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CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_02.5

Last-modified: 2010-05-01 (土) 09:08:48
 
 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
〜Revival of Red Comet〜
第2.5話

 
 
 

 男が、玄関の外に立っていた。緑色の、軍服を着た男だ。
 女が、その男の近くで、一切れの紙切れと封筒を手にして蹲り慟哭していた。
 女は、母だった。
「…………」
 少女が、そんな母の後ろ姿を物陰から見つめている。年の頃は13~4ぐらい。
 赤く、ピンと立ったくせ毛が特徴的な女の子であった。
 少女の隣には、一つ下の妹が、少女のワンピースを握りしめている。
 妹も、泣いていた。
 しかし、少女の双眸から涙がたれる事はなかった。
 悲しくないと言えば、嘘になる。むしろ、この中で一番泣きたいのは、少女本人であった。でも、
(泣いちゃ駄目……!)
 そう自分に言い聞かせていた。
 泣き崩れた母の様子と、立っている男の悲しげな表情を見ても明らかなように、
(お父さんは、もう帰って来ないんだから!)
 家族の中で笑顔を絶やすことなく、また厳しくもあった父の顔を思い出しながら、
 少女は自分が変わらねばと、強く心に誓っていた。
「お姉ちゃん……」
 妹がの手にこもる力が、いっそう強くなる。
 少女はその手を優しく握り替えし、『この子を泣かすことはしない!』と、
 心に刻み込んだ。

 
 

「ルナっ! なんでこんな所で寝てんだ!」
「ふぇっ!?」
 ルナマリア・ホークは、赤い巨人の傍らで目を覚ました。
 目の前には、すやすやと寝入っている同僚を咎めるシン・アスカと、
 その隣でいつものように仮面のような表情をしているレイ・ザ・バレルの姿がある。
 そこはアーモリーワン内の格納庫の一つ。そこには、彼女の駆るMSがあった。
 彼女が搭乗するのは、新たに開発され、ザフト主力量産MSとして配備が進められている『ミレニアムシリーズ』が一機。
 ZGMF-1000・ザクウォーリアである。
 どうやら彼女は、ザクのOSの最終調整の途中で眠ってしまったらしい。
 それにしても、
(嫌な夢見ちゃったなぁ)
 ルナは額に脂汗をかき、顔色が真っ青だった。
 二年前の、忘れようもない忌々しい記憶。
 大好きだった人が、帰ってこないと知らされた、あの日の光景。
「どうかしたのか、ルナマリア。顔色が悪いぞ?」
「え? あ、いや、何でもない!」
 レイが心配そうに彼女の顔をのぞき込んでいる。
 彼女は首を横に振ってそれを否定するが、彼女の目はいつもの明るさが消えていた。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫! で、あんた達は何でここにいるの?」
 強引に話題を切り替えた。
 心が、また負けそうになったから。
 明るく振る舞おう。そして、大切な人の前で涙は見せない。悲しませない。
 そう、決めたから。
 そうして、彼女は一度長い時間を掛けて瞬き、目を開ける。
 そこには、いつもの彼女が見せる明るさがあった。
 シンは、ルナマリアの様子にドギマギしながら、言った。
「今度は実機での模擬戦。‘あの人’の指示だって」
 あの人。そう聞いた途端、ルナは背筋に寒いものを覚える。

 

 シャア・アズナブル。
 つい数日前に、新造艦『ミネルバ』に配属されることとなったMSパイロットのことである。
 聞けば、歳は34。ザフトのMSパイロットとしてはかなり年輩にあたる。
 つまり『おっさん』だ。
 16~7の、アカデミー卒業ほやほやの者達が大半を占めているミネルバで、彼は異彩をはなつ存在だった。
 ただ、一つだけ言えるのは、
−とにかく、強い。
 そう、信じられないほどの強さだった。
 配属された初日、同期で一番血の気の多いシン・アスカが、彼に勝負を申し込んだ。
 シンのMS戦の強さ、特にタイマンの時の強さは彼女自身よく知っていたし、
 他の皆も、シンがこの艦のエースであるのは間違いない。いい勝負なのではないか? そう思った。
 しかし、それは無惨にも打ち砕かれる結果となった。
「あの時は散々だったわよねぇ、シン?」
「な!? む、蒸し返すなよっ!」
 シンは顔を真っ赤にして叫んだ。
 この時のシンさながら、あの時のインパルスも真っ赤になっていたのを、
 ルナは思い出した(画面の中で、だが)。
 しかし、今度は実際の機体を使っての模擬戦だということで、ルナやレイも参加することになったのである。

 

〜30分後

 

 4機のMSが、演習場の中で、その威容を見せつけるかのように立っていた。
「……なんで色がダブるかなぁ」
 ルナは、150mほど先に立つ赤いザクファントム(以下シャアザクと呼称)を見ながら言った。
 彼女のザクウォーリア(以下ルナザクと呼称)と、カラーが酷似しているのである。
 ボディ部分はワインレッドという選択が共通しており、彼女は一寸こめかみに力が入るのを覚えた。
「気にするな。あちらの方が若干薄い。俺は気にしないぞ」
「そうだよ。わずかな違いだろ?」
「あたしは気にするの!」
 シンとレイにそう言うも、ルナは彼らの声のトーンが若干ではあるが下がっているのに気が付いた。
 さっきの事を、気に掛けているのだとわかる。
「……アリガト」
 小さく、言った。
『3人とも、用意はいいな?』
 通信機の向こうから、ずしりとくる声が、響く。
 モニターに映るシャアザクの姿勢が、低くなる。
(始まるんだ)
 ルナは、震え出す手を押さえ込み、口の中にたまったつばを飲み込んだ。
−二年前。あの悪夢の日から、自分は変わった。
 そう信じて、今日まで必死に努力を重ね、赤服を着るまでに至った。
 その努力が、無駄ではないことを、目の前のザクを駆る男に、見せたい。
(あたしは変わったんだ!)
 シンとレイほどではないが、自分は‘力’を得た。
 あの日の母と妹と、自分のように、力によって大切なものが奪われるのを、
 お終いにするための、力を。

 

(そうだよね…………お父さん)

 
 
 

第2.5話〜完〜

 
 
 

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