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CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_05

Last-modified: 2010-05-01 (土) 09:33:32

〜人間が善悪の別を知っているという事実は、
人間が他の動物より知的に優れていることの証拠だ。
しかし人間が悪事を働くことができるという事実は、
それができない他の動物よりも道徳的に劣っていることの証拠だ〜
(マーク・トウェイン)

 
 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
〜Revival of Red Comet〜
第5話

 
 
 

自分達に対する殺意が、じわじわと距離をつめてくる。
周りからZAFTのMS達が、此方に向かって次々とやって来ていた。
ファブリスの『ウィンダム』が持つライフルから放たれる奔流は、
物陰から出たばかりの『シグー』を捉え、溶かし爆散させる。

 

“そこから出て来るということはわかっている”
……自分でも、不気味な力だと思っているが、わかってしまうのだ。

 

セリナのウィンダムは、施設破壊用のランチャー装備であたりの建物をZAFTのMSごと吹き飛ばし、穿ち、消し去っていく。
アグニは燃費効率が悪いので彼女はなるべく建造物の破壊に徹し、MSはファブリスが担当している。
「急いで! まだ敵は出てくるわよ!」
「……くそ、話が違うぞ! ここには二機分しかない!」
「落ち着け、アレン少尉。それらを運び出せればいい。君はそれに集中しろ」
「りょ、了解」
彼とセリナは、三機の『ダークダガーL』がコンテナを運び出す作業を守備する任に就いていた。

 

当初の予定では外周工事用トンネルの隔壁を破壊し脱出経路を確保した後、
ZAFT新型G三機のパーツを奪取するはずだったのだが、
すでに移送させた後だったようで、『カオス』のパーツが丸々無くなっていた。
不覚であったが、パーツを運び出す時間が短くなった分だけ、
周りに集中できる時間が増えたのはプラスとして捉えるべきだろう。
「大尉、コンテナの移送作業、完了です」
「よし、あとはここを守りきるだけだ。皆、気を抜くなよ」
その直後、地が大きく震えた。
震源は宇宙港。どうやら別働隊がうまくやったらしい。
これは、この部隊とスティング達への“合図”でもあった。
宇宙港が潰れたおかげで、外に出た瞬間別の敵に討たれるという心配をする必要はなくなった。
残るは敵方がこれを回復させる前に、スティング達が無事この穴にくるのを待つのみである。
だが、どうやら彼らが手こずっているようだ。
レーダーには、ザクとゲイツ、そして正体不明が一機、
彼らと対峙しているのが確認できたし、さらに向こうから、二機ほどザクが接近中だ。
「中尉、俺が合図したら正体不明のMSを撃て。少尉達はザクを頼む」
彼は、後方で砲塔を掲げる少女に言った。
「「「了解!」」」
「了解。……アウル、聞こえる?」
「姉ちゃん? 何!? いまそれどころじゃないんだけど」
「『時間切れ』よ。戻ってらっしゃい、穴なら開けといたから」
「でもこんな奴らに背を向けるなんて…」
「私は戻って来なさいって言ったのよ? アウル」
「わ、わかった」
アウルは悔しそうに言うと、スティングとステラにもその旨を伝えた。
割と単純で怒りっぽい部分は彼らの難点だ。
操縦センスは良いのだが…………、「玉に瑕」とはこの事を言うに違いない。

 

その時、白い閃光が向こう側の空間を支配した。

 

彼の仮面はサングラス仕様であったが、一瞬目をすぼめるほど強烈だった。
誰かが、閃光弾を使用したようだ。
そしてカオスとアビスが上空に、ガイアが犬のような形になって此方にやってくるのが見え、
白いMSと大斧を持ったザクが続いてくる。

 

彼はアンノウンMSが通るであろう軌道上にビームを放ち、
セリナはそれを合図に、白いMSに向けてアグニを放つ。
ダガーの一隊も、ザクに対しビームカービンをばらまいた。
飛んでいったビームを二機は防いだが、動きを止め、
スティング達は猛スピードで彼らの横を抜け、闇の中へ消えていった。
後はネオが何とかするはずだ。
指揮官のくせに前に出たがる彼は、今現在脱出口の近くで外敵の排除にあたっている。
そして、咄嗟に攻撃をかわした敵機を目にした彼は、

 

「あれは、“ガンダム”?」

 

思わず口にしていた言葉、‘ガンダム’……。
それは、自分にとって大切なピースの一つだったような気がした。
だが、それが何なのか全く分からないし、意識する気も今の彼にはなかった。

 

「大尉……、彼らは宇宙に出たと。私たちも」
「知っている。しかし中尉、今はそうもいかないみたいだ」
スティング達が手こずった相手が、彼らの近くに降り立った。
ガンダムが一機と、ザクが一機、後ろの空には、ゲイツと白いザクが見える。
一機はミネルバと合流するために離れていったようだ。
先ほどまでのように、攻撃を直ちに開始するわけにもいかなかった…………。

時代劇やドラマ・映画に、実力が均衡して睨み合いが続くシーンが出てくることがある。
三国志とか、スターウォーズとか、そういった類で見るアレだが、今はまさにそんな状況下にあった。
ゲイツから感じる‘闘気’は尋常ではない。隣の少女も、後ろのダガー達も緊張を隠せない様子である。
しかし彼は、自分が不思議と落ち着いていることに驚いていた。

 

(俺は‘こいつ’を知っていた!?)

 

きっと、そうに違いない。
あの機体から感じるモノの中には、懐かしい感じと、覚えのある不快感がある。
ふと、
「……貴様、アムロか?」
「……アムロ? ………!? つぅ……」
声がした。
目の前のゲイツのパイロットから、緊急救難チャンネルで呼びかけられたらしい。
覚えのある声だった。ズキリと、頭に激痛が走る。

 

『君を笑いに来た。そう言えば気が済むのだろう?』
『籠の中の鳥は、鑑賞される道具でしかない』

 

(止めろ! 止めろ! やめろ! やめろ! ヤメロ!)
「違う。俺は………、そんな名前では………、無い」
「…………!?」
何かが、自分の頭に出てこようとするのを、彼は必死に押さえつける。
気持ち悪い。不快で、吐き気がする。でも、どこか暖かくて……。

 
 

「ここから出すわけに行くかぁぁぁ!」
「……!?」
一瞬出来た隙をついて、‘ガンダム’がサーベルを片手に突っ込んできた。
あの三人と同じ年頃の、少年の声。
若々しい、闘志に溢れた気迫を浴びせられ、正気に返った彼は、
此方もサーベルを抜いてその刃を受け止めた。
バチバチと火花をあげ、機体の武骨な顔が照らされる。
「何でGを盗んだ! 答えろ!」
「意気込みは良いな、小僧。だが、まだひよっこだ!」
サーベルの角度を急に変え、‘ガンダム’からかかる力をいなしたウィンダムは、
体勢を崩したガンダムの腹部に、膝を思いきりたたき込んだ。
「うああぁぁ!」
「……ふん」
後方に飛んだ‘ガンダム’を彼は鼻で笑うと、右手のライフルで……
「ん? ……何!?」
いつの間にか、ライフルは銃身が熔け落ちていた。
前を見ると、ゲイツがそのライフルでウィンダムのそれを撃ち落としたのだと解った。
「ちぃ!」
「……! させんよ!」
サーベルを逆手に持って‘ガンダム’に斬りかかろうとしたが、
それも前に飛び込んできたゲイツによって阻まれた。
お互いでお互いの手をとりあう形になった後、
「一体どうしたというのだ、アムロ! 貴様はこんな事をする男では……」
「何だ貴様は! さっきからアムロアムロと!」
「ぐぅっ」
「その声を……、ヤメロ!」
単純な力勝負となり、相手が旧式であることが功を奏した。
パワー負けしたゲイツの間接は悲鳴を上げ、ガクッと体制が崩れる。
彼はレバーを押し込んで、ゲイツをはじき飛ばし、
「大尉!」「隊長!」
倒れ込むゲイツの向こうから、大斧を振りかぶる赤いザクが彼のウィンダムに迫った。
それを止めようと、シールドを掲げた一機のダークダガーLが、
「させるか」
「邪魔を、するなぁ!」
近づくダガーが放ったビームは、赤いザクのシールドに阻まれ、
赤いザクはその勢いを落とすことなく、大斧をダガーの頭上に振り下ろした。
ダガーはシールドを構えていたはずだった。
しかし、大斧はシールドをまるで板きれのようにかち割り、ダガーを竹を割るかのように両断していた。
「くっ、退くぞ!」
叫ぶと同時にシールドを構え、ウィンダムを後ろへ跳躍させる。
セリナは機体をさげると同時にトンネルの天井へアグニを高出力で放った。
赤いビームは天井を突き崩し、その衝撃は周りの壁を崩壊させた。
今までの戦闘によって幾度か穴が開けられていたトンネルはついに耐えられなくなったのだ。

 

残ったダガー達も下がろうとしたが、
「……!? 逃がさん」
その一瞬の隙を狙った白いザクに、
アグニに似た砲塔が放った光によって飲まれ、爆散してしまった。
「ディック!」
「迂闊だぞ少尉、止まるな!」
仲間をやられて動揺したダガーが、一瞬だけ動きを止めた。それが命取りだった。
あのゲイツが、サーベルを起動させたままシールドを投げつけたのだ。
魔物の牙のように見える刃はダガーの胸と腹をえぐり、
まだ青年だったパイロットの命を易々と刈り取った。
「アレン!」
「少尉! ちぃっ!」
ファブリスは歯噛みし、ゲイツにライフルを数発放ち牽制する。
それらは全て外したが、今はそれで良い。
「待て、アムロ!」
前進を止めざるをえないゲイツを尻目に、瓦礫は通路を塞ぎ、
モニターに映るはわずかに見える壁と残った味方のウィンダムのみとなった。
敵が瓦礫を突き破って追ってくる事を考え、重力スペースの各隔壁は全て破壊した。
「……大丈夫ですか、大尉?」
「ああ、少し頭が痛むだけだ。気にするな」
頭の痛みは止まらなかった。あのゲイツのパイロットは、その口調からも、
きっと自分と何か関係があった人物に違いないが、思い出したくない部類に入ると思えた。
心配そうに機体を寄せる少女に穏やかな声で言うと、無言のまま、彼は唇を噛みしめた。
あっという間であった。
すぐ近くにいたのに、一緒だった隊の人間を死なせてしまったのには悔しさしか出てこない。
覚悟はしていた。だが、やりきれない思いも当然ある。
『ファントムペイン』のような、特殊な任しか与えられることのない部隊では、
こうして隣にいたはずの人がふっといなくなるのは当たり前だ。
しかし、半年程度とはいえ同じ艦の中で過ごした人間がいなくなるのは、
悔しさと、無力感をヒシヒシと感じさせるには十分だ。
「大尉、中尉、ご苦労だった」
通信機越しに聞こえるネオの声も、今はむなしく彼らの耳に響くだけだった。

 
 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 
 

「……ぬかった」
シャアは、ゲイツのコクピットの中で呻いた。
咄嗟にシールドを投げつけて『GMもどき』を一機葬り、
ルナマリアとレイによって他の二機も撃破できたが、肝心の二機をとりのがしたのは痛い。
この機体の反応があまりに遅いのも一因であったが、
何よりもあまりに変わり果てていた‘あの男’に戸惑い、一瞬とはいえ呆けた自分が一番の原因だ。
自らで自分を殴り倒してやりたい気分である。

 

ただ、あの男が生きていたというのは、彼を嬉しい気持ちにさせた。

 

自分と同じ境遇の人間が出来たという安心感なのか、
それともライバルが生きていたというある種の喜びなのかは判断しかねるが。
「レイ! ここを吹っ飛ばしてくれ!」
「シン、待て」
「なんです!?」
活躍することもなく良いように翻弄され奪われ、
情けない姿を見せてしまったせいか、
頭に血が上っていたシンはシャアが止めたことにかみついた。
「すぐ熱くなるのはお前の悪い癖だ。レイ、お前もすぐ乗るんじゃない」
「…………ハイ」
「でも、このままじゃ逃げられちゃいますよ!」
「気持ちは分かるが、今は冷静になれ、シン。
今外に出て行くのは死にに行くようなものだ。無事な味方は私たち四機。
他の味方は……殆どが良くて小破か。
先程三機葬ったとはいえ、まだ二機は健在、外敵の戦力は未知数。
港はつぶれて、外には敵の母艦もいるはずだ。今は無茶は出来ん」

 

シャアはそうシンに言ったが、そう言う彼自身がこの中で一番外に出たがっていたはずだ。
追撃したい。あの男の顔に一撃見舞ってやりたいという気持ちが沸々とたぎっている。
ただ、今彼は推測を並べ、心中に滾るソレを押さえつけていた。

 

「……ガガ…………こちらミネルバ。アズナブル隊、聞こえますか? 応答願います!」
「メイリンか? どうした」
「ミネルバはこれより、所属不明艦の追撃任務に入ります。
物資の積み込み終了次第、発進となりますから今すぐ艦へ戻ってください!
シャアさんのザクはすでに収容を完了しています」
このアーモリーワンの宇宙港は広いが一つしかなく、
入り口付近が潰され戦艦や周壁の残骸で埋まってしまい、
他の船が出港できない状況と化したらしい。
MSは全てこのコロニーの中、つまりこの惨状の中にあるMSだけであり、
復旧が全く進まない。最も早く正体不明艦の追撃に当たれるのはミネルバ一隻だけとなってしまっていた、とのことだ。
「シン、聞こえただろう? 帰還するぞ」
「……………はい」
苦々しく答えるシンの言葉を背に受けて、シャアは機体をミネルバの方へ向けた。
気持ちは虚空の先に向けられたまま。

 

「無事なMSはミネルバのドックに行ってくれ!」
「危ねぇな、気を付けろ!」
「こんなスシ詰めで無茶言うんじゃねぇよ!」
ミネルバの周囲は、蜂の巣をつついたような喧噪に包まれていた。
無事なMSはシャア一行以外、攻撃を受けることの無かったエリアの物の他なく、
殆どが手足、頭部等の一部分がない状態のMS達ばかりであった。
無事だったMS達は、ミネルバの中に次々と運び込まれており、
ザクやゲイツRの本体を始め、予備パーツ、ビームライフル、マシンガン、バズーカ等、
物騒なラベルの貼られた数多くのコンテナも中に収容されていく。
入り口付近にいたシャア達も、
「ボーっと突っ立ってないで早く収容しろ!」
と、ミネルバのメカニック主任、マッド・エイブスの怒号に追われるように、
シャアは外でゲイツに膝を付かせ、シン・レイ・ルナマリアの三人は格納庫奥で機体を固定させた。

 

「お疲れ様でした、シャア隊長」
「ん? ああ、ありがとう」
シャアザク担当の若いメカニックが、ゲイツから降り立った彼にドリンクを手渡し、
「……ずいぶん派手にやられたな」
「全くです。ウチの諜報部は何やってたのやら」
外の凄惨な風景を見やり、肩をすくめるメカニックを連れ、
格納庫の中にまた足を踏み入れたシャアは、
ごった返す人の中をぬって自分のザクのもとへ歩いていく。
コンテナの搬入も八割方終了し、周りの喧噪も穏やかになりつつあった。
レイとルナマリアのザクが佇む隣にシャアのザクは収容されており、
スタッフが各々弾薬・燃料補給や各部のチェックに取りかかっている。
「ザクの調整は済んでいるのか?」
「ええ、最終チェックが済めばすぐにでも出撃できます」
「あれか」
彼のザクは、以前の『AMX-011』似の外観から、『MS-06R-2』似のものへと変わっていた。
大して変わっていないように思えるが、シャアにとってはモチベーション等で大いに意味があるのだ。
「シャアさんの注文になるべく近づけたはずです。
確か推進装置の方にも手を加えろという話でしたので、推力を三割ほど強化しました。
でも、本当にいいんですか?
稼働時間を犠牲にしたくなかったので、
プロペラントを機体の内部スペースを利用し増量させはしましたが、
各オート制御用の機器を外しましたから、機体の制御が格段に難しくなってます」
「構わん、私はこれで良い」
「……わかりました」
メカニックは少し戸惑った表情を見せそう言うと、
ザクの足下に走り最終チェックの作業に入り始める。

 

それを見送ったシャアは格納庫脇の昇降口から待機室へ向かい、
「……ふぅ」
待機室の簡易ソファの上に腰を下ろし、そこでようやく彼は一息を付いた。
艦が出発すれば今すぐにでもザクのコクピットに駆け込む心持ちだが、
それと同時に彼は先程遭遇したミッドナイトブルーのMSの事を考えていた。

 

(……何故あの男が)
あの機体色。朧気でよく見えなかったが、シールドの表面に描かれた一角獣。

 

そして、間違えようもないあのプレッシャー。

 

だが、それはあまりに汚れていた。
以前のあの男から想像も付かないほどの嫌悪と殺意。
それに、自分を「知らない」と言い切った。

 

なんらかの記憶操作をされた?
それとも意図的に無視したのか?

 

どちらにせよ、これはどう捉えるべきなのか判断に迷うところだ。
異世界に飛ばされてまで出会うという偶然。
それは奇跡? 宿命?
そういえば簡単にすませられる。だが、どうもそれでは納得がいかない。
そんな彼を深い思考の海から彼を引き上げたのは、格納庫から戻ってきたシン達であった。
何でも、本来ミネルバに配属される予定でなかった部隊までもこの船に乗り込むことになったそうで、
その顔合わせのため一度ブリーフィングルームへと集合する運びとなり、
隊長であるシャアを連れに来たというわけだ。

 

「…………若いな」
今現在、ブリーフィングルームにいる者達は恐らく、
シャアを含めたとしても、平均年齢が二十に届くギリギリのラインにいるに違いない。
自分の方が年齢的に浮いている状況である。
ZAFT宇宙戦闘母艦「ミネルバ」に所属する事になったパイロットは、以下の通りである。

 

シャア・アズナブル(♂)(33歳)      搭乗機:ザクファントム。
シン・アスカ(♂)(16歳)         搭乗機:インパルス。
レイ・ザ・バレル(♂)(不明)       搭乗機:ザクファントム。
ルナマリア・ホーク(♀)(17歳)      搭乗機:ザクウォーリア。
ショーン・ベルトット(♀)(16歳)     搭乗機:ゲイツR。
デイル・アトキンズ(♂)(18歳)      搭乗機:ゲイツR。

 

本来、この六人で組むはずであったのだが、
今回の騒動で艦が無くなり、ミネルバに搭乗することになったのが、四人いる。

 

ノエミ・ジュベール(♀)(19歳)      搭乗機:ザクウォーリア。
エステル・ドゥブレー(♀)(16歳)     搭乗機:ゲイツR
アーロン・バティスタ(♂)(17歳)     搭乗機:ゲイツR。
ルキーノ・ララサバル(♂)(16歳)     搭乗機:ゲイツR。

 

「これより我々は、我が方の開発した新型三機を奪取した所属不明艦の追撃任務に入る。
敵の戦力は戦艦一隻との情報は入っているが、MS等の詳しい部分は判明していない。
よって皆にはくれぐれも用心して欲しい。
そして、ノエミ・ジュベール。
君たちと共に戦えることを、私は同じ軍人として嬉しく思う。
各々、自らの技量を十二分に発揮して任務にあたってもらいたい。以上」
シャアは眼前に立つ少年少女達の顔を見渡し、型にはまった挨拶をすませ敬礼すると、
ノエミが彼の傍らに近づき、
「今後とも、よろしくお願いしますね。アズナブルさん」
「シャアでいい」
こういう時、階級というものがない事に若干戸惑いを覚える。
旧世紀に存在した国家『ソビエト連邦』の『赤軍』のように、
配属先の兵科・役職の肩書きのみで個人を呼称するやり方は、
階級序列の枠組みの中にいた彼にとって妙な心地だ。
『大佐』という響きが懐かしいものに聞こえてくる。
その時艦内に、発進シークエンスの開始を告げる放送が流れた。
「システムコントロール全要員に伝達。
現時点をもってLHM-BB01『ミネルバ』の識別コードは有効となった。
ミネルバ緊急発進シークエンス進行中。A55M6警報発令―――」
フワリと、身体にかかる人工重力の力が抜け、浮き上がるような感覚が身体を包みはじめる。
ローマの女神の名を冠した船が、死と炎という名のファンファーレに送られ、
漆黒の海に旅立つ瞬間であった。

 

「とんだ進水式だな……」
シャアはボソリとそう零した。

 
 
 

第5話〜完〜

 
 
 

おまけ「ある少年少女の独白 廖船瓮ぅ螢鵝Ε曄璽〜

 

私のお姉ちゃん、ルナマリア・ホークはイカレている。
これは、シンにも、レイにも、ヨウランにも、ヴィーノにも、艦長にも、副長にも、
そして、シャアさんにも言うことの出来ない、私と母だけの、家族だけの秘密。
明るくて、気さくで、艦内のムードメーカーとしてみんなに知られてるお姉ちゃんだけど、
みんなお姉ちゃんの本当の顔を知らない。

 

「あの日」が来るまでのお姉ちゃんは、今からは想像できないけど、
とても「明るい」とか、「ムードメーカー」とは程遠い人間であったことだけは断言できる。
服装はとうてい女の子と思えないセンス。
髪の毛は手入れすらせず伸ばしっぱなし、当然ボサボサで見栄えは悪い。
最低限の肌の手入れはしていたが、それでも肌色は悪く見えた。
運動は好きだった。しかし、周囲の人間とのコミュニケートは奥手にも程があり、見ていてイライラする某シンジ君のよう。
責任感や良心が薄いのか、陰湿で、暴力的で、嗜虐的で、
引っ込み思案なくせにカッとなればすぐに手や足が出る。
ただ異常なまでのファザコンで、父の前では根暗で暴力的な本性を覆い隠す。
私が知るお姉ちゃんこと、ルナマリア・ホークはそんな人間だった。

 
 

当然、友達なんているはずもなく、私もお姉ちゃん絡みで虐められたことも何度かあった。
だから、私はお姉ちゃんが大嫌いだった。
そんな姉が変わったのは、「あの日」。
父が先の戦争で戦死したと伝えられたあの日を境に、姉は「変貌」した。
伸ばしっぱなしだった髪の毛も、短く切りそろえ、
無縁と思われたミニスカートをはくようになり、
健康や顔の手入れに気を遣ったのか、顔も以前とは比べられないほど綺麗になった。
そして、明るく気さくだった父が乗り移ったかのように、
太陽のような笑顔を周囲に振りまき、陰湿で暴力的だったお姉ちゃんはなりを潜めた。

 

そう、「まるで『二人目』になったかのように」

 

お母さんは、お姉ちゃんが更生したと喜んでたけど、私はそうは思えない。
直感と言えばそれまでだけど、私の判断がもし正しければ、

 

‘アレ’はお姉ちゃんではない。ホントのお姉ちゃんじゃない。

 

だけど、それを追求しようという気にはならなかった。
本当の姉の姿ではないけれど、
以前まで暴力の対象でしかなかった私にも優しく接してくれる‘あの人’は、心地よい『家族の暖かさ』を私に与えてくれている。

 

『お姉ちゃん』

 

『メイリン』

 

そう呼び合う中に、私にとって真実と呼べるものは何もないけれど…………
「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」

 

『アッチのオネエチャン』より今の私には『コッチのオネエチャン』の方が良い。

 

「行ってらっしゃい。おねえちゃん」

 
 
 

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