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CCA-Seed_98 ◆TSElPlu4zM氏_第14話_前編

Last-modified: 2007-11-10 (土) 17:52:01

月の地球連合軍プトレマイオス基地の第八艦隊司令官用の一室では、小太りの男性、ホフマン大佐が椅子に座り、上官を待っていた。
 扉が開くと、ホフマンは立ち上がり、敬礼をする。
 入って来た男性は、軍人としては結構な年齢だろうが、それを感じさせない引き締まった体をしていた。何よりも蓄えた髭と、その堂々した態度には貫禄を感じられた。

「ホフマン、おはよう。アークエンジェルからの連絡はあったかね?」
「閣下、おはようございます。アークエンジェルはおろか、先遣隊、捜索隊からも発見の報はありません」
「未だ連絡はなしか……」

 ホフマンの上官である地球連合軍第八艦隊司令官デュエイン・ハルバートン准将は挨拶をすると、自ら推し進めたG兵器開発計画の母艦であるアークエンジェルの行方を気に掛ける。
 しかし、返って来たのは、彼の望むような朗報ではなかった。
 呟くハルバートンに、ホフマンが一歩前に出て口を開く。

「……閣下、申しにくい事ではありますが、アラスカでは、この度の事で閣下に対して良く思わない者達が不満を上げております」
「……だが、モビルスーツと艦が無事あれば、いずれ必ず、我ら地球軍の利となる」
「アラスカは、そうは思ってないようですが……」

 ハルバートンの力強い声に対して、やや冷めたようにホフマンは答える。

「ふん!奴等に宇宙での戦いの何が分かる!地上から見上げているだけの連中には、何も理解など出来ぬのだよ。モビルスーツと艦が無事あれば、問題にせねばならぬことは何もない」
「……閣下……」

 ハルバートンの言葉は、多少、怒りを含んでいながらも自信に満ち溢れたものだった為、それ以上、ホフマンは何も言えなくなる。

 その時、扉が開き、下士官が入って来た。

「失礼します。地球衛星軌道上にザフト軍と思われる艦艇が集結している模様です」
「ザフト軍がか!?」
「ふむ……。規模はどのくらいなのだ?」

 ホフマンが驚くと、ハルバートンは顔色を変えず、冷静に状況報告を求めた。

「数は多くはないようですが、巡回中の艦艇が多数、報告をしてきております」
「そうか……。変化があれば報告せよ」
「は!」

 ハルバートンは頷くと、下士官を下がらせ席へと腰を落とした。
 ホフマンが、席に座るハルバートンを見すえながら質問をするように口を開いた。

「どう言う事でしょうか?」
「分からぬよ。位置からすれば地球降下でも企んでいるのであろう。かと言って、数は少ない。今、我々が自ら、赴く程でもなかろう。何かあれば、アラスカが喚きおるだろうがな」
「それでは、その時の為に出撃体制を整えるよう、伝えておきます」

 アラスカで机上の空論しか展開出来ない将校達を皮肉るようにハルバートンは言うと、ホフマンは頷き、自ら進んで対応の準備を口にする。
 考えの違いは有れど、ハルバートンに取っては、ホフマンは有能たる部下だった。

「うむ。アークエンジェルが先遣隊と合流出来ていない以上、万が一、現れた場合の為に補給が出来るよう、物資を積み込んでおけ」
「はい。分かりました」

 ハルバートンは、行方知れずのアークエンジェルが帰還するのを信じて望みを掛けていた。
 ホフマンとしては、アークエンジェルが生き残っているとは思えなかったが、尊敬する上官であるハルバートンの命令であり、拒否するような内容でも無かった。
 ホフマンは敬礼をすると踵を返し、司令室へと向かうのであった。


 アークエンジェルの格納庫では、日課となったキラの戦闘訓練が行われていた。
 キラは、飲み込みがいいのか、少しづつだが着実に腕を上げて行く。そんな姿に、指導をしているアムロとムウは嬉しくもあった。
 その三人が休憩がてら、話している時に、マードックが寄って来て、声を掛ける。

「大尉さん方、ちょっとすみません。おい、坊主!いいか?」
「マードックさん、なんですか?」

 キラが何事かと言う表情でマードックに聞き返すと、マードックは頭を掻きながら言った。

「ストライクの武装でな、相談があるんだ」
「ストライクの武装?」
「なになに?なんか、面白そうじゃん」

 アムロがマードックを見ながら口を開くと、ムウが興味有り気な表情をする。
 マードックは三人を見回しながら口を開く。

「νガンダムにアグニを持たせちまったから、ランチャーストライクの武装が余っちまっただろ?どうにか使えねえかと思ってな」
「機体バランスが悪くなるんじゃないのか?」
「地上ならまだしも、無重力空間ならバーニアの推力バランスでどうにかなりませんかね?あのパーツにもバッテリーが積んであるし、稼動時間は稼げますよ。ただ、エール装備で使うなら、機動性は落ちますが……」
「稼動時間と武装が強化されるのは確かに魅力だが、機動性が落ちてはな……」

 マードックのアイデアにアムロが渋い表情で考え込むと、ムウが疑問を口にする。

「だとしても、そんなの出来んの?同時使用なんて、システムに組み込まれてないだろ?」
「確か、出来ませんよね?」
「だから、そこらへんをクリアする為に、OSをいじくれる坊主に声をかけたんだよ」

 キラがムウに向かって頷くと、マードックがキラを見ながら、諦め半分の感じの表情になる。
 ムウの指摘は間違いではなかった。ストライクのシステムには、武装を同時に扱うプログラムは実在しなかった。
 マードックも分かっていながらも、キラならプログラムの書き換えが可能かと思い、聞いてみたのだった。

「……軍事用のOSですからね。ゼロからだと、流石に無理だと思います」
「……そうか」

 キラは少し考え込むと、マードックを見上げるように答える。
 マードックは諦めの表情を浮かべつつ、納得しながらも肩を落とした。


 プラント本国を数隻の戦艦と共に、攻撃の第一陣として出港したヴェサリウスは、奇襲を掛ける敵に気取られないように静かに地球連合軍基地へと向かっていた。
 イザークとディアッカは、自分達の母艦であるヴェサリウスの通路で移動していた。

「なあ、イザーク。作戦、うまくいくと思うか?」
「成功させるのが俺達の仕事だ」
「だとしても、宇宙での敵の重要拠点だぜ?早々、落とせるとは思えないんだけどさ」
「そんな弱気でどうする!隊長も負けられない戦いだと言っていただろう!」

 淡々と答えるイザークに対し、ディアッカは作戦に疑問があったのか、否定的な言葉を吐いた。
 イザークは、ディアッカの言葉を弱気と捉えたのか、怒ったように睨みつける。
 ディアッカは、分かっているとばかりに、うんざりとした表情をしながらも、自らの思いを口にする。

「そりゃ、そうなんだろうけどさ。いくらなんでも無謀だろ?」
「だとしても、成功させるんだ!」

 イザークもディアッカに近い考えを持っていたのか、そんな言葉が吐き出されたが、口調は、赤服のプライドなのか、怒りを含んだ物だった。

 丁度、曲がり角の所で、隊長室へと向かうクルーゼが姿を現した。

「どうした、二人とも?」
「あ、隊長!……いいえ、なんでもありません!」

 イザークとディアッカは、クルーゼが現れた事に慌てながらも、今の会話を聞かれていまいかと、内心焦りながら敬礼で誤魔化す。
 クルーゼは、二人を見透かしたかのように、不適な笑みを湛えながら口を開く。

「作戦が無謀だとか聞こえたが?」
「――やべっ!」
「――!け、決して、そんなことは!」

 クルーゼの言葉に、ディアッカはバツの悪そうな表情をすると、イザークは慌てながら、否定しようとした。
 そんな二人を見てか、クルーゼは苦笑しながらも本音を言う。

「まあ、いい。私も、完全に潰せるとは思ってはいない。泡良くば、基地としての機能を停止させればと思っている」

 イザークとディアッカは目を丸くすると、クルーゼの口調は重みのある物へと変わる。

「だが、これだけの作戦だ。出来る事なら成功させたい。今回は、その為にブリッツをここに投入する事を決めたのだ。慣れない機体だろうが、イザーク、君に作戦の成否は懸かってると思ってほしい」
「――は!全力を尽くします!」

 クルーゼの話に自分の役割の重さを感じたのか、イザークは背筋を伸ばし、敬礼で返した。
 クルーゼは頷くと、今度はディアッカを見据えながら言う。

「ディアッカ、もちろん君にも期待をしている」
「――は!」

 ディアッカも、イザークと同じように敬礼で返すと、クルーゼは、その場を離れた。

「どの道、囮がうまく立ち回ってくれなければ、どうしようもないのだがな」

 一人、移動するクルーゼは、自らが提案した作戦を皮肉るように、仮面の下で微笑んだ。


 アークエンジェルの食堂では、いつもの如く、数人のクルーが代わる代わる食事を取っていた。
 そこに、ストライクの武装強化案が不可能になった事で、肩を落としているマードックがやって来た。自分のアイデアが駄目だった事で、気落ちしていても人間なのだから、やはり腹は減る。
 マードックの気落ちした姿を見て、食堂の手伝いをしていたラクスが声をかけた。

「どうかされたのですか?」
「……コーディネイターの嬢ちゃんか」
「はい!でも、私にはラクス・クラインと言う名があります。出来れば、名前で――」

 柔らかい微笑を湛えるラクスに、こうもニコニコしてられるのかと、マードックは毒気を抜かれた気分になり、溜息を吐くと、口を開いた。

「……はぁ。ラクスの嬢ちゃんよ、とりあえず、メシ貰えねえかな?」
「――はい!少し、お待ちいただけますか?」

 ラクスは、変わらぬ笑みで答えると、厨房へと向かって行った。
 そこへ、マリューが食堂へと入って来て、挨拶がてら声をかけた。
「あら、マードック軍曹。お疲れ様です」
「ああ、艦長。どうしたんですか?」
「ええ、ブリッジに行く前に飲み物でもと思って――」

 マリューは今から勤務に入るらしく、少し苦笑いを浮かべた。
 マードックは、マリューの顔を見据えると、思い出したように口を開く。

「――あっ!そういや、艦長、技術系だったよな?」
「――え!?ええ、そうですけれど……」
「そりゃ、都合がいい!ストライクの事で相談があるんですが、いいですかい?」
「……ストライクの事で……?」

 マリューはマードックの視線に困惑したような表情をしたが、ストライクの話と聞いて、表情が真剣な面持ちへと変わる。
 マードックもアイデアを捨てきれていないのか、格納庫でキラ達に言った事を繰り返すように話し始めた。


 ニコルを乗せた戦艦は、ヴェサリウスよりも早く出港し、多数の艦と共に地球衛星軌道上に向かっていた。
 兵士達の士気は、ラクス・クラインの暫定的な死亡報道で、異常な程に高く、艦内は熱気に溢れ返っていた。
 そんな中、デュエルのコックピットでは、イザークに合わせられた設定を変更する為、ニコルが自らキーボードを叩いていた。

「設定はブリッツと同じで大丈夫みたいだ。壊さないようにしないと」

 独り言を呟きながら、ニコルはキーボードを叩き続ける。そんな中、ブリーフィング時のイザークを思い出す。
 ニコルは、イザークの事が嫌いではない。イザークは口が悪いけど、そんな処が不器用なだけで、イザークなりの優しさがあると分かっていた。

「イザークが気を使ってくれたんです。絶対に勝たないと……」

 ニコルはイザークに感謝しつつ、キーボードを叩く。
 こうしてると、色々な事を思い出す。家族や、仲間。そして、フレイとアスランと過ごした数日間。本当に色々あったと思った。
 その中、思い出すのは、アスランとフレイの最後の会話だった。

『キラとは……お前とは戦いたくない。って……伝えてほしいんだ』
『――えっ!?……戦いたくないって……どう言う事……?』
『キラは戦う事が嫌いなのに……そのモビルスーツにキラが乗っているんだ……』
『……友達……同士で……戦ってるの……?』
『……そう……なる……な……』
『そんなのおかしい……おかしいわよ……。友達なんでしょう……どうして戦わなく
ちゃいけないのよ!』
『……俺も戦いたくないさ!だから、君に伝言を頼むんだ……頼む、キラに伝えて欲
しい』
『……うん……必ず伝える』
『……ありがとう。……それじゃ、元気で……。次に会う時には、戦争が終わってい
る事を願うよ』
『……うん、アスランも元気で……』

 キラがアスランにとって、とても大切な友人であるのが理解出来た。で、なければ、いつも冷静なアスランの様子がおかしいなんてないのだから。
 キラに対して、自分よりも大切にされている事への嫉妬なのかもしれない。
 もしも、キラではなく、ニコルがアスランの敵になっていたら、アスランはあそこまで、思ってくれたのだろうかと少しだけ考えてみた。
 アスランは、掛け値無く、友達を大切にするのが分かっている。そこで考える事を切り替え、友達となったフレイの事を考える。
 アスランの婚約者であるラクスも好きだが、話した事がほとんど無い為、あまり身近には思えなかった。ナチュラルとコーディネイターの壁はあっても、遥かにフレイの方が身近に思えた。
 ラクスには悪いが、アスランとフレイは美男美女の組み合わせだし、何よりも、ナチュラルとコーディネイターの壁を取り払えるような気がしたのも事実だった。
 出来る事なら、フレイにアスランとの約束を守ってほしいし、キラとアスランが戦わなくて済む近道なのかもしれないと思った。しかし、知ってしまった以上、悠長な事は言ってられなかった。

「アスラン……あなたとキラさんは戦わせません」

 ニコルは、アスランの顔を思い浮かべた。
 戦場でキラに会う事があれば、まずは、キラを説得してみようと思った。それでも駄目なら仕方がない。アスランとフレイには、悪いとは思うが、守るべきは自らの友達なのだから。

「キラさんが、アスランと戦うと言うのであれば――!」

 ニコルは決意も新たにすると、OSの認証キーを押し、デュエルの調整を終了させたのだった。


 キラ、アムロ、ムウは、マリューに呼び出され、アークエンジェルのブリッジに集まっていた。
 マリューの話は、マードックが話していた事と大して変わらない物だったが、艦長として、ストライクを守ろうとする熱意が伝わって来る物ではあった。

「――と、言う話なんですが、不可能でしょうか?」
「いや、無理では無いだろうが、やり始めれば、それなりに時間が掛かる。それだけの余裕がある訳ではないだろう?」
「……ええ」

 アムロが渋い表情をしながら反論をすると、その通りなのか、渋々とマリューは頷く。

 アムロとムウは、ストライクは現状で、問題がないと思っている。それならば、あまり効率の悪い事をするよりも、純粋にキラの腕を上げる事が先決だと思っていた。
 ムウが畳み掛けるように、言葉を続ける。

「しかも、出来るのはキラだけなんだろう?余裕も時間も無いなら、無理だろう」
「しかし、我々はストライクをどうしても守らなければなりません。その上で、戦闘にも投入しなければならない……。少しでも、守る手立てが有るなら講じるべきかと……。キラ君、無理かしら?」
「……流石に、僕一人で、プログラムを組むのは無理ですよ」
「……そう」

 マリューの熱意に、キラは困りながらも否定の言葉を言うと、マリューは諦めたかのようにうな垂れた。
 それを聞いていたトールが、立ち上がり声をかける。

「あの、すみません!今の話って、ストライクのパワーアップの話ですよね?」
「……パワーアップと言う程の物でもないけれど、似たような物ね」
「それで、うまく行けば、キラの帰って来れる確立が上がるんですよね?」
「……ええ」

 マリューは頷きながらも、何故、トールがそんな事を聞いたのか不思議に思った。
 トールは真剣な面持ちで、サイの方に顔を向ける。

「なあ、サイ!」
「ああ。……その、プログラム組むの、僕達にやらして貰えませんか?キラ程じゃないですけれど、僕達も、それなりに勉強してますから」
「それで、キラが俺達の所に帰って来れるなら、がんばりますよ!」
「……あなた達」
「……みんな」

 サイは、トールの呼びかけに頷くと立ち上がり、マリューへ向かって協力を申し出る。続くように、トールが言うと、マリューは感慨深げに二人を見つめた。
 周りの者達も、申し出に目を丸くしていたが、特にキラは、驚きが大きかったようだった。

「はあ……。こりゃ、やるしかなさそうだな」
「ああ。人の想いと言う奴だな……。仕方がないが、受け入れる以外なさそうだな」

 ムウとアムロは、キラを想う彼らの友情に白旗を揚げたのか、苦笑いをする。
 アムロやムウ、マリューや友人達にしても、キラを心配する気持ちは同じだった。
 サイは、アムロとムウのやり取りを聞いて、視線をキラへと向ける。

「流石に俺達だけじゃ、時間、掛かり過ぎるから、キラにも手伝って貰いたいんだけど……」
「……うん、手伝うよ」
「キラ、訓練はどうする?」
「やります!今まで通りでお願いします」

 ムウの問いかけに、キラは今迄と変わらぬ真剣な表情で応えると、指導している二人は頷く。
 そのやり取りを見ていたナタルが、キラに対して口を開く。

「ならば、プログラムを組みやすいように、我々がサポートしよう。彼等がブリッジに居る時間を、なるべく少なくするなり、ここで作業出来るようにするなり、考慮しよう」
「……バジルール少尉」
「……ナタル」
「頼んだぞ、キラ・ヤマト。それから、みんなも……」

 キラとマリューは、ナタルの申し出に驚きながらも、その他のクルー達を見回す。彼等もナタルの申し出に賛同するかのように、頷いたり、親指を起てたりとアピールをしていた。

「決まったようだな」

 それを見たアムロが、マリューに向かって告げた。
 マリューは何を思ったのか、目を瞑ると立ち上がる。引き締まった表情で少年達を見回した。

「……キラ・ヤマト、トール・ケーニヒ、サイ・アーガイル、ミリアリア・ハウ、カズイ・バスカーク。あなた達を臨時ではありますが、志願兵としてアークエンジェルに迎え入れます」
「「「「「えっ!?」」」」」
「例え、非常事態でも、民間人が戦闘行為を行えば、それは犯罪となる。それを回避する為の措置だ」
「……みんな、ごめんなさいね」

 少年達はマリューの突然の言葉に驚きの声を上げると、ナタルが少年達を見つめながら言った。
 マリューは、申し訳なさそうに少年達に謝罪をした。

「……いいえ。これで、みんなを守れるのなら!」
「「「「……キラ」」」」

 キラは少し目を臥せるが、顔を上げると、はっきりとした口調でマリューに告げる。その表情は、少し大人びて見えた。
 友人達もキラの言葉を聞いて覚悟を決めたのか、表情が引き締まる。

「……全員、地球連合軍の兵士として、恥ずかしくない行動をするように。あなた達が、誰一人、欠ける事の無い事を願います」
「「「「「――はい!」」」」」

 マリューは、凛々しく少年達に告げると、少年達は声を揃え、返事をするのだった。


 アムロとキラは、共にブリッジを後にすると格納庫に向かう。その途中、ナタルがアムロを追い掛けて来たらしく、声を掛けてきた。

「――アムロ大尉!」
「ん!?どうした、バジルール少尉?」

 アムロは振り返ると、何ごとかと聞き返した。
 ナタルは少し沈んだ表情で、言いにくそうに口を開く。

「……この前の話なんですが……」
「ああ、その事か……。キラ、先に行っててくれ」

 アムロは思い出したように答えると、キラを格納庫に向かうように告げると、キラは頷き去って行った。
 キラが見えなくなると、ナタルがアムロを見つめる。

「……艦長に相談してみました。でも……どうするかは決まっていません……」
「……そうか。そう、気を落とさないでくれ」
「……しかし……」

 ナタルには、アムロの言葉が強がりに聞こえたのか、悲しそうな表情になった。
 アムロは、そんなナタルを見てか、彼女に気を使うように微笑む。

「まだ、どうなるとも決まってないんだ。それに、君達が僕を擁護してくれるんだろう?」
「……はい」
「僕も、この艦に愛着が沸き始めている。……出来るならなら、裏切るような真似はしたくはない」
「……はい。私も、大尉を……ニュータイプの可能性を信じてみたいのです」

 ナタルは、やや頬を染めつつ、「裏切るような真似はしたくはない」と真顔で言ってくれたアムロを見つめる。
 アムロも一介の男性として、ナタルが自分を慕ってくれているのは感じていた。
 本来なら、拘束されても可笑しくはないのだ。何処の馬の骨とも知らない自分の為に、親身に気を使ってくれる。心苦しくも有り難いと思った。

「……ナタル、君には苦労を掛けるな。すまない」
「――いいえ!そんな事は、ありません!」

 ナタルは首を振ると、アムロに名を初めて呼ばれた事で、染まってた頬が更に赤くなるが、軍人らしい姿勢は崩していなかった。
 アムロは、そんなナタルを見てか、彼女らしいと思いつつ微笑む。

「ありがとう。……少し、肩の力を抜いた方がいいぞ」
「はぁ、そうでしょうか……?」
「君はチャーミングなんだ。その方が、もっと魅力的に見える」

 アムロはナタルの肩を軽く叩くと、格納庫へと向かってナタルに背中を向けた。
 ナタルはアムロの言葉に、自分の顔に熱を帯びて行くのを自覚して焦ったように声を上げた。

「――ア、アムロ大尉!?」

 ナタルは頬を染めながら、格納庫へと向かうアムロの背中が見えなくなるまで、見送るのだった。