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CCA-Seed_787◆7fKQwZckPA氏_37.5

Last-modified: 2012-08-22 (水) 02:03:07
 
 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF
〜Revival of Red Comet〜
第37.5話

 
 
 

〜ゼダンの門宙域〜

 

アムロ・レイは、目下に見える黄色い巨体から感じる、強大なプレッシャーに気圧された。

 

 〜《 ジ・O 》〜

 

グリプス戦役においてティターンズに荷担した《木製船団》の長にして、
一つの都市と言って良い規模の巨大な船を統率しながら、
手ずから環境に適応したMSを設計し、操縦の技量もずば抜けて高かったという
『稀代の天才 パプテマス・シロッコ』
そんな彼が自分用に設計したとされたMSの姿が、そこにはあった。
アムロは、彼とは面識がない。
エゥーゴやカラバの人間を通して得た情報や終戦後の情報誌、
そういった一般的な情報源から得た程度のものを知るだけだ。
この全身を押しつぶすような圧迫感を、彼も持っていたのかと想像するのみである。
クワトロ・バジーナと当時名乗っていたシャアは、どう思うのだろう?
「ラクス・クライン……プラントの歌姫、か」
そして弟だと思っていた青年、スティングの仇だ。
また、脳裏にかのベルリンの光景が浮かんでくる。
緑色の怪物、『クィン・マンサ』の巨大な陰が。
ベルリンを火の海にして、ステラを殺したMS、アクシズが生み出した最大最悪の機動兵器が。
おそらく奴も彼女の差し金であろうと、今のアムロには予想できた。
クィン・マンサの矛先は自分たち地球軍のみならず、
ZAFT所属のMSにまで向いていたことは記憶に新しい。
その途方もない暴れぶりを抑えられずに、双方に甚大な被害が出た事も。
それを一番喜んだのは当時、表舞台で言えば東アジアとオーブであった。
両国は大西洋連邦に背き弾劾する口実が出来たと共に、
これから起きるであろう民衆の厭戦機運の高鳴りからなる、
怒りの矛先を自分たちから逸らさせかつ、勝者側にすり寄る絶好のタイミングであった。
そう言って差し支えあるまい。……が、最も得をしたのは誰だ?
「何が歌姫だ、破廉恥な奴っ」
アムロは、躊躇することなく引き金を引いた。当たらない、という事だけはわかった。
想像通りジ・Oは、全身のアポジモータを駆使して巨体をひねり、
νガンダムのライフルが放つ紅色の奔流をすれすれでかわしたのである。
「聞いていた以上に器用なMSだな」
シャアの乗機、サザビーの設計思想も、おそらくこのジ・Oを参考にしたとしか思えない。
ハマーン・カーンの起こした大乱において、一時はピークに達した大型MSの開発から、
本来のMSが持つ機動性やシンプルさを主眼に置き換えた開発転換。
その結果誕生した、ジェガンやギラ・ドーガ、サザビーとνガンダム。
そこまで考えた段階で、ゾッとした。今になって、シロッコという男の才がわかったとは。
黄色いダルマは、アムロの放ったビームをかわすと、
その一瞬を突き斬りかかってきたSフリーダムの一閃を、受け止めた。
『ラクス・クライン! 貴様…よくもスティングをっ!』
『ほぅ、私に“貴様”…ですか。
 随分と図太い性格になりましたわね、キラ・ヤマト』
通信機五ごしに、男女の言葉が聞こえてくる。奇妙だった。
キラの事情を知っているが故に、むしろ彼女の反応が何を意味するのか図りかねた。
元は先の大戦でストライクとフリーダム、2機のガンダムタイプを駆り、
縦横無尽に戦場を駆け抜けた(実態はどうであれ)優秀なパイロットだった。
彼女はその大戦で、フリーダムを駆る彼を率いた人間の筈である。
それに年頃も近く、噂程度の情報では親密だったとも聞く。それなのに……
親しみも愛着も無い、飽きた玩具を見るような乾いたものを感じる。
アムロはそう思った。キラに、もはや興味を抱く事は無いという、確信。
彼女のために闘った二年前を、何もかも否定しかなぐり捨てるかのような、
人を道具としてしか見なしてこなかった女の、性根。
ここで殺さねばならないと、決心した。
サーベルを抜く。ブゥーンという音が、耳にまで届いてくる。
射撃は、おそらくより彼女を追いつめねば撃っても無駄だと思った。
つばぜり合いを展開していたSフリーダムの背後に、青い何かが現れる。
「…よし、良いぞキラ」
ファンネルであった。それらはまるでキラの手足の如く、ジ・Oの躯に狙いを定めた。
だが、奴の方が一歩早かった。一瞬サーベルの出力を弱め、ボディを逸らし、
勢いはそのままにSフリーダムの姿勢が崩れた。その瞬間を、狙った。
そして瞬間的にスラスターを稼働させると、体当たりを敢行した。
『うわぁっ!』
ジ・Oの巨体から繰り出された衝撃はSフリーダムを押し込んだ。
キラはとっさにファンネルからビームを放つものの、それらはすべて宙を切る。
ジ・Oが、にやりと笑ったように見えた。サーベルを、奴は突き出した。
「させるものかっ!」
νガンダムを加速させ、そのサーベルを左方へ弾く。
右手で突きだした奴はサーベルを流され、そのまま自分に向かってくる。
いなした事に、抗う様子を見せなかった理由は、すぐに分かった。
「……っぐぅ」
ショルダータックルに似た構図になった。
ジ・Oの右肩がνガンダムの腰にヒットして、姿勢が崩れる。
スロットルを駆使して瞬時に体勢を立て直すも、アムロの視線には黄色い光の帯が2本見えた。
とっさに、ファンネルを射出していた。それらが宙に放たれるまでは良かった。
ジ・Oはサーベルを2本、いつの間にか抜き放っており、
νガンダムをなますにせんと斬りかかってくる。ライフルを切り落とされた。
すぐに、焼けた銃身を投げ捨てる。ただし、ジ・Oにである。
小さな爆発がおこり、一瞬だけ目が眩んだ。
「今だ、ファンネル!」
アムロは予備のサーベルラックもあらかじめロックを解除すると、
サーベルを構えて様子を見た。奴相手に、無闇に切り込めない。
キラも体勢を立て直すと、ファンネルを射出しライフルを二丁構える。
ジ・Oは、キラに斬りかかってきた。
アムロとキラは同時に、ファンネルに攻撃命令を出した。
十何個ものユニットから、ビームが放たれる。
ライフルほどではないが、MSを焼き焦がすにはちょうど良いものが、十数本。
さすがにこれは避けられまい、とは思わなかった。慢心は死につながる。
ましてや相手は怪物、ラクス・クラインである。
想像通り、ラクスはジ・Oを巧みに操って、ビームを全て避けきった。
必要最小限、無駄な動きが一切無い見事な操縦である。
だがどんな動きにも必ず隙はある。二人は、逃さなかった。
「おおおぉぉっ!」
まずはアムロが、斬りかかった。ジ・Oがちょうど背を向けていた、その時を狙った。
背後まで100m、まだ振り向かない。50mになっても、奴はこっちをむいていない。
サーベルを、横一文字に一閃させた。

 

  ギャーンッ!

 

火花が散った。奴は後ろ手にサーベルを持ち、これを防いだのだ。
『貴方はつくづく、厄介な人ですね……“アムロ・レイ”!』
「なっ!?」
何故名を知っている!? と一瞬混乱したが、すぐさま離れた。
今動きを止めては為らないと思ったからである。
『おああぁぁ!』
『ちっ、またキラですか。往生際の悪い!』
キラはサーベルを2本を操って、ジ・Oのボディを捕らえんと斬りかかる。
右から切り上げ、左から切り下げ、突き、払い、ねじり込もうとする。
それを左へ払い、右へ流し、受け止め、いなし、はじき返す。
チャンバラ映画を見ているかのような気になるが、
途中からジ・Oの様子が変化していくことに気付く。
まるで、切り上げるタイミングを探っているかのようだ。
アムロもその応酬に入り込んだ。卑怯な行いだとは思わない。
時間が無いという事に、気が付いたのである。彼はサーベルを、突きだした。
『……ふふっ♪』
「……!? しまったっ!」
背中を狙ったつもりだった。
だがジ・Oは少し身を逸らし脇を掠めさせると、νガンダムのマニピュレータを掴んだ。
そしてそのまま、前へと突きだした。
『えっ!?』
Sフリーダムの左肩をそれは突き通していた。バチバチッと火花が飛んだのが見える。
「くそっ!」
だが同様はしなかった。
幸いサーベルは左肩のアーマーを溶かした程度で、間接部を融解させてはいなかった。
アムロはペダルを踏み、機体を上昇させた。
そのままキラは、サーベルを前に突き出すも、ジ・Oの体制は整っていた。
ラクスはサーベルを受け止めるや、ジ・Oのサーベルの出力を上げた。
だんだんと、サーベルのビームが、Sフリーダムのサーベルを浸食していくのがわかる。
『…!?』
『甘いですわね、キラ。…ここで死になさい!』
まるで執着したものを突き放すかのような物言いだった。
ジ・Oのサーベルが、とうとうSフリーダムのサーベルの出力部を融解させた。
しかし、そのままSフリーダムに斬りかからせるほど、時間は与えない。
「とああぁっ!」
アムロは下方へ思い切り、サーベルを投げつけた。
サーベルを握っていたジ・Oの右前腕部に、突き立った。
『ちぃっ…』
ラクスは、ジ・Oを後退させ始めた。
と思った時すでに、踵を返し隕石群の中へ滑り込んでいた。
「ちぃっ!」
アムロもフィンファンネルを展開し、ジ・Oを追い始める。
キラも、悪鬼の形相で隕石を蹴り、ダミーを焼き払いながら、追う。
右腕は、殴りつけるのに使った。
先程サーベルが焼かれたとき、指も焼けたようだった。
十数個のファンネルと、2機のガンダムタイプに追われながらも、
黄色いダルマはそれらが発するビームの弾道を読み切って、かわす、かわす、かわす。
アムロも内心舌を巻かざるを得なかった。尋常でない回避能力である。
_____________________________________
WARNING! WARNING! WARNING! WARNING! WARNING! WARNING! WARNING! WARNING!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
突然、モニタに危険を表すマークが浮かぶ。頭上を、見上げてみた。
「グワダンか……」
クィン・マンサの収容が終わり、反撃の余裕ができたのだろうか。
下部ハッチから、MSがワラワラと出撃してくる。
ガザD、ガルスJなど、まるで骨董市に来たような気すらした。
『……ギギ……』
歯ぎしりする音が、聞こえる。キラだ。
「ここはこらえろ、キラ。
 数が多すぎる。ここは退こう、この2機なら振り切れる」
『でも……! ……畜生っ!』
ガァンと何かを打ち付ける音が聞こえる。気持ちはよくわかる。
ここが戦場で、かつ不利な状況に一転した情勢でなければ、
自分もそうやってパネルを殴っていたかも知れない。
ガザD部隊のビームの雨、ガルスJのミサイルの応酬。
それらを切り払いながら、アムロとキラは悔しさを噛み締め後退を開始した。
そしてふと、思った事がある。
(ネオ達が一体どうしているんだろう?)
という疑問である。彼らは別ルートを進んでいった。
しかし順調にいったとすればグワダンも唯では済まなかった筈だが、
あの艦に目だった損傷は見受けられなかった。だとすれば……
(クィン・マンサとは別の何かに止められたと考えるが妥当、か)
胸騒ぎがする。彼らは無事だと思いたいが、
あの怪物が如き女が何を隠し球にしているのか全く検討がつかない。
時折応戦し、一機一機宇宙の藻くずに変えながら、不安を払拭できぬまま隕石群れを脱する。

 

すると、前方に3機のMSの機影が移った。
『…フレイっ! 無事だった!?』と、キラが叫んだ。
MSは、デルタプラス、リ・ガズィカスタム、スタークジェガンで、それぞれ損傷していた。
スタークジェガンはアーマー部が何カ所か熔けていたし、
リ・ガズィカスタムもウイングが片方熔けており、
デルタプラスは肩のアーマーが無くなっていた。
νガンダムの腕部に、デルタプラスが接触する。
『すまない、取り逃がした』
『わかってます、妨害にあったのでしょう?』
『やっぱりお見通しか、やれやれ……。
 信じがたいが、“ジャスティス”に襲われた。
 恐ろしい程の近接性能だった、ひやりとしたよ』
ネオ・ロアノークは、こんな時でも口調は軽かった。
が、言葉の底には同様が見え隠れしている。アムロ自身も、そうだ。
ここまで組織、個人に不気味さを感じたのは初めてだった。
そして、空虚感と敗北感が残った。
〜スティングはもう戻ってこない〜という残酷な現実。
ベルリンの時のむなしさが、蘇ってくる。少し、休みたいと思った。
だが世界は、彼らを追いつめずにはいられないらしかった。
ゼダンの門に帰還した彼らにもたらされた一報は、
ロゴス残党の将兵全員を、ゆうに震撼させるものであったのは間違いない。

 
 

〜ZAFT&東アジア&オーブ混成宇宙軍艦隊、進発〜

 
 

第37.5話〜完〜

 
 

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