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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_32-1

Last-modified: 2011-05-02 (月) 15:32:59
 

失いし世界をもつものたち
第32話「憎悪と愛情」(前編)

 
 

画面に映るEEFの本多提督に対して、私は半ば絶句する。
彼はそれを先促す沈黙と受け取ったのだろう、言葉を続ける。
ミノフスキー粒子の影響で映像が乱れていることが幸いした。

 

「詳細は作戦終了後にお伝えいたします。
 押さえて頂きたい事項は、ガルシア少将には2つの嫌疑があるという事です。
 第1にEEFより国家反逆並びに情報漏洩罪の容疑が掛けられています。
 加えて、今次作戦に先立ち大西洋連邦においても、旗下部隊を私的に運用した容疑が提出されました。
 そこで、両国は協議の結果、合同で彼の問題を解決しようということで合意に至ったのです。
 それが、こうして合同艦隊でこちらに来た理由であります」
「つまり、今回のガルシア艦隊の行動は、大西洋連邦の意志ではないという事ですか?」
「ええ、彼らの艦隊は反乱部隊として処理されます」

 

これは・・・、相当疑わしいが、とにかく作戦を終了させないと真偽は確認できない。
いずれにせよ、クルーゼのことに加え、新しく生じたこの状況を整理するには時間が必要だった。
「状況はひとまず理解しました。すでにガルシア艦隊を除けば、組織的な抵抗は排除されつつあります。
 直ちに対処しましょう」

 

私は、戦争をしながら政治を考えなければならないことに、大きな徒労感に襲われた。

 
 

第32話「憎悪と愛情」

 
 

戦闘艦橋に戻ると、副官のレーゲン・ハムサットが状況を報告する。
「ガルシア艦隊は、各艦隊に半包囲され暗礁空域に待避しつつあります。
 また、抵抗していた勢力もほぼ駆逐いたしました」

 

シートに座り、画面を確認する。ザフト艦隊は、アムロの指揮する機動部隊に追い立てられつつある。
「第3戦隊旗艦リューリクのハルバートン副司令より、一時委任された艦隊指揮権を返上の旨、
 電文入っています!」

 

メランはその連絡と同時に、体を私に向け敬礼する。
「司令、艦の指揮権をお返しします」
「うん。よし、このまま友軍と共に追い込むぞ!! 機動舞台はTMSを中心に攻撃!攪乱するんだ!!
 残りはザフト艦隊と、残存勢力の掃討、そして直掩に当たれ!!」
「了解しました、部隊の指揮は?」
「対ザフトはアムロに任せ、TMSはウエスト少佐、直掩並びに掃討はセネット!!
 それと、レーンはTMSと共に強襲させろ!」
「直ちに!!」

 

メランが直ちにブリッジクルーに指示を出していく。
メンデルを離れた第1戦隊は、第3戦隊と合流し、銀河系の天頂方向から見れば台形のように艦列を整える。
友軍艦隊も再編成を済ませ、EEF第2艦隊が右翼に、EEF第5艦隊と大西洋連邦軍第3艦隊が左翼に展開し、
鶴翼というよりもU字型に近い陣形を整えつつ包囲を狭める。
連合艦隊は、第2艦隊が機動戦力を掃討に回す一方で、長距離からの砲撃を浴びせて
ガルシア艦隊の行動を制限し、左翼の第3、第5艦隊が一隻一隻を確実に仕留めようと試みる。
しかし、左翼艦隊はミノフスキー粒子の影響か、その命中精度は芳しくない。
ゆえに陣形が完全に再編される頃には、本多提督も牽制に専念して、
ロンド・ベルに攻撃を委ねる形になった。

 

「ガルシア艦隊が分割しました!どうやら殿をさせるつもりのようです!!」
「旗艦が逃げる時間稼ぎか。しかしそこまで忠誠心の高い部下で構成されているのか?」
「指示に従う振りをして、こちらに投降する気なのかも知れませんな。
 見たところ残存戦力の8割近くが、こちらと交戦をしようとしています。
 連中もアラスカのことは知っているでしょうし、EEFと大西洋連邦に服するよりはと考えているのでは?」
私の疑問に参謀長のトゥースが答える。確かにそちらの方が説得的だ。
我々に降伏したいが戦闘が継続している中で、抵抗は止めることは出来ないという事か。

 

「よし、リゼル隊!!強襲して艦艇の戦闘力を奪え!!
 連中はもはやそれほど士気も高くないぞ!!弱らせて投降させるんだ!」
私の命令に呼応して、リゼル隊が編隊を組み直して艦隊へ向かう。
テックス・ウエストは口数が少ない。その意味では、副隊長格のダニエル・タイラントとは対照的だ。

 

「各機、敵の武装を沈黙させろ。味方の砲撃にも注意しろ」
「よーし、野郎どもZ乗りの腕を見せてやれ!!!God save Ireland!!」

 

弾幕をかいくぐり、リゼル隊が艦艇の武装を破壊していく。だが、撃沈させてしまうものもいた。
他ならぬタイラントが護衛艦に攻撃したところ、外付けのミサイルにビーム・ライフルを命中させると、
誘爆が艦全体に広がったのである。

 

「チッ!メガ・ランチャーも使わずにやったっていうのに!
 各機へ!!ライフルの出力を絞るか、ミサイルへの命中を避けろ!!」

 

タイラントはそういうと、MAからMSに変形して、ネルソン級にグレネードを打ち込む。
打ち込まれた艦艇の主砲が爆発する。殿に残った部隊は、艦艇6隻にMS5機、MA4機だ。
もうどうにでもなるとは思う。しかし、と危惧することを指示しようと考えた直後、
ウエスト少佐が味方に注意を喚起した。

 

「各機、足つきのローエングリンには気をつけろ。まぐれ当たりでも吹っ飛ばされる」

 

やはり、彼は見るべきところを見ている。
こちらが殿の対応にまわったので、両翼の艦隊に属する高速艦艇とMAが逃げるガルシアを追撃する。
率直に言って、我々としては捕縛する義務はないので深追いして、
バリア付のMSに逆撃を食らうリスクを負わなくてもいいだろう。
私がそう考えた直後、補給整備を整えたと思われるハイペリオンが出撃する。
妙にキラを狙っていたが、わざわざこちらまで来ることはないだろう。
キラは現在、本隊の直掩に専念している。
しかし、あのパイロットがキラを狙う理由はなんだ。何かをいっていたような。
私が思案に耽る間もなく、状況は変化する。

 

「艦長!!ハイペリオンが追撃部隊と交戦を開始した模様です。戦況は不利!」
「第2艦隊より入電!!援護の舞台を回して欲しいとのことです!」

 

当然そう来るだろうな。予備戦力を回せるだろうか。思案していると、参謀長が口を開く。

 

「司令、援護要請について無理にする必要は無いと思いますが、
 先の戦闘を踏まえれば、ある程度は対処できます。
 前にいるリゼルを2機、できれば3機ほど回してヒットアンドウェイを繰り返せば、
 撃墜は無理でも退けさせることはできるかと。支援ですから、これで信頼を買うという形でよろしいかと」
「うん、それで被害も押さえられるか。参謀長、パイロットの選別は任せる。2機ほど回してくれ」
「了解しました」

 

参謀長は頷くとリゼル部隊に指示を出す。
命令を受けた、ジスカール中尉とフッシャー中尉のリゼルが、速度を上げて救援へ赴く。
攻撃的なジスカールと、ミノフスキー粒子下でも精密攻撃が得意とするフッシャーならば、
うまく連携するだろう。
一方で殿部隊は、その戦闘機能を奪われていく。

 

「こちらの速度についてこれるものか!!!」
R 6のマクシミリアン・リッター中尉が、MA形態でメビウスを引きつける。
そして、背後から別の機体が襲いかかる。

 

「後ろががら空きだぞ、間抜けども!!!」
R5 のシュウジ・モリオカ中尉が、ビーム・ライフルを浴びせかけて次々と火の玉にしていく。

 

「わりいな、マックス!3機もおいしく頂いてしまって!!」
「ずっけぇぞ!!後でおごれよな!!」

 

こうした軽口は、ある種の潤滑油といっていい。
機動戦力がいよいよ減退する中で、艦艇の対空防御力も削られる。
だが、戦闘艦艇の火力は強力だ。機動部隊を支援するために、ラー・キェムが前に出る。

 

「ミサイル発射管、スレッジハマー装填!!目標ドミニオン!!!
 ゴットフリートかローエングリンを黙らせるぞ!!!
 弾着直前に爆発させてダメージを与えるのだ!!自爆のタイミングは、私が指示する!!!」

 

ピレンヌ艦長が、指示を出すとラー・キェムは最も火力を有するドミニオンと対艦戦をする構えを見せる。

 

「装填完了!!!」
「1、2番撃て!!!発射後再装填!!航海長!!速度一杯、俯角45度!!下方から攻撃する!!」

 

ラー・キェムはミサイルをはき出すと、艦首を下げてドミニオンの主砲の死角より砲撃を始めた。
もちろん、ゴットフリートは撃てないが、ヴァリアントもある。
加えていえば、ドミニオンは、ラー・キェムに気付いて対応しようと艦を向けつつ、
迎撃ミサイルをはき出した。

 

「主砲照準迎撃ミサイル、直掩と連携して半分は落として見せろ!!
 続けて3、4番撃て!!発射後に後部姿勢制御スラスター全開にして、艦首をドミニオンに向け!!」
「1番ミサイル撃墜されました!!」
「1番発射!!!2番を爆破!!」
「艦長、この距離では効果が!!」
「構わん!!!」

 

2番ミサイルが、ドミニオンに打撃を与えるはるか前方で爆発する。
そこに向けた迎撃ミサイルを巻き添えにする形で、である
「ドミニオンが第2派の迎撃ミサイル発射!!3番ミサイル接触まで25秒!!」
「2番発射!!!」
「ドミニオン、進路変更完了!!ゴットフリート来ます!!」
「脅しだ!!!当たらん!!!」

 

ラー・キェムの脇のギリギリを、ゴットフリートがすり抜ける。

 

「第2射来ます!!!さらにMA放出!!」
「まだ正確な位置など解らん!主砲打ち方やめ!」

 

第2射も続けて回避するが、3番目に発射したミサイルをかすめて爆発した。
これはドミニオンが、うまく斜線に入れたといえよう。迎撃ミサイルは、4番目のミサイルへ殺到する。

 

「艦長!」
「4番自爆!!!主砲!!」
「撃てぇ!!!」

 

4番ミサイルが、迎撃ミサイルを巻き込んだものの、主砲は当たらない。
アークエンジェル級の運動性能は侮れない。
そうしている間に、1番、2番ミサイルが接近する。

 

「よし、自爆させろ!!!」

 

しかし、私の指示でミサイルが起動する前にMAメビウスが2機で対応し、2番ミサイルを撃墜する。
1番ミサイルは自爆したが、1番ミサイルを撃墜した2機の内一方を撃墜したものの、
ドミニオンの損害は対空砲一門程度であった。

 

「さすがだな、バジルール君。対艦戦闘は艦艇だけで行うものではない。しかし、まだ詰めが甘い」
「俺たちが最後のミサイルだってんだ!!!続け!!!」

 

タイラントとリッターのリゼルが、ドミニオンの真上から直角に強襲する。けれどもリッターの速度が遅い。
「もっと速度を上げろ!!やられるぞ!!タマが縮むくらいのGをかけて見せろ!!」
「うおおお!!」
リッターが、タイラントに並ぶ。
「よし、それでこそZ乗りだ!!行くぞ!!!」
「はっ!!」

 

先にタイラントが仕掛ける。
「これで黙ってくれよ!美人さん!!!」
彼のリゼルが、ドミニオンの左舷ゴットフリートと右舷ローエングリンを破壊する。

 

「くっ、やれるか!?」
続けてリッターの攻撃で、ドミニオンは左舷ヴァリアントを喪失した。
ピレンヌ艦長、さすがに頼りになる方だ。

 

そこにアークエンジェルとレーンがたたみ掛ける。
「ナタルっ!!!ゴットフリート照準!!ドミニオン艦首!!てっー!!」
「ローエングリンだけはやらせてもらう!!!」
アークエンジェルのゴットフリートを辛くも回避したが、
リゼルとは逆の方向から高速で強襲したペーネロペーの攻撃まで捌けなかった。
これで殿の戦力は大幅にダウンさせたといえよう。

 

そして我々の戦闘空域よりも奥地では、ハイペリオンが連合艦隊の追撃を排除しつつ後退しつつあった。

 

「くそがぁ!!!キラ・ヤマトを前にしながら進むこともできねぇのかよォォォ!!」
「所詮は、MAかジンくらいしか相手にしてこなかった奴に、
 俺たちの高速戦闘に耐えられると思うなよ!!」
ジスカールが、速度を利用して攪乱する。そこにフィッシャーの放ったメガ・ビームランチャーが直撃する。
彼はその射撃能力を鑑み、ランチャー装備を認められているのだ。
「そして、負荷を与え続ければいいだけです」

 

ハイペリオンも徐々に押される中で、ガルシアはともかく暗礁空域へと全速で逃げ込もうとする。
残りの護衛艦は、ともかく混乱の中で上司の命令を守ろうと追撃を防ごうとする。
このまま暗礁空域に入られると、艦隊単位での追撃は無理だろう。
このままでは、早晩逃がしてしまうな。本多提督はやや焦りを見せ命令する。

 

「逃がすな!!!逃亡を試みたのだ、撃沈してもかまわん!!!」

 

ハイペリオンもそろそろ限界であろう。
その予想は的中し、パイロットは負け惜しみとも言えるセリフを吐き後退する。
「俺はまた来てやる!!覚えておくんだな!!ロンド・ベル、そしてキラ・ヤマト!!」

 

ハイペリオンは、閃光弾を放つと急速後退した。リゼルで追いつけなくもないが。
「まっ、深追いして損傷することもないでしょう。任務は果たしました。そうでしょう、シャルル?」
「まぁそうだな」
MSに変形していたジスカールは、MSで肩をすくめて見せた。
なんと不要なプログラムを入れると、苦笑させられる。
リゼル隊から逃走したハイペリオンは、後退する途上で腹いせのように、追撃艦艇を2隻撃破したため、
追撃艦隊の進撃速度は鈍らされてしまった。
その結果、隙を突いてガルシアは、ハイペリオンと共に暗礁空域に逃げこむことができたのである。

 

※※※

 

いよいよ殿を勤めたガルシア艦隊の崩壊が始まった。

 

「艦長!!R6 より、敵艦1隻が投降信号!!」
「よし、武装解除して確保しろ!味方の艦隊にも通達急げ!」
「お待ち下さい。こちらが確保する必要は本当にあるのでしょうか?
 乗員にブルーコスモスなどがいたら危険ではありませんか?
 戦力増強を考慮に入れても、リスクが高いと小官は思いますが」

 

作戦参謀のチャールズ・スミス中尉が、戦闘中の参謀たちが戦況の情報処理を担っている作戦会議室より
意見具申する。
確かにその危険は無視できるものではない。参謀長がその意見を踏まえてさらに進言する。

 

「スミス中尉の意見は、もっともだ。けれども、前回のように人員の選別も行えばいい」

 

そうは言うが、さすがに前回とは状況に差があると思う。
あの時は緊急避難的な側面が強いし、現3戦隊は友軍として行動していた。
だが今回はどうか、敵対している。向こうにも感情はあるだろう。少し楽観的ではないだろうか。
私がその進言を検討しているうちに、護衛艦は連合艦隊の集中砲火により撃沈された。
これで後4隻か。ネルソン級2隻とドミニオンが中破しながらも奮闘する。
これは忠誠心ではなく誇りの問題だろうか。
すでに片方のネルソン級は対空火器の8割を失い、主砲はこちらではなく機動部隊に攻撃を仕掛けている。
ドミニオンを援護しているのだろう。残存の機動戦力は、ドミニオンを基点に運用しているようだ。
おそらく殿で最も重要視されているの優先しているだろう。
それもそのはずだ。残ったアガメムノン級は、レディングとコンタリーニが追い込み中破させている。
一方、ドミニオンも既に兵装の半数を失い、こちらにとって最大の脅威たるローエングリンも破壊されている。

壊滅は時間の問題である。
しかし、私は先ほどから投降を受け付ける姿勢にない本多提督と連邦艦隊に違和感を覚える。
先に根拠なく感じたある種の疑念が、醸成されていく。
私が明確な決断を出せないところに、通信班のズマ少尉が報告する。

 

「艦長!!さらに護衛艦より投降信号!!加えてアークエンジェルから緊急です!!」
「なんだ?回線回せ」

 

シートの左側のコ・モニターにラミアス艦長が映る。

 

「司令!!バジルール少佐の説得を任せて頂けないでしょうか!!
 これ以上の戦闘は無意味であると考えます!!」

 

ラミアス艦長のかつての部下への思いやりは、実に彼女らしいと思う。参謀長がその意見をアシストする。

 

「司令、ここはラミアス艦長の具申を採用すべきです。重ねて他の艦も投降を受け入れましょう。
 うまくすれば、背後事情がわかるかも知れません。
 付け加えるならば、先にも進言したように戦力増強になります」
「艦長!!ハルバートン副司令より入電!!
 一隻でも捕縛し、ガルシア艦隊の作戦行動に関しての情報を確保すべきとの上申です!」

 

こうした直言してくれる連中に頼もしさと信頼を強くする。
私は右手に力を込め、身を乗り出して指示を出す。

 

「よし、ドミニオンの説得はラミアス艦長に任せる。
 困難な場合は、私とハルバートン少将、アムロや、場合によってはフラガ少佐も
 医務室から呼びかけさせる!!
 他の艦艇には、全てのチャンネルを使い降伏と投降を呼びかけろ!!
 友軍に艦隊には、殿の対応はこちらに任せ、ガルシアの追跡と周辺宙域の完全確保をするよう要請!!!」
「了解!!」
「司令・・・」
ハムサットが、少し不安げに言葉を漏らす。
スミスの意見を念頭に、今回の増援部隊の動きを警戒しているようだ。
「向こうもこちらの確保作業を無視してまで砲撃してこないだろう。
 そもそも作戦開始時より行動を共にしている第2艦隊も事情を知っていないようだしな。
 まずは状況を終わらせてからだ」

 

戦局は最終段階を迎えつつあった。私はアムロたちの状況を確認する。

 

※※※

 

そのころ、アムロ率いる機動部隊はクルーゼを回収したデュエルを追撃していた。
これはクワトロ大尉が、機会を逃さず倒すべきと判断したからである。
しかし、クルーゼの指揮下はさすがに練度も高いようだ。
なにより、ここまで撃ち減らされながら、士気に衰えがない。
彼の主張は突拍子ものがなかったけれども、今時大戦を通してその統率力は低いものではないのだ。
ザフト側は指揮官を守るために、残存戦力と予備兵力を投入した。その機体は全て新型のようだ。
例えばジンに見えるものもあるが、形状に差違が確認できるところ、ヴァージョン・アップ機と見られる。
アムロが檄を飛ばす。

 

「各機!新型ばかりだ!警戒を怠るな!!」
「まずいな、まだこれだけいたのか。負けるとは思わんが、時間を掛けると追えなくなるぞ!」

 

クワトロ大尉が懸念を口に出す。
アムロたちには、ガンダムの他にクワトロ大尉率いるアークエンジェル機動部隊と、
エリアルド・ハンター率いるラー・キェム機動部隊が従う。
もっとも、既にアークエンジェルの部隊は、フラガ少佐とジム部隊がいないので、
ニコルと後方にいるトールのみ。
ラー・キェム隊も2機が整備で後退している。

 

「僕にだって、譲れないものがある!!!落としはしないが・・・、イザークッ!!!」
ニコルのブリッツが、バスターの超高インパルス長射程狙撃ライフルでデュエルを狙い撃つ。
追撃前にアムロは、ニコルを直掩に残そうとした。他ならぬ、私も同じように考えていた。
するとニコルは、はっきりと言った。

 

「アムロ中佐、司令!!僕はもうロンド・ベルのメンバーです!!
 この数ヶ月そうして行動してきたつもりです! いまさらゲスト扱いをしないで下さい!!!
 ・・・確かに迷いがないかといえば、あります。
 ですが、いまやるべき事を取り違えるつもりはありません!!!」
「アムロ、ニコル君も戦士なのだ。そうした気遣いは彼の誇りを傷つける」
「シャア・・・」
ニコルも、彼なりに決断してここにいるのだ。
なんということはない、かつての私たちがそうしてきたように。
アムロは私と目を合わせると何も言わずに頷き、もっとも私も同様であった、
ニコルも含めてザフト追撃を開始したのである。

 

ブリッツの放ったランチャーは、新型ジンのシールドを破壊した。防御も強化されているようだ。
「チィッ!!賢しいな!!エリアルド!!ニコル!!!キャノンとライフルで突き崩せ!!!!」
フラガ少佐が負傷して不在のために、アークエンジェル隊はクワトロ大尉とブリッツだけである。
そこでクワトロ大尉は予備兵力を支援に回して火力を補う。
「ケーニヒ准尉!!後方からアグニで支援しろ!!前には出るなよ!!」
「了解!!」
ジェガン重装型とブリッツのライフル、そしてアグニを持って敵陣に風穴を開けようとする。
しかし、連中も素直に当たってくれなかった。

 

「さすがに避けるか。アムロ!!!」
「解っている!まずは前の2つを!!」
アムロは、ダミーを前方に放出して敵の的を攪乱させる。
しかも、ダミーには機雷が仕込まれており、着弾すると撃墜を誤認させることができた。
その隙に、エリアルドとクワトロ大尉が間合いを詰める。

 

「大尉!!!」
「やってみるさ!!」
エリアルドのジェガンは、ダミーに攻撃しようとした新型ジンにビーム・ライフルを打ち込む。
最初の一撃は右肩に被弾し、次いで胸部に命中してそのダメージがジンを火の玉にする。
ジンに比して胸部の装甲を充実させていたようだが、こちらのライフルを防ぐほどではなかったようだ。
撃破した時の隙を狙ったのか、側面からジェガンを攻撃しようとした新型に対して、
クワトロ大尉は背後からハイパー・バズーカで撃破した。
速やかに2機撃墜に成功すると、アムロもビーム・ライフルで2人を囲もうとした新型ジンを牽制する。
ジェガンと量産型νは背中を併せて警戒しあう。

 

「後ろは任せます!!」
「信頼してくれて嬉しいよ、大尉」
「腕だけは信じますよ!!赤い彗星!!!」
「フッ、任されよう」

 

アムロだけではなく、エリアルド配下のジェガン隊やブリッツも包囲させまいと牽制する。
「私の隊長をやらせてたまるものですか!!」
「いや、私の隊長です!!」
「・・・支援しまっす」
ガンダムから苦笑がこぼれたように見えたのは気のせいか。
アムロはジェガン隊に牽制を任せてニコルと動き出す。

 

「ニコル!!ミラージュコロイドで隠れて俺の後ろにつけ!!!」
「了解!!」
アムロは、半包囲しようとするザフト部隊の右翼側に仕掛ける。
まずはシールド・ミサイルで敵の動きを制限下に置くと、コクピットを狙い撃つ。
貫かれた新型ジンは爆発し、その爆発を突き抜けて次の機体に狙いを定める。
対して、狙われた機体は、左右の機体と連携して、挟み込もうとする。
「ニコル!!!」
アムロの号令で、左から挟み撃ちをしようとした新型の背後を、ニコルはライフルで狙撃した。
「くそっ!!内側からか!!」
ミノフスキー粒子が薄いのか、右側から来るザフトパイロットの言葉が聞こえる。
アムロは、ガンダムを側転するように動かして敵の攻撃を回避する。
そして、まわりきる頃には腰をひねり中央の新型を打ち抜いて火球となした。
右の新型は、ミサイルを撃ち出すと外部装甲をパージすることで速度を上げ、復讐に燃えるように肉薄する。
アムロはそれをダミー機雷で対処した。
ひとつはミサイルの盾に、もうひとつは敵への直接攻撃のために、である。
「ぐわっ!!!」
武装と共に左腕が破壊され、おそらくパイロットが次を考えようとするより早く、ビームの矢が彼を貫いた。
アムロが見せた行動を目の当たりにし、殿部隊は後退を始める。
もちろん、それはクルーゼの離脱が完了したことも意味していた。

 

「チィ・・・」
「アムロ、これ以上は追わない方がいい。
 ミラージュコロイドを使用したブリッツのバッテリーの心配もある。
 なにより、ナスカ級の全速力に追いつけそうにない」
「そうだな。よし、本体と合流するぞ!!」

 

こうしてザフト軍は戦場から離脱した。

 

※※※

 

私の前面で行われてきた戦闘は、ほぼ終結しつつあった。
このとき私は旗下の艦隊を完全管制下に起き、殿部隊は完全に包囲下にあった。
そのためにネルソン級とドミニオン以外は、全て降伏したのである。
もっとも、彼らもまた決断の時が近づいていた。
ラミアス艦長はドミニオンのナタル・バジルール艦長に対して賢明に説得を続ける。
最初は、彼女自身も状況を整理できる状況ではなかった。
しかし、上官は逃亡し友軍が投降する中で、悲しい現実を理解し始めていた。

 

「ナタル!!!状況を受け止めて!!疑う余地もないわ。あなたは切り捨てられたのよ!!」
「しかし・・・」

 

バジルール少佐には、それでも現実を受け入れがたいのであろう。
つい、数時間前まで正規軍と信じて疑わなかったのだから無理もない。
だが、時間は限られている。宙域の確保もほぼ完了した。友軍も間もなく殺到するだろう。
私も説得に乗り出そうと回線を開こうとしたとき、
ラミアス艦長は知り合ってから最も大きな声で、彼女を叱咤した。

 

「しっかりしなさい!!!ここで部下を無駄死にさせるのが、貴方が目指した軍人の在り方なの!?
 答えなさい!ナタル・バジルール!!!」
「・・・!!」

 

マリュー・ラミアス艦長とナタル・バジルールに間には、
私の知るよしもない気持ちの葛藤があったのだろう。
数十秒の沈黙の後、ナタル・バジルールは苦悶の表情を緩め、穏やかな顔を見せた。

 

「違う、と思います。そして、自分の目指すべき軍人は艦長のいうように、
 無駄死を強要させるものではありません。
 ラミアス艦長!本艦は貴艦隊に降伏いたします」

 

投降を申告するバジルール少佐の敬礼は、とても美しかった。
そして、彼女が祖国を失った瞬間でもあった。

 

「ブライト司令!!」
「受け入れよう。武装を解除してくれ。バジルール少佐」
「はっ!!」
「よく決断してくれた。あえて言わせてもらう、ありがとう」

 

再び見せた彼女の敬礼は、やはり美しく迷いのないものだった。

 

ドミニオンの投降を見て、ついにネルソン級からも投降信号が発せられた。
ここに、コロニー群奪回作戦は終結したのである。