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CCA-Seed_98 ◆TSElPlu4zM氏_第01話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 17:35:00

 薄暗い部屋の中、壮年の男性がとある報告書に目を通していた。
男性の名はパトリック・ザラ。ザフト国防委員長の肩書きを持っていた。
パトリックは報告書を閉じると呟く。
「うむ、新型5機中4機を確保か。作戦は完璧で無いにしても成功と言ったところだな……」
 コーヒーを流し込み喉を潤すと次の報告書を開く。
その数枚紙をめくった処で手が止まる。そのページには角突きの白と黒の機体の写真が載っていた。
OSや装甲素材等を見ても信じる事の出来ない事実を突きつける。性質の悪い事にその機体は核で稼動するのだ。
ヘリオポリスで奪取した機体に似ている箇所も見受けられる。
「まさかナチュラルどもが造った機体ではあるまい。恐らくはオーブか……。中立といいながら良くやる。
だがこの機体、我々にとっては脅威でしかないな。我々も着手せねばならないか……」
 少なくともザフトは膠着状態だった戦況をヘリオポリスを襲撃すると言う形でを動かしてしまった。
動き始めてしまった以上止める事は出来ないのだ。
眉間に皺を寄せ報告書を捲り続け、ふと手を止め目を見張る。そこにはその機体の近くで気を失っていた男の報告が書かれていた。
内容を見れば男の言ってる事は気が触れたようにしか見えないが、精神状態は至ってまともらしい。
男の名前はシャア・アズナブル。ネオ・ジオンと言うコロニー国家の総帥らしいがパトリックはそのような国は聞いた事も無かったし、事実、この世界には無い国なのだ。
 報告書の最後に、シャア・アズナブルがザフトの代表との接見を望んでいると記されていた。パトリックは睨むように報告書の最後の一文を見続ける。
有りもしない考えが浮かんでは来たが到底認めたくはない子供じみた考えだった。しかし、あの写真の機体は何よりもパトリックに事実を突きつける。
パトリックは内線コールのスイッチを押した。
「報告書にあったシャア・アズナブルに会うぞ。場所は確保した機体のハンガーでいい。時間は4時間後。準備をしておけ。それから私は少し仮眠を取る」
一気に捲くし立て伝えると、椅子の背もたれに背中を預け目を閉じる。
「何にせよ、今は我々の手にあるのだ。事実はそれからでも遅くはない……」
パトリックは亡くなった妻の顔を想い浮かべると短い眠りへと落ちていった。

 
 

 暗いモビルスーツデッキに明かりが灯る。そこには人間の10倍以上あるだろう白と黒の鉄の巨人がたたずんでいた。
手錠に掛けられた金髪の男は鉄の巨人を見上げながら呟いた。
「何の因果か、まさかガンダムにここで会うとはな……。この現実を信じたくないものだ」
 金髪の男、シャア・アズナブルは思い返す。アクシズを地球に落とそうとした。半ば成功したはずなのだ。
しかし、何か暖かい光に包まれ気を失った。気がついてみれば拘束され尋問を受けていた。作戦が成功したのかさえ定かではない。
数少ない情報を尋問中の相手の言葉から読み取り整理していった結果、この世界は前の世界とは違うと言う事と目の前には隕石作戦を阻止しに来た好敵手であり、
この機体のパイロットであるアムロ・レイはここのコロニーにはいないと言う言う事実を導き出した。
最初は馬鹿げた事だと思ったが何よりも尋問中の痛みはシャアに全てが事実である事を自覚させたのだ。
 シャアがνガンダムを見上げていると扉の開く音がした。シャアよりも年上であろう男性が歩いてシャアの目の前で歩みを止めた言った。
「シャア・アズナブルか?私はプラント最高評議会国防委員長パトリック・ザラだ」
「私はネオ・ジオン総帥、シャア・アズナブルだ。それよりもこの手錠を何とかしてほしい物だな」
 シャアは微かに笑みを浮かべながら言った。
「この世界にはネオ・ジオンなどと言う国は無い事は自覚しているのか?少なくとも無い以上は自覚してほしいものだ」
「嫌でも自覚させられたさ。あの程度の尋問で済んだのはありがたいが尊重くらいしてくれてもよかろう」
「それは私にはどうでもいい話だ。シャア・アズナブル、質問に答えろ。さもなくばこの場で殺されても文句は言えぬ立場なのだぞ」
 パトリックは鼻にも掛けぬ様子でシャアに言い放った。
「身はわきまえているつもりだ。そこであのモビルスーツを含め取引をしたい。悪い話ではないと思うのだが」
 シャアはそう言って周りの護衛の兵士を見回した。パトリックは少し考えた様子で兵士達にここから離れるよう指示を出す。
兵士達が出ていったところでパトリックはハンドガンをシャアに向け言った。
「何もしなければ撃ちはしない。護衛がいないのだ、かまわんだろう」

 
 

 シャアは頷き、交渉を始めた。
「まずは私の身の安全の保障だな。あとはあのモビルスーツ『νガンダム』を調べるのはかまわないが最終的には返してほしい」
「返すだと?貴様のモビルスーツなのか?」
「ああ、私の機体だ。少なくともニュータイプ専用機であなた方では使いこなせる機体ではない」
 シャアは言った。本来はアムロ・レイの機体なのだが、まずはここで生きる場所を確保する為だ。
「ニュータイプ専用機?ニュータイプとはなんだ?」
 パトリックは初めて聞いた言葉に反応を示した。シャアは交渉の確信を得た。あとはこのパトリック・ザラの興味を強く引けばいいのだ。
「人類の革新さ。そのために我々は地球に隕石を落としたのだからな」
「地球に隕石だと……。貴様の世界での話しか?それを信じろと言うのか!」
 パトリック・ザラは驚きを隠せなかった。連合のユニウス・セブンへの核攻撃をも上回る大罪を犯した男を目の前にしているのだ。
報告書を読んだ時に思った子供じみた考えが頭をよぎる。
「私は嘘は言ってはいない。それがあなたの知らない世界の事だとしても。見返りとしてだが、私があなたに仕えようと思うのだが……、どうかな?
私と『νガンダム』があれば新型の開発や武装関連、私の世界の知識をお教えする事が出来るのだが。それに私はパイロットとしても優秀なのですよ、ザラ国防委員長」
 シャアは臆もなく言った。
 パトリックは言葉に詰まる。シャア・アズナブルと言う男は軍のトップでもある自分に臆も無くこれだけの事を言うのだ。
これだけの確信めいた自信は自分にもありえないだろう。隕石落としの話を聞いたからかもしれないがシャアの行為に恐怖を感じた。
しかし、そのシャアが自分に仕えると言っている。未知数の『νガンダム』機体を携えて。パトリックの心にに欲望が芽生える。
亡き妻を死に追いやったナチュラルをこの世界から一掃すると言うパトリック自身の願いが。もしかしたら、この男なら可能にするかもしれないと……。
「分かった……。裏切らんように監視はつけるぞ。そうだな、階級は……」
「前の世界では軍属としては大佐でした」
「うむ、シャア・アズナブル、プラント最高評議会国防委員長パトリック・ザラの名において大佐として職務にあたれ。追って命令あるまで待機とする」
 パトリックはシャアを見据えながら言う。期待を込めて。そして踵を返し扉へと向かって歩きだした。
「はっ!シャア・アズナブルは待機に入ります!」
 シャアは手錠をされている為、敬礼はせずに踵を揃え背筋を伸ばし言った。
 パトリックがモビルスーツデッキから出て行った後、手錠が外され兵士達に敬礼をされる。
シャアはνガンダムを見上げ呟く。「また私は戦火を広げようとしている……。アムロ、貴様もこの世界にいるなら私を止めに来い」と。