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CCA-Seed_98 ◆TSElPlu4zM氏_第02話

Last-modified: 2008-05-16 (金) 15:41:56

 永遠に続く宇宙の中で青く輝く星に、今、まさに惨事が訪れようとしていた。
惨事を防ぐべく、全長20メートルはあるであろうモビルスーツと呼ばれる鉄の巨人達が地球へ落ちようとしている巨大な隕石――アクシズに取り付き、それを押し返そうと背中のテールノズルから幾重のも光の尾を伸ばしている。その数は遥かに50はあるだろう。
「だめだ、摩擦熱とオーバーロードで自爆するだけだぞ!」
 その中の一機、νガンダムと言われる機体に乗っていたアムロ・レイがコックピットの中で吼えた。
だが、無常にも次々と爆走しては弾き飛ばされて行くモビルスーツ達。
「もう、いいんだっ!みんな、やめろっ!」
 アムロは周りの無事な機体に呼びかける。過信ではないがアムロは自ら設計したガンダムに自信を持っていた。
しかし、それ以上に、この馬鹿げた戦いに他人を巻き込んでいるのは間違いだと思っていた。
「離れろっ!ガンダムの力は――」
 アムロの想いが通じたかのように、νガンダムを中心にしてアクシズの側面に暖かい光の幕が広がってゆく。
それは、奇跡としか言いようがなかった。この様な機能はνガンダムにはない。あるとすれば未知数の素材サイコフレームが原因だろう。
その光の幕に弾かれる様に無事なモビルスーツ達が次々と跳ね飛ばされ、残るはνガンダムだけとなった。
いや、正確にはアムロだけではない。先程まで戦っていた相手、シャア・アズナブルの脱出ポッドがアクシズに減り込むように残っていた。
「そうか――しかし、この暖かさを持った人間が地球さえ破壊するんだ、それを解るんだよアムロ!」
 今まさに、この状況を作り出したシャアが人類への絶望の言葉を吐く。
「わかっているよ!だから、世界に人の心の光を見せなきゃならないんだろう!」
 アムロはシャア程の絶望を人類に持ち合わせていなかった。
むしろ、人類はどんな事でも乗り越えられると希望の方が大きかったのだ。
「ふんっ!そう言う男にしてはクェスに冷たかったな、ええっ!」
 シャアは小ばかにするようにアムロに言った。
「俺はマシーンじゃない!クェスの父親代わりなど出来ない!だからか、貴様はクェスをマシーンとして扱って――」
 アムロは操縦桿を握りなおし、怒るように言った。
クェスと言う少女は人間としてもニュータイプとして純粋すぎた。純粋すぎたゆえにシャアに理想を求めそれを利用されたのだ。
「そうか、クェスは父親を求めていたのか。それで――それを私は迷惑に感じ取ってクェスをマシーンにしたんだな」
 シャアはクェスの希望すら毛嫌いし、戦う事しか与えなかった己に気づき、呻いた。
「貴様程の男がなんて器量の小さいっ!」
「ララア・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!そのララアを殺したお前に言えた事か!」
 シャアは図星をつかれ怒りにまかせ怒鳴った。そう、1年戦争の時にアムロがララアを殺してなければ
シャアは今のようにはなってなかったのかもしれないのだから。
「お母さん?ララアが――」
 アムロにとってもララアは大切な女性だった。その女性を間違いとは言え自らの手で殺してしまったのだから。
あの過ちがなければと思うが、それは起きてしまった以上、過去を無かった事になど出来ない。
だからこそ、同じ過ちを繰り返さない為にもララア・スンと言う名の重力から抜け出す為に――。
 そう思った時、アムロは激しくも暖かい光に包まれる。この世界の人類のにとっては奇跡の光が見えた日の事であった。

 
 

 目の前には暗闇とモニター類の一部に以上を示す赤いランプが映る。
アムロは、はっきりしない意識を振り払うかの様に頭を数回振り、額を拭った。
「気を失っていたのか?」
 360度に広がる風景を見渡す。モニター類は死んではいない。ただ、あるのは暗い宇宙空間と輝く星々だった。
気を失うまでに起こった事を思い出しながらも、計器類のチェックを始める。
「それにしてもアクシズはどうなったんだ?もしや、俺はアクシズと共に流されたのか……?」
 もしも、アクシズ落下の阻止に失敗したなら、νガンダムごと今頃は灰になっていただろう。
アムロは作戦の成功を確信しながらも、己の置かれている状況把握に努める。
νガンダム自体はダメージは残っているが、まだ戦える状態にはあったが、まともな手持ちの武器がない。
今、強襲されれば落とされてもおかしくはない。機体にある武器は左腕にマウントされたスペアのビームサーベルと頭部のバルカンのみ。
スペアのサーベルはシャアとの戦闘で故障しているらしく修理が必要なようだし、バルカンも5秒も撃てば弾切れになる弾数しか残っていない。
推進剤は、まだ持ちそうだが長距離の移動は無理なようだ。
「とにかく現在位置を確認するべきだな。太陽、月、ベガ、北極星――」
 アムロはモニターで星を見ながら打ち込みを行っていった。
「衛星軌道とは、だいぶ流されたな……。通信系も異常はないし、救難用シグナルも死んではいない。
ここまで流されるだけの時間を考えれば助けが来ていてもおかしくはないんだが……。もしやブライト、落とされてはいないだろうな?」
 アムロは付き合いのながい友人兼、上官の事を思った。そして敵だった男、シャアの事も気になるのだが状況が状況だけに、のんびりもしてはいられない。
 このような状況は1年戦争最後以来だった。1年戦争当時はコア・ファイターで無事に脱出する事に成功し、その直後に仲間達を見つける事が出来たが、
今回はそう言う状況にない。完全な孤立無援。いずれは救助も来る確率もあるが、消耗しきったロンド・ベルにパイロット1人を捜す余力があるとも思えなかった。
サバイバルキットの中の食料は数日分しかないし、酸素が無くなれば、待っているのは死なのだから。
こうして生きている以上は最善を尽くすべきだ。とにかく、酸素が無くなる前に安全な場所にたどり着かなければならない。
運のいい事にコロニーまで自力で移動できる範囲に流されたのは幸いな事だった。
 アムロは改めてモニターを通して外を見回す。フィン・ファンネルが1基、νガンダムと同様に流されて来ていた。
「尽いてるな」
 戦場で使用してしまえば破壊される確立も高く、一度使用したファンネルを使用する事は稀であろう。
νガンダムのフィン・ファンネルは本来なら機体への回収機能があるのだが、機体共々、調整が不十分な為にフィン・ファンネルは一度放出すれば機体に戻る事ない。
しかも、戦場から遠く流された、この場所にνガンダムを守るかのようについてきたのだと想像すると、幸運だとも思えた。
それに、例え壊れていようが回収可能な物は回収して修理して仕えるようにすれば良いし、今の状況ならば、
少しでも生き延びる手立てのある物が落ちていればありがたい。他にも無いかと、レーダーで熱量、金属反応で周りを調べる。
幸いにもミノフスキー粒子の影響も少なくレーダーは良好だった。広い範囲ではないが、いくつかの金属反応を確認する事が出来た。
 「時間を掛け過ぎれば死に繋がるが、多少の余裕はある。現状を考えれば仕方がないな」
 アムロは早速とばかりにフィン・ファンネルを回収すると反応のあったポイントに移動を開始した。

 
 

 アムロは暗闇の中の星とは別に明らかに人工物であろう円柱形のコロニーを見つけた。
軽くペダルを踏み、νガンダムのテールノズルに火が灯るとコロニーに向かって滑る様に動き出した。
すぐにアムロはペダルと操縦桿をニュートラルに戻し慣性運動での移動に切り替える。ここまで来れば安心しても良いだろう。
人道上も含め、コロニー側も余程の事がなければ受け入れを拒否する事はないはずだ。
「要らぬ気苦労だったな」
 アムロは笑いながらνガンダムの右手に持たせたビーム・マシンガンに目を向けた。
レーダーで反応があったポイントにはそう大した物があったわけではなかった。
収穫はネオ・ジオンのモビルスーツが使用していたビーム・マシンガンに弾薬に酸素タンクと推進剤が少々。
無事に帰還する事を目的とした今の現状ならば充分過ぎる程の装備かもしれない。
 ただ、気になった事があった。見慣れないモビルスーツや戦闘機の残骸があった事だ。極秘裏に新型のテストを行っていた宙域の可能性もあり、
おかしくはない事ではある。アムロ自身が乗っているνガンダムでさえ、世間の目にはまだ映ってはいない新型の機体なのだから。

 

 アムロはコロニーに対して通信を開く為にスイッチに指を伸ばそうとすると、嫌な感覚が流れ込んできた。
「なんだ、この感じは……」
 堪らず、通信回線のスイッチを押すとコロニー側からの通信が流れて来た。
『――接近中のザフト艦に通告する。貴艦の行動はわが国との条約に大きく違反するものである。ただちに停船されたし――』
 そう聞こえた数秒後に明らかなジャミング音が聞こえてきたのだ。
「何があったっ!?こちら地球連邦軍、ロンド・ベル所属、アムロ・レイ!どうした、応答せよ!」
 何事かと通信を送るが返答は無く、ジャミング音が続く。すぐにペダルを一杯に踏み込み、νガンダムをコロニーへと向かわせたが、かなりの距離がある。
時間的に間に合わない可能性も十分にあるが、見過ごす事は出来ない。
「このコロニーに何が起こったんだ?ジオンの残党か、それともシャアに合わせて他のコロニーが決起でもしたって言うのか!」
 通信では『ザフト艦』と言っていたが、アムロの記憶ではザフトと呼ばれるコロニーも国家も聞いた事はない。
もしや、レジスタンス組織かと思ったが通信で条約と聞こえてきたのだから確実に国家レベルの組織なのだろう。
少なくともロンド・ベルはネオ・ジオンだけを追っていたわけではない。新しい国家やコロニー組織が出来ればアムロの耳にも入ってきているはずなのだ。
ネオ・ジオンとやり合ったばかりで、ロンド・ベルは消耗し戦うだけの戦力はなく、連邦軍自体のコロニー落としの影響で混乱している。
それを狙ったかの様な最悪なタイミングでの謎の組織『ザフト』のコロニー強襲。これでは、また人は同じ過ちを繰り返す事になる。なんとしても止めなければ――。
「ちっ、間に合ってくれっ!」
 アムロは焦燥に駆られ操縦桿を強く握りしめた。