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CCA-Seed_98 ◆TSElPlu4zM氏_第15話_前編

Last-modified: 2007-11-10 (土) 17:53:01

プラント本国を出撃したヴェサリウスを中心とする艦隊は、一路、月の地球連合軍プトレマイオス基地へと向かっていた。
 静かな船旅だが、地球軍のシルバーウインドへの不当な攻撃と、その事件で犠牲になったアイドル、ラクス・クラインの報復と相まって、士気は高かった。
 ヴェサリウスのブリッジでは、この作戦の指揮官を任されているクルーゼが、今回の攻撃目標である、月のプトレマイオス基地から衛星軌道上に向かって、敵の艦隊が出撃した事の報告を受けていた。
 椅子に座り、報告を受けたクルーゼは、その仮面の下に笑みを湛えていた。

「敵艦隊が巣を出てくれたか」
「ええ。これで襲撃しやすくなります」
「と言っても、地球軍の宇宙での拠点なのだ。守備隊も残っていよう。強固な事には変わらんがな」

 ヴェサリウス艦長のアデスの言葉に、皮肉を言うかのようにクルーゼは水を差した。
 アデスは少し表情を強張らせながらも、慎重に口を開く。

「しかし、もしも本当に落とす事が出来れば、後の戦いが楽になります」
「落とせなくとも、ダメージを与えれば楽にはなるさ」

 クルーゼは、アデスの言葉から、彼が心の一部で作戦に懐疑的に思っていた事を見抜きながらも、更々、腹を立てる気にはならなかった。
 クルーゼ自身が、この作戦を自ら立案しなければ、アデスと同じ考えをしていたかもしれない。
 しかし、計画通り事が進んでいる事に、成功への予感を感じ取ったのか、続けるように言葉を繋ぐ。
 
「艦隊基地としての機能を徹底的に叩けば、当分の間は使い物にならなくなる。分からないか、アデス?」
「……敵艦が修理、補給が受けられなくなると?」
「それは、副産物でしかない」
「と、言うと?」

 アデスは、クルーゼの狙いが解らず、尋ねるように聞き返すと、クルーゼの笑みが消え、真剣な表情へと変わる。
 クルーゼは、立ち上がりモニターに映る宙域図を見据えると、低い声で言う。

「地球衛星軌道上から月までの制空権だ」
「……なるほど!我々が、自由に動き回る事が出来ると言う事ですか」
「そうだ。月へのパイプラインは我々が押さえたも同前になる。月に工場はあっても、いつまでも補給無しでは、いずれは限界が来る」

喜々とした表情のアデスに、クルーゼは頷きながら答えると、思う処があったのか、アデスは感じた疑問をぶつけてみた。

「しかし、長期戦では我々が不利ですが?」
「長期戦にならぬようにするのが、我々の役目だろう。今回は、港と修理用ドック、迎撃兵器を攻撃目標にし、徹底的に破壊する」

 クルーゼは、モニターから視線を外すと、顔をアデスの方に向け細かい攻撃目標を伝えた。
 アデスもクルーゼに視線を合わせると、進言も兼ねて自分の考えを伝える。

「それならば、修理資材が集まる工場区画も破壊しておいた方が良いのでは?」
「早々、工場区画まで入り込めると思うか?」
「……いや、しかし……」

 クルーゼは表情を変えぬまま答える。
 基地の中でも、工場区は深い位置にあると思われ、そこを強襲するのは現実的に難しい考えだった。
 アデスも、クルーゼの言う事は解ってはいるが、長期戦を望めぬザフト軍には不利になる要素を少しでも減らそうと思い進言をしたのだが、クルーゼは違う考えを口にする。

「その後は、数週間に一度、どこかの隊に襲わさせれば、修理など滞るだろう」
「……な、なるほど」
「その間に、我々は地球に向けて降下部隊を降ろせばいい。……まあ、ここまでが、一先ずのシナリオだ」

 クルーゼは、言い終えると不敵に微笑むと、アデスはクルーゼを静かに見据えた。
 クルーゼとアデスの関係は決して短くはないが、アデスには上官であるクルーゼが何を考えているか理解が出来ない事が多々あった。
 アデス自身、クルーゼの事を信頼はしているが、表情は仮面に隠れ、見えない事も含め、謎が多すぎた。
 その、謎多き上官であるクルーゼが椅子に腰を落とすと、再び口を開く。

「だが、私としては、予測される以上の戦果を上げたいと思っている」
「……壊滅ですか?」
「そうだ。うまくいけば、我々は英雄として称えられる事になるな」

 クルーゼは、英雄などに興味も無いが、自らを茶化すように微笑んだ。
 
「しかし、どうやって……?」

 アデスは思考を廻らすが、守りも固いであろう敵の重要拠点であるプトレマイオス基地を壊滅に追い込めるのか、想像もつかなかった。

困惑するアデスを尻目に、クルーゼは口を歪ませるように静かな笑みを湛えた。

「港と修理用ドックには、破壊兵器に変わる物があるだろう。解らないか?」
「破壊兵器に変わる物……?」
「その為には、港口を塞ぐ必要がある。一隻でも多く、敵艦を基地内に封じ込めなければならない」

 淡々と話すクルーゼの言葉に、アデスは呆気に取られるが、すぐに頭を働かせた。
 ――戦艦を封じ込めならなけえばならない理由……。破壊兵器に変わる物……。
 確かに無い訳ではない。ただ、基地を壊滅させる程の物となると、かなり限定される。アデスは、脳内を働かせると考えを導き出す。
 ――まさか、戦艦に搭載している核融合エンジンを基地内部で爆発させ、誘爆を誘発させようと言うのか……。
 敵基地を破壊できる物は、これ以外ありえない。それを実際に作戦としてやった人間は、恐らくいないだろう。ましてや、敵軍の戦艦を爆弾代わりに使おうと言うのだ。
 改めてクルーゼを見つめると、その考えに恐怖を感じた。確認するように、躊躇いがちに口を開く。
 
「……まさか」
「恐らく想像通りだ。その為のブリッツ投入なのだからな」

 クルーゼは笑みを讃える。その姿に、アデスは自分がコーディネイターである事と、クルーゼが味方である事に感謝した。
 しかし、未だ机上の空論で事がうまく運ぶとは限らない。成功した処で、他の地球軍基地が動き出す可能性も高い。
 アデスはその事が気に掛かり、クルーゼに問いかけてみた。

「そうなれば、他の地球軍基地が黙っているとは思えませんが……」
「地球軍組織が一枚岩ではないのが救いだな。奴らが危険を冒してまで出て来るとは思えんし、出てきた処で間に合わんよ。いずれは相手にしなければならないが、まだ先の話しだ」

 クルーゼは頷きながらも、淡々と答える。
 アデスは、クルーゼの考えに被っていた帽子を取ると額の脂汗を擦った。

「……これは、思ってた以上に意義深い戦いになりそうですな」
「ああ。クライン議長閣下とアスランには悪いが、我々は、この機会を与えてくれたラクス嬢に感謝せねばな」

 クルーゼは、アデスの言葉に頷くと、眼前に広がった暗い宇宙空間を見つめた。

アークエンジェルの格納庫から居住区に続く通路は静かな物で、訓練を終えたキラとアムロが肩を並べ歩いているだけだった。
 いつもならキラとアムロの他にもムウも居るのだが、今回は休息の為に途中で訓練を切り上げていた。
 アムロは手でモビルスースの動きを表しながら、キラに向かって言う。

「あのような状態での戦闘では、直線的に動くんじゃ駄目だ」
「回り込むように回避しながら攻撃ですね」
「そうだ。キラ、よく寝ておけ」

 キラは、アムロと同じように右手で自機を、左手で敵機に見立てて位置関係を確認すると、右手を左手の回りを移動させながら頷いた。
 アムロは出来の良い弟子の言葉に頷くと、満足したのか背を向け、自室に向かう。

「はい!ありがとうございました!」

 キラは、アムロの後ろ姿に頭を下げると、訓練で高ぶった気持ちを落ち着ける為に展望デッキへと足を向けた。
 展望デッキは暗く、灯り等は点っていない。重力制御されていないのか、体が宙に浮いた。
 キラは慣性に任せ、窓際へと流れると、視線を窓の外へと向けた。外は暗く、そして星が輝く宇宙空間が広がっている。
 
「ふぅ……流石に疲れた……。僕にアムロさんみたいな戦い方が出来るのかな……」

 キラの口から溜息と共に言葉が零れ落ちた。
 いつもは訓練自体はシュミュレーターが軸だが、今日は実機を使った訓練を行い、アムロのνガンダムの動きに着いて行く事が出来ずに四苦八苦するしかなかった。
 改めて、師事したアムロの実力が遥か雲の上にある物だと実感してしまった。
 ――いつになったら追い付く事が出来るのかな……。
 そんな事を思っていると、後ろから声が掛けられた。

「あら、キラ様。訓練が終わりましたの?ご苦労様です」

 キラは振り向くと、ラクスが入り口から体を浮かせながら流れて来た。
 ラクスは、キラの前まで来ると、足を少し前へと振って慣性の動きを止めるようとする。
 キラは手を差し伸べると、ラクスは微笑みながら、その手を取り動きを止めた。

「ありがとうございます」
「――あ、うん。ラクスさんも終わったの?」
「はい」

 ラクスは厨房での手伝いを終えた後らしく、始めて出会った時のように髪を結ってなかった。
 アークエンジェルでの生活に満足しているのか、表情は生き生きとして美しい物だった。

キラは、ラクスに見とれながらも労いの言葉を掛ける。

「……お疲れ様、ラクスさん」
「キラ様もお疲れ様です……フフフ」
「……ハハハ」

 キラは、ラクスの微笑みに心が暖かくなる感じがして、釣られるように笑みが零れた。

 二人は笑い終えると、視線は自然と窓の外へと向いた。
 人類の歴史が始まる前から輝く、幾多の輝きが見える。この宇宙空間に二人だけしか存在していないような気にも思えた。
 
「……星が綺麗ですね」
「うん」
「……」

 ラクスの言葉にキラは頷くと、静かに暗闇に輝く星を見つめ続けた。
 暖かな沈黙が支配する中、キラは、ラクスの境遇を思い出し、聞いてみた。

「……ねえ、家、帰りたい?」
「……はい。でも、この船の皆さんは、とても良い方々ばかりで……」

 星を見つめ続けるラクスの横顔が、少し寂しそうな感じに見えた。
 ラクスは民間人とは言え、プラント最高評議会議長の娘で、地球軍基地に着けば囚われの身になるかもしれない。
 キラは、何でこんな事を聞いてしまったのかと、深く後悔をした。

「……ごめん」
「キラ様の所為ではありませんから、お気になさらないでください」

 謝罪の言葉に、ラクスは視線をキラへと向け、優しく語りかけた。
 キラは、それでも居た堪れないのか、言葉を濁す。

「……でも」
「この船の方々の所為でもありませんから。私は助けて頂いて、大変感謝しています。それに、皆さんに良くして頂いて、楽しいです」

 ラクスは顔をゆっくりと横に振ると、優しくキラに微笑む。
 キラは、ラクスの優しさに心から感謝をした。
「……ありがとう」
「いいえ。私の事で、キラ様が辛そうなお顔をしているのは、私も辛いですから」
「――あ、あり……がと……」

 キラは、ラクスの優しさが自分に向けられた事に嬉しく感じたが、こそばゆく感じ、顔を赤らめた。
 ラクスは、そんなキラを見て不思議そうに首を傾げる。

「キラ様?」
「――あ、あの……」

 キラは赤面した顔で、あたふたと取り繕うと口を開くが、何を言ったら言い物かと、言葉が続かずに微妙な沈黙が支配する。
 そんなキラの表情を伺いながらも、ラクスは優しげに返事をする。 

「……はい?なんでしょうか?」
「……えっと、あ、あの……キラ様って、恥ずかしいから……」
「お嫌ですか?」

 キラは言葉に詰まりながらも恥ずかしそうに伝えると、ラクスは少し寂しそうな顔を見せる。
 キラ自身、『キラ様』と呼ばれ、嫌な訳では無く、逆に騎士になったようで誇らしい位の気持ちなのだが、照れが先に来てしまう。
 ラクスの少し寂しそうな表情を見たキラは、更に困ったのか、取り繕うとする。

「そ、そうじゃなくて、あの、恥ずかしいって言うか、こうやって知り合えたんだし……みんなが呼ぶみたいにキ、キラで……いいですよ」
「まぁ!……それでは、私の事はラクスとお呼びください」
「――え!?……う、うん」

 ラクスは胸の所で両手を組むと、嬉しそうな表情を見せた。
 キラは、ラクスの言葉とその微笑ましい表情に、首をカクカクと縦に振ると、ラクスの名前を口にする。

「――ラ、ラクスさん」

 ラクスは、キラの呼んだ自分の名前に、不満そうに頬を少し膨らます。

「キラ、それでは前と変わりませんわ。ラクスさんではなく、ラ・ク・ス、ですわ」
「う、うん!……ラ、ラクス」
「はい!」

 キラが慌てながらも、恥ずかしそうにラクスの名を口にすると、ラクスは嬉しそうに微笑みながら返事をした。
 キラは嬉しそうに微笑むラクスを見て、恥ずかしさを誤魔化す為か、片手で頭を掻いた。

微笑むラクスは、とても可愛く、同時に何とかして助けたいとキラは思った。
 
「あ、あの、ラクス……も、もしもだけど……プラントに戻れなかったら、僕や……みんなと一緒に――」

 キラは、ラクスを助けたい一心で、必死に言葉を口にしたが、ラクスの微笑が少しだけ崩れるのを見逃さなかった。
 宇宙で敵に襲われ、助かったと思えば、敵艦の中なのだから、普通なら希望など有りはしない。
 キラは、また、やってしまったと大きく後悔をして、謝罪の言葉を吐き出した。

「――ご、ごめん!」
「……ありがとうございます。……私の事をお気に掛けて頂いて、うれしいですわ……」

 ラクスは微笑を保ちながらも、少しだけ瞳を潤ませる。
 少女なりに抑えていた感情が少しづつ零れ始めたのか、俯くと肩を震わせた。
 キラは、ラクスの言葉とは裏腹に、心の中は罪悪感で一杯になり、先程よりも更に深い後悔をする。
 
「……こんな話ししちゃって……本当にごめん……」
「……キラ……」

 俯くラクスの肩にそっと手を伸ばすと、ラクスの体はキラの腕の中に流れ込み、抱きしめるよう形になった。
 キラは戸惑いつつも、ラクスの事を離す事はしなかった。
 ラクスは顔を伏したまま、キラの胸に額を預けた。
 
「……ごめんなさい……少しの……少しの間だけ……泣かせて……ください……」
「ラクス……本当に……本当にごめんね……」

 キラは、自分の胸で涙を流すラクスを守ってあげたいと心から思い、優しく抱きしめた。
 二人は輝く星々を背景に展望デッキの中を漂う。

アークエンジェルのブリッジでも平穏が続いていた。変わった事と言えば、少年達が交代制でストライクの追加装備のプログラムを組んでいる事だった。
 作業状況に関しては、クルーやプログラムの知識を持つメカニッククルーの協力も有り、意外な程に順調に進んでいた。
 丁度、交代の時間なのか、ミリアリアと一緒に作業をしていたトールが、ブリッジにやって来たサイとカズイにモニターを見せながら説明をしている処だった。

「こんな感じだからさ、サイ、ここから頼む」
「分かった。二人共、お疲れ!」
「サイ、カズイ。後は宜しくね」
「うん。ミリアリアもお疲れさん!」

 一通り説明を終えると、それぞれ挨拶をして席を譲る。
 トールは席を離れる立ち上がると、ミリアリアに声を掛けた。

「行こう、ミリアリア」
「うん」
「それじゃ、失礼します!」
「失礼します」
「ああ、御苦労。ゆっくり休め」

 トールとミリアリアは、艦長席に座るナタルに敬礼をすると、ナタルは労いの言葉を掛け、敬礼で返した。
 ナタル自身、気付いてはいないが、他のクルーからは、雰囲気が柔らかくなったと、裏ではそんな話が飛び交っている。
 そのせいか、トールとミリアリアはナタルに笑顔を向ける。
 以前のようにピリピリとした雰囲気ではなく、程良い緊張感がメリハリと活気を与えていた。
 二人がナタルの横を通り過ぎる時にと、他のクルーが声を掛ける。以前なら、こんな事すら出来なかったかもしれない。

「お疲れー」
「はい!お疲れ様でした、失礼します!」

 トールは扉を出て行く前に振り返り、クルーにも挨拶をしてミリアリアと共にブリッジを後にした。 
 サイは、トールがさっきまで座ってた席に腰を下ろすと、カズイに声を掛ける。

「さて、カズイ、始めるか」
「うん」

カズイが頷くと、サイは作業の進行状況の確認をする為にキーボードを叩く。
 カズイもアークエンジェルのコンソールに慣れたのか、意外な程に素早い。
 
「今、どれくらい組み上がってる?」
「八割くらいかな……。残りは、ほとんどは操縦系だからね」
「操縦系は、キラに見て貰わないと無理だからな……」

 サイは、カズイの言葉にキーボードを叩く指を止めると、別ウィンドウで操縦系のプログラムを呼び出し、確認をする。
 カズイが画面を確認しながら言う。

「操縦するのはキラだからね。調整もして貰わないと」
「ああ。キラが調整するだけで済むように早めに組んでおこう」
「うん。そうだね」

 サイの言葉に、カズイは頷きながら、キーボードを叩き始めた。
 パルがカズイの手元を覗き込みながら、感心したような顔つきでいた。
 ナタルは進み具合が気になるのか、席を立ち、サイの方へとやって来て声を掛ける。

「アーガイル、進み具合はどうなんだ?」
「はい。今の処は順調だと思います」
「うまくいけば、一応、今日中くらいには組み上がりそうですよ」 
「調整がテストが必要だから、実際は、もう少し時間が掛かると思います。メカニックの人達が手伝ってくれなければ、こんなに早く出来ませんでしたよ」

 カズイが続くように言うと、サイが嬉しそうな表情を浮かべながら補足する。
 少年達ばかりでなく、アークエンジェルに居るプログラムに精通した人間や、プログラムを組めなくても、他の事で支える人達が居た事で、ここ数日でさらに強い一体感が生まれていた。
 
「そうか。お前達は、この状況下で良くやってくれている。このまま作業を続けてくれ」
「「はい」」

 ナタルが感心したように頷くと、サイとカズイは返事をして、再びキーボードを叩き始めた。
 もしかしたら、この作業は、キラの、アークエンジェルの運命を左右するかもしれない。
 未来など分からないからこそ、友と生き、生き残る為に少年達は必死にキーボードを叩き続けた

ブリッジを後にしたトールとミリアリアは、次の交代までの間、休息の時間となったので自分達の部屋へと向かっていた。
 ミリアリアが歩きながら思い切り体を伸ばした。

「んー!流石に同じ姿勢で居ると、体が固まるわね」
「ああ、なんせ、デスクワークだもんな」

 トールが、肩をグルグルと回しながら苦笑いを浮かべると、ミリアリアは微笑みながら頷く。

「でも、これでキラが助かる事が出来るなら安い物ね」
「ああ。だけど、本当は一緒に戦えれば一番なんだろうけどなぁ」
「トール……」

 誰も自分の好きな人が危険な戦場で戦うなど、喜びはしない。ミリアリアもそれは同じで、トールには戦闘機やモビルスーツには乗って欲しくはないと思っている。
 トールの言葉を聞いて、ミリアリアの表情が不安を含んだ物へと変わり、自分の隣を歩く、彼氏へと目線を向けた。
 
「――ん?なに?」
「……ううん。なんでもない……」

 トールは、ミリアリアの思いに気付く事など無く、ミリアリアは寂しそうに俯くと、首を横に振った。
 ミリアリアの素振りに気まずく感じたのか、トールは話題を変えようと口を開く。

「……そう言えば、アークエンジェルに乗って、二人きりになるの久しぶりだよな……」

「う、うん……そうね」
「……ミリィ」

 ミリアリアの頭の中ではトールへの心配事が渦巻いていたが、突拍子も無く話を振られた為、少し慌てながらも内容が内容な為、頬を赤く染める。
 トールは、ミリアリアの肩に触れると体を引き寄せ、キスをすると、ミリアリアも瞳を閉じて受け入れる。 

「……う……ん……トール……」

 長いようで、短い時間だったのかもしれない。
 ミリアリアは、トールの唇が離れると頬を染めた。