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CCA-Seed_98 ◆TSElPlu4zM氏_第17話_後編

Last-modified: 2007-11-10 (土) 18:16:31

イザークの目の前では、地球軍プトレマイオス基地の守備隊と、自分が所属するザフト軍モビルスーツ部隊との激しい戦闘が繰り広げられていた。
 集中砲火を浴びる味方機を見て、今すぐにでも飛び出して行きたい気持ちだが、作戦上、それはまだ出来なかった。
 ――それも、もう少しの辛抱だ。待っていろよ……!
 イザークは顔を歪ませると自分に言い聞かせる。
 ブリッツは隠蔽機構"ミラージュコロイド"を展開させ、月の地表伝いに移動し、敵基地内の味方の攻撃の薄い場所を移動していた。
 このように隠れて戦うのは、イザークの性に合わなかった。しかし、これも作戦であり、この機体に自ら志願して乗っているのだから、仕方ない。
 勿論、味方の攻撃を喰らい、笑い者になるつもりは毛頭無い。それも、あと数分で終わる。
 やがて、港口が見えてきた。侵入をさせない為にか、隔壁は全開にはなっておらず、僅かに戦艦が一、二隻程が出られる位にしか開いてなかった。
 そこから、メビウスが出て来るのは、中にモビルアーマーを搭載していた空母なり、戦艦がまだ待機しているからであろう。
 
「――フッ!ナチュラルどもが、俺がここに居るとも知らずにな――!」

 イザークはブリッツのPS装甲を展開させ、ミラージュコロイドを解除し、近くにあった砲台を五十ミリ高エネルギーレーザーライフルで次々と破壊して行く。
 そうしていると、一部の砲台がブリッツに対して攻撃をして来た。

「――動けもしないそんな物で俺を落とせると思うな!」

 イザークは吐き捨てるとバーニアを噴かし、砲撃を避けながら次々に狙い撃つ。やがて、ブリッツの周りにあった砲台は全てが沈黙した。
 視線を港口に向けるとザフト軍艦隊を攻撃する為か、戦艦の船首が港口から生えるように出て来るのを確認する。
 数隻の戦艦が出ている以上、内部に突入した時に戦艦が残って居なければ、クルーゼの作戦に意味は無くなってしまう。

「――戦艦か!?出させるか!」

 イザークは、ブリッツのバーニアを噴かし、港口から出きっていないドレイク級戦艦のブリッジの前へと飛び出した。
 ――ここで艦橋を叩き潰せば、座礁させる事が出来る!

「――沈めっ!」

 ブリッツは、左腕に装備されたグレイプニールを発射し、その爪で戦艦のブリッジを貫いた。
 グレイプニールを引き戻すと、ドレイク級戦艦はコントロールを失い、船体半ばを隔壁に引っ掛けるように座礁した。
 イザークは、そのままブリッツを基地内へと向けバーニアを噴かす。
 ドック内部は、ドレイク級戦艦が座礁した事で、後に続く艦艇が支えていた。それを無効化して行くように内部に移動しながらレーザーライフルで攻撃して行く。

「――こちらブリッツ!敵基地内に入った!」

 イザークは通信回線を開き、怒鳴るように伝えると、そのまま内部へと向かう。
 プトレマイオス基地内部に突入したブリッツを追うように、拠点攻撃用重爆撃装備を施したD装備のジンが次々と突入して行った。

 アークエンジェルは戦闘宙域に差し掛かり、ブリッジは緊迫した雰囲気になっていた。これが味方である地球軍の戦況が分かっていれば、また違うのかもしれない。
 CICの席に座り、トノムラが必死に通信をしているのだが、戦闘の為か電波状況が悪く、なかなか地球軍旗艦を確認出来ないでいた。
 
「――メビウス・ゼロ、発進どうぞ!」

 ここまで来れば、何時攻撃されてもおかしくはない。
 ミリアリアの声がムウに発進許可を伝えると、カタパルトからメビウス・ゼロが宇宙空間に飛び出して行った。
 メビウス・ゼロは旋回して戻ってくると、ぴたりとアークエンジェルの横を並ぶように飛行する。
 マリューはメビウス・ゼロに視線を向けると、丁度その時、トノムラが声を上げる。
 
「――地球軍第八艦隊のようです!」
「――第八艦隊!こちらからも呼びかけて!」

 マリューは、すぐに指示を出すと、味方の艦隊が第八艦隊であった事で、更に安心したのか、ほっとした表情を見せた。
 ナタルも報告を聞き、表情を緩める。

「艦長、やりましたね」
「ええ、一先ずはね」

 マリューは頷くと前方を見据えながら、一度だけ大きく息を吐いた。
 そうしていると、再びトノムラが声を上げる。
 
「――繋がりました!」
「こっちに回して!」
「――どうぞ!」
「こちら地球連合軍大西洋連邦所属艦アークエンジェル!マリュー・ラミアス大尉です!ハルバートン提督を――」

 マリューは受話器を手に取ると、必死に呼びかけを始めた。
 すると、すぐに返答があり、モニターにノイズ混じりだが、ハルバートンの姿が映る。

「――アークエンジェルか!ヘリオポリス崩壊の知らせを受けた時は、もう駄目かと思ったぞ。良く生きていた!」
「――ありがとうございます!お久しぶりです、閣下!」

 マリューは腰を上げ、そのまま敬礼をする。
 ハルバートンもアークエンジェルが無事だった事に安堵したのか、嬉しそうな表情を見せた。

「うむ。だが、今は戦闘中だ。悠長に挨拶をしている時ではない。ザフト軍の中にX-ナンバーが二機、混じっている。どう言う事か説明をしてくれ」
「――は!我々はヘリオポリスでザフト軍に襲撃を受け、四機のX-ナンバーを奪取され、その時、艦長以下、多数の戦死者が出ました。しかし、一機は無事に収容してあります。それからですが……」
「……そうか、分かった……もういい。良くここまで艦と残りのGを守ってくれた」
「……申し訳ありません」

 マリューは、ハルバートンの労いの言葉を受け、逆に四機のGATシリーズを守れなかった事に肩を落としながら謝罪の言葉を口にした。
 しかし、その姿を見たハルバートンは、状況が状況だっただけに仕方が無いと言った感じで口を開く。
 
「何を謝る?確かに残ったのがG一機と言うのは心許ないが、君達はここまでアークエンジェルと、その残りの一機を守ってきたのだろう?」
「しかし……」
「――敵モビルスーツ、こちらに向かってきます!機数、七!距離六〇〇――!」

 マリューが口を開くと同時に、チャンドラ二世が敵機の報告の声を上げた。
 すぐにマリューは、言葉を飲み、ナタルに指示を出す。

「――!迎撃用意!ナタル、少しの間、任せるわよ!」
「――は!各ミサイル発射管、全門開け!バリアント両舷起動!アンチビーム爆雷、発射用意!――ゴットフリートは使えるか?」

 ナタルは頷くと戦闘準備の声を上げ、ノイマンに声を掛けた。
 ノイマンは顔をナタルに向けると真剣な表情で答える。

「――この状況では、あまり使って欲しくないです!」
「ストライクはまだか?」
「――はい!もう少し掛かるようです!」

 ノイマンの言葉にナタルは頷き、すぐにミリアリアに確認を取ると、ミリアリアは頷いて、ストライクの出撃に時間が掛かる事を報告した。
 ナタルは、すぐに通信回線を開くとアムロに繋いだ。

「――アムロ大尉!ゴットフリートを多用出来ません。申し訳ありませんが、お願いします。あと、ストライクの出撃にもう少々掛かるようです」
「――了解した。状況報告はこっちにも流してくれ」
「了解しました」

 アムロの声が、ナタルの耳び響くと頷いた。
 その間にもマリューは、ハルバートンから指示を受けていた。

「我々は、今、アークエンジェルとGを失う訳にはいかん。頼んだぞ」
「――は!了解しました!」

 マリューは敬礼をすると通信回線は切れ、モニターからハルバートンの姿が消える。
 艦長席に腰を下ろすと、マリューはノイマンに指示を出す。

「ノイマン曹長、指示のあったポイントに向かって!補給を受けるわ。敵モビルスーツを何としても振り切って」
「――了解!」

 アークエンジェルは地球軍第八艦隊旗艦メネラオスの後方に控える補給艦と合流すべく、進路を変更する。
 しかし、確実に敵のモビルスーツが接近しつつあった。

 イージスは、第一次攻撃隊の生き残りのモビルスーツと共に敵戦艦の攻撃に回っていた。
 第一次攻撃隊と言っても、生き残ったのは片手で数えられる程で、実質、一次、二次の混成部隊となっている。
 アスランは、アークエンジェルが現れた事で、戦闘管制担当のオペレーターに自分を向かわせるように要請したが却下され、今に至っていた。

「あの艦が現れたんだ……キラが来ていると言うのに……!」

 悔しそうに言葉を吐きながらもアスランは、イージスをコントロールし続ける。
 そうしなければ、いつ撃ち落されてもおかしくはなかった。

「――くっ!」

 イージスは敵艦からの飛来するミサイルを避けると、機体を翻し、近付くメビウスを撃ち落とした。
 アスランは、母親がユニウス・セブンで核攻撃で殺されて以来、これ程、地球軍を憎いとは思った日は無いかもしれない。
 地球軍が無ければ、母は死ぬ事は無かったし、きっと自分やキラもモビルスーツなんかに乗る事は無かったかもしれない。そして、ラクスやフレイだって平和に暮らして居たに違いない。
 
「お前達が居なければ――!」

 アスランは叫ぶと、地球軍ドレイク級戦艦のブリッジの目の前まで距離を一気に詰め、イージスの左腕を振り抜いた。
 ブリッジの正面をイージスの腕が突き破る。
 アスランは、イージスの腕を引き抜く為に、船体を蹴ると腕が抜けると同時に、ブリッジの中に充満していた酸素と、まだ生きているであろう地球軍兵士の体が、イージスの開けた穴から、一気に流れ出て来た。
 そして、宇宙空間に放り出された地球軍兵士が死ぬ瞬間を目の当たりにした。
 何度も戦いで人を殺しているのに、何故だかアスランは自らの行為に恐怖した。体を震わせ、何度も顔を横に振る。

「――っ!俺は――、俺は――!」

 ――こんな事をしたいんじゃない!
と、自らの八つ当たりに対して、言い訳染みた言葉を出そうと声を荒げるが、自らの行為に言葉が続かず、「くそっ!」自分に対して吐き捨てた。
 地球軍兵士の亡骸がイージスにぶつかり、そのまま流れて行く。
 ――これはみんなを守る為の戦争なんだ……これが戦争なんだ……仕方がないんだ……。
 アスランは、自らを納得させるように言い聞かせながらも、更に体の震えが酷くなった気がした。

 補給を受ける為に、逃げるアークエンジェルを追って来たザフト軍モビルスーツを退ける為に、メビウス・ゼロに乗る、ムウ一人が奮闘していた。
 ストライクは未だ出撃出来ず、援護は、アークエンジェルの砲台代わりになっているνガンダムの狙撃と、アークエンジェルからのミサイル攻撃のみ。
 しかし、既に、アムロの狙撃でジンを一機撃墜していた。
 
「――ちっ!援護があっても一人で六機は辛いぜ!しかも、内一機はデュエルかよ!」

 ムウは機体を逸らすと、ジンからの攻撃が横を通り抜けて行った。口からは、吐き捨てるような愚痴が零れた。
 アークエンジェルから援護のミサイルが飛んで来た事で、敵機は回避行動に入る。
 ムウは、それを狙い済ましたように、一機のジンに対してガンバレルを展開させた。

「――甘いんだよ!」

 ガンバレルからの集中砲火がジン右腕を吹き飛ばすと、畳み掛けるようにリニアレールガンを発射すると、ジンのボディに直撃し爆発した。
 ムウは、ガンバレルを戻すと、全力で回避運動に入るが、メビウス・ゼロを追うようにジンが迫って来た。

「――ヤバイか!?」
「――そこ!」

 νガンダムからの狙撃が、メビウス・ゼロを攻撃しようとしていたジン見事に捕らえ、一瞬にしてジンは溶けて行った。
 ムウは肝を冷やしながらも回避運動を続け、確認するように声を上げた。

「――アムロか!?」
「大丈夫だな?」
「ああ!まだ追っかけっこの最中だが、残り四機に減ったぜ。援護頼む!」
「分かっている!こちらの攻撃に当たるな」
「――了解!――そこ!落ちろよ!」

 ムウは前にジンを捕らえるとトリガーを引き、リニアガンを連射した。
 一発がジンの頭部に当たると、一瞬、動きが止まる。そこをすかさず、リニアガンでコックピットを直撃させる。

「――おっしゃ!アムロ、キラはまだか?」
「出撃体勢に入った!」

 アムロの声を聞くと、攻撃を回避しながら後方を確認する。マークするようにデュエルが付いて来ていた。

「早くしてくれ!ゼロじゃ相手に出来ないのがいるんだ!」

 メビウス・ゼロではGATシリーズの機体を相手にするのは、あまりにも分が悪すぎる。
 ムウは苦々しい表情を浮かべると、スロットルを全開にして回避運動に入った。

 地球連合軍プトレマイオス基地司令部では続々と報告の声が上げられていた。見るからに状況は芳しくない。
 突如、姿を現したブリッツの攻撃とドックへの侵入で、最悪の状況も想定しなければならない程だった。

「――艦座礁!港口隔壁、閉まりません!敵モビルスーツ、多数、基地内に侵入!」
「――くっ!どこに隠れていたと言うのだ!」

 司令官が鬼気迫る表情でモニターを見つめながら言葉を吐く。
 座っていたオペレーターが司令官へ顔を向けると、困惑気味の表情で報告を始める。

「……侵入した新型機種特定しました……。地球連合軍……GAT-X二〇七 ブリッツです」
「――な、なんだと……!?」

 司令官は愕然とした表情になった。
 GATシリーズは地球連合軍の切り札となるはずの機体だった。それがこうして、プトレマイオス基地を攻撃しているのだから、無理もない。
 そこへ、再び、追い討ちを掛けるように別のオペレーターが報告の声を上げる。

「――基地上空の敵新型機、GAT-X一〇三 バスターです!」
「……ハルバートンの計画が仇となったか!とにかく、ここをやらせる訳にはいかん!打ち落とせ!最深部、工場区、火薬庫に繋がる隔壁は全て閉鎖しろ!」

 報告を聞くと、その険しさが更に険しい表情へと変わって行くと、オペレーターが凍りついたように見つめていた。
 司令官は、すぐに大声で指示を出すとオペレーター達が再び動き出した。

「第八艦隊はどうしている?」
「現在、地球衛星軌道上で交戦中のようです」
「――ちっ!地球の馬鹿どもが、ザフトの幼稚な作戦に掛かりおって!その皺寄せがこれかっ!第八艦隊にこの事を知らせてやれ!癪だが、月の各基地に支援要請だ!」

 司令官の隣に立つ副官が第八艦隊の状況を答えると、腹立たしさを隠さないまま、新たな指示を出した。
 その間にも、続々と報告が上がり、そしてオペレーター達によって処理されて行く。

「――ドック第二層隔壁閉まりません!敵モビルスーツ、ドック第三層侵入!」
「――ちっ!……このままでは、ユーラシアの連中を増長させる材料にもなりかねん……」

 新たな報告に、司令官は舌打ちをすると、誰にも聞こえない程の声で呟いた。
 決断を下さなければ壊滅の危険性も有る。司令官は最終手段として、完全な守りに入る事を決定した。

「下ろせる隔壁は全て下ろせ!対核用の隔壁もだ!場合に因ってはドックは破棄してもかまわん!」

 司令官の声がフロアに響き渡ると、オペレーター達が動揺したような表情を見せる。
 プトレマイオス基地は、元々、大西洋連邦の宇宙での要となる基地で、ドック、火薬庫、工場区、司令部などは核攻撃などにも耐えうるだけ強固な造りをしている。
 対核用の隔壁は通常の三倍近い厚みを持ち、特殊合金製を使用している為、早々突破は無理な代物なのだ。

「――!し、しかし、それではドック内に残された味方が!」

 副官がオペレーター達の動揺を代弁するかのように声を上げた。
 それを睨みつけるように司令官は口を開く。その顔は鬼のような形相だった。

「隔壁を下ろさずに基地内で艦船を爆発してみろ!この基地とて、唯では済まん!犠牲は已む得ん!」
「――りょ、了解しました!」

 司令官の言葉を聞き、副官は顔を青ざめさせた。
 何があっても、このプトレマイオス基地を落とされる訳にはいかない。それは、地球連合宇宙軍内での覇権争いで大西洋連邦の敗北を意味する。
 敵はコーディネイターばかりではないのだ。

 キラの目の前には宇宙空間が広がっていた。その先には光が瞬き、そして消えて行くのを繰り返している。
 既に、アムロもムウも出撃し、アークエンジェルの外でザフト軍との戦闘に突入していた。
 キラは予想以上に掛かったプログラム調整を焦りながらも終わらし、ようやくカタパルトデッキにストライクを進めた処だった。
 背中にストライカーパックが装備されると、暗いストライクのコックピットにミリアリアの声が響く。

「――ストライク、どうぞ!」
「――キラ・ヤマト、ストライク行きます!」

 キラの声と共に、ストライクはアークエンジェルを飛び出して行く。そのままバーニア噴かし、アムロのνガンダムへと通信回線を開く。
 
「アムロさん、アークエンジェルをお願いします!」
「分かっている!キラこそ援護の砲撃に当たるなよ!」
「はい!」

 アムロの声を聞くと、アークエンジェルから五〇メートル程離れてアグニを構えるνガンダムを確認する。
 キラはバーニアを噴かし、ムウの援護へと急ぐ。
 戦闘はアークエンジェルから、それ程離れていな宙域で行われていた。すぐにコンソールの画面で敵機の数を確認する。数は四機。
 ムウに通信回線を開くと同時にPS装甲を展開させ、一番近くに居たジンへと攻撃を仕掛ける。
 
「ムウさん、遅れました!援護に入ります!」
「ようやく来たか!とっとと倒して補給を受けようぜ!」
「はい!」

 ジンもストライクに気付いたのか、メビウス・ゼロからストライクへ攻撃対象を変え、ライフルで反撃して来た。
 キラは、ジンをイーゲルシュテルンで距離を取りながら出方を窺う。しかし、ジンは一気に距離を詰めて来た。

「――今だ!当たれ!」

 キラは、すかさずストライクの右肩に装備されたガンランチャーに装備された一二〇ミリ対艦バルカン砲のトリガーを引いた。
 しかし、ジンは易々と攻撃を避け、反撃へと転じる。

「――外れた!?狙いが甘かった!?――くっ!――機体が重い!?」

 キラは、エールパックにガンランチャーを装備している為か、機動性が落ちているように感じた。
 ジンの攻撃を何とか回避すると、再び距離を取る。キラは、アムロに教えてもらった事を反復するかのように回避行動を取りつつ、距離を詰め始めた。
 最初の攻撃が失敗したのは、マニュアルに切り替えるタイミングがうまく行かなかなかったのが原因だった。

「――今度こそ!」

 マーカーがジンを捕らえると、キラはタイミングを見極めながら砲撃をマニュアルに切り替え、操縦桿を細かく動かす。そして、トリガーを引いた。
 バルカン砲が再び火を噴き、ジンの左肩からボディの上部を削って行く。頭部が吹き飛ぶと同時にジンは爆発を起こした。

「やった!次は!?――ムウさん!?」

 キラは、すぐに機体を旋回させるとメビウス・ゼロの位置を確認して、バーニアを噴かした。
 メビウス・ゼロはデュエルとドックファイトを繰り広げていた。追加装甲アサルトシュラウドのを装備したデュエルのスピードは予想以上に素早い。
 ムウはレールガンを叩き込んだが、PS装甲の上に更に装甲がされている為、完全なお手上げ状態だった。

「――糞!やっぱゼロじゃ、こいつは辛いぜ!」
「その機体は僕が相手をします!もう一機をお願いします!」
「すまん!こいつは頼んだ!」

 キラからの回線にムウは答えると、機体を大きく逸らしてデュエルの攻撃をかわす。
 そこへ、狙ったようにアムロの援護の攻撃が入ると、デュエルはメビウス・ゼロを追うのを止め、今度はストライクへと向かって行った。
 キラは、デュエルが接近するのを確認すると、一度、牽制でバルカン砲を放ち、ビームライフルを構えながら回避行動に入る。

「――追加装甲を装備しているからって!」

 何故だか知らないが、デュエルは追いかては来るが攻撃はして来ない。
 キラは、ストライクをデュエルの下へと回り込ませると、デュエルの動きを封じ込める為に、三二〇ミリガンランチャーのトリガーを引いた――。

「――えっ!?」

 発射されるはずのガンランチャーが発射されず、再度、トリガーを引くが、やはり、ガンランチャーは発射されなかった。

「――プログラムミス!?――まずい!」

 キラは目の前に迫るデュエルを回避しようとするが、デュエルはストライクを捕まえようと手を伸ばした。
 デュエルがストライクを捕らえたのか、揺れがキラを襲う。

「――うわっ!」
「――攻撃をやめてください!キラ……キラ・ヤマトさんですよね?」

 突然、聞こえて来た声にキラは驚き、どうして自分の名前を知っているのかと戸惑った。
 モニターにはデュエルの腹部が映っていた。

「――え!?……君は?君は誰?」
「僕は、ニコル・アマルフィと言います。アスランの友達です」
「――アスランの!?」
「……はい。それからフレイ……フレイ・アルスターも友達です」

 久々にフレイの名を聞き、更に驚きが増す。
 アークエンジェルでの多忙な日々で、頭がフレイの事まで回らなかったが、好きな女性なのだから、忘れる筈も無い。

「――フレイ!?どうしてフレイ・アルスターを知ってるの!?」
「アスランがへリオポリスで助けて仲良くなりました。今はプラントに居ます」
「アスランが!?フレイは無事なの?」
「はい。元気にしてますよ」

 ニコルの話を聞いたキラは、アスランがフレイ助けた事を、自分が知っている昔の彼らしく優しい行動だと思った。そして、同時にフレイが無事だった事に安堵する。
 しかし、それだけの理由で敵であるニコルが、声を掛けるはずなどありえない。

「そう……良かった……。それで、僕に何の用?」
「アスランもこの宙域にいます。アスランは、あなたとは戦いたくないんです。あなたが居れば、戦わなければいけなくなる……。だから、戦うのを止めてください!お願いします!」

 ニコルは、思い詰めるような感じでキラに自分の願いを話した。
 キラは、その話を聞き、アスランの為に一生懸命になれるニコルも優しい人間なんだと感じる。
 しかし、ニコルの願いを聞くと言う事は、一度決めた自分の覚悟を捻じ曲げる事になる。それは、友達やアークエンジェルの人達を裏切る事だった。そして、ニコルが言っていたフレイの事が引っ掛かり始める。

「……僕だって、アスランと戦いたくないよ!でも、みんなを傷つけて、僕達の帰る場所を壊したのは君達じゃないか!――もしかして、フレイはその為の人質なの!?」
「――違います!フレイとは本当に友達なんです!人質なんかに取りません!信じてください!」
「……信じていいんだね?……嘘なら許さないから!」

 ニコルは取引に為に、フレイの事を話したのではないと必死に弁明しようとする。
 キラも、ニコルの必死さを感じ取ったのか、頷くと、釘を刺すように言葉を付け足した。
 キラの言葉に答えるように、ニコルは口を開くと、自分の想いをぶつける。

「――はい、嘘じゃないです!……へリオポリスの事は、確かに僕達に非はあります。だけど、あなたとアスランは友達なのに戦うなんて、おかしいですよ!それに、あなたはコーディネイターなんでしょう?」
「――おかしい?僕とアスランが戦うのがおかしいの?ナチュラルだからコーディネイターだからなんて関係無い!僕は友達や大切な人達を守りたいから戦ってるんだ!」
「――!」

 キラは、ニコルの言葉で火が着いたのか、捲くし立てるよに言うと、ニコルはショックを受けたように、一瞬、言葉を失った。
 そして、しばしの無言の後、泣きそうな声でキラに怒りをぶつけるように言葉を吐く。

「……それじゃ、アスランは友達じゃないんですか!?アスランを傷つけるんですか!?」
「……今だって友達だって思いたいし、傷つけたくないよ!でも……アスランがアークエンジェルに居るみんなや友達を攻撃するなら、僕はアスランでも許さない!僕は、みんなを守る為に戦うって決めたんだ!」
「……そうですか……。どうしてもアスランの敵になると言うんですね!――それなら、僕はアスランの為に戦います!」

 キラの言葉は、ニコルを絶望させる。
 ニコルは憎しみが分かる程、力のこもった言葉を吐き、ストライクを睨みつける。
 キラと言う人間は、ニコルにとって、本当の意味で敵になった。

 そのような状況の中、νガンダムはアグニの砲身はデュエルに向けられているが、ストライクが密着している為、撃つに撃てないでいた。
 ストライクとデュエルが絡まったまま動かない事に、アムロが声を上げる。

「ムウ、キラが止まっているぞ!何があった!?」
「キラの馬鹿野郎!なに止まってんだよ!アムロ、ジンは頼んだ!」
「分かった!キラを頼む!」
「了解!」

 残り一機のジンに軽微なダメージを与えた処で、ムウがストライクを確認すると、旋回してストライクへと向かった。
 勿論、ムウが相手をしていたジンは急旋回をすると、メビウス・ゼロを追い始める。
 アムロはその間に、アグニの狙いをデュエルからジンへと変え、狙いを定める。

「――当たれ!」

 アムロはトリガーを引くと、アグニから光の束が走り出し、メビウス・ゼロを追うジンの側面にビームを直撃させる。
 ジンはビームに飲み込まれ、溶けると同時に爆発を起こした。

 密着した状態のストライクとデュエルは睨み合ったまま、動かない。
 キラもニコルも互いがどの様に動くのか分からない為、動くに動けないでいたが、その均衡をニコルが崩す。
 デュエルは、ストライクを抱えるようにしていた左腕を解くと持っていたシールドで突き飛ばし、右手に持ったライフルを捨て、ビームサーベルを握った。

「――覚悟してください!あなたをアスランには近付けさせません!」
「やられる!?」
「――くっ!逃がしませんよ!」

 キラは咄嗟に、バルカン砲のトリガーを引き、デュエルに向かって乱射をしながら回避行動はと入った。
 デュエルはシールドで防ぎつつ、回避しながらもストライクに近付こうとしていた。
 そこへ、メビウス・ゼロがデュエルの側面からストライクの援護に入る。

「――馬鹿野郎!何やってんだ!」

 ムウは叫びながらガンバレルを展開させ、デュエルに向けて攻撃を放つ。
 その攻撃は。デュエルに直撃し、コックピットのニコルは激しい揺れに襲われた。

「――うわ!?」

 ムウは、すぐに回避運動に入り、ストライクの方へと向かう。
 その隙に、ストライクはバーニアを噴かすと、一気にデュエルから距離を取った。

「ムウさん、済みません!」
「とっとと、体勢を整えろ!一度、後退するぞ!」
「――はい!」

 キラが頷くと、メビウス・ゼロはストライクから離れ、アークエンジェルへと向かう。
 ストライクも続こうとするが、デュエルがしつこく追いかけて来た。
 そこへ、アムロの援護が入る。

「――!」

 辛うじてデュエルは回避するが、続けて二射目が来る事を注意してか、回避運動に入るが、それでもストライクを追おうとした。
 ストライクはバーニアを噴かすとデュエルを引き離し、アークエンジェルへと向かった。
 その途中、前方に六機のメビウスを確認すると、その一機から通信が入った。
 
「――新型か!あれは俺達が抑える。お前は早く下がれ!」
「――はい!」

 キラは、返事をすると更にペダルを踏み込む。
 メビウス編隊とのすれ違いざまに再び通信が入った。先程の通信とは全く違う人物のようだ。

「おい、新型の!戦いが終わったら、酒の一杯も奢れよ!」
「――はい!みなさん、援護ありがとうございます!」

 キラは少し可笑しそうに笑うと、援護に来てくれた彼らに感謝し、アークエンジェルへと帰艦する。
 アークエンジェルは補給の為、地球軍第八艦隊旗艦メネラオスの後方に控える補給艦へと向かって行った。