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CCA-Seed_98 ◆TSElPlu4zM氏_第17話_前編

Last-modified: 2007-11-10 (土) 18:16:16

地球衛星軌道上で、智将ハルバートン率いる地球軍第八艦隊とザフト軍特務隊FAITH隊長であるユウキが率いる艦隊が戦闘を行っていた。
 地球軍第八艦隊は、敵機動兵器であるモビルスーツと自軍の主力攻撃機であるモビルアーマーの性能差は明白ではあったが、その差を数で補い、現状の戦況は有利に動いていた。
 その反対に、ザフト軍は臨時編成された艦隊ながらも、シルバーウインド号の一件もあり、将兵の士気は高く、モビルスーツの性能を生かし数的不利を覆そうと奮戦していた。
 その中、地球軍第八艦隊旗艦メネラオスのブリッジでは、ハルバートンが戦況を見つめていた。

「――第一次攻撃隊のメビウス、損耗率、三五パーセント超えました!」
「……やはり性能の差が出ているか」

 オペレーターの伝える報告に、ハルバートンはモビルアーマーではモビルスーツに対して不利であると言う、現実を目の前に苦い思いをしながら呟いた。
 ハルバートンの呟きを聞いたホフマンは、神妙な顔つきで聞いて来た。

「第二攻撃部隊の出撃、いかがいたしますか?」
「出せるか?」
「既に整っております」

 ホフマンは軍人らしい返事を返した。
 その時、オペレーターの声が響く。

「――敵艦より新たな機影!数、三〇以上!ザフト軍第二陣の攻撃部隊かと思われます!」
「この数、本命が来おったか!」
「第二攻撃部隊、出撃させます!」
「うむ」
「――第二次攻撃部隊、出撃!」

 ハルバートンが頷くと、ホフマンが声がブリッジに響き渡る。
 号令と共に、発進体勢に入っていたメビウス攻撃隊の第二陣が続々と艦を発進して行く。

 ハルバートンとホフマンが、飛び去って行くメビウスを見送る中、続々と報告の声が上がる。

「――敵モビルスーツ、識別!ジン、多数!先鋒の艦隊、砲撃戦開始しました」
「――先方の艦より入電。敵軍に新型のモビルスーツが投入されているようで……えっ!?」
「――どうした?」
「――は!失礼しました!どうやら新型のモビルスーツのようです!ただ、該当する機種データがあったので……」
「――はっきりせんか!」

 ハルバートンは、煮え切らない返事をするCICの将校に対して、苛着いたように怒声を浴びせる。
 怒鳴られた将校は座ったまま背筋を伸ばすと、すぐに報告を始める。

「――は!該当機種、地球連合軍GAT-X一〇二 デュエル、GAT-X三〇三 イージスです!」
「「――!」」
「識別信号はザフト軍の物となっております」

 その報告に、ハルバートンは息を飲んだ。
 ザフト軍と引き離されたしまった、機体性能での戦力差を逆転させる為、自らが中心となって推し進めた来た計画で完成した機体を奪われてしまうとは、悪夢でしかなかった。
 それを知るホフマンが、苦汁の表情を浮かべながら口を開く。

「――な、なんとした事か!」
「――くっ!……よりにもよって、ザフトの手に落ちているとは!」
「閣下、どういたしますか?」
「――敵の手に落ちたとなれば、敵である事には変わりない!撃ち落とせ!」

 本来、味方であるはずのGATシリーズは、PS装甲を装備している以上、メビウスを主力としている地球軍には、今までのモビルスーツ以上の脅威だった。
 しかも、敵の手に渡ってしまった以上は、やはり敵でしかない。
 ハルバートンは、ホフマンの表情以上に鬼気迫る表情で、腹の底から声を上げると、ブリッジの空気が震えたかのように響き渡った。

 月の地球連合軍プトレマイオス基地を眼前に見据え、クルーゼが指揮を執るザフト軍艦隊は、ブリッツを単機出撃させると、再び慣性飛行でプトレマイオス基地へと近づいていた。
 エンジンを停止させ、慣性飛行をしているとは言え、流石に巨大な鉄の塊である戦艦が見つからない訳は無い。
 イザーク・ジュールが乗る、ブリッツを出撃させてから、二十分程の時間が経過していた。
 クルーゼは、一度、時計を見るとニヤリと微笑み、静かに口を開く。

「……そろそろ、いい頃合いだな。モビルスーツ隊の発進準備をさせろ。艦隊は最大加速で地球軍月基地へ向かえ」
「――は!全艦、発進せよ!」

 アデスの口から号令が響くとヴェサリウスの船尾に一瞬、青白い炎が見え、船は一気に加速し始める。
 ヴェサリウスを追うように他の艦も、船尾に炎の尾を引きながら加速して行く。
 クルーゼは、モニターを見据えながらも冷笑を浮かべながら、アデスに言い聞かせるように静かに口を開く。

「アデス、敵も馬鹿ではないだろうから、我々が着く前に迎撃機を出して来るだろう。通常装備のジンとバスターを出せるようにしておけ。D装備の機体は後からでかまわん」
「――は!」

 クルーゼはアデスの返事を聞き流し、受話器を手に持つと回線を開いた。

「ディアッカ、準備は出来ているか?」
「隊長、待ちくたびれましたよ」
「――ふっ。それは悪い事をしたな。ディアッカ、分かって居ると思うが抜かるなよ」

 受話器から響くディアッカの声は、待っていたとばかりに喜々とした物だった。
 ディアッカの言いようにクルーゼは苦笑いを浮かべつつも、淡々と上官としての責務を勤める。言うべき事を伝えると受話器を置き、再び視線を眼前にある地球軍基地へと向ける。
 そこに吸い込まれるように艦隊から次々にモビルスーツが発進して行った。

 アークエンジェルの格納庫では、間もなく始まるであろう戦闘の為に、所狭しとメカニックのスタッフ達が動き回っていた。
 キラも同様に、ストライクのコックピットの中でキーボードを叩き続けていた。
 本来なら、もうプログラムの調整は終わっていてもおかしくはなかった。しかし、キラはそれ以外のプログラムにも手を加えた為、時間を費やしていたのだった。

「間に合え、間に合え……」
「――キラ、ストライク、発進準備完了してますか?」
「――まだ……もう少しだけ待ってください!」

 キラが呪文のように呟きながら、素早いキーパンチをしていると、スピーカーからミリアリアの声が響いた。
 一瞬、視線をコンソールに向けると、切羽詰まったように声を上げて、再びキーボードを叩き始める。
 ミリアリアは、キラの声から切羽詰まっているのを感じたのか、少し言い淀みながらも声を出す。

「……分かりました。――アムロ大尉、νガンダム、発進準備お願いします」
「了解した」

 既に出撃準備を済ませていたアムロは、シートの後ろに引っ掛けておいたヘルメットを取ると、何時ものように被った。
 そして、コックピットを閉じようとコンソールのスイッチに手を伸ばそうとした時、マードックが覗きこむように顔を見せた。

「大尉さん、フィン・ファンネル取り付けなくていいんですね?」
「壊れて使えない物を装備しても返って邪魔だ。離脱する場合は、取りに戻るか、放出するかを指示する」
「分かりました。……坊主には言わなくていいんですか?」

 マードック頷くと、νガンダムの隣のハンガーに立つストライクに目線を向ける。同じようにアムロもモニター越しにだが、ストライクに視線を向けた。
 本来なら、世話になったキラに艦を離れる可能性が有る事を告げてもいいのだろうが、アムロ自身、どうすればいいのか判断が就かない以上、不用意にこの事を告げ、動揺させるのは得策では無いと思っていた。
 アムロは目線をストライクからマードックへと移すと、口を開く。

「……もし、俺が離脱したとしても、事情を知っているキラが恨み言を言うと思うか?」
「……いいや。やられないで下さいよ!――νガンダム、出るぞ!」

 マードックは、アムロの不器用さに苦笑いを浮かべながら首を横に振りながら答えると、コックピットを離れ、下に居るスタッフ達に向けて、声を上げた。
 アムロは操縦桿を握ると軽くペダルを踏み、νガンダムを前へと進ませ、格納庫の一角に置いてある三二〇mm超高インパルス砲をνガンダムに握らせた。
 その間にも、ムウの乗るメビウス・ゼロにも出撃の準備が進められて行く。

「――フラガ大尉、メビウス・ゼロ、発進準備お願いします」
「了解、了解!」

 ミリアリアの声に、ムウは軽い調子で答えた。
 すると、メビウス・ゼロが固定されいる台座ごと前に押し出され、オレンジの機体がカタパルトデッキへと向かって進んで行く。
 先に発進準備に入っていたアムロは、背後のエアロックが閉じて行くのを感じながらミリアリアに声を掛ける。

「――ブリッジ、ハッチを開けてくれ!それから、エネルギーケーブルの準備を!」
「――了解しました。エアロック閉鎖確認。二番カタパルトデッキ開放します」

 スピーカーからミリアリアの声が響くと、閉じていたハッチが開き目の前に暗い宇宙空間が現れる。その先では、星が瞬くように所々で爆発が起こっていた。
 アムロは、バイザーを下ろすと軽くスロットルを開き、νガンダムを甲板へと発進させた。

「あー、こちら、ゼロ。一番カタパルトデッキにて発進態勢で待機する」
「――了解しました」

 メビウス・ゼロもカタパルトデッキに固定され、いつでも出撃態勢に入っていた。
 ムウもミリアリアに報告を終えると、ストライクへと通信回線を開き、キラに声を掛けた。

「キラ、まだ掛かりそうなのか?」
「――あ!はい!済みません!」
「ああ。いいって!」
「本当に済みません。すぐに済ませます!」

 キラは相当焦っているのか、慌てたように答えた。
 ムウは、発進態勢にも入れていないキラを焦らせてしまったのを取り繕うように口を開いた。
 
「いや、焦っても良い事ないんだから、しっかりやってくれれば構わないさ。あー、それから、同じチームなんだ、俺の事もアムロと同じようにムウで構わねえよ。邪魔して悪かった」
「……いいえ!ありがとうございます、ムウさん」

 キラは、一瞬、戸惑いながらもムウの気遣いに感謝すると嬉しそうに礼を述べ、通信回線が閉じられた。
 少し肩の力を抜いたキラは、再びでキーボードを叩き始めた。

 アークエンジェルの厨房は完全に火が落とされ、静まり返った食堂は戦闘態勢に入った事を感じさた。
 アークエンジェルがザフト軍との戦闘に入る事を知らなかったラクスがその事を知ったのは、厨房での仕事を終え、部屋に戻る途中の事だった。
 ブリッジに向かおうとしたラクスを、厨房のスタッフ数人が引きずるように部屋の前までやって来た。

「お願いします!私を艦長さんの所に――!」
「あなたは、部屋で大人しくしていなさい」
「――お願いします!」

 両脇を男性スタッフに固められ部屋の前に立つラクスは、女性スタッフに向かって懇願するかのように声を上げた。
 女性は両脇を固めているスタッフに対して「離して」と言うと、ラクスは開放される。
 ラクスの両脇を固めていた男性スタッフはブリッジへの通路を塞ぐように立ち位置を変えた。
 女性はラクスに対して、目線を外さずに告げる。

「あなたの気持ちがどうあれ、アークエンジェルは地球軍の軍艦なの」
「しかし、私なら――」
「――思い上がらないで!」
「――!」

 ラクスは「――戦いを止める事が出来るかもしれません」と続けようとしたが、言う事を聞かないラクスに対して業を煮やしたのか、女性は怒鳴りつけた。
 怒鳴りつけられたラクスは、驚き言葉を続ける事が出来ず、ただ息を飲んだ。
 厨房スタッフとて、ラクスのプラントでの立場を知らない訳ではない。マリューの命令があったとは言え、仕事を手伝ってくれるラクスに信頼を置き始めていた矢先でこの出来事だ。
 女性はラクスを見据える。

「あなたがプラントでどれ程の立場だとしても、ここでは、ただの民間人です。あなたにアークエンジェルや戦場を、どうこう出来る権利は無いのよ」
「――!」

 ラクスは、女性から告げられた言葉に息を飲んだ。そして自ら置かれた立場を改めて自覚し、無力さに俯く他なかった。

「早く部屋に入りなさい」

 女性は部屋に入るよう促すが、ラクスは俯いたまま肩を震わせ、目尻にかすかに涙を溜めていた。

「……分からないの?……それなら」

 動かないラクスに、女性は眉間に皺を寄せると腰のホルスターの銃を抜いた。そして、スライドを引き、弾を薬室に送り込むとラクスに対して銃を構えた。
 今まで銃など向けられた事など無いラクスは、顔を上げると目を見開く。

「――!」
「あなたと同じコーディネイターの彼も出撃するわ。こんな事を言いたくないけど、あなたがブリッジに行って迷惑を掛けている間に、彼や私を含め、アークエンジェルのみんなが死ぬ事になるかもしれないのよ」
「……キラや……みなさんが……ですか……?」

 女性は強張った表情で告げると、ラクスは途切れ途切れに呟きながら、再び俯く。
 ラスクは、自分を受け入れてくれたキラやアークエンジェルの乗組員に死んで欲しくはなかった。

「そうよ。だから、大人しく部屋に入りなさい。お願いだから、私にこんな真似をさせないで」
「……はい……」

 女性の言葉にラクスは力無く頷いた。
 それを見た女性は息を吐く。本当は銃など向けたくはなかったのだろう。ほっとした表情で引き金から指を外した。

 すると、通路を塞いでいたスタッフ達の背後から、黄緑色の鮮やかなロボット鳥が飛んで来た。

「トリィ」

 人工的な合成音の声を上げながらロボット鳥は、ラクスの肩に舞い降りた。

「……ロボット鳥ですか?」
「トリィ?」

 ラクスは肩にちょこんと泊まるロボット鳥に驚きながらも、手の平を出してみる。すると、ロボット鳥はラクスの手に跳ねるように跳び移った。
 女性が銃をホルスターに収めながらラクスに言う。 

「このロボット鳥、彼のじゃない」
「……彼?……キラの……ですか?」
「ええ。何度か見たわ。銃を向けて悪かったわね。早く部屋に入って」
「あ、はい……」

 女性に促され、ラクスは部屋に入ると扉が閉じられる。電気を点けていない部屋は暗い。
 ラクスは、瞳を潤ませながら手に乗るキラのロボット鳥を宝物のように見つめる。そして、戦闘を止める事の出来ない胸の内を呟く。

「誰も助ける事の出来ない……私は……どうすれば良いのですか……?」
「……トリィ?」

 ロボット鳥はラクスを覗き込むように見上げながら首を傾げた。
 今のラクスには、キラとアークエンジェル、そして、戦場に居る全ての者の無事を祈る事しか出来なかった。

 地球軍第八艦隊の猛攻の中、ザフト軍モビルスーツ隊は獅子奮迅の働きを見せていた。
 モビルスーツ一機に対してモビルアーマー五機分と言われるが、ザフト軍は決して戦力的には負けている訳では無い。しかし、一気に襲い掛かられれば、やはり絶対的な物量差は脅威でしかなかった。
 そのような戦いを強いられる中で、これだけ持ち堪えているのは、アスランにとっては皮肉にも士気を上げる原因にもなったラクスのお陰でもあった。
 アスランは戦場を見回し、自軍のモビルスーツの展開が薄い場所を見分けると、援護に向かう為にスロットルを開いた。

「両翼の展開が薄いか!ニコル、俺は左翼の敵を叩く」
「分かりました。僕は右に展開します」

 アスランの通信に応えるようにニコルが返事をすると、二人はそれぞれのポイントへと向かわせる。
 その中、ジンとは明らかに違う新型の機体の為か、執拗に狙われる。

「このイージスを狙って来ているのか!?チョロチョロと!」

 アスランはハエのように集るメビウスに吐き捨てると攻撃を避けた。
 攻撃して来たメビウスをビームライフルで狙うが、攻撃を阻止するかのように他のメビウスが、すぐにイージスを攻撃して来た。

「――ちっ!」

 舌打ちをすると、直ぐに回避行動に入り、反撃をする。撃ち落すが数が多く減ったと言う気がしなかった。
 これだけの物量差を見せ付けられると、本当に生き残れるのかと思ってしまうが、PS装甲を搭載した最新鋭機とは言えど、隙を見せれば死に繋がる。泣き言は言ってられない。

「――地球軍め!数だけは多い!」

 再び攻撃をして来たメビウスを叩き落すと吐き捨てる。終わりが有るのかと思える程、次々とイージスに襲い掛かるメビウスに、アスランは苛立ちを見せ始める。
 その時、味方艦からの通信回線が入って来る。

「――北天側が抜かれました」
「――展開している部隊は何をしているんだ!」

 内容を聞いたアスランは腹立たしげに言葉を吐くと、通信回線を開いた。
 その間にも操縦桿を動かしながら敵の攻撃を避ける。
 アスランは、戦闘管制担当のオペレーターに捲くし立てるように口を開き、北天側へと機体を向ける。

「――こちら、イージス!両翼に部隊を割いてくれ!北天には俺が向かう!あと、状況を教えてくれ!」
「――既に北天側には、中央の数機がカバーに回っています」
「突破した敵機は!?」
「突破した敵機は艦から迎撃機を出します。イージスは第一次攻撃隊のジンと交戦中の敵艦を叩いてください!」
「――っ!了解!」

 アスランは新たな命令に舌打ちをすると、指示の通り、第一次攻撃隊と合流する為にイージスの向かう先を変える。
 最も砲火が激しい宙域に向かって、イージスはバーニアを噴かし飛んでいった。

 アークエンジェルのブリッジからも眼前で行われている戦闘の光が確認出来る程の距離に来ていた。
 最大船速での移動の為、戦闘の光は見る見るうちに大きく見えるようになる。その光の中にアークエンジェルは、この後、飛び込まなければならない。
 マリューは、その光景に息を飲みながら報告を待っていた。

「――あと三六〇秒程で、目的ポイントに到達します。現在、戦闘が行われています」

 チャンドラが報告の為、声を上げるが、報告が無くとも見れば目の前で戦闘が行われている事を確認は出来る。
 マリューは目で見て分かる事よりも、第八艦隊の戦況が気になった。

「戦況は分かる?」
「流石にそこまでは……。ただ、電波がかなり入り乱れていますから、規模は大きいですね」
「ええ。引き続き、分かる事が出て来たら報告を!」

 分かる事しか報告出来ないのは理解出来るが、マリューが欲しい情報は何一つ無い。
 マリューは、少し苛立たしげにチャンドラに言うと、顔をノイマンへと向ける。

「――エンジンの方はどう?」
「今の処は問題はありませんが……、ローエングリンを撃つのは無理だと思ってください」

 マリューは、こうなる事は分かってはいたが、再度、確認するかのように顔をナタルへと向けた。

「他の兵装は?」
「イーゲルシュテルン、コリントス等の兵器は問題はありませんが、ゴットフリート等のビーム兵器を多様するのは危険かもしれません」
「……アグニに回して、エネルギーは問題は無いの?」
「ゴットフリートに比べれば消費量は少ないですから、問題はありません。むしろ、ゴットフリートを使用するより、アムロ大尉の射撃の方が遥かに撃墜率は高いはずです」

 マリューは、ローエングリン以外の兵器にも支障を来たす可能性がある事に眉間に皺を寄せるが、ナタルは、その事をあまり心配をしていないのか、軽く首を振ると真っ直ぐにマリューを見据えた。
 
「ええ。……だとしても、武器をフルに使用出来ないのは心許ないわね」

 マリューは頷くが、ナタルには、アムロが離脱する可能性がある事を伝えていない。
 その事を知らないナタルがアムロを当てにしているは分かるが、アムロが離脱すればアークエンジェルの戦力は半減しする事は明らかだった。
 マリューは、ムウにアムロに、離脱の事を伝えて貰った事を後悔はしてはいないが、せめて、この戦闘が終わるまでは残ってくれる事を願った。
 マリューの言葉を聞いたノイマンが、目の前に広がる宇宙空間を見据え、艦の操舵をしながら呟く。

「どこかのタイミングで、エンジンを休ませる事が出来れば、持ち直す事も出来るんだけどな……」
「……今は仕方ないわね。みんな、頼むわね」

 ノイマンの呟きを聞き取ったマリューは、険しい表情を浮かべながらもブリッジの全員に聞こえるように言った。
 アークエンジェルは、白い船体を滑らせるように光の尾を引いて、目の前の光の中へと進んで行った。

 地球連合軍プトレマイオス基地では、ザフト軍の突然の来襲に慌てふためいていた。
 基地に居る者は、誰一人として、地球連合軍の宇宙の要であるプトレマイオス基地を攻撃して来るとは思っていなかった。
 基地内の司令部は状況報告が続々と入って来ていた。

「――ザフト軍艦隊及び、敵モビルスーツ隊、接近中!」
「ここを攻撃するつもりか?迎撃態勢に入れ!メビウスを出撃させろ!」
「――は!」
「コーディネイターめ!何を考えている!?」

 基地司令である壮年の男は指示を出すと、モニターに映る敵を睨みつけながら、予想外の来襲に吐き捨てた。
 慌しく士官たちが動く中、司令官が声を上げて新たなる指示を出す。

「守備隊は迎撃態勢に入れ!出撃可能な艦艇は出撃させろ!何としても近付けさせるな!」

 その命令により、迎撃用の砲台が生えるように迫上がり、砲身がザフト軍へと向けられる。
 あとは、司令官の号令一つで火蓋が切られるのを待つばかりだった。

 ハルバートン率いる地球軍第八艦隊は、戦闘を多少なりとも有利に進めてはいるが、それは僅かに天秤がこちら側に傾いているだけでしかない。
 いつ形勢を反されるか分からないだけに、ハルバートンは気を抜く事などは無かった。
 その中、旗艦メネラオスのブリッジに報告の声が伝えられた。

「――戦域外に所属不明艦、出現!針路からすると、こちらに向かって来る模様」
「――新手か!?」

 予想外の事にハルバートンが眉を顰めた。
 もし、敵新型艦であれば簡単に戦況など反されてしまうかもしれない。
 ホフマンはCICオペレーターに確認するかのように声を掛ける。

「どこの艦か分からんのか?」
「――分かりません!認識コードを持って無い模様です」
「どう言う事だ……?もしや、アークエンジェルか!?」
「判りかねます」

 報告にハルバートンは、この所属不明艦がアークエンジェルではないかと微かに期待をするが、ホフマンは険しい表情のまま、首を横に振った。
 そして、戦況を見据えながら報告を待った。実際、待ったのは、ほんの数分なのだろうが、それ以上に長く感じた。

「――艦特定!艦籍、地球連合軍アークエンジェル級です!」
「――アークエンジェルか!」
「――なんと、無事だったのか!」

 ハルバートンは報告に喜々とした表情を見せると、隣のホフマンは驚きの声を上げた。
 アークエンジェル級艦は、正しくアークエンジェルのみがロールアウトされているだけで、報告にあった艦は確実にアークエンジェルを指していた。
 ハルバートンは逸る期待を隠せぬようで立ち上がると、確かめるようにオペレーターに声を掛ける。
 
「――アークエンジェルから連絡は!?信号は出していないのか?」
「――ノイズが多い為、上手く聴き取れません!」
「……もしや、イージス、デュエル同様にザフトに……」

 ホフマンの言葉通り、可能性として無い訳では無い。むしろ、イージス、デュエルが敵の手に落ちている以上、可能性が高い。
 ハルバートンは少し考え込むと、ホフマンを見据えながら口を開く。

「……可能性が無い分けではないな。こちらからアークエンジェルに呼びかけろ!その上で反応が無いなら、敵と判断する!」
「――は!」

 ハルバートンの指示にホフマンが頷く。
 ――この状況でのアークエンジェルの出現が戦いの鍵になるのかもしれない。
 ハルバートンは胸に秘めつつ、行われている戦闘に目を向けた。

 地球連合軍プトレマイオス基地を強襲中のザフト軍第二次攻撃隊は、前哨戦として基地より出撃したメビウスと戦闘を行っていた。
 その中には、バスターで出撃したディアッカの姿があった。

「――遅い!」

 ディアッカがトリガーを引くとバスターの右腰に装備されている電磁レールガン、三五〇ミリ ガンランチャーが火を噴く。
 弾頭が散弾のように広がると、二機のメビウスに直撃し、モビルアーマーを鉄のゴミへと変えて行った。
 
「よえーよ!ったく、数だけ多いだけで手応えが無いな」

 ディアッカは、本当にここが敵軍の宇宙での要なのかと疑いたくなり、吐き捨てる。しかし、まだ前哨戦でしかなく、本当の反撃がこれからなのも分かっていた。
 そうしている間にも、再び、メビウスがバスターへと襲い掛かる。

「――食い物に集るハエみてえに!こっちはお前達に構ってらんないんだよ!」

 ディアッカは攻撃を避けながら毒づくと、狙いを着けてトリガーを引いた。
 また一機、撃破するとプトレマイオス基地へと視線を向け、バスターを向ける。

「さて、とっとと、砲台を潰しちまうか」

 バスターに続くようにジン後を追いかけ、基地へと向かって行く。
 ディアッカの視線の先にあるプトレマイオス基地周辺では、先に出撃した同僚であるイザーク・ジュールがどこかで息を潜めている。

「イザークの奴、上手くやってくれよ。頼むぜ」

 ディアッカは呟くと、迎撃を開始した砲台をジンと共に潰しに掛かった。
 しかし、プトレマイオス基地からの砲撃は凄まじい物で、容赦無くジンを叩き落として行く。
 ここにプトレマイオス基地攻防戦の幕が上がった。

 ユウキを指揮官として臨時編成されたザフト軍艦隊は、第八艦隊に押され気味の戦いを強いられていた。
 元々、編成された艦は、ほぼ全てが違う隊に属していたのだから、満足に連携など取るのは容易では無い筈で、逆に言えば良く戦っていると言える。
 臨時編成されたザフト軍艦隊の当初の目的は、地球軍基地から主力艦隊を引き離す事にあって、その任を果たしたとも言えたが、通常なら引く事も出来ただろう。
 しかし、ラクス・クラインの弔い合戦と言う意味合いが強く、プラントでの戦意高揚の為にも、負けると言う事だけは避けなければならなかった。
 その中、ザフト軍も所属不明艦をレーダーで捕捉した事が、戦闘中の各モビルスーツへ伝達されたのだった。

「――所属不明艦!?」

 戦闘宙域右翼に展開したニコルは、デュエルのコックピットでスピーカーから聞こえて来る情報に耳を澄ました。
 そこへ、メビウスの編隊が攻撃を仕掛けて来る。
 
「――っ!」

 スピーカーに気を取られていた為か、一瞬、反応が遅れるが、シールドで初弾を防ぐと、デュエルはバーニアを噴かして回避行動に入り、すれ違い様に狙いを合わせ反撃に転じる。
 ニコルは、回避行動の遅れた一機のメビウスにビームを直撃させると、二機目に狙いを合わせ、トリガーを引いた。
 右翼に展開している味方のジンも同様にメビウスに対して攻撃を仕掛けている。

「――ふう……。危なかった……。油断しないようにしないと……」

 ニコルは息を吐くと、機体を動かしながら戦場を見回した。
 やはり、地球軍の攻撃機が多く、数では圧倒されているが、数分前に比べればこの宙域の敵の数も減ってきてはいた。
 そこへ、通信回線が入り、スピーカーからアスランの声が聞こえてきた。

「――ニコル!所属不明艦が現れたのを聞いたか?」
「あ、はい!聞いてます!しかし、いったい――」
「――戦闘中の各機!所属不明艦は、ヘリオポリスで取り逃がした地球軍新型艦と同型と一致。恐らく、逃走した艦が現れたと思われる!各機、注意されたし!所属不明艦の進行ポイントは――」
「「――!」」

 ニコルがアスランに返事をしていると、新たな通信が入り、ヘリオポリスで自分達が取り逃がしたアークエンジェルである事が分かった。
 二人は、その事実に息を飲んだ。

「……僕があの船に一番近い場所に居るのか……」

 ニコルは呟いて、アークエンジェルの居る方向に目を向けた。
 ――あの艦が現れたと言う事は、アスランの友達であるキラさんも来ている!?
 そんな事をニコルは考えていると、再び、スピーカーからアスランの声が聞こえてくる。

「――そっちから来るぞ!注意しろ!」
「――分かってます!」

 ニコルはアスランに返事をするとコンソールの通信ボタンを押し、後方に控える艦隊へ通信回線を開き、戦闘管制担当オペレーターへと繋げた。

「こちらデュエル!ニコル・アマルフィです!所属不明艦に対しての指示をお願いします!」
「――援護を向かわせた!右翼に展開中の部隊は、戦線を維持!援護が到着次第、デュエルはジンと共に所属不明艦の攻撃に向かってください!」
「――了解!」

 ニコルは指示に頷くと回線を閉じ、アスランへと通信を繋ぐ。

「アスラン!僕が迎撃に向かいます!」
「――ニコル!俺も――」

 ニコルはアスランが言いかけた処で、強制的に通信を閉じた。アスランの言いたい事は大体分かったし、彼をキラの所に向かわせたくはなかった。
 援護のジンが来るのを待っているのも、もどかしい位で、早くキラを説得しなければと心が焦る。

「……何としても、アスランと戦わせませんよ」

 ニコルは宇宙空間を見ながら自らの決意を確かめるように呟いた。
 やがて、増援が来ると、ニコルは五機のジンと共にアークエンジェルへと向かって行った。