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CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_おまけ02

Last-modified: 2010-05-01 (土) 10:00:54

機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
〜Revival of Red Comet〜

 

おまけ「ある少年少女の事情」〜アレックス・ディノ〜

 
 

俺はこんな所で何をやってるんだろう?

 

そんな事を考えながら、アレックス・ディノこと、アスラン・ザラは、
歓迎ムードなど微塵もないミネルバのブリッジの中に、デュランダルに連れられ入っていく。
「私はオーブの方々にもブリッジに入っていただこうと思っているのだが」
つくづく思っていたことだが、戦闘中のブリッジに他国の人間を入れるというのは、
いくらなんでも不用心に過ぎはしないか?
拒否の言葉を発するであろう艦長にデュランダル議長はなおも、
「君も知っての通り、代表は先の大戦で艦の指揮も執り、
数多くの戦闘を経験された方だ。
そうした視点からこの艦の戦いも見て頂こうと思ってね」
ブリッジクルーの精神を逆なでしかねない発言を重ねた。
アスランの前に立つカガリも、居心地の悪そうな表情を見せている。
自分自身、この場所はとても居心地が悪い。
艦長含め、ブリッジクルーの視線が痛い。
「わかりました。議長がそうおっしゃるのなら……」
渋々と、女艦長は言った。その顔には、
〈余計なことを言ったらここから叩き出す!〉
とデカデカと書かれているように見えた。
デュランダルは意にも介さず、二人をブリッジ後部のシートに誘い、
アスランとカガリは腰を下ろす。

 

ちょうど、MS隊が発進するところであったようだ。
「シャア・アズナブル。ザク、出るぞ!」
議長と全く同じ声音で、その性質は異なる声がブリッジに響き、
何とも奇妙な気分になる。

 

先程出会った、議長とほぼ同年代と思われ、
全身からただならぬ雰囲気を漂わす男

 
 

「……シャア・アズナブル」
ふと、その名を口にしていた。
「気になるのかね? 彼が」
「え? ああ、はい。不思議な人だと思いまして」
「不思議……か、言い得た表現だね、彼にとっては」
「……?」
この人は何が言いたいのだ?
「彼のシャア・アズナブルという名“も”、彼の本当の名ではないのだよ」
その物言いに、彼は身をこわばらせた。
デュランダルは振り返ることなく、彼を見つめているアスランに、
「『名前』とは、その存在を証明する大切な指標だ」
この場には相応しくない言葉を発するデュランダルに、ブリッジのほぼ全員が聞き耳を立てている。
カガリも、この男は何が言いたいのかと、じっと彼を見つめる。
「それを変えるということは、
並大抵の覚悟ではやってはならない行為だと、私は思っているのだが……」
ごくりと息を呑む音が、やけに大きく聞こえる。
心臓の音って、こうも耳に響いてくるものだったろうか?
ゆっくりと、デュランダルはアスランの方向に向き直って、言い放った。

 

「……君はどう思う? アレックス……いや、アスラン・ザラ君」

 
 

〜ああ、そう言うことか……

 
 

新型の整備や進水式の準備に追われる工廠を見せたのも、
機密の塊である最新鋭艦へ避難するよう言ったのも、
あまつさえその中を部外者に見せたのも、
戦闘のまっただ中のブリッジに招き入れたのも、
カガリを守り交渉する為ではなかった。いや、『二の次』だったといった方が良いのだろう。

 

(目的は……俺、か)

 

最初に顔を合わせた瞬間から、全てお見通しだったという訳か。
よくよく考えれば、彼の言葉の対象が、
カガリに対してなのか曖昧なところがたびたび見られた。

 

それは、自分に向けられたものだったのだ

 
 

「議長、それは……」
カガリが焦ったように立ちかけるが、アスランはそれを制し、
デュランダルも穏やかに声をかける。
「ご心配には及びませんよ。
私は何も彼を咎めようという腹づもりはありません、アスハ代表。
私も存じております。カナーバ前議長がどういう措置をとったかも……ね」
そう、二年前、裏切り者と糾弾された自分を、
カナーバ前議長は国外追放という形で解決した。
それを今思い出させるような発言に、
カガリは不服そうな顔をしたが、デュランダルは、
「だが私は、話すのなら、アレックスとしてでなく、
アスランとしての君と話したかったのだ。それだけのことだよ?」

 

困惑に包まれる彼をよそに、
赤髪を蓄えたオペレーターの少女が、こんな事を口にする。
「あれ、おかしいなぁ。
……艦長。アズナブル隊は、ボギーワンと距離800を切った辺りで停止しました。
ボギーワンも動く様子がありません」
その報告を聞いたアスランは、ブワッと全身の毛が逆立つような感覚に襲われ、
次の瞬間には、叫んでいた。

 

「……囮〈デコイ〉だ!」

 

彼が叫ぶのと、シャアの部隊からグリーンの信号弾が上がるのは、ほぼ同時であった。

 
 

※※※※※※

 
 

「後ろを取られたままか……、回り込めないの!?」
「無茶です! 今は迎撃が精一杯で……」
十数分後ミネルバはボギーワンに後ろを取られ、
接触するか否かギリギリの所まで追い込まれていた。
小惑星に接近したのが、幸か不幸か敵の主砲の斜線軸から逃れられているが、
ただ、こちら側は‘それだけ’という状況でしかなかった。
立ち位置から見てミネルバの火器は右半分使えないし、
主砲も射角が後ろに向かないので使えない。
機銃とミサイルが残るのみだが、これらがあちらに当たる可能性は限りなく低い。
シャアの信号によって発進していたレイ達も、
ミサイルの迎撃とMSに対応するのが精一杯で、敵艦に構っていられる状況ではなかった。
じわじわと、嬲られているかのような感覚に、
アスランの中にまた、あの沸々とした感情が甦ってくる。
「大型のミサイル接近! 数6!」
バートが悲鳴に近い声を上げ、タリアは迎撃するよう命じたが、
アスランは‘そのミサイルそのもの’に違和感を感じた。
(……この艦を狙っていない!)
根拠はない。
ただ、そう思っただけだが、二年前も幾度と無くこの予感は‘当たった’。
「……艦を今すぐ小惑星から離してください!」
「え!?」
「早く! このままでは……!?」
しかし、もう遅い。
ミサイルはミネルバに近づく前に小型のミサイル多数に分離し、
その悉くがミネルバの船体でなく、それをすり抜けて眼前の岩塊に次々と注がれる。
砕かれた細かな岩が、爆発の反動でミネルバの船体にも雨の如く降り注ぎ、
「減速! 急いで!」
タリアが大音声で命じ、第二波がブリッジの前すれすれを通過し、
クルー全員の肝が冷えた。

 

「ぬかったわね……」
タリアはそうぼやいた。鑑は二度の岩の雨によって埋まり、
動けない状況となっている。
レイ達の頑張りで保っているが、それもいつまで続くか……。
こんな状況下に置いてもこの男、ギルバート・デュランダルは冷静さを失わず、
「……この艦にはもうMSはないのか?」
とタリアに問うた。
「ええ、組上がったばかりのカオスが一体だけ。
……ですが、パイロットがいませんよ!」
無造作に答える彼女にデュランダルは、
「パイロットならいるではないか……」
ゆっくりと振り返って、彼を見つめるアスランを指し、言った。

 

「……ここに」

 
 

「…………!?」
一瞬、頭が真っ白になった。
言われたくないことを言われたような気もするし、
ずっとそう言って欲しかったというような気もする。
あまりにもゴチャゴチャしてモヤモヤした感情がアスランを襲う。
「本気ですか!? 議長、いくら何でも他国の民間人にMSを貸すなどと!
そんな事許可できるわけ無いではありませんか!」
「出来ないわけではないさ、私には議長としての義務もあれば権限もある。
なら今は、その権限を行使しても構わないだろう?」
その言葉にかみついたのは、アスランの横にいるカガリであった。
「議長! 今彼は私の護衛として……」
「護衛だからこそ、代表をお守りするためにMSに乗る、という事もありましょう」
「それは…………。……アレックス」
カガリは心配そうにアスランの顔を覗く、
「君はどうだね? ……アスラン」
デュランダルも、彼の顔を見て言う。
気が付けば、クルーの殆どが自分を見つめている。
期待、焦り、怒り。
様々な感情が入り交じったこの空間の空気を吸ったアスランは、
立ち上がってタリアに向き直り、
「……私からもお願いします。グラディス艦長」

 
 

「へぇ、MSの操縦も出来るんだ、あんた」
褐色の肌を持つメカニックの少年、ヨウラン・ケントの言葉に苦笑しつつ、
アスランはグレーの機体のコクピットに滑り込む。
「コレを着るのも久しぶりだな……」
身を包む赤いパイロットスーツをなでながら、彼はそう呟いた。
二年。短いようで、長かった期間。
スーツとコクピット、格納庫のオイルと火薬と汗のにおいは、
そんな時間すら忘れさせるほど懐かしい。
「カオス……『混沌』か、……今の俺への皮肉か」
「……アスラン」
通信機の向こうから、カガリが声をかけてくる。声が震えていた。
「……私なら大丈夫ですよ、代表」
それを聞いて、彼女は安堵の表情を浮かべる。
その向こうにいる男の姿に、少々の不気味さを感じるが、今はそれを考えるのは止めた。
今やるべきなのは、ミネルバを守ること。
そして、このグラグラと滾る何かを静めること。
それだけである。

 

「アスラン・ザラ。……カオス、発進する!」

 

二年の時を経て、英雄が再び虚空へと身を躍らせた瞬間だった。

 
 
 

おまけ〜完〜

 
 
 

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