Top > CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_11
HTML convert time to 0.010 sec.


CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_11

Last-modified: 2010-11-12 (金) 01:01:47

「もう一度言え! こんなことがどうしておこるんだ!」

 

ユウナ・ロマ・セイランは、緊急報告に来た事務官に怒鳴り散らし、
部屋の中を右往左往しながら、頭部をがりがりとかいた。
彼の手元には、昨晩起きた爆発事件、いや、MSによる民間施設の襲撃についての資料があり、
オーブ国防軍の調査隊が撮影した写真がいくつかのせられていた。

 

・跡形もなく破壊されたアスハ家別邸
・その残骸から見つかった使用人達の遺体→鋭利な刃物で切り裂かれた跡有り
・周囲のMSの残骸→データ無し。別勢力の新型と思われる
・MSの切断痕からみるに、高出力のサーベルで切断されている→オーブ量産MSの装備ではない

 

怒鳴りつつも、ユウナの頭の中には、先日のミネルバ戦時の言葉がもう一度浮かんできていた。
あの時、あの海域で感知された機影は、まさかこの連中だったか?
そう仮定してみると、浮かれていた自分を殴り飛ばしてやりたい気持ちに駆られたが、
今はそれどころでない情報も上がってきていた。
「MSの中に『フリーダム』がいたって話は、本当か?」
調査資料の内、アンノウンMSと戦闘を行ったのはかの『ヤキンのフリーダム』であるとの報も入っており、
ユウナはそれを虚報だと信じたかった。
モルゲンレーテで働いているマリア以外顔は見たことはないが、
アスハ家別邸に暮らす者達が、カガリの家族同然の人間達だと言うことは知っている。
もし彼らが核動力機であるフリーダムを隠し持っていたならば、
今度の連合との取引でもかなりマズイ状況にさらされることは免れまい。
「ええ、それに関してはほぼ間違いないかと思われます。
国防本部の警戒システムもフリーダムであると断定していますし」
「………………っ!」
「そ、そしてですね……。その……」
言いづらそうな顔をして、事務官が脂汗をかき始め、
「……今度は何」
「いえ、資料の次ページを見て頂けませんか」
「次のページって何が…………!?」
今度こそ、言葉を失ったと言ってよかった。
また国防本部の索敵システムのデータであったが、くっきりと示されたその名前に釘付けとなる。
『ARCH=ANGEL』
最悪だ。無言のままユウナは机に突っ伏し、手をワナワナと震わせた。
本来ならば、戦後の条約によってオーブはアークエンジェルとフリーダムを、
それぞれ連合・プラントに返還しなければならなかったのだ。
だが、その行方がわからなくなったことで、結局曖昧になっていたのである。
今更、こんな形で、よりにもよってこんな時期に発覚とは……、それも国家元首の別荘の地下からである。
「カガリになんて言うべきなのかな、こんな時」
脳天気な口調でありつつも、その目は笑っておらず、事務官は冷や汗をかきそそくさと部屋を後にする。

 

彼が部屋の戸を閉じるのと前後して、机を思いっきり殴った音が部屋に響いた。

 
 

※※※※※※※

 
 

〜太平洋海中

 

「ラクス、入るよ?」
キラ・ヤマトは、アークエンジェルの一画にあるラクスの部屋の前にやってきていた。
先日の襲撃の後、彼女の提言でアークエンジェルは出港することになったのである。
何機ものMSが爆発したのだ、オーブ国防軍がかぎつけるのも時間の問題だからと。
オーブの軍なのだから、訳を話せばわかってくれるのではないかという声もあったが彼女は封殺した。
『今のオーブがセイラン家の傀儡だというのを忘れたのですか?』
彼女の静かながらも刺し殺さんばかりの気迫に殆どの人間が押し黙ったが、
キラは薄々、そんな理由ではないのだろうと思っていた。
(フリーダムとアークエンジェルが動けばイヤでも目立つ……! まさか今出港するのって!?)
そんな疑念が、あの晩、からずっと頭の中を反芻していたのである。
先の大戦の後、フリーダムとアークエンジェル、そしてここにはないエターナル。
これらの返還要求が、連合・プラント双方から再三オーブに通知されていることは、彼も知っていた。
知っていたと言うより、知ってしまったと言うのが正しかろう。
彼は普段することすら与えられず半ばNEET同然、
やることと言えば体力維持やクラッキ(ry……もといネットサーフィン、
街に出かけてブラブラするくらいだった。
本当に偶々だが、この屋敷の地下にそれが収納されていることを発見したときは、
心底驚くと同時に、彼女がどんどんわからなくなった。

 

隠しているものの大きさや、恐ろしさが、ある種の『動物的なカン』で感じるようになったのだ。

 

他の人に話そうと思っても、彼女がどこかで聞いているかも知れない。
もしかしたら彼女に話すかも知れない。
子供達は理解できないだろうし、カガリは今国のことで手一杯。
オーブの人たちは自分のことをどう思ってるかわからない。
だから誰にも言うことが出来なかった。正直言って、今この部屋に入るのは気が引けた。

 
 

二年前自分に向けてくれた笑顔は、本心からのものだったのだろうか?
もしかしたら……

 
 

「……キラ、ですか?」
「うん、バルトフェルドさんが、会心の出来のコーヒーができたからラクスにも持って行けって」
キラは彼女の了解を得る前に、戸の開閉ボタンを押した。
それがわざとなのかうっかりなのかはわからない。
空気の抜ける音と共に彼女の部屋が露わになり、奥の端末に彼女が向き合っているのが見え、

 

キラは見たくないものを……見た。

 

この時、彼は人並み以上の視力を持っていたことを後悔した。
ハッキリと、彼女が送信を押すところを見たからである。

 

(アークエンジェルの写真!? 何で……)
「あ、ごめん、勝手に開けちゃって」
キラは内心を押し殺して彼女に声をかけ、彼女は急いで端末をSleep状態にした。
部屋のテーブルに、二つのカップとポット、それと少しのビスケットを載せたトレイを置き、
「キラ、今度はちゃんと私が良いと言ってから入ってくださいな。
着替え中だったらどうするつもりだったのです?」
穏やかな声音を崩すことなく、動じた様子すら見せず彼女は彼の元へ歩み寄る。
コーヒーカップを手に取ると、まだ湯気が立ち上るコーヒーに口を付け、
「……本当、美味しいですわ」
そう言ってほほえむ彼女の顔には、彼が抱いていた疑念を吹き飛ばす妖艶さがあり、
彼は明後日の方角へ行きかけた思考を呼び戻す。
「キラは呑まないんですの?」
彼ははっとなってカップを持つと慌ててコーヒーをすすり、
案の定、噴いた。
「……グッ!? カハッ! ゲホッゲホッ……」
「あらあら、急ぎすぎるからですわ」
やれやれと彼女はスカートのポケットからハンカチを取り出すと、
コーヒーの散ったテーブルの上を拭き取った。
「ご、ごめん」
「かまいませんわ。……何かあったんですの?
今日のキラはキラらしくありませんわ」
君のせいだ。とは心の内で呟いておいて、
「……い、いや、オーブの事でちょっと考え事」
「オーブのこと?」
キラ自身心配していることに話を持って行くことにした。
自分たちが離れた後のオーブの情勢についてである。
襲撃前カガリから直接、連合との同盟が軍事干渉せずに済む内容になりそうだと聞かされていたものの、
それがうまくいくのか心配だったのだ。
街に出かけたとき小耳に挟んだ限りでは、セイラン家の父親の評判は悪いが、
息子のユウナは一転して高評価だった。
護国の姿勢が強い事が第一に挙げられ、『氏族の出のボンボン』というイメージに反して、
父親へ平然と反抗し代表に意見する姿勢のギャップ。
カガリを全面的に支持しているし、キラ自身彼には好感を持っていたが、
やはりアスハ派の人間間では『セイラン』であるだけでダメらしい。
今回に関して言えばアスハ派も反論はあるまいが、キラが心配しているのは『自分たちの存在』だった。
「オーブが近々連合と条約を結ぶことになったでしょ?
僕たち、その邪魔になったんじゃないかな?」
「…………」
「この間カガリから聞いたんだ。
相互の住民救助を謳いつつも、実際は軍事同盟だったのを覆せそうだって。
……ラクス。僕たちが今オーブから出たのは早計だったんじゃ?」
無言でキラの言葉を聞いたラクスは、ポットから新しいコーヒーをカップに注ぐと、キラの前に差し出した。
「考えすぎですわ、キラ。私たちは内緒でオーブを出てきたんです。
あの時の部隊が生き残ってでもないかぎり、カガリさんの邪魔になるなんて、あり得ませんわ」
「そうかな?」
そうですわ。そう言ってラクスはビスケットを一口かじり、
アークエンジェル内部の与太話へと話をすり替えたため、キラはそれ以上何も言えなかった。
一時のコーヒータイムが過ぎて、トレイを片づけにキラが部屋を退出した後、
ラクスはゆっくりと端末に近づいてSleepを解いた。
添付の文字がウィンドウに浮かび上がっており、
匿名で相手に届き、逆探知されない細工が施されたメール画面だった。宛先は……

 

『Lord Jibriel』

 

「オリジナルが勘づきましたか。
 私としたことが、二年の内に気を緩めすぎましたわね。
 彼の能力を見誤るとは……」
彼女は後悔したが、もうアレの疑念がはれることは、今後の自分が取る予定から考えるに絶対無いであろう。
彼女は今度こそ端末をシャットダウンさせると、部屋の電話でなく、黒い携帯電話を取り出した。
「私です。ええ、オリジナルの替え時が近いので、予備の方も準備しておいてください。
 それとZGMF-X10Aの機動準備も……」

 
 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
〜Revival of Red Comet〜
第11話

 
 
 

〜カーペンタリア基地
先の大戦後、ジブラルタル基地と双璧を為す、ZAFTの地球上での拠点の一つだ。
表向きは軍用の施設でなく、地球側の外交官常駐地兼プラント公館なのだが、
実際はと言うと……推して知るべしだ。
シャア・アズナブルは、外装修理のためドックに入ったミネルバ近くの工廠で、
運び出されるコンテナと、替わって持ち込まれるコンテナを見やっていた。
基地に到着するとクルーには休止時間が与えられるが、
その前にこうしてやることをやっておかなければ後味が悪いと残る者もいた。
シャアもその一人だ。
数時間後、プラント行きのシャトルが飛び立つとの事だったので、
ブレイク・ザ・ワールドをおこしたテロリストの首魁、サトーを本国に送るため引き渡した。
タリア、アーサー、そして自分の三人と数名の兵士で立ち会ったが、ルナマリアは結局来なかった。
彼女の気持ちを汲んで詮索はしないことになった。
それはそうと、基地からミネルバに補給があった。
ゲイツのパーツは全て引き取ってもらい、替わってザクのパーツと、武装・シルエットの予備、
水上用のウィザードも廻してもらった。
デュランダル議長の配慮もあるだろうが、これらの搬入は嬉しいところだ。
この先海上戦にも赴く可能性があるミネルバにとって心強いことこの上ない。ただ、
「ノクルーティカ……夜光虫? 海でプランクトンにでもなれとでも言うのか、不吉な」
水上から陸地への強襲を主眼に置いて開発されたウィザードで、
本来長く水上戦を行う目的の装備ではないのだが、
先日のカーペンタリアでの戦闘で、ミネルバに廻す予定だった分の水陸両用MSが巻き込まれ破損したそうだ。
その替わりだとのことだが、もし万が一敵が水陸両用MSで海中から仕掛けてきたら
どうするつもりなのだろうか?
そんなことを考えながら、シャアは今度はミネルバにまた補充されるという別の機体の資料を、
ページをめくって読み始め、手を止めた。
「ZGMF-X23S セイバーか。パイロットは…………何?」

 
 

「ちょっと買いすぎたかな……」
シン・アスカは、ケ○タッキーの食品がたくさん詰められた袋をエレカの荷台にぶち込んだ。
基地の広間の一画を占拠した若人連中で馬鹿騒ぎしたいそうだが、その買い出しに行かされたわけだ。
「それにしても、何で俺一人に行かせるんだよ。
レイはすごい勢いでどっか行っちゃうし、ルナは部屋から出てこないし……。
メイリンはノエミ達と化粧品コーナー行っちまうし……。
あとは、『基本セットC.E.73』。
え〜さらに、
『アラーラの断片』
『コンフラックス』
『アラーラ再誕』
『ラヴニカ:ギルドの都』
『ギルドパクト』
『ディセンジョン』のBOX一個ずつぅ!? 多色で2サイクルかよ!?
このセットこの時期手に入れろって無茶だぞ! くそ、ヨウランめ!」
「あ、シン。買い物終わったの?」
「買い物終わったの? じゃないよ! 何で買い出し組のお前等が一緒に来ないんだ!」
出てきて早々、メイリンとノエミ、それと何人かの女子チームと出くわし、
シンは不機嫌になって怒鳴った。
「え〜、だってシンってばサー○ィ○ンはダメって言うし、
真っ先にマ○クに入ろうとするし、男って何で脂っこい食べ物頼むのよ、カロリーは女の子の敵なのよ!」
そーよそーよと後ろの連中も同調し、シンはたじろいだ。
(メイリンさん。スイーツも十分カロリーあると思いますが……)
結局、そのままミ○ドに連行され、女子用の食品も買わされるはめになった。
ヨウランから手渡された予算は…………尽きた。
(……もう止めてくれ、何個買う気だよ)
どんどん寂しくなっていく懐の中を見ながらため息をつくシンであったが、
ふと、耳に何かが近づいてくる音が入ってきた。
音のする方向の空を見上げると、
真紅の航空機らしき機体が基地に近づいてくるのが目に入った。
警報が鳴らないところを見ると味方のようだが、初めて見る形状だ。
「なんだあれ……!? って、え!?」
「えって、どうしたのシン……!? え、あ、ちょっとぉ!」
着陸間際になって、その航空機は変形し、一機のMSへと姿を変えた。
シンは度肝を抜かれ、買い物を終えたメイリン達をエレカに押し込み急発進させた。
ミネルバ横の、コンテナ搬入スペースまでエレカを走らせると、
すでに人が集まっているのが見える。
「ねぇ、シンってば、どうしちゃったの?」
「MSが来たんだよ! 見たこと無いやつ。ミネルバのハンガーに向かってった!」
ハンガー付近でエレカを停めて、シンは中へと駆け込んだ。
当たりだ。フェイズシフトダウンした機体が佇み、パイロットがちょうど降りてくるところだった。
アズナブル隊長の姿もある。
「隊長! 今のMSは」
「ん? シンか……」
シャアはシンに、黙って顎をしゃくって見せ、
「あいつは……!」
シンはカッと目を見開き、下りてきたパイロットの顔を見た。
アスラン・ザラ〜オーブのバカ姫の腰巾着をやってた元英雄。
シンにとってそう言う位置づけだった男が、
今こうしてZAFTのノーマルスーツを来て降りてきたのである。
シンの前に立っていたシャアが、アスランの元へと歩み寄り、
「認識番号、二八五五〇二、アスラン・ザラです。乗艦許可を」
「ミネルバMS隊隊長、シャア・アズナブルだ。初めまして、と行った方が良いのかな?」
「よしてください。……艦長は、ブリッジですか?」
「いや、艦長室だと思うが……、ついてきてくれ」
シンとメイリン達が唖然となっているのをよそに、二人はハンガー脇のエレベータへ向かい、
はっとなって彼らは踵を返して基地の方へと引き返す。
購入したチキンとビスケットは、案の定冷え切っていた。

 

それと、シンは男子連中で楽しむためのブツを購入しに商店街へ戻ったものの、
普通の商店にはなかったので、結局マニアックなホビーショップに行くこととなり、
そこでレイが『隠大将軍』のセットを購入しようとしていたところと出くわしたのは、また別のお話。

 

「君がここに来てくれるとは、正直思っていなかったよ」
エレベータの中で、アスランは話しかけられた。
MS隊隊長、シャア・アズナブル。
改めて対面してみると、声は同じでもデュランダル議長とは印象が全然違う男だとわかる。
「ええ、貴方と会ったときは、私もこうなるとは思ってませんでしたが……」
アスランはシャアの背中を見て、何故こうなったのか、思い返してみる。
強奪犯やテロリストと戦ったときの感覚に思うところがあったのもそうだし、
ユウナに背中を押されたというのもある。
デュランダル議長と話をした事も、プラントがまた核の脅威に曝されかけた事も、
かつての戦友達の言葉に感じるものがあったこともそうだ。
「でも、今こうしてここにいるんです。それ以上理由が要りますか?」
「……ははは、確かにそうだな」
「それにしても、オーブはすでに出港されてたんですね。想定はしてましたけど」
「オーブに行ったのかい? 今あの国は曖昧な状況に立っているから……」
「ええ、案の定追い払われました。形の上では」
「形の上?」
「国防本部の方から秘匿回線で言われたんです。『カーペンタリアに向かえ』と」
彼か。
シャアの脳裏に、常にヘラヘラしていながら強かさを持った青年の顔が浮かぶ。
目的の階に突いたことを知らせる音がして、アスランは気を取り直して艦長室へと向かった。
「こちらが、デュランダル議長からの命令書になります」
タリア・グラディス艦長に預かった命令書を手渡したアスランは、妙な居心地の悪さを感じていた。
恐らく、あの時勝手な発言したことや、カオスを借りて出撃した事への不満があるのだろう。
議長が居る手前大きく出ることも出来なかったはずだ。
しかし、タリアはそれ以上彼にその事をつっこむ気にはならなかったようだ。
むしろ、命令書の内容に驚いているといった方が良かった。
「貴方、この命令書に目は通してあるの?」
「いえ、自分はまだ見ておりませんが」
「けっこう面白いことが書いてあったわ。
『ミネルバは出港可能になり次第、地中海へ向かいスエズ攻略部隊を支援せよ』」
笑えない話であった。

 

東欧から西欧に至るヨーロッパは、
ブレイク・ザ・ワールドからの復興で手いっぱいだったのにもかかわらず、
今回の開戦に踏み切った事をきっかけに政府への民衆の不満に火が付いた。
元々ブルーコスモスが多かった地域だが、被害から湧き出る怒りをコーディネイターに向ける前に、
『どうして地球連合の宇宙艦隊がこの事態を予知できなかったのか』
という議論が知識層から発せられ、怒りの矛先がすり替わり、
各地域の統治機構に向けられる形となったのだ。
大西洋連邦主導というのがさらにユーラシアの住民の感情を逆撫でしたのも理由の一つである。
前大戦の時、ユーラシアの兵をアラスカで見殺しにした事が2年後の今になって
民衆の間で再び持ち上がったのである
勢いは軍部にも及び、ブルーコスモスが大半を占める大西洋寄りの主流派、
(元々ブルーコスモスでなかった者を中心として、)『敵の敵は味方』とZAFTに近づこうとする
少数派に割れているそうだ。
そんな情勢下でのユーラシア駐留軍への増援なら、宇宙から直接降下させた方が早いではないか。
「まあ、確かにスエズにある連合軍基地は、
ジブラルタルからすればのど元に匕首を突きつけられたようなものだけど、
いまのユーラシアから考えて、私たちが行く要素は皆無だと思うけど……命令じゃ仕方ないわね」
タリアはなにか考え込む表情で言うと、シャアとアスラン両名は艦長室から退出しようとした。
だが、
「……アスラン・ザラ」
タリアに呼び止められた彼は振り返り、
「何でしょう?」
「貴方の部屋はもう用意してあるけど、着いたら端末でニュースを見た方が良いわ。
新しいニュースにオーブが出てきてたから」
「……!? わかりました」
少し戸惑いながら、アスランは艦長室を後にし、廊下に立つシャアと合流した。

 
 

アスランを部屋に送り届けた後、シャアは自室に帰っていた。
シン達から、一緒に小休止はどうかと誘われていたのだが、
若人の中に年輩が一人いればかえって息抜きにならないだろうと思って辞退したのだ。
向こうは残念に思っていたようで、部屋のテーブルの上にシンが買ってきたらしいおみやげが置いてある。
「こういう事をする歳ではないんだがな。
……せっかくだ、ありがたく受け取っておくか」
どんなものであれ、好意からのもらい物は嬉しいものだ。
なにやら邪悪な容貌のドラゴンが描かれたパックを見てそう思う。
面白そうではあったが、それは今度シンやヨウラン達に聞いてみるとして、
シャアは自室の端末を立ち上げる。
「む、秘匿回線でメッセージ……デュランダル議長から?」
何件か届いている新着のメッセージの中に、デュランダル議長から届いたものが混じっていることに気づく。
他のは読む必要はないので即座に削除し、メッセージを開く。
すると……

 

「これは……クィン・マンサか!? なぜこんな!」
あり得ない。シャアは頭の中で叫んだ。

 

NZ-000、クィン・マンサ。
NZ(Neo Zion)の文字が示すとおり、ハマーン・カーンが率いていた時代のネオ・ジオンが、
当時最先端の技術ノウハウをつぎ込み完成させた、最大最強のNT用MSである。
胸部のメガ粒子砲は戦艦の主砲クラスを凌ぎ、肩にはIフィールドジェネレーターを装備。
テールバインダーはファンネルコンテナを兼ねていて、約30ものファンネルを搭載している。
そして、各部のスラスターによって、約40mもの巨体に似合わず敏捷な動きが可能である。
『動く要塞』と形容するに相応しい化け物MS。
何故、コレが映像としてここにあるのだ?
コレは、ハマーンがコア3で戦死する直前、グレミー・トトと共にアクシズの中で爆発したはずだ。
「連絡求ム……ね」
シャアはメッセージの返信ボタンを押すと、デュランダル宛にメッセージを書き始めた。

 
 

※※※※※※※

 
 

アスラン・ザラがミネルバに着任したちょうどそのころ。
東南アジアから西へ数百辧▲好螢薀鵐とインドの間、マンナール湾のあたりを、
一隻の戦艦が南に進んでいた。
『J.P.ジョーンズ』、地球軍のスペングラー級強襲揚陸艦の改修型である。
ファブリスは気分転換のため、風に当たりに甲板の上にやってきていた。
と言うのも、この間から部屋で『アッガイ』に次ぐ自立ユニット制作にいそしんでいたのだが、
盛大に失敗したのだ。
「ジェネレーターを強力にしすぎたか……くっ」
今度は二速でバランスを取りつつ、内部にジェネレーターを搭載し、
機体の真ん中に超小型ビーム砲を装備させた新たな傑作、『ビグザム』。
完成したまでは良いのだが、少し強力すぎたのだ。
ビグザムが放ったビームは、ささやかなもので、遠くのたばこに火を付ける程度になるはずだったのだ。
何処をどう間違えたのか、出力が大きすぎて壁を突き破り、その熱に耐えきれず機体は爆発。
その結果がこれである。ネオからは始末書を提出するよう言い渡された。
「もっと出力を絞って、本体のフレームと内部装置の耐熱機構を改良すれば……」
「まだ懲りてなかったのかよ、兄ぃ」
後ろから声をかけられ振り返ると、スティング・オークレーが立っていた。
彼が差し出す手の先を見ると、香ばしい香りのする平たい物体が目に映る。
「焼きたてじゃないか、ありがとう」
「いや、兄ぃにも持ってけってネオが」
どうやら、ネオ・ロアノークは、燃料補給のため立ち寄ったインドで食べたナンを
たいそう気に入ったらしい。
現地住民に作り方を教わって今現在は部屋のオーブンで試行錯誤中だ。
最初に食べたナンは……そう。形容するなら「異次元の味」だった。
「……うん、うまい。大佐もやるな。どんどん上達してってる」
「あ、忘れてた。……ほい、カレー」
スティングはポケットからスプーンと瓶詰めのカレーを取り出した。
本人は認めようとしないが、スティングはネオと同じくらいナンとカレーにはまった人間なのである。
手作りカレーをナンの上に載せてほおばりながら、潮の香りを嗅ぐ。
ものすごい贅沢ではないかと、ファブリスは思った。ここが軍艦の上でなければどれだけ良かったか。
「そういえば、この後陸地に寄るんだったな」
「ああ、ネオが言ってたよ。確か、ス……スリ……あ〜、なんだっけ」
「スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテか?」
「それそれ。そこに停泊するんだと。何でか知んねーけど」
ナンを頬張りながらスティングは海の向こうを指さした。
薄々、ファブリスは海の向こうにピリピリしたものを感じており、たぶんそれが敵なのだと思う。
きっと、寄った港から出港するとすぐに鉢合わせになるだろう。
それまでは、つかの間の休息を楽しむつもりでいた。
「そういえば、スティング。スリランカの料理はココナッツをたっぷり使ってるらしい。
ステラ達と食いに行かないか?」

 
 

第11話〜完〜

 
 

第10話 戻る 第12話