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CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_02

Last-modified: 2010-05-01 (土) 09:04:37

「……一体全体、あの時何があったのだ?」
 シャア・アズナブルは、部屋に備え付けの端末を眺めながら、大きな溜め息をついた。
 ここは、L4に存在するコロニー、アーモリーワン。その工廠にあるザフト軍施設の一室である。
 彼が拾われてから、もう一週間が過ぎようとしていた。
 搭乗機だったサザビーは、あのハイネとかいう青年の手により隠された。
 何でも、感づかれたくない連中がいるそうで、議長とその信用する人物しか知らないところに隠したそうだ。
 そして、彼が端末で何を見ているのかというと、C.Eという世界について調べている最中である。
 不幸中の幸いと言うべきか、端末の操作法や言語などは、
 自分の知る世界とさして(と言うより全く)違わないことに彼は安堵した。
 だが、このC.Eという世界観を知るにつれ、自分がたどってきたU.C世界とだいぶ酷似していることに驚きを隠せなかった。
 ナチュラルとコーディネイターの対立という宗教戦争じみたものが発端であるということ以外は、本当にそっくりだった。
 地球側からの搾取。
 それに対抗してコロニー側が作り上げた『MS』。
 血のバレンタイン。
 ブリティッシュ作戦を彷彿とさせる、エイプリル・フール・クライシス。
 まるで、一年戦争の戦史をそのままたどっているようで、彼は少し複雑な心境であった。
「やり直せ……という事なのか? ララァ」
 何の奇跡か、全く異なる世界に飛ばされたこの状況を見ても、この世界でもう一度もがいてみろと、
 神なり悪魔なりに言われているようだ。とはいえ、今後どうするか考えねばならない。
 彼としては、同じコロニー国家であるプラントに協力したい気持ちが強いが、
 彼は自分がどう扱われるのかが気になった。
 U.C世界から来た人間が他にいるという可能性はゼロで無いにせよ、今のところは自分しかいないのだ。
 そう思って彼が立ち上がるのと、内線で、デュランダルが呼んでいるとの連絡が入ったのは、ほぼ同時のことであった。

 
 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
〜Revival of Red Comet〜
 第二話

 
 
 

「やぁ。急に呼び出してすまない。君とは是非とも話をしたかったものでね……」
 アーモリーワンの某所に存在する執務室。シャアは、部屋に備えられたソファに腰かけていた。
 当然、ネオ・ジオンの軍服も元の世界に起きっぱなしだったので、仕方なくザフトの軍服を借用している。
「話とは?」
 シャアは少し警戒しつつ答えた。サザビーももちろん絡んでいるのだろうし、
 このまま捕らえられる可能性も皆無ではないと思っていた。
「いや、たいしたことではない。君の世界について色々と聞きたくてね。こちらについてはある程度知ってくれたとは思うが………」
 未知の世界がある。あのMSがそうだと証明している以上、
 一個人としてその世界について知りたくなるのも当然と言うべきだろう。それだけならばと、
 彼はU.C 世界についてポツリ、ポツリと語っていった。

 

 宇宙に次々と作られていったコロニー。地球連邦による強制移民と搾取。
 彼の父、ジオン・ダイクンの搭乗。
 父の暗殺、そしてジオン公国の成立。
 ミノフスキー物理学の大成とU.C初のMS「ザク」の開発。
 ジオンの連邦に対する宣戦布告。
 それと同時に発動され、
 わずか一週間の間に地球圏人口の半数を死に追いやった一週間戦争。
 そして連邦軍が開発した「ガンダム」。
 「一年戦争」と呼ばれる大戦の終結後も、争いはやむことはなく、
 「デラーズ紛争」の後、
 重力に魂を引かれた者達が作り上げた「ティターンズ」。
 それに反発する者達が結集し誕生した「エゥーゴ」。
 その中で、看板として利用されたシャア。
 そして、ハマーン・カーンという、一度は地球を手に入れかけた女帝。
 地球人類に絶望して、地球を寒冷化させようとした彼。

 

 そして、それを最後まで阻止しようとした最強の戦士、アムロ・レイの存在。

 

 シャアのの口から語られる言葉一つ一つに、デュランダルは驚嘆を隠さずにはいられなかった。
 自分たちの世界と似て非なる世界。
 あまりに過激で、躍動的で、その言葉だけで脳裏にその光景が浮かんでくるようであった。
 そして、彼は確信した。この男は、本当に異世界からやって来たのだと。
 少しだけ残っていたシャアへの疑念が、全て取り払われたようだった。そして、少し複雑だった。
 目の前に座っているのは、おそらくU.C世界で屈指の犯罪者ということになるのだ。
「これは本当に信じるしかなさそうだね」
「……それにしても、何故私のような者に興味を持ったのです? この世界にもMSはあるようですが」
「そう、まさしくそれなのだよ。今日の話の本題は」
「……?」
 そう、シャアは見落としていた。歴史を眺めていただけではわからないことを。

 

〜この世界のMSは、自分の知るMSとは違うものであるということを

 

「あのサザビーの動力なんだが、核融合エンジンなのだろう?」
「普通そのはずですが」
「それは君の世界での常識でね、我々の世界のMSは、バッテリー駆動なのだよ」
「……!?」
 衝撃だった。たかだかバッテリーで、MSほどの大型兵器を動かせるとは……
 あのアナハイムの連中なら、別の意味で食いつきそうな話題である。
「核を用いたMSもあることはあるが、核分裂でね。出力だけで言えば、核融合には及びもつかん。
 それに、その核分裂を起こすのに必要なNJCの軍事利用は二年前の条約で禁止されているのだよ」
「なるほど、それでサザビーに目を付けた訳ですか」
「とはいえ、コレを見た限り、断念せざるを得ないようだがね」
 そう言ってデュランダルは数枚の紙の束をシャアの前に置いた。サザビーの解析結果である。
 あらゆる項目が「Unknown」の文字で埋め尽くされ、別の単語をを探す方が大変だ。
「………………」
「この『サザビー』は、装甲は軽くて堅い新素材という事しか分かっていない。
 それと同時に発見した『ギラ・ドーガ』とやらの装甲は、どうやらチタン系の材質だとは分かったがね。
 だがあれらをコピーしようと思っても、君の言う『ミノフスキー物理学』とやらのノウハウが存在しない以上、
 それを一から学ばねば核融合エンジンの開発も出来ない。
 できるとすれば、間接に磁気を塗布する発想と、全天周モニター・リニアシートの概念を、
 多少取り込むくらいが関の山だ。……そこで、だ」
「何です?」
「ザフトに入隊して、しばらくの間我らプラントに協力してはくれんか?
 機体は此方で用意するよ。あの機体の解析も此方としては続けたいしね」
「……何?」
「核融合エンジンとまではいかないまでも、あれは我々には宝の山でね。
 無論、それを動かすパイロットの技量もしかり。そうとは思わんかね?」
「いいのですか? 素性の知れない輩に機体を貸し与えるわけにもいかないでしょう」
「何、それに関しては、ちょっとしたテストを受けてもらうさ」
 デュランダルはにやりと笑い、彼を執務室から、アーモリーワン内にあるザフト軍基地へと連れて行った。

 
 

 ハンガーの一つに、デュランダルと、シャアの二人が続けて入って行く。
 中では、メカニック達があわただしく機体の調整を行っている。
 中では、一体の巨人が、彼を待っていたかのようにたたずんでいた。
「これは……あの時のザクか」
 彼の言うとおり、そこにあったのは一機のザクだった。
 あの時、ハイネが乗っていたものと同じ形状をしていた。
 デュランダルは、彼を最初からこれに乗せるつもりだったようで、ご丁寧に色も赤に塗られている。
「この機体は、ニューミレニアムシリーズの一機として開発されたの新鋭機、
 『ZGMF-1001・ザクファントム』。君にこの機体を預けたいと思う。
 あの機体の代わりとしては貧相かもしれないが、奇妙なものだね。
 君の世界のMSと名前も形状もそっくりとは」
 デュランダルはシャアをザクの足下へと連れ、すでに最終調整に入っていたメカニックの一人を呼び寄せた。
 デュランダルはメカニックに、シャアにこの機体の説明をするよう命じると、
 執務室へ引き返すと二人に告げて、その場を去った。
 シャアを配属させる部隊をどうするかをまだ決めていなかったらしい。
 デュランダルが去ると、まだ若い印象を持つメカニックは、機体を指さしてザクの説明を始めた。
(私の知るザクとどう違うのだ?)
 シャアは内心わくわくしていた。
「…え〜と、コホンッ。まず、この『ザクファントム』は先の大戦の終戦条約である「ユニウス条約」において、
 各国の保有MS制限が掛けられたことにより、
 より汎用性が高く高性能な機体を作ることを念頭に開発した
 『ニューミレニアムシリーズ』に分類されている機体です」
「うむ」
「この機体の最大の特徴は、あらゆる戦況に対応するため新たに搭載された
 『ウィザードシステム』にあります。……あちらを見てください」
 メカニックは格納庫の側面を指さし、シャアはそちらに目を向けた。
 壁には、あの時ハイネという青年が乗っていたザクが付けていたバックパックの他に、
 大砲を搭載したタイプと、
 大斧を装備したタイプが並べられていた。
「あれが一般的なウィザードでして、左から『ブレイズ』・『ガナー』・『スラッシュ』という名称です。
 戦艦からの出撃前にどれかを装備して戦闘することになります」
「ほぅ……」
 機体そのものを調整し、各環境に合わせて手に持つ装備を変えるザクのスタンスそのものは
 此方でもあまり変わらないことに、シャアは驚いた。
 唯一気になるといえば、ガナーとスラッシュの取り回しが悪そうなところだったが……
「乗ってみます?」
 青年は、シャアのザクを見る目をみて、さりげなくシャアに言った。
 シャアは、自分の考えが顔に出ていたことに気づくとムッとして、タラップからザクのコクピットへと滑り込む。

 
 

 シートに座ったシャアは、感慨深げ周囲を見渡した。
「懐かしさすら感じるな」
 全天周でない、前方と横にのみモニターがある構造は、一年戦争以来乗っていない。
 しかし、あの時とは違い、操縦桿も掌全体で掴むような構造となっており、
 比較的操縦しやすい造りになっていた。
〈シャアさん。どうですか? ザクの乗り心地は?〉
「ああ、結構良い機体だ。ハンガーの外でテストしたいのだが、できるか?」
〈ちょっと待ってくださいね。…………。
 あ、出来るみたいですよ。今ここ以外のハンガーには人がいないそうなので、
 好きなだけ動いてくれてもいいそうですっ〉
「分かった。では早速機体各部のロックを解いてくれ!」

 

「武装はビームライフル、ハンドグレネイドにビームアックスか。造りがシンプルで良い機体だが……」
 シャアは、何もウィザードを装備しない状態で、ハンガーとハンガーの間を縫うように走り抜けていた。最新鋭の量産MSだけあって、
 何も装備しない状態でも高いポテンシャルを発揮できるようになっているらしいが、彼としては不満であった。
 シャアが操縦桿と反転させても、こうと決めた場所を向くのが非常に遅いのだ。
 しかし、技術云々でシャアがいた当時と比べるのはあまりに酷というものだった。
(まだMSが実践投入されて二年程しか経っていないのだ。仕方あるまい)
 彼の思っていることとは裏腹に、ハンガーの入り口で塊をつくり、彼の操縦を見ている技術屋連中は、
 興奮を抑えきれないようであった。
 彼ら見れば、初めてザクに乗って、かつ高機動型ウィザードすら装備していない状態で
 あの早さをはじき出すシャアの技量は、異常としか映らなかった。

 

「ミネルバ?」
「そう。君がこれから乗ることになる艦の名前だよ」
 シャアはザクから降りて間もなく、デュランダルの所へ行くようにと言われ、
 基地内の一室に入り、デュランダルからいくつか書類を手渡された。
 彼が言うには、その書類はシャアのプラントにおける戸籍とザフト軍所属を示す証明書で、
 ミネルバにはもう手続きは済ませたらしいが、本人にもコピーを渡しておいた方が良いと判断したらしい。
 しかし、本題は別だったようである。
「で、もう一つ。君に言っておかなければならないことがあるんだ」
「……?」
 デュランダルは急に真剣な表情になり、また別の封筒から、
 数枚の写真とレポートを取り出し、シャアに手渡した。
「これは?」
「君を発見した小惑星があった宙域を、ジュール隊という部隊を派遣して撮影させたものだ」
「……と言われましても、何も映ってませんが」
 シャアの言うとおり、渡されたのは、小さな星々何も映っていない写真であった。
 これの何処が重要なのだろう?
「『もうそこには無かった』ことが、今君に言っておかなければならないことなんだよ」
 彼は、シャアを発見して後、直ちに何隻か向かわせて、
 小惑星に地球軍の船が近づかぬよう手配しておいたのだという。しかし、小惑星はなくなった。
 しかも、
「向かわせた部隊ごと消えてしまったんだ。……私としたことがしくじったよ。
 最初からハイネかジュール隊を向かわせるべきだったのに」
 デュランダルはため息をついて、部屋のソファにどっと腰を下ろす。
 しかし、シャアは彼が何故そのように落胆しているのかはわからなかった。
「あの『アクシズ』は核パルスエンジンで稼働しているはずですが……」
「無論、それならジュール隊が感知しているはずなんだ。
 それがないと言うことは、彼らは最初からプラントに戻る気も、
 アーモリーワンに向かうことも考えていなかったんだ」
 デュランダルはシャアの顔を見つめ、重々しく言った。

 

「彼らは『クライン派』だったんだよ」

 
 
 

〜第二話・完〜

 
 
 

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