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CCA-Seed_427◆ZSVROGNygE氏_36-1

Last-modified: 2012-09-08 (土) 07:05:04
 

「・・・以上が講和に至る方針である。
 すでにこちらからは、ウィレム・オルバーニ元連合事務総長を代表とする全権代表を派遣した。
 先方とも、とりあえず交渉に応じたので、一時停戦ということになっている。
 ま、互いに時間稼ぎの側面があることは否めないが、こちらにとっても重要な時間であろう。
 直ちに部隊再編と、再攻撃の準備をしておいてくれ」

 

地球との交信を終え、幹部達が各々憮然としている。最初に口を開いたのは、カガリ・ユラであった。

「しかし、いまさらオルバーニ元事務総長を派遣してどうにかなるのか?」
「どうにもならんから、彼を派遣したんだろう」

エクスマス提督が苦笑して感想を述べる。この場合、カガリに応じたと言うよりは、
この場の雰囲気を代弁したものであっただろう。辺りに乾いた笑いが広がる。
オルバーニ元事務総長に対する評価がここからも窺い知れるというものだ。
私自身、面識を持つ前に退陣した人物なので特に印象にも残っていないが、
その後の情勢の推移を見るに戦時の指導者には向いていなかったのであろうと思っている。
寄り合い所帯の調整者と言ったところか。

 

「セイラン外相はどう思われますか」

キャナダイン大将が純粋な興味からか、彼に意見を尋ねる。
実際、もうすでに会議で話し合うべき内容はなかった。
とはいえ、直ちに仕事に取りかかる気分でもなかったので、とりとめもない話をしているというところだ。

「たしかに、オルバーニ氏は政治構想や戦略眼を持った指導者で無いことは間違いないでしょう。
 ただ、この手の交渉であれば、それなりに成果は出すと思います。
 一応調整力は見込まれている人物ですからね。
 格としても仮にも連合の代表でしたから、向こうが外相クラスを出すとなると、
 こちらもそれなりの人間を出さざるを得ないでしょう。
 ですが、やはり今回の交渉はうまくいくとは思えませんね」
「理由は?」
「まず、パトリック・ザラがこの状況で講和を望んでいるとは思えません。
 そも向こうはこちらが交渉に応じると言われて驚いたのではないでしょうか。
 それに、彼の構想としては、あのトンデモ兵器で我々をなぎ払って勝利したいと言うのが本音でしょう。
 下手なプロパガンダをしている辺り、さっさと侵攻軍を撃破したいところでしょう。
 むしろ彼にすれば、時間が経過するほど彼には不利です」

 

「では向こうは何故、交渉に応じたのだ?」

カガリが困惑げに聞く。

「おそらく国内の和平派が彼の想定よりも強かったのでしょう。
 カナーバ外相だけでなく、エルスマン厚生相など、閣僚にもかなりいるようですからな」
「だが、セイラン外相、すると益々交渉に応じた理由の説明にならんぞ。
 あんな演説をぶち上げる必要もなかったわけだからな」

私も議長の行動に不可解さをぬぐえないでいる。いったいどうして交渉に応じたのか。

「そう、僕もそこが解らないのです。考えられるのは、ふたつあります。
 第1に交渉時を狙い、あの兵器で仕掛けてくる。
 だがこの状況で小細工する理由がない。むしろ、政治的には致命的な事態になる。
 それにこちらは今後の艦隊再編成で、まずあの射線には布陣しないから、
 軍事上の成果も期待できないので意味のある行為とも思えない。
 第2は彼が本気で講和成立を目論んでいる。
 しかし、あえて言えばボアズ陥落で講和に応じるくらいなら、その前にいくらでも講和の機会はあった。
 少なくとも、EEFや連合再結成後も地球側は強硬路線ではないのですからね。だから、解らないのです。
 あるいは幾度かの和平提案が呼び水になり、和平派の勢力がここに来て増大しているのかもしれません」

各艦隊司令も何ともいえないわだかまりがあるようだが、口には出さずにいるようだ。
キャナダイン大将が、椅子に体を預けながら背後の大きなモニターを見る。

「いずれにせよ、増援が来たところで、次でけりを付けなければならんだろうな」

メイン・モニターには、講和失敗後に攻め込む要塞が写っていた。

 
 

失いし世界をもつものたち
第36話「ヤキンドゥーエ」(前編)

 
 

「どうでしたか?」

ラー・カイラムに戻ると、アムロとメランが迎えてくれた。

「ともかくは艦隊の再編だな。うちに所属している連合艦艇は供出することになりそうだ。
 サザーランド君とボース君は、司令代行として欠員の出た部隊の指揮を担当させる」
「混成艦隊の負荷が少しは減りますな」

メランが、ほっとした顔を見せる。

「アムロ、機動部隊はどうか?」
「思ったよりも消耗が大きい、補給が来れば何とかなりそうだが」
「補給部隊は?」
「後続部隊とともにこちらに向かっています。2日後には到着する予定です」

メランが、補給に関する書類を片手に報告する。

「そうか、その後続部隊だが、元帥の座乗艦が使節を乗せて先発してこちらに来ることになった。
 アリバイ作りじゃないが、講和交渉をするそうだ。
 それがどうなるか解らんが、それまではとにかく再編作業だな。
 もっとも、うちより他の部隊の方が悲惨だが」

私は移動用のアームを手にする。他の連中もそれに続く。

「ブライト、講和と言うが、連合はパトリック・ザラのあの要求を飲むのか?」
「だがらアリバイ作りなんだ。時間稼ぎにもなるからな。
 だいたい、アレを飲んだら来年には連合首脳は総取っ替えだろう」
「そりゃあ・・・」

言わずもがななことに、一同に乾いた笑いが広がる。

 

「後、ジョーカーにも動いてもらうことになった」

私の言葉にアムロの眉は微妙な動きを見せる。

「ラクス・クラインをか?」
「ああ。彼女も乗り気だ。利用されようとも、と言う覚悟も持った。
 後は我々の手の外だ。できることをするしかあるまい」
「いつものことだな」
「ああ」

各々の乾いた笑いは皮肉気な笑みへと変わる。
政治というのはこうしたものだと思う反面で、やはりどこかにおかしさとむなしさを胸に抱いてしまうのだ。
アムロは肩をすくめると、気になったのかキラにラクスのことを伝えるべきか聞いてきた。

「話したところで、何か変わるとも思えないが」
「後で話して騒がれても困る。もっとも、今のキラならそんなこともないだろうがな」

エレベーターに到着して、一同が中に入る。

「むしろ、ラクスが我々のジョーカーならば、向こうのジョーカーはラウ・ル・クルーゼだろう。
 正直何をしてくるか全く読めん」
「破壊願望のある男だったからな。何か仕掛けてくることは確実だろう。連合にはクルーゼのことを?」
「言わないよりかはマシだが、正直に言って信じられるか?
 世界を滅ぼしたい、なんて奴が大まじめに政府の中枢にいて影響力を持っているなんて」
「20世紀のハリウッド、しかも冷戦の時代のB級映画ですな」

メランが、冗談交じりに返す。彼は古典映画の鑑賞が趣味だったな。
この世界でも、好みの古典映画が残っていることに安堵していた事を、ふと思い出した。

いずれにせよ、すでに過去にE.E.F.には報告している。
それで信じなければ軍令部の上層部がまともな思考な持ち主なのだろう。
私はあえて、重ねて連絡する必要もないと判断したのだった。

 

艦橋に戻り、席に座ると、私は副官のハムサット少佐が脇に抱えていた資料を受け取って
今後の展開を確認する事にした。
ラクス一党の工作計画は、端的に言えば主戦派への圧力である。
これは、成功すればよし、しなくとも後方攪乱になるという想定だ。
ラクスは自らが道化と言うことも自覚しつつある。
それは幾度かの彼女が感じた無力に対する思いがあると、アムロやキラが言っていた。
父を目の前で失い、ロンド・ベル陸戦隊の犠牲やキラの父の死が、
個人の無力さを痛感させたのだろうという。
彼女もいくつもの喪失を経て変わっているのか。
私にはそれがいい方向に変わっているのか、悪い方向に変わっているのか、よくわからない。
そう思った時、自分は案外、ラクス・クラインと真摯に向き合う事をしていなかった気がしたのであった。

 

※※※

 

2日が過ぎ、月面からの連合艦隊増援部隊は、講和全権団と合流し、
総旗艦パラメデスは先発してボアズとヤキンの中間点に到達した。
ザフト側も、タリア・グラディス指揮するラプラスに乗った、
アイリーン・カナーバ外相を代表とする講和全権使節が到着した。

我々は、ジェネシスの射線の外に展開して布陣している。
限られた時間の中で、不完全ながらも進撃できる体制にまではなったというところだ。

いよいよ和平交渉が始まるか。ハムサット少佐が、会議室のメイン・モニターを眺めて口を開く。

「いよいよですね」
「何かあるとすれば、ここでしょうな」

ハルバートン参謀長代行も警戒している表情だ。
席には参謀一同とオーブ幹部が並んで推移を見守っている。
実際のところ、ユウナ・ロマも外相とはいえ交渉から締め出されているので、
することもなしというところだ。

「セイラン外相、どのくらい掛かると思う?」
「急遽決まった会談ですからね。一度で終わるとは思えません。数日は掛かるでしょう」
「気の長い話だ」
「外交官にとって忍耐は必要な資質ですよ」

ハモンド艦長が天井を見上げると、それを見てユウナは笑みを浮かべて言う。
決して見下している風ではなく、むしろハモンドの言葉に同意しかけている表情の
カガリに向けられているように見えた。

 

そこに艦橋から緊急通信が入ってきた。メイン画面の右下にオペレーターのズマ少尉が映る。

 

「艦長!!エターナルより電文です!!」
「何だ?」
「クルーゼが仕掛けるので至急対処されたいとのことです!!」

列席者に緊張が走る。

 

「どういうことだ!?」
「新任のプラント評議会議員、ギルバード・デュランダル氏からの情報提供とのことです。
 クルーゼの奴は、会談場所であるラプラスを轟沈させてカナーバ外相とユウキフェイス司令、
 オルバーニ全権とマクファースン元帥を謀殺するつもりのようです!!」
「なんだと!!」

カガリが驚き立ち上がり、他の者は椅子から腰を浮かせたり、体を動かし動揺する。

 

「し、しかし、議員はどうしてその情報を知っているんだ?
 そして、そのリークには何かあるんじゃないか?」

コンタリーニ艦長が、動揺しつつも、その情報の真偽を問う。

「電文では議員の情報開示について、簡潔に愛する女性を守りたいとのことです。
 ともかく時間がないので、詳細は添付した報告書を読まれたいとのことです!!」

説明不足が過ぎるが、今はそれどころではない。

「ともかく総旗艦に連絡しろ!!!」
「了解!!緊急電入れます!!!!」
「それと、全艦、第一戦闘配置だ!!!アムロ!!レーン!!キラ!!フラガ少佐!!!
 構わないから現場に急行しろ!!!」
「「「了解!!!」」」

ハルバートン少将が、一応確認する。

「司令、確かに私も拙速に動かざるを得ないと思いますが、よろしいのですな?」

少将の言いたいことも解る。一瞬、迷い掛けたが決断した。

「警戒するに越したことはないだろう。
 だが、交渉が決裂するにしても両代表死亡なんて事にはしたくない。出来ることはしておこう」