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CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_19

Last-modified: 2010-11-29 (月) 23:42:53
 
 

「よくもまぁ、人間をここまで弄くりまわしたもんです。
我ながら呆れますよ。あの連中の頭の中はどうなってるのやら……」
軍医、エトムント・フリートハイムが、怒りすら滲ませて、
タリア、シャア、ハイネらミネルバ上層部メンバーに言った。
ガイアのパイロット…シンによれば『ステラ』という名らしいが、
彼女は現在、医務室の寝台に拘束具で固定されていた。
医務室のモニターには、彼女の簡単な身体検査のデータが表示されており、
至る所が赤文字で表記されている。
「常人以上の耐G性をもたせる為なのか知りませんが、
普通の人間じゃあるはずのない物質すら血中に含まれてます」
パネルを捜査しながら、苦々しくエトムントは続ける。
画面に映し出される物質の名称や作用。
加え、今彼女の身体にそれがどれほど含まれているかも表示され、
タリア達は吐き気すら感じ始めていた。
「そして、これです。脳波パターンが奇妙でしてね、
どうやら、記憶操作も少しは受けていたようです」
「記憶を!?」
「……円滑に作戦を遂行できるようにだろう」
タリアが驚愕の声を上げ、シャアがそれに答えるように言った。
「最高のコンディションを維持できるよう、不要な記憶を排除。
もしくは、記憶を返すという条件を与えて働かせているかだろうな」
「そんな……!」
「まるで、『使ってた』人間みたいな言い方だな」
ハイネが、意地悪そうにシャアに向かって言い放ち、シャアは少し不快になったが、
ギュネイ・ガスという強化人間を使っていた以上、反論は出来なかった。
「しかし、どうする? あいつらは、この子が‘強化人間’だって知らないんだぞ?」
そして、最大の問題はそこなのだ。この強化人間の少女が、
よりにもよってシン達がディオキアの街で一緒に遊んだ少女なのだから。
シン達はというと、一言で言えば、ものすごい落ち込みようだった。
自分たちが戦場に出るきっかけになった、アーモリーワン襲撃事件、
その犯人が、自分たちと一時であれ友達だった天然系の少女だという事実。
そして、何より敵が自分たちと同じ「人間」であるのだと、
生身への実感としてのしかかっているのだ。
軍人になった以上、いつかは乗り越えなければならない壁の一つであるが、
こんな過酷な形でやってくるなどと、誰が予想しただろう?
「問題だな……」
「……彼らにゃ辛いだろうが、ハッキリと言うべきだと思うね、俺は」
ハイネは彼らにも包み隠さず、彼女が強化人間だという事実も伝えるべきだと主張。
タリアはと言うと、『人間知らない方が良い事もある』と、
隠し通して本国の医療機関に託すべきだと主張した。
そしてシャアはと言うと……
「強化……人間……?」
「ステラが!? た、隊長、嘘…ですよね?」
嘘だって言ってください。シンはそう叫びシャアの胸倉を掴んでいた。
レイがはっとなってシンを引き離したが、シャアは何も言うなとレイに無言で告げた。
そのレイ自身、相当ショックを受けているらしい、顔色が青ざめている。
メイリンとノエミも、口元を抑えて目の焦点がぶれており、
アスランも唇をかんで足下を見下ろしていた。
「辛いかも知れんが、彼女の体内物質の数値は異常だった。
上からは、ジブラルタルまで移送するようにとの命令も下っている。
……今は薬で眠らせてある、今の内に見舞いに行ってくると良い」
目の前の隊長は冷たく告げる。シンは、目の前が歪んで見える気がしていた。
彼女がガイア強奪に関わっていた事実もそう、そして今まで殺し合ってきた敵だと言うこともそうだが、
あの施設の凄惨な光景と共に、彼女がそう言う境遇の中育ってきた事実が、
ディオキアで共に時間を過ごした少女の笑顔と、どうしても重ねることが出来なかった。
シンやレイ、メイリンとアスラン達が、
ステラの見舞いに医務室へ走っていった後ろ姿をシャアは見送ると、踵を返しある箇所へと向かった。

 

※※※※※※※

 

〜ミネルバ・監房ブロック
「遅いぞ」
ハイネが、独房区の入り口で待っていた。
シャアは一言わび、ハイネが解錠した独房区へ足を踏み入れる。
ここまで、『彼女』を運び込むのは容易ではなかった。
いつもの彼女からは想像できない身体能力のおかげで、また三人怪我人が出たのである。
独房区の中で、中がよく見えるよう設計された、アクリル製の監房の前に立つと、
「起きろ、‘ルナマリア’」
「なんだ……あんたか……」
監房の中央に設置された椅子に、拘束衣を着せられ、
脚を床に固定された‘ルナマリア・ホーク’が、ジトリと此方を睨みつけていた。
目は澱み、歪みきった心底を露わにするかのようであった。
「なぁ、この服外してくんねえか? 何のプレイだよ」
「貴様が何者なのか判断してからにさせてもらおうか」
アクリルの壁脇に造られた鋼鉄製の扉から中に入ったシャアは、
‘ルナマリア’の前に立ち、その体全てを見回してみる。
髪は異変前より伸び、肩に達してボサボサになっていた。
体格も、以前よりがっしりとした印象を受ける。
「……貴様の事を少し調べさせてもらった」
シャアは携行していたケースの中から書類をいくつか取り出した。
ルナマリアの身体データである。通常のデータ、つまりシンやアスランとは違い、
極秘資料として扱われていた物を、ハイネの名義を借りて拝借してきた物だ。
「正直驚いたよ。各神経伝達組織は常人の三倍以上。
そして貴様が‘元のルナマリア’と違い身体に変化がある事にもな」
当初タリア始めシャア・ハイネも、あのルナマリアの凶暴性を見て、
彼女は二重人格者ではないかという推測は一致していた。
しかし、エトムントの出した仮説は、彼らの予想を遙かに上回るものであった。
「人間誰しも髪くれぇ伸びっだろ……」
「ほぅ、ものの数秒で10兌綽びるのが正常か?
ホルモンバランスの変化と言えば聞こえは良いが、普通は人間にそんな事は起こりえない」
ハイネも監房の中に入り、入り口を守るように背をもたれさせる。シャアとハイネは、
医務室のエトムントが出した仮説が未だに信用出来ないが、彼女から目を離さず続けた。
「貴様がそうして表に現れている間にホルモンバランスが著しく変化している。
…と言うことは、DNAレベルで彼女の体に何かが起こっている事になる」
「彼女って……俺だろうが」
「黙れ……」
シャアは黙って、‘ルナマリア’の眼前に一枚の紙をぶら下げた。
XとY、二つの文字が表示されたデータ表である。
「これは‘その体’の性染色体データだ。
専門家でも見落としかねない微妙なパターンだった。普通の身体検査で解るはずもない。
……エトムント医師には感謝しなければならんな」
‘ルナマリア’は、ニタリと不気味な笑みを浮かべる。
ハイネは、ゾッとした。狂人と言われる人間は何人か見たことがあるが、
コイツから感じる物は異常だった。
「エトムント医師が出した結論は……」
シャアは‘ルナマリア’から距離を置いて、アクリル壁の前で振り返り、言った。

 
 

「ルナマリア・ホーク。彼女……いや貴様は、『真のヒトキメラ』だ……」

 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
〜Revival of Red Comet〜
第19話

 
 

ミネルバとアークエンジェルは、一度イスタンブルの港まで共に引き返し、
上層部の指令通り、ジブラルタル基地へ向かう航路に入った。
アークエンジェルは、持ち前の潜行性能をもって、ミネルバ後下方100mを進むこととなった。
『客分』のキラ・ヤマトと傷ついたフリーダムは、ミネルバ側に半ば人質の形で乗ってもらっている。
「……だめ……死ぬの……ダメ……」
拘束具で縛られたステラの口が微かに動き、ボソリと言葉が紡がれる。
シンやレイ達が、枕元に立ちつくし、呻く彼女の顔を見つめていた。
無垢な表情で、一緒に笑い、遠ざかる自分たちを寂しげに見ていたこの少女が、
「この子が、『ガイア』のパイロットだったのね……」
ノエミが、苦しげに言った。
宇宙で直に刃を交えた相手なだけに、知らずに戦い、
殺そうとした事への妙な違和感が彼女…いや、その場にいる全員が感じていた。
「あのような所で育った子だなんて」
この中で、あの強化人間養成施設の中を見てきたシンが言う。
凄惨な殺し合いを繰り広げられた光景の中に転がる子供、
ガラスの中にぷかぷかと浮かぶ子供。その中の一人だったのかもしれない。
レイの手も、震えていた。彼は彼女に共感するような、
同情にも似た、奇妙で熱のこもった目線を注いでいる。
すると、ステラの目が動き、ゆっくりと開いていくのを、アスランが確認した。
「おい、シン!」
「……!? ステラ!」
シンが思わずしゃがみ込み、彼女の顔をのぞき込む。
ステラはゆっくりと、シン、レイ、アスラン、メイリン、ノエミと順に目で追うと、
「……しん?」
「大丈夫? 俺の事、わかる?」
「しん……会いに来た?……みんな……」
シンは、優しく彼女の頭を撫で、ステラは安心したように目を閉じ、
また眠りの世界の中へとおちていった。
アスランが、彼らを代表するようにエトムントに向き直ると、
「先生、お願いします」
「まぁ、なんとかやってみるが……、あんまり期待するなよ?」

 

シン達が医務室を後にしようとしている頃、
ひっそりと静まりかえるミネルバの監房ブロックでは、緊迫した空気が支配し、
二人の男と、一人の女が向き合っていた。
「真のヒトキメラ……ね」
ハイネが、性染色体データを見てため息を漏らす。
キメラとは、同一の個体の内部に、
異なった遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態、個体のことだ。
血液キメラなどがそうだが、人間では二卵性双生児などで存在することがある。
しかし二卵性双生児でない場合……
「恐らくルナマリア・ホークは、母親の子宮の中では双子だった。
そして双子の片割れが、分列初期に死に吸収されたのだろう」
全く話を聞く気のない‘ルナマリア’を余所に、シャアが言った。
「大方、この凶暴な奴さんはその『片割れ』だって事か?」
「……あんたらがそう言いたいならそう言えばいいだろ」
‘ルナマリア’は、怠そうに脚を前へ投げ出す。
厚かましい行動にシャアは眉をひそめる。
‘コレ’がルナマリアの兄弟筋などと、信じたくない気持ちが強かった。
「で、俺に関してもう解った訳なんだからさぁ、コレほどいてよぉ」
ルナマリアらしからぬ、破廉恥な物言いにハイネは、
「お前は黙ってろ。当分はここでその椅子に座ってることになるんだからな」
中身がどうであれ、同僚、あまつさえ客分の人間にまで暴行を加えた以上、
こうして独房に入ってもらう事になる。
元のルナマリアに戻ったのなら話は別だが、
何時この‘ルナマリア’に変化するか解らないという、
一種の爆弾を抱えた航海など出来るはずもない。
「しばらく、そこでおとなしくしていてもらおう」
シャアはそう言い残すと、ハイネを連れて独房を後にする。
〜ルナマリアの顔をした、まるっきりの別人
後方から聞こえる罵倒の言葉を聞きながら、二人はそう思った。
これ以上‘奴’と一緒にいると、頭がおかしくなりそうだった。

 

※※※※※※※

 

「研究所はともかく、ステラ・ルーシェに関しては、
『損失』として処理するようにとの閣下からの命令であります」
「了解したと、伝えてくれ……」
ネオ・ロアノークは、司令部からの命令を伝えに来た将校に、力無く答える。
その目は、強化人間メンテ用のベッドに横たわる少年達に注がれていた。
「申し訳ありません。私が彼女を遠くへ連れて行くべきでした」
「そんなに自分を責めるな、中尉」
セリナが唇を噛みしめて、呻くように言う。
ステラがいなくなってから、彼ら…特にアウルの気の落ちようは凄まじく、
先程まで、自分が取り乱したりしなければと泣き崩れていたのである。
「俺も迂闊だったよ……」
沈む二人に、連絡役の将校は元気づけようとしたのか、
「いえ、大佐は実に彼らを使いこなしておられました。
この功績はジブリール閣下も……!? ひぃっ!」
彼に悪気は無かったのだろう。それは解っているが、
姉代わりだったセリナにとって許せる台詞では無かった。
『使いこなす』? 『損失』?
スティング達を物扱いする物言いについに我慢できなくなった彼女が、
将校の胸倉を掴み挙げて壁に叩きつけていた。将校はセリナの剣幕に身をすくませたが、
「よせ!」
ネオが彼女の手を抑え、彼女は渋々将校を下ろす。
ネオ自身、損失という言い方に怒りを覚えていたが、
彼らは上からすればそう言われるしかない存在だとも理解していた。
そして、脳裏には自分たちをまるで父姉のように慕い笑顔を振りまく少女の顔が浮かぶ。
「……外してくれ」
ネオは将校にそう告げると、
将校はそそくさとメンテナンスルームを後にした。
すると、傍らの研究員が、言いづらそうに口を開く。
「大佐……彼らはどうします?」
「どういう事だ?」
「いや、戦意に影響しかねない記憶は……」
消すしかない。
それも、強化人間を『運用』する上でやる必要のある事の一つだったが……
「消す必要は無い」
「しかし……」
「彼奴を失った上、思い出まで奪っちまったら、
ステラが本当に死んじまうだろうが……」
記憶まで奪い去る必要なんて無い。
むしろ、彼女を思い出として残し続けてやった方が、彼らのためにも、
そして何より彼女への鎮魂になるだろう。
ネオは、研究員達にも退出するよう命令すると、
装置で眠る少年達の傍らに座り、表面を撫でた。
セリナは、その姿が痛々しく、思わず部屋を後にしていた。

 
 

「ダーダネルスでは辛酸を舐めましたが、
必ずやオーブの武威を天下に示してご覧に入れます、代表」
『公の場じゃないんだ、名で呼んでくれ、ユウナ』
「……わかったよ、カガリ」
ユウナ・ロマ・セイランは、南京に滞在中のカガリに、
先の戦闘の報告も兼ねた通信を行っていた。正直、顔を合わせづらいところが大きい。
ダーダネルスで負った損害は、艦船の損傷、MSの破損、そして何より犬死にしていった部下。
その事が顔に出ていたのだろう、彼女が彼の顔を見て、
『そう気落ちするな、ユウナ。彼らだって、オーブのことを想って出撃したのだからな。
お前がそうやって自分を責めれば、彼らも浮かばれまい』
「相手がZAFTだったら、まだ僕だって納得したさ。
でも、彼らを殺ったのは正規戦闘員ですらない乱入者だったんだ……」
『…………』
カガリは、答えにくそうな顔を画面で見せる。それも、当然と言えば当然だ。
乱入したテロまがいの行為をした奴が、正真正銘『ヤキンのフリーダム』ならば、
搭乗しているパイロットは十中八九カガリの『兄弟』だ。
訳知りのオーブ兵に聞かされたときは、ユウナも驚いた。
道理で、フリーダムの機影がアカツキ島で確認されたとき、カガリは動揺したわけだ……
だが、国の命運を背負ったこの出兵の決断、それに立ちふさがると言うのなら……
「フリーダムが、もし次の戦闘で現れたなら、
僕はそれが君の『兄弟』であろうとも、容赦はしないつもりだ」
ユウナは言い切った。
もしここでカガリが私情を挟むならそれもよし、はさまないなら、それもよしだ。
カガリは、私生活のかわいらしい少女から、厳格な政治家の顔に変貌する。
自分の本心を隠そうとするときに限って、彼女は険しい顔になる。

 

『私に……『兄弟』などおらん。……存分にやれ』

 

カガリは冷徹に言い残すと、一方的に通信を切った。
ユウナは、切られた画面の向こうで、
少女が泣き崩れる姿を想像して、ため息混じりに背もたれへ身を任せた。

 
 

「幸い、このエーゲ海は小島の宝庫だ。
そして出口に当たるクレタ海は、クレタ島、
そしてこのペロポネソス半島に挟まれている」
タケミカズチのブリッジで、大型パネルの地図を指し示しながらユウナは言う。
ブリッジには、オーブ軍将校はもちろんのこと、
ロアノーク大佐等地球軍将校も足を運んでいた。
「地理的条件、兵力共に此方が有利だ。
もしミネルバ一隻で来るのなら、間違いなくロードス島方面を避け、
必ずこの二島間を抜けようとするだろう。護衛が数隻いても同じだろうがな」
ユウナは確信を持って、将校等に言った。
ミネルバだけでなく、大規模な艦隊を引き連れていれば、
スエズ攻めという事で其方のルートも取る可能性はあるだろうが、
……ZAFTはこの地域の地固めはまだ万全ではない。
奴らはスエズに万全を期して望みたいはずであり、
ミネルバに護衛を付けるにせよ一、二隻程度が限度だろう。
そうであれば、なるべくスエズに近いその海域は避けて通るのは至極当然……
「陸路という可能性はありませんか?」
顔の右半分に痛々しい火傷を残した、地球軍の女将校が声を上げた。
確かにそうだ。ガルナハンを陥落させたときは、ホバリングで宙に浮いていたとのこと。
そうなれば、ギリシア半島から旧アルバニア、旧モンテネグロへと北上、
イタリア半島北部を縦断しそのまま南フランスを通過すればZAFT圏内である。
「その可能性も考えてはみたさ。確かに、南ヨーロッパを陸路で通るのも手だよ。
でも、今現在の情勢を考えると、僕が向こうの艦長なら、絶対陸路は通らないね」
ユウナはパネルの表示を変えて、今度は勢力図を表示させた。
ユーラシア東、正確には、旧東ヨーロッパ地域であるが、
この一週間で勢力図は随分混沌とした状況になっている事が解る。
南ヨーロッパと呼ばれる、地中海に面した地域の90%前後がもはやZAFT圏内。
しかし、それより以北の地域、特に旧ドイツ・フランス北方・ポーランドあたりは、
まだ大西洋とユーラシアの勢力圏と言っても良く、
反連合のデモやテロでてんやわんやしているが、
頻繁に南下の姿勢すら示す余裕がまだ連合には見られる。
「……こんな何が起こるか解らない区域を通るほど敵さんだって無謀じゃない」
その返答に納得したように、地球軍側の将校達はブリッジを後にしていく。
だがその中の、顔の上半分をバイザー状の仮面で覆った男が、含んだような目線をチラリと向けた。
ユウナは、見透かすような男の視線にグッと腹部を引き締める。
男はすぐ視線を逸らすと、ロアノーク等の後に追従していった。

 

※※※※※※※

 

「酸素マスクをくれ! くそっ! どうなってる!?」
医務室から聞こえた怒号を耳にして、レイは医務室の中に飛び込んだ。
中は、喧噪状態に陥っている。エトムント医師や看護師達が慌ただしく歩き回り、
ベッドのステラには酸素マスクが装着され、彼女は、苦しんでいた。
レイは全身の血が冷えていく感覚を覚えた。
同じだ……‘自分’と……
「ステラッ!」
彼は叫んでいた。エトムントは、冷静沈着で知られるレイがこんな表情を見せるのかと驚き、
「下がっていろ、レイ」
「彼女は……一体何が……!」
焦り彼女の傍らに近づこうとするレイを制し、レイはエトムントを見上げて言う。
「彼女に何が起きているか、私にも皆目見当が付かん。
……薬の影響がここまであるとは想像以上だ」
レイは、ゆっくりと、苦しむステラの傍らに近づいていき、そっと彼女の頬に手を添えた。
暖かな感触にステラは安心するような表情を見せ、青ざめた顔でありながら微笑む。
エトムントは、言いづらそうな顔をしてレイの後ろ姿に、
「残念だが、このままの状態が続けば、保って一週間だぞ。
何か特殊な措置をしなければ生きられない体かも知れん」
「…………!?」
レイの手が、一瞬震えた。彼の顔は見えない。
しかし、彼女への何か複雑な思いをいっそう強くしたように見える。
エトムントは、何故レイがこの少女にここまで執心するのか解らなかった。
「レイ君、どうして……」
「同じ、なんです。俺と……」
ボソリと、意味を解せぬ返答が帰ってくる。
同じ? 一体どういう事だ?
何か処置を施さないと生きられないことがか!?
その時、ステラの目が微かに開いた。
視線の先に金髪の少年がいることに気が付くと……
「ネ…オ…?」
一瞬、誰かと見間違ったのか、
彼女は拘束具に縛られながらも彼の手を握り、レイは握り返した。
「…れ…い…」
ステラ、と、優しく声をかけるレイの姿を、エトムントは苦しそうに見つめていた。

 

「艦影補足! オーブ艦隊です!」
太陽光の下に輝くエーゲ海の静寂を破ったのは、バートの叫びであった。
レイが医務室を訪れて、数十分後の事である。
位置的には、ちょうどクレタ島の北西部が見える辺りだろうか。
タリアはすぐさまコンディション・レッドの発令を宣言し、
メイリンは艦内にその旨を伝え、ミネルバのCIWSを初めとする防衛システムが起動を開始する。
「護衛艦三。地球軍は今のところ見あたりません!」
「よく探しなさい! あの地球軍空母も必ずいるわ!」
そしてタリアはブリッジを降下させ、戦闘態勢にはいると、
ハンガーから通信が入った。
『ブリッジ、敵の編成は?』
シャアだ。メイリンがバートの伝えたオーブ軍艦隊の編成を伝えると、
『……後方にも警戒した方が良い。
この辺りは島ばかりだ、隠れられる場所が多すぎる』
要するに袋のネズミ、金ヶ崎の織田信長状態だと言いたいらしい。
タリアは了承を告げると、後方索敵警戒も怠らぬようブリッジクルーに下知した。
MS隊の発進シークエンスが進められるなか、
オーブ艦隊から十数発の艦対艦ミサイルが発射され、
「MS隊発進を停止させて! 迎撃!」
CIWSの弾丸が、迫り来るミサイルを捉えた、その時だった。
「……!? 総員、耐ショック姿勢!」
タリアがそう叫ぶやいなや、ミネルバ艦内を、強烈な衝撃が襲う。
オーブが放ったのは、普通の対艦ミサイルではなかった。
戦闘ブリッジ故詳細は解らないが、炸裂弾か散弾タイプの弾頭を搭載したタイプに間違いあるまい。
「被害の程度は?」
「上面装甲貫通。CIWSの70%が沈黙!
……展望ブリッジは絶望的かと」
ブリッジメンバーはゾッとした。もし上階にいたなら、自分たちは……
そして、バートはレーダーの新たな機影に、
「三時の方向にまたもオーブ戦艦、数は三隻! ち、地球軍の空母も確認しました!」
「くっ……!」
総勢で八隻の大艦隊。それも、前左方を抑えられるような配置で……
シャアが案じたとおりの展開である…もしこれで後ろから現れたら。
タリアは背筋に寒気を覚えるが払い飛ばし、
「MS隊発進! 敵MS部隊を叩き次第、正面艦隊を突破する!
取舵三〇、トリスタンとイゾルデを起動させなかったのは不幸中の幸いか……」
ミネルバカタパルトから、インパルス、セイバー、
グフ、そしてザク達が発進し、各々ミネルバを囲うように陣取った。
「おーおー、こいつぁ酷ぇな」
ハイネは上部甲板に開けられた無数の穴を見て零す。
いつも通り、レイが甲板上に陣取っているが、CIWSが死んでいるため負担が大きく、
MS隊が離れられるような状況ではなかった。
すでに、オーブ艦隊からは十数機ものムラサメとアストレイが出撃し、
ミネルバを沈めんと向かってくる。
地球軍空母からも、ウィンダムが次々と発進し、アビスとカオスの姿も見られた。
航空機姿のMSが、次々とミネルバに迫り、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「てぇえい!」
アスランは、MS形態に変形する瞬間を狙い、ムラサメの腹部にライフルで大穴を開ける。
周囲を飛び回るムラサメの速度にアスランは内心舌を巻いていた。
先の戦闘では目にする前にフリーダムが現れたので、意識することがなかったが、
こうして相手取ってみると、手強い相手だと言うことを再認識した。
そして、横腹を突くようにカオスが彼のセイバーに襲いかかり、牽制のミサイルを放つ。
カオスは、ノエミのとすぐ見分けが付いた。
色というのもそうだが、奴の頭部はダガーの頭を応急処置として取り付けてあった。
支障が出るせいだろうが、MAに変形する気配がない。
アスランがそれらをバルカンでなぎ払うのと、
カオスがその爆風を利用し彼の目下に回り込んだのは、ほぼ同時だった。
「……くっ」
アスランは背部ビーム砲を抱えぬまま放ち、お返しにカオスへ放つ。
(こいつらも……ステラのような……)
アスランは、ふと思った。アーモリーワン強奪の時からカオスに乗っているのは、
やはり彼女と同じように、あの場所で改造された人間なのだろうか?
それは彼だけではなくシン、ノエミ達も同じで、
水中から襲いかかってきたアビスになかなか手を出せないでいる。
その隙をムラサメやアストレイが見逃すわけもなく、対空防御能力が低下したミネルバに迫る。
しかし、それらを打ち崩す存在が、ミネルバの甲板上で立ち回っていた。
レイが鬼神の様な戦いぶりを見せていたのである。
ミネルバに一切触らせないという気迫をひしひしと感じさせ、
これまでの戦い以上に、大口径ビーム砲を振り回し、
ムラサメの挙動を『予測』しているかのような、異様に正確な射撃であった。
「すご……」
「レイの奴、何であんな……」
シンとノエミは一瞬レイの動きに見ほれていたが、
アビスが海面に姿を現すのを見て現実に引き戻される。
「うおっ!」
アビスの胸部ビーム砲とシールドの三連装ビーム砲が火を噴き、
シンは咄嗟に推進装置の電源を切り、
「悪い、ノエミ!」
「え、何……きゃあ!」
カオスを上空めがけ突き飛ばした。
その瞬間、二機の間をビームが掠めて行き、二人は背筋を凍らせた。
そして、意識を逸らした事への羞恥心が沸き上がる。
そうだ、戦場で何を考えているのだ……!
シンはアビスを正面に捉えると、ライフルを放つと同時に接近していった。

 

※※※※※※※

 

「タケミカズチ、クラミツハ、ソコワタツミ、アメノサギリへ通達しろ。
……ミネルバを西へ抜けさせる。奴らの南に回り込め」
ユウナ・ロマ・セイランはタケミカズチブリッジクルーに下知し、
だんだん遠巻きになりつつあるアストレイ・ムラサメ部隊に歯噛みした。
ミネルバの防衛戦は、穴があるようでいてそうではないという、
一見わかりづらい分厚さを持っている。ユウナはそう感じていた。
円で例えると、三段階に別れている。
外輪、内輪、そしてミネルバ本体の三つとしよう。

 

外輪、つまり一番外側の二機は、インパルスとセイバー。
奴らはカオスとアビスにかかり切りだと一見して思えるが、実際はそうではない。
あの二機の注意を引きつつも、あの二機のパイロットは確実に、
外輪に近づくムラサメやアストレイにも攻撃を仕掛けているのだ。
しているいえども牽制程度だったが、それで十分だった。

 

内輪、インパルス・セイバーとミネルバの間を守るのは、
オレンジの新型、そして漆黒のカオスの二機である。
カオスははまだ近づいてくるMS部隊に攻撃を仕掛けるぐらいだが、新型の動きは驚くほど洗練されていた。
流れるようにこちらの攻撃を避け、抜いた剣先は確実にウィンダムやアストレイの胴体・武装を切り落とし、
ビームが機体を蜂巣にしていく。確か、オレンジのカラーは……
(ハイネ・ヴェステンフルスか!)
思い当たるエースの名が頭をよぎり、ユウナの頬に汗が一筋垂れる。
デュランダルは、ミネルバをエースばかりを乗せた切り札にするつもりか!

 

そして、ミネルバ甲板上の白いザクが関門と言えた。
外輪・内輪を突破しても、最終的に奴を打ち倒さなければミネルバを沈められない。
何より、その正確な射撃は脅威だった。
別働隊として、高々度からの急降下を計画させていたババ一尉の小隊へも、
上空へ砲塔を向け最大収束で超長距離射撃を敢行するという、
鬼が乗り移ったかのような戦いぶりだ。
まるで、手を触れさせたくない『何か』が、ミネルバに乗っているかのようで……

 

そして何より、一番厄介なのは遊撃手として戦場を飛び回る『真紅のザク』である。
背後に目があるかの如く悉くの攻撃をかわし、行く先を見通したかのような攻撃で、
確実にムラサメ達の身体を捉える。味方への援護射撃も的確で、
背後に近づいたムラサメや、コンビ・トリオで斬りかかるアストレイとウィンダムへ、
絶妙なタイミングでバズーカやビームを打ち込むのだ。
「奴が頭領だな……」
しばらく観察した上で、ユウナはそう結論づける。
防衛が手堅くなる瞬間には、必ずあの赤いザクがいるのだ。
まず第一に、奴を何としてでも落とす必要がある。
そう考えた彼は、アマギ三佐に指揮権を委譲し、J.P.ジョーンズのロアノーク大佐にも、
出撃要請の電文を送ると自らはタケミカズチのハンガーへと降りていった。

 
 

「やはり要は『奴』か……」
ファブリスは、ウィンダムのコクピットに滑り込むと、
ブリッジの管制員に、ジェットストライカーを装備させるようにと通信で言い、
機動シークエンスを済ませていく。
目の前でハッチが開いて行くのを見て、彼は今まで以上に緊張している事に気が付いた。
例えるならば、待ち望んだ相手との試合が始まる寸前の、スポーツ選手のような緊張感だ。
自分のことを、少しずつ、それも朧気だが思い出したからだろうか?
フラウ、カイ、ハヤト、リュウさん、ミライさん、セイラさん、スレッガーさん。
カミーユ、ベルトーチカ、アストナージ、チェーン…………ブライト。
名前と顔だけで、どういう関係だったかはまだハッキリと思い出せていない。
しかし、自分にとって大切な人たちだったと言うこと。
そして、シャア・アズナブル。恐らく、本当の自分を知っている唯一の男。
「楽しみだ……!
ファブリス・アナトール・ロワリエ。ウィンダム、行きます!」
紺と白のツートンカラーのウィンダムが、勢いよく上空へと飛び立ち、ミネルバへ機体を向けた。
後続はブラウンのウィンダムと、ノーマルウィンダム部隊である。
「ミネルバはオーブ軍と君ら後続隊に任せるぞ。
……私はあの赤い奴を片づけてから向かう!」
「「「 了解! 」」」
後続のウィンダムを率いてセリナのウィンダムが上昇し、
飛び交う火線の上を飛んでいく。
それを見やった彼は、味方の援護に励む赤いザクへと突っ込んだ。
こちらの姿を視認した奴は、バズーカを此方に向けて放つ。
それを右へかわそうとした彼の意表を突くかのように、バズーカの弾が拡散した。
ジェットストライカーの左翼先端が削られ、バランスが少し崩れたが、
とっさにコンソールをいじってバランスを調整し、姿勢を修正した。
「……くっ! やるっ!」
スラスターがやられていない事を知った彼は、
ジェットストライカーの誇る多大な推進力を生かし、赤いザクの左方へそのまま回り込み、
「落ちろっ!」
ライフルを胴めがけて放った。
ビームの光条は、奴の左腰部のトマホークの柄を焼き落としたに過ぎず、
奴は残った部分を掴むと此方へ投げつけ、それを切り払った瞬間、
視線の先のグゥルに奴の姿はいなかった。
「奴は……? ……上か!」
アラートが鳴る前に、彼は頭上から殺気を感じ、サーベルを抜いて突きだしていた。
赤いザクは投げつけると同時にジャンプして、彼の頭上を取っていたのである。
向こうもサーベルを突き出していた。
お互いの刃がすれ違い、奴の刃はウィンダムの局部…腰の前のあたりをえぐり、
こちらのサーベルは奴の右肩シールドの接合部を切り飛ばしていた。
奴はし損じると察するや目下に移動させていたグゥルに飛び乗ると、
ファブリスの視界から消える。彼が後ろを振り向くと、
離れかけていたミネルバに再び近づこうとしているようだ。
「させるか……」
あそこには、セリナ等が突貫攻撃を仕掛けようとしている。奴は、恐らくそれを察したに違いない。
サーベルを腰に収納し直すと、ライフルを再び手にとって、
ファブリスは奴の後ろ姿めがけビームを放ちつつ追いかけていった。
その時ふと、海中のアビスから奇妙な通信が入る。
『兄ぃ! 姉ちゃん達を早くミネルバから離脱させて!』
「どうした、アウル」
『海中にまだ‘いやがった’んだよ!』
悲鳴に近い声でアウルがそう叫ぶのと、ミネルバ周囲の海面から、
空中に無数のミサイルが出てくるのは、ほぼ同時であった。

 

※※※※※※※

 

アスラン・ザラは、爆煙を上げて海面へ落ちていくムラサメや、
搭乗者を焼かれて、力無く落ちていくアストレイらを見やり、
怒りとも似つかぬ複雑な思いを抱いていた。……嫌だとか、そういう感情も、あったかもしれない。
(カガリ、ユウナ……お前等は……)
沸々とした『何か』がこみ上げてくる。
グリップを握る力が、自然と強くなる。ムラサメを撃つときの躊躇いが、どんどん薄れていく。
サーベルを振るう時の迷いが、どんどん消えていく。
……何故、オーブは戦場に出てきた! カガリは何で!
……誰でもいい。自分を殴って正気に戻してくれ!
同居してぶつかり合う激情と冷静さ。
二つの感情が擦れ合って、アスランはどちらが本音なのかも判別できなかった。
斬りかかってきたムラサメの攻撃を避け、彼は無防備な脚部を小脇に抱えると、
「おぉあああ!」
怒りに身を任せて振り回し、別のムラサメめがけてぶちかます。
ぶつかり合った互いの装甲はひしゃげ、至る所が折れて、彼はためらわず背部ビーム砲を構え二機を吹き飛ばす。
心中に溜まり続けていたモノが、一気に噴きだしてくるようだ。
「次ぃ……!」
アスランはセイバーをMA形態に変形させると、
インパルスの脇を抜けようとするアストレイの小隊めがけ突進し、
ライフル、前方に向いた背部ビーム砲とバルカン。三種をたたき込み、焼き払い蜂巣にする。
「アスラン!?」
シンは、MA形態からMS形態に切り替えながら、
すり抜け様アストレイを両断するセイバーの動きに驚いた。
カオスがセイバーにしつこく追いすがっているが、見るからにカオスが押されている気がした。
この間は互角、しかもアスランがすこし気圧されている印象があったのに……
そのまま、セイバーはオーブ軍旗艦“タケミカズチ”が浮かぶ方向へ進んでいく。
第二波として出撃したと思われる中隊規模のムラサメ隊の戦闘に、マゼンダのムラサメがいた。
左ショルダーの紋章を目にしたアスランは、
「ユウナぁあああ!」
「……!? アスランか!」
MA形態のまま周囲のムラサメの火線をかいくぐり、マゼンダのムラサメの眼前へ迫り、
サーベルを思いっきりユウナのムラサメに横薙ぎで斬りつけた。
アスランの援護に廻ったシンが、二人とムラサメ隊の間に割り込み、
二人の間を邪魔する者は一時の間いなくなる。
アスランのそれをユウナはサーベルで受け止め、鍔迫り合いのまま、
「よくもお前はっ! カガリに何を言った!」
「……そう言うことかい。
アスラン、僕はね…何も…言っちゃあいない!」
サーベルを押し戻し、ムラサメはセイバーと距離を取る。
「嘘を言うな。……彼女が、そう簡単に連合と手を組むなんて…あり得ない」
「そう言いたければそう言っていればいいさ。
そうなってしまえば、君は所詮その程度の男だ」
「何……!?」
「だってそうだろう? 君は、‘カガリが大西洋連邦との条約締結に同意するはずがない’
…勝手にそう決めつけて、‘彼女が考えを変える’なんて欠片も考えていない」
ムラサメが、サーベルを突きつけるようにセイバーへ向けた。
「それは違う! 彼女なら、こうしてオーブ軍が出てくることは避けるはずで……」
「それが決めつけだと言ってるんだ。……彼女なんだよ。
出兵してZAFTを叩いて、オーブの武威を全世界に知らしめるよう命じたのは」
「なん……だと……」
アスランは視界がぐらついた。全てのものが、暗くなって、ねじ曲がっていくような……
あのカガリが? 父を理想とし、オーブをよりよい国へと志したあのカガリが?
アスランは、自分は何のためにここにいて、
何のために戦って来たか、混乱した頭の中で考えていた。
「『アスラン・ザラとして、外からオーブを守れるように……』
確かに、その言葉を僕もカガリも守れなかった。けど戦争も政治だよ、アスラン。
カガリはただそれに気が付いただけだ。
国のために、オーブの力を示して誰からも攻められない国を造ろうとね」
ユウナは脇構えの姿勢を取ると、自然と腹に力を込めていた。
「だから今戦うというのか?」
「無論。カガリがそう決めたのなら、それを支えるのが僕の運命だ」
「そうか……」
不思議と、アスランは冷静さを取りもどしていった。
ユウナへの怒りも、カガリへの憤りも雲散し、目の前の男へ敬意を抱いてすらいる。
彼は、自らの信ずる道を進んでいるだけ。その目指すところは同じだ。
それが自分と違えているからといって、何を怒ることがあろうか。

 

二機の間に不思議な緊張感が流れ始める。
しかしそれはすぐさま、二人の予期せぬ形で破られることとなる。

 

『アスランさん!』 『ユウナ様!』
アスランにはメイリン。ユウナにはアマギ三佐からの緊急通信である。
二人は間に入られた事への苛立ちを感じつつも、相手の焦燥ぶりが尋常ではなく、
『ミネルバ上空の警戒を! “フリーダム”です!』
『すぐタケミカズチに戻ってください!
オーブ軍後続艦隊が全滅したとの情報が……』
「「 何っ!? 」」

 
 

第19話〜完〜

 
 

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