
「それほど連中が都合の悪い連中なんだろう。実際、我々が来なければこれで全滅だったろうな」

 

状況はラクス一党に不利であったが、我々の参加は明らかに形勢を逆転させた。
さらに反対側の港を突破してきた、アムロとレーンが飛来する。
「ブライト!!キラたちは!?」
「まだわからん!!!シン!!!エターナルと通信は取れないのか!!!」
「すみません、どうやら外でミノフスキー粒子の濃度が上がっているようです!!」
「だったら接近するしかない!!曹長!!!」
「打ち落とされますよ!!!」

 

言い合う間に、交戦中のザフト正規軍の一部が我々に襲いかかる。
対してペーネロペーがランチとザフト部隊の真ん中に割り込む。

 

「フンッ!!!その機体じゃあ無駄だって言うんだよ!!!!」
レーンが腰のメガ粒子砲とミサイルを放ち、左右に展開していたジンを数機も撃破する。
それを皮切りに混戦状態に突入した。
戦力的には、ラクス一党と我々の機動戦力を足してようやく互角の数である。
けれども、連携は望めずかえってパイロットらには混乱を招いたようだった。

 

「どちらが味方なのかわかりにくいって!!!打ち落とされても文句言うなよ!!!」

オター4が毒づく。ラクス一党との意思疎通が不十分だったための混乱と言えよう。
こうなると解っていれば、あそこまでぞんざいに扱わなかったかもしれないな。
少しではあるが、混戦状態を作ったことに迂闊さに唇をかむ。
アムロは飛来するジン部隊を撃破しつつ、エターナルの艦橋に手を置き、お肌の触れあい回線で語りかける。

 

「エターナル!!!そちらの部隊は直掩するか、地上で戦っている歩兵部隊の支援に集中してくれ!!!
こちらが混乱する!!!それと、フラガ少佐とヤマト少尉はどうした!?」

 

何を話しているか聞き取れない。艦橋で静止するアムロを狙い、ジンが大型砲で攻撃してきた。
アムロはエターナルの影響を考え、シールドを犠牲にして防ぐと、自身も空中戦に参加した。
私はどことなく地球で始めて見せた空中戦の光景を思い起こした。

 

「このぉ!!!」
ガンダムは、バーニアを全開にふかして上昇すると、戦闘空間の頂きからビームを雨のように乱れ撃つ。
アムロの狙いは、撃墜よりも混乱させて味方に仕留めさせようとするものだ。
それでも流れ弾に近い形ではあるが、2機のジンと新型機を1機撃墜する。

 

「さすが!!」
兵士やパイロットが思わず感嘆の声を漏らす。
「まぐれさ、一気にたたみ掛けるぞ!!!シャア!!エリアルド!!!」
「わかった!!!」
「了解!!各機続け!!!」
「「「「了解!!!」」」」

 

混乱するザフト部隊をクワトロ大尉とラー・キェム機動部隊は容赦なく追い詰める。
アムロの駆るガンダムはライフルを投げ捨て、サーベルを右手に急降下して接近戦を仕掛けた。
これもまた牽制の意味合いがあったのだが、脅しではなく確実に撃墜するために接近し攻撃する。
最初にその犠牲となったのが、最も上空にいたジンである。
ビームの雨は回避していたが、アムロの急降下を利用した袈裟切りによって
コクピットまで切り込まれて機能停止する。
続いて下から仕掛けてきたジンには、左手からダミーを落として対応する。
ダミーには機雷が仕込まれており、頭部を爆破されて墜落した。
そこに実体剣を持って接近戦で勝負してきたジンが襲いかかる。
アムロが正面から斬りつけると、ビームサーベルは実体剣を切り取り、さらにもろともジンを撃墜した。
ザフト側にしてみれば悪夢の光景であろう。
この間わずか1分、上昇してビームの雨を降らせたところから計っても、5分かかっていない出来事だった。
もっとも、彼はかつてその記録を遙かに上回る3分で12機のMSと艦艇1隻を撃墜した事があるが。

ザフト軍も反撃を試みるが、アムロに気を回すと背後からクワトロ大尉のインコムを用いた
オールレンジ攻撃、ないしレーンの高速移動攻撃にあえなく撃破されてしまった。
さらに、この恐怖のトリオに向かわなかった連中も、オター小隊の連係攻撃の前に撃退される。
確かに混戦状態であるために、いくらかの損傷は受けたが、
ザフト側はその戦果を得るために機動部隊全滅の憂き目にあったのである。

 

もはや大勢は決したな。私がこの戦場での優位に自信を持つと、アムロから連絡が入る。

 

「ブライト!!!あの施設にクルーゼがいるそうだ!!!」
「何だ、どういうの?」

いきなりの内容に思わず言い返す。俺はニュータイプじゃないぞ。
その時、ようやくエターナルと通信が繋がった。
画面には、アンドリュー・バルトフェルドが映る。彼は、私の顔を確認するとやや驚いたようだった。

 

「ブライト司令!!?自らの援護に感謝します!」
「バルトフェルド艦長、自力で浮上できるのか?」

 

外から見る限り、装甲にかなりの被害が認められる。バルトフェルドという男は率直だった。

「残念ながら難しいですね。実のところ艦内への進入も許している有様でして」

それはいよいよ深刻な事態だな。私は重要人物の安否を確認した。

「ラクス・クライン君はどうした?」
「副官のダコスタに任せてあの施設に待避させています。
 最悪の場合は、あの研究所の地下から外壁沿いにそちらに逃がそうと思いましてね」

 

なるほど、それでクルーゼが自ら施設に突入しているのか。
いや、実際のところはキラによって追い込まれたところが大きいかもしれない。
外で銃撃戦を行っていたザフト側の歩兵部隊も施設にラクス追討の増援に行くというよりは、
機動部隊全滅を受けて待避していくようである。
一方、ラクス一党側の残存歩兵部隊は、7割をラクスの救援のために正規軍の追撃を行い、
残りをエターナル艦内の救援に向かわせている。
私はエターナルの損傷を中破程度と見積もる。そして、案外にエンジン部分が被弾していない点に注目した。

 

「艦長、上昇が無理なことは解ったが、その状態で宇宙空間での航行は可能か?」
「艦内を安定させてからではないと、正確にはわかりませんが、航行する程度ならできると思います」

そうだろうな。私はひとつの提案をする。

 

「バルトフェルド艦長、提案がある。浮上が無理なら仕方ない、エターナルを強制的に宇宙へ出させよう。
 コロニーの外壁から砲撃を行い、エターナルを強制的に宇宙に放出する。どうか?」

エターナル艦橋の面々の顔が青ざめる中でバルトフェルドは残された手を以て顔を撫でて思案すると、
面白そうに笑顔を作る。
「やってみましょう!!!このままでは新鋭艦が鉄くずになりますからな。
 ですが、こちらとしては、ラクスの安全を確保したい」
「いいだろう、どのみちキラとフラガ少佐を助けるついでに確保しよう。緊急非難的措置としよう」
「感謝します」

 

私はインカムを取り、上空を旋回するトールに指示を出す。

「ケーニヒ准尉!!ラー・カイラムへ伝令頼む!!!
 外壁から指定ポイントを砲撃し、外壁に穴を空け、エターナルを宇宙へ逃がす!!」
「了解しました!!」

次に、ランチを施設の前に着陸させようとすると、アムロが同行したいと言ってくる。

「俺も行く、キラとムゥを助けたい」
「しかし、ガンダムはどうする?」
「オター小隊に任せる。エターナルは格納庫が安全な状況ではないしな。攻撃予定ポイントから離れたところに下りる。エリアルド、すまないが頼まれてくれるか」
「もちろんです」

そこにレーンも同行を主張する。

「自分も行きます!!」

ふむ、2人の感覚をあてにしたいところではある。私は2人の意志を承認すると共にオター小隊に指示を出す。

「ハンター大尉、エターナル機動部隊と共同で周辺を確保してくれ。
それとクワトロ大尉も来てくれ、ラクス側とある程度交流がある貴方の力が必要かもしれない」
「了解!」
「了解した!!」

私は後ろへ振り向いて部下たちに檄を飛ばす。

 

「よし、これより我々はフラガ少佐とキラ、そしてラクス・クラインたちの安全を確保する!!
 研究所内へと突入する!!!
 聞いての通り、あそこにはラウ・ル・クルーゼもいるという、心してかかるぞ!!!」

 

ヴィーコ大尉も怒鳴る。

「各員準備しろ!!運のいいことにあの仮面野郎のケツに鉛玉をぶち込む機会だ!!!
 戦友の敵を取る機会を逃すなよ!!!」
「「「応!!!」」」

 

見渡すと、気合いと活力に溢れた表情を見せる。特に陸戦隊の目には並々ならぬ闘志が宿っていた。

 
 

施設に突入すると、その入り口にあるフロアは静寂に包まれていた。
我々は直ちに待ち伏せを警戒する。そのことを少年兵は率直に尋ねる。

 

「待ち伏せされているのでしょうか?」
私の代わりにレーンが、シンのメットを叩いて言う。
「そうだよ、おまえもメット越しに殺気くらい感じろ」
「いてっ」
頭をさするシンを見て笑みを浮かべつつ、ヴィーコ大尉に問う。

「何人いると思うか?」
「おそらく、ここでできるだけ持ちこたえたいでしょうからね。
 アムロ中佐がエターナルから得た情報をまとめると、20人くらいはいると思いますが」

 

こちらと概ね同じか。だが、この後詰めの先にラクス・クラインの救援に向かった連中が30人いる。
さらにラクスの護衛やフラガ少佐にキラもその先にいる。
何とか合流する必要しなければならないが、ミノフスキー粒子で連絡を付けることは絶望的である。
また、ザフトが一体どれくらいの歩兵を突入させていたかも解らない。
ここで手間取るわけにはいかないだろう。

 

「時間がない、ここはMSにフロアを吹っ飛ばせさせよう。シン、オター1に伝令しろ。
 攻撃するタイミングはこちらから指示を出す」
「はいっ」
敬礼すると、シンが外へと駆け出す。

 

「艦長、我々はどうします?」
「ぞろぞろと出ていってもばれるだけだ。二手に分かれて、そこの遮蔽物で待機しよう」
フロアの入り口には、受付の他に応接や歓談に使われるテーブルが、バリケードにされていた。
おそらくダコスタも最初はここで迎撃させていたのだろう。
銃痕も目立つ。まずはヴィーコ大尉と2分隊を左手のバリケードに向かわせる。

 

「バリケードへの移動を支援する。1分隊、make ready!!!」
一斉に重火器の金属音が生じる。私はヴィーコ大尉に頷く。
彼も一度頷くと2分隊にハンド・シグナルを示す。部下たちが頷いたところで、大尉は親指を立てた。
「よし、行け!!!」
大尉らが警戒しながら、左手のバリケードへと歩き出す。
先頭集団がバリケードまで到着したところで、2階の踊り場から伏せていたザフト兵が攻撃してきた。

 

「牽制しろ!!!」
各艦から再編された、新生第1分隊が支援射撃をする。
向こうからの迎撃を見るに、正面に5人、左右に10人というところか。
こちらが相手の配置を把握する一方で、こちらもその攻撃を防ぐべく牽制する。
前回と異なり、こちらの陸戦部隊は白兵専用のノーマル・スーツを装備している。
もちろん無敵というわけでもないが、生身よりかは安全である。
実際、最初の射撃でひるんだガル二等兵に命中したがダメージはないようだ。
彼をクレイル二等兵が強引に引っ張り、バリケードへと避難させる。
続けて我々も右手のバリケードへと向かう。殆ど同様の行動で移動が完了した。
先ほどの配置を見ても、簡単には突破することは難しい。
時間がないので気の毒だが、MSで無力化するしかない。

 

それにしても、いったいここは何の研究施設なのだろうか。
作戦前の資料を読む限りでは、せいぜいコーディネーターに関する研究だろうとくらいにしか
考えていなかったが、このバリケードを見て妙な疑問が生じている。
つまり、一般の施設であれば、ここまでテーブルに防弾できるほどの強度など必要されない。
想像していたよりも重要な施設だったのかもしれない。
考えてみれば、周辺が荒廃しながら何故この施設だけ機能がまだ生きているのも不思議な話だ。
そう考えはしたが、根拠もなく何か考えても仕方ない。
ともあれ、目前の相手をしなければと頭を振る。
しばらく互いに牽制の銃撃を続けていると、入り口からシンが有線の通信機を投げてきた。

 

「ブライト艦長、オター1から射撃ポイントの指示をとのことです!!」
私が先のポイントを指示すると、フロアの吹き抜けからバルカンの斉射が行われる。
バリケードに隠れていても、ものすごい衝撃である。全く対人兵器としては恐怖そのものだな。
こちらも、そして引き金を引く味方もいい気分ではないことはわかりきっている事だ。
けれども味方の命がかかっている。悪く思わないでくれ。

 

斉射後に見渡すと、寂れたフロアは廃墟と化している。ヴィーコ大尉は先任曹長と数名を先に進ませる。
全くリアクションがない。
生きていても戦闘に耐えられる状況にはないだろう。
本来であれば、確認などをすべきであるが、ここは先にキラたちの確保を優先することにした。

 

「よし、突入するぞ!!!」

 

※※※

 

狭い通路を進むと、どちらに属しているか不明であったが、ザフト兵の遺体が横たわっていた。
さすがに目の前に倒れる遺体は敬意を払って扱う。
それは人として守るべきの最後の尊厳であろう。あとで、バルカン斉射で倒した兵も弔わなければな。
実際のところ酸素のある場では衛生上の問題もあるが、心情としては偽善としても払った方がマシだろう。
シンが、何番目かの遺体の損傷に耐えられなくなり嘔吐する。それを見てクワトロ大尉が諭す。

 

「見ておくといい、戦争とはこういうものだ。宇宙で戦争しようと、目の前で殺し会えばこうもなる。
 君もこうなるという覚悟で、その銃を握らなければならない」

 

一通りはき出したシンが、青い顔で大尉を見上げる。

「はい・・・」
「そして、忘れるな。人を殺めるという行為の業というものを、君にはマシーンになってほしくない」

 

アムロ・レイは、そういうシャアの表情をじっと無言で見つめる。
レーンも意外そうな表情を作って大尉を見た。端から見れば、私も同様だったろう。
彼はどこか解脱したような雰囲気を醸す時がある。
それが今後の我々にとって希望なのか、判断することはできなかった。

 

※※※

 

回廊を抜け、しばらく進むと前方の階段を確認していたプール先任曹長が叫ぶ。

 

「艦長!!階段下から銃声です!!!」

慎重に階段を下りてその先に進み、十字路の先より音は大きくなってきた。
十字路の先を慎重に確認すると、地下に向かうハッチの周辺で銃撃戦が行われていた。
どうやら、ラクス達が包囲されているが、さらにその後ろから救援部隊が到着したというところだろう。
目の前にいるのが味方かどうか、念のために、遮蔽からクワトロ大尉が声を掛ける。
彼は向こうに解りやすい名前で述べたので、妙な名乗りになった。

 

「私はロンデニオン共和国軍ロンド・ベル、シャア・アズナブル大佐だ。
 かつて、シーゲル・クライン前議長のところで世話になっている。そちらはクライン派の部隊か!?」

数名の兵士が銃を構えて振り向くが、兵士の1人が仲間を押さえて応答する。

「自分は、ヘルベルト・フォン・ラインハルトです!!
 お察しの通り、クライン派であります。ロンド・ベルには先ほどよりご助力感謝します」

 

エターナル陸戦隊と合流すると、そのフロアの向こうでダコスタが指揮していることが確認できた。
けれどもキラとフラガ少佐がいない。さらに気になることに、クルーゼの姿も確認できなった。

私はこの場をヴィーコ大尉とクワトロ大尉に任せ、アムロとレーン、ヤマト中尉、
シンそしてクレイル一等兵とガル二等兵、ウォルフ二等兵を率いて戻ることにした。
ラインハルトによると、ラクスを追撃した連中はここにいるのが全てだという。
残りは戦闘で互いに消耗したそうだ。ならば、クルーゼの動向が気になるというものだ。

先ほどのエターナル兵士に渡された、この施設の地図を確認しながら戻る。一体どこにいるのだろうか。
ふと先ほど通過した回廊の窓の向こうより、照明が点灯するのが見える。

 

「ブライト、あれだろうな。この状況で他に人がいるわけもない」
「そうだな、ガル、クワトロ大尉に伝言頼む。ラクスを確保した後こちらに来るようにとな」
「Ay sir!!!!!!」

ガルは直ちに来た道を戻っていく。私は残りの連中を見渡して頷く。

「よし!!いくぞ!!!!」

 

※※※

 

我々が照明のついた部屋に入ると、血痕を確認した。誰かが負傷している可能性があるな。
私が嫌な予感に苛まれていると、レーンが声を上げる。

 

「こいつは・・・なんです?」

 

声の方を振り向くと、何か筒状の機械が大きな部屋に並べられている。
そして、機械の上には、何か胎児の情報らしき画像が浮かんでいる。
一体何だろうか。しかし、詮索している暇はない。

 

「調べるのは後にしよう。ともかく、先を急ぐ必要がありそうだ。
 見てくれ、これを見る限り、誰かが負傷しているようだ」
「そうだな」

アムロが同意する。シンも辺りを見回す。

「先に行く道はどこにあるのでしょうか」

そこにハルマ氏が声を上げる。

「司令!!!銃声です!!!この階段の下からです!!!!!」
「中尉!!!わかった全員で行く、そこで待っていてくれ!!!」
「・・・ッ!!!どうやらクルーゼにキラたちが追い詰められているようです!!!先行します!!!」
「待て中尉ッ!!!くそっ!!全員続け!!!」

我々は急ぎ彼の後を追って階段をと下へと降りていく。

 

※※※

 

階段でハルマ中尉に追い付き、彼にきつく自重を求める。
父親としての気持ちはわかるが、無茶はして欲しくない。
改めて階段を降りると、甲高い声が聞こえてきた。忘れもしない、ラウ・ル・クルーゼである。

 

「私にはあるのだよ!!!!!!!!!!宇宙でただ1人、人類の全てを裁く権利がなぁ!!!!!」
「ふざけるな!!!バカヤロー!!!!!」

 

フラガ少佐の声に、多少のつらさが聞き取れる。負傷しているのは彼なのか。
そこにクルーゼが再び発言する。

 

「覚えていないかな?ムゥ、私と君は遠い過去、まだ戦場で出会う前に一度だけ会ったことがある。」
「何だと?」

 

どういうことだ。我々もようやく到着し、援護のタイミングを計る。
だが、私にはクルーゼの独白をもう少し聞きたくなってきた。

 

「フフフ、私は己の死すら金で買えると思った思い上がりの愚か者、
 貴様の父、アルダ・フラガの出来損ないのクローンなんだからな!!!」

 

何だと。フラガ少佐だけではない、キラやアムロ、私たち全員が絶句する。
しかし、フラガ少佐はすぐに頭を振り、怒鳴り返す。

 

「親父のクローンだと!?そんな御伽噺、誰が信じるか!!!」
「私も信じたくはないがな!!!だが残念ながら事実でね!!!!
 そもそも、御伽噺と言えば、君達の方がよほどファンタジーだろう!!!
 大富豪の家に生まれながらも没落し、軍人として成功を収めた貴様!
 キラ君は最高のコーディネーターとして人工子宮から作られた!!
 そのうえパラレルワールドからきた連中と仲良しこよしで建国までしている!!!!!
 おかげで、どれだけこちらの計画が狂わされたと思っている!!!!」

 

キラ・ヤマトの出自にそんな事情があったのか。驚きを隠せない一方で、彼の発言が引っかかる。
計画とは何だ。やはり彼がプラントの件で動いていたのか。

 

「特に最悪だったのは、こないだの来訪だ!!!
 わざわざ焚きつけた議長閣下が現実路線を採用しようとされたのだからな!!!!
 私はこの憎たらしい世界を破壊したいのだよ!!!!
 それをご丁寧に関係修復になど来るとは、心底困ったよ!!!
 本来ならば君らをあの時に始末できればよかったのだが・・・、
 認めよう。君らは予想以上の存在だったよ!だが、修正はできた!!
 君達の頑張りすぎが、この世界を滅ぼすのだ!!
 悪意だけではなく、善意すら人を滅ぼすと知るがいい!!!」

 

まさか、こいつは個人的な感情だけで、政府の中枢で戦争を焚きつけたのか。
利害や主義主張でもなく、単なる破壊衝動でこんな事をしてきたのか。
唖然とする我々の中でフラガ少佐が言い返す。

 

「せこいこと言っているんじゃねー!!!
 テメーのそのCockなひがみ根性でメチャクチャされてたまるかよ!」

 

クルーゼはその言葉の何かに触れたのか激昂する。

 

「おまえはいいさ、元々あったものを失ったのだから!!!
 キラ君は羨ましいよ、人工的に作られ、悲劇的な存在でありながら、
 偽りの家庭とはいえ、失うものもなく育ったのだから!!!
 だが私はどうだ!!!失うものがはなから無い私が、どうやって世界を愛せと言うのだ!!!!!!!」

 

彼の主張には大義もクソもない。その言い様はアムロとレーンの瞳に怒りが宿る。
いや、彼だけではない、今私と共にいるもの全てが、あの男の言い回しに明確な怒りを覚えていた。

 

「だが、私は計画を修正できた。間もなく最後の扉は開き、人類は自らの業で滅びるだろう!!!!
 欲望に塗れた人類に裁きの鉄槌が下る!!!私がその扉開くのだ!!! 
 その前に、貴様だけはこの手で殺して・・・」
「・・・ムゥさぁん!!!」

 

キラが飛び出し、何かの破片を拾い投げつける。
「そんなことさせるもんか!!!!」
「フン!!」
だが、わずかにそれ、キラは体勢を崩してしまう。クルーゼがキラに銃を向ける。
いくらコーディネーターといえど、あの体勢ではまずい。
私が支援射撃を指示する前に、ハルマ氏がその間に飛び出した。
少年の目が大きく見開かれる。

 

「父さん!!!!」
「ぐっ!」

 

彼も白兵戦用のノーマル・スーツを来ていたおかげで、拳銃は彼に肉体的な衝撃を与えるに留めた。
キラが駆け寄る。

 

「父さん!!!」
「中尉!!!くたばれ仮面野郎!!!!」
「このぉ!!!」
「うむぅ!!!」
レーンがクルーゼに向けて発砲する。
さらに、キラと同じように足下にあった破片をシンが投げつけると、仮面に命中した。
結果として彼の素顔があらわになる、フラガ少佐は今度こそ呆然とする。

 

「・・・親父・・・」
「ムゥ!!!死にたいのか!!!」

 

アムロが体当たりするように抱きつき、少佐を押し倒す。
クルーゼは、一瞬、憎しみの感情を濁流のようにあふれ出させる。
少なくとも、私にさえ、ほの暗い感情を読み取れた。
レーンに続けて、クレイルや私が我に戻って発砲する。
クローンを自称する男は顔を隠すように遮蔽物へと隠れた。我々はハルマ氏の状態を確認する。

 

「大丈夫か?」
「ええ、さすが白兵戦用ですね」
「ウォルフ?」
「打撲にくらいにはなりますよ。ですが、命に別状はありません。
 むしろフラガ少佐の方がよほど重傷です。とにかく止血しますよ!!!」

 

ハルマ氏の手当には対して時間を割かず、フラガ少佐の傷を見る。
クルーゼが出てこないこともあり、奇妙な間が空く。
状況を確認すると、キラがいつも以上に呆然として、父親に近寄る。

 

「父さんは、僕の父じゃないって・・・それに 僕は実験が・・・」

明らかに精神状態がまずい。父親は、そんな彼の肩に優しく手を置いた。

 

「キラ・・・。いつかは話そうと思っていた。こういう形になるとは思わなかったがな。
 だがよく聞いてくれ。家族とは、血が繋がっていなくてもなる事は出来る。
 父さんと母さんに血の繋がりはないだろう。
 親子だからといって、血が繋がっていなくとも、相手への思いと絆があれば、家族だ。
 少なくとも私はそうして、おまえに接してきた。
 キラ、おまえは私の息子だ!!!何も後ろめたく思う事はない!!!」
「・・・父さん」
「キラ、確かにおまえが私たちの実の子どもではない。
 だが、それがどうした。今伝えた思いに嘘はない。
 そして出自に他の人とは違うものがあったことも事実だ。
 だが、それがどうしたというのだ!
 それが人生を豊かに過ごしてはいけないという事の理由にはならない!!
 あの男の言うことはただのひがみにしか過ぎないッ!」

 

私は場違いにも、彼が父親としての責任を果たしていることに羨望とわずかな嫉妬を覚える。
だが、私以上に嫉妬に苛まれる男が叫んだ。

 

「美しいドラマを見せてくれてありがとう。
 もっとも貴様が彼を生き残らせた罪は万死に値するがね!!!!」
「貴様が、人類に恨みを持とうが知った事か!!!
 私が息子を守ることは、そんな理屈と何の関係もない!!!!」

 

父親の叫びに呼応するかのように、キラもきっと目に力を入れて声を上げる。

 

「ッ・・・!いい加減にして下さい!!!僕は貴方と違って、人類に絶望していません!!
 たとえ、僕がどんな存在であろうと、人は互いにわかり合おうとしてくれる!
 僕はそれを知ったんだ!!!貴方のような人とは違う!!!!」

 

その言葉に、我々は驚きキラを見る。最も驚いていたのは、ラウ・ル・クルーゼであった。
彼は右腕で顔を隠しながらも、その少年の発言に憎しみの感情を向ける。
そう、ニュータイプでなくとも明瞭に感じ取れる。

 

そのとき、大地全体が大きく揺れた。おそらくラー・カイラムが外壁を攻撃したのだろう。
私は体勢を立て直すと、彼に勧告する。

 

「観念しろ!!!ラウ・ル・クルーゼ!!!もう増援も来ない、投降しろ!!!」

 

その場にいた全員が遮蔽物へ銃を構える。

 

「冗談ではない!!!私が何も考えないでここに来たと思うのか!!!
 ここは私にとっても故郷なのだ。ある程度の勝手は知っている!!!」
「何だと!?」
「耳を貸すな!!!奴のブラフだ!!!」
しかし、この状況においてもそういえる根拠があるのか。
我々は徐々に遮蔽物へと接近する。クルーゼの独白は過熱していく。

 

「だが、君達異世界人であっても大勢というものは変えることは出来まい?
フフッ、人間というものは、いつまで経ってもおもちゃを手放せないからな!!」
何を言っているのだ。この男は。

 

「それに貴様たちには今時大戦で死んだ人間を考えれば、この憎しみの渦をどうにもできまい!
 とんでもないイレギュラーだったが、最早時計の針は戻らん!!!
 君達との対話は非常に楽しかったよ!!私の思いを知る人がこうも多くなると興奮してくる!!!
 だが、時間が来たようだ!!!」

対話と言うより独演じゃないか。突っ込みを入れようとも思ったが、
その直後、部屋全体が揺れ、天井が崩れてくる。
「うお!!!」
「いかん、崩落する!!全員下がるんだ!!!」

崩れた天井から、デュエルガンダムが着陸してきた。何という無茶をする。

 

「隊長!!!ご無事ですか!!!連絡を受け取り参りました!!!」
「イザークか!!助かったよ!!!」
「アデス艦長から伝言です。もう無理であると!!!」
「よろしい、残念だが作戦は失敗だ!!撤退するとしよう!!」
「はっ!!」

クルーゼは、そう叫ぶとデュエルガンダムへと走り出す。

 

「逃がすかよ!!」

レーンが発砲するのを見て、シンも怒りにまかせてライフルを構える。

「おまえが・・・おまえが、そんな自分勝手な考えで戦争を始めたせいで、父さんや母さんわぁ!!!!!」

2人の突撃に私は怒鳴る。

「待て!!!無理はするな!!!」
腕に乗るクルーゼが、指示を出す。

 

「斉射しろ!!!」
「はっ!!」

いかん、これではシンが撃たれる。私は思わず走り出し、シンに体当たりする。
二度と子どもを失うわけにはいかん。

「艦長!?」
「ブライト!!!!」

 

顔を上げると、デュエルがにわかに、射撃体勢に入る。そしてクルーゼが、歓喜の笑みを浮かべていた。
しかし、そこに上空の攻撃が降り注いできた。
デュエルはそれをシールドで防ぐ。もっともそのシールドはかなりのダメージを受けその機能を失う。
おそらくオター小隊だろう。

「イザーク、やむを得ん。後退しろ!!」
「了解しました!!ロンド・ベルが開けた穴から出ます!!!隊長もコクピットへ!!」

そういうと、デュエルが急上昇して脱出する。そして、その余波で崩落が加速した。
様々なものが落ちてくる。

 

「いかん!!全員階段まで下がれ!!!」

各々が階段目がけて走り出す。私はシンを立たせて走り出し、フラガ少佐はウォルフとクレイルが担がれ、
アムロとレーンは落下物に留意しながら急ぐ。

その時である、私とシンの前を走るヤマト親子に大きな固まりが落下してきた。
あれはまずい。誰かが注意を喚起して叫ぶ、それを理解した父親は何も言わずにキラを蹴飛ばした。
振り向き様に回避しようとするが、その崩落物はハルマ・ヤマトの左腕を背後から押しつぶした。

 

「ぐわぁっ!!!」

 

全員が言葉を失う。そして、その落下物を最後に崩落は静まった。

 

「なんてこった・・・」
「ウォルフ!!!!」

衛生兵が駆け寄り、負傷の状況を確認する。他の連中は、キラを除いた全員で崩落物をどかす。
そして、彼の怪我が致命傷であることを誰もが理解した。

 

「父・・・さん・・・」
「はじめて・・・おまえに暴力を・・・ふるってしまったな」

 

ウォルフが懸命に止血している。

「喋らないで下さい!!!クソ!!!ルイス!!!メットを外してくれ!!」
「わかった!!」

ハルマ氏は急速に呼吸を荒くしていく。

 

「艦長!!!直ちにハサン先生のところへ!!!緊急手術が必要です!!!」
「わかった、直ちに引き揚げよう。レーン、クワトロ大尉に伝令頼む!」
「了解です!!」
そこに、クワトロ大尉がラクス・クラインを引き連れてやってきた。
状況見て大尉だけでなく、ラクス・クラインも言葉を失う。

 

「これは・・・」
「話は後だ!!!脱出してラー・カイラムへ戻るぞ!!!!」

とにかく彼を助けなければならない。我々はラクス一行との会話もそこそこに、脱出の途についた。

 

※※※

 

我々が研究所を出ると、既に空の色に異変が現れていた。空気が流出しているからだろう。
「いそげ!!エターナルが出た穴から外に出るぞ!!
 君達もまずはランチに乗ってくれ!!入れない奴は外側に!!!」
各々がランチやMSに乗り込む。また、ザフト兵の一部は、ランチの外部にとりつく。
「よし、発進させろ!!!オター小隊は本機を直掩し、アムロたちは先行して宙域を確保するんだ!!
 キラ!!酷かも知れないが、君はオター小隊と共にランチを守ってくれ!!」
「ッ・・・、了・・・解!!!」
キラは、うめくように応答する。父親のこともあり、前線に投入などできまい。
かといってMSパイロットの任務を放棄しろとも言える状況ではない。
ともかくも私の命令は速やかに実行に移され、各自行動に移る。
我々の乗るランチは、上昇すると直ちに流出する気流で大きく揺れ動く。
苦悶するハルマ氏の応急手当をするウォルフが叫ぶ。

「誰か中尉を押さえるのを手伝って下さい!!!あまり動かすと危険です!!」
「・・・私がやります!!」

ラクスがキラの父親をしっかりと支えようとする。
それを見たダコスタや他の兵士も彼を揺らさないよう固定した。もちろんキラも、そしてシンも協力する。

「もう少しで、外に出ます!それまでは踏ん張って下さい!!!」

プール曹長が叫ぶ。そこにがくんと、機体が揺れ、体に浮遊感が生じた。宇宙空間へと出たのである。
周辺に戦闘の影はない。そしてラー・カイラムとエターナルを確認できた。

「早く通信回線を開け!!向こうからも来てもらうんだ!」

ラー・カイラムに繋がるとメランが、こちらの用件も聞かずに報告してきた。

 

「ご無事でよかった!!!艦長!!!EEFの第3艦隊が到着しました。ザフトは撤退していきます!!!
 ただ、艦隊が作戦計画より多いのです。確認下さい!」
「作戦計画に記されている艦艇数よりもはるかに多い?どういう事だ!?」

ラー・カイラムからの情報がパネルに表示され、60隻以上の大艦隊が整然と艦列を並べ進軍してきている。
不可思議ではあったが、まずはそれよりもハルマ氏の手当である。
私はメランにその旨伝え、急ぎラー・カイラムへとランチを向けさせる。
それまでに戦況の確認をするが、ガルシア艦隊は壊滅しつつあり、各コロニーの制圧も完了しつつある。
作戦は成功だな。

 

ようやくラー・カイラムに着艦しようとしたとき、再びメランから通信が入る。

「艦長!!!第3艦隊からです。先方が至急連絡したいそうです!」
「わかった。回線を繋いでくれ。大尉!!着艦したら直ちにハルマ氏を搬送させろ!」
「了解!」

機内が慌ただしく動く中、シンが叫ぶ。

「回線来ました!」
「わかった」

画面には、精悍な顔をしたアジア系の男が映った。

 

「EEF第3艦隊司令本多総一郎です。よろしく」
「ロンデニオン共和国軍、ロンド・ベル司令のブライト・ノアです。慌ただしくて申し訳ない」

互いに敬礼し合う。

 

「いえ、こちらこそ、遅れて申し訳ない。しかしながら、事情がありましてね。
 それをご説明したく連絡いたしました」

続けて、彼の口からは驚くべき発言が飛び出したのである。

 

「実は、計画に変更がありましてね。
 当初の作戦に加え、我々は大西洋連邦軍宇宙艦隊と合同し、
 ジェラード・ガルシア少将を捕縛するように指示を受けている。協力願いたい」

 

一体今度は何が起きたんだ。私は目まぐるしい事態の変遷に思考が追い付かなくなっていた。

 

第31話「少年の真実」end.

 

 

【次回予告】

 

「あたしはキラが好きっ!」

 

第32話「憎悪と愛情」