Top > CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_おまけ01
HTML convert time to 0.004 sec.


CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_おまけ01

Last-modified: 2010-05-01 (土) 09:37:29
 
 

おまけ「ある少年少女の事情」〜????????〜

 
 

朝日が差し込む小高い丘の上を、一人の少女が走っていた。
黒いタンクトップに、使い込んだジーンズ。方には白いショルダーバッグ。
タオルを首に巻き、薄桃色の長髪をポニーテールに結い上げた少女は息をはずませ、
一定のペースを保ったまま道を駆けていく。
少女が体力作りを始めたのは、何も今回からではない。
二年前、戦渦を世界にひろげた前大戦が終結し、この地にやってきてからすぐ始めたのだ。
ランニングだけではない。
筋力アップ
対G耐性の強化
MSの基礎知識や操縦訓練

 

エトセトラエトセトラ……。

 

一般人からすれば行き過ぎた訓練である。何故そんなことをするのか。
それを問うならば、

 

「ある人を守るため」
「自らの理想達成のため」

 

と、彼女の答え方は多種多様存在する。
つまり、彼女はこの答えを明確にするつもりは無い。この先、いつまで経っても、それは変わらない。
彼女は自身の心底を絶対に見せたりはしなかった。
二年前死んだ父にも、信頼する導師にも、共に暮らす人たちにも、……そして、あの男にでさえも。

 

「…………ふぅ」
坂の頂上。オーブの街を一望でき、柵とベンチの他何もない場所にまで走った彼女は、
腰に下げたボトルから自ら配合した栄養ドリンクを口にし、ベンチに腰かけた。
こういう時、コーディネイターとして生まれたことは便利だと思える。
一定量の運動に対して肉体に反映される効果が効率的であり、二年前はひ弱そうな極普通の少女であった彼女も、
今では引き締まったスポーティな体つきで、二年で大きく成長したことを伺わせた。
自分を求めていた人々の手を払い、この地にやって来てから、
彼女は、このオーブの国でそういう日々を過ごしていた。

 

〜それを後悔しているか?

 

そう聞かれれば、彼女は迷わず『NO!』と答えるだろう。
これこそ、自分が求めた状況であり、求める結果のためのプロセスの一つである。
不満などあろうはずもない。
彼女は、ベンチで五分ほど息抜きをすると立ち上がり、丘のある場所へと移動した。
そこには周りから目に付きづらい場所があり、ある方角を除いて死角となる。

 

電話をするには良い場所だ。

 

そこに着いた彼女は、ジーンズのポケットから携帯電話を取り出すと、ある番号をプッシュした。
コール音がスピーカーから響き、少したって、男の声が聞こえてきた。声はトーンが低く、警戒を隠していない。
「もしもし?」
「…………私ですわ。リンドグレン」
いつもの彼女を知る人間なら戸惑うはずの、彼女らしからぬ底冷えのする冷徹な声。
向こうの声の主は、恐縮したような雰囲気になった。彼女が何者かすぐに察したらしい。
「……例の件、巧く運びまして?」
「……は、はい。月の協力者を通じて、‘幻視痛’の幹部に、言われたとおり情報を流しました。
予想通り、アーモリーワンで新型Gが三機奪取されたとの報告が入っています」

 

〜ZAFT軍が陸戦、海戦、宙域戦等に特化したMSを開発し、
専用新造艦の開発にも着手している。
その地球侵攻の意思は明白である〜

 

と、地球軍中のタカ派で構成された部隊、『ファントムペイン』の幹部に流させた。
コーディネイター憎しの思想で凝り固まった彼らのことだ、十中八九行動を起こすに違いない。
そして、新型を奪われその目的がなんなのか、プラントのお偉方なら気づくはず。
ならば、あちら側も必ず動くはずである。
「‘ミネルバ’の動きはどうなっているのです?」
「幻視痛の船を追って出撃したとのことです。
船にはデュランダル議長始め、カガリ様とアスラン様も同乗なさっていると」
それは想定外であった。
そもそも、彼女からすればこの微妙な時期にプラントに顔を出すことそのものが不可解極まりなかったが、
「あら、あの子が?
……いえ、それはどうでもいいでしょう。『彼女』らしくて何よりです。
恐らくそこにいた方が安全だったのでしょうし、生き証人にちょうど良いですわ。
じゃあ、手はず通りユニウスセブン付近の『お馬鹿さん達』に連絡なさい。
『時は来たれり。同志達よ、健闘を』とでも言っておけば動くでしょう」
「はい!」

 

協力者の情報によるとユニウスセブン付近に、不穏分子が集団を形成していると一年半前に判明。
それを利用するために同志と偽り接触するまでは簡単だった。
だが、人数分のジン・HM2型や大量のフレアモーターを準備するのに一年かかり、
ファントムペインの船とZAFT戦艦の航行路上にワザとかち合うよう決行させるため、
不穏分子に決起を待つよう説得するのにも骨を折ったものだ。

 

それにしても、カガリがZAFT側と行動を共にしていることは幸運である。
このままいけば、彼女が
「ZAFTはユニウスセブン落下阻止のため努力・奔走した」
と主張しオーブ首脳部を分裂させる可能性が高まる。
ともすれば、大西洋連邦とつながり深く、
実質現オーブ政権の主導権を握るセイラン一派は彼女への圧迫を強めるだろうし、
カガリを擁護する一派は「自分」を頼りに接触してくるはずだ。

 

「……ああ、それと、ヨップさん達にも伝えておいて下さいな、
ユニウスセブン落下の数日後、孤児院と近隣の豪邸を襲えと」
「はぁ……」
「ウチの切り札君を叩き起こさなければいけませんもの。……フフフ♪」
あくまで楽しげに笑い声をあげる彼女に、電話の主も恐怖を覚えたのか、
「わ、わかりました。……あ、お送りした資料は今お手元にございますか?」
「資料? ああ、アレですか。それは一通り目を通しました。
……新しい結果でも出たのですか?」
強引に話題を変えた。
彼女は、方の白いショルダーバッグに手を当て、
「なら急いでください。私たちに時間は無いのですよ」
「はっ!」

 

そう言って、向こう側は早々通信を切った。
彼女はプーップーッと音を立てる携帯電話を握りしめたまま、肩を震わせている。
口元はゆがみ、目の中にはよどんだ光が見えていた。
「……俗人は何故こうも簡単に動いてくれるのでしょう? 本当にお馬鹿さんなのでしょうか?
デュランダル議長も、カガリさんも、アスランも、『お馬鹿さん達』も、地球の連中も、
みんな生の感情をむき出しにして必死になって……。
これでは人間に品性を求めるなんて絶望的ですわね」
彼女はクスクスと笑いながら、先程のベンチに戻り、ショルダーバッグの中から一束の書類を取りだした。
ここに来たのは、コレをじっくり読むためという理由もあった。
孤児院やあの家では人目がありすぎて読めず、自分は市外をぶらぶら出歩く訳にもいか無い。
それ故このような郊外に持ってくる必要があった。

 

『小惑星要塞についての調査報告書』

 

表紙にはそう書かれており、極秘資料である事を現す刻印が押されている。
〜要塞の大半が砂で埋もれており処理が大変だが、
 使用可能な状況にあることが判明。我らが拠点として使用したい。許可を…………
〜多数のMSを発見。
 こちらも砂で酷い状態だが、恐らく現在のMS群を上回る性能を持っていると予想される…………
〜MSとは思えぬサイズのMSも発見。「QとN」の文字は確認出来たが他は読めず。
 我らが象徴として貴女に搭乗して頂きたい。是非推考願う…………

 

等々、興味深い内容がひしめいている。
特に、高性能MSがそんな形で放置されているなど、何かあるに違いないとも思えるが、報告ではそういう気配すらないらしい。
ただ、この小惑星要塞の名前は、彼女にある種の不快感を思い起こさせる。
「『アクシズ』…………!? 何なの、この不愉快な感覚は……」
覚えのあるようで無いような感覚。不愉快でいて、何故だか面白い。
「まあ、いいですわ。それより、家に戻って地下のアレの調整をさせなくては……」
ひとまず考えることを止め、彼女は立ち上がり、天空に浮かぶ半月状の岩を見上げ、
ボソリと言い放つ。
「……もうすぐ始まるのですわ」
俗人達がお互いに血を流し、嘆き、憎み、猛り、狂乱し、憔悴し、
最終的に求めるのは、メシア。
「……人類は絶対的な指導者によって導かれなければ滅びるしかないのです」

 

だからかき乱すのだ。
人類が絶対的指導者たる自分を求めるように。

 

「フフ……、フフフ、ハハ、ハハハハ、アッハハハハハハ!!」

 

少女の高笑いは、陽光の照らし出す丘の美しい光景に反比例するかのように、
その醜い心根を映し出し周囲に響き渡っていた。

 
 

おまけ〜完〜

 
 
 

第5話 戻る 第6話A