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CCA-Seed_98 ◆TSElPlu4zM氏_第11話

Last-modified: 2009-01-03 (土) 00:46:16

 プラント船籍の民間船シルバーウインドの脱出ポットを回収したアークエンジェルは、ユニウスセブンの宙域を最大船速で離脱し、再び月基地に向かってサイレント・ランを行っていた。
 アークエンジェルの一室で、脱出ポットから出て来た少女を前にマリュー、ナタル、ムウの三人が難しい顔をして立っている。

 

「ポットを拾っていただいて、ありがとうございました。私はラクス・クラインですわ」
「ハロ!ラクス、ハロー」
「これは友達のハロです」
「ハロハロ。オモエモナー。ハロハロ?」

 

 ラクスと名乗る少女はニコニコと自己紹介を済ますと、手に載せたピンク色のハロを、目の前のマリュー達に紹介した。その緊張感のないラクスの姿に、マリュー達、三人は気が抜けるような思いだった。

 

「……ハァ」
「……やれやれ。クラインねぇー。彼のプラント現最高評議会議長も、シーゲル・クラインといったが……」
「……あっ……」

 

 マリューが溜息を吐くと、ムウも呆れながら思い出したように口を開いた。
 ムウの言葉に、マリューも思い出したように驚いたような顔をすると、ラクスも同様に父の名が出て来た事を驚いているようだった。

 

「あら〜?シーゲル・クラインは父ですわぁ。御存知ですの?」
「……おっ!……ハァ……」
「……」
「……あっ!……ハァ……。そんな方が、どうしてこんなところに?」

 

 ラクスののほほんとした口調に、ムウもナタルも「この少女は状況を読めないのか」とばかりにも呆れ返る。
 マリューもムウ達と同様に溜息を吐き、ラクスに聞き返すと、ラクスは民間船がユニウスセブン宙域に来ていた理由を話し始めた。

 

「私、ユニウスセブンの追悼慰霊の為の事前調査に来ておりましたの。そうしましたら、地球軍の船と、私共の船が出会ってしまいまして……。臨検するとおっしゃるので、お請けしたのですが……」

 

 ラクスは、そこで一度言葉を止めると、悲しそうな表情を浮かべ、再び口を開く。

 

「地球軍の方々には、私共の船の目的が、どうやらお気に障られたようで……些細ないさかいから、船内は酷い揉め事になってしまいましたの。そうしましたら、私は周りの者達にポットで脱出させられたのですわ」
「なんてことを……」
「そう言う事だったのか……」

 

 ムウとマリューはユーラシア所属艦がシルバーウインドを攻撃した経緯を聞き、苦々しい顔をした。

 

「あの後、地球軍の方々も、お気を沈めて静めて下さっていれば良いのですが……」
「……」

 

 シルバーウインドの生き残りが誰もいないのを知らないラクスは、まだ船が無事と思い船員達の心配を口にすると、真実を知るマリュー達は言葉を失う。

 

 その様子をキラとアムロは、壁にもたれ掛かりながら話を聞いていた。

 

「……アムロさん、どうしたんですか?」
「ああ、キラ。いや……」
「あのラクスって子、知ってるんですか?」

 

 難しそうな表情をしているアムロにキラが心配そうに声をかけると、アムロは組んでいた片手を顎に持っていき、言葉を濁すように答える。

「……いや、俺が知ってるのは、彼女が手に載せているハロの方さ」
「……ハロ?……あの子が持っているピンク色のロボットですか?」

 

 キラは、アムロの言葉に目線をハロに向け、不思議そうな表情をする。
 アムロは親指と人差し指で自分の顎先を挟むようになぞると、眉を顰めながら言葉を続ける。

 

「……俺は、あれと色や大きさは違うが、同じ物を一年戦争前に作った事がある」
「えっ!それって……」
「何の因果か知らないが、キラ同様、あの子も引き合ったと言う事なのかもしれない……」
「……あの子が……」

 

 アムロの言葉にキラは驚きながら、ラクスの顔を見つめる。
 ラクスの表情は泣きそうな顔になっていて、どうやらマリューによって、シルバーウインドの生存者がいない事を告げられたようだった。
 キラは同じコーディネイターとして、悲しそうな表情をするラクスを見るのは忍びなかった。
 マリューはやり切れない表情をしながら、ラクスが落ち着くのを待ち、キラに声をかけた。

 

「ねえ、キラ君。ラクスさんを部屋に送ってもらえるかしら?」
「あっ、はい!分かりました。……えっと、僕について来てもらえますか?」
「……はい……よろしくお願いします」

 

 キラは、涙目のラクスに気を使うように部屋から連れて出ていった。
 沈んだ空気を吹き飛ばすように茶化した口調でムウが言う。

 

「しっかし、まぁ、ユーラシア艦との問題が解決したと思ったら、今度はピンクの髪のお姫様か。悩みの種が尽きませんなぁ。艦長殿!」
「……あの子もこのまま、月本部へ連れて行くしかないでしょうね……」
「……仕方ないだろうな。月以外に帰港予定がある訳でもないんだ。どこかで降ろす訳にもいかないだろう」

 

 マリューはラクスを憐れんでか、沈んだ顔になるが、そこに壁際にいたアムロが歩み寄りながら言った。

 

 アムロの言葉にマリューはラクスの事を考えると苦い表情になる。

 

「でも、軍本部へ連れて行けば彼女は、いくら民間人と言っても……」
「そりゃー大歓迎されるだろう。なんたって、クラインの娘だ。いろいろと利用価値はある」
「……利用価値か……」

 

 ムウは真顔で軍人としての意見をマリューに言うが、その表情は苦々しい。
 アムロはムウの言葉に、顎に手を当て考え込むように呟くと、マリューが重そうな口調で言う。

 

「……出来れば、そんな目には遭わせたくないんです。民間人の、まだあんな少女を……」

 

「そう、おっしゃる事は分かりますが、彼らは?こうして操艦に協力し、戦場で戦ってきた彼らだって、まだ子供の民間人ですよ」
「バジルール少尉、それは……」

 

 ナタルが少し現実を見るようにと、少しきつい感じで言うと、マリューは戸惑うが、ナタルはそのまま言葉を続けた。

 

「キラ・ヤマトや彼らを、やむを得ぬとはいえ戦争に参加させておいて、あの少女だけは巻き込みたくない、とでもおっしゃるのですか?」
「……」
「……彼女はクラインの娘です。と言うことは、その時点で既に、ただの民間人ではない、と言う事ですよ……」
「……」

 

 ナタルの言葉に、元々、キラ達をアークエンジェルに乗せたのはマリュー自身だったのを思い出すと、何も言えなくなり、さらに表情を暗くした。
 そのやり取りを見ているアムロの心中は穏やかではなかった。
 ――利用価値、ただの民間人ではないか……。νガンダム、ニュータイプ……。俺の事も、事情を知らない軍からすれば同じだろうな……。

 

「おいおい、今、そんな事言っても仕方ないだろ。どの道、俺達は月に行かなきゃならないんだ。まだ時間はある。それまで、じっくり考えればいいじゃないか」

 

 ムウが見兼ねて、マリューとナタルの間に入るよう形で言うと、この話は終わりと言わんばかりに解散を提案する。全員が頷き、それぞれが部屋を出て行こうとする。

 

 その中、アムロは考え込むような表情をしていると、ムウ達に続くように部屋を出て行こうとしていたナタルがアムロの元へと戻って来た。

 

「……アムロ大尉、どうかしましたか?」
「ん?……いや」

 

 アムロはナタルの声に首を振るが、ナタルはそう取らなかったようで心配そうな表情で口を開いた。

 

「あの……前にも言いましたが、何かあれば私にご相談いただければ……」
「……ああ、そうだったな。すまない」
「いいえ!それで、どういった事でお悩みなんですか?」

 

 アムロは以前、ブリッジでのやり取りを思い出し謝罪をすると、ナタルは首を振り聞き返しす。
 ナタルの表情を気にしながらも、アムロは言って良い物かと思案を廻らし、躊躇いがちに口を開く。

 

「……悩みと言う程でもないんだが……フラガ大尉が彼女に利用価値があると言っただろう」
「ええ、ラクス・クラインの事ですね。それがどうか……?」
「……俺も……地球軍に取っては、彼女と同じなのではないかと思ったのさ」
「――!?」

 

 ナタルはアムロの言葉に驚き、必死に否定の為の言葉を思いつくだけの並べる。

 

「――どうしてですか!?アムロ大尉は、こうしてアークエンジェルを守ってくれてるではありませんか!軍もアムロ大尉の貢献を考えれば、受け入れるはずです!それに艦のクルー達の信頼を得ています!私だって――!……私も……」

 

 ナタルは最初こそ勢い良く言ってたが「私だって――!」と、言ったところで自分が何を言おうとしていたのかと言葉を止め、少し俯き、恥ずかしそうに、おずおずと呟いた。

 

「……ありがとう。君達は見ず知らずの俺をこうして受け入れてくれたが、軍上層部は、そう簡単に俺を信用するとは思えない。ましてや、俺は核で動くνガンダムを動かしているんだ……」

 

 アムロは、ナタルの必死な姿に素直に礼を言いつつも、真剣な面持ちで言葉を続ける。

 

「……恐らく、このまま月基地に着けば、νガンダムは取り上げられ、俺は拘束されるだろう。良くても尋問。悪ければ……」
「……そんな」
「軍とは、そう言う所なのは君も知っているだろう。肥大化した組織なら尚更だ……」

 

 アムロの言う事に表情を暗くするナタルに、組織の現実を解いた。
 現実に月基地に到着すれば、どう言う形であれ、一度はアムロが拘束されるのをナタルも分かっている。
 ナタルは必死に考えるが、早々良い考えなど浮かぶ訳もなく、途切れ途切れの言葉を出すのが精一杯だった。

 

「……その時は、私が……及ばずながら、軍上層部に上申し、説得します!それに艦長やフラガ大尉だって、きっと――!」
「……ああ、ありがとう……。すまなかった。今、するべき話ではなかったな。……フラガ大尉の言う通り、まだ時間はある。それまでに、どうするか考えるさ」

 

 アムロはナタルが信頼してくれているのを感じ、この話をするのではなかったと思い、礼と謝罪をした。

 

「……はい……私もお力になれるよう、努力しますから……」

 

 軍の現実を知るナタルからは弱々しくも、アムロを助けようと感じさせる言葉が溢れるのだった。

 
 

 

 ラクスはキラに案内された、アークエンジェルの一室で佇んでいた。シルバーウインドが沈んだ事で表情は明るい物ではなかった。

 

「ハロ、ゲンキ?ハロ?」
「……」
「オマエ、ゲンキカ?」

 

 ハロは、ラクスの気持ちを知る訳でもなく、機械合成音からなる声を上げた。
 ラクスは出航する前にアスランと話した事を思い出す。ハロを作った本人であるアスランが、ハロに感情は無いと否定したが、ラクスはそうは思わなかった。
 ――ハロはこんなにも優しいのだから……。
 ラクスは元気づけてくれるハロを見つめ、少し微笑む。

 

「ハロ……」
「マイド!マイド!アカンデェ〜」

 

 ハロは間抜けな声を上げつつ、ラクスの手の中で跳ねる。その姿にラクスは心が暖まる感じがした。

 

「……祈りましょうね、ハロ。どの人の魂も、安らぐことの出来るようにと……」

 

 ラクスは、今は亡きシルバーウインドの船員や命を投げ打って脱出させてくれた従者達の為に祈りを捧げるのだった。

 
 

 

 握手をした日から、また数日が経ち、アスラン達はフレイと過ごす事に慣れ始めていた。いつも通り共に食事を取り、食後のお茶を楽しんでいた。
 アスランは食事を終えフォークを置くと、フレイに声をかける。

 

「すまない、ポットを取ってもらえるか」
「うん、はい」
「ありがとう」

 

 紅茶を飲んでいたフレイがポットを差し出すと、アスランは礼を言って受け取った。

 

「アスラン、砂糖かミルクは要りますか?レモンもありますけど?」
「いや、俺はストレートでいただくよ」

 

 ニコルがアスランに何か入れるかを聞いて来ると、アスランはそれを断り、一口、紅茶を口に含んだ。
 アスランとニコルは、軍人になってからは、こんなにゆっくりとした過ごす日々など、ここ最近ではあまり無かった。実感するようにニコルが口を開く。

 

「それにしても本当にのんびりしてますね」
「そうだな」
「こんなに纏まった休暇は、なかなか取れないですからね」

 

 アスランが頷くのを見ると、ニコルはニコニコしながら言った。
 プラントでは十五で成人となるが、戦争さえ起こらなければ、まだまだ遊んでいたい年頃なのだから仕方がない。
 プラントとザフト軍の事情を詳しく知らないフレイは二人に聞く。

 

「どのくらい、お休み貰ったの?」
「……ん、とりあえずはモビルスーツの修理が終わるまでだな」
「だから、いつ休暇が終わるのか分からないんですよ」
「……お休みが終わったら、また……地球と戦うの?」

 

二人の言葉をを聞くとフレイは俯き加減に言葉尻を濁しながら言った。

 

「……そう言う事になるな……」
「そうですね……」

 

 アスランとニコルは気まずそうに答えと少しの沈黙が支配する。
 アスランが真剣な表情でフレイを見つめながら、沈黙を破るように口を開いた。

 

「……フレイ。頼みがある」
「……なに?」
「君が地球に戻ったら……軍には入らないでほしい」

 

 アスランの言葉にニコルもフレイも驚きながらも、その表情に見入った。
 アスランはそのまま言葉を続ける。

 

「こうして、知り合った……友達、なのか、な?……俺は、そんな人達と戦いたくないんだ」

 

 アスランは途中、自分の言った事に照れる素振りをしながらも、最後には、真剣な表情で言い終える。その心の中では、キラの顔が浮かんでいた。
 ニコルもアスランと同じ気持ちだったのか、フレイに向き直り口を開く。

 

「僕からもお願いします。フレイ、地球に戻ったら、絶対に軍には入らないでください。僕もフレイと戦いたくありませんから……」

 

 フレイは二人の真剣さに優しさを感じた。
 ――アスラン、ニコル……。

 

「……うん」

 

 元より軍に志願するつもりの無いフレイは真剣な表情で頷く。

 

「……フレイ、ありがとう……」
「ありがとうございます!フレイ!」

 

 アスランもニコルも、フレイの返答に表情が緩み、うれしそうに礼を言った。
 それぞれが笑みを浮かべ、この約束が破られる日が来ない事を願った。

 
 

 

 アークエンジェルの中ではラクスを救助してから一晩が明けた。昨日行われた戦闘の喧噪も無くなり、艦内は穏やかな物だった。
 少年達は非番なのか、食堂に集まり雑談を楽しんでいた。

 

「あのぉー」
「?」

 

 どこからか、かけられた声に全員が不思議そうな表情をになる。

 

「ハーロー。ゲンキ!オマエモナ!」
「――あっ!」
「……驚かせてしまったのならすみません。私、喉が渇いて……それに笑わないで下さいね。大分、お腹も空いてしまいましたの。こちらは食堂ですか?なにか頂けると嬉しいのですけど……」

 

 ハロの声に全員が食堂の入り口に視線を向けると一様に驚いた。
 ラクスは、みんなを驚かせてしまったのを悪いと思ってか、謝ると食堂に出向いた理由に恥ずかしそうな表情をしながら伝えた。その側では、ハロがピョンピョンと楽しそうに飛び跳ねている。
 キラが慌てるように口を開く。

 

「――っで、ってちょっと待って!」
「鍵とかってしてないわけ……?」
「あら?勝手にではありませんわ。私、ちゃんとお部屋で聞きましたのよ。出かけても良いですかー?って。それも三度も……」
「そう言う問題じゃないと思うけど……」

 

 カズイが艦内の警備が行き届いてないのに不安そうな表情をすると、ラクスは空気が読めないのか、ニコニコとしながら言った。
 ラクスの言葉にカズイが呆れたようだった。
 そのやり取りを見兼ねたのか、ミリアリアが口を開く。

 

「でも、彼女も民間人なんだし、それに食事をしたいって言ってるんだから、少しくらいは、いいんじゃないの?」
「……いや、俺達が良くてもさ……とにかく、勝手に出歩かれるのは、まずいんじゃないか?」
「……ああ。アークエンジェルも軍艦だし……許可、貰わないと出歩くのヤバイよな?」

 

 サイとトールが、その場にいる全員を見ながら渋そうな顔で言った。

 

少しの沈黙が流れると、カズイが口を開く。

 

「……あのさ、とりあえず、部屋に戻ってもらったら?」
「モシモシ〜?モシモシ〜?」

 

 再び沈黙が支配する。空気が読めないハロが、元気よく飛び跳ねていた。
 ひとまずの意見が一致したのか、ミリアリアが申し訳なさそうな表情をラクスに向けた。

 

「……えっと……ゴメンね。食事、届けるから……」
「それなら、用意して貰っちゃえよ」
「そうだな。その方が早いし」
「――それなら、頼んでくるよ」

 

 サイとトールが、ラクスの食事をすぐに用意する事を提案すると、カズイはカウンターへと食事を頼みに行った。
 カズイが頼みに行くのを見送ると、トールがラクスに少しカッコつけるように言う。

 

「ゴメンな!俺達は良くても、ここ軍艦だからさ」
「ほんとゴメンね。……トール、鼻の下伸ばさないの!」

 

 ミリアリアもラクスに謝りながらも、自分の彼氏であるトールが、他の女性に気を取られているのが気に食わないのか、片足が思いっきりトールの足を踏んづけていた。

 

「――っ!いてっー!ミ、ミリアリア――あ、足踏んでる!」

 

 そのやり取りに、みんなが笑う。
 少年達には、ナチュラル、コーディネイターの人種など関係無いとばかりに、その場の空気は明るかった。